読書記録2008
最近、一度読んだ本でも忘れていることが出てきて年を感じます。ひどいときは、新しく読む本だと思って、面白く読み進めていくうちに、何だか知っている気がしはじめて、読み終わる頃に、そういえば昔読んだことがあったと思い出すこともありました。 「常に新鮮な喜びが味わえてうらやましいこと」などと言われる状態です。そこで、新しく読んだ本を忘備録としてここに書いておくことにしました(平成14年3月開始)。「新しく読んだ」というだけで、別に新刊の本とは限りません。
「生命とは?物質か! サイエンスを知れば百考して危うからず」 和田昭允著、オーム社 平成20年12月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「宇宙論入門」 佐藤勝彦著、岩波新書 平成20年12月読了
宇宙の現状の観測と理論から、宇宙の誕生をさかのぼり、また行く末を予言する宇宙論の魅力がよくわかります。
「柿の種」 寺田寅彦著、岩波文庫 平成20年12月読了
随筆集とは別にでているものですが、10年以上ぶりに読み直してみました。前に読んだ時はあまり気がつかなかったのですが、寺田寅彦も研究に付随する会議などの雑用に嫌気がさしていたのですね。
「光合成の暗反応」 西田晃二郎著、UPバイオロジー 平成20年11月読了
昔読んだ光合成の教科書を読み返してみました。炭酸固定の経路がほとんど明らかになって、その制御機構に興味が移る時期の雰囲気がわかります。
「スカイ・イクリプス」 森博嗣著、中央公論社 平成20年10月読了
スカイ・クロラのシリーズの現時点での最終巻を単行本で読んでみました。クレィドゥ・ザ・スカイでまとめられなかった部分をうまくまとめた感じがします。完全に種明かしになっていないところもなかなか手際がよいと思いました。
「光合成と呼吸の科学史」 真船和夫著、星の環会 平成20年10月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「ローマ人の物語 迷走する帝国(上・中・下)」 塩野七生著、新潮文庫 平成20年10月読了
ローマ帝国の危機の時代、次々に皇帝が変わっていきますが、終身職である皇帝に対して不信任をする方法は暗殺しかない、という視点は新鮮でした。
「クレィドゥ・ザ・スカイ」 森博嗣著、中公文庫 平成20年10月読了
スカイ・クロラのシリーズの5巻目で、これで文庫版としては現在のところ完結ですが、うまくまとめられたかというとやや物足りない部分もあるような。でも、全体として力のある作品だと思いました。
「フリッタ・リンツ・ライフ」 森博嗣著、中公文庫 平成20年9月読了
スカイ・クロラのシリーズの4巻目で、わかったようなわからないような。そこがいいんでしょうね。
「梁塵秘抄 風俗と文芸」 渡辺昭五著、三弥井書店 平成20年9月読了
梁塵秘抄の歌謡を当時の風俗の視点から解説したものです。遊女や僧侶の生活との関係に重点が置かれていますが、これは元の歌の主題にそのようなものが多いせいでしょうか。
「ダウン・ツ・ヘヴン」 森博嗣著、中公文庫 平成20年9月読了
スカイ・クロラのシリーズの3巻目で、これは、ほぼ2巻目の続編の形になっています。ストーリーの見通しがよすぎるのがややあっけなく感じられます。
「不都合な真実」 アル・ゴア著、ランダムハウス講談社 平成20年9月読了
映画にも作られた、地球環境問題を扱った本です。著者の数多くの講演を元に作られただけあって、メッセージとしては極めてわかりやすく、特にアメリカでは出版する意義は十分すぎるほどあったと思います。ただ、もともと興味のない人は、そもそもこの本を手にとって読まないだろうという点だけはどうしようもありませんが。
「ナ・バ・テア」 森博嗣著、中公文庫 平成20年9月読了
スカイ・クロラのシリーズの2巻目で、こちらはうってかわって普通の青春小説の感じです。極めてわかりやすいのですが、これが時間的には未来になる第1巻へどう着地するのかがこの時点ではよくわかりません。
「スカイ・クロラ」 森博嗣著、中公文庫 平成20年8月読了
この夏映画化された話題作の原作第1巻です。なかなかよいのですが、僕には感情移入が難しかったですね。昔の記憶がおぼろげで、毎日が繰り返しに思える、というのはほとんど僕の日常そのままで、それがなぜあれほどの鬱屈の原因となるのかがどうも。
「光合成の世界」 岩波洋造著、講談社ブルーバックス 平成20年8月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「ピアニストは指先で考える」 青柳いづみこ著、中央公論社 平成20年8月読了
一般向けのエッセーかと思って読み始めたら、ピアニスト向けでした。リサイタルの開き方まで紹介されています。音楽用語がわからないとやや苦しいところがありますが、いつもながらの軽妙なエッセーです。
「<あいまいさ>を科学する」 米沢富美子著、岩波書店 平成20年8月読了
前半であいまいさの意味を考え、後半は不確定性原理などのあいまいさが現れる物理学の科学史的な紹介になっています。前半と後半でトーンが変わるのがちょっと引っかかりますが、全体としてあいまいさという、それこそとらえどころのない現象を平易に解説しています。
「梁塵秘抄 信仰と愛欲の歌謡」 秦恒平著、NHKブックス 平成20年8月読了
梁塵秘抄のそれぞれの歌を紹介しつつ、時代背景などを丹念に解説したもので、鑑賞と解説のバランスが絶妙ですね。現代まで伝わった部分だけでもこれだけの豊穣さを持っていることを考えると、残りの部分がどこからかひょっこり見つからないかな、と考えてしまいます。
「ハリー・ポッターと死の秘宝 上・下」 J.K.ローリング著、静山社 平成20年8月読了
言わずと知れたハリポタシリーズの最終巻です。第5巻6巻が若干不完全燃焼だった気がしたのですが、最終巻は予定調和的ながらきちんと盛り上がって有終の美を飾った感じです。
「量子力学の解釈問題」 コリン・ブルース著、講談社ブルーバックス 平成20年7月読了
量子力学の解釈と言えばコペンハーゲン解釈というのが有名ですが、最近は多世界解釈というのも一定の市民権を得ているようです。この本は、そのあたりの最新の解釈を易しく紹介しようとしているのですが、ちょっと文体に癖があって、僕にはわかりやすいとは言えませんでした。
「生命と地球の共進化」 川上紳一著、NHKブックス 平成20年7月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「脳と仮想」 茂木建一郎著、講談社現代新書 平成20年7月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「ブラス城年代記 1?3」 マイケル・ムアコック著、創元推理文庫 平成20年6月読了
ルーンの杖秘録の続編です。無理にエルリックなど他の世界の物語に統合する必要はないようにも思うのですが、作者としては自分の作り上げた世界を一つにまとめ上げたかったのでしょうね。
「ロシアン・ジョーク」 酒井陸三著、学研新書 平成20年6月読了
ジョーク(アネクドート)に絡めてロシアの政治家や政治家の変遷を紹介した本です。西側に人気の高かったゴルバチョフに点が辛いのが面白いですね。
「生物と無生物のあいだ」 福岡伸一著、講談社現代新書 平成20年6月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「バイオインフォマティクスの数理とアルゴリズム」 阿久津達也著、共立出版 平成20年6月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「ルーンの杖秘録 1?4」 マイケル・ムアコック著、創元推理文庫 平成20年6月読了
ホークムーンを主人公としたムアコックの初期のファンタジーです。東京創元社ではマイクルではなくマイケルですね。最後の場面で登場人物を殺しすぎ、という感じがしますが、どうも次のシリーズでは別の展開もあるようです。
「秋の星々の都」 マイクル・ムアコック著、ハヤカワ文庫 平成20年5月読了
フォン・ベックが主人公の長編で、ムアコックのファンタジーとしては歴史物との接点にあるような作品です。いわゆる英雄譚とは異なるヒロイック・ファンタジーです。
「数値でみる生物学」 R. Flindt著、シュプリンガー・ジャパン 平成20年5月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「ガーゴイルの誓い」 ビアズ・アンソニイ著、ハヤカワ文庫 平成20年5月読了
魔法の国ザンスシリーズの18巻目です。舞台装置はいつもながらのものですが、明らかに対象読者の年齢が上がってきています。第1巻が出た時に読み始めた読者の年齢もかなり上がっているはずですから、それに合わせているのか、それとも著者が年を取ったのか。原著の初版は1994年なのですが、なぜ日本での紹介に14年もかかったのでしょうね。
「神々の対話」 ルキアーノス著、岩波文庫 平成20年4月読了
ローマ時代のアテネに住んでいた著者の対話体の風刺作品です。アリストパーネスなどは当時の社会情勢や政治家などについての知識がないとなかなか面白みがわかりづらいところがあって、注を見ながら読み進めないとなりませんが、ルキアーノスの場合は、ギリシャ神話の知識さえあれば、注を見なくても面白く読めます。
「雄牛と槍」 マイクル・ムアコック著、ハヤカワ文庫 平成20年4月読了
永遠の戦士コルムの長編を3つ納めたものです。ファンタジーの評価を、どれだけ異世界とその中に住む人を描ききるか、という点で行なうのであれば、合格点かと思いますが、「剣の騎士」に比べると緊密性にはかけます。主人公がスーパーマンではない点は好みが別れるところでしょうか。
「植物一日一題」 牧野富太郎著、ちくま学芸文庫 平成20年3月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「子どもの品格」 高橋義雄著、ヴィレッジブックス 平成20年3月読了
昔習った先生がお書きになった本です。内容としては、非常に常識的なものなのですが、逆に言うと、常識的なことをきちんと説明することが必要な世の中になった、ということかも知れませんね。
「磁力と重力の発見 1?3」 山本義隆著、みすず書房 平成20年2月読了
いやはや、これは名著ですね。多くの賞を取ったのもうなずけます。物理学の前史にあたる部分を主に磁力の概念の確立を中心に丁寧に追っています。後書きで、元の論文にあたるためにラテン語を習うところから始めたと聞いて、「古代への情熱」を思い出しました。物書きだったらこういう本を一冊でも残したいと思います。
「エッセンシャル生化学」 Charlotte Pratt, Kathleen Cornely著、東京化学同人 平成20年2月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「海底二万里」 ジュール・ヴェルヌ著、岩波文庫 平成20年2月読了
子供の頃に岩波少年文庫で何度も読み返した本ですが、岩波文庫で新しい訳で出たので読み直してみました。子供の頃には気づかなかった科学的な「あら」に気づくようにはなりましたが、この本の魅力は、異世界の驚異と人物の造形にあるので、そのような「あら」は全く気になりません。今読んでもやはり名作ですね。
「剣の騎士」 マイクル・ムアコック著、ハヤカワ文庫 平成20年1月読了
ムアコックの永遠の騎士のシリーズの中でコルムを主人公にしたシリーズの一冊で、前期の3部作が納められています。エルリックのシリーズに比べて、構成が緊密なのが印象的です。3部作に渡って伏線が張られており、全体の構成を考えてから書かれていることがうかがわれます。読み終わってスッキリ落ちがつく感じでした。