生命と地球の共進化
川上紳一著、NHKブックス、2000年、267頁、1,071円
この本が出る前、1998年に岩波新書から「生命と地球の歴史」という本が出ています。著者はどちらも「全地球史解読」を銘打って行なわれたプロジェクト研究のメンバーで、地球の歴史と生命の進化を、お互いに影響を与えあう関係として読み解こうという方向性は共通しています。このプロジェクト研究では地球の歴史の上で重要な役割を果たした事件を地球史7大事件としてピックアップするなど、物事を多少単純化しても、素人にもわかりやすく研究成果をアピールするという姿勢が見られ、「生命と地球の歴史」では特にそれが強く感じられました。この本でも、その姿勢は見られ、題材もかなり重複しているのですが、やはり著者の個性が現れます。「生命と地球の歴史」が一つの立場に立って明確なストーリーで引っ張る本だとすれば、こちらの「生命と地球の共進化」はさまざまな可能性を提示するところに特徴があります。その分、まだこの分野にはいろいろな点で未解決な問題が多い、という印象を与えますから、それはそれで学問としての面白みを伝えていると言えるでしょう。地球の環境条件が整うことによって生物と光合成を生み出され、そうすると今度は光合成の作用が地球環境を変えていきます。そしてその変化その後の生物の進化に影響する、という地球と生命の複雑な関係を俯瞰する本として、地球環境や生物の進化に興味のある人ならまず読んで損はない本です。