数値でみる生物学
R. Flindt著、シュプリンガー・ジャパン、2007年、287頁、3,800円
生物学に関わるさまざまな数を集めたデータブックで、ぱらぱらめくるだけでもなかなか面白い。このような基礎的なデータは論文をたどろうにも古いものが多く、このようにまとめてあると利用価値は極めて高い。ただ、出典は著者名と年号だけで、リファレンスがついていないので、ここからさらに原著論文にあたろうと思った場合は難しい。動物・植物・微生物学・ヒト・比較データの5章からなるが、微生物学はわずか数ページで、力点は動物におかれている。著者は農学系の人なのか、動物では生殖・発達・栄養・消化などが比較的詳しい。植物も林学的なデータは詳しいが、生理学的なデータは比較的少ない。面白いのが植物の呼吸に関するデータが多いことで、光合成は8種の植物のデータが載っているだけなのに対して、呼吸は藻類なども含めて40近い種のデータが載っている。植物の場合、おそらく呼吸のデータを集める方が難しいと思うので、調べづらいものこそ載せるべきだというポリシーの結果だとすれば一つの見識だろう。原著は2002年の版であるが、地球環境問題がクローズアップされた現在から見ると、地球規模のデータがもう少し欲しいように思った。種数のデータは載っているものの、地球上のバイオマスのデータはほとんどなく、唯一、1970年代に見積もられた古い地球の年間光合成のデータが載っているのみである。このあたりが将来充実するとさらにすばらしいデータブックになるだろう。