読書記録2013
最近、一度読んだ本でも忘れていることが出てきて年を感じます。ひどいときは、新しく読む本だと思って、面白く読み進めていくうちに、何だか知っている気がしはじめて、読み終わる頃に、そういえば昔読んだことがあったと思い出すこともありました。 「常に新鮮な喜びが味わえてうらやましいこと」などと言われる状態です。そこで、新しく読んだ本を忘備録としてここに書いておくことにしました(平成14年3月開始)。「新しく読んだ」というだけで、別に新刊の本とは限りません。
「動物と太陽コンパス」 桑原万寿太郎著、岩波新書 平成25年12月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「植物の生態 ー生理機能を中心にー」 寺島一郎著、裳華房 平成25年11月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「キャットと魔法の卵」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、徳間書店 平成25年10月読了
これもクレストマンシーシリーズの一冊。内気で感受性の強いキャットの人物造形は、英国ファンタジーの一つの典型でしょうね。
「魔法の館にやとわれて」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、徳間書店 平成25年10月読了
大魔法使いクレストマンシーシリーズの一冊です。いつもながら世界観がしっかりしていてキャラクターが生きているので途中で止まらなくなります。
「植物の生存戦略」 「植物の軸と情報」特定領域研究班編、朝日新聞社 平成25年9月読了
書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。
「宇宙は無数にあるのか」 佐藤勝彦著、集英社新書 平成25年9月読了
宇宙論の新しい展開を紹介した本です。さまざまなマルチバース(多重宇宙)論の紹介など、面白いのですが、異なった背景から提案されたそれぞれの理論が、相互に排他的なのか、排他的だとすれば、どちらが正しいかはどのようにして検証できるのか、といった点がやや不消化で残りました。
「喜嶋先生の静かな世界」 森博嗣著、講談社 平成25年7月読了
おそらくは「自伝的小説」と呼ばれるものでしょうか。一人の若者の研究者への道のりが淡々と描かれます。理系の研究者にとっては、ごく当たり前に思い当たることばかりですが、普通の人が読んだらどう思うのか、少し興味があります。一つだけ残念だったのは、図をロットリングで描いている時代の会話に「セクハラ」という言葉が出てくることです。当時にセクシャルハラスメントに相当する概念がなかったとは言いませんが、少なくともセクハラという言葉が作られたのは、はるかに後の話です。せっかくの静かな世界が細部のアナクロニズムによって大きく揺さぶられる感じです。
「科学以前の心」 中谷宇吉郎著、河出文庫 平成25年6月読了
雪の結晶の研究で有名な科学者のエッセー集です。科学的な考え方の必要性というものを強く意識していた人のようです。一方で、子どもには科学普及の話より孫悟空の方がよいのではないか、という話もあって、バランス感覚を感じます。
「思い出を切りぬくとき」 萩尾望都著、河出文庫 平成25年6月読了
萩尾望都の20代の頃のエッセーを集めたものです。あれだけの世界を描いた著者ですが、わりと普通の人のようですね。
「白河法王 中世をひらいた帝王」 美川圭著、角川ソフィア文庫 平成25年5月読了
それまでの摂関政治から院政へと移行していった時代を白河法皇を中心にして論じた本です。主人公であるべき白河法皇の影が薄いのが読み進むうちに気になります。一般向けの本としてはもう少し白河法皇の人となりが知りたくなりますが、何を考え、何を感じていたのかがはっきりしません。残っている資料が少ないせいなのでしょうか、それとも著者の書き方のせいなのでしょうか。後鳥羽院などは、多くの歌を残しているので、そのようなところからその人となりが明らかになる、という面はあるのかもしれません。
「はじめての禅問答」 山田史生著、光文社新書 平成25年4月読了
日頃家族の間で禅問答を繰り広げているものとしては、一つ読んでおくかな、と思って手に取ってみました。面白いのですが、やや表面的かな、という印象でしょうか。禅問答は、悟りの契機となることが一つの機能のようですが、悟りよりは仏教の知識の集積が目的のような研究者タイプの登場人物もいて、この時代の人々がなぜ悟りを求めていたのか、というそもそもの点がよくわかりませんでした。
「文明崩壊」 ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫 平成25年4月読了
ベストセラーになった「銃・病原菌・鉄」の作者の次の作品です。太平洋の島の文明が、その地理的な位置、相互の関係、自然環境などの際によって存続したり、崩壊したりするという因果関係の解析は面白いと思いました。ただ、例によって長いですね。
「幻の楽器ヴィオラ・アルタ物語」 平野真敏著、集英社新書 平成25年4月読了
ヴィオラよりは大きくチェロよりは小さい楽器がなぜ使われなくなったのかが謎解き仕立てで語られます。謎解きにするためにやや展開に無理がきていると感じられる点もありますが、ワーグナーとの関係など興味深く読めました。
「海はどうしてできたのか」 藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス 平成25年4月読了
さらさらと読めましたが、やや物足りないような。地球科学的な点は、岩波新書から15年前に出た「生命と地球の歴史」からあまり変わっていない割に、海洋に特化した記述の割合は半分以下です。もう少し新しい知見の紹介がほしい所です。
「幕末の天皇」 藤田覚著、講談社学術文庫 平成25年3月読了
やってしまいました。読み終えて最後に「本書の原本は、1994年9月、小社より講談社選書メチエとして刊行されました。」とあるのを見て、はっと思って調べたら読んだことがありました。20年近く前に読んだ本なら許されるかな。
「数学は世界を変える」 リリアン・R・リーバー著、ソフトバンク・クリエイティブ 平成25年3月読了
第二次世界大戦の最中に書かれた一種の啓蒙書です。冒頭に置かれた3つの問題など非常によく考えられていて、思わず引き込まれます。「あなたのやっていることは実際何の役に立つのですか」と数学者に聞いてはいけない、という部分に笑ってしまいました。
「百年前の日本語」 今野真二著、岩波新書 平成25年2月読了
大きな揺れを内包していた明治期の日本語が、外国からの影響などを受けつつ、次第に収束していく様子がくっきりと描かれています。
「古典基礎語の世界」 大野晋著、角川ソフィア文庫 平成25年2月読了
源氏物語に出てくる「もの」という言葉の根源的な意味を、その様々な用例から探るようすは、文系の学問の研究の一つのあり方を代表しているように思いました。
「ブラウン神父の無心」 G・K・チェスタトン著、ちくま文庫 平成25年2月読了
40年近く前に読んだ本ですが、新訳が出たので懐かしくて読みなおしました。新訳なのですが、訳し方をわざと古風にしているようで、そこも面白く読みました。
「銃・病原菌・鉄」 ジャレド・ダイアモンド著、草思社文庫 平成25年1月読了
文明の発達速度を論じた評判の本をようやく読んでみました。大陸の形が大きな影響を与えるといったアイデアは刺激的です。しかし、内容の膨らませ方は、著者が理系のバックグラウンドを持っているとはとても思えません。記述に繰り返しが多いので、言いたいことだけを普通に書いたら1/3ぐらいの量になるのではないでしょうか。