光合成の質問2012年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:「光合成とはなにか」の本を読んでいて、79ページのLHCIとLHCIIのところでひとつ質問があります。P79の7行目のところで「LHCIIは1分子のタンパク質にクロロフィルaが8個、クロロフィルbが7個結合しており、クロロフィルbが比較的多いのが特徴です。」とあるのですが、何と比較してクロロフィルbが多いのでしょうか?あと1分子のタンパク質にクロロフィルaとbがそれぞれ8個と7個結合しているのなら、クロロフィルaのほうが多いのではないでしょうか?(2012.12.6)

A:なるほど。これは誤解を招く表現だったかもしれません。ここの文章の比較の対象は、LHCII以外のクロロフィルタンパク質、すなわち、系1の反応中心クロロフィルタンパク質、系2の反応中心のクロロフィルタンパク質、そしてLHCIです。反応中心のクロロフィルタンパク質は、どちらも結合しているのはクロロフィルaのみで、クロロフィルbを含みません。また、LHCIはクロロフィルa/b比が4程度で、クロロフィルbはクロロフィルaの1/4しか存在しません。これらの複合体と比較するとクロロフィルbが多い、ということです。クロロフィルaより多い、ということではないのです。(2012.12.6)


Q:クロロフィルは青色光で生合成が促進されると文献に書いてありました。しかし、詳しいメカニズムが記載されていなかったので、教えて頂けますか?(2012.12.5)

A:正確に言うと「被子植物のクロロフィルの生合成は」ですね。被子植物の場合、クロロフィルの生合成過程のステップの一つを触媒するプロトクロロフィリド還元酵素が、その活性に光を必要とするため、暗所ではクロロフィルが合成されません。これが暗所では植物がクロロフィルを合成できずモヤシになる一つの原因です。裸子植物や藻類は、同じ活性を持つ暗所でも働く酵素を持つため、暗所でも緑色を保ちます。(2012.12.5)


Q:一般に植物が何らかのウイルスに感染した場合、ふ入りなどの顕著な葉緑素の喪失現象がなくとも光合成速度(活性?)は落ちるのでしょうか?私が読んだいくつかの文献によると、光合成速度が落ちると書かれているものが多いのですが…(2012.8.27)

A:「一般に」と言われても、世の中には様々な植物があって、様々なウイルスがありますから、それらに共通の一般性は期待できないように思いますが。そもそももし一般性があるのでしたら、いくつかの文献に光合成速度が落ちると書かれているのだったら、それが他にも適用できるはずです。質問の意図が判然としませんが、光合成速度が落ちないという逆の結果を記載した文献があるかどうかという意味でしょうか?そうでしたら、昔ヒヨドリバナでジェミニウイルスの感染を調べた例では、感染してもクロロフィル濃度が大きく低下していない場合は、光合成活性が感染していない場合と変わらなかったことを観察しています。(2012.8.27)


Q:我が家には5年前から2メートルくらいのネムノキを室内においています。吹き抜けのある明るい室内で、窓から直射日光が当たる時間も少しあります。朝になると葉が開き、夜になると室内の電気をつけていても葉が閉じます。夜遅くまで電気をつけていてもきちんと葉が閉じるので、葉の開閉には電気の明るさは関係していないだろう思っています。自由研究で中学1年生の子供が、葉の開閉は日光と関連があるのかを調べるために、暗い部屋に入れて葉の開閉を観察しました。日光を遮断するため、2つある窓はシャッターを閉め、またドアの外と中にも遮光カーテンで天井から床まで覆い、ドアの隙間からの光も漏れないようにしました。室内は人間の視覚では真っ暗で何も見えない状態です。ただし、天井に火災報知器の電源(直径約2ミリ)の緑色のランプが常時点灯しています。この状態で観察したところ、1日目は明るい室内に置いたときより少し時間が遅れて開き始め、最終的に全部開きました。また、夜閉じる時間は明るい室内に置いた時間より2時間程度遅れて閉じ始め、長時間かけて閉じました。そこで、2日目はさらに窓に毛布等で覆い、隙間からうっすらした光も漏れないようにして観察しました。ところが、開き始めの時間はさらに前日より遅くなりましたが、時間をかけて全部開きました。太陽光の影響はゼロに限りなく近いと思います。火災報知器の電源ののランプ程度も、光合成のための「光」として考えるべきか、「光はゼロ」と考えてよいものでしょうか?
 また、『植物の世界』(朝日新聞社発行)の「動く植物たち」の中で、「生長運動による就眠運動も、膨圧運動によるそれも、その運動の過程全てが、明暗の交代だけによって制御される訳ではない」「24時間周期の明暗交代によって葉が開閉している植物を、光をずっと当てっ放しにするか、ずっと暗黒の中に置いても、それでも数日間は開閉し続ける」ということが書いてありました。実験中の我が家のネムノキもわずかな電気の光に反応しているというより、植物のもつリズムによるもので開閉している、という結論のような気もします。 本来なら、もっと長期間観察を続ければ、開閉しなくなるかどうかわかるのですが、夏休みの課題に取り掛かるのが遅く時間がないためできません。また、もしこのまま開閉しなくなるまで暗室においたままの場合、光合成できなくてネムノキが枯れてしまう可能性もありますが、大体どのくらいで枯れてしまうのでしょうか?以上です。よろしくお願いいたします。(2012.8.26)

A:まず、火災報知機の電源ランプが光合成のための光として働くか、という質問に対しては「働かない」とはっきり答えられます。光合成で有機物を稼ぐためには、人間の目で見える以上の光が必要です。ただし、葉の開閉は光合成とは直接関係がないのです。光合成の場合はクロロフィルが光を吸収しますが、葉の開閉については光合成とは直接の関係なしに光を検知しています。光を吸収する物質の中にはかなり弱い光を検知できるものもあります。アルミホイルで覆っておいても直射日光を当ててしまうと、アルミホイルを透過した光を検知できる場合もあります。それでも火災報知機の電源ランプだけだったら非常に光としては弱いと思います。どちらかに一票入れるとしたら、まあリズムによって開閉している方に入れたいと思います。
 次に暗い場所に長く置いた場合の植物についてですが、真っ暗にすると葉の老化が促進されるので、数日で葉が黄色くなっていって枯れてしまう可能性があります。どの程度で枯れるかは植物の種類によります。ただし、大きな木の場合は、幹にかなりの栄養分を貯めていますから、葉が枯れた場合でも、もう一度光が当たるようにしてやれば、新しく葉を出して生き続ける可能性はあります。こちらは木の大きさにもよるでしょうからどの程度の期間まで大丈夫かは一概に言えません。高さ2メートルの木であれば、ある程度持ちそうな気はしますが、なんとも言えません。(2012.8.26)

Q:早々のご回答ありがとうございました。電源ランプの光は関係ない、ということで一安心ですが、弱い光でも検知する場合もあるということなので、追加で質問させていただきます。30分〜1時間おきに午前・午後にそれぞれ6〜7回程度入室し葉の動きを観察しています。その際に細心の注意を払っていますが、ドアから光が少し入っていることもあります。この光にも反応していると考えるべきでしょうか?また、懐中電灯やカメラのフラッシュにも反応していると考えるべきでしょうか?(1回入室に5〜10枚程度写真をとっています。)よろしくお願いいたします。(2012.8.27)

A:光の何が植物に影響を与えているかは、場合によっても異なると思いますが、光があたる時間に光の量を掛け算した積算光量を一つの目安として考えることができます。ただし、時間、量ともにその影響ときれいな比例関係になるとは限りませんから、あくまで目安です。フラッシュの光などは1回あたりの時間が非常に短いので、積算してもそれほどの光量とはならず、影響がない場合が多いようです。ドアからの光の場合も、時間的に短ければそれほど影響は大きくないと思います。ただ、いずれも程度問題ですので、「光が少し」というだけですと、確定的なことは言えないと思います。(2012.8.27)


Q:自由研究を計画していて疑問に思ったのですが、葉でつくられたデンプンが水にとけやすい物質に変わって体全体に運ばれふたたびデンプンに変わってたくわえられるというのはなぜ、色々な植物によって場所がちがうのですか?また、水にとけやすい物質とはどういうものなのですか? そして、たくわえられた場所からデンプン反応をみれる方法はありますか?(細かく調べたいのでできるだけ詳しく回答してくださると助かります)(2012.8.6)

A:場所というのはデンプンを貯める場所という意味でしょうかね。植物によって異なる性質というのは、それぞれ植物がどのような所に生えているのか、どのような季節に生長するのか、といった植物のおかれた環境の違いを反映します。ですから、特定の2つの植物を取り上げて、何が違うかを考えれば、具体的にここが違うだろうという点を見つけることができるかもしれませんが、一般的な植物についての話だと、一般的に植物が置かれた環境が違うからでしょうというあいまいな答えになってしまいます。水に溶けやすい物質は、多くの場合お砂糖です。お砂糖は物質名としてはショ糖とかスクロースとか呼ばれます。ただし、一部の植物ではちょっと違った糖を使う場合もあります。デンプン反応をみる方法としては、もちろんヨウ素デンプン反応がありますが、聞きたいのはそれでしょうか?ヨウ素デンプン反応については、詳しい説明を「ヨウ素デンプン反応の実際」のページに載せてありますので、見てください。(2012.8.7)


Q:光の強さに応答して光化学系IIの数を変化させるのはどれくらいのスピードなのでしょうか。植物栽培が趣味なのですが、よく「外(直射日光下)に出すには1〜2週間直射日光のあたらない明るい日陰に置いてからにしてください」と栽培書には書かれています。人間の時間軸から考えると日単位?週単位?どれくらいなのでしょうか。栽培書から考えると週単位のような感じですがそれであっていますか。また、光化学系IIの合成(という言葉であっているかわかりませんが)には光応答する物質が関係しているという認識でよろしいでしょうか。(2012.7.8)

A:光の量などに応じて光合成の状態を変化させることを光合成の馴化といいます。これにかかる時間は草本の速いものでも3日ぐらいです。通常はもっとかかりますから、1-2週間というのは適切な記述だと思います。馴化の際には光合成全体が調節されますので、光化学系IIだけが変わるわけではありません(光化学系IIも変わりますが)。光化学系Iも含めて、色々な部分が調節されます。量(数)だけでなく、たいていの場合質的な変化も伴います。「光応答する物質」というのは、何か光を吸収して光合成を調節するための信号を出すような物質を想定しているのでしょうね。暗所や非常に暗い状態から少し明るい状態に変わる際には赤い光と赤外光を吸収するフィトクロームという光受容体が働くことが知られていますが、いわゆる強光に対する馴化の場合は、光合成の状態そのものがシグナルになっているのではないかと考えられています。その場合はクロロフィルが光受容体だ、と言ってもよいのかもしれません。(2012.7.8)


Q:勝手ながら早めに答えていただきたいです。よろしくお願いします。オオカナダモの光合成の反応についての実験をしました。1つ目の試験管、オオカナダモとBTB溶液に呼気で二酸化炭素を入れて黄緑色にしていれたもの2つ目の試験管、オオカナダモとBTB溶液に呼気で二酸化炭素を入れて黄緑色にしていれた試験管をアルミ箔で覆ったものこの二つの試験管を窓際に置き日光を当てて60分間(15分ごとに計測)待ちました。最初のpHが6.2でした。60分後測るとどちらもpH7.8でした。1つ目の試験管は二酸化炭素が光合成により酸素になり、中性になったのはわかるんですが2つ目の試験管はなぜアルミ箔で覆っていたのに同じ結果になったんでしょうか?実験する前は1,2のオオカナダモは光が当たる水の中に置いてありました。15分ごとのpHも同じでした(2012.7.5)

A:理由は質問のコツを見ていただければわかると思うのですが、この手の質問にぴしっと答えることはなかなかできません。さまざまな理由があり得ると思いますが、アルミ箔で覆ったもの、覆わないものの両方で、オオカナダモを入れない対照実験ではどうなるのか、という点が重要だと思います。少なくともオオカナダモの生物作用によるものか、それとも温度上昇などの物理的要因だけで起こるものなのかの情報がないと判断できないと思います。(2012.7.5)


Q:光合成が可視光といわれる人間の目に見える光で行われるということは、月の光によっても行われるのでしょうか?(2012.7.3)

A:確かに月の光も可視光ですから、原理的には光合成をさせる力があるはずです。しかし、太陽の光に比べるとあまりにも弱いので、月の光の下で実際に光合成による酸素発生が起こっているか、といったら起こっていないでしょうね。もっとも、月の光を巨大なレンズか何かで葉に(1万倍ぐらいに)集めたら、ちゃんと光合成すると思います。(2012.7.3)


Q:光合成で研究対象とされている生物に照射される光は、強さ・波長・時間は生物によって統一されているのでしょうか。それとも各々の研究目的の為にバラバラなのでしょうか。(2012.6.20)

Q:「照射」というのが、育てるための光の話か、光合成測定のための光の話かがよくわかりませんが、基本的に統一などということはありません。まず生育条件としての光を考えた場合、そもそも自然条件では夜に暗く、朝に日が差し始め、真昼に一番光が強くなって、夕方にはまた光が弱くなる、という変動を繰り返しています。実験室の中で植物を栽培する際には一定の光を照射して育てることはありますが、その状態が自然状態を反映しているとは限りません。光環境応答に関する遺伝子の変異株などでは、定常的な光の下では野生株と変わらないのに、変動する光条件の下で育てると生育が悪くなる例が報告されています。次に光合成の測定に用いる光についてですが、これも一定ではありえません。弱光条件で栽培した植物と強光条件で栽培した植物では、そもそも光量に対する応答が異なりますから、特定の光条件だけで測定しても、それが何を意味しているかわかりません。高校の生物で光−光合成曲線というのを習うと思いますが、横軸に光量、縦軸に光合成速度を取ったそのような曲線全体をみることによって光合成の様子を把握することができます。時間についても同様で、栽培条件、測定条件のどちらについても、実験の目的に応じて必要な光の照射時間は異なります。最後に波長についてですが、これは、太陽光は白色光ですから、自然条件を反映するという意味では白色光での生育・測定が望ましいとは思います。ただ、測定機器によっては特定の波長の光を照射して測定するようなものも存在しますし、光の波長の光合成に対する応答を研究する場合には、当然波長を変えて実験を行ないます。(2012.6.21)


Q:生徒たちは、植物細胞には葉緑体があるものだと思っていますが、実はそうではなくて、葉の表皮の細胞には葉緑体はありません。もちろん、根の細胞にも葉緑体はないわけですが、葉の細胞に葉緑体がないのには予想外のことのようです。実は、これは教科書に載っていることで、同じ表皮系の細胞でも孔辺細胞には葉緑体がある。これが気孔の開閉のしくみの学習につながります。ところで、その表皮細胞にも色素体はあるのでしょうか(すべての植物細胞に色素体はあるのかということ)。色素体には有色体や白色体などがあり、物質の貯蔵や合成に関係するなどと書いてありますが、はっきりとした記述はありません。よろしくお願いいたします。(2012.6.13)

A:まず、孔辺細胞を除く表皮細胞にはほとんど葉緑体がみられませんが、完全に0ではないようです。少なくとも葉緑体を持つ能力はあります。葉緑体はシアノバクテリアの細胞内共生が起源ですから、細胞の中で0から葉緑体をつくり出すことはできません。必ず分裂して増えるか、もしくは他の色素体から変換して生じます。また、色素体は、葉緑体として光合成を行なうだけでなく、脂質の合成や窒素の代謝にも重要な役割を果たしています。分化の進んだ細胞としては、例えば篩管を構成する篩要素がありますが、篩要素でも(程度はいろいろあるようですが)色素体を持っていると報告されています。したがって植物細胞には分化全能性がある(すなわちある細胞から別の器官の細胞を作ることができる)という表現が成り立つ範囲内では、植物細胞は色素体を持つ、と言ってよいでしょう。(2012.6.14)


Q:高校で生物を教えています。カルビン・ベンソン回路で水が6分子とれます。これについて、教科書には何の説明もありません。どのどうな意味があるのでしょうか?それから、光合成と直接関係ないので申し訳ないのですが、クエン酸回路では水が6分子付加します。この水分子の付加が電子伝達系に供給される水素(電子)の供給源になっていると思うのですが、教科書にはやはり何の説明もありません。なぜでしょうか?(2012.6.9)

A:この質問は、回答が非常に専門的にならざるを得ないこと、また他の先生からも過去に同様の質問を受けたことから、FAQの方へ回答を載せることにしました。光合成については「FAQ 1-16」、呼吸については「FAQ 1-17」をご覧いただければと思います。(2012.6.10)


Q:光合成を行う気孔は主に葉にありますが、なぜ花弁には気孔がなくてもよいのですか?ばかみたいな質問で申し訳ありませんが、回答していただけたらうれしいです。よろしくお願いします。(2012.5.17)

A:まず、気孔が光合成を行なうわけではありません。光合成に必要な二酸化炭素を気孔から取り込んでいるだけです。花弁に気孔がないのは、光合成をしない花弁には必要ないからでしょう。ではなぜ花弁が光合成をしないかといえば、花としての機能と光合成の機能を同時にできるような複雑な仕組みを作るよりは、それぞれ花と葉で分業した方が効率的だからなのでしょう。(2012.5.17)

Q:この前の質問にご丁寧に回答していただき、ありがとうございました。光合成についての質問というわけではないのですが、花弁の役割について質問させてください。花弁の役割は虫の気をひくこと以外に何かあるのですか?光合成の質問じゃなくてすみません。(2012.5.18)

A:虫が受粉を媒介する虫媒花の花弁が一般的に目立ってきれいなのに対して、風が花粉を運ぶ風媒花の花はたいてい地味です。花弁をきれいな目立つ花の部分として定義するのであれば、その機能は虫の気を引くためでしょう。ただ、風媒花に花弁がないかと言えば、目立たない花弁はありますから、そのような花では、おしべめしべの保護などといった他の役割を果たしている可能性があるでしょう。(2012.5.18)


Q:初めて質問させていただきます。私は施設栽培でキクを栽培している者です。冬場の寡少日照時の栽培技術として補光技術があるのですが、23wの蛍光灯を、日の出前にAM5〜7PM時の2時間つける方法、日没後PM5〜PM7時に付ける方法、AM5〜AM6時に1時間PM5〜PM6時に1時間づつ付ける、の3パターンの方法が存在するのですが(シェード管理で12時間日長にしてPM6時〜AM6時に暗期と考えてます)朝の補光は伸長促進し日没後の補光は重量増加すると言われているのですが23w蛍光灯の光ではキクは光合成しないと言われるし光合成していなければ何の意味もない気がするのですが・・・。植物の朝日の当たる意味と日没後に光に当たる意味を考えると概日リズムを整えてるのと転流阻害?の2点が思い浮かんだのですが意見をお聞かせ願えないでしょうか?結局どれが光合成効率がいいのか分かりません。よろしくお願いします。補足として前に一度PM6時から3時間の補光をしたら草姿が少し乱れたことがありました。(2012.4.2)

A:蛍光灯のワット数だけだと実際に植物が受けている光量がわからないので難しいですが、おそらく光合成を促進する効果はかなり小さいように思います。転流阻害は可能性がありますが、それもそれほど大きな影響を与えるようには思えません。概日リズム自体も、通常の生育でしたらわざわざ「整える」必要があるようには思えません。やはり従来言われているような、光周性(花の咲く時期の光による調節)への影響が一番大きいと思います。また、形態形成への影響も弱い光で現れますから、観察された形態の異常は、その影響かもしれません。もし、光合成に対して影響を与えるような光量であった場合には、朝と晩で異なるのは主に温度だと思います。通常は明け方よりも夕方の方が気温が高いので、光合成の観点からは温度が光合成を制限しない夕方の方がその効果は高いかもしれません。(2012.4.2)

Q:回答ありがとうございました。光合成促進の余り無い弱い光による補光の意味を光周性にあると理解することが出来ました。もう一点栽培技術の中で気になっているのですが「変温管理」の意味ですが単純に施設栽培での重油コストを抑える為の技術と思っていいのでしょうか?変温管理しないよりもむしろ品質向上するような事は無いのでしょうか?また殆どの変温管理栽培指針の中で後夜半温度を落として「夜の植物の呼吸を抑える」とあるのですが夜は酸素を吸って二酸化炭素を出しているだけではないのでしょうか?呼吸増加で具体的に何が消耗されているのですか?前夜半の温度が転流に与えるのは理解出来たのですが後夜半の植物の呼吸が気になります。度々の質問ですみませんよろしくお願いします。(2012.4.3)

A:おっしゃるように呼吸では酸素(O2)を吸って二酸化炭素(CO2)を出しているわけですが、そうすると植物からは炭素(C)が失われることになります。つまり有機物(光合成で二酸化炭素から作った産物)を消費することになります。夜の間は光合成できませんから、体の中で必要なエネルギーは呼吸で光合成の産物を分解して得ているのです。温度を下げると必要なエネルギーも小さくなりますし、そのエネルギーを作るための光合成産物の分解も少なくなりますから、少なくとも理論的には植物の生育はよくなるはずです。それで重油も節約できるのであれば一挙両得ということでしょう。(2012.4.3)

Q:度々の質問ですみません。植物の生態や光合成とは、と調べていると結局ここに行き着いてしまうのです・・・栽培技術の向上目的に調べ始めた取っ掛かりにしか過ぎない事だったのですが、光合成の奥深さや単純に植物って凄いと関心している今日この頃です。その勢いで先日「光合成とはなにか」まで買ってしまいました。質問と言うか意味があるか無いのか危険であるか無いのかでお答えしてもらいたいのですが「葉面散布」についてです。とある葉面散布の実験で上白糖を葉面散布した所、花の数や果実糖度が増したなどの有意に働く結果が出たと言う物を読んで光合成産物(スクロース)を葉面散布で補えるのなら合理的だなと思ったのですが、そのまままねして上白糖を散布しても問題ないのでしょうか?また試験的に葉面散布を試したい資材があるのですが某飲料メーカーの「スポーツドリンク」と「調味料のみりん」の二点です。危険で無いのであればどれ位の濃度でやれば問題ないのか光合成の盛んな朝やるべきか夜やるべきか意見をお聞かせください。個人的にはみりんが本命でスポーツドリンクは塩分が気になっていますので植物の塩分に対する生理障害も教えていただければ幸いです。個人的な意見でも構いませんのでよろしくお願いします。(2012.4.5)

Q:「光合成とはなにか」を読んでくださったのであればわかると思いますが、特定の現象の植物に対する作用を考える場合に植物の種類・環境を考えずに議論をしても意味がありません。夜には光合成をしない、あるいは呼吸をすると有機物が分解する、というのは植物の種類や環境によらない普遍的な事実ですが、葉に何かを塗った時にどのような影響が出るかは、植物の種類、そのおかれた光環境・温度環境、物質の濃度などによっておそらく千差万別でしょう。一般論として議論できるようなものではありません。蛇足になりますが、「光合成を研究している消費者」の立場からすれば、あれこれ葉に塗って糖度が上がった果実よりは、健康に光合成をした結果としての果実の方が好ましいですね。(2012.4.5)


Q:塩化コリンを施用することで、たまねぎ、にんにくの収量の増加、モモで果実の肥大を促進するとあります(植物成長調節剤として商品化されています)。この塩化コリンはどのような作用で光合成を促進し、収量の増加や果実肥大に働くのでしょうか。(2012.3.9)

A:農学や医学は、サイエンスというよりはテクノロジーとしての側面が強いので、わけがわからなくても効けばよいわけです。少し探してみましたが、塩化コリンが光合成を直接促進するというデータをそもそも見つけることができませんでした。また、探しているうちに、平成12年の特許請求の中に「コリン塩はこれらの植物生長促進作用が、実用上、必ずしも十分とはいえず」といった記述もありましたので、そもそもどの程度効果があるものかすらよくわかりません。コリン塩と何かを合わせて用いた場合に少し生育がよくなるかもしれないといったことだと、なかなかその原因を突き止めるのは難しいように思います。(2012.3.10)


Q:花きの研究に携わっているものです。「光合成とは何か」を読ませていただき、大変勉強になりました。ひとつ教えていただきたいのですが、テッポウユリは日照不足によって蕾の発達が停止し、ブラスチングを起こしますが、これは同化養分である糖が蕾に供給されないために起こる現象と考えています。植物生理として子孫を残すためには、葉の養分を再利用して花を咲かせることはないのでしょうか?つまり、葉に蓄えた糖を必要な場所に再転流することはないのでしょうか?もしくは、日照不足により不足した糖類を、葉や根からうまく供給する方法はないのでしょうか。(2012.3.8)

A:葉の同化産物を花や実へ転流することは多くの植物で見られます。一年草では、むしろ転流しないことの方が珍しいと思います。ただ、テッポウユリのような多年生(球根)植物の場合、その年に種子をつけられなくても、翌年に少なくなった分を上回る数の種子をつけることができれば、通してみて得になるため、同化産物が足りない時には花をつけない、という選択肢も生じます。無理をして中途半端に花をつけてわずかな数の種子をつけるよりも、その分の養分を球根に回して翌年に回してたくさん種子をつけるという戦略は、子孫を残す上で悪くない方法でしょう。とすると、それを無視して逆に球根から花に栄養を送らせるのはなかなか難しいように思います。翌年を考えられない切羽詰まった状況に植物を追い込むのが一つの方法かもしれませんが、具体的な方策は思いつきませんでした。(2012.3.9)


Q:はじめまして。学生の試験で、イチゴの葉を数枚摘除した場合に残した葉の光合成速度が上がるか、無処理区と比較調査を行いました。1区5株で測定したのですが、結果は個体間でバラつきが多く、明確な傾向はみられませんでした。以前、何かの本で、前述のような場合には「補償作用が働き、残した葉の光合成速度は上昇する」旨の記述を見た記憶がありますが、探し出せませんでした。すみませんが、似たような内容の参考文献をご存じであれば、教えていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。(2012.2.19)

A:申し訳ありません。そのような文献を思いつきません。あまり生理生態、あるいは農学系の文献を熱心に見ていないものですから・・・。ここでいう「光合成速度」というのは飽和光下での最大光合成速度でしょうか。それともその場での光合成速度でしょうか。前者であれば、一般には投入する資源が一定の時に光合成速度を下げる必然性はありませんから、光合成速度が増加するのであれば、その葉へ投入される資源(窒素など)が増大しているか、あるいは資源の老化などによる外部への転流が抑えられているはずです。その場合、ある程度貧栄養にしないと変化を見づらいということがあるかもしれません。一方で、その場での光合成が問題なのであれば、摘除によって残した葉の光環境が改善したかどうかが重要になるでしょう。(2012.2.19)


Q:海藻の生理生態学の研究しています。10、20℃で培養した海藻の光合成速度を比べると20℃の海藻のほうが高い光合成速度を示しました。しかしchl含量の根拠として測定した窒素含有量(mg/mg)は10℃培養の海藻のほうが高い値でした。そこで質問なのですが、光合成速度が速いとその分だけchlを消費(?)、分解するというような報告例はあるのでしょうか?光合成については全くの初心者なのでわかりません。教えてください。(2012.2.9)

A:実験についての質問は、詳しい条件がわからないとなかなか答えづらいものがありますが。光合成速度というのは面積当たりですか?「chl含量の根拠として」と言っているところを見るとクロロフィルあたりではなさそうですが。また、飽和光下での速度でしょうか。さらに、速度はそれぞれ培養温度で測定したのでしょうか。それとも同じ温度で比較したのでしょうか。
 いずれにせよ、光合成速度が速いとクロロフィルを分解する、ということはありません。強光により光合成の効率が抑制される、場合によっては速度自体が低下するという現象はありますが、それでも生理的な条件でクロロフィルが減少することはほとんどないと思います。また、窒素含有量を測定するよりは、クロロフィルを直接定量する方が、実験としては簡単なはずなので、きちんとクロロフィルを定量することをお勧めします。最後に、生物学をやっているのであれば、実験材料を「海藻」と表記するのはちょっと。きちんと生物種を表記すべきでしょう。また、光合成は初心者とのことですが、自分の実験として光合成を測るのであれば、測定の前に勉強をすべきで、測定してから勉強を始めるのでは遅いように思います。(2012.2.10)


Q:なぜ「ストロマ反応」という言い方は一般的ではないのですか?(2012.2.1)

A:質問のポイントがつかみづらいので、ピント外れの回答になるかもしれませんが。おそらくストロマ反応という言葉は、カルビン回路(還元的ペントースリン酸回路)のことを指して使われているのではないかと想像します。しかし、葉緑体のストロマでは、カルビン回路以外にも窒素代謝など様々な反応が行なわれていますので、カルビン回路だけを指してストロマ反応と呼ぶのはあまり適切ではないように思います。逆に、一般的ではないにしろ、ストロマで起こるすべての反応を総称してストロマ反応というのであれば、問題はないと思いますが、そのような漠然とした代謝全体に名前をつけても、使う機会は少ないように思います。そのあたりが一般的に使われていない理由ではないでしょうか。(2012.2.1)


Q:私は金属触媒を利用してセンサを開発している会社に勤務しています。昨年末のニュースで「サイエンス」が昨年の世界の十大発明・発見として第4位に「光化学系2の心臓である水を酸素と水素に分離する触媒(クラスター)の構造の確定」(大阪市大、岡山大)と聞き大いに関心を持ちました。つまり「人工光合成」への道を切り開く可能性が大きいと聞いたのです。そこで正月休みに「光合成」について勉強してみようと思い、先生のブルーバックス「光合成のすべて(?)」を購入し読んでいる途中です。そこでこのHPを知り時々閲覧しています。本、HP共に読みやすく、わかりやすく大変ありがたいです。そこで質問ですが、・この発見はそれほど画期的なものなのでしょうか?、・光化学系1にはこのような触媒(クラスター)はないのでしょうか?、あったとすればその「構造」は確定しているのでしょうか?(2012.1.20)

A:酸素発生に働くマンガンクラスターの発見は、二つの意味で画期的であったと考えられます。一つ目は酸素発生が光合成以外では全く見られない生物現象であり、他からの情報では推測のしようがない特別なものであることです。しかも、この酸素発生によって地球環境自体が改変され、太古の嫌気的な大気が今のような酸素を2割含む大気に変わってきたわけです。もう一つは光合成系のほとんどの部分の構造は明らかになったのに対して、このマンガンクラスターは最後まで構造が明らかにならなかった部分である点です。構造という点だけからすると、光合成という砦の最後の関門が突破されたことになります。光化学系2が水を酸化して(酸素を発生し)、プラストキノンを還元する複合体であるのに対して、光化学系1はプラストシアニンを酸化してフェレドキシンを還元する複合体です。光化学系1が水を分解できる触媒作用を持つのか、という質問でしたら、答えはできません。一方、金属のクラスターで酸化還元に働く成分を持つか、という質問であれば、鉄硫黄クラスターという鉄と硫黄からなる電子伝達成分を持ちます。これがフェレドキシンを還元しています。鉄硫黄クラスターの構造は既に明らかにされています。(2012.1.20)