光合成の質問2005年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:はじめまして、よくこのホームページを参考にさせて頂きました。クロロフィル系の色素のことを調べて、前駆体のクロロフィライドなども含めてモノビニル構造とジビニル構造のクロロフィルの類似体があると知りました。ちょっとした好奇心なのですが、モノビニル構造とジビニル構造のクロロフィルの吸収スペクトルのかたちにそれぞれ特徴的な違い(ピーク波長のズレなど)はあるのでしょうか?(2005.12.29)

A:クロロフィルの生合成系では、ジビニルプロトクロロフィリドからモノビニルプロトクロロフィリドができますが、この二つでは、ほとんど吸収に変化はないようです。強いて言うと、430 nm付近の吸収も、625 nm付近の吸収も、ジビニル型の方がわずかに長波長に寄っています。少なくとも「特徴的な違い」というものはないと考えてよいのではないでしょうか。

Q:お忙しい中さっそくのご解答ありがとうございます。恐縮ですが、もう一つ質問させてください。ここの投稿に似たようなことをされていた方がいたと思いますが、HPLCによる色素分析の勉強をしています。移動相は100%メタノールのみでカラムはODSの逆相用カラムを使用しています。分析結果(クロマトグラム)を見るとよくリテンションタイム(保持時間)や吸収極大の波長が若干ずれている同じ色素(とくにchl a,chl b)のピークが確認されます。いろいろな要因が考えられるとは思いますが、主に構造が壊れた色素がサンプル中に存在するために起こったためと考えていいのでしょうか?質問が下手で申し訳ありません。(2005.12.30)

A:理想的な結果が得られなかった原因というのは、考えてわかるものではないので難しいですが、僕だったら、まずは色素の分解や変性を疑ってみると思いますから、おっしゃるように「壊れた色素が」原因であると考えるのが一番妥当かと思います。


Q:はじめて質問させていただきます。光合成とは直接関係ないのですが、現在、乾燥食品会社に勤めていまして、葉物などを乾燥させると必ずといっていいほど、かなり早い段階で退色してしまいます。以前、抹茶に関する退色防止の質問がありましたが、光の照射に限らず、乾燥食品においてクロロフィルを保護するために注意しなければならない項目には他に何があるのでしょうか?また、その対処法にはどのようなものがあるのでしょうか?回答いただけますようお願いします。(2005.12.28)

A:基本的に色素の分解は、1)光、2)湿気、3)分解酵素、の3つが関与します。光を避けることが一番重要です。乾燥食品の場合は、最終的には水分が除かれるはずですが、、同じ乾燥させるのでもなるべく短時間で乾燥させるか、凍結乾燥などを使うかがよいでしょう。また、クロロフィルの分解は、クロロフィル分解酵素によっても起こります。最初に短時間ゆでるなどして酵素を失活させると、ある程度退色を押さえることができます。日本茶では緑が残るのは、蒸すことによってクロロフィル分解酵素が失活する性であるといわれています。

Q:これは質問ということではなく、完全な回答になっていないということで、説明します。乾燥食品会社に勤めている方の質問で、葉物を乾燥するとすぐ退色するので困っているという問に対する回答で、退色する要因に1)光、2)湿度、3)分解酵素 の3つを挙げていますが、一番大事な要因が抜けています。それは酸素の問題です。現在の食品業界において、乾燥食品(特に緑色のフリーズドライ品)、飲料(特に緑茶、緑色の野菜飲料)、等々挙げたらきりがありませかんが、これらの退色防止として一番重要な要因は酸素濃度をいかに低くするかということに、業界挙げて取り組んでいます。例えば、実際に乾燥品の退色防止製品として売られているのがエージレスです(他にもあります)。飲料業界では緑茶や野菜飲料では缶の蓋をするときに窒素置換を行っております。ある食品会社では1つの製造ライン全体を窒素で満たしてしまおうという取り組みさえしています。(2006.9.1)

A:ご意見ありがとうございます。確かに、酸素は物質の劣化に大きな影響を与えますが、これは、色素の劣化に限らないはずです。もし、光があたらず、クロロフィルの分解酵素も働かない条件で、クロロフィルが酸素によって退色したとすれば、その他の脂質もかなり酸化されていることが予想されます。とすれば、単に見た目の退色といった問題ではなく、食品の品質管理として問題があるように思います。
 光合成質問箱に寄せられたものである以上、質問は、食品の他の成分には影響がないが、光合成色素であるクロロフィルが退色してしまった、という問題であり、多くの成分が軒並み酸化してしまうような状況の質問ではないと考えられます。
 色素の特殊性は、光の吸収にあり、従って、もし、色素だけが分解を受けたのであれば、まず疑うのは光です。また、クロロフィルなどには特有の分解酵素がありますから、その存在と、その酵素の作用を促進する水分は、クロロフィルの分解を促進します。それ以外の酸素などの影響は、色素に特有のものではなく、色を持たない脂質などにも同様の影響を与えると考えられます。(2006.9.1)


Q:はじめまして。実験でクロロフィルa、bのスペクトルを測定したところ長波長側においてaの方がbよりも大きかったのですがこれはなぜなのでしょうか。短波長側ではbの方が大きいので長波長側でも同じようになると思ったのですが。(2005.12.27)

A:クロロフィルは主に青い光(短波長側)と赤い光(長波長側)を吸収しますが、この2つの吸収帯における吸収の大きさの相対的な比は、その構造によって変化します。例えば、同じクロロフィルでもフィトールというしっぽのような構造を持たないクロロフィルcでは、長波長側の吸収が非常に小さくなりますし、一方で、クロロフィルdの場合は、むしろ長波長側の吸収の方が大きくなります。クロロフィルaとbの場合は、これらの中間ですが、2つを比べると、確かにクロロフィルbの方が、短波長の吸収が相対的に大きいことがわかります。
 「なぜ」という質問に対しては、分子構造が違うから、というのが答えになってしまいます。有機化学の専門家であれば、構造を比べて吸収を予測できるのかも知れませんが、光合成研究者として言えるのは、「構造が異なると吸収スペクトルの形も変わります」程度です・・・


Q:はじめまして。今大学の研究でソーラーについて調べているのですが、光をエネルギーに変える植物の仕組みを応用することでより環境によいものができないでしょうか。たとえば植物の形態のようにすることで空気と光が循環する気がしますし、空気を清浄化することもできるような気がします。そのようなことは研究されているでしょうか?ぜひ教えてください。(2005.12.27)

A:太陽電池のパネルと植物の葉は、どちらも光エネルギー変換の装置であるわけですが、形は違います。太陽電池パネルは通常、ただの平面なのに対して、植物の葉は細かく分かれて茎の上に空間的に配置されます。植物の光合成は、極めて効率がよいので、では、太陽電池のパネルを植物の形にすればよいか、というと必ずしもそうではありません。このような場合は、「なぜ」、植物が茎を立ち上げるかを考えることが重要です。
 もし太陽電池のように地面に平らな葉っぱを広げる植物がいたとしたら、自然界では、その上に別の植物が葉を広げてしまうでしょう。そうすると下になった植物は光を得られずに競争に負けてしまいます。つまり、他個体との光をめぐる競争というのが、植物が茎を立ち上げる一つの要因なのです。通常太陽電池のパネルは人間が管理しますから、その上を何かが覆ってしまうということはありません。ですから、平らで構わないわけです。
 つまり、植物は植物なりの損得があって今の形に進化したわけで、その形をそのまま人間に作ったものに当てはめても、うまくいかないことが多いでしょう。一方で、本質的なところでは、共通のものもあるでしょうから、そのような点においては植物の形をまねることから人間が学べることはあるかも知れません。しかし、一般に工学系の人で、植物の損得に詳しい人は少ないので、そのような研究例は数が限られるのではないかと思います。


Q:はじめて質問させていただきます。赤色光と緑色光をそれぞれ葉に当てたときの光光合成曲線の違いを教えてください。光合成の最大値は違ってくるのでしょうか。(2005.12.20)

A:メールで質問の意図を問い合わせたのですが、アドレスが存在しないようでしたので、ここに書いておきます。
 光光合成曲線の縦軸は光合成速度、横軸は光の強さですよね。通常は、当てた光の強さを横軸に取りますが、赤色光と緑色光ではクロロフィルの吸収が違いますよね。それとも吸収された光あたりではなく、当てた光あたりでの話でしょうか?赤色光と緑色光では光の波長が違いますが、横軸はどのような単位にするのでしょうか?そのあたりを教えて頂けると、もしくは、質問の意図を教えて頂くと、答えられるかと思います。

Q:赤色光と緑色光をそれぞれ同じ強さの光を葉に当てながら光光合成曲線を描いていくとします(当てた光あたりでの話と思ってください)。おそらく補償点は緑色光を当てたときの方が大きくなる(グラフの傾きは小さくなる)と思われるのですが、光飽和点以上の赤色光を当てたときと、光飽和点以上の緑色光を当てたときでは光合成速度の最大値に違いが見られるのでしょうか?(2005.12.21)

A:今度はわかりました。原理的には光合成速度の最大値には差が見られないはずです。クロロフィルは、主に赤い領域と青い領域の光を吸収しますが、緑色の領域の吸収も0ではありません。色素が光に励起されて励起状態になれば、その状態は、どのような波長の光によって励起されたかによらず一定です。従って、充分な強さの光を当てるれば、何色の光でも同じだけの反応が起こります。一方で、植物はクロロフィル以外の色素も含むので、あまりに強い光を当てると、クロロフィル以外の色素に吸収されることによって副作用が生じる可能性はあります。ただ、一般的には緑色の領域の光を吸収する色素は高等植物には少ないので、実際にはさほど気にする必要はないかと思います。


Q:植物は主に葉・根で呼吸すると習いましたが、肺やエラが無いのにどのように呼吸するのかそのメカニズムを易しく教えてください。空気から直接に酸素を取り出す機能があるのですか?根の周りは土中の空気と水しかありませんどのように呼吸するのでしょうか?実際に呼吸の能力(量・速さなど)イメージがあれば教えてください。(2005.12.13)

A:植物も呼吸をしますが、その速度は、動物に比べると(比べ方にもよりますが)かなり低いので、動物のように、呼吸に特化した器官を持っていなくても、自然な拡散によって酸素と二酸化炭素を交換することができます。
 その意味では、植物の場合、呼吸のおそらく数十倍の速度で光合成を行なっていますが、その光合成によって生じる酸素も、細胞内外を自然に拡散していくことによって植物体外に出ていきます。
 根から酸素を吸収する場合には、根の周りの空気から拡散によって取り込むことが多いようです。周りが水だと、水に溶けている酸素量は、空気中の酸素濃度より圧倒的に低いので、呼吸がしにくくなります。よく「鉢植えを腰水にするとよくない」といいますが、これは、根が水に覆われると呼吸が阻害されて植物にとってはよくないことによります。
 光合成の速度については、過去の質問箱にありますので、呼吸の速度は、その数十分の一と考えて頂ければ、当たらずといえども遠からず、ということになると思います。


Q:おはようございます。島根県出雲市で農業資材や肥料を販売しております。昨年まで島根県では炭酸ガス発生器に補助金がついていました。 このCO2削減の動きの中で・・・。さて、炭酸ガス発生器のついていないブドウ畑でも、堆肥をしっかり入れている所はそれ以上に収量も上がり、暖房開始時期を早めても樹勢の低下もありません。 不思議に思いいろいろ調べたところ 堆肥の微生物が呼吸しそこから出るCO2が水に溶け、H2CO3(炭酸水)で植物に吸収され、光合成に使われているということを聞きました。 そう考えると、実際の農業の現象と整合するするように思えます。 最大で光合成で利用されるCO2の何割が根から吸収されるのでしょうか? 教えてください。(2005.12.13)

A:空気中の二酸化炭素は葉の気孔を通して取り入れられますが、実験事実として、気孔が閉鎖してしまうと光合成はほとんど止まってしまいます。また、空気中の二酸化炭素濃度を実験的に下げた時も光合成が止まります。つまり、光合成に使われる二酸化炭素のほとんどは葉の気孔から取り入れられている、ということになります。これから考えると、ねから二酸化炭素が吸収されている可能性はあまりないように思います。
 一方で堆肥を充分に入れると、根の発達はよくなるはずです。その場合、根から充分に水分が供給できれば、多少乾燥しても、枝葉に水をあげることができます。水不足になると葉から水が失われるのを避けようと気孔が閉じて光合成が低下しますが、根が充分に発達していれば、そのような光合成の低下は避けられるでしょう。堆肥の効果は、そのようにしても説明できるかと思います。


Q:授業で薄層クロマトグラフィにより光合成色素の同定を行いました。その際求めたRf値はテキストに掲載されていた数値と異なりました。数値が不一致である原因としては「シリカゲルによる脱水が足りなかった」「展開溶媒が異なる」など実験条件が異なる、というものが自分としては考えられましたがあってますでしょうか?また他に数値のずれの原因があれば教えていただきたいと思います。(2005.12.10)

A:はい。考え方は合っていると思います。あとは、薄層の担体の差、展開槽の気密性の差などでしょうか。特に展開溶媒として混合した有機溶媒を用いていた場合、展開槽の気密性が悪いと沸点の低いの有機溶媒だけが先に蒸発してしまうことなどもあるようです。

Q:光合成の色素を薄層クロマログラフィで同定する過程で、Rf値が異なるものがいくつかあらわれました。その際同じ色でほぼ同じRf値もものが数個見られ光合成色素の同定に困りました。先生に質問したところ、同じ色素だというのです。テーリングで色素が伸びたように見えるのはまだ水による影響だと理解はできますが、なぜ離れた場所に同一の色素が見られたのでしょうか?その原因をおしえていただきたいと思います。(2005.12.10)

A:これは、ほぼ同じRf値だけども、完全には同じでなくて別のスポットになる色素が存在する、ということですね。実際のデータを見ないと難しいですが、完全に別のスポットになるようだと、なぜ「同じ色素」といえるのかがよくわかりません。ただ、「同じ色素」から由来している、ということはあるかも知れません。古い材料などを使うと、フェオフィチンのスポットが見える場合がありますが、本来植物体の中にあるフェオフィチンの量はクロロフィル量の数百分の一で、ほとんどスポットは見えないはずです。しかし、特に酸性条件ではクロロフィルはフェオフィチンに変性しやすいので、そのような場合には、フェオフィチンのスポットが出現します。同様に、もとは同じ色素であっても、部分的に修飾もしくは分解を受けて、複数のスポットに分かれる可能性はあります。


Q:はじめまして,現在アオコ処理に関する研究を行っているものです.よろしくお願いします.
 私どもは現在,加圧によりアオコが処理できないかと考えており実験等を行っています.アオコが光合成を行うことは知られておりクロロフィル量にて定量化などもされています.先日,加圧実験を行ったところ,アオコは確実に沈降し(浮遊性がなくなった?細胞が破壊された?詳しくはは不明),色が濃緑色に変色しました.目視で十分に確認できるほどの変色です.変色の原因についてクロロフィル(葉緑素)の変化が考えられるのですが,どのように考えられるでしょうか?わかりましたら教えてください.よろしくお願いいたします.(2005.12.8)

A:もし、何かを明らかにするために実験としてやっていらっしゃるならば、原因について「考える」よりも、原因を次の実験によって明らかにするべきです。この場合、色が変わるのですから、細胞の光学特性、もしくは色素の状態に変化が生じたことは明らかです。光学特性や色素の状態は、適切な分光器を使えばすぐにわかります。論より証拠、です。
 中学や高校生の実験の場合は、実験した結果によって再度実験をする、ということが難しい場合が多いので「ともかく考えてみる」というのも大事なのですが、研究としてやっているのであれば、まず自分で確かめるのが王道です。


Q:子供と植物の成長と、光の色の実験をしたいと思っています。手始めに、貝割れ大根で、いろいろな色のセロファンや、UVカットシートなどをかけて違いを見てみたいと思っています。波長のことはよく知らないのですが、違いは出るのでしょうか。何か実験しやすい植物や、光の違いによる成長の実験をするためのアイデアはないでしょうか。
 ちなみに赤いセロファンが赤く見えるのは赤い色が反射しているからですよね。でも、光が通りぬけたあと、壁に映っている色も赤なのは、なぜ?よくわからなくなってしまいました。(2005.12.2)

A:うまくやれば、色セロファンでも、生育に違いは出ると思います。ただ、正確に言うと、色セロファンをかけたら、色が変わるだけでなく、光の強さも変わります。ですから、本当に色のせいなのか、それとも強さが違うせいなのかを確かめるためには、光の強さをそろえる実験が必要で、そこまで考えると案外大変です。でも、まずはやってご覧になってはいかがでしょうか。実験には試行錯誤がつきもので、失敗したら、その理由を考えて、修正して実験する、というプロセスが非常に大切です。一回限りの実験は、本当の実験ではありません。植物は、カイワレダイコンでも何でも、栽培が楽で、すぐに育つものなら何でも大丈夫です。育てやすいものであることがなにより重要でしょう。
 色については、反射を先に考えると理解できません。まず吸収を考えて下さい。実際には、赤いセロファンは、赤以外の領域の光を吸収しているのです。吸収されなかった光(つまり赤い光)は反射するか透過するかですから、反射光でも透過光でも赤く見えるのです。
 植物の葉は緑色に見えますが、これは、葉緑素(クロロフィル)が緑色以外の光を吸収するせいです。植物=緑、というイメージがあるかも知れませんが、植物は緑色の光だけ使うことがしにくいのです。つまり、植物が使えなかった(吸収しなかった)緑色の光が人間の目に入るので、葉は緑色に見えることになります。


Q:理想の状態での光合成が作り出せるエネルギーの量を、おおよそでいいので教えてください。(2005.12.2)

A:質問の意味がどうもわかりません。光合成は光が当たっている間、ずっとできるので、時間がたてばたつほど変換することのできるエネルギー量は増えていきます。小さい植物と大きい植物では、もちろん光合成の量が違います。また、どのような単位でエネルギーを示して欲しいのでしょうか?過去の質問をご覧になって、それを参考に、もう少し具体的な質問をお願いします。

Q:質問が下手ですいません。光合成をする上で理想的な環境で、葉1平方メートルで1日に作られるエネルギーの量を教えてください。(2005.12.3)

A:極めておおざっぱに言って 数十 kcal ぐらいでしょうか。といっても、実は、どのレベルまでを考えるのかによって大きく違ってしまいます。光合成は、エネルギーを作るのではなく、光エネルギーの形を変えるのです。まず、電子伝達によって電気化学的なエネルギーになり、それがATPの持つエネルギーになります。次いでATPのエネルギーによって糖が作られます。そして、その変換の各ステップで損失があるので、使えるエネルギーはだんだん減っていきます。数十 kcal という値は、葉1平方メートルで1日に 10-20 g の糖を作れるのではないか、という概算から求めた値です。


Q:クロロフィルaとクロロフィルbは構造が似ているにもかかわらず、薄層クロマトグラフィーによって分離できる理由は何ですか。実験では抽出溶媒はメタノール:アセトン=1:1、展開液は石油エーテル:アセトン=7:3で、シリカゲルプレートを使用して行いました。勝手で申し訳ないのですが、早めの回答をお願いいたします。(2005.12.1)

A:「よくある質問のページ」を見ましたか?過去の質問箱に同じ内容の質問があるので、そちらをご覧下さい。


Q:はじめまして。よろしくお願いします。酸素発生型光合成は、原核生物にはみられないのですか?それと、菌類は酸素発生型光合成は行わず、生涯を通じて従属栄養の生活をするのでしょうか?

A:原核生物でも、シアノバクテリア(ラン色細菌)と原核緑藻(プロクロロンなど)は酸素発生型の光合成をします。菌類で光合成をするものは知りませんね。見つけたら大発見でしょう。


Q:クロロフィルは光が当たると中心のMgが離脱するというのを聞いたのですが、その光は紫外線、それとも可視光線といったものでしょうか。特定の波長、紫外線強度などがあるのならば教えてください。お願いします。(2005.11.25)

A:ご存じのように植物はクロロフィルを使って光のエネルギーを集めています。ですから、少なくとも植物体内では、光が当たるたびにMgが離脱する、などということはありません。そのようなことがあったら、そもそも植物は生きていけません。一般に、色素は光が当たっている時の方が不安定なことが多いので、単離したクロロフィルなどに光を当てれば、分解が促進されることはあると思います。ただ、そのような分解は、クロロフィルが水溶液に懸濁してあるか、有機溶媒に溶解してあるか、pHが高いのか低いのか、条件によって様々に変化して一概には言えないと思います。

Q:さっそくのご回答ありがとうございます。すいません、初歩的な質問が続きますが、植物が死んでしまうとき、退色が起こっているように思うのですが、クロロフィルの分解が起こっていると考えてよいのでしょうか?(2005.11.26)

A:緑の色がなくなれば、その時にはクロロフィルは分解されていると考えてよいと思います。秋になって落葉樹の葉が落ちる時や、日があたらなくなった下の葉が枯れる時などは、クロロフィル分解酵素によって分解されていきます。これは、生物学的な現象ですが、刈った草の色がなくなっていくなどというのは、生物学的な現象ではありませんから、どのように分解されていくのかは条件によると思います。

Q:わかりやすいご返事ありがとうございます。質問ばかりして本当に申し訳ないのですがお願いします。あと1つお願いします。今、私は実験でイグサの退色について調べているのですが、調べても分からないことがあります。イグサを夜露にさらして、天日干しをするという作業を2〜3週間繰り返すことで緑色が退色して飴色になるといいます。私も実際にこの作業をしてみて、退色を確認しました。また、夜露にさらすという作業をしなければ、天日干しをしても大きな退色が見られないということがわかりました。この作業でクロロフィルを壊しているのだと思うですが、どのような機構で退色しているのかわかりません。どうかアドバイスをいただけないでしょうか。(2005.11.27)

A:いろいろな化学反応は、多くの場合、水分の存在下で起こります。ですから、乾燥状態では、成分の変化は遅くなります。これは、お菓子や乾物の保存の際に乾燥剤を入れることからもわかりますよね。おっしゃるようなイグサの退色の場合、天日干しだけですと、組織が乾燥して、色素の分解反応が抑えられる可能性があります。夜露にあてると水分が供給されて、分解反応が進むようになる、というのが一つの解釈かと思います。

Q:毎回、ご解答ありがとうございます。以前質問させていただいたときに、光ではクロロフィルのMgの分離は起きないということでした。今回の場合、いぐさのクロロフィルの分解反応は水と光に起因していると思うのですが、刈り取られたいぐさの場合、他の植物とは別と考えるべきでしょうか?本当に何度も質問してすいません。(2005.11.27)

A:最初にお答えしたのは、「少なくとも植物体内では」光が当たるたびにMgが離脱するようなことはない、ということです。木の机を見て植物だ、と思う人もいるかも知れませんが、普通は、というか少なくとも植物学者にとって、「植物」というのは、生きている植物を指します。天日干しにしたイグサは、残念ながら植物学の範疇に入りません。(ただ、農学だと畜産で干し草などを扱いますから、少し違うかも知れません)
 また、Mgの解離というのは、クロロフィルの分解の1つの形に過ぎません。たとえ、クロロフィルが分解していたとしても、Mgの解離によるものかどうかはわかりません。


Q:はじめて質問させていただきます。過去の質問等でクロロフィルのMgが外れてフェオフィチンになる事はわかったのですが、このフェオフィチンに変わって褐色になった葉をMg溶液、例えば硫酸マグネシウム溶液に浸けておくと、またMgが戻ったりするのでしょうか?料理本などで塩茹ですると緑色が鮮やかになると有りますが、これはクロロフィルのMgがNaに置き換わり安定化したと聞いたことがあります。クロロフィルのMgは簡単に他の金属イオンなどに置き換わる物なのでしょうか?もし置き換わるとすれば、熱などに対する安定性は上がるのでしょうか?ご返答いただければ幸いです。(2005.11.22)

A:クロロフィルの金属の置き換わりは、簡単かどうかは別としてある程度は進行します。ゆでただけでNaに置き換わるようにはあまり思えませんが、中心金属を銅に置き換えた銅ポルフィリンは作ることが可能で、普通のクロロフィルよりも化学的に安定になるようです。また、鉱山の廃液に生息していて重金属の濃度が高い環境にいる光合成細菌の一種は、中心金属が亜鉛に置き換わったバクテリオクロロフィルを持つことが知られています。

Q:早速、ご返答ありがとうございます。ご回答に対して、恐縮ですが初歩的な質問をさせていただきます。クロロフィルの金属の置き換えはある程度は進行するとのお話でしたが、やはりそれはイオン化傾向に依存するのでしょうか?銅ポルフィリンが安定なのはHイオンよりイオン化傾向が低く、褐色になりづらいと言うことになるのでしょうか?それとも構造的に酵素的な物に強くなると言うことでしょうか?中学レベルの質問で申し訳ありませんが、ご返答いただければ幸いです。(2005.11.24)

A:光合成の質問ではなくて、化学の質問なので専門ではありませんがわかる範囲で。イオン化傾向だけでは少なくとも説明がつきません。ポルフィリンとその中心金属との結合はそもそも共有結合ではなくて配位結合だと思います。金属の周りをポルフィリンが取り囲むことになるので、金属のイオン半径などが大きく効くのではないかと思います。


Q:小学校理科の学習で,光合成によって生産されたデンプンの貯蔵を扱おうと思っています。曇りの日の午後3時頃,セイヨウタンポポを根ごと掘り起こし,葉をたたき出し法で調べたらデンプンが検出されました。同じ個体の根を乳鉢ですり,水を加えてガーゼでこし,その液をヨウ素液と糖検出紙で調べてみましたが,デンプンも糖も検出されませんでした。タンポポの葉でできたデンプンはどこに貯蔵されるのですか?
 また,葉の落ちてしまった落葉樹の冬場の養分は,どこに蓄えられているのですか?お分かりになるようでしたらお教えください。(2005.11.16)

A:僕自身は、タンポポの栄養貯蔵について具体的には知らないので、どのようなことが考えられるか、ということでお許し下さい。糖検出紙というのは、おそらく糖尿病を尿で検出するためのものですよね。これは、確か、グルコースを検出するものだったはずです。ですから、植物の一般的な貯蔵形態であるショ糖にもデンプンにも反応しません。従って、ショ糖として根に貯めているのであれば、おやりになった実験結果を説明できますね。タンポポの場合は、ロゼットで冬を越しますから、葉に貯蔵している、という可能性も否定できませんが、一般的には根に貯蔵する方が普通かと思います。
 冬場の養分の貯蔵は、根が一般的ですが、落葉樹、特に大きな木の場合は、枝や幹も養分の貯蔵場所になります。幹は、中心にある道管の部分は死んだ細胞で養分を貯蔵できませんが、周辺の部分は生きている細胞で、養分を貯めることができます。


Q:はじめまして。カンキツの病気を研究している者です。この病気は葉の師部に局在する細菌によって引き起こされますが、感染するとなぜか罹病葉内にデンプンが多量に(異常に)蓄積することが確認されています。罹病葉は最終的に黄化して枯れていきます。その現象を解明したいのですが、考えられる要因はなんでしょうか?葉内でのデンプンからショ糖への糖化で何か阻害が起こっているのでしょうか?(2005.11.15)

A:師部がどのような働きをしているかはご存じでしょうか。成熟葉から他の器官への有機物の転流は師部を通して起こります。師部に異常があれば、転流ができなくなって葉にデンプンがたまるのは非常に当然のような気がします。光合成系は合成した有機物からのフィードバック制御を受けていますから、葉に有機物がたまれば光合成関連遺伝子の発現は抑えられ葉は黄化します。こちらも、非常によくあるケースのように思います。


Q:今、光合成の論文をまとめているのですが、気孔伝導度、葉肉伝導度、水利用効率という言葉が出てきました。説明は一応書いてあったのですが、よくわかりません。わかりやすく教えてもらえないでしょうか。(2005.11.15)

A:できれば、その説明が「どのように」わからないかを書いて頂けるとその部分を答えることができます。そうでないと、結局その「一応書いてあった」説明と同じことを繰り返すことになりかねませんよね。
 気孔伝導度と葉肉伝導度は、光合成で使われる二酸化炭素が大気中から葉の中の葉緑体まで移動する際の移動しやすさです。二酸化炭素は大気中から気孔を通って細胞内間隙に入り、そこから細胞質を通って葉緑体の中に入ります。気孔を通る際の通りやすさが気孔伝導度、細胞質を通って葉緑体の中に入る際の通りやすさが葉肉伝導度です。
 水利用効率は、おおざっぱに言えば蒸散と光合成の比です。植物は蒸散で水を失い、光合成で二酸化炭素を固定しますが、これはどちらも気孔を通して起こります。その際に、一定の光合成をするために、どの程度蒸散で水を失うかが水利用効率です。

Q:先日は回答ありがとうございました。具体的にどこがわからなかったかを書きます。論文での説明では、気孔伝導度とは水蒸気に対する気孔抵抗の逆数である、葉肉伝導度とは葉肉抵抗の逆数であると書かれていました。逆数と言われてもいまいち想像ができませんし、意味もよくわかりません。これについてもう少し詳しく教えてもらえないでしょうか。(2005.11.16)

A:なるほど、わからなかったのは数学の部分ですか。ある数があった時、1をその数で割った値を逆数といいます。例えば3の逆数は1/3ですし、5の逆数は1/5です。逆に、1/5の逆数は5になります。ですから、ある数が増えるとその逆数は減ります。伝導度というのは、どれだけ通りやすいか、という値で、抵抗は、どれだけ通りにくいか、という値です。当然、伝導度が上がれば抵抗は下がりますし、伝導度が下がれば抵抗は上がります。つまり、伝導度と抵抗は、逆数の関係になっているわけです。別の言い方をすると、伝導度と抵抗をかけ算すると1になる、とも言えます。これでわかりましたか?


Q:度々お世話になります。先日は初歩的な質問に丁寧に答えて頂き誠にありがとうございました。おかげで実験が進めやすくなりました。今回は光合成の反応経路の中の循環型電子伝達系についてお聞きしたく投稿させて頂きました。非循環型電子伝達系の経路はなんとなく理解できたのですが、循環型の電子伝達経路がどうしても理解できません。光化学系IにおいてP700が励起され電子が伝達されていき、最終的にフェレドキシンからフェレドキシン-NADP+レダクターゼのFADに電子が渡されてNADP+からNADPH2+ができるというのはなんとなく理解できたのですが、では循環型に利用される電子はどこから引っ張ってくるのでしょうか?NADPH2+の出来上がり方にどのように電子が関与しているかがあまりよくわかっていないので(電子はNADPH2+の合成によりその物質の中に取り込まれ反応系から出て行ってしまう、と考えてしまうので)循環型も理解できないのかなと思っています。ですのでお手数ですが、FADに渡った後電子がどうなるのか、また循環型伝達系の電子の流れをわかりやすく教えていただけないでしょうか?(2005.11.14)

A:循環型電子伝達の場合は、フェレドキシン、あるいはNADPHから再び系Iと系IIの間にあるプラストキノンに戻ります(=プラストキノンを還元します)。ですから、NADPHのあたりまでは一緒で、NADPHの還元力が炭酸固定に使われる代わりに、また電子伝達系に戻ってきてしまうわけです。
 NADP+が還元されるのは2電子反応です。電子をe-と書いた場合、NADP++2e-+H+→NADPH となります。電子はマイナスの電荷を持っていますが、NADP+とH+(プロトン)がプラスの電荷を持っているので、2個の電子と釣り合ってNADPHは電荷を持ちません。正確に言うと、NADPH2あるいはNADPH2+というのは間違いです。上記の反応は可逆反応なので、NADPHがあれば、これから電子を(いわば)作ることができます。これにより、炭酸固定反応において二酸化炭素を還元することにも使えますし、プラストキノンを還元することもできます。


Q:先日は明快な回答をありがとうございました。前回の回答を受けてまた疑問が出てきてしまったので投稿させて頂きました。①光合成光化学系IIの活性を測定する方法には、蛍光測定以外にどんな方法があるのでしょうか?代表的な測定方法などあるのでしょうか?一通り調べてみたのですが、私にはわかりませんでした。やはりその反応系の物質を定量したり酸化還元反応を利用したりなど、手法を自分なりに考えなくてはいけないのでしょうか?②前回のお答えでクロロフィルの合成には光が必要であるとわかりましたが、実際にどれくらいの照度の光が必要なのでしょうか?(アサガオの場合で教えて頂けたら幸いです)。またそのとき要求される照度が、その植物の光合成における補償点となるのでしょうか?③また光合成とは少し離れるかもしれませんが、植物の伸長成長(花芽形成のステージを除く)・生育保持(できるだけ枯死・落葉を防ぐという意味)のために、暗期は必ず必要なのでしょうか?(2005.11.9)

A:光化学系IIの活性の測定となると、酸素電極が一番ポピュラーです。
 クロロフィルの合成に必要な最低限の光の明るさの具体的な数値はぱっとわかりませんが、光合成に必要な光の明るさに比べるとかなり弱いはずです。光合成では補償点に届くかどうかといった10 umol m-2 s-1 程度の光でも充分だと思います。
 多くの実験室では、植物を連続光で育てています。つまり、多くの植物では、その伸長成長や生育に暗期は必要ないことになります。


Q:クロロフィルaとbでの薬理作用(動物や人体、もしくは人体への経口投与した場合)について知りたいのですが、教えていただけないでしょうか?もしくは、現在も未だに解明されていないのでしょうか?もし、文献など知っていれば、文献の題名や著者も教えてください。質問など長くなりましたが、お願いいたします。(2005.11.8)

A:質問は、過去の「よくある質問のページ」を見てからして頂けますか?具体的には過去の質問を見て、それでわからない部分をご質問下さい。


Q:はじめまして。光合成で青色が最も葉に吸収され、次いで赤色、緑色が葉に吸収されると「ふしぎの植物学」の本に書いてあったのですが、人工的に赤色、青色、緑色を作り出した時にかかるコストを考慮に入れた場合に、どの光が最もエネルギー効率が良いのですか?教えて下さい。参考になる論文等をご存知でしたら、ぜひ教えていただきたいです。(2005.11.8)

A:クロロフィルが光を吸収する過程は、純粋に物理的な過程で、照射光強度と吸収スペクトルによって吸収されるエネルギー量は決まります。クロロフィルの吸収スペクトルを見ると赤と青の部分が高く、緑色の部分は低いので、これは除外できるでしょう。赤と青を比べると、やや青の方が吸収が大きいのですが、そんなに大きくは変わりません。あとは、発光効率がどちらが高いかでしょう。そちらのコストは、僕の専門外です。


Q:初めて投稿させて頂きます。早速質問なのですが、①光化学系IIの活性測定法はクロロフィル蛍光測定を用いるのがベストなのでしょうか?蛍光測定よりもっと簡単に測定できる方法はないものか考えているのですが一向に思い浮かびません。②光合成からは少しは離れてしまうかもしれませんが、植物が伸張成長する場合(芽が出て本葉が出、上に向かって伸びていく過程)、光合成を除いて光を必要とする場合はあるのでしょうか?極端な例え話で言うと、植物が細胞分裂を増えていく過程で紡錘体の形成に光が関係している、といった具合に、ブドウ糖を作りそれを使って成長するその手段(つまり光合成)に関わっているのみならず、植物の伸張(成長)に別の方法で深く関わっている、そんな場合はあるのでしょうか?(2005.11.8)

A:最初のご質問ですが、「ベスト」かどうかは別として、測定機器さえ持っていれば、「一番簡単」なことは確かだと思います。他の方法では、光学ファイバーを押しつけてスイッチを入れるだけ、というわけにはいきません。
 植物の成長の仕方が光のあるなしによって左右されることは、もやしを見ればわかりますよね。ただ、細胞の分裂や、伸長自体は、暗所でも起こります。そうでなければ根は成長できませんから。光合成そのもの以外ということであれば、光合成関連遺伝子の発現や、光合成色素の合成は、もちろん光によって制御されています。クロロフィルの合成などは、光を必要とするステップがあるので、多くの被子植物では暗所ではクロロフィルを合成することはできません。


Q:始めまして。質問ですが、キサントフィルサイクルは光化学系の中のどこで働いているのですか。pH勾配が必要と習いました。勾配ができるのは光化学系が進んでからだと思うので、光化学系I周辺で働いているのでしょうか。(2005.11.8)

A:キサントフィルサイクルは、光化学系IIのアンテナであるLHCII の中で働いています。「勾配ができるのは光化学系が進んでから」とありますが、別に電子が光化学系を進んでいって、光化学系I にたどりつくと、pH勾配ができる、というわけではありません。二つの光化学系を通して流れる電子伝達全体と共役してプロトンが運ばれてpHの勾配ができるのです。

Q:早速返答していただきありがとうございました。勾配の話はわかりました。しかし、もし光化学系のどこかが阻害されてしまい、電子伝達が進まなくなった場合、勾配が生まれずキサントフィルサイクルは働かなくなりそうですが、実際は働くのですよね。なぜなのでしょうか。(2005.11.8)

A:「実際は働く」という例を僕は知りません。電子伝達が止まった状態で、キサントフィルサイクルが動いている、という話はあまり聞きませんが。脱エポキシ化の反応にはチラコイド膜内腔の酸性化が必要なので、やはりプロトン濃度勾配無しではキサントフィルサイクルは機能しないと思います。

Q:お返事ありがとうございました。私がキサントフィルを習ったのは強光阻害の話ででした。そこで、阻害を受けると電子伝達が滞ると言っていました。そして、その時キサントフィルサイクルが働くということだったので、蛋白も破壊され、電子伝達が滞るのにpH勾配はできるのかなと思ったのです。もちろんキサントフィルサイクルが働くのですから、勾配ができるとは思いますが、蛋白の破壊などにより電子伝達が滞っていたら、勾配ができない、もしくは出来にくいのではと思うのですが。(2005.11.8)

A:おそらく、やさしく説明しようとして「電子伝達が滞る」というようなやや文学的な表現を使ったことによって、かえって誤解を招いたように思います。
 光が弱いうちは光合成速度は光強度に比例しますが、光がどんどん強くなっていくと、光化学系で電子を受け取る成分が還元されてきて、それ以上光合成速度が上がらなくなるため、光合成の速度は光強度に対して飽和カーブを描きます。これは、通常の酵素反応で基質の濃度を上げた時と同じです。「電子を受け取る成分が還元され」という部分を「電子伝達が滞る」と表現したのではないかと思います。その場合、光強度を上げてもそれ以上光合成速度が上がらない、と言う意味では、電子が滞っているわけですが、酵素反応の飽和カーブを考えればわかるように、別に速度が遅くなっているわけではありません。従って、プロトンの濃度勾配も充分にできていると思います。
 一方で、光合成が飽和するような強光を連続してあてていると、今度は、本当に光化学系が損傷を受けて、光合成の速度が下がり始める場合もあります。その極端な場合に、光合成速度がほぼ0になる場合も考えられますが、その時は、プロトン濃度勾配もできなくなって、キサントフィルサイクルも働かなくなる可能性があるかと思います。


Q:透過する光を再び反射させて葉に吸収させることで光合成に役立つように出来ないかと考えているのですが
①葉の大きさや厚さを変える
②間引きしてみる
③葉の老化を遅らせる
してみたらどうかと僕は考えてみたのですが、実際には可能なのですか?それによって光合成を活発にさせることはできませんか。教えて下さい。(2005.11.5)

A:「透過する光」というのは「葉を透過した光」という意味ですか、それとも「群落を透過した光」という意味ですか?「葉の厚みを変える」というのは前者を想定しているようですし、「大きさを変える」というのは後者を想定しているように思うのですが。前者の場合、なぜ光が透過したか考えてみてください。葉は光を吸収する色素としてクロロフィルを持っています。クロロフィルは青と赤の光を吸収できますが、緑色の光はあまり吸収できず透過させてしまいます。だから葉っぱは緑色に見えるわけですね。その光を反射させても、緑色の光がクロロフィルに吸収されづらいことには変わりはありません。
 また、葉は、光を再び反射させる、ということを葉の中で行なっています。椿の葉などを見ると、表は濃い緑ですが、裏は白っぽいですよね。つまり、これは、葉の裏側に光を散乱させる構造を作って、透過してきた光をもう一度葉の表側に戻しているとも言えます。この場合、上に述べたように、緑色の光は戻しても利用されづらいですが、少しは足しになる、ということでしょう。
 世の中には、ある色の光を吸収して、別にいろの光を放出するという蛍光物質というものがあります。もし、本当に光合成速度を上げたいのでしたら、緑色の光を吸収して赤い光を放出する蛍光物質を葉の裏に塗って、さらにアルミホイルか何かを貼り付けて光を反射させてやれば、かなりの光を(理論的には)有効に利用できるようにはなると思います。
 群落を透過した光のことを意味している場合は、上の方の葉を間引きしてやれば、もちろん下の方の葉の光合成は上昇します。しかし、全体で見るとやはり損をするでしょうね。野生の植物は、なるべく稼ぎが多くなるように葉をつけているはずですから。


Q:光合成が酸素を作り出すことを実験によって子どもたちに示したいと思っています。鉢植えの植物にビニール袋をかけて簡易酸素計で測定したいと考えています。必ずしも十分な日光に恵まれない場合もありうると思うのですが、蛍光灯の光を利用してこのような実験を行った場合、数時間程度で酸素量の増加を確認することは可能でしょうか。このような実験を行う場合のコツもあったら教えてください。よろしくお願いします。(2005.11.4)

A:僕自身は、簡易酸素計を利用したことがないので、しかとしたお答えはできないのですが、難しいかなあ、という気がします。空気中の酸素濃度は21%ありますが、二酸化炭素濃度は0.04%以下です。つまり、光合成ですべての二酸化炭素を酸素に変えても、理論的には酸素濃度は21.04%になるに過ぎません。変化率にすると0.2%以下ですから、普通の機械では検出は難しいのではと思います。
 これが液相になるとだいぶ話が変わります。二酸化炭素は重曹などの形でたくさん溶かしておくことができますし、空気と平衡状態にある水の中の酸素濃度は 250 μM 程度なので、空気中の酸素濃度に比べればずっと小さくなります。ただ、藻類ならば液相でできますが、陸上植物では難しいでしょうし、そもそも簡易酸素計では、おそらく水に溶けている酸素の濃度は測れませんよね。
 呼吸の場合は、酸素を使う方の反応なので、21%の酸素が、人間が一回吸って吐くと、16%程度まで低下します。この場合は、変化率は20%を超しますから、測定としてはずっと簡単なのです。
 結論としては、余りよい方法が思い浮かびません。

Q:早速ご回答いただき、ありがとうございました。呼気を吹き込むなどして、二酸化炭素を増やした状態でもやはり難しいのでしょうか? (2005.11.5)

A:確かに呼気を吹き込めば二酸化炭素濃度は上がりますし、酸素濃度は低下しますから、少しは測定しやすくはなると思います。その場合は、実際に植物がどの程度の速度で光合成をしてくれるかによります。蛍光灯だとかなり近づけても太陽光の1/10以下のことが多いのでなかなか厳しいかと思います。また、別の問題として、二酸化炭素濃度が高いと気孔が閉じるという現象が知られています。つまり二酸化炭素を上げたら上げた分だけ光合成が上がるというわけではなく気孔の閉鎖によってかなり効果がキャンセルされてしまうことになります。気孔の開閉には光が効きますから、その意味でもできれば太陽の光で実験したいところです。
 僕自身、実験をしたことがあって言っているのではないので、やはり一度実際に実験をしてみないとわからないかと思います。その際に、少なくとも最初は太陽光で試した方がよいかと思います。
 もし、太陽光では何とか差が見えて、蛍光灯では無理なようでしたら、昔のスライドプロジェクターか、最近の液晶プロジェクターのよいものがあれば、それを光源として使った方が、光はより明るいかと思います。


Q:初めまして。今私はニュージーランドに在住しております。一つ質問なのですが、ニュージーランドはオゾンホールが近いことで有名なのはご存知の事と思います。実際にこちらで生活しておりますが、日差しのの突き刺す強さは、日本のそれとは比較にならないものであります。NZの紫外線は日本の7倍の強度であると言うことも納得できます。さて、本題ですが、こちらのラベンダーやペパーミント等の植物について自分で調べているのですが、強い紫外線を受ける事で光合成がより活発になり、その植物の栄養、効果等が高まる、とうことは言えるのでしょうか?植物の色素へやその他の影響も勿論あるとことは存じておりますが、NZの強い紫外線を浴びる事で植物の光合成が活発になり高い栄養、効果(芳香等)を得ることが出来るということは間違ってはいないのでしょうか?お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。(2005.11.3)

A:光合成では、クロロフィルによって光のエネルギーを集めますが、この際に利用されるエネルギーは主に赤い光と青い光でどちらも可視光であり、紫外線は利用することはできません。それどころか、強い紫外線を当てると光合成が阻害されるということさえあります。従って、光合成に関して言えば、紫外線は百害あって一利なしと言えます。
 ただし、そのように有害な紫外線を避けるため、植物は紫外線を受けると様々な防御反応を発動させます。例えば、紫外線を吸収するアントシアンなどを蓄積します。また、専門ではないのでよくわかりませんが、植物のいわゆる「薬効成分」などは、植物自身にとっては必須のものではなく、二次代謝産物であることが多いように思います。その場合、弱いストレスがかかった条件ではそのような二次代謝産物の量が増えることはあるかも知れません。そのような代謝の変動によって、紫外線を当てた時に芳香などが強くなることはあるかも知れません。


Q:ひとつお聞きしたいことがございます。葉1枚あたり、葉緑体っていくつぐらい存在しているのでしょうか。さらにクロロフィル分子の数となると、どのくらいになるのでしょうか。植物の種類や葉によっても様々だとは思うのですが、だいたいどれぐらいのスケールで存在するのでしょうか。教えてください。(2005.11.2)

A:これは、ものすごくおおざっぱな見積になります。葉っぱ1枚には、葉緑体は10の8乗個から9乗個ぐらいでしょうか。クロロフィルは葉の生重量の1/1000ぐらいを占めることもあります。1 g ぐらいの葉っぱとすればクロロフィル量は 1 mg ぐらいとして、10の17乗個から18乗個ぐらいの感じではないかと思います。


Q:脂質の実験で薄層クロマトグラフィーを使ったとき、展開溶媒を使い分けました。なぜですか?(2005.11.2)

A:「質問のコツ」を読みましたか?自分がやった実験の意味を他人に聞いても・・・
 脂質の実験といっても具体的にどのような実験かわかりませんし、展開溶媒を使い分けるといっても、どのような溶媒をどのように使い分けるのか、他人には意味不明です。そのあたりを詳しく説明してもらえれば、もしかしたら回答できるかも知れませんが・・・


Q:光合成質問箱のFAQはいつも勉強に大変役立ちます。ありがとうございます。環境についての質問ですが、植物がO3などの汚染物質に暴露されると、光合成速度、特に、量子収率と最大光合成速度(Pmax)が落ちると言う結果が得られました。その量子収率と最大光合成速度は何を意味しますか?それらが落ちたら、どこがやられたかを教えてください。また、光−光合成速度の曲線から、量子収率と最大光合成速度を求められますか?方法を教えてください。(2005.11.1)

A:量子収率は、受けた光のうちどれだけを光合成に使えるか、という割合、いわば効率です。光化学系に何らかの阻害があれば、量子収率に影響が出ます。光をだんだん強くしていくと、炭酸固定が律速段階になりますから、それ以上光を強くしても光合成活性は上がりません。その点での光合成速度が最大光合成速度です。ですから、炭酸固定や二酸化炭素の取り込みが阻害されると最大光合成速度に影響が出ます。光光合成曲線の初期の傾きは量子収率に比例しますし、最大値が最大光合成速度を与えることになります。
 ここからは質問の回答ではなくてアドバイスです。大学院の学生さんのようですが、もし、研究テーマとして光合成を扱うのであれば、まず、光合成の基礎知識をきちんとした教科書で勉強することをおすすめします。下に書いてある朝倉書店の「光合成」、岩波書店の「光合成」(西村光雄著)などは必ず読んだ方がよいでしょう。知識なしに実験を進めても、結局役に立たない結果しか得られないことが多いものです。自分が理解していない実験はなかなか成功しません。これが大学の実験レポートなら、悪い点がつくだけですみますが、研究となると笑い事ではすみませんから。


Q:はじめまして。突然ですが、今、「光合成に役立つ光」というテーマで透過率や50%だけ光を当てて光合成に役立つ光は何かを調べています。しかし、研究室に実験器具がなく、本のデータを引用する形式で卒研を進めています。光合成に役立つ光を調べる何かいい方法はありませんか。もし、測定結果など参考になる資料があればぜひ教えていただきたくて、今回メールさせていただきました。宜しくお願いします。(2005.10.31)

A:本の資料だけで調べるとすると、卒研というよりはレポートという感じなのでしょうね。それにしても、「光合成に役立つ光」というと大学のレポートのテーマというよりは高校のレベルのような気がしますが、具体的にどのように大学レベルの考察に持って行くのかが、僕にはイメージが今ひとつわかりません。いずれにせよ、まずは一般的な光合成の教科書をいろいろ読むところからスタートするべきではないでしょうか。比較的新しいところでは、朝倉書店の「光合成」がよいかと思います。もう少し詳しいところを知りたければ、岩波書店の「光合成」(西村光雄著)がよいでしょう。これらをじっくり読んで、わからない点があったらまた質問してください。


Q:はじめまして。よろしくお願いします。早速ですが、光合成についての質問です。本日、藻類を使って光の強さの違いによる、酸素発生量の関係を調べる実験をしたのですが、失敗しました。光源を藻類から離して光の強さを調整していく実験でした。通常、光源を近づければ酸素発生量は多くなるか、光飽和点を過ぎていれば酸素発生量は変わらないはずであると考えられます。が、光源を近づけた結果、逆に酸素発生量は減少し、果てはまったく酸素を発生しなくなってしまいました。実験装置の失敗を考え、同じ材料のまま、装置の組み直しを何度か行ったものの、酸素は発生しませんでした。私は、植物の光合成が止まってしまったのではないかと考えました。藻類が長い光照射のために、くたびれ状態になってしまったのではないかと。ここで質問なのですが、植物が長い光照射のために、二酸化炭素飽和、水、酸素、光は十分にある条件下でも光合成を止めるようなことはありうることなのでしょうか?ありうる事とすれば、それには反応機構、環境要因にどのような理由が考えられるのでしょうか。(2005.10.28)

A:実は、光は光合成の重要な基質ですが、強すぎると光合成を阻害します。これを光阻害といいます。もともとの生育環境で頻繁に受けるような光の強さでは光阻害は起きませんが、弱い光しかあたっていない植物(藻類)に、急に強い光を当てると、光阻害が起こって光合成が止まることがあります。光阻害は、処理できる以上の光エネルギーが入射した時に、そのエネルギーによる反応から活性酸素が生じ、これが、光合成系を含む細胞内の反応系を阻害することによって起こります。
 ただし、実際に光阻害が起こっているかどうかを確認するためには、追加で実験してみないといけないでしょうね。例えば、強い光を当てると水が暖まる場合があります。温度が上がりすぎていないかどうかは最低限確かめる必要があります。また、強光による光阻害が原因であれば、同じ実験を弱い光で同じぐらいの時間行った時には光合成が阻害されないはずです。

Q:非常に迅速なご回答、どうもありがとうございました。強い光による光合成阻害のお話はとても参考になりました。しかしながら、今回の実験ではそんなに強い光を用いた実験ではなかったように思います。そこで、失礼ながら再質問をさせていただきたいのですが、通常、植物は太陽の出ている昼間に光合成を行い、光のない夜には光合成を行っていません。そこで、人工的に光を植物に当て続けたとき、光合成は光の当たり続ける限り、(植物の寿命が尽きない限りにおいて)ずっと続くのでしょうか。私は、光合成によってエネルギー生産がなされますが、常に光を照射された結果、エネルギー過剰状態となり光合成が一時的にストップするのではないかと考えました。これは実際どうなのでしょうか?自分で新たな実験を考えて行えば確かめられることなのかもしれませんが、残念ながら今の私はやりたい実験を行えるような環境にいません。どうか、ご回答よろしくお願いします。(2005.10.29)

A:一般論としては、夜がない状態で長時間光が当たり続けても植物の寿命が続く限り光合成を行えます。研究室の実験によく使うシロイヌナズナなどは何世代にもわたって連続光のもとで栽培することができます。
 ただし、藻類の一部などでは、ややストレスと感じる程度の強光に連続的に何日もさらすと生育しなくなる例は報告されています。このような報告は多くはないので、そのようなケースに該当するかどうかは実験をしてみないとわかりません。
 エネルギーが過剰状態になった場合、植物は様々な防御システムを発動します。例えば、受けた光のエネルギーを積極的に無害な熱エネルギーに変換するシステムなどが存在します。従って、ある程度のエネルギー過剰には対処できるようになっているのです。それを超えるような強光をあてた場合に初めて強光による生育阻害が引き起こされることになります。


Q:大気汚染物質の沈着量について研究を行っている者です。より長期的に見た場合の日本の森林の光合成活性が大きく気温に依存することを調べていて、知りたいことがでてきたのですが、思うような資料が得られず、専門家の方に質問させていただきたいと思いました。
「夏季に光合成活性が飽和に達する樹種が北方に多く存在するという研究報告などはあるのでしょうか?」(2005.10.28)

A:光合成活性といっても、現地の温度での活性の場合と、一定の温度(例えば25oC)で測った活性の場合がありますが、どちらでしょうか。場合に分けて考えてみます。
1)現地の温度・光で光合成活性を測定し、それが昼間に温度や光強度が上がっても一定以上には活性が上昇しない樹種がどのぐらいあるかを北と南で比較する場合: 一般に、例えば東京と北海道で光の強さと温度を比較した場合、温度の差の方が大きいと思います。温度が低ければ、光飽和しやすいのは当たり前なので、北方で光合成が飽和する樹種は多くなると思いますが、これ自体は当たり前なので、「研究報告」にはなりづらいと思います。
2)北に多い樹種と南に多い樹種をそれぞれとってきて、光合成を同じ実験室、同じ温度で測定し、どちらが光飽和になりやすいかを調べる場合:北方の常緑樹では、冬季の樹液の凍結による道管の通導低下を避けるため、道管が細くなっていることが東大の舘野先生の研究(論文へのリンク)で明らかになっています。一方で、道管が細いと、蒸散量が抑えられるため気孔が閉鎖し、最大光合成活性は抑えられ、結果としてより低い光強度で光合成は飽和してしまいます。ただし、落葉樹の場合は、冬季は葉を落としてしまうので、これは当てはまりません。
 1の場合は温度が律速するために、2の場合は気孔閉鎖によって二酸化炭素の取り込みが律速するため、共に光合成の光飽和が早く起こることになります。


Q:はじめまして。今回質問をさせてもらうのですが、少し光合成とは離れているかもしれません。その質問とは、植物の色素(クロロフィル系とカロテノイド系)が可視部に吸収をもつ理由を化合物の構造から考えるというものです。急に質問していてなんですができれば明日までにお返事をいただけると幸いです。(2005.10.27)

A:ちゃんと質問のコツを読んでから質問してくださいね。岡山理科大学の講義のレポートか何かでしょうか、全く同じ質問が10日前にも来ていてそれに既に回答しています。前に質問した人も、自分の頭を使っていない点は同じですが、少なくとも期限ぎりぎりではなかったようです。質問をする場合には、上にも書いてありますが、「よくある質問のページ」に過去の質問を分野別に整理してありますので、こちらにまずは目を通してください。


Q:素朴な質問で申し訳ありません。 中学校の教科書に「光合成を行うとき、二酸化炭素と水を原料として、光のエネルギーでデンプンなどを作り出す」という記述があります。光合成は光のエネルギーを利用して有機物を作り出すとまとめるのですが、熱エネルギーは光合成の有機物合成には全く影響していないのでしょうか。
 高校の参考書を調べると、ATPが明反応で作られ、暗反応で使われることから熱エネルギーも関係しているように思えるのですが。難しくてよく分かりません。よろしくお願いします。(2005.10.26)

A:あらゆる化学反応は、温度を低下させると速度が遅くなります。これは、反応の開始には、活性化エネルギーといういわば引き金が必要で、この活性化エネルギーが周囲の分子運動(温度が高いと速い、熱エネルギーとも言える)から供給されるため、温度が低いと反応が進まなくなってしまうためです。その意味では、光合成の反応も化学反応・酵素反応ですから、ある程度の温度がないと進行しません。しかしながら、温度さえ保たれていれば、熱エネルギー自体が光合成のエネルギー源として使われる、ということはありません。熱エネルギーの一部が例えばデンプンのエネルギーに変換される、ということはないのです。「ATPが明反応で作られ、暗反応で使われることから熱エネルギーも関係している」という部分は、なぜそのように思われたのか、よくわかりませんでした。
 少し話は違いますが、水に吸収されると熱になるため、人の体に暖かく感じる赤外線という光があります。赤外線は、あくまで熱ではなくて光ですが、これを吸収してそのエネルギーを用いて光合成を行なう光合成細菌という生物は存在します。


Q:お忙しい所、大変申し訳ございません。美術大学の学生をしている伊東と申します。ぶしつけですが一つ質問をさせて頂きます。私は今、花を照らす照明という物を企画、デザインしています。そこで、花という生物は、夜は光をあびせずに休ませるものだと聞きました。光合成をさせないような、目に見える人工光(LED、蛍光灯など)はないのでしょうか?(2005.10.26)

A:確かに、普通の自然条件では夜は暗いものだと相場が決まっていますが、実際には、24時間光を当てて植物を育てても、正常に生えるものがほとんどです。植物は光のエネルギーを使って生育していますから、夜も光を当てた方が生育がむしろ早くなることが多く、実験室などでは、実際に照明をつけっぱなしにして育てている例もかなりあります。
 ただし、植物は、花を咲かせる時期などを日の長さによって感じている場合がありますので、日が短かいのを感じて花を咲かせる植物などは、照明をつけっぱなしにすると花が咲かなくなってしまいます。ただ、もうすでに咲いている花の場合は問題ないと思います。
 ちなみに、光合成をしないようにするためには、光合成をするために働く葉緑素(クロロフィル)が吸収しない光を当てればよいことになります。クロロフィルや緑色の光はあまり吸収しませんので(だから葉は緑色に見えるわけです)、緑色の光を当てれば、目には見えてかつ光合成はそれほど起こらないことになります。また、花を咲かせる時期を決めるものは、赤い光を吸収しますから、赤い色を除いた光を当てれば、原理的には植物は夜だと感じてくれるかも知れません。しかし、こちらの反応はかなり弱い光でも起きますので、実際にやろうとすると難しいかも知れません。それに、どちらにせよ、光の色を変えてしまったら見た目が悪くなるでしょうから、照明としては失格でしょうね。


Q:以前、ピーマンの光合成について、「水溶性と油溶性の色素の分離法」についてお聞きした者です。私の誤解だったようで、これは色素全般での事でした。その後、薄層クロマトグラフィーを行い、新たに疑問に思うことがありましたので、再度質問致します。
①石油エーテル:アセトン=6:4の展開溶媒で実験した際、黄ピーマンで、Rf値が0.520と0.342になった、黄色っぽい色素についてです。文献で調べ、ビオラキサンチンとネオキサンチンだと考え、先生に確認していただいたところ、「黄ピーマンにキサンチンって本当にあるの?」と言われました。どうなのでしょうか?
②ヨウ素デンプン反応で、「デンプンがある」という結果が出た植物は、「光合成をしている」ということになるのでしょうか?ここで言う植物は、ピーマン(緑、黄、赤)、キュウリ、スイカの皮、枝豆(鞘、実)です。(2005.10.25)

A:①は、実際に調べてみないとわからないと思います。ピーマン自体は葉にキサントフィルを含みますから、キサントフィルを合成することはできます。しかし、実の、しかも特定の時期のものに、ある色素が含まれているかどうかは一般的には推測できません。しかも、農業的に栽培されているようなものは、例えば色が鮮やかなものが選抜されている、というようなこともあるでしょうし、品種によって色素の種類が違うことさえあるかも知れません。
 本来の実験というのは、一回やったらおしまいではなくて、実験結果を考察して出てきた疑問に答えるためにさらに実験を繰り返していく、というプロセスを重ねるものです。
 Rf値だけから色素の種類を確定することは難しいので、その色素の種類を別の方法で確定する実験をデザインする必要があります。もし可能なら、薄層クロマトグラフィーでわかれた色素をシリカゲルごと掻き取って有機溶媒に抽出し吸収スペクトルをとってみれば情報が得られるかも知れません。また、それができなければ、キサントフィルが含まれていることがはっきりとしている植物からの色素を隣に展開してやって色素のバンドが全く同じRf値の所に来ることを示すのもよいかも知れません。

 ②に関しては、例えばジャガイモの塊茎にはデンプンがありますが、あれは、土の中にあるのですから、光合成をしているはずはありません。デンプンを作る原料は、別の場所から持ってくることもできるわけです。ただ、ジャガイモの塊茎がデンプンを持っていれば、ジャガイモの植物体のどこかで光合成をしていたのだろう、ということはわかりますね。
 ただし、これも実験で確かめることはできるかも知れません。ピーマンの実をしばらく暗いところにおいてからその一部をヨウ素デンプン反応で調べ、次に植物体から切り離してから数時間太陽にあてて、また、ヨウ素デンプン反応を調べ、もしデンプン量が増えていたら、実の中の光合成でデンプンが合成されたことがわかりますよね。


Q:はじめまして、先生の質問投稿フォームを大変参考させていただきました。ありがとうございます。そこで、質問なんですが、
1. 今植物に対するCO2の影響の研究をしていますが、CO2に暴露されると、最大光合成速度が低下したと言う結果でした。この場合は、最大光合成速度が低下したのは、光合成が行われる過程の中に、どこか、また、何か、やられたと意味していますか?
2.量子収率が低下すると、何を意味していますか?(2005.10.21)

A:最初に注意しておきますが、実験の解釈というのは、その実験の細かい条件がわからなければ無理です。例えば、「最大光合成速度が低下した」といっても、本当に低下している場合と、見かけ上低下している場合があり、それらは、どのような実験をどのようにして、その際に植物の状態がどうだったのか、ということがわからなければ、判断できません。しかし、今は、最大光合成速度が本当に低下しているとしてお答えします。
 その場合には、時間スケールによって阻害を受けた場合(まあ、やられたと言ってもいいでしょう)と量が減少した場合があります。短時間の曝露の場合は、量が減ることは考えなくてもよいと思いますが、長期にわたる影響を調べている時には、例えば、葉緑体の量自体が減少する可能性も考えなくてはなりません。
 量子収率は、吸収した光あたりの光合成の反応量です。いわば効率ですね。特に一般には、光が律速になっている場合の効率を指す場合が多いかも知れません。これも、いろいろな可能性がありますが、アンテナサイズ(反応中心あたりのクロロフィル量)が小さくなって量子収率が低下する場合もあるでしょうし、反応中心自体に異常が生じて量子収率が低下する場合も考えられます。


Q:理科の実験で光合成色素組成を調べるためにクロマトグラフィーを使って調べたのですが、同じ紅藻類であるはずのユカリとタンバノリで結果が大きく異なりました。これにはどのようなことが考えられますか?なるべく早くお願いいたします。(2005.10.21)

A:質問をする場合には、「質問のコツ」を読んで下さい。また、それ以前に、すぐ下に、全く同じ実験に関すると思われる質問と答えが載っているのですが、それを読んでいないのでしょうか。最後にもう一つ言えば、実験は、それ自体が目的ではなくて、そこから、どのような新しい発見があるか、考えるためにするものです。自分は何も考えずに、単に人に「どのようなことが考えられますか?」と聞くだけでは、そもそも実験をした意味がありません。


Q:薄層クロマトグラフィーを使って色素分析の実験を行ったのですが、実験に用いた海藻にタンバノリとユカリがありました。いずれも紅藻類で、カロチン、クロロフィルa、ルテインが見られたのですが、ユカリにだけ、Rf値がルテインよりも小さい、黄色い色素と薄緑色の色素が見られました。複数の班がそのような同じ結果になっているので、点着の仕方などに原因があるとは思えません。ユカリにだけ紅藻類として例外の色素があるということもないと思うのですが、クロロフィルdがユカリには見られたということはないでしょうか。あるいは他の色素なのでしょうか。教えてください。お願い致します。(2005.10.20)

A:まず、クロロフィルdについてですが、昔から紅藻に含まれているという報告があるものの、現在では、紅藻に付着したアカリオクロリスという原核光合成生物に含まれていて、本体の紅藻はクロロフィルdは含まれていないという考え方が一般的です。しかし、もちろん実験に用いた紅藻にアカリオクロリスが付着している可能性はあります。ただ、その場合でも、量的にはかなり少ないことが予想されます。紅藻自体は、その他に、光合成色素としてゼアキサンチンが含まれます。ゼアキサンチンはルテインよりも若干親水性が高いと思いますので、Rf値は小さくなるはずですから、位置的にも合います。量的にも検出できる可能性はあるかと思います。
 実験後の考察としてできるのはこのぐらいですが、色素の抽出の実験は、常に抽出過程における色素の分解の可能性が避けられません。量的に少ない色素が分離された場合には、色素の分解産物である可能性が残ります。これを確かめるには、バンドの部分のシリカゲルを掻き取って、有機溶媒で再度抽出し、吸収スペクトルを測定するなどの追加の実験が必要になります。


Q:カラムクロマトグラフィーでβーカロテンやクロロフィルa、b、ルテイン、ビオラキサンチン、ネオキサンチンなどさまざまなものが溶出しますが、この溶出する順序はどのようにして決まっているんですか? 展開溶媒の割合を変えてもこの順序は変わらないのはなぜなんですか? 教えてください。(2005.10.20)

A:よくある質問のページ(中学生・高校生向けの実験についての所)にTLCについて、いろいろ答えていますが、その内容はカラムクロマトグラフィーでも同じです。こちらを読んで、それでもわからない点があったら再度ご質問下さい。


Q:はじめまして。私は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を利用して、いろいろな葉(樹木)で光合成色素(特にクロロフィルa,b,ルテイン,β−カロテン,ビオラキサンチン,アンスラキサンチン,ゼアキサンチンなど)の量がどのような割合で含まれているかを比較してみようとしています。
 そこで質問なのですが、樹木の葉をサンプリングする際や実験室に持ち帰るまで、光合成色素をできるだけ壊さないようにするためには、サンプルをどのような状態に置いておくのがいいのか、サンプリングする時間はいつが良いのか、またその他に何か特別注意する点はあるのか、について教えていただけないでしょうか。
 また、もう一つお聞きしたいのですが、上に挙げたような光合成色素の含有率をHPLCを用いて調べたいのですが、光合成色素の抽出が今ひとつうまくいっていません。光合成色素の抽出の参考にしたいので、HPLCを用いて光合成色素を研究している論文や実験書などで何かよさそうなものをご存知でしたらぜひ教えてください。よろしくお願いします。

A:これは、おそらく光合成屋ではなくて樹木屋に聞かないとだめかも知れません。一般論としては、分解を避けるためには暗所・低温に保存するのがよい、ぐらいは言えますが、樹木の場合は、フェノリクスが多いですし、葉は固いし・・・。色素の抽出に限らず、生化学的な処理に際して、樹木の葉はいろいろ難しい面があります。具体的に雑誌名などまではわかりませんが、オーストラリアのDemmig-Adamsのグループが樹木の葉のキサントフィル色素の定量などをしていたと思います。Demmig-Adamsとviolaxanthinあたりで、検索すると引っかかってくると思いますので、その実験方法を参照するのが一番だと思います。


Q:クロロフィル系やカロテノイド系の色素が可視部に吸収をもつのは化合物中のどの構造が関わっているんですか? 教えてください。(2005.10.17)

A:クロロフィルは、大きく分けて四角いポルフィリン骨格とそこについたしっぽのような長い炭化水素鎖のフィトール鎖からなります。クロロフィルcはフィトールの部分がないのですが、それでも可視部に吸収がありますから、ポルフィリン骨格の部分の構造が関わっていることがわかりますね。カロテノイドは、場合によっては両端が環状構造になる長い炭化水素の鎖ですが、環状構造をとらないものでも可視部に吸収を持つものがありますから、環状構造自体は吸収の存在に必須ではありません。炭化水素の鎖には、共役二重結合が存在しますが、これの種類と数によって吸収スペクトルの形は変化します。その意味では、共役二重結合が吸収を決めていると言ってもよいかと思います。


Q:大学生です。前にテレビでアマゾンに生える草(熱帯雨林)のなかにとても高い木の中に小さな、光を求める大きさで生存競争に勝てなかった、植物の説明の中に赤い葉は緑色よりも多く光を集める(熱帯雨林のように薄暗い中でも。といっていたのです。(その小さな植物は赤色でした。)なら、なぜ、他の植物は赤くないのでしょうか?より多くの光を求めている植物なのですから他の植物も赤くていいのでは、と思ったのです。なぜ、赤色は、緑色よりも光を吸収するのか、なぜ、他の植物は赤くないのか、難しい言葉もある程度使ってもらって結構ですので、答えを宜しくお願いいたします。(2005.10.17)

A:まず、「赤い葉は緑色の葉よりも多く光を集める」というのは、一般的には間違いです。「赤い」というのは、赤い光以外の光が吸収された、ということですし、「緑色」というのは、緑色以外の光が吸収される、ということです。特に、どちらが多く光を集めるか、ということとは直接にはつながりません。
 一方で、もし、緑色の光が当たったらどうでしょう。赤い葉っぱは、緑色の光も吸収できますが、緑色の葉っぱは、緑色の光は吸収しにくいから緑色なのです。その場合には、赤い葉っぱの方が多く光を集めることになります。つまり、「熱帯雨林のように薄暗い中でも」ではなくて、「熱帯雨林のように薄暗い中であるからこそ」ということだと思います。林の中では、上の植物の緑色の葉により緑色以外の光は吸収されてしまいます。もし、残った緑色の光で何とか光合成をしようと思ったら、緑色の光を吸収できる色素を持つしかありません。その色素がたまたま赤く見えるということであれば、説明がつきます。ただし、僕自身は、そのような植物の具体的な名前や、使っている色素などについては、全く知りません。
 以上の説明があれば、なぜ、他の植物は赤くないのか、わかりますよね。おそらくは、緑色のクロロフィルを使って、緑色以外の光を集めて光合成する方が、より効率的なのでしょう。それをできない環境、つまり、熱帯雨林の中など限られた環境条件の中では、赤い葉っぱを持つことも有利になるかも知れない、ということだと思います。


Q:薄層クロマトグラフィーの実験で、緑茶と紅茶の色素を抽出しました。この両者から抽出できた色素はほぼ同じでした。しかし、それらの色素の展開が異なりました。これはなぜでしょうか。(2005.10.15)

A:すみません。質問の意味がわかりません。普通、薄層クロマトグラフィーでは、同じ所に展開した(同じRf値を持つ)色素を同じ色素だ、と判断します。「色素は同じだけども展開が異なる」というのは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?


Q:私は今二酸化炭素について調べていて、どうしても分からないことがあってこのホームページにたどりつきました。
光合成に詳しい先生に質問なんですが、女性に人気のあるワイルドストロベリーや一般的な家庭の庭先で良く見るパンジーは一日にどれくらい二酸化炭素を吸うのでしょうか?一般的な家庭で育てられていて、大きさ的にも一般的に育てられている大きさとすればどの程度のものなのですか??また光合成によって吸われる二酸化炭素の量はどのような計算にもとずいて出されるのですか?初訪問・初質問なのにあつかましく質問攻めしてすいませんが教えてください。(2005.10.15)

A:質問攻めは構わないのですが、前のQ&Aを読んでくださいね。過去のFAQに似た質問があり、だいたいの量を答えています。また、つい4日前の質問(3つ下)にも「同じ鉢でも、明るいところにおいた場合と暗いところにおいた場合では、光合成量は全く違いますから、鉢一つあたり、といってもほとんど意味がありません。どちらにせよ、極めておおざっぱな概算にしかならないはずですので、植物種の違いや植物の大きさを細かく計算することにも意味がないと思います。」と答えています。
 光合成によって使われる二酸化炭素の量は、別に「計算」で求めるわけではありません。実際に植物に光合成をさせて、その際に吸収される二酸化炭素量を測定するのです。測定をする方法にはいくつかありますが、二酸化炭素は赤外線を吸収するので、空気の赤外線の吸収がどの程度減ったかを調べれば、どのぐらい二酸化炭素が減ったかを調べることができます。


Q:ペーパークロマトグラフィーの実験をしたのですが。結果で出た色素の濃淡は何を意味するのですか?また対照実験として原点を油性マジックで塗ったものをしたのですが、なぜマジックで線を引いたらダメなのですか?教えてください。(2005.10.15)

A:「色素の濃淡」は、文字通りその色素が濃いか薄いか、たくさん存在しているか少しかを示しているわけですが、何か違うことを尋ねているのでしょうか?また、 「マジックを塗った」というのと「マジックで線を引いた」というのは何が違うのでしょうか?どうも質問の趣旨がわからないので、再度ご質問頂ければと思います。


Q:紅色非硫黄細菌は活動を始めると、なぜ紅色に色付くのかの理由を教えてください。紅色に色付く理由としてクロロフィルが吸収できない波長の光を集めるために,カロテノイド,フィコエリトロビリンなど,別の色の色素も使われるからでしょうか?実際に使われているとしたら、なぜ活動時にだけ色付くのかの原理を教えてください。 あと培養していて紅色から無色になったら死んだと考えてよいのでしょうか?(2005.10.12)

A:もしかしたら、この質問のクロロフィルというのは、緑色のクロロフィルの意味で使っていますか?だとしたら、それが誤解の原因です。紅色非硫黄細菌もそうですが、光合成細菌は、そもそもクロロフィルを持っていません。代わりにバクテリオクロロフィルというのを持っています。バクテリオクロロフィルは、赤い部分の吸収帯が赤外領域に移動していますし青い部分の吸収帯は紫外領域に移動していますから、クロロフィルとは全く色が違います。といっても、僕自身は自分の目で、精製したバクテリオクロロフィルを見たことはないのですが。菌体の色はおっしゃるように、さらにカロテノイドの種類や量にも依存しますので、一概に言えません。さらに付け加えるなら、光合成細菌はフィコビリンも持ちません。フィコビリンを持つのはシアノバクテリアや紅藻です。
 「活動」というのが何を指しているのか、よくわかりませんが、光合成細菌は光合成で生きているわけですから、まあ、色がなくなったら、死んだと思ってよいのではないでしょうか。


Q:光合成によって植物が吸収する二酸化炭素の量を取り纏めた資料が存在しますか?事業消費燃料率{事業量(トン数)/消費電力・消費燃料-石油系}をセーブする取組を会社として行っています。その補助手段として、(植物による)CO2の吸収と酸素供給を数値化して利用できないものかと検討しているところです。別ページの「悪い質問例」に追加されそうな内容で恐縮ですが、敢えて質問に投稿させていただきました。事業所内での展開ですので、一般的に「植え込み」「鉢植え」に使用される植物に限定されます。例えば鉢植えであれば「一尺鉢(径30cm)植えのパキラ1本では年間何キロの二酸化炭素を吸収する」と言ったことが知りたいのですが・・{多分存在したとしても、(「葉」一枚当たりの光合成およびその周辺副産物の量)などの内容のものしか無いのでしょうが・・}。因みに今年の取組で月間最小(最良)記録は事業量1㌧当たり988グラムの二酸化炭素排出量(率){事業量1トンの為に使用した消費燃料に拠って排出されたCO2の量}でした。(2005.10.11)

A:「多分存在したとしても、(「葉」一枚当たりの光合成およびその周辺副産物の量)などの内容のものしか無いのでしょうが・・」とおっしゃるとおりだと思います。過去の質問箱の答えにもありますように、同じ鉢でも、明るいところにおいた場合と暗いところにおいた場合では、光合成量は全く違いますから、鉢一つあたり、といってもほとんど意味がありません。どちらにせよ、極めておおざっぱな概算にしかならないはずですので、植物種の違いや植物の大きさを細かく計算することにも意味がないと思います。僕が見積もるとすれば、植物の葉面積を「植物の栽培面積(この場合でしたら、鉢の面積でしょうか)」で近似して、それに葉面積あたり時間あたりの光合成量をかけて、さらに、その地方の年間日照時間数をかけ算します。光飽和時の葉面積あたりの光合成量は、植物生理学の教科書などを見れば載っていると思います。でも、あまり意味がないような気が・・・


Q:葉の緑色のところでは光合成をするけれど、白いところでは光合成をしないと本に書いてありました。光合成に緑色は大事だと思います。でも芽が出たばかりや、真っ暗なところで育てたものは緑ではありません。緑色のところで光合成をするのだったら、いつでも緑色をしている方がいいと思います。どうして、暗いところで育てたものは緑じゃないのでしょうか。どうして、日が当たってから緑になるのでしょうか。それから、日が当たると緑になる仕組みは、どうなっているのでしょうか。教えてください。(2005.10.11)

A:植物にとって、光合成ができるように「緑色になる」ためには、多くのエネルギーがいるのです。ですから、光のあたらない、光合成の必要のないところでは、白いままにして、光があたると、いわば「スイッチが入って」緑色になるような仕組みを作っているのです。そのようにして、無駄を省いているわけです。
 植物は、そのために、光を感知する、いわばセンサーを持っています。このセンサー(実際には光を吸収する色素)が光を受けると、その信号がいろいろなところに伝わってタンパク質やクロロフィルが合成されて、緑色になり、光合成ができるようになります。


Q:クロロフィルの抽出の際に、抽出後の液にマグネシウムイオン(2プラス)を加えると蛍光がしやすくなると聞いたのですがどうなのでしょうか?(2005.10.7)

A:可能性はあるかと思いますが、僕自身は経験ありません。イオンになるということは水溶液ということですから、抽出を有機溶媒100%でしている場合はそもそも無理ですよね。クロロフィル自体は水には溶けませんから、イオンを加える以前に水の量を多くしていくとクロロフィルが溶けきれずに析出してきます。昔、蛍光の仲間の熱発光というものを測定していた時には、クロロフィルを溶かした有機溶媒に水を加えていくと、クロロフィルが析出して熱発光の強度も増大しました。蛍光でもそのようなことはあるかも知れませんし、そのような増大効果は、塩の存在によって促進されそうな気はします。


Q:光合成に直接関係無ければ大変申し訳ありません。食品関連の仕事をしておりますが、抹茶関係の食品を出しますと必ずと言っていいほど退色してしまい、製造時の瑞々しい緑色が茶色く変色していきます。話を聞くと、酸素の影響及び紫外線の影響と聞きました。ビニールの袋に入れて完全密封して販売していますので、光も通さず無酸素の状態で販売すればいいのですが、中身のおいしそうな状態を見せたいのでついつい中身が見える袋にしてしまいます。その場合、紫外線をカットするとある程度退色防止が出来ると聞きましたが、具体的にカットしたら退色しにくい紫外線領域の波長等はあるのでしょうか?(2005.10.7)

A:退色に関しては専門家ではないので、どこまで正確にお答えできるかわかりませんが・・・
 紫外線は、可視光に比べるとエネルギーが高いので、紫外線の照射によって色素の分解などが進みやすいことは充分考えられます。紫外線は、波長によってA,B,Cと分けられますが、B,Cは大気で吸収されて、さほど地上には届きません。ですから、300-350 nm 付近の波長をカットすれば紫外線はほとんどカットできます。
 ただし、色素の退色は、色素が吸収する波長の領域の光によっても引き起こされます。従って、残念ながら紫外線をカットしても、可視光があたっている場合には、退色は完全には防げないのではないかと思います。クロロフィルの場合、赤と青の光を吸収して、緑の光の吸収は少ないので、緑色の光だけを通すビニールで覆えばかなり退色を防げると思いますが、それだと色が人工的な印象を与えるでしょうからダメでしょうね。


Q:光合成は、紫外線や赤外線のように目に見えない光でもするのでしょうか。そんな光でもするかどうか調べる方法を教えてください。(2005.10.6)

A:紫外線は下の質問にもありますように、光合成にとって害になります。一方で、赤外線は特に害にはなりませんが、普通の植物が持っているクロロフィル(葉緑素)は、赤外線をほとんど吸収しませんので、植物は赤外線を使えません。しかし、光合成細菌という最近の仲間はバクテリオクロロフィルという、普通のクロロフィルとは少し違った色素を持っていて、これは赤外線を吸収するので、光合成細菌の場合は赤外線を使って光合成をすることができます。
 調べるとしたら、目に見える光は通さないけれども赤外線(または紫外線)は通すようなフィルターか何かで、赤外線などだけを植物の葉にあてて、ヨウ素デンプン反応を見るぐらいしかありませんね。ただ、そのようなフィルターは、残念ながら一般には手に入りにくいと思います。逆に、例えばガラスなら、目に見える光は通すけど、紫外線は通さないので、ガラスを通した光と通さない光では、紫外線の量が違うことになります。これで、その差を調べれば、原理的には紫外線の効果を調べることができるはずですが、目に見える光がたくさん当たっている上にちょっと紫外線があるかないか、という話なので、実際に差を検出するのはやはり難しいかと思います。

Q:光合成の質問じゃないような気がしますがごめんなさい。紫外線は体に悪いものだと思います。やっぱり植物にも悪いんじゃないかと思います。紫外線が当たると、光合成をする働きが悪くなるんじゃないかと思います。紫外線は、植物にどんな悪い影響を与えるのか教えてください。(2005.10.7)

A:植物にとっても紫外線は害になります。光合成の場合で言いますと、光合成の反応のうち、水分解する反応が紫外線が当たると進まなくなってしまうことが知れれています。


Q:先日は質問にお答えいただき、ありがとうございました。またわからないことが出てきましたので、お願いします。
 中学校の教科書に、光合成が行われる場所は「葉緑体」であると書かれています。葉緑体のない植物(原核生物など)も含めて、植物が光合成を「葉緑素」で行っていると考えてはまちがいなのでしょうか?よろしくお願いいたします。(2005.10.3)

A:これは、「原核生物では葉緑体がないが、それでも葉緑素は共通に働いているか」という質問でしょうね。葉緑素は通常クロロフィルのことを指しクロロフィルの中にはいくつか種類があります。高等植物ではクロロフィルaとクロロフィルbを持ちますが、ケイ藻(真核微細藻類)などではクロロフィルaとcを持ちます。また、光合成細菌ではバクテリオクロロフィルというさらに違った種類のものをもち、これにもバクテリオクロロフィルa、bなどいろいろな種類があります。ですから、このような様々なクロロフィルとバクテリオクロロフィルを全て葉緑素といってよければ、真核、原核にかかわらず共通ですが、例えば、クロロフィルだけを葉緑素という場合(「葉」にはバクテリオクロロフィルはないので)には、光合成細菌などは葉緑素を持たないことになります。


Q:はじめまして。今、農業について勉強しているのですが、太陽の光を、当てた植物と当てない植物とで(同じ植物)、当てない植物の方が、栄養価(栄養分)が良いものは存在しますか?あいまいですみません?(2005.9.29)

A:「栄養価」というのが、エネルギー量ということでしたら、存在しないと思います。植物はエネルギーを光合成によって獲得していますから、光を当てなければ、その分エネルギーが減ってしまいます。
 一方で、光を当てないと、植物の細胞の中の状況は大きく変化して、今までは貯めなかった物質を貯めるようになることはあります。例えば、クロロフィルの合成には光は必要なので、暗いところでは、クロロフィルの量が減る代わりに、クロロフィルの材料となる物質の量が増えます。植物の持っている物質の中には、人間にとって役に立つ物質もありますから、もし、そのような物質が暗いところでたまる場合には、暗いところで育てた方がよい、という可能性もあります。ただ、具体的にそのような物質がある、と聞いたことはありません。


Q:葉緑体に光が当たると有機物ができることは、どのような実験で確認できるのですか??(2005.9.28)

A:これは、「植物に」ではなくて、「葉緑体に」というところが重要なのでしょうか?「植物に」であればヨウ素デンプン反応の実験によって確認できますが、「葉緑体に」となると高校レベルの実験では難しいかと思います。さらに、「葉緑体に」という言葉が、「光が当たると」にかかっているのか、「有機物ができる」にかかっているのか、それとも両方にかかるのかによっても、答えが異なります。葉緑体以外に当たった光は使えないこと、有機物ができる場所が葉緑体の中であること、などを実験で証明するのは、なかなか大変です。質問で何をどこまで求めているのかがはっきりすると、もう少しきちんとした回答ができると思います。


Q:クロロフィルc・d、フィコエリトリン、フィコシアニン、ネオキサンチンのRf値と色を教えてください。(2005.9.25)

A:まず、フィコエリトリン・フィコシアニンは水溶性の色素です。そもそも有機溶媒に溶けないので、Rf値というものは存在しません。次にネオキサンチンはキサントフィルの一種なので、過去の質問箱をご覧下さい。クロロフィルdは構造的に考えるとクロロフィルbよりほんのわずか親水性でしょうから、Rf値は、クロロフィルbよりわずかに小さくなると考えられます。クロロフィルcといっても、実は、c1, c2, c3 と3種類あるのですが、いずれもクロロフィルa, b, d よりは構造的にフィトールがない分、親水性なので、Rf値はクロロフィルb, d などよりさらに小さくなるでしょう。本当は個々を自分で考えなければ意味がないのですが、もし化学を取っていないとわからないかも知れませんね。
 色を文章で教えろ、といわれても難しいですが・・・。おおざっぱに言えば、クロロフィル類は緑、フィコビリン類は青、キサントフィル類は黄と考えてよいかと思います。


Q:初めまして。今度学校の課題研究で光合成色素について調べようと思っているのですが、クロロフィルはメタノールとアセトンの混合液で抽出できると聞きました。では他の光合成色素(カロテノイドとかフィコピリン)は別の物質を使えば抽出することは可能なのですか?(2005.9.23)

A:カロテノイドも、メタノールやアセトンで抽出可能です。フィコビリンは水溶性のタンパク質なので、細胞さえ壊せれば、水で抽出することができます(逆に有機溶媒では抽出できません)。

Q:カロテノイドも、メタノールやアセトンで抽出可能なんですね。ということは、クロロフィルとカロテノイドは別々に抽出することは出来ないということですよね…。別々での抽出は不可能なのですか?(2005.9.24)

A:はい。無理だと思います。若干、疎水性は違うので、クロマトグラフィーをすれば分かれますが、溶媒の種類によって別々に抽出するのは不可能かと思います。

Q:「フィコビリンは水溶性のタンパク質なので、細胞さえ壊せれば、水で抽出することができます」とありますが、具体的にどのような方法で行えばいいのでしょうか?具体的な手順などについて教えていただけませんか?(2005.9.25)

A:何を材料とするかにもよりますが・・・。アサクサノリは紅藻なので、フィコビリンを含みます。市販の海苔に水を加えてジューサーなどでよく破砕して4枚重ねぐらいのガーゼで漉すと濾液はフィコビリンを含む青い水溶液になります。

Q:かなり暗くしないと光らないんですね…最初はなかなか光らなくて苦労しました。
 で、フィコビリンなのですが、ジューサーが無いため、海苔を細かく切り水を加えながら混ぜていったのですが、ガーゼでろ過すると色が濁ったような黒っぽい水しか抽出できませんでした。水を加えながらするのはよくなかったのでしょうか?それとも、細胞壁が全然つぶれて無かったのでしょうか?なにか分かる問題点があれば教えてください。(2005.10.3)

A:もし抽出効率が悪いようならば、海苔を水に浸した状態で、一晩放置するとよいかも知れません。あと、海苔は、ある程度の量が必要です。
 あと、ガーゼだけでは濁っている時は、濾紙で漉した方がよいと思います。ただ、最初から濾紙で漉すとすぐにつまるので、一旦ガーゼで漉した液を濾紙で漉した方がよいかと思います。
 あと、まさかとは思いますが、焼き海苔はだめですよ。ただの乾燥海苔を使って下さい。味海苔も避けた方がよいかと思います。


Q:開放地で幼齢ヒノキ(30cm)に光透過率70%程度のプラスチック筒を被せ、1年後に筒を外して観察してみました。筒は完全に閉鎖しているのではなく、上部は煙突状になっています。普通、ヒノキの気孔帯は葉の裏側のみ目立って白く見え、比べて表側は白くない(白く見えない?)のですが、観察の結果、葉の表・裏とも気孔帯が白く浮き上がって目立ってみえました。筒内と外部温度は、盛夏+5℃、真冬+10℃の差がありました。
 気孔帯が表裏ともに白く浮き出ている現象ですが、風をカットしたことによるものなのかなと思っています。風を受けないので、通常閉じている表の気孔が全開になったのでは・・・?このような仮説ですが、間違い・勘違いがあるでしょうか?また、ヒノキは気孔帯に特徴があるので観察できましたが、他の樹種でも同様の現象が起こりうるのでしょうか?風を受けないために気孔が全開になっている(日中)のであれば、光合成量も増えるのでしょうか?(筒内の温度次第では、光合成量が減る時期もある可能性もありますが・・・)
 お暇がありましたらご指導いただけないでしょうか?ばかばかしい内容でしたら、無視していただいて結構です。以上、よろしくお願いいたします。(2005.9.23)

A:環境を変える実験、特に野外実験の場合は、特定の環境要因だけを変化させることは至難の業です。おっしゃるような実験の場合、変化した環境要因としては、光(30%の現象)、温度(5−10度の上昇)、風のカットがあり、実際には、この他に湿度なども変化しているのではないかと思います。そのような場合、とにもかくにも自分なりの仮説を立ててみるしかありません。仮説というのは、確かめるのが目的でたてるものですから、仮説が「間違い」かどうかを気にしても無意味です。
 1年がかりの実験となると、なかなか難しいかとは思いますが、たてた仮説に従って、新しい実験系を組み、それによって何が真実かを明らかにしていくしかないと思います。
 あと、環境要因によっては、実験をせずに、異なる環境条件の樹木を観察することにより、ヒントが得られるかも知れません。もし、風の強さが原因であれば、吹きさらしの場所に生えている木と周りを囲まれている木では気候帯に違いが見られるかも知れません。さらに、表側にも気候帯が白く見える、というはっきりした表現型が得られているのであれば、野外でそのような特徴を持つヒノキがないかどうか探して、もしあったらその場所の気象条件をよく考える、というのも1つの手段かと思います。
 なお、見かけが白くなっているかどうかと、気孔の開閉は必ずしも一致するものではないと思います。もし気孔の開閉について議論したい場合は、低倍率の顕微鏡などで見てみるのがよいかと思います。


Q:植物における光合成は主に葉で行われるわけですが、その成果が果実または実に集まるメカニズムはどうなっているのでしょうか。また葉における光合成の成果物、すなわち炭水化物の蓄積と輸送を律速する因子はなんでしょうか。このことから、日単位における光合成における最適な値はどのように決まると考えてよいのでしょうか。よろしく願います。(2005.9.15)

A:転流については、過去の質問箱にある程度回答があります。それをご覧になって、わからない部分をもう少し具体的にご質問下さい。レポートの課題か何かでしょうか。講義か何かのバックグラウンドが前提になっているように思います。「質問のコツ」を読んでからご質問頂けると時間の節約になるかと思います。


Q:はじめまして、高等学校で化学を教えているものです。糖のところで、スクロースはグルコースとフルクトースが結合したものですが、フルクトースには5員環構造と6員環構造の2つがあるのに、なぜ、スクロース中のフルクトースは5員環のみしかないのか、という質問を受けました。生化学の本には、フルクトースは生体内では5員環構造となる、という結論のみが書かれているだけで理由はありませんでした。また、学校にある生物関係の本を読んでも、スクロース合成の経路が2つあり、それぞれ別々の酵素が関わっていることは書かれていますが、そのメカニズムは書かれていません。お忙しいところ申し訳ありません。お教えいただければ幸いです。(2005.9.14)

A:僕の理解では、フルクトースは、水溶液中では5員環構造と6員環構造が直鎖構造を介して平衡状態になっています。従って「生体内では5員環構造になる」ということはないと思うのですが。これは、「スクロース内では5員環構造になる」という意味でしょうね。
 5員環と6員環の相互変換は直鎖状の状態を介しますから、スクロースの中では、5員環が6員環に変わることはできません。6員環型のフルクトースとグルコースが結合した物質が存在するのかどうかは、僕は知らないのですが、存在したとしても、それはスクロースではないことになります。酵素反応などにおいては、5員環の構造と6員環の構造は別の基質として認識され得ますから、スクロースを合成する際に酵素が5員環の構造を結合させるような酵素であれば、スクロースができることになります。
 つまり、答えとしては、フルクトースの状態では5員環構造と6員環構造が相互変換できるが、スクロースの状態ではそれができないため、ということになるかと思います。(というか、相互変換できない2つの状態の片方にスクロースという名前が付いてる、というべきでしょうか)


Q:明反応の存在を確認したヒルの実験の解釈について話題になりました。葉緑体の懸濁液に二酸化炭素がない状態でシュウ酸鉄(Ⅲ)を入れて光を当てると酸素が発生したことを図解した資料集に、わざわざ補足説明として「植物体では電子の受容体はNADPである」と書いてある点が問題となりました。最終的に電子を受容する物質は3価の鉄という点は納得した上で、このような補足説明があるのだから、ヒルの実験ではNADPが働いていないのではないか、光化学系IIで水を分解して出た電子をNADPHを介さずに直接3価の鉄が受け取っているのではないかとの疑問が出されました。NADPが存在しなくとも光化学系IIが動いて水を分解できるのかという疑問と考えてもらっても良いです。NADPが無いと反応が進まないのではないかという意見も出ましたが、どちらが正しいのでしょうか。(2005.9.14)

A:単離葉緑体には、包膜が維持された無傷葉緑体の他に、包膜が傷んでしまった破壊(?)葉緑体(=チラコイド膜)があります。ヒルの時代には、無傷葉緑体はとることができず、葉緑体といっても、事実上はチラコイド膜でした。それだからこそ、カルビンサイクルの酵素などが失われており、たとえ二酸化炭素があっても、酸素を発生しなかったのです。フェレドキシンやNADPなどは、カルビンサイクルの酵素などよりもむしろ低分子ですから、やはり失われており、従って、NADPはヒルの実験では働いておりません。
 シュウ酸鉄に関しては、正確には知らないのですが、フェリシアン化カリウムの場合は、光化学系Iからも光化学系IIからも電子を受け取ることができます。電子伝達系がインタクトな場合は、主に光化学系Iから電子を受け取り、電子伝達系に損傷があると、光化学系IIから電子を受け取る割合が増えるようです。
 もっとも、無傷葉緑体を使う場合は、むしろ包膜の存在が問題となり、内包膜はイオンの透過性が低いので、無傷葉緑体は、鉄を入れても包膜の内部に入れず、電子を受け取ることができません。低張処理などをして、包膜を破壊すると、ようやく電子受容体として働くことができるようになります。このこと自体、ヒルの実験では、葉緑体が無傷ではなかったことを示しています。
 余談になりますが、これを使って、使っている葉緑体がどの程度インタクトかを、低張処理をする前とあとの鉄への電子伝達速度を比較することによって見積もることがよくなされます。低張処理をした時に活性が増えれば、その分は無傷葉緑体で、最初から活性がある分は、包膜が壊れている、と判断できます。


Q:素朴な質問です。コンラート・ローレンツの著書「ソロモンの指環」にアクアリウムについて、次の文章があります。「動物と植物が1つの生物学的な平衡のもとで生活している」
 この文章をもとにしてアクアリウムを実際に作ってみると、水槽に水草(カナダモ)とメダカを入れておくと、餌を与えなくても長期間飼育できます。このときのメダカの呼吸に必要な酸素は、すべてカナダモが光合成によって作り出した酸素と考えてよいのでしょうか?それとも、水槽内の藻類が作り出した酸素も少しはメダカの呼吸に使われていると考えたほうがよのでしょうか。水槽内でカナダモと藻類の作り出す酸素の量についてお教えください。(2005.9.11)

A:おおざっぱに言ってしまえば、植物や藻類が酸素を発生する量は、その現存量(クロロフィル量)に比例します。従って、水槽内での酸素発生に、カナダモと藻類がどの程度寄与するかは、それぞれがどのぐらい存在するかに依存し、それぞれがどの程度存在するかは、まさに「生物学的な平衡」によって決まります。僕はメダカの食性をよく知らないのですが、もし、メダカが微細藻類を好んで食べるが、カナダモはあまり食べないような場合、平衡状態における現存量は、カナダモが大部分を占めるでしょう。そのような時は、メダカが呼吸に使う酸素は、大部分カナダモによって作られることになります。しかし、別に酸素に目印がつくわけではないので、ある割合で、微細藻類がいれば、それらが発生した酸素も、その割合でメダカの呼吸に使われることになります。


Q:現在、植物の色の退色について調べるためにクロロフィルの分解機構について調べています。クロロフィルにクロロフィラーゼが働くことにより、クロロフィリドとフィトールとなるということはわかったのですが、その後にどのような酵素が働きMgが除かれるのかわかりません。あとクロロフィルの退色は何種類の酵素が働いたら確認できるのかについて、すいませんが教えていただけないでしょうか。(2005.9.9)

A:クロロフィルはクロロフィラーゼの働きでクロロフィリドaになったあと、マグネシウムデキレターゼの働きにより、Mgがはずれてフェオフォルバイドaになります。さらに4つほどの酵素の働きで吸収や蛍光のほとんどない分解産物にまで分解されます。退色、という場合、定義がやや曖昧ですが、分解の中間産物がどこかで蓄積することはあまりないので、上記の合計6つぐらいの酵素がはたらくとほぼ色がなくなる、と考えてよいように思います。


Q:教科書に光合成で水が使われると書いてあったんです。光合成は日光を浴びて二酸化炭素を吸収し酸素を出すだけかと思っていたのですが、水って何に何のために使われるのですか?(2005.9.8)

A:実は光合成で出てくる酸素は、その水が分解されて出来たものです。光合成では二酸化炭素から糖を作りますが、二酸化炭素は炭素に酸素がくっついたものであるのに対して、糖は、炭素、酸素の他に水素が結合しています。一方で、水は酸素と水素から出来ています。つまり、(簡単のために非常におおざっぱな言い方をすれば)二酸化炭素から糖を作るためには水素が足りないので、それを水から引き抜くと、酸素が余るので、それを捨てる、という感じだと考えてください。実際には、そのように、単純に水素が動くわけではありませんが、概念的にはそんな感じです。つまり、水は水素(より専門的にいうと還元力)の供給源で、出てくる酸素は植物にとってはただの廃棄物です。


Q:光合成をしない植物はありますか???調べたのですが、よく載ってなかったので。(2005.9.4)

A:植物は光合成でエネルギーを得ていますので、光合成をしない場合は、他の何かからエネルギーをとらなくてはなりません。食虫植物の場合は、たいていは、虫からのエネルギーは補助的な役割しか果たさず、実際には光合成が中心ですが、寄生植物の中には、全く光合成をしないものがあります。


Q:はじめて、質問します。私は農家の栽培・経営を応援する職に就いている者です。
 ビニールハウスで野菜や花きを栽培する際、あまり、強い光を必要としない品目の場合、寒冷紗や防風ネット等で遮光をします。夏場であれば、50〜70%、冬場は20〜40%等、季節に応じて遮光資材を選定します。
 ところが現場では、農家によって青色や黒色の資材がまちまちで選定されています(安価のものを購入)。
 私は、仮に同じ遮光率であっても、黒色と青色の資材では、その資材を通して透過された光の質は異なるために、農作物の生育速度や葉色、葉の厚み、開花の時期などが異なっていると感じています。単にかん水や施肥管理の栽培技術の差による違いばかりでなく・・・。
 遮光率何%がいいのかの話題はよく議論されても、何色がいいのかは、あまり話題にあがりません。光の強さは一日の時間帯や毎日の天気、季節で異なるため、年間を通して収穫する品目では、植物の生産能力を高めるためには、雨天や曇天日、また朝夕は遮光資材を巻き上げる等の管理が必要なのでしょうが、その農家での実証にはリスクがあって難しいところです。
 青い防風ネットを通して透過された光は、青以外の光をカットして光の強さが弱められ、例えば、三万ルクスくらいが光飽和点にあるような陰生植物にとっては、光合成活性が高まる光が降り注がれたような状況になっているのではと考えます(赤色も重要なのですが・・・)。
 このHPのQ&Aででてくる特別なフィルターや発光ダイオードなどばかりでなく、農業用遮光資材でも、光合成能力に影響があるのかを教えてください。また、参考になる研究文献等がありましたら紹介して頂けないでしょうか。
 また、生産現場には赤色や緑色の防風ネットや遮光資材はまず、使われていませんが、仮に使用した場合、青色や黒色のものとはどのような生育や反応の違いが予想されるかもお教え願いませんでしょうか?
よろしくお願い致します。(2005.9.3)

A:まず、議論に入る前に一つ問題になることとして、「見た目の色」と「光の色」が必ずしも対応するとは限らない、ということがあります。例えば、400 nm以上のの光を幅広く通すフィルターと、500 nmの近くの光を狭い領域で通すフィルターは、どちらも見た目は黄色に見えますが、光のスペクトルとしては全く異なります。従って、もし、きちんと調べる場合には、単に遮光材の見た目だけではなく、遮光材を通ってきた光のスペクトルを測定する必要があります。
 次に、光合成に対する影響を考えると、植物の主な光合成色素であるクロロフィルは、赤い領域と青い領域に主な吸収帯を持ち、そのどちらで光を吸収しても、全く同じ光合成が起こります。従って、光合成に関しては、赤か青か、どちらかの光さえあたっていれば問題ない、ということになります。赤と青の中間に位置する緑色の光だけがあたっている場合は、光合成の効率は落ちますが、クロロフィルによる吸収は0ではないので、少ないながらも光合成は可能で、光を弱くした時と同様の効果を持つと考えられます。
 光合成色素以外に、植物が光の感知に使っている物質には、フィトクローム、クリプトクローム、フォトトロピンの3つがあります。フィトクロームは赤色光と赤外光を感知し、クリプトクロームとフォトトロピンは青色光を感知します。フィトクロームにおいては、赤色光と赤外光は、お互いに逆の作用をもたらすので、それらの光の絶対的な強さというよりは、赤色光と赤外光のバランスが問題となります。植物が単独に生育している時にはしっかりした形態を持つのに、群落の中に隠れていると、ひょろひょろ伸びることが多いには、群落の中では赤色光に対して、赤外光が相対的に強いことに起因します。赤外光の量は目で見てもわからないので、ここでも上に述べた光のスペクトルを調べることが必須となります。
 青い光の受容体は、葉緑体の移動、気孔の開閉、光屈性、形態形成などに幅広い影響を持っています。従って、一口に反応の違いを予測することは困難です。また、葉緑体の移動の場合などは、同じ青色光でも、その光の強さによって全く正反対の反応を引き起こすことが知られています。従って、光のスペクトルと強さがわからない状態では、どちらにせよ植物の反応を予測することは困難だと思います。

Q:質問へのご回答ありがとうございました。
資材毎のスペクトル測定がやはり重要なのだということがわかりました。先生の回答の冒頭の、【「見た目の色」と「光の色」が必ずしも対応するとは限らない、例えば、400 nm以上のの光を幅広く通すフィルターと、500 nmの近くの光を狭い領域で通すフィルターは、どちらも見た目は黄色に見えますが、光のスペクトルとしては全く異なります。】の、「どちらも黄色に見える」ということは意外でした。
 どうも、中学校・高校の時に「多くの植物が緑色をしているのは、葉緑体が緑色の光を吸収しない、反射するために緑色に見える。他の色を特異的に(特に赤と青)吸収するため。また、物体が黒く見えるのは、多くの光のスペクトルを吸収するため」と習った記憶がこのような発想と質問になってしまいました。
 再度、確認を踏まえた質問です。前回の質問で、フィルター(私は色の付いた、ある波長を特異的に吸収するビニール的なものを想定)で書きましたが、遮光資材をメッシュ・網目と考えた場合、同じ遮光率である青色の遮光資材と黒色の遮光資材の光のスペクトルでは、青色資材の方が光合成に必要(有効)な青色の領域がたくさんある(残っている)という考えはいけないのでしょうか?メッシュの網目をくぐって透過された光(繊維にぶつからなかった光)は黒色資材であれ、青色資材であれ同じなので、資材(繊維)にぶつかって吸収され、それ以外の残った波長のものが透過されると考えたからです。やはり、いずれにせよ、スペクトルを測らないと言い切れないということなのでしょうか?。当然、繊維の太さや厚み、網の縫い方でも変わるとは思いますが・・・。究極は、遮光率(透過率)とは何だ!というところになってしまいそうなのですが、よろしくお願いします。(2005.9.8)

A:吸収されなかった光が全て透過光になるわけではありません。実際は
全体の光=吸収光+散乱光+透過光
となりますから、透過してくる光の強さは吸収だけでなく散乱によっても影響されます。透明なフィルターなどの場合は、吸収の影響の方が散乱の影響より圧倒的に大きいのですが、メッシュのような遮光資材(被陰格子ですね)の場合は、吸収というよりも、散乱の影響の方が、大きくなりかねません。例えば、理想的には何も吸収しない白色の被陰格子でも、格子にあたった光は散乱によって方向が変わりますから、全体としての透過光は直射日光に比べるとかなり弱くなります。散乱の強さは、色だけではなく、被陰格子の材質にもよりますから、やはり実測が欠かせないと思います。


Q:めかぶをボイルする際、綺麗な緑色に発色させ、維持させるにはどうしたら良いのでしょうか?(2005.9.2)

A:めかぶは、ワカメの一部分で、生物種としては褐藻になります。褐藻は、光合成色素としてクロロフィルの他にフコキサンチンというキサントフィル(親水性のカロチノイド)を持っています。色調は、フコキサンチンを大量に持っているため、黄色から褐色に見えます。
 僕は食品化学の専門家ではないので、ここからは推測ですが、ボイルすると緑色になるのは、クロロフィルが熱に対して相対的に安定なため、フコキサンチンの色が消失してもクロロフィルが残るためでしょう。同様なことは、フィコビリンという赤い色素を持っている紅藻(アサクサノリなど)でも見られます。クロロフィルは、熱に対して安定といっても、あくまで相対的なもので、いつまでも熱をかけていれば、分解します。従って、まず、緑色になったらすぐにさます必要があるでしょう。また、クロロフィルは、酸によってフェオフィチンという褐色の色素に変化してしまいます。従って、お酢などを加える場合は、なるべく食べる直前にした方がよいかと思います。他に一般的な注意としては、色素は光があたっていると不安定なので、なるべく暗所に保存した方が色を維持できます。


Q:クロロフィルというのは水に溶けない、とありましたが、それではホウレン草などを茹でたあとの水に残った水が緑色なのはクロロフィルが溶け出したからではないのですか?(カロチノイドについても同じ疑問をもっています。ニンジンやパプリカなどをずーっと煮詰めているとうっすらと赤い(橙?)水になるのですが、これもやはりカロチノイドではないのでしょうか)
 また、こちらはあまり「光合成」色素としてのクロロフィルとは関係ないのでお暇があればお答えいただきたいのですが、クロロフィルは酸性で褐色になるというのは本当でしょうか。塩基性では変色しないのでしょうか。また、なぜ変色を起こすのでしょうか。このこと(なぜ変色を起こすのか)を調べている時に出てきたのがフェオフィチンですが、クロロフィルは熱によってフェオフィチンになるとありました。pHの変化とクロロフィルのフェオフィチン化?は関係ないのでしょうか。(2005.9.2)

A:ホウレンソウのゆで汁は、ホウレンソウが中に入っている時は何となく緑色に見えますが、ホウレンソウを引き上げて、ゆで汁だけを透明な容器に入れてよく見ると、色は、それほど緑というほどではないように思います。どちらかというと黄色から褐色に近いような色だと思うのですが。ちゃんと調べてみたことはないのですが、クロロフィルの含有量は高くないと思います。
 カロチノイドについては、種類がいくつかあり、βーカロチンなどは水に全く溶けませんが、より水と親和性の高いカロチノイドの一群(キサントフィルと呼ばれます)の中には、ある程度は水に溶け出すものがあるかも知れません。ただ、色が本当にキサントフィルによるものかどうかは確かめたことがないので、よくわかりません。
 クロロフィルは確かに酸性で褐色になります。これは、まさに、クロロフィルがフェオフィチンになることによります。実際には、熱処理よりもむしろ酸処理の方がフェオフィチン化が速やかに進行します。クロロフィルの分子の中央にはマグネシウム原子が存在するのですが、これが水素に置き換わるとフェオフィチンになります。pHが酸性というのは、水素イオン濃度が高い、ということですから、酸性条件下では、クロロフィルのマグネシウムが水素に置き換わりやすくなり、フェオフィチンになって褐色に見えるようになるわけです。


Q:光の色によって光合成量に変化があるか調べました。その結果赤、黄色、青、緑の順になった。葉は緑色なのになぜ、緑は吸収しにくいのか。(2005.8.30)

A:色と光の関係については、下の質問の回答を見て頂くとわかると思います。


Q:夏休みの宿題の自由研究で、植物の呼吸について調べているのですが、「植物は呼吸をしているだけでどうやってエネルギーを取り出しているのか」また、「そのエネルギーは何に使われているのか」が分かりません。なので教えて下さい。あ、それと、もう夏休みが終ってしまうので、大至急でお願いできますか??(9月1日に提出なんです)。でも、むりだったら遅くてもかまいません。でもなるべく大至急でお願いします!うるさいやつですいません;;では☆(2005.8.30)

A:大至急は構わないのですが、質問の意味がどうも今ひとつわかりません。「植物は呼吸をしているだけで」とのことですが、植物は光合成もしていて、そこからもエネルギーを取り出しています。夜があっても生きていける、ということを言っているのでしょうか?そうだとしたら、答えは「動物と同じようにミトコンドリアの機能によってエネルギーを取り出している」というのが答えになると思いますが、本当にそのような質問なのでしょうか?
 「そのエネルギーは何に使われているのか」も今ひとつわかりません。あらゆる生命活動にエネルギーが必要ですから、「生命活動の維持に使われている」というのが答えになると思いますが、何か当たり前すぎるような・・・
 ご自分で質問の意味はわかっていますか?質問をする前には「質問のコツ」を見てくださいね。

Q:最初の質問で聞きたかったのは、呼吸をするとエネルギーが作られるって事は、呼吸をした事によって植物の中で何かが起こってエネルギーが作られるということですよね?その「何か」がなんなのかが知りたかったんです。それで、けっきょく「何か」は何なのでしょうか?
2つ目にした質問は、私は植物が呼吸で作ったエネルギーは、何か1つに使われていて、他に使うエネルギーは、何か他の事で作られているんだと思っていたんです。だから「何に使われているのか」と質問したんです。でも何か1つではなく、いろいろな事に使われていたんですね。変な質問をしてしまってすいません;;今度は意味分かりますかね??分からなかったらごめんなさい;;それで・・・また大至急で答えていただけますか?お願いしますっ!では☆(2005.8.30)

A:動物の場合は、スーハーと息をすることも呼吸といいます。これとは別に、細胞の中では呼吸の反応が起こっていて、その結果、酸素が吸収されて二酸化炭素が放出されるので、それらのガスを交換するために息をします。息をする部分は、細胞内の呼吸と間違わないように「外呼吸」ということもあります。植物の場合は、息はしませんから外呼吸はありませんが、細胞内では、動物とほぼ同じ呼吸の反応が起こっています。その意味では、ご質問の「何か」は呼吸そのものなのです。具体的には、細胞の中のさらにミトコンドリアという器官の中で非常に多くの化学反応が起こっていて、その数多くの反応の全体が呼吸です。そして、呼吸の反応によって生物がエネルギー源として使うATPという物質が合成されます。これで答えになっていますでしょうか?


Q:初めて投稿させて頂きます。『オオカナダモの葉をしばらく熱湯に浸して、ヨウ素液を加えてその反応を調べる』という実験を行いました。それで、ヨウ素反応後の葉緑体がヨウ素反応前の葉緑体より減っていた気がしたのですが。ゎたしの気のせいでしょうか?もしお馬鹿な私の気のせいでなければ、私の脳みそでも解るように出来るだけ簡単に詳しく教えていただけると嬉しいですw勝手なことを言ってすみません。宜しくお願いしますm(_ _;)m (2005.8.28)

A:「葉緑体が減っていた」とのお話ですが、どのようなことから葉緑体が減ったと判断したのでしょうか?葉緑体の数を調べるのは、おそらく中学の実験レベルでは無理だと思うのですが・・・
 もしかしたら、葉緑素(クロロフィル)の間違いでしょうか?ヨウ素反応をしたら緑色が薄くなった、ということですか?その場合、ヨウ素液を加えると茶色になりますが、茶色が濃くなるだけでなく、緑色が薄くなったのがわかったのでしょうか?そうだとしたら、かなりの心眼の持ち主とお見受けします。
 あと、普通、ヨウ素反応の色をはっきり見るために、熱湯に浸した後、アルコールでクロロフィルを葉から除く操作をすることが多いかと思います。その場合には、もちろん、その段階で、緑色は薄くなることになります。
 あまり、要領を得ない答えで恐縮ですが、僕の脳みそでもわかるようにできるだけはっきりと質問して頂ければ、よりわかりやすい回答をすることができるかと思います。


Q:私は㊥3です。ナスの指示薬で水溶液の性質を調べる実験をしました。なぜナスが酸性とかを示すことができるのか知りたいのですが、調べてもでてきません。ナスの色素とかですか?光合成に関係ない質問をして申し訳ありませんが、参考になることなど教えていただけたらうれしいです。(2005.8.22)

A:その通りです。ナスの色素は酸性かアルカリ性か(pHといいます)で色が変わります。植物の花や実の色素はアントシアンという色素の仲間であることが多いのですが、この仲間は、そのような性質を示すものが多くあります。専門ではないので詳しくはありませんが、アジサイの花の色が生えている場所によって違って見えるのも、花の色素がpHによって変化するからだそうです。


Q:小学校6年生です。夏休みの自由研究で2つの光合成の実験をしています。
1)サボテンはとげは光合成に影響があるかどうかをしらべたい
  一つの鉢のサボテンのとげをとったものと、とらなかったものを用意しました。サボテンは昼間は光合成をしないと聞いていたので、十分お天気のいい日に朝11時、夕方5時、朝5時にそれぞれ切り出したサボテンででんぷんの反応をみましたが変化を確認できませんでした。このサイトのよくある質問で、「十分葉緑素を抜かないと反応を見られない」とあったので、お湯で20分ぐらい湯がいてから、あたためたエタノールにずっと浸していたのですがサボテンは真っ白にはなりませんでした。暖めすぎてだめだったのでしょうか?繊維が硬すぎるサボテンのような植物で葉緑素を抜く方法は他にあるのでしょうか?
 その他何か、改善できる点がありましたらおしえていただけますようお願いします。   
2)ピーマンやさやインゲンは実やさやでの光合成
 サボテンでうまくいかなかったので、ピーマンやインゲンでも同じように実験してみましたが、(日に当てる前と、当てたあと)やはり真っ白にならずでんぷんの反応を確認できませんでした。
 ピーマンやインゲンはスーパーで買ってきた、実のままで実験しましたが、これでは(苗ごとでないと)確認できないのでしょうか?(2005.8.22)

A:ヨウ素デンプン反応の実験ですね。実は、僕自身、サボテンやピーマンの実などでヨウ素デンプン反応の実験をしたことがないので、これに関しては全くの素人です。お話を聞くかぎりにおいては、やはり、クロロフィルの抜けが悪いのが原因かも知れません。その場合に重要なのは、例えばアサガオの葉など、ちゃんと実験がうまくいくはずのものでは、うまくクロロフィルが抜けているかどうかを確認することです。もし、アサガオの葉でもうまくいかないのであれば、手順が悪いことになります。一方で、アサガオの葉ではうまくいくのに、サボテンにするとダメな場合は、サボテンの特殊性に原因があることになります。まずは、それを確かめてみてはどうでしょうか?そもそも、アサガオの葉でも、「真っ白」という感じには、なかなか色素が抜けませんよね。
 あと、もし、サボテンの特殊性が原因の場合は、切り出したサボテンの厚みなども問題かも知れません。カミソリなどで、なるべく薄く表面をそぐようにすると、少しはクロロフィルの抜けがよくなるかも知れません。


Q:セイロンベンケイソウの葉で、光の色による成長の違いの実験をしました。葉の大きさ、水分、容器の大きさも一緒にしました。青、黄色、赤、緑、透明、のセロハンを容器全体に貼りました。結果、成長は、青が一番早く、次に透明、その次は赤の順で、黄色、緑は根も芽もでません。どうして、青、透明、赤の順になったのでしょうか?教えてください。(2005.8.22)

A:実験の解釈というのは、「正解」というのはなくて、あくまで「考えてみる」ことしかできません。また、この考えてみることが、実験の上で一番重要なぐらいですから、まずは、自分で考えてみることが重要です。
 ただし、実験の精度に関してヒントを書いておきます。セロハンを貼り付ける実験では、下に書いてあるように、色だけではなく、光の明るさも同時に変わってしまう可能性があります。これをきちんとそろえているならば別ですが、通常の実験では、明るさについては分かりませんから、小さな差を議論するのは難しいと思います。実験には誤差がつきものですから、多少、成長が違っても、それが本当に条件の差によるものなのかどうかは、数多く実験を繰り返してみないと分かりません。一方で、今回の実験の場合、黄色、緑に関しては、「根も芽も出ない」ということですから、これは意味がある差のように思います。
 とすれば、「青、透明、赤」で成長をして、「黄色、緑」では成長をしない、という結果からまず、考えてみることでしょう。「青、透明、赤」の順番に関しては、実験の精度を考えると「あまり差がない」という結論も選択肢の一つとして考える必要があると思います。


Q:こんにちわ。私はこの夏休みに植物を使い、自由研究をしています。
「「植物は、当てる光によって成長はどのように違うのか」」
というテーマでいま 赤・黄色・緑 のセロハンを使ってそれぞれの色しか当たらないように育てています。しかし!!成長の違いがはっきりと分かる実験が見つからずに困っています。思いつく事といったら、葉の大きさを比べたり、丈を比べたり・・・。でもそれらは、実験をしなくても分かることぢゃないですか。だから何か実験でしか分からない成長の違いを見つけるにはどんな実験をしたら良いでしょうか。ちなみに育てている植物は、バジルです。(2005.8.22)

A:おそらく、「実験をしなくても分かる」ということはないでしょう。例えば、「色の違いによって」実験をしているつもりでも、実際には、セロハンを使うことによって、使わない時に比べたら光の強さが弱くなりますよね。例えば、赤のセロハンの時と、緑のセロハンの時で、その弱くなり具合が同じかどうか確かめられるでしょうか?もし同じでないと、実験結果に差が出ても、それが色のせいなのか、強さのせいなのか分かりません。逆に言うと、強さがきちんと分からないと、実験の結果は分からないと思うのですが?
 おそらく、実験で測定する項目は、「葉の大きさ」などのなるべく単純で測りやすいものにして、むしろ実験の条件をきちんと考えた方がよいと思います。つまり、色の効果を調べたかったら、色以外の条件はなるべく同じである実験(対照実験)をする必要があります。対照実験を、どのようにデザインするかが、多くの実験でポイントになります。

Q:前回は「「植物を当てる光を変えて育ててる」」とお話しました。そこでお返事を頂きまして、、、赤の光と緑の光と黄色の光では、当たる光の強さが違うとおっしゃいましたね。当たる光の強さについてなんとなくは理解ができますがどの色がどのように光を通す性質なのかが分からないのでそこを、私が分かるくらいの説明で良いので教えていただきたいです。あと光合成に色は関係あるのでしょうか?何にも知らなくってすみません。

A:太陽の光がプリズムを通ると虹の七色に分かれることからもわかるように、白い光というのは、いろいろな色が混ざったものです。このいろいろな光を全て吸収してしまうものがあると、光がなくなってしまいますから、黒く見えます。全部反射してしまえば、またいろいろな色が混ざりますから、白になります。一方で、例えば、赤い光と青い光を吸収すると、残りの緑色の部分が反射されますから、ものは緑色に見えます。緑色の光と青い光を吸収するものは赤く見えます。それでは、赤いものに赤い光を当てたらどうなるでしょう?赤い光を吸収しないから、赤く見えているのですから、赤いものは赤い光は吸収せずに反射するはずです。
 そこで、光合成の問題になるのですが、光合成は光のエネルギーを利用します。その時に赤と青の光を吸収する葉緑素(クロロフィル)というもので、光を吸収します。クロロフィルが何色に見えるかは、上の説明でわかりますよね。光合成に使うには、光が反射されてはだめで、吸収されなくてはなりません。それを考えると何色に光を当てた時に光合成をして、何色の時は光合成をしないでしょうか?これでだいたいわからないかな?


Q:光合成について実験したいのですが、どんな植物をつかったらよいのですか?(2006.8.22)

A:それは、どんな実験をするのかによりますから、一概には言えませんねえ。


Q:いきなりですが、(蛍光灯を使って夜でも光合成ができるのかなぁ?)、と思いましたが、もし、それができて、それをずっと続けたら何か問題がおこるのですか。あるなら、それはどんなことですか。(2005.8.22)

A:下にほぼ同じ質問がありますが、それでわからないところはどこでしょうね。もしかしたら、「夜でも」という所に重点があって、24時間光を当てて夜をなくしてしまっても大丈夫か、という質問でしょうか。それでしたら、基本的には大丈夫です。少なくとも光合成という面から見た場合には、夜がなくても光合成をしますし、植物は育ちます。


Q:蛍光灯などの人工的な光でも植物は光合成をするのでしょうか?教えてください。よろしくお願いします。(2005.8.19)

A:人工の光での光合成については、過去の質問をご覧下さい。蛍光灯は、太陽の光に比べると、赤外線が少ないので、植物体の形が少し変わるかと思いますが、光が充分強ければ、基本的には光合成をして元気に育ちます。


Q:はじめまして、私は中2で、小学校2年の時からクズについて夏休みの自由研究をしてきました。クズについていろいろな研究をしてきて、クズは葉の単位面積あたりの蒸散量はケナフよりも多いことから、クズはケナフよりも光合成量が多いのだと理解していました。しかし、先生のホームページをみて、必ずしもそうではないとわかりました。クズは地上部の成長も早く、地下に大量のでんぷんを貯蔵することから、光合成が盛んに行われていることは確かだと思います。またクズはマメ科だから、空中の窒素を使って栄養にすることが出来るかもしれないと母から聞くと、クズの旺盛な成長量は純粋に光合成の力と考えてよいのか分らなくなってしまいました。水草のように、クズやケナフを重曹の水溶液にすっぽり入れて実験して光合成量を比較してもよいですか?(気泡は出てきました。)また、もし重曹水入りペットボトルに葉をいれ、phの変化で比較するのであれば、葉は同じ大きさにあらかじめ切って入れる必要があるとおもいますが、問題ありませんか?お忙しいところすみません。(2005.8.17)

A:クズが成長の速い植物であることは間違いないでしょうね。一方で、異なる植物の光合成を「公平に」比較するのは、案外難しいのです。難しさの原因の1つは、得意分野の違いです。世の中には明るいところに生える陽生植物と暗いところに生える陰生植物があります。通常、陽生植物の方が陰生植物より成長が速く、光合成活性も高い、という言い方をしますが、これは、光合成を明るいところで測定することが多いからです。もし、2種類の植物を暗い条件において光合成を比較したら、暗い植物の方が光合成活性が高いことは充分にあり得ます。国語の得意な人と算数の得意な人の成績を比べるようなものですね。試験の科目によって結果は違ってきてしまいます。
 また、自然の状態では、光合成を常に最大限できるような環境にいることはまれです。たいていの野生植物の場合、光が弱い、温度が充分でない、水が不足している、などといった完全ではない条件の下で生育しています。その場合は、光合成の最大活性だけではなく、それらの不十分な環境でも、光合成を維持できる能力が重要になってくる場合が多くあります。
 ペットボトルによる酸素の発生量を比較する実験は、簡単でよい実験ですが、量をきちんと量ろうとすると、案外難しいかも知れません。ただ、中学生でできる実験となると、定量性のある実験は他に思いつきませんので、それで何とかするしかないと思います。もちろん葉の大きさなどはそろえる必要があるでしょう。クズは葉が大きいので、切ることになりますが、切ってから2、3時間だったら、光合成はそんなには落ちてこないと思います。pHの変化は、必ずしも光合成量と比例関係にあるわけではないので、できたら酸素の発生量で比較した方がよいでしょう。また、光の当たり具合も同じようにする必要があります。もしかしたら、葉の向きを固定する必要なども出るかも知れません。
 最後に、1つだけ。光合成活性が低いからといってダメな植物、というわけではありません。高い光合成を得るためには、高い蒸散が必要になりますが、そのためには太い道管が必要です。ところが、道管が太いと、冬に温度が下がる地方では、道管内の水が凍って植物体にダメージを与えます。そのため、北の方の常緑樹は、道管が細く、光合成活性の低いものが多いのです。このように、光合成活性が低いことの裏には、それを補うような、何らかの利益がある場合が多いようです。


Q:理科の自由研究でクロマトグラフィーの実験をしたいのですが、中学生でもできる簡単で説明し易い実験はないでしょうか?失礼ですが、出来るだけ詳しく教えて下さい。(2005.8.15)

A:クロマトグラフィーの実験は有機溶媒を使いますので、中学生ですと難しいのではないでしょうか。メタノールならかろうじて薬局でも売っていますが、劇物扱いなので、中学生には売ってもらえないと思います。
 ところで、実験というものは、本来は、何か疑問があって、その疑問を明らかにするためにするものです。もちろん、大学などでは、テクニックを身につけることも重要なので、「クロマトグラフィーの実験をしたい」という場合もあり得ますが、中学や高校の、それも自由研究に求められることは、疑問から出発して、その疑問を明らかにするための実験を考えて、実験を行い、結果から疑問に対する答えを考察する、というプロセスです。この場合、実験自体は、簡単で、できれば学校でやったことがあるようなものの方が、より効果的です。学校でやった実験を思い返して、そこから発展するような疑問を考えて、その疑問に答えを与えるような実験を自分で考えることができれば、一番すばらしいと思います。


Q:光合成植物は太陽光を利用してどのように有機物を合成するのか教えてください。お願いします。大学の宿題なんです。。(2005.8.15)

A:「質問のコツ」を読んでませんね。読んでから再度ご質問下さい。


Q:夏休みの自由研究に光合成の実験をしたいのですが、葉は何時間くらい日光に当てておけば良いのですか。中学生なので、なるべく簡単に教えてください。お願いします。(2005.8.13)

A:世の中に光合成の実験といえば1つしかない、と思ったら大間違いで、色々あるので一概には言えませんが、中学生だとヨウ素デンプン反応でしょうか。それだと、一番確実なのは、日中ずっとあてておくことです。もし、もっと時間を節約したいのであれば、もちろん光の強さにも寄りますが、2時間ぐらい当てれば、差を見ることができるかも知れません。


Q:薄層クロマトグラフィーで、クロロフィルの定量を行いました。クロロフィルを除去できたかを確かめるためなのですが、薄い、黄色のバンドがうっすらと見えます。しかし、紫外線照射し見ると、いくつかの色のないバンドが薄黒く見えます。これは、いったいどういう事でしょう?また、発色を良くする方法がありますか?(2005.8.12)

A:クロロフィルがある場合は、その量が多いので、あまり他のバンドは気にならないと思いますが、ご質問のように、クロロフィルを除去していると、普段注目していない薄いバンドにも気が付く、ということではないでしょうか。「薄黒く」というのに、もう一息正確なイメージを持てないのですが、可視の吸収を持たずに紫外線照射によって蛍光を出す物質で、有機溶媒によって抽出されるものは、いくつかあるのではないかと思います。「発色」というのは、クロロフィルのバンドの話でしょうか。もしそれでしたら、濃縮した試料を展開するぐらいしか、手がないと思います。


Q:枝豆を明所で育てると緑色になり、暗所で育てると黄色(もやし)になるのはどうしてですか?暗所で育てたもやしを光にあてると緑になるのはどうしてですか?(2005.8.11)

A:もしかしたらリンクが切れていたかも知れませんが、過去の質問に「もやしはなぜあのような形になるのか」というのがあります。こちらをご覧になって、さらにわからない点がありましたら再度ご質問下さい。

Q:以前に質問したのですが、過去の質問を読んでもよく分からなかったので、もう一度質問します。
①植物を暗所で育てると黄色になるのは、何によってですか?クロロフィルが関係しているのですか?
②暗所で育てたもやしに光を当てると緑になるのは、光合成によってですか?
 また全長がのびたり、葉が開くのも光合成が関係しているのですか。できるだけ詳しくお願いします。(2005.8.16)

A:8月11日の質問で「どうして」と書いてあったので、「Why」に相当する、植物にとっての利益・意味づけを聞いている質問かと思ったのですが、「何によって」というところを見ると、「How」に相当する、メカニズムについて聞いているのでしょうか?「よって」という部分の意味がよくわかりません。
 植物を暗所で育てると黄色になるのは、緑色の色素であるクロロフィルの量が少なくなるからです。その意味では、クロロフィルが関係していますが、それが聞きたかったことでしょうか?
 また、光合成は、光エネルギーによって二酸化炭素から有機物を作る反応です。別に、植物を緑にしたり、全長をのばしたり、葉を開いたりする作用はありません。一方で、ほとんどあらゆる生物反応には炭素源とエネルギーが必要で、植物の場合は、光合成によってそれらを獲得します。その意味では、植物のあらゆる反応は光合成に依存している、という言い方もできます。


Q:理科研究で植物の光合成と栄養について調べています。1つは光合成させたもの、1つはさせないもの、1つは覆いをかぶせて光合成できないようにして、ブドウ糖を与えたもの、1つは同じく光合成ができないようにして、でんぷんを与えました。その4つで実験し、①光合成をしないと植物に悪いのか?②栄養を与えれば光合成する必要がないのか、を調べています。そして、実験を初めて1週間たつのですが、光合成したものは枯れ、後のものはすべて花を咲かせて元気です。この実験結果は正しいのかがわかりません。実験に落ち度があったのかもしれないし、そうではないかもしれません。この実験結果は正しいのか、教えてください。(2005.8.11)

A:実験に関する質問は、もう少し詳しい条件がわからないと、お答えしづらいですね。「光合成したものは枯れ」とのことですが、植物は、人間が特に何もしなければ、普通の状態で光合成をしていますよね。何もしなかったら枯れた、というのは、どう考えてもおかしな気がするのですが?具体的にどのような実験条件だったのかを再度ご質問頂ければと思います。

Q:実験方法は書いたとおりなんですが、なぜか光合成をさせた(なにもしなかった)ものが枯れてしまったのです。最近、こちらでは大雨だったり、気温が上がりすぎたりしているせいかもしれませんが、なぜか枯れてしまいました。それから、光合成させたくないものには、バケツをかぶせていました。わかりにくい文章で申し訳ないのですが、よろしくお願いします。またわかりにくいところがありましたら、どうぞいってください。おねがいします。(2005.8.11)

A:だとすると、やはり実験としては失敗だったように思います。何かの処理をした時の効果を見る実験では、かならず、対照実験を行ないます。そして、何かの処理の効果は、この対照実験の結果と比べて考えることになるわけです。この場合は、何もしなかったものが対照になるわけですが、その対照がそもそも枯れてしまって育たないのであれば、それ以上に何かをした時に、いろいろなことが起こっても、何かを結論することはできません。残念ながら、何もしなかった時には、植物が普通に育つような条件で、実験をやり直すしかないように思います。


Q:桜からピンク色の色素を取り出すとき、桜の花よりも桜の黒い木の幹(樹皮)の方がピンク色の色素を取りだせるという話を聞きました。ただし桜の花が咲く直前の幹だけに限った話ですが・・・。それは樹皮に桜の花と同じ、あるいは花より濃いピンク色の色素が含まれている、ということなのでしょうか?そうだとしたら、幹がピンク色にならないのは何故なのでしょう。幹の黒い色が強いからでしょうか?長くなり、すみません。よろしくお願いします。(2005.8.11)

A:光合成とは直接関係しないので、人から聞いた話になりますが、ご容赦下さい。花の色の色素は様々ですし、1つの色でも複数の色素に よる場合が多いようです。色素の種類としては、アントシアニンと呼ばれる色素の場合が多く、サクラを含むバラ科の植物では、 シアニジンー3−グルコシドというアントシアニンの一種が主要な色素のようです。「天気予知ことわざ辞典」という本には、サクラの花の色素として、クロロフィル・キサントフィル・カロチンがあげられているようで、これを引用した文章も見かけますが、これは誤りでしょう。
 アントシアニンは、花だけでなく、果実の皮、若い芽、樹皮などにも含まれ、サクラの場合は、花の色は薄いので、樹皮などの方が色素の含量は高いでしょう。樹皮といっても、サクラの若い枝の樹皮の部分(曲げわっぱの留め具に使う部分、といってわかりますでしょうか)などは、きれいな赤銅色をしています。「花が咲く直前の幹だけ」ではなく、色素の含有量は高いと思います。幹や太い枝の場合も、黒いごつごつした部分の下には、アントシアニンが含まれる部分があると思います。黒い部分自体ににもアントシアニンが含まれているかどうかについては、よく知りません。


Q:こんにちは、お聞きしたいことがあるのですがSPSの活性が高い植物にはでんぷんが検出されないほかになにか共通点があるのでしょうか?あるいは、その他の植物との違いはありますか?(2005.8.10)

A:うーむ。難しい質問ですね。僕にもよくわかりません。SPSの活性が高い植物では、転流速度が高いと思われるので、師管液の中のショ糖濃度が高いように思いますが、実際にそうなっているかのデータは持ち合わせていません。また、デンプンを貯めるかどうかが違えば、ある環境において損なり得なりがありそうですが、具体的にどうなるのか、どうも予想がつきません。お役に立てずすみません。


Q:学校の宿題で、BTB指示薬の性質を知る。二酸化炭素の酸性を確認し、それを元に植物が光合成によって二酸化炭素を使う事を証明する。と言われこの理論を考えなくてはいけないのですが図書館などで調べてもわからないので是非教えて下さい。なるべく早く返信お願いします。(2005.8.10)

A:おそらく、同じ学校の宿題に関すると思われる質問が、5つ下に載っています。質問の意味がわからない部分まで同じです。また、質問をする際には、「質問のコツ」を読んでから質問して頂けると手間が省けます。

Q:塩酸は酸性のように二酸化炭素は酸性というのはどうやって証明するのですか?できればBTB指示薬を使って教えて下さい。(2005.8.11)

A:酸性・アルカリ性というのは、水溶液の水素イオン濃度(pH)のことですね。しかし、二酸化炭素はガス状の分子で、そのままでは、酸性もアルカリ性もありません。二酸化炭素が水に溶けると一部が炭酸イオンになりますので、その溶液は確かに酸性です。BTB指示薬はpH指示薬の一種です。過去の質問箱は読んでみましたか?


Q:植物の光合成色素(クロロフィル等)は親油性であるのに、どうしてお茶はお湯(又は水)で色が抽出出来るのでしょうか?親水性の色素も混じっている、洗剤の様に両方の性質を持っている色素がある、お茶の製造工程で葉を揉む為に組織が壊れた、等いろいろと考えてみましたがよく分かりません。どうか教えて頂けると嬉しいです。(2005.8.9)

A:僕はお茶の専門家ではないのですが、考えてみることはできますね。煎茶と、ほうじ茶と、抹茶を比べると、煎茶は一番色が薄く、ほとんど黄色なのに対して、ほうじ茶と抹茶は色が濃くてそれぞれ茶色と緑色です。抹茶の場合は、緑色なので、元々のクロロフィルが残っていると考えられます。抹茶の場合は、葉を粉にして、それがお湯に浮いている状態(懸濁状態と言います)になっているので、クロロフィルは水に溶けているのではなく、溶けないまま小さな粒の中に含まれてふらふらしているのでしょう。つまり、実際には、葉から抽出はされていない、ということですね。ほうじ茶の場合、濃い色がでますが、抽出された色は緑色ではなく、茶色です。これは、クロロフィルが熱などによって分解して、その分解産物(茶色なのでしょう)は水に溶けるようになった、と考えるとよく説明できます。煎茶の場合は、ほうじ茶に比べると、お茶の製造工程での処理がマイルドなため、おそらく、その分解産物の量が少なく、色が薄いのでしょう。抽出された色は緑と言うよりは、黄色に近いと思いますので、少なくともクロロフィルそのものの色ではないでしょう。煎茶の主成分は、アミノ酸類、カテキン類とカフェインだといわれています。この中で、カテキン類は短波長の領域に吸収を持ちますからその色かも知れません。ただし、カテキン類は光合成色素ではありません。


Q:はじめまして。今、学校の自由研究で、でんぷんの検出されない植物について調べています。質問箱の方で、でんぷんのない植物にはSPSやショ糖が関係していることがわかりました。そこでお聞きしたいのですが、キク科の植物からはでんぷんが検出されないのですが、それは上のことに関係があるのでしょうか?それとも、たまたま糖に変わっていただけなのでしょうか?中学生でも調べられる方法を教えてください。(2005.8.8)

A:「デンプンが検出されない」という結果が出たら、まず、その理由を考えてみましょう。選択肢を考えてみることが重要です。質問の中にあるように、
1)SPSの活性が高いために光合成産物がデンプンにならずに糖になる
という可能性がまずあります。「たまたま糖に変わる」というのは、どういうことか難しいですが、昼間にたまったデンプンは、夜に分解されて糖になって、他の組織に運ばれますから
2)検出した時には、デンプンが糖に変化した後だった
という可能性もあるでしょう。
最後に、もちろん、
3)何らかの理由(曇り空で光が弱かったなど)で、そもそも光合成をしていなかった
という可能性も排除できません。
 さて、質問に戻りますと、中学生で糖の含量を調べるのは難しいと思います。とすると、デンプンの方をヨウ素デンプン反応か何かで調べるしかありません。可能性1の場合は、どんな条件でもデンプンができません。2の場合は条件を考えて糖に変化する前に検出すれば、デンプンを検出できるはずです。また、他の必ずデンプンを作るとわかっている植物で実験をすれば、可能性3かどうかがわかるでしょう。このように条件と植物種を変えて実験をすることにより、理由を推測できるのではないでしょうか。


Q:簡単な問題だとは思いますが、一応聞いてみる事にしました。光合成をして、でんぷんを作り出すところをなんと言うのですか?お願いします。(2005.8.8)

A:「ところ」というのは場所を聞いているのでしょうね。それでしたら、葉緑体です。


Q:茨城県東海村の海岸砂丘の同一地点に生育する松について、数年間、年数度、当年葉(採取した年に生育する葉)を採取し、水分とそれ以外(乾燥有機物)に分け、有機物については燃焼して水に変換しました。そして、葉の水分および有機物燃焼水に含まれるトリチウム(HTO)濃度を測定しました。一方、松葉採取の最終年に同一地点で松の年輪を採取し、年輪を分離し、その乾燥物を燃焼し水に変換した後、トリチウム濃度を測定することにより、年輪有機物のトリチウム濃度に関する年変化データを得ました。ここで質問は、年輪有機物のトリチウム濃度は、松葉の有機物のトリチウム濃度の約1/2で数年間推移しましたが、何故、年輪を構成する有機物のトリチウム濃度は、松葉のそれの約1/2になるのでしょうか?なお、年輪有機物のトリチウム濃度は、その地点の降水(雨水)の年平均トリチウム濃度に近い値でした。トリチウムは原子炉から大気中へ放出され、風向頻度に応じて松試料採取地点を通過します。また、大気水蒸気トリチウムは降雨により地表に沈着したり、土壌水分との交換反応により地表に沈着します。トリチウム放出源周辺環境では、トリチウム濃度は、大気で最も高く降水中で最も低く観測されます。一方、葉の水分および葉の有機物中のトリチウム濃度は、大気水蒸気のトリチウム濃度の1.0〜0.7程度で推移します(この事実は、種々の植物を大気HTOに暴露する多くの室内および野外実験の結果、世界的に確立されています)。このことは、大気水蒸気が光合成の水素源として無視できないことを示唆します。では、根から吸い上げられる土壌中の水分が光合成、すなわち有機物合成に関与する割合はどの程度でしょうか?気孔の開閉時における大気水蒸気と土壌水分が光合成過程に関与する割合、明反応と暗反応時の有機物の葉から年輪部への転流などが葉の有機物と年輪有機物のトリチウム濃度に差が生じる要因ではないかと定量的な根拠もなく推論していますが、専門外のため、植物生理学の本を少し読んでも答えが見つかりません。なにかヒントになることでもあればご教示をお願いします。(2005.8.8)

A:まず、ご質問の前提となる「大気水蒸気が光合成の水素源として無視できない」との判断ですが、もし光合成の基質としての水を意味しているのであれば、これはあり得ません。2−3年前まで、文部省の検定により、高校の教科書では「水素伝達」という言葉が使われていたことがありましたが、これは、正しくは「電子伝達」で、光合成による水の分解によって使われるのは電子(還元力)であって、水素自体ではありません。光合成の水分解の反応そのものによって水素が植物体に取り込まれるわけではないのです。「葉の水分および葉の有機物中のトリチウム濃度は、大気水蒸気のトリチウム濃度の1.0〜0.7程度で推移する」としても、その理由は、光合成の基質として水が使われることとは無関係です。
 一方で、光合成を含めて、植物の様々な代謝反応には、水を付加する反応がたくさんあります。それらの反応は酵素反応によって触媒されますが、酵素反応の反応速度が、基質の質量が異なると変わる(同位体効果を持つ)例は数多く知られています。どの程度の同位体効果を持つかは、酵素によっても異なりますから、同じ植物でも、異なる代謝産物は異なる同位対比を持つことになります。トリチウムでどこまで調べられているかよく知りませんが、天然同位体の重水素の場合は、セルロース、デンプン、脂肪酸といった成分によって、異なる同位対比を持つことが知られています。植物の木部はセルロースが主成分ですし、葉の場合は他の器官に比べてタンパク質の割合が非常に高くなります。ですから、器官によって異なる同位対比を示すことは、むしろ非常に自然なことではないかと思います。


Q:いきなり質問すぃませんoBTB指示薬の性質を調べろと言われたんですが.... 全然わからなくて((汗
教えてくださぃ!!!! アト、二酸化炭素の酸性を教えてくださぃ!!!!なるべくお返事早くお願いしますo(2005.8.6)

A:BTB指示薬については、過去の質問箱(FAQ)にありますから、そちらを見て頂ければわかると思います。
 「二酸化炭素の酸性」というのは何でしょうか?意味がさっぱりわかりませんが。わかりやすく、再度ご質問下さい。


Q:生物の課題研究で、ピーマンの光合成について調べようとしています。ピーマンに含まれる光合成色素を薄層クロマトグラフィーで分離させようとしたところ、先生から「水溶性の色素と油溶性の色素で分離法を変えてみなさい」と言われました。そこで質問ですが、何かよい分離法をご存じでしたら教えて下さい。また、水溶性と油溶性の色素名も教えていただきたいです。誠に勝手とは思いますが、できるだけ早く教えていただきたいです。(2005.8.2)

A:先生の言葉を誤解しているということはないでしょうか。高等植物の光合成色素で水溶性のものはないと思います。キサントフィルが比較的親水性ですが、それでも水に溶ける、というほどではありません。光合成色素の名前については、過去のいろいろな質問に対する答えをご覧下さい。関連すると思われる質問に、ナスの色素の薄層クロマトグラフィーの実験についての質問があります。この中で触れられているアントシアニン系の色素は水溶性ですが、光合成色素ではありません。


Q:夏休みの自由研究で、太陽の光と、電気の光では、光合成がどう違うのか調べてみたいです。まずは、光の違いについて調べて、次に光合成の量がどう違うのか実験しようと思っています。オオカナダモを水の中にいれて、気泡の数を数えようと思ったのですが、家の中と外では温度が違うので、この実験でいいのかわからないです。何か、光合成の量を調べるいい方法はありますか?(2005.8.2)

A:確かに温度が違うと光合成の速度も変わるでしょうから、何とか温度を同じにしないといけませんね。オオカナダモを使う実験は、そんなに時間がかかりませんから、その間だけなら温度の高い野外の実験の時に温度計で確かめながら氷か何かで温度を部屋の中での実験の時の温度に合わせてみてはどうでしょうか?光合成の量を調べるには、オオカナダモの実験は、一番簡単だと思います。他にも方法が無くはありませんが、定量性を出すのが難しかったり、その実験用の特別な装置が必要だったりします。


Q:光合成の勉強をしていて思ったのですが、緑色植物と光合成細菌のクロロフィルはなぜ違うのですか?(2005.8.2)

A:これは非常に難しい質問です。「なぜ」という質問には、いろいろな答え方があるのですが、ここでは損得を考えてみます。ただし、「なぜ」という質問に対しては、考えることはできますが、必ずしもこれが正解、という答えがあるとは限らないことに注意してください。
 緑色植物はクロロフィルを持っており、光合成細菌はバクテリオクロロフィルを持っています。クロロフィルは可視光を吸収しますが、バクテリオクロロフィルは赤外光を吸収します。ですから、クロロフィルの方がより大きなエネルギーを使うことができます。しかし、もし、クロロフィルがあらゆる面で、クロロフィルよりも優っていれば、バクテリオクロロフィルを持つ生物は絶滅するはずです。実際には、光合成細菌が存在するわけですから、何かバクテリオクロロフィルの方が有利な場合もあるはずです。赤外光の特徴の一つに散乱されづらい、ということがあります。いろいろなものが溶けたり浮遊したりしている水の中に光が通る場合、可視光と赤外光を比べると、赤外光の方が深くまで届きます。ですから、ある程度深い場所に生育する生物にとっては、赤外光を利用した場合には特になるはずです。このように、光の環境によって棲み分けが可能であるから、二種類の生物が異なるクロロフィルを持っている、と説明することが可能です。


Q:水の中の植物は、どうやって光合成をしているんですか?あと、海草の色の違いは、光合成に関係があるのですか?教えて下さい。(2005.7.31)

A:光合成に必要なのは、光と水と二酸化炭素です。水はかなり光を通しますから、植物は水の中でも光を受けることはできますよね。水はもちろん問題ありません。二酸化炭素は、水によく溶けるので、植物は水から二酸化炭素を吸収することができます。水草の二酸化炭素の取り込みについては過去の質問をご覧下さい。
 藻類は、色がいろいろのものがありますが、これは光を集める光合成色素が、種類によって異なるためです。陸上植物はクロロフィルが光合成色素の主なもので、あまりバラエティーがないのですが、水の中の方が空気中に比べて、光の環境が様々なので、光合成色素の違いも大きくなります。


Q:教師1年目で科学部担当をしております。よろしくお願いします。夏休みの自由研究で「光合成の量を知りたい」と生徒が言ってきました。葉の大きさでのちがいや、光を遮断してのちがい、また、育てているケナフと他の植物とのちがいなどをあげています。定量的な実験は難しいと思い、北川式の「気体の検ちゃん」という測定器を使い、「光合成の量」を「二酸化炭素の変化」であらわしてみようと考えました。ジッパー付きのビニール袋を葉にかぶせて息を吹き込み、始めと終わりの濃度を測定してみました。約1時間後、確実に二酸化炭素の濃度は小さくなっているのですが、隙間からの空気の出入りや最初の濃度の違いなど、条件が一律にできません。(なにもない空の袋でも同時に実験を行い、隙間から空気の出入りが大きく影響していることが考えられました)中学生の実験として、身近な陸上植物で光合成の違いを取り上げることは難しいのでしょうか。また、方向転換を図るとすれば、どんなテーマを持ちかけたらよいか悩んでいます。(2005.7.30)

A:最初の濃度の違いに関しては、1つの袋に2種類の植物を入れて(もしくは一方の側に植物を入れて)、間をシーラー(卓上シール機)で区切ったらどうでしょう?シーラーは熱をかけて食べ物などをプラスチックの袋に密封する機械ですが、学校にはないでしょうか。給食の厨房などにありそうな気もしますが。買うと値段は1−2万円だと思います。1つの袋をシーラーで2つに分ければ、2つの袋の最初の二酸化炭素濃度は同じにできますよね?
 隙間の方は、植物体の地上部だけを袋に入れるために、植物体と袋の間に隙間ができるのだとすると解決は難しいでしょうね。ただ、植物体全体を袋に入れてしまえば、隙間の問題はなくなります。その場合、切り葉、切り枝を水無しで入れると、水不足で蒸散ができなくなって光合成も落ちてしまいますが、一方で、水を入れるとそこに二酸化炭素が溶け込んでしまう可能性があります。ビンに水を入れて枝を差し、水の表面を油で覆うといった工夫が必要かも知れません。
 と、わかったようにいろいろ書きましたが、理屈を考えただけで、僕自身はこの手の実験をしたことがありません。たいてい、実験というものは理屈だけではうまくいかないので、試行錯誤が必要かと思います。量を考える場合には、やはり、高等植物よりは、藻類の方が楽でしょうね。ペットボトルを使って、酸素の発生量を見る方が、定量性はでるかと思います。ペットボトルを使ってキュウリの皮で光合成を見ている実験などもありますから、高等植物の葉にも応用できそうな気がしますが、これも僕自身はやったことがありません。

Q:今日午前中にご意見を参考に、ケナフの葉とピーマンとオオカナダモをペットボトルに入れて日向に出してみました。そして、1時間後、みごとに酸素の気泡(らしきもの)を発生しました。しかし気泡の大きさがバラバラで数を数えて比較することはできそうにありません。
 同時に、水温とPHを測定したのですがPHの上昇を二酸化炭素の減少と考えてよいのでしょうか?またご意見をお聞かせ下さい。(2005.8.1)

A:ペットボトルの場合、気泡の数を数えるのは難しいかと思います。どの程度の量の気体が出たかによりますが、細長いビンか何かに集めて体積を比べることができれば一番よいかも知れません。気体は、酸素が多くなっていますが、空気もかなり混ざっています。純粋な酸素にするためには、水をいったん沸騰させて、溶けている空気を除いてから重曹を溶かして二酸化炭素が得られるようにして実験を行います。ただ、その場合は、最初に出てきた酸素は水に溶けますので、気泡が出るまでかなり時間がかかる場合があります。
 pHについては、おっしゃるように二酸化炭素の吸収によるものと考えてよいかと思います。重曹などを加えておいて、pH試験紙でどの程度pHが変化するかを調べても、ある程度、光合成の活性を見積もることができるかも知れませんね。


Q:タンポポの花 タンポポの根 もやしをポリエチレンの袋の中にいれ石灰水を通したら色は変わりますか?理由も教えて下さい。(2005.7.30)

A:これは、そもそも、なぜタンポポの花や根、もやしをなぜポリエチレンの袋に入れて石灰水を通そうと思ったのでしょうか?実験というのは、何かが知りたくてするものなのですが、何が知りたくてやる実験なのでしょうか?それによって答え方も違いますので、そのあたりをしっかり書いて再度ご質問下さい。


Q:BTB指示薬の性質を元に植物が光合成により二酸化炭素を使う事を証明する実験を結果付で教えて下さい。(2005.7.29)

A:質問するにあたって、ホームページの「質問のコツ」は読んだでしょうか?まだでしたら、まず、そこを読んで、それからきちんとした日本語で再度ご質問下さい。「実験を教える」といっても、実験の何を教えるのかさっぱりわかりませんし、「結果付き」というのが、何の意味かわかりません。


Q:オオカナダモをBTB溶液にいれると青色になるんですが、その理由は何ですか?(2005.7.28)

A:以前の質問への回答をご覧になって下さい。それでさらにわからないところがありましたら、再度ご質問下さい。


Q:光エネルギーから物質生産・収量生産に至る系の総括について詳しく教えてください。(2005.7.24)

A:ご自分で、質問の意味は理解されているのでしょうか?少なくとも、僕には「系の総括」というのが何を意味するのかわかりません。有効な回答を得るためには「質問のコツ」をお読みになって、再度ご質問下さい。タイプ1&3のように思われます。


Q:多収性品種コガネセンガンの物質生産特性について教えてください。(2005.7.24)

A:これは、「質問のコツ」の典型的なタイプ1のようです。物質生産特性について「何が」知りたいのでしょう?


Q:地球温暖化のかんたんな実験をしました。ペットボトルに二酸化炭素をためて、気温の上昇を測定する実験をしました。A:二酸化炭素を入れたペットボトルと、B:二酸化炭素と朝顔の苗を入れたペットボトルを用意して実験しました。私の予想では朝顔が光合成をして、二酸化炭素を消費するので、Aのペットボトルの方が気温が高くなる、というものでしたが実際にはBのペットボトルのほうが気温が高くなりました。
そこで質問ですが、植物が光合成をする時には気温の上昇につながるような熱エネルギーを発生するのでしょうか?教えてください、よろしくお願いします。(2005.7.24)

A:実験をする場合には、対照実験の設定が重要です。つまり、自分が見たい現象以外の条件を、なるべく同じにして、それと比べるわけです。さて、今の場合、光合成をするかしないか、の違いを見るために、アサガオを入れたものと入れないもので比べたわけですね。確かにアサガオを入れなければ、光合成をしませんが、同時にアサガオの葉がないので、光を吸収もしません。光が大部分通り過ぎてしまうような条件では、あまり熱くならないと考えられますよね?つまり、対照実験としては、光合成はしないけれども、葉と同じぐらいに光を吸収する何かをペットボトルに入れておく必要がある、ということです。でも、葉ときちんと同じ吸収を持つものを作ろうと思うと案外大変かも知れませんけど・・・


Q:緑藻類(アオサ)をアセトン:メタノール=1:3で抽出しました。この抽出液に光を当てて分光器で見たところ、青紫色と赤色が消えて見えました。教科書になどによってクロロフィルが青紫色と赤色の吸収スペクトルを持っていることは知っているんですが、抽出液中のクロロフィル以外の物質が光を吸収しているという可能性はまったくないのでしょうか?教えてください。(2005.7.24)

A:アセトン・メタノールで抽出した場合、カロテノイド(カロテンの仲間)も抽出されます。従って、分光器で見たスペクトルには、カロテノイドの吸収も同時に存在していると思います。おそらく抽出液は、目で直接見た時には緑色に見えたかと思いますが、カロテノイドがない、純粋のクロロフィルは、もっと青に近い色に見えます。


Q:進化の系統図などを見ると、持っている光合成色素の種類で分類されています。クロロフィルaとカロテンはほとんどの植物が持っているので、これらは原始的な光合成色素だということは本当に言えるのでしょうか?「クロロフィルa=原始的な光合成色素」というのは論文で発表されているのでしょうか?どうか教えてください。よろしくお願いします。(2005.7.24)

A:これは、「原始的」という言葉を、どのような意味に使っているかによって答えが違います。また、何と比べて、という点でも答えが違います。今とりあえず、「原始的」というのを「より昔から地球上に存在した」という意味だと解釈します。その場合、クロロフィルbよりもクロロフィルaの方が昔から存在したのではないか、ということは充分に言えます。しかし、一方で、クロロフィルaよりも、バクテリオクロロフィルという光合成細菌が持つ光合成色素の方が、より昔から存在したと考えられています。これらの光合成色素や、それらを作る合成酵素の系統関係については、いろいろ論文が発表されています。


Q:光合成について自由研究をします。質問させてください。日陰で育てた植物を日向に、日向で育てた植物を日陰に置き換えて、光合成能力の変化を実験しようと思っています。置き換えてどのくらいの時間が経てば条件が変わったと考えて良いのでしょうか。また、窒素は光合成のための葉を作ると考えて良いのでしょうか。初心者が家庭で植物の窒素の含有量を測定することは可能でしょうか。よろしくお願いします。(2005.7.23)

A:光の環境が変わった時にどれだけ速くそれに対応できるかは、植物種によってかなり違うと思います。植物の研究によく使われるシロイヌナズナ(これは小さな草です)だと、光環境を変えて4日ぐらいで、光合成系が変化します。ただ、おそらく樹木の葉などでは、もっと時間がかかるのではないかと想像します。
 窒素はタンパク質の合成などに必要なので、葉を作る際には当然必要になります。ただ、タンパク質は、植物のほとんどの機能に必要なので、葉だけに必要、というわけではありません。それでも、植物にとって光合成は生命線なので、窒素のかなりの部分が葉に使われることは確かです。植物の窒素含量を家庭で測定することは難しいと思います。窒素の含量ではなく、窒素を含むタンパク質の量を測定する方が一般的には楽ですが、それでも、家庭でぱっと測る方法は思いつきません。

Q:先日はお答えいただきありがとうございます。窒素含有量を知りたかったのは、日向植物は日陰植物に比べ、光合成能力の高い葉を持つためコストがかかることを証明できるかと思ったからです。他に確かめる方法がありましたら教えてください。
 また、窒素を多く含んだ土で育てると日陰植物は葉を作るために、窒素をどんどん吸収するのでしょうか。何度も質問させていただきますが、よろしくお願いします。(2005.7.27)

A:家庭で出来るという条件が付いているととなるとなかなか難しいですね。葉の面積あたりの乾燥重量は、家庭でも測ることができそうに思いますし、コストを反映していると思います。窒素やタンパク質を定量するのと比べると、葉の構造の維持に使われるセルロースの重さが大きく効いてくるので、値がその分いわば下駄を履いた形になって、変化が小さくなってしまいますが、きちんと条件をそろえれば何とかなりそうな気がします。
 暗いところで育つ植物は、光が少ない分生育も遅いので、個体あたりの窒素吸収量で表せば明るいところで育つ植物と比べて少なくなるはずです。その場合、窒素の量を変えても、窒素の吸収はさほど大きくならないかも知れません。一方で、明るいところで育つ植物の場合は、窒素の量によって生育が律速される可能性がありますから、窒素を多く含んだ土で育てると、窒素吸収量は大きく増加すると考えられます。ただ、窒素吸収量といっても、正確に言うと何あたりで表すかによって違ってきます。例えば、1個体あたりなのか、それとも、葉の面積あたりなのか、はたまた、生育速度(例えば、葉の面積の増加量)あたりなのか、では、その意味合いが大きく変わってきます。


Q:植物は光合成でどのような工程をへてビタミンCを生成するのですか?(2005.7.17)

A:光合成ではビタミンCは作ることができないのですが?何かに、光合成でビタミンCが作られると書いてあったのでしょうか?
 酸化されたビタミンCを、還元して元に戻すのに、光合成の電子伝達による還元力が使われる、ということはあります。これと混同しているのでしょうか?


Q:光合成は、なぜ「光合成」というのですか?????????誰が「光合成」ときめたのですか、そして、その理由はなんですか。教えてください。(2005.7.17)

A:光合成は、読み方としては「コウゴウセイ」と読みますが、要は「光によって合成する」という意味です。光合成は有機物を「合成」する反応ですが、その反応を進めるためには、光のエネルギーが使われるので光合成という名前が付けられました。日本語の光合成は、おそらく英語もしくはドイツ語からの翻訳語(英語で光合成は Photosynthesisですが、photo は光、synthesis は合成という意味です))として作られた言葉だと思います。


Q:初めて投稿します。私は現在大学生で、授業で光合成について学んでいます。そこで質問したいのですが、光合成植物は太陽光を利用してどのように有機物を合成するのでしょうか?教えていただければ幸いです。(2005.7.17)

A:一週間前にも全く同じ質問が来ていますのが、「質問のコツ」にあるように、あまりに漠然とした質問には答えられません(4つ下をご覧下さい)。「植物が太陽光を利用して有機物を合成する」のが光合成です。授業で光合成について学んでいる、ということですが、一体どのようなことを学んだのでしょうか?そこで学んだことに対して、この点がわからない、という質問をして頂ければ、お答えできると思います。


Q:初めて投稿しました。コムギの葉から分離精製したそれぞれの色素類の光合成光エネルギー変換における役割について教えてください。(2005.7.15)

A:なぞなぞみたいでよくわかりませんが、具体的に何が分離してきたのでしょうか?クロロフィルやカロチノイドであれば、過去の質問箱を見て頂ければわかると思います。それ以外の色素であれば、具体的な名前を教えてください。


Q:ふと疑問に思ったことなのですが、桜はなぜ花が先に咲き、その後に葉が出るのでしょうか。普通の植物は葉が始めにでて、その葉で光合成を行い、獲得したエネルギーを用いて花が咲く気がしますが。桜で花が先に咲くメリットをご存知でしたら教えてください。(2005.7.14)

A:同じ桜でも、ソメイヨシノは花が先に出ますが、山桜は花と葉がほぼ同時に出ますよね。また、コルチカム(イヌサフラン)などは、球根からまず花だけ出ます。種からすぐに花が出る植物はないと思いますが、これはおっしゃるように、葉で光合成をして、エネルギーを獲得してからでないと花をつけられないからでしょう。しかし、樹木や球根の場合は、栄養(エネルギー)を充分貯めておくことができるので、必ずしも、葉を先に出す必然性はありません。葉の出る時期は、光と温度が光合成をするのに充分になった時点でしょうし、花が咲く時期は、例えば、花粉を媒介する虫が多い時期などといった、別の要因で決まるでしょう。葉が出ていない時期の方が花が目立つ、といった要因もあるでしょう。おそらく、それらの要因が植物の種ごとに違うために、種によって花が先に出たり、葉が先に出たりするのだと思います。


Q:質問させてください。ある条件下での光合成の実験を行いたいと思ってます。方法としては、試験管レベルではなく、実際の植物を使って光合成の割合?の比較を測定したいと思ってます。そこで、異なった条件下で栽培した植物の光合成の割合を比較する方法はありますか?例えば、電荷分離の割合を測定したり、変換効率を測定するすることは可能なんですか?(2005.7.12)

A:植物体レベルでの光合成を測定しようと思った場合、比較的安価にできるのは、プロダクト・メーターという検圧計の一種を使って測定する方法です。これは、誤差が大きいので、研究目的には使えませんが、確か機械は数万円の値段だったように思いますので、教育現場ではよく使われます。それ以外となりますと、赤外線の吸収を利用して二酸化炭素の減少を見る光合成測定装置と、クロロフィルの蛍光を利用して、光合成の効率などを測定できるパルス変調蛍光測定装置があります。しかし、いずれも、フルセットだと数百万円かかる機械なので、自分のところで買ってちょっと測ってみる、というわけにはいかないかと思います。二酸化炭素の減少を見る光合成測定装置の場合は、光合成の速度がわかるだけですが、クロロフィル蛍光測定装置の場合は、電荷分離の効率などの細かい情報を得ることも可能です。これについては、蛍光と光合成のページをご覧下さい。


Q:光合成植物は太陽光を利用してどのように有機物を合成するのですか?(2005.7.10)

A:光合成とは、植物が太陽光を利用して有機物を合成する反応のことです。従って、ご質問は「光合成とは何ですか?」という質問と同じことになります。このような漠然とした質問には、短く答えることが不可能です。有効な回答を得るための質問の仕方に関しては「質問のコツ」のページをご覧下さい。


Q:赤ジソの葉は光合成をするのか??(光合成は葉緑体で行われるが、赤ジソは赤いから葉緑体がないのか?)(2005.7.9)

A:ちょうどそれについて、実験・考察した結果を「柏オープンキャンパス公開実験(その3)赤い葉っぱは光合成をするか」に載せてあります。そちらをご覧下さい。


Q:初歩的な質問で申し訳ないのですが、植物が吸収する光の波長の吸収帯の名前(吸収帯の意味がよくわかりませんでした)と、なぜ、光合成に可視光線が利用されるのか教えてください。光量子の持つエネルギーと光合成色素の基本構造との関連で説明できるそうなのですが、いまいちよくわからないのです。よろしくお願いします。

A:光合成の吸収に関する過去の質問にかなり書いてあります。光を吸収する特定の範囲が吸収帯で、青い部分の吸収帯をソーレー帯と呼びます。赤い部分の吸収帯は特に名前はないようですが、Qxバンド、Qyバンドと呼ばれます。


Q:ねぎから糖を取り出すことで、光合成が行われていると考えました。それを、発展させるには他にどのような実験があるでしょうか??(2005.7.8)

A:発展というのは、その基礎となる実験においてどのような考えたのかによって変わってくるのです。ですから、具体的にどのような実験をして、どのような結果を得て、どのように考えたのか、が重要です。単に、「光合成が行なわれている」では、あまり発展につながりませんね。このような時には、まずは、その基礎の実験で充分頭をひねって考えることが重要です。そこで、足りない部分、もしくは新しく得られた疑問、そういったものが発展につながるのです。その意味では、実際に実験をした人でないと、その発展実験を考えることはできないと言ってもよいと思います。


Q:ピーマンやスイカの皮が光合成をしているということを、調べるためにはどのような実験を行ったらいいですか?
また、サツマイモの苗と夕顔の苗を接木したのですが、枯れてしまいました。かれずにできる方法や、接木にはどのくらいの時間がかかるかも知りたいです。(2005.7.7)

A:キュウリの皮の光合成に関しては、ペットボトルに酸素を貯める方法で、可能なようですから、それが使えるのではないでしょうか。
 無理やり光合成のページ
接木の方は光合成に関係ないので、ご勘弁下さい。


Q:Cab(クロロフィルa/b結合タンパク質)はどのような働きをしているのですか?(2005.7.7)

A:結合するクロロフィルで光を集めて、そのエネルギーを反応中心に渡すアンテナの役割をしています。


Q:最近、葉緑体の分離の実験をしました。分離抽出の操作の中でメタノール性KOHを入れると溶液が褐色になりました。この褐色を示した物質はなんなのでしょうか。この実験で分離した光合成色素はクロロフィルa,b、ルテイン、βーカロテンでした。
 自分なりに色々と調べたのですが、褐色になる物質はフィオフィチンというものしか分かりませんでした。これでよいのでしょうか?しかし、もし褐色の物質がこの物質でよくても反応過程が分かりません。こちらの方も教えてください。(2005.7.7)

A:工学系か、食品系の大学でしょうか。おそらく光合成とはあまり関係がないですね。メタノール性KOHはけん化処理の一種で、脂質の加水分解を引き起こします。クロロフィルは脂質の一種と考えられますから、フィトール鎖の部分が加水分解ではずれて、ポルフィリン環の部分だけになって、クロロフィリンのような色素ができたのではないでしょうか。クロロフィルをけん化処理して、中心金属のマグネシウムを銅に置き換えたものは、色素として食品添加物に使われています。


Q:薄層クロマトグラフィー法によって精製できる純物質の性質はなんですか?ちなみに実験にはツバキを使用しました。(2005.7.6)

A:個別にお返事していたのですが、同じ質問が何度も寄せられるので、「質問のコツ」のページを新設しました。そちらをご覧下さい。


Q:光合成を受けるとなぜでんぷんが出来るの?(2005.7.6)

A:植物にとって、デンプンはいわば食料戸棚にしまっておく材料です。人間なら、毎日(人によって週に一度かも知れませんが)買い物に行って、食料戸棚に材料を満たして、次に買い物に行くまでは、その材料を使って料理をしますよね。同じように、植物は、買い物をする代わりに、昼間に光合成によって自分のエネルギーになるものを作って貯めておいて、それを少しずつ使うのです。例えば、昼間に光合成をして稼いだものをデンプンとして貯蔵しておいて夜に使ったりします。場合によっては、夏から秋に稼いだ分を根っこにデンプンとして貯めておいて、春に芽を出す時にそれを取り出して使う場合もあるでしょう。これで答えになっているでしょうか?


Q:楠の苗と、木では光合成の量にどのような違いがあるのかを調べています。ぜひ教えていただきたいです。早めのお返事をお待ちしております。(2005.7.5)

A:一般論としては、光合成の量というのが「理想的な条件の、葉の面積あたりの光合成速度」ということであれば、苗と木ではほとんど違いがないと思います。ただ、苗の時と木の時では、根と幹や葉とのバランスなどは違うかも知れませんから、例えば、乾燥して水が足りない時の光合成を測ったりすると違いが出る可能性はあります。その場合でも、どう違うか予測するのは難しいですね。


Q:植物は多少の光でも光合成でき,光が強すぎると逆に光合成しなくなると聞きましたが,光合成に使える光の強さ(エネルギー?)の範囲はどのぐらいの幅なのでしょうか?照度や輝度には関係があるのですか?教えてください.(2005.7.5)

A:これは植物の種類によっても違いますし、同じ植物でも明るいところに育っていた植物と暗いところに育っていた植物で違いますので、一概に言えません。さらに、同じ植物で、同じ光環境に育っていた植物でも、他のストレス、例えば乾燥ストレスなどが加わると、ストレスがない時に比べてより弱い光領域で阻害が起こるようになります。従って、植物の種類、育った光環境、そしてストレスの有り無しの情報がないと、光合成に使える光の範囲はわからないのです。ただ、一般的には、ストレスがない時には、生育光の明るさの倍程度までは何とか光合成できるように思います。


Q:TLCによる光合成色素の分離の実験のことですが、実験方法で「すりつぶした試料をスクリュー管に移し、エチルエーテルを粉末上2mm程度まで加えたときにふたをしたのはなぜですか?あとビーカーの中に展開溶媒をいれてアルミ箔をかぶせ静置しておくのはなぜですか?最後に試料腋が濃赤色をともなうのはなぜですか?たくさん質問してしまってすいません。なるべく早くにお願いします!!(2005.7.3)

A:すみません。意味が皆目わかりません。「粉末上」というのは、何の粉末ですか?「試料液が農赤色をともなう」ということですが、色が伴うというのはどういう意味ですか?試料が赤い、と言う意味でしょうか?真ん中の、「展開溶媒を入れて静置する」というのは、置いておいて色素が展開されるのを待つためだと思うのですが、それが聞きたいのでしょうか?

Q:回答ありがとうございます!「粉末」はシソ葉(緑)をすりつぶしたものです。「濃赤色をともなう」とは試料液を色々な角度にかざして液の色合いを観察した時のことです。教えてください!すいません。つけたしなんですが色素が展開されるとはどうゆう事ですか?できたら早めにお願いします!

A:とすると、粉末と言うよりはきっとペーストですね。質問がどの部分の「なぜ」を聞いているのか、まだ不明瞭ですが、ふたをした理由なら、おそらく揮発性のエチルエーテルが飛んでしまわないようにでしょう。いろいろな角度のかざしてと言うことであれば、こちらは、クロロフィルの蛍光の話ですね。クロロフィルの蛍光については、過去の質問箱をご覧下さい。この蛍光が2つ下の質問に対する答えのように赤いのです。色素の展開については、TLCに関する過去の質問箱などに既にいろいろ答えてあります。そちらをご覧下さい。できるだけ、関連する質問箱を読んでから質問してくださいね。


Q:光合成色素のなかで光合成能力をもたないものは一般的にどのように呼ばれているのですか?またその主な働きは何ですか?(2005.7.3)

A:光合成能力というのは具体的に何でしょう?光合成に関連する、役立つ、色素を光合成色素というのですから、そのような意味では、光合成に関与しない光合成色素というのは存在しません。一方で、色素だけでは、光合成はできませんから、色素が直接光合成能力を持っているわけではありません。「光合成能力」という言葉で、何を聞きたかったのかを再度ご質問頂ければと思います。


Q:1.直視分光器で光源の連続スペクトルとクロロフィルの吸収スペクトルを比較すると何がわかるんですか?
2.クロロフィル抽出液に光をあてたときの透過光線および反射光線はそれぞれ何色にみえますか?(2005.7.3)

A:質問というのは、本来自分が疑問に思う点から出るはずです。しかし、このような質問は、自分が何を質問しているかすらわかっていないことが明らかです。おそらく演習問題か何かがあって、それを単にここに写しているだけなのでしょう。この手の質問に対しては、答えるべきではないのかも知れませんが・・・
1.「吸収」というのは、本来は、試料を透過する前の光量と、透過したあとの光量の比から計算されます。つまり、もとの光が前と比べてどれだけ弱くなったかが吸収です。しかし、直視分光器の場合は、単に透過したあとの光量を見ているだけですから、そもそも「吸収スペクトル」ではないことになります。たとえ、一部の領域で光が弱くなっていたとしても、それは、単にもともとの光源の光が弱かったせいかもしれません。そこで、もとの光源の光量と比較すれば、それがクロロフィルの吸収によって光量が減っているのか、光源の光が弱かっただけなのかがわかります。
2.単なる反射光線なら、色が違うはずがありません。「透過光線」の方は、透過してみた光ということでよいと思いますが、「反射光線」というのは、透過光が目に入らない位置から見た色ということでしょう。クロロフィルにより吸収された光は緑、蛍光は赤になります。


Q:初歩的なことで申し訳ないのですがカロテン、フェオフェチン、クロロフィルa,bは植物細胞のどの器官に主に存在するのでしょうか?(2005.7.2)

A:うーむ。確かに高校生としてはちょっと初歩的ですね。クロロフィル、フェオフィチンなどは光合成色素で、光合成は葉緑体で行なわれます。というわけで、葉緑体が正解です。


Q:高校の生物では,光合成速度を測定する方法の1つとして,「気泡計数法」を学びます。(ちなみに,水槽の中のオオカナダモに様々な照度の光を当て,それぞれで生じる気泡数を測定するものです。)このとき発生する気泡の数は,植物の真の光合成量に近いものなのでしょうか?それとも,見かけの光合成量を表すのでしょうか。上の問題と関連するのかもしれませんが,光合成で発生した酸素は,すぐさま呼吸に使われるのでしょうか?それとも,ほとんどがいったん体外に出されているのでしょうか??(2005.7.1)

A:気泡計数法は基本的には見かけの光合成を反映します。植物は、別に光合成と呼吸を分けてしているわけではありません。そのあたりは、過去の光合成質問箱でも取り上げられているので、ご覧頂ければと思います。

Q:と言うことは、高校生が使用する生物の資料集(東京法令出版)に気泡計数法の結果の一例として横軸が0(lux)のとき縦軸が気泡数0のグラフが出ていま すが,これは間違いですか?(2005.7.1)

A:実験結果としては間違いではありません。つまり、この実験の場合は、実験系として気泡の出現を計数しているわけですから、たとえ仮に、酸素が吸収されたとしても「気泡が植物体に吸い込まれる」という現象は、観察することがそもそも不可能なわけです。つまり、実際のデータは、理論上の結果のうち、負の値の部分が0になる形になります。
 さらに言えば、誤差の問題も考える必要があります。光合成により放出された酸素は最初は水に溶けます。そして飽和して溶けきれなくなった分が気泡として出現するわけです。従って、実際の酸素発生量と気泡の数の間には、かなりの誤差が存在します。これは、あらかじめ水に溶解している気体を煮沸して除いておいた場合などは、発生した酸素が水にどんどんとけるので、最初の内、気泡が出てこないことからも明らかです。ですから、この実験では、そもそも光補償点近くの低い光合成速度をきちんと見積もるだけの精度は期待できないのです。
 実験をする時は、その実験が、自分の結論を正当化するだけの精度を持っているかどうか、常に考える必要があります。

Q:資料集の表では横軸の照度0のときのみ縦軸気泡数が0で,そこから照度が上がるのに比例して(光飽和点までは)気泡数が増えていくのです。誤差のことを考えても,少なくとも照度が補償点に達するまでは,気泡数0が続くのではないかと思うのですが。(2005.7.1)

A:たぶんお気づきでしょうけれども、照度0の時は真っ暗なので、気泡を数えることができません。ですから、照度0の時の点は、実際のデータというよりは、概念的なものでしょう。とすると、0より上の最初のデータ点のところの照度がどの程度か、ということが問題になります。僕自身は、オオカナダモの光補償点を測ったことはないのですが、その補償点の照度より、最初のデータ点の照度の方が、本当に低くなっているのでしょうか?
 「少なくとも照度が補償点に達するまでは,気泡数0が続く」というのは原理的にはその通りだと思います。しかし、光飽和点を100としたら、おおざっぱに言って光補償点は0.1ぐらいにしかなりません。表に光飽和点まで出ているとすると、データの取り方として、その1/1000の照度を測定しても、誤差を考えると意味がない、と考えて実験をしないのが普通ですが。たとえ実験をしたとしても、グラフに書いたら、光補償点付近は、そもそも原点付近にチョコちょこっとなってほとんど何も見えないグラフになりますよね。

Q:補償点は,光飽和点の1/1000程度なのですか!?これまで光合成曲線を書くときは,光飽和点の1/10ぐらいのところに補償点を書いてしまっていました。実際には原点近くを拡大して書かない限り,見えるはずのないものなのですね・・・。
 ところで,中学校の問題集に,気泡計数法の問題がありました。結果のグラフは,横軸は水槽からの距離,縦軸は気泡の数です。グラフは距離120cmのところで気泡数が0になっており,このとき(120cm)のクロモの状態を問う設問です。この場合は,補償点にあると考えて良いのですか?(2005.7.2)

A:もちろん植物にもよりますし、おおざっぱな値です。1/100かも知れませんが1/10ということはないと思います。
 あと、光補償点は、光合成カーブがX軸を横切るところですからきちんと決まりますが、光飽和点は、だんだんと飽和速度に近づくので、実際には、どこが光飽和点である、というのは決められません。数学で言うところの漸近線(近づきはするけども決して届かない)ですね。従って、本当にきちんと定義しようと思ったら「光合成の光飽和速度の95%の速度を与える光の明るさ」といった形にしないと決まりません。当然のことながら、95%と定義した時と99%と定義した時では、光飽和点は全く異なりますし、100%と定義したら、光飽和点は原理的には無限大になってしまうわけです。
 問題集の方は、純粋に与えられた事実から議論するのは難しいですね。実験の精度を考えると、「ほとんど光合成をしていない」ぐらいのことしか言えないと思います。問題としては、もしかしたら、「光補償点にある」という答えを期待しているのかも知れませんが、それを気泡計数法の実験から言うのは無理があるように思います。


Q: 十分光に当てたオオカナダモと遮光したオオカナダモをホルマリンにつけて固定して観察を行ったのですが、いまいち違いがわかりませんでした。本来ならどのような違いが現れるのでしょうか。(2005.6.29)

A:正直言って、全くわかりません。おそらく「観察」というのは、顕微鏡観察でしょうか。だとすると、倍率によっても、見えるものが全く違いますよね。僕自身そのような観察をしたことがないので・・・。お役に立てず申し訳ありません。


Q:過去の質問(炭酸固定の項)に「藻類の光合成は、炭酸固定系路としてはカルビンベンソン回路だが独自の二酸化炭素濃縮系を持っている場合がある」とありましたが、そのことに関して質問させてください。
①例えば、どのような種の藻類が独自の濃縮系を持っているのでしょうか?
②クロレラは、そのような独自の濃縮系を持っていますか?
③「独自の二酸化炭素濃縮系」とは、具体的にはどのような内容のものなのですか?
ご教授お願いします!(2005.6.29)

A:よく調べられているのは、単細胞緑藻とシアノバクテリア(ラン藻、ラン色細菌)です。単細胞緑藻で研究材料としてよく使われるのはクラミドモナスですが、クロレラでも二酸化炭素濃縮系を持っていると思います。具体的には細胞膜などに、二酸化炭素のトランスポーターと重炭酸イオンのトランスポーターを持っていて、エネルギーを使って直接細胞内に二酸化炭素と重炭酸イオンを濃縮します。さらに、カーボニックアンヒドラーゼ(炭酸脱水酵素)を持っていて、二酸化炭素分子と重炭酸イオンの間の変換を速やかに行ないます。C4回路と比べるとより直接的な濃縮系ですね。


Q:イチョウの葉が黄色になるのは何故ですか?至急教えてください!!(2005.6.29)

A:「何故」というのが「どのようなメカニズムで」という意味でしたら、「柏オープンキャンパス公開実験(その3)赤い葉っぱは光合成をするか」をご覧下さい。一方、「何の得があって」という意味でしたら、いまだに専門家の間でも定説がありません。黄色の場合は、もともとあるカロテノイドの色が主ですから、もしかしたら別に得がなくても自然とそうなる、という可能性がありますが、モミジのような場合は赤い色素はあとから作られますから、何か目的がありそうな気はします。しかしモミジの場合でも、行き場のなくなった糖がしょうがなくて色素になってしまった、という可能性もあると思います。この辺は、自分で想像してみるしかありません。


Q:もみじ等の葉が緑色でないもは光合成を行っているのか、またどのようにして養分を作っているのか。(2005.6.29)

A:ちょうどそれについて、実験・考察した結果を「柏オープンキャンパス公開実験(その3)赤い葉っぱは光合成をするか」に載せてあります。そちらをご覧下さい。


Q:光合成をすると、どれくらいの酸素がつくれるのか??教えてください!(2005.6.29)

A:当然のことながら、植物の種類、葉の面積、光の強さによって、どのくらい光合成をするかは違いますから、どうやって答えればよいのか難しいですね。昔ざっと計算したことがあるのですが、確か1人の人間が消費する酸素を光合成で作ろうとすると、だいたい、理想的な条件(光や温度)の葉が、面積にして2メートル四方ぐらい必要だったと記憶しています。これで、だいたいの感じがつかめるでしょうか?


Q:種子の発芽の際に水が必要ですが、水は種子の発芽にどのような働きをするのですか?水が何故、種子の発芽の機を促すのですか?(2005.6.26)

A:水が種子の発芽を促すのは確かですが、その意味では、あらゆる生命活動は水がないとうまく進みません。それでは、種子はそもそも、なぜ、水が少ない状態になっているのでしょうか。種子には、冬などの生育に適さない期間を休眠状態に入って乗り切る、という使命があります。そのために、つまり休眠状態に入るために、いわば積極的に種子を脱水状態にして、生命活動を抑えているわけです。いったん種子が形成されたあとは、水が少ないので休眠状態を脱することができませんが、外から水が与えられれば、少なくとも一部の生命活動を再開することが可能となり、発芽の引き金が引かれることになります。ただし、もちろん、発芽のために水以外の要因が必要な場合は、水だけでは発芽しません。


Q:はじめてメールいたします。私は現在プロダクトメーターを用いた光—光合成曲線を作成しようと考えています。しかし、luxからμmol m-2s-1への単位換算が分かりません。そもそもこの換算は可能なのでしょうか?教えてください。
 また、プロダクトメーターを用いた光—光合成曲線の作成について、単位の換算当の含まれる詳細な文献、報告当を示していただけたら幸いです。(2005.6.26)

A:「光の単位」のページを新設しましたので、そちらをご覧頂ければと思います。


Q:はじめまして。今,生物で薄層クロマトグラフィーの実験をしたのでレポートを書いています。その時、渇藻はワカメを使って実験したのですが、カロテンがでてきませんでした。何故でしょうか?申し訳ないのですが、早めにご回答を宜しくお願いします。(2005.6.23)

A:「カロテン」というのは、特定の、例えば「ベータ−カロテン」のことではなく、「カロテノイド」(カロテンの仲間の総称)のことでしょうね。そうだとすると、カロテノイドを全く含まないということはないはずなので、何かがおかしいとしか言えません。実験がうまくいかない理由というのは山ほどあるので、細かい条件などがわからない限りお答えすることができません。ただ、褐藻からの色素の抽出は、やや他のものの場合に比べると難しいという話なので、色素の抽出が不完全である可能性はあるかと思います。


Q:お忙しいところ失礼します。私は学校の授業で、電子伝達系・ATP合成酵素複合体について習いました。習ったところによると、その酵素は葉緑体とミトコンドリア内にあるということなのですが、葉緑体内のH-ATP合成酵素複合体とミトコンドリア内のH-ATP合成酵素複合体には働きや構造の上で類似点や相違点はあるのでしょうか??光合成には直接関係なくて、すみません。(2005.6.22)

A:葉緑体のATP合成酵素も、ミトコンドリアのATP合成酵素も、基本的な仕組みは全く同じですし、構造や機能も極めてよく似ています。違う点として、ちょっと面白いのは、葉緑体のATP合成酵素は光条件によって活性の調節を受ける点です。葉に光が当たっている条件では活性が高いのですが、暗所にしばらくおいておくと活性がなくなります。光をつけるとまた活性が上昇します。このような調節は、ミトコンドリアのATP合成酵素では見られません。じつは、ATP合成酵素は水素イオンの濃度勾配があるとATPを合成しますが、逆に濃度勾配がない時には、ATPを分解して濃度勾配を作ることもできます。葉緑体では光の当たっている時だけ光合成の電子伝達がはたらくので、その時にATP合成酵素が働くようにし、暗いところで電子伝達が動かない時には、ATP合成酵素の活性を止めて、ATPの分解が進まないようにしている、と考えるとつじつまが合います。

Q:もうひとつ質問があるのですが、なぜHの濃度勾配が
   ADP+Pi→ATP
という反応と関係があるのでしょうか?連続の質問、お許しください。(2005.6.24)

A:ATPというのは生物のエネルギー源ですが、当然、ATPを作るにはエネルギーがいります。ATP合成酵素の場合は、そのエネルギー源として水素イオンの濃度勾配を使うのです。膜の片側に水素イオンが偏っていれば、それがもう一方に流れる力を利用することができます。具体的には、ATP合成酵素を水素イオンが通る時にこの酵素が回転し、その際にATPが合成される仕組みになっています。


Q:イネの光飽和点を調べていますが、わかりません。教えていただけないでしょうか。(2005.6.13)

A:朝倉書店の現代植物生理学(今でているシリーズの1つ前のシリーズです)の第1巻「光合成」に各種植物の光ー光合成曲線がでています。これによると、イネでは 20 klx 程度の光で飽和速度の9割の光合成速度が出ています。


Q:TLCの実験において展開するときに、展開溶媒の液面は試料をスポットした位置より下でないといけないということですが、この理由は何ですか?教えてください。自分の考えでは試料が展開溶媒に溶け込んでしまうのではないかと思うのですが自信がありません。またこのほかの理由もありましたら教えていただければありがたいです。ご指導のほうよろしくお願いします。(2005.6.12)

A:試料が展開溶媒にとけ込んでしまうため、というのも正しい考え方です。ただ、たとえ試料が展開溶媒に溶けない場合でも(本当に溶けなかったらTLCになりませんが)、やはりスポット位置より液面が下である必要があります。これは、TLCにおいては、溶媒が液面から表面張力により上にのぼっていくという一方向の動きを試料の分離に使っていることが理由です。従って、当然ながら、液面から下では、試料を分離することができません。


Q:光合成細菌は、光合成遺伝子と言うものを持っていると聞いたのですが、光合成遺伝子とはどういうか教えてください。それから、光合成のグラフ(横軸が光の強さで、縦軸が二酸化炭素吸収速度)を見てて思ったのですが、光飽和点に近くなるにつれて、グラフがだんだん緩やかにカーブをしていくのはなぜですか?角ができるようなグラフにはならないのですか?(2005.6.10)

A:ただの遺伝子なら意味がおわかりでしょうか。その部分は光合成ではないので、もしわからなかったら自分で調べてみてください。光合成の反応においては、クロロフィルを結合したタンパク質や、その他多くの種類のタンパク質が働いています。それらの、光合成に働くタンパク質を作るための遺伝子が光合成遺伝子です。従って、光合成細菌だけでなく、植物も必ず持っています。
 例えば、光を受けて反応する仕組みが植物の一枚の葉に100個あったとします。そこにごく弱い光を当てると、100個のうち1個の仕組みが働いたとします。次にその光の強さを2倍にすると、おそらく100個のうち2個の仕組みが働くでしょう。つまり、このような光の強さでは、当てた光の強さに比例して、光合成の速度が上がります。つまり、光ー光合成のグラフは直線になります。しかし、だんだん光を強くしていって、100個のうち50個の仕組みが働く光の強さになったとして、さらにその光の強さを2倍にしたらどうなるでしょう。単純に考えると50の2倍の100全部が働くように思えます。しかし、実際には、すでに働いている50個に、強くした光があたっても、それ以上は働けないので、強くした分の半分の光は無駄になることになります。つまり、強くした分の光では25個しか働かず、合わせて75個の仕組みしか、働かないことになります。さらに光を強くしていけば、すでに働いている仕組みの数は多くなり、そこにあたった光はすべて無駄になりますから、光合成の速度はなかなか上がらなくなります。このようなことにより、グラフは緩やかにカーブしていくのです。実際には、光の強さというのは、面積あたりであると同時に時間あたりで計算されるので、この説明はやや正確さにかけますが、定性的にはおわかり頂けるかと思います。


Q:はじめまして。私は今、教育実習で中学校の理科を教えています。そこで、光合成について勉強していて、疑問に思ったことがあります。日陰を好む植物(例えばドクダミ)は、日向を好む植物よりも、少ない光で光合成ができるのでしょうか?来週『植物は光合成をする際、二酸化炭素を取り込む』という実験をするのですが、天気予報では雨が降るようなので心配しています。もちろん、雨が降った場合は、ライトを使うつもりではあるのですが。ご回答よろしくお願いします。(2005.6.9)

A:光合成速度の光強度依存性のカーブ(光−光合成曲線)を陽生植物と陰生植物で比べると、光が強い時は、陽生植物の光合成の方が圧倒的に高く、光が弱い時は、陰生植物の方がわずかに高い、という結果になります。おっしゃるように、日陰を好む陰生植物は、光が弱い時は陽生植物より光合成速度が高いのですが、あまり大きな差とは言えません。陽生植物に充分光があたった時に比べると、かなり低い値になってしまいます。植物の種類を変えるよりは、少しでも光を強くした方が効率的かと思います。一般的な光源としては、スライドプロジェクターがかなり強い光を出します。光を当てられる面積がさほど大きくない時は、蛍光灯などに比べて格段に強い光が得られます。学校にスライドプロジェクターがあれば、それを使うと何とかなるかも知れません。


Q:中学校で理科教師をしているものです。生徒に植物も呼吸していると説明したところ、気孔から酸素を吸っているの?と聞かれました。過去の質問にもあったのですが、酸素を作り出した植物体自体が利用するかどうかよくわかりません。植物は気孔から取り入れた酸素を呼吸に使っているのでしょうか?自分で水の分解によって生じた酸素を呼吸に使っているのでしょうか?気孔から排出される(余った?)酸素は水が由来ですし。それとも両方でしょうか?勉強不足ですみません。教えてください。(2005.6.7)

A:少なくとも、光を受けている間は、光合成によって酸素が発生し、植物体の中の酸素の濃度は、外の酸素の濃度より高くなります。中の方が酸素が多ければ、外から気孔を通して取り入れる必要がないのは明らかですよね?むしろ気孔を通して酸素は外に出て行っているはずですから。次に、大気中の酸素も、光合成によって水を分解してできた酸素も、別に目印がついているわけではありませんから、植物には区別がつきません。呼吸では、どれでも「手近に使える」酸素を使うことになります。その意味では、呼吸で使う酸素は「両方」というのが正解だと思います。


Q:研究発表で波長による光合成反応の違いについて調べるんですけど色の違うフィルターで波長の近似値を出すことが出来ますか?(2005.6.6)

A:「フィルターで波長の近似値を出す」というのは、「特定の波長の近くの光だけをフィルターを使って作る」という意味でしょうか?もしそうなら、これは原理的には可能です。しかし実際にやろうと思うと案外難しいかも知れません。フィルターの一種に干渉フィルターというのがあって、これは、本当にある波長(例えば500 nm)の前後10 nmぐらいの光だけを通します。注文すれば、いくらでも自分の使いたい波長のフィルターを作ってもらうことができます。しかし、これは、5センチ四方ぐらいの大きさで何万円かします。安いのは色セロファンやプラスチック板などをフィルターに使う方法ですが、これだと、「ある波長だけ」というのは難しいかと思います。それでも、だいたい400 nmから500 nmぐらいまでの光を通す、といった程度の精度で光を作ることはできます。この場合、セロファンやプラスチック板は、見た目の色で買うしかないので、買った後に、分光器などで、実際にどの程度の波長の光を通しているのかを調べる必要もあります。見た目がオレンジ色だからといって、オレンジ色の光だけを通すわけではありませんので。(これは、光を混ぜると別の色になることから想像がつきますよね)

Q:前回の質問に関する答えありがとうございました。もうひとつ質問させてください。セロハンに光を当てた時、多少光が弱くなると思いますが対照実験で光の強さを同じにするにはどうしたら良いですか?また簡単に光の強さを測定する方法があれば教えてください。(2005.6.10)

A:これが実は難しいのです。色を変えないで、光を弱くするには、被陰格子(ひいんこうし)という黒い糸を格子状に編んだものを使ってそれに光を通す場合が、多いのですが、これは光の強さの細かい調節ができない上に、あまり一般には売っていないと思います。網戸に使う網だと、荒物屋さんや東急ハンズあたりに売ってそうですから、これを何枚か重ねるのは手かも知れませんね。
 さらに、光の強さを調節する方法も難しいです。研究室で使うような光量子計はかなりの値段がします。ひょいと思いついたのですが、シャッタースピードが表示されるデジカメを同じ背景に向けておいて、そのレンズをセロハンでおおった時のシャッタースピードを同じになるように、光を弱める、というのはどうでしょう?実際にやったわけではないので、保証はしませんが、カメラのシャッタースピードは光の強さで調節しているはずなので、おおざっぱな測定はできるかも知れません。


Q:学校の実験の結果と考察が分からないんで教えて下さい!!
試験管の液体が2層に分かれてて、上層部がクロロフィルaを含む石油エーテル、下層部がクロロフィルbを含む85%メタノール水溶液らしく…そのとき、①抽出したクロロフィルaおよびクロロフィルbは何色に見えるか?
②直視分光器で見てクロロフィルaおよびクロロフィルbの吸収帯はそれぞれどこにあるか?③暗所で試験管に懐中電灯の光を当てて見えた反射光の蛍光は何色か?④蛍光を感じるのはクロロフィルのどんな性質によるものか?
本当に分からないんで教えて下さい!!!(2005.6.4)

A:すみません。考察はともかく、結果の方は、実験をやった当人でないとわかりません。何色に見えるか、と言われても、実験をしたのは僕ではありませんからねえ。一般的に言えば、クロロフィルだからまあ緑色っぽいでしょうけれども、見た目の色はどのくらいの濃さかによっても変わります。実験をやった当人の目が一番頼りになるはずですが。実験をしたのに何で単に「何色か」という質問が「本当にわからないんで」しょうか?
 最後の4番は、結果ではなくて考察のようですが、こちらは日本語がわかりません。「蛍光を感じる」というのは誰が感じるのでしょうか?


Q:光合成に必要な光のスペクトルは決まっているのですか?(2005.6.1)

A:光合成はクロロフィルが吸収する光で行なわれます。クロロフィルは可視光の内、主に赤(600-700 nm)と青(400-500 nm)の領域の光を吸収します。従ってこのあたりの光が光合成に使われることになります。


Q:光合成による二酸化炭素の吸収量を光強度を変えて計測したいのですが、せいぜい10000luxしか作れません。人工的に直射日光(100000lux)と同じくらいの照度は作れますか。(2005.6.1)

A:作ること自体はできますが、光合成の測定をする場合は、ある程度の面積に均一にあたる必要があります。僕もやってみようと思ったことはあるのですが、点光源を使った場合は、強さと面積・均一性を両立することはできませんでした。最近、超高輝度の発光ダイオードが出回り始めているので、あれをぎっしり並べて葉の近傍に置けばかなりの強さになりそうな気はしますが、どの程度の強さになるかはやってみないとわかりませんね。


Q:光合成では二酸化炭素利用しますが、一酸化炭素では光合成を行えますか?(2005.6.1)

A:光合成で二酸化炭素を利用するのは、ルビスコと呼ばれる酵素です。ルビスコは二酸化炭素と反応するのですが、同じ基質結合部位で酸素とも反応します(酸素と反応した時には光合成はできません)。しかし、ざっと調べたところでは、一酸化炭素と結合するという報告はありませんでした。また、酸素の時と同様、たとえ一酸化炭素とルビスコが反応できたとしても、光合成はできないと思います。


Q:日本で栽培できる作物で、且つ北東北で効率よく光合成を行いうる作物が有りますでしょうか。 (2005.5.31)

A:光合成の反応自体は、植物の種類、光の強さ、温度、根からの水分供給によって決まりますから、光合成を測る時の天候によって大きく左右されますし、北東北だからどうこう、ということはないのですが・・・。おそらくよく生育する、という意味でお使いなのでしょうか。それだと天候の他に、病虫害の出方などにも左右されますので、残念ながら僕の専門外でよくわかりません。


Q:光の足りないところで補光するためのノウハウとして、アルミホイルをくしやくしゃにしたものを広げて表土の上に置くといいと言われます。また白っぽい壁などは反射光があるといいますが、植物はほんとうに直接光だけでなく、反射光で光合成できるのでしょうか?(2005.5.27)

A:反射光でも、ある程度の強さがあれば光合成できます。ただ、白っぽい壁の反射ではかなり弱いので、強さが足りないかと思います。アルミホイルに直射日光があたっているような場合には、充分光合成の足しになると思います。ただ、一般に、葉の裏側は弱い光に順応しているので、いきなり強い光を当てると返ってよくない場合もあります。もっとも、もともとアルミホイルを使っている条件で育てている場合には、葉もそのような環境に順応するので、そのような心配はありません。


Q:先日、CGで植物を作成する、ということで、葉緑素とRGBの関係について質問したのですが、植物の葉の色を決定する要素、というものは、葉緑素だけなのですか?たとえばタンポポの葉とオリーブの葉を比べると、オリーブの方が葉の表面に光沢があります。これはクチクラ層が厚いためだと思うのですが、光沢のことを抜きにしてその色だけを考えると、葉緑素の濃度だけで色成分が変わってくるのでしょうか?(2005.5.25)

A:葉緑素以外の色素としては、カロチノイドがあります。これは黄色く見える色素なので、その分を補正しようと思ったら、多少Blueを弱くすればよいと思いますが、通常の条件ではカロチノイドの量はクロロフィルより少ないので、余り問題にならないと思います。ただ、もちろん紅葉・黄葉した葉では別で、この場合には、黄色のカロチノイド、赤色のキサントフィルの量を考慮に入れなくてはなりません。
 この他、考慮に入れる必要があるものとしては、散乱と反射があります。葉における散乱は、あまり波長依存性がなく、強いて言うと短波長ほど大きく光を散乱します。光沢は、反射の一種で、散乱と違って方向がそろっている点が違います。散乱は基本的にはあまり波長依存性がないので、全体に光が強くなる形になるだけです。例えば、葉の表面に細かい毛が生えたタイプの葉は、散乱が非常に強くなるので、白っぽく見えます。散乱、反射、光沢と言った表面処理は、僕の専門ではありませんが、「色」ではないので、通常のCGのテクニックが必要なだけで、植物独自の問題はあまりないかと思います。


Q:まことに単純な質問で申し訳ないのですが、果樹・野菜の光合成には午前中の太陽の光が良いと聞いたのですが、本当でしょうか?本当なら、我家の鉢植え果樹は12:00以降夕方までしか太陽光は射さないのですが、実が成熟するでしょうか?また、電灯(白熱灯)で代用してもできますか?(2005.5.21)

A:午後1時から2時頃の真昼の時間帯(と場合によってそれ以降)は、どうしても土が乾き気味になるので、葉から水を失わないように気孔が閉じる場合が多くなります。その結果、二酸化炭素の取り込みができなくなり、光合成は低下します。これを「昼寝現象」といいます。ですから、まだ、土壌に充分水分がある午前中の方が光合成を盛んに行える、ということはあります。ただ、これはあくまで水ストレスがかかるような条件の話なので、水が十分な条件では余り問題にならないでしょう。鉢植えなら、水の管理は充分にできるでしょうから、お昼から夕方まで日が差せば何とかなると思います。必要ないとは思いますが、太陽の光の代わりに電灯を使っても、光合成はできます。ただ、太陽の光に比べるとだいぶ弱いので、それだけで充分な光を与えることは、家庭ではなかなか難しいのではないかと思います。


Q:簡単な事なんですが、植物の呼吸のことでお伺いします。植物の呼吸は主に葉で行われていると思うのですが、葉以外(たとえば花弁や茎など)でも行われているのでしょうか?(2005.5.19)

A:はい。行なわれています。葉緑体は主に葉にしか存在しませんが、呼吸が行なわれるミトコンドリアは、基本的にはどの細胞にも存在します。葉緑体を持たない細胞では、呼吸によって生命活動の維持に必要なエネルギーを得ることになります。


Q:中学で自分がやろうとしている実験についてお聞きしたいと思います。まず、実験方法です。
1 小さい3つの鉢のそれぞれに同じ植物を植え、ビニール袋などで密封する。
2 Aは二酸化炭素を多くいれる。 Bはそのままの空気 Cは酸素を多くいれる。
3 二酸化炭素と酸素は、毎朝同じ量いれる。(200gくらいの缶を1,2本使いたいと思います)
4 成長の違いを見る。(水、日光、気温など全て同じ条件)
 この実験は、二酸化炭素の量の違いによる、光合成する量の差を植物の成長によって確かめるのが目的です。この実験で植物の成長に目に見える差はでますか。実験期間はどのくらいですか。二酸化炭素は足りますか。(2005.5.14)

A:実は、この実験がどのようになるかを予想することは非常に難しいのです。二酸化炭素を吸収して光合成を行なうわけですから、単純に考えれば二酸化炭素を多く入れれば光合成は盛んになります。気孔の開閉を無視できるような短い時間で見れば確かにそうなるはずです。しかし、光合成の速度を測れるならよいのですが、植物の成長で確かめるとなるとある程度時間がかかります。二酸化炭素濃度を上げてしばらくすると、植物は気孔を閉じ気味になることが知られています。そうすると、二酸化炭素は葉の中に入りづらくなるので、思ったよりは二酸化炭素を入れた効果が出ない、と言うことになります。一方で、気孔を閉じると葉から水が失われるのを避けることができます。ですから、もし、あまり水をやらない条件で実験をすれば、もともと気孔がある程度閉じているので、やっぱり二酸化炭素を入れた植物の方がよく育つかも知れません。さらに、二酸化炭素を入れてもう少し長い時間がたつと、植物は光合成に働くタンパク質を減らしてしまうことがあります。ですから、二酸化炭素を入れて、光合成がどうなるかは、どのぐらいの時間で見るか、また水をたっぷりやるかどうか、など、条件によって異なってしまいます。また、二酸化炭素を変えた時の影響は植物の種類によっても違います。トウモロコシなどは、自分で二酸化炭素を濃縮する仕組みを持っているので、二酸化炭素の影響が出にくいのではないかと思います。
 次にガスの量についてです。二酸化炭素は、空気に0.04%以下しか含まれていません。ですから、1%の二酸化炭素を足しただけで、もとから見ると25倍になるわけです。しかし、酸素はもともと空気に21%も含まれています。ですから、1%の酸素を足したとしても、ほとんど変わりません。おそらく、ちょっと酸素を足す程度では、酸素の効果を見るのは難しいかと思います。
 これらのことを考えると、僕の予想は、1)酸素を足す実験は差が見られない。2)二酸化炭素を足す実験は、実験条件、植物の種類、実験期間によって結果が変わってしまう、というものです。僕自身、実験をしたことがないので、何とも言えませんが、ハツカダイコンのような根も含めて重さを量りやすい植物を使って、1−2週間の時間で、枯れない程度に水を控えめにすると、差が出やすいのではないかと想像します。

Q:5月14日に自分がやろうとしている実験についてお聞きしたものですが、返答に不明な点があったため再度質問します。
 貴方が提案された実験は二酸化炭素の濃度を上げると、気孔が閉じる事で成長に差が出るとのことですが、自分は光合成によってできるデンプンの量の差で植物の成長を比べたいと思います。なのでそのようにできる実験があったら教えてください。(2005.5.15)

A:「光合成によってできるデンプンの量の差で植物の成長を比べたい」とのことですが、その光合成が、気孔が閉じると変化するのです。植物は葉の気孔から二酸化炭素を取り込んでいるので、どの程度光合成をするかは、気孔がどの程度開いているによって変わってしまいます。上で説明したように、二酸化炭素濃度を高くすると気孔を閉じるので、気孔が開いている低二酸化炭素濃度の時との差は、気孔の開閉が起こらない時に比べて小さくなります。しかし、一方で、水が足りなくなると、植物は水を失わないように気孔を閉じます。水が足りない条件の下で、もともと気孔がある程度閉じていれば、二酸化炭素濃度を上げても、それ以上は気孔が閉じず、二酸化炭素濃度の影響だけを見ることができるはずだ、ということです。ですから、「気孔が閉じることで成長に差が出る」のではなく、「初めから気孔が閉じていれば、気孔の開閉による差が無くなるので、二酸化炭素濃度の光合成への直接的な影響だけを見ることができる」ということなのです。上で説明しているのは、水が足りずに成長に差が出るということではありません。
 あと、実際に二酸化炭素濃度の光合成への影響を調べている東北大学の彦坂先生にうかがったところ、成長に対する二酸化炭素濃度の効果は小さく、専門家がやっても差を出しにくい、とのお話でしたから、なかなか難しい実験のようです。
 なお、最初の回答で誤解を招く原因になったと考えられる表現を若干修正しました。少しはわかりやすくなったでしょうか。

Q:二酸化炭素の濃度を濃くした時に、気孔が閉じる訳ですが、どのくらいの濃度で閉じるのですか?また、その時、光合成・呼吸はするのですか?なるべく早く、解答お願いします。(2005.5.20)

A:濃度としては1%程度に上げれば気孔が閉じると思います。この場合、気孔は閉じ気味になりますが、周りの濃度が高いので、葉の中の二酸化炭素濃度は、光合成をするに充分な値を維持できます。また、呼吸も、(酸素濃度を変えない限り)するはずです。


Q:てんぐさを天日干しすると赤色が綺麗な飴色になる現象について質問させてください。
てんぐさは、もともと赤いのに、天日干しをすると数日で綺麗な飴色になることを知りました。不思議に思い、Webで検索したところ、紫外線の働きによるようなのですが、詳しいメカニズムは良く分かりませんでした。もう少し調べてみると、てんぐさの赤色はフィコエリトリン(phycoerythrin)という赤色色素によるようですが、このフィコエリトリンを抽出した実験データを見ても、綺麗な赤色をしています。実験は屋内とはいえ紫外線のある環境下で行われておりますし、とくにフィコエリトリンが紫外線に対して脆弱であるという記述は見つけることができませんでした。実験データは以下のURLで見たものです。http://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/gakkou/koukou/active/16kenkyu/16midorioka.pdf
てんぐさの変色は、単純にフィコエリトリンの紫外線による分解なのでしょうか?ご教示お願いします。(2005.5.11)

A:フィコエリトリン(フィコエリスリンとも言います)を含むフィコビリン色素は、一般にはかなり安定です。例えば、市販の乾燥海苔からでも、フィコビリンを抽出することが可能で、数日の天日干しで完全に分解するようには思えません。ただ、実際にフィコビリンがどうなっているかの実験の経験があるわけではないので、確実なところは言えません。見かけの色の変化というのは、色素の量だけではなく、組織の状態の変化による光の透過率や散乱の変化などによって大きく影響を受けます。正確なところは、干したテングサから実際に色素を抽出してみないとわからないかと思います。フィコビリンは水溶性のタンパク質なので、水に戻して破砕して、上澄みを取れば簡単にチェックすることができます。


Q:この間生物の授業で光合成色素の分離分析と系統関係の類推の実験をしました。そして葉の紅葉は気温の低下とともに、光合成により得たデンプンが葉に溜まって糖に分解される。一方クロロフィルも老化によりアミノ酸に分解され、これら糖とアミノ酸が葉の中に多くなる。葉が赤くなるのは、これら糖やアミノ酸を材料にアントシアンという色素が合成されるためだとゆうのはわかったのですがこれを実験的に調べるにはどのような実験をすればよいのですか?
 あと、高等植物がすべて緑藻類と同じ光合成色素を持っているというのはどのような意味があるのでしょうか。(2005.5.8)

A:「これを実験的に調べる」という「これ」というのが、「アントシアンが合成される」ということしょうか?でしたら、アントシアンは水溶性の色素なので、秋の様々な時期にモミジの葉を取って水を加えてすりつぶすなどして色素を抽出し、その色の変化を比べてみればよいかと思います。光合成色素のクロロフィルやカロテノイドは水に溶けないので、水溶液の色はほぼアントシアンの色を反映すると考えて構いません。一方で、「デンプンが葉にたまって糖に分解される・・・」といった一連のメカニズムを知りたいのであれば、膨大な実験をしなければ無理です。
 2つ目に質問ですが、なんにせよ、別に、高等植物や緑藻にとって「意味がある」わけではありません。意味は人間が考えることで、それは人さまざまです。別に「正解」があるわけでもありません。自分でいろいろ考えてみることが大切です。


Q:陸上植物の起源は緑藻だと考えられていますが、その根拠の一つである、光合成色素の構成パターンの類似性について紅藻類やシアノバクテリア(藍藻)と比較した場合、どうなりますか?(2005.5.4)

A:これは「質問」ではなく「問題」です。「質問」というのは、自分の「なんでだろう」という疑問から出るのに対して、「問題」というのは、人から与えられるものです。ここは、問題に対して模範解答を提供する場ではなく、疑問に対して答える場です。「どうなりますか」とありますが、何が知りたいのでしょう?おそらく人から与えられた問題を何も考えずに引き写しているので、このようなことになるのだと思いますが、自分の頭で考えて、疑問点が明確になっていないと答えようがありません。(それに、脳みそは使わないとどんどんダメになりますよ。)


Q:有性生殖の進化を促した利点ってなんですか?(2005.5.4)

A:多様性です。  (ここは、光合成に関する質問をするところですのでお間違えのないよう!)


Q:光合成に関するもので、クではじまりムでおわるものはなんですか?これがどうしてもしりたいのです。。ドウか教えてください!!(2005.5.4)

A:これはクロスワードか何かですか?だとすると、やはり、「ムでおわる」というところが間違っていて、実はルでおわるのでは、と思うのですが。クロスワードであまり専門的な言葉は使われないでしょうから、クロロフィルぐらいだと思うのですが。植物は、青い光を吸収する色素としてクリプトクロームというのを持っていますが、これは光合成とは直接関係ありません。


Q:初めて質問します。「地中で発芽した芽生えは光がないために黄化芽生えの形態をとるのですが、地上に顔お出して光を受けた芽生えは子葉を広げ光合成を始める」と書いてあるんですが。この時のとくに植物の光に対する応答の仕方はどうなるのですか?(2005.5.2)

A:これは、黄化芽生えが緑化するにつれて、光の検知機構が変化するのか、という質問でしょうか。だとすると、あまり変化しないと思います。光合成色素であるクロロフィルの量などは劇的に変わりますし、葉緑体が発達することにより、光合成できるようになるということは、植物にとっては大きな変化ですが、一方で、光合成系以外の光の感知機構は一度緑化したらいらなくなる、というわけではありません。緑の葉でも、ずっと暗いところに置いておけば、だんだん黄色くなっていきますし、薄暗がりの草がひょろひょろとした形態を示しているのはよく目にします。緑化の際には、光合成の面では大きく変化するが、光の検知の仕方は大きく変化しない、というのが答えだと思います。


Q:初めまして、質問です。光合成色素についてのレポートを書いているのですが、「光合成色素を持たない植物」というこことはイコール「光合成をしない植物」(寄生植物とか)にあたるのでしょうか。至急返答お願いいたします。(2005.5.1)

A:光合成をするためには、光を吸収する光合成色素が必須ですから、「光合成色素を持たない植物」=「光合成をしない植物」と考えてよいと思います。もやしや種も光合成色素を持ちませんが、その意味では、もやしも種も光合成をしませんから。


Q:小学6年生です。光合成に必要な条件を調べるには、どんな実験がありますか?教えてください。(2005.5.1)

A:そのような実験をするためには、まず、「いくつか条件を変えて」植物に光合成をさせて、次に「どれだけ光合成をしたか測る」ことが必要です。光合成を測る実験としては、ヨウ素デンプン反応が一番有名ですね。その他には、ペットボトルなどに植物を入れて水で満杯にして、光合成により発生する酸素を気体として集める方法があります。変える条件として簡単にできるのは、光のあるなし、温度、でしょうか。


Q:原形質流動は葉緑体の光合成のように、光による影響があるのでしょうか。原形質流動は細胞に養分を運ぶための運動ではないのでしょうか。その場合、葉の葉緑体での光合成が盛んにおこなわれている場合には活発に、行われていない場合には、葉緑体の原形質流動による運動がみられないという解釈はできますか?(2005.4.25)

A:原形質流動は、筋肉と同じでアクチンとミオシンが働くアクトミオシン系で動いていると考えられています。ミオシンはATPase活性を持っていて、動くためのエネルギーとしてATPを使います。従って光合成を含む代謝が活発な部分(元気のよい部分)では、原形質流動も盛んに起こります。ですから、光合成が盛んに行なわれている時には原形質流動も盛んに起こるでしょうけれども、これはエネルギーの供給の変化によるもので、光を直接に感知しているものではありません。


Q:初めまして。質問をさせていただきます。以前の質問(2004.5.28,10.22)の回答で、藻類と水草の培養液のpHの上昇は溶液中の二酸化炭素の消費によるとありましたが、これはウキクサのみの密閉培養(アルミで蓋をする程度)にも当てはまるのでしょうか。イボウキクサを培養していると培養液のpHがあがっていってしまい、結果的に、イボウキクサの生育も止まってしまいます。6.2で調整したpHが7まで上昇していました。このpHで生育が止まってしまうのはイボウキクサ自体に問題があるのでしょうか。回答をよろしくお願いいたします。(2005.4.22)

A:イボウキクサを栽培したことはないので、しかとはわかりませんが、浮き草の場合、空気中から二酸化炭素を取り込めるので、培養液のpHが極端に上昇することはないと思います。また、自然界では、pHが一定に保たれているわけではありません。pH 6.2でよく生育できる通常の植物が、pH 7にしたことにより、生育が止まることはないはずです。生育が止まることと、pHがあがることが同時に起こったとしても、生育停止の原因がpHの上昇による、とは言えません。常識的には、まず、他の原因を考えてみた方が良いかと思います。


Q:質問の内容は、サトウキビはスクロースを同化産物として貯蔵していますが、サトウキビは光合成の際にデンプンを合成することはないのかということです。スクロースが主な同化産物になっている他の植物の場合も、デンプンを作ることができないのか、作る能力はあるのか、あるいは作ってはいるけれどもごく少量なのか、ということが分かっていましたら、ご教示いただければ幸いです。(2005.4.19)

A:以前の質問箱にもありますが、光合成産物がショ糖になるかデンプンになるかは、ショ糖を合成する酵素であるショ糖リン酸合成酵素(SPS)の量に依存します。植物の種類によってデンプン量に差がある場合も、SPSの活性とデンプン量の間によい相関があるとのことです。ですから、、デンプンをほとんど貯めない植物でも、デンプンを合成する能力がないのではなく、SPSの活性が高いために同化産物がショ糖にまわってデンプンにはまわらない、ということでしょう。ちゃんと確かめたわけではありませんが、デンプンを合成する酵素などには差がないのだと思いますし、ごく少量であればデンプンもできていると思います。


Q:ある大学院の入試の模擬問題なのですが、『 温度および二酸化炭素や水の濃度が一定の環境下で、光合成速度は、光が強くなるほど増加するが、ある閾値(光飽和点)を超えるとそれ以は上増加せずにほぼ一定となる。この原因を説明せよ。』とありました。
 ”温度および二酸化炭素や水の濃度が一定の環境下で”の所が”二酸化炭素や水の濃度が一定の環境下で”というように、光以外にも変化するものがあるのなら解るのですが、光以外の要因は全て一定、となるとわかりません。教えていただければうれしいです。(2005.4.10)

A:これは、高校の生物1の教科書に載っていることなのですが。これで大学院の入試問題の模擬試験になるのでしょうか?
 それはさておき、光合成の反応には、光のエネルギーを使う反応(光化学反応)と光のエネルギーを使わない反応(炭酸固定反応)の2つの反応が必要です。炭酸固定反応は光のエネルギーを使いませんから、光以外の要因が一定なら、その最大速度も一定です。一方で、光化学反応の速度は光の強さに依存して変わります。光合成全体としては両方の反応が必要ですから、光合成の速度は、2つの反応のうち速度が遅い方の反応速度までしか出ません。光が弱い時には、光化学反応の速度が律速段階になって光の強さに比例して光合成速度があがります。しかし、光化学反応の速度が上がっていって、炭酸固定反応の最大速度を超すと、今度は、炭酸固定反応が光合成全体の律速段階になるので、それ以上は光の強さがどうであろうとも、光合成速度は炭酸固定反応速度以上にはなれないので、一定の値になるのです。


Q:発光ダイオードで植物を育てようとしているのですが、必要なのは赤と青のLEDだと言う事が分かりました。赤は光合成に必要で、青は形態形成に必要だと聞きました。ということは、赤だけで植物を育ててみたり、青だけで育ててみたりしたら、変な形の植物ができたり、光合成をしなかったりということになるのですか?できれば、様々な条件下で植物を育てたときに植物にどのような違いが現れるのか教えて下さい。(2005.4.9)

A:発光ダイオードと植物の生育はすでに同様の質問がありますし、光の色と光合成の関係については光合成の実験のところにいくつか質問があります。これらをご覧になってわからなかった部分を再度ご質問頂けますでしょうか。以前の答えに書きましたが、「赤は光合成に必要で、青は形態形成に必要」というのは必ずしも正確ではありません。


Q:光合成測定を行なった後に、クロロフィルa量を調べようと思うのですが、クロロフィルa量を求める式をいくら調べてもわかりません。紅藻を用いて実験をしています。教えてもらえませんか?分光光度計を用いる予定です。(2005.4.8)

A:ちょっと検索をすればすぐ見つかると思いますよ。紅藻だと、シアノバクテリアの場合のように細胞のまま測定する方法を使えるかも知れません。また、紅藻の場合、シアノバクテリア同様クロロフィルbがないので、式は連立方程式ではなくなり、もっと簡単になります。


Q:CGで植物を作成する研究を行っております。CGで植物の葉の色を作成する際、葉緑素の濃度と葉の色(RGB値)に関係はあるのでしょうか?もしよければ、葉緑素の濃度と葉の色の見え方の関係、光のスペクトル吸収などについて教えていただけないでしょうか?(2005.3.28)

A:葉緑素(クロロフィル)は、主に赤と青の光を吸収します。従って、ある程度のクロロフィルがあれば、RとBの値が低くなって、緑色に見えるわけです。クロロフィルは、赤と青ほどではありませんが緑の光も少し吸収しますから、一部の樹木のように葉が厚くてクロロフィル濃度が非常に高くなっていくとと、緑の光の吸収も無視できなくなり、だんだん黒っぽい緑色になります。一方で、一部の出たての葉っぱのようにクロロフィル濃度が低い場合には、見た目には、緑というより黄色に近い色になります。つまり、クロロフィルの濃度が低い時は、緑色の光が弱く吸収されて黄色っぽい色に見え、濃度が高くなっていくと、緑色の吸収が強くなって緑色になり、さらに濃度が高くなると赤や青の光も吸収されるので、黒っぽい緑になります。
 RGBの波長が実際にどのようになっているのかよく知らないので、正確なところはわかりませんが、クロロフィル濃度をCとした時に、例えばGをexp(-C/5)、RとBをexp(-C)などとして色を作ってみると、案外それらしくなるのでは、と思いました。ただ、ここは専門ではないので、全くの想像です。


Q:光合成をするには光がいります。なぜ光を当てると、葉緑体からでんぷんが出来るのですか。どうしてできるのかと、光にどのような成分が含まれているか、教えてください。(2005.3.25)

A:前にも、「光合成について教えてください」という質問が来た時に、言っているのですが、光合成の全てを教えてくれと言われても、講義で何時間もかけて説明する内容をホームページで答えるのには無理があります。光によりデンプンができるメカニズムというのは、まさに光合成のほとんど全てで、もう少し、絞った質問にして頂かないと答えられません。特に、「大学院生・先生」の区分でご質問頂いておりますが、そのレベルでの回答を、光合成全てについて行なうことは不可能ですので・・・


Q:現在、紫外線ランプ照射によって、アオコとして発生する藻類の増殖を抑制するという研究をしておりまして、その関係で、紫外線照射が、Microcystis等の藍藻類の光合成に与える影響について興味を持っております。ただ、それが「具体的にどのような機構で影響するか」というのがいまひとつよくつかめないので、申し訳ありませんが、ご教授いただけないでしょうか? 自分の調べた範囲では、PSII内部のD1及びD2タンパク質がラジカル等によって分解されるというような知識を得ておりますが、そもそもこれで合っているのかどうか、またこの機構が、紫外線照射による光合成活性の低下のうち、どの程度主要な機構と考えられているのか、教えていただければと思います。
 また、藍藻類では、紫外線によるD1タンパク質への影響について、Synechocystisについて主に実験がなされているようですが、他のものが用いられない理由は何かあるのでしょうか?例えば、「Microcystisでは、対象とする部分の精製が難しい」などといったことがあるのでしょうか?(2005.3.19)

A:シアノバクテリアに対する紫外線の影響の原因については、大きく分けて2つの説があります。
 1つ目は、強すぎる可視光による阻害の場合と同じように、クロロフィルなどに利用できる以上の光が吸収されたために、過剰なエネルギーが活性酸素などの発生につながり、光合成系が破壊される、という説です。この場合、PSII内で一重項酸素などのラジカルが発生し、それが、D1タンパク質などの分解を促進するか、あるいはD1タンパク質の補修系の効率を下げる、とされています。この場合は、基本的なメカニズムは、可視光による阻害の場合と同じだと考えられます。
 もう1つの説は、この数年に出てきたもので、PSIIにおける酸素の発生に関わるマンガンクラスター(D1タンパク質などに特別な形で配位した4つのマンガン原子からなります)が直接紫外線を吸収して、その結果、破壊されてしまう、というモデルです。こちらは、阻害の作用スペクトルを取ってみると、紫外部に大きな山があり、これがマンガンの吸収スペクトルに近いことから提唱されました。
 現時点においても、どちらのモデルが正しいか、論争が続いており、まだ、決着していない状態です。場合によっては、両方が寄与している可能性もあるかと思います。
 これまでの研究には、Synechocystisが使われる場合が多いのですが、これは、Synechocystisは既にゲノムの全塩基配列が決定されていて、分子生物学的に研究を進めようと思った時に極めて使いやすい、ということが大きく寄与しています。もし、生理学的もしくは生化学的な研究だけでよいのでしたら、Synechocystisは必ずしもよい材料ではありません。ただ、現在ではSynechocystisに関しては、多くの人が研究に用い、非常に多くの情報が蓄積したため、それ自体が一つの強みになっています。


Q:光合成の作用スペクトルというのはどのようにして測定するのですか。(2005.3.19)

A:作用スペクトルというのは、いわば、光によって起こるある働きが、どの色の光でどれだけ起こるかを示したものです。ですから、ご質問は、「どのように光合成を測るか」という部分と、「光を色ごとにどのように分けるか」という部分に分かれます。
 光合成の測定は、ある程度定量的に測れる方法であれば、何でも構いません。光合成の結果出てくる酸素の発生速度を測るなどは、その一例です。高校生レベルでは、オオカナダモから出る酸素の気泡の時間あたりの数を数えてもよいでしょう。
 光を色ごとに分けるのには、分光器を使うのが1つの方法です。分光器は、中に回折格子という違う色を違う場所に取り出す仕組みを持っていて、自由にある色の光を取り出すことができます。このようにして取り出したある色の光でまず光合成を測り、次に別の光でまた光合成を測り、と続けていって、最後に光の波長を横軸に、光合成の速度を縦軸にしてグラフを書けば光合成の作用スペクトルが得られます。分光器がない場合は、特定の色だけを通す色ガラスを使う場合もあります。色ガラスの場合は、ある波長だけを取り出すのは難しいですが、だいたいどのあたりの波長の光を当てた時にはどのぐらい、といったおおざっぱな見積をするには充分です。


Q:光合成色素の分離の実験で、抽出液や、展開液に有機溶媒を使うのは何故ですか??光合成色素の性質と何か関係はあるのでしょうか??(2005.3.14)

A:光合成色素のクロロフィルやカロテノイドは、どちらもその分子の中に炭化水素の長い鎖を持っています。いわば一種の油ですから、水には溶けませんが、有機溶媒には溶けます。そこで、抽出液や展開液には、水は使えず、代わりに有機溶媒を使うことになるのです。


Q:PAMを用いた実験などでこちらのホームページを活用させてもらっている者です。先生のページ大変勉強になります。
 で、質問なのですが、学生同士で光化学系のことで勉強していたのですが、クロロフィルが青色の波長と赤色の波長を吸収し励起するとの話の中で、青色で励起したクロロフィルは熱損失をして最低励起状態に戻ると専門書にはありました。そしたら、「青色で吸収したエネルギーって無駄?」のような話になりました。実際、青色光で励起するのは何でなのでしょうか?(もしかしたら、熱以外に何かエネルギーを利用している機構があるのかも・・。)
 また、青色光反応として、光屈性、茎伸長の抑制、気孔運動などがありますがこれと、青色の光によるクロロフィルの励起は関係あるのですか?勉強不足なもので当たり前のことを質問しているかもしれませんが回答の方宜しくお願いします。(2005.3.14)

A:「青色で励起したクロロフィルは熱損失をして最低励起状態に戻る」というのは本当です。でも、あくまで「最低励起状態」に戻るだけで、光を吸収する前の「基底状態」に戻るわけではありません。青い光は赤い光より多くのエネルギーを持っていますが、この差の部分が損になるだけで、青い光の光子1個と赤い光の光子1個では、同じだけの光合成が起こります。つまり、エネルギーあたりで見ると(青い光はもともとより多くのエネルギーを持っているので)損ですが、光子の数あたりで見ると別に損はしていないのです。青い光も十分に光合成に寄与しています。
 光屈性や気孔運動などの場合は、フォトトロピンという青い光を吸収する色素が働いています。ですから、クロロフィルの吸収とはまた別の話になります。クロロフィルがあれば、青い光を吸収すること自体はできますが、フォトトロピンがないとクロロフィルがあっても、気孔の開閉などが不十分になります。


Q:室内でチューリップを育てています。すりガラス越しの日光でも十分に光合成は可能ですか??(2005.3.3)

A:どの程度の光で光合成が可能かは、植物の種類によって違います。チューリップの場合、もともと明るいところを好む植物なので、すりガラス越しだと「十分に」というほどは光合成ができない可能性があります。ただ、球根に栄養を貯めてあるので、花が咲くまでは問題なく育つと思います。畑で十分に日光が当たるところであれば、光合成でまた栄養を球根に貯めて、来年も花を楽しめると思いますが、すりガラス越しだと、そこまでは無理かも知れませんね。


Q:卒論で植物プランクトンの増殖を研究しています。唐突な質問で申し訳ありませんが、1.クロロフィルaを測定する際に部屋の照明を落としますが、何故なのでしょうか?先輩からの引継ぎで、明るい条件下で測定するとクロロフィルが分解すると教わりました。測定方法は、酸添加法です。抽出溶媒は、ジメチルホルムアミドを使用しています。濾過をする際に暗状態にするのは理解できますが、抽出後に蛍光光度計で測定する際に暗状態にする理由は理解できません。2.また、なぜジメチルホルムアミドが抽出溶媒として利用されているのでしょうか?大変不躾な質問ですが、何卒ご教授お願いします。(2005.3.1)

A:前半のご質問ですが、有機溶媒中でも、色素は光により徐々に分解される場合があります。従って、抽出したあとなら大丈夫、ということはありません。蛍光光度計の中に入れて蓋を閉めたら外部の光の影響はなくなりますから、部屋の照明を落とす必要はないでしょうけど、試料の出し入れのごとに照明をつけたり消したりするのは面倒でしょうから、それで照明を落としているのではないでしょうか。
 ジメチルホルムアミドは、細胞を破砕しないでも比較的高い効率でクロロフィルを抽出しますので、よく利用されます。ただ、メタノールや、90%アセトン、80%アセトンなども使われます。その場合は、抽出効率がやや落ちるので、細胞を破砕する操作を併用する場合が多いようです。
 ちなみに、酸添加法というのは、まず、酸を添加する前にクロロフィルとフェオフィチンの量を量って、ついで、酸を添加してクロロフィルをフェオフィチンに変えてから、フェオフィチンの量を量ることにより、生体内のクロロフィルとフェオフィチン量を計算しようとしてかなり昔に考案された方法ですが、現在では問題点があることがわかっています。もし可能でしたら、HPLCなどによる測定のほうがよいかと思います。


Q:初めまして。北海道に住む者です。光合成には関係ないかも知れませんが、もし解れば教えていただきたいと思い質問しました。仕事の関係上(肥料販売)、顧客に農家の人が多いのです、が「昨年・今年と長いもの肌が赤い」とよく聞きます。赤い成分はアントシアン(アントシアニン)だそうですが、なぜ赤くなるのか解らないそうです。私も調べて見ましたが、発色要素には、酸素・pH(酸性)・光(熱)が有るのは解りましたが、なぜ赤くなるのか不明です。もともと遺伝子としてアントシアンを持っているのでしょうか? それとも違う物質が何かと反応してアントシアンに変化するのでしょうか? なぜ赤くなるのかと対処法を解りやすく教えていただきたいのです。長いもは土の中で赤くなっています。 長いもは秋と翌年の春に掘り出すのですが、秋のほうが赤くなります。種芋も赤いのがあるそうです。宜しくお願いします。(2005.2.26)

A:植物における色素の蓄積については、まだわからない点が多く残っています。アントシアン系の色素は花弁の色の重要な成分ですが、花弁以外にも、葉や根に蓄積することがあります。アントシアンの合成は、植物が持っている酵素によって起こりますから、何らかの必要があって合成されていると考えてよいでしょうけれども、実際に何の役に立っているのかはわからない場合がほとんどです。葉の場合には、紫外線のカットに効いている(つまりサングラスの効果ですね)という実験報告がありますが、根の場合には全くわかっていないのではないかと思います。一般には、植物にストレスがかかった状態ではアントシアンの合成が盛んになります。ただ、ストレスといっても、低温、貧栄養、強光など、いろいろな環境要因がストレスになりますから、アントシアンが多くなった原因が何であるのかを推定するのは難しいかと思います。秋の方が赤いとすると、夏の高い温度に慣れていた植物が最初に低温にさらされた時にアントシアンが合成される、などといったケースが想像されますが、本当にそうかどうかは、環境をコントロールした実験をしてみないとわからないでしょうね。


Q:単純な質問なんですが、今世界ではCO2排出削減の取り組みが行われていますが、光合成の様にCO2の分解が出来る実用的な装置はないのでしょうか?(2005.2.14)

A:二酸化炭素を分解(というより、ガスを何らかの個体の形にするので「固定」という言葉がよく使われます)するためにはエネルギーが必要です。例えば、電気により、そのエネルギーを供給して二酸化炭素を固定する装置を作ることは可能かも知れません。しかし電気を作るためには発電所で二酸化炭素が排出されているでしょうから、二酸化炭素を減らす、という意味では問題の解決にはなりません。光合成の場合は、このエネルギーに太陽の光を使っているわけです。太陽エネルギーを使う分には、二酸化炭素が出ませんから、光合成の結果として固定できた二酸化炭素は、まるまる減ることになります。人間が太陽エネルギーを使って二酸化炭素を固定する装置を作れば良さそうなものですが、残念ながら植物の光合成のように効率のよい装置を作ることはまだできていません。


Q:初めまして、ドイツに住む高校生です。HP非常に興味深く読ませて頂いています。教科書に載っていた光合成と光の強さとの関係のグラフを見ると、一定の温度でも光が強すぎると光合成が行われない、と書いてありました。温度が一定なのにどうして光合成が行われなくなるのですか?また、その場合植物の中ではどういう状態になっているのですか?(2005.2.5)

A:普通の日本の教科書に載っている図だと、光を強くしていくと光合成が一定値に近づくだけで、強すぎる光で光合成の速度が落ちるところは書いていないのですが、ドイツの教科書は優秀ですね。
 光合成には光を使う反応(チラコイド膜で起こります)と光を使わない反応(チラコイド膜で起こる反応の一部とストロマで起こる反応)があります。光のエネルギーを使う反応は、当然、光を強くしていくと速度が上がりますが、光を使わない反応の速度は温度などの条件が一定なら一定だと考えてよいでしょう。暗いところでは、光を使う反応速度が0で、光が弱い時には光を使う反応が全体の光合成の速度を決めます(これを光を使う速度が全体を「律速」しているといいます)。光が強くなっていくと、最初は光合成全体の速度が上がりますが、全体の速度は光を使わない反応を超えることはありません。ある程度以上の光の強さになると、光を使わない反応の速度が全体の光合成の速度の律速になるので、それ以上は光合成の速度が上がらなくなります。
 それでは、その時に、強くした分の光のエネルギーはどこへ行くのでしょう。普通、光のエネルギーは光合成の反応を進めるエネルギーとして使われますが、強い光の場合、もう光合成はそれ以上は上がらないので、余分な光のエネルギーは光合成に使うことはできません。そのような場合、植物には防御システムがあって、ある程度までは、エネルギーを安全に熱エネルギーの形にすることができます。しかし、さらに光が強くなると、エネルギーが余ってそのエネルギーによって光合成の装置が壊されてしまうことがあります。これを「光阻害」といって、強すぎる光で光合成が行なわれなくなる原因です。具体的には、余った光エネルギーによって「活性酸素」と呼ばれる物質が発生し、それが光合成装置を破壊します。


Q:初歩的な質問でごめんなさい。 先日、理科の実験でペーパークロマトグラフィーによる光合成色素の抽出実験を行ったのですが、その実験の課題として5つの色素の役割について調べてくることになりました。 クロロフィルa、bについては分かったのですが、ビオラキサンチン、ルテイン、カロテンについてはよく分かりません。勝手なのですがなるべく早くお答えいただけると助かります。(2005.2.3)

A:実はカロテンの仲間(カロテノイド)の役割というのは、初歩的どころか最先端の研究の対象です。最先端の研究分野なので、以下、説明がやや難しくなるかと思いますが、お許し下さい。
 昔は、カロテン、キサントフィルなどは「光合成の補助色素」として、クロロフィルには吸収できない色の光を吸収して光合成に使うというアンテナとして働いていると考えられてきました。しかし、最近の研究から、アンテナとしてよりは、むしろ植物の防御反応に役立っているという説が有力です。通常の植物に含まれるカロテンはβ(ベータ)カロテンですが、これは、アンテナのクロロフィルが「三重項状態」というエネルギーを持った危険な状態になった時に、そのエネルギーを無害な熱の形に変える働きがあります。また、ビオラキサンチンは、アンスラキサンチン、ゼアキサンチンとお互いに変換することができ、弱い光の下ではビオラキサンチンが多くなり、強い光の下ではゼアキサンチンが多くなります。ビオラキサンチンはアンテナとして働くことができるのですが、ゼアキサンチンは、むしろ集めた光を熱に変える働きを持っており、光が強すぎる時にその強すぎる光のエネルギーから植物を守る作用があります。つまり、弱い光の下ではビオラキサンチンが多くなって懸命に光を集め、光が強くなるとゼアキサンチンが多くなって光を熱に変えるという合理的な仕組みになっています。最後のルテインに関しては、いくつか研究の報告はあるのですが、「これぞルテインの役割」という決定的な証拠は見つかっておらず、もしかしたら、単に補助的なアンテナ色素として働いているのかも知れません。


Q:特許を調べいて、「波長400〜700nmの光合成有効光量子束の透過率」との文面が出てきました。初めての言葉なので調べましたが、光合成有効光量子束密度はあったのですが、なかなか出てきません。教えて頂ければ本当に有り難いです。よろしくお願い致します。(2005.2.2)

A:「光合成有効光量子束の透過率」というのは意味不明です。出てこなくて当然のような気がします。おそらく「光合成有効波長領域の光量子の透過率」のことではないでしょうか。もっと通常の言葉を使えば「400-700 nmの光の透過率」ということになりますが。光は単位が色々あってやっかいなので、時々妙な表記を見ることがあります。


Q:こんにちは。はじめてHP拝見させていただきました。恐縮ですが、ご質問させていただきます。以下のような質問が以前あげられていました。
 「Q:光合成色素の一つであるクロロフィルAの分解機構について教えてください。また分解が最も促進される環境条件別の減少率等を教えてください。(気温・日照量等)」
 この質問と類似するとは思うのですが、現在、クロロフィルの減少と気温・湿度の関係について勉強しています。相関関係など数値で表した資料などご存知でしたらご紹介していただけないでしょうか。それというのも、現在某メーカーのSPAD機器を使用し簡易的な実験を行っております。気温とSPAD値が連動しているということはなんとなく現れていますが、数値がばらつき、目的の指標として使えません。経年で変化するSPAD値とクロロフィルの関係について、要因など言及した資料をご存知でしょうか。宜しくお願いいたします。(2005.2.1)

A:クロロフィルの分解は、自然条件では老化に伴って起こりますが、環境要因の影響を調べた研究としては、光の強さ、光の色、栄養条件(窒素濃度)の影響を調べた例があり、他に環境条件ではありませんが、葉の古さ(葉令)の影響を調べた例があります。しかし、気温や湿度との関係を調べた例は知りません。一般的に、老化には、光と栄養条件が大きく効く、とされているので、その他の要因をあまり調べてみようとしない、ということかも知れません。もし湿度の老化に対する影響が非常に小さければ、湿度とクロロフィルの減少の相関を検出することは、そもそも非常に難しくなります。
 SPAD値は、非破壊的にクロロフィル量を推定できるので、非常に便利で僕も使っていますが、クロロフィル量以外の要因の影響を否定できないので、測定期間が長い場合には注意が必要です。また、測定面積が極めて狭いので、一枚の葉の中でクロロフィル量の分布にばらつきがある場合は、たとえ1枚の葉で何点か測定してもきれいなデータを取ることができません。そのあたりも注意が必要かと思います。

Q:気温とクロロフィル濃度の相関関係でご質問させていただいた者です。とても丁寧なご返答ありがとうございます。植物の生理に明るくないため、初歩的な質問が続くと思うのですがご了承下さい。追加でご質問させていただきます。
 クロロフィルの分解が植物の老化によって引き起こされるとのご返答をいただきました。現在簡易的に試験を行っている植物はヘデラ・カナリエンシスです。水分条件や栄養条件を揃えた環境で実験行っているのですが、気温が低いところでは冬季紅葉するのですが、ある温度以上下がらないと紅葉しない特性があります。葉は更新せず、また緑に戻り次の年を生きていきます。
 紅葉はよく、気温が要因といわれています。クロロフィルの分解が老化が引き金となっていて、条件が光や栄養であるとき、このヘデラ・カナリエンシスの変化をどのような要因と結びつければようでしょうか。老化と紅葉は位置づけが異なり、要因とメカニズムが大きくちがうのでしょうか。SPAD値は紅葉が進むにつれ減少しているため、ヘデラ・カナリエンシスのクロロフィル濃度は気温と密接な関係があるのではないかと考えていました。さらに、実験区の裏側(光がついたてと上のネット制限され、風が吹きにくくわずかに保温されている可能性もある条件)では表が紅葉してもなお葉が緑のままでした。要因は温度、それとも光なのでしょうか。よろしくおねがいいたします。(2005.2.3)

A:紅葉は気温の影響を受けますが、それは主に光合成産物の転流が阻害されることが原因ではないかと思います。光合成産物の蓄積は、光合成関連遺伝子の発現を抑制されていることが知られていますし、一方で、赤い色素は光合成産物から作られます。ただ、紅葉を、もし赤い色素の蓄積と定義するのであれば、必ずしも紅葉はクロロフィルの減少を意味しません。もちろん、おおざっぱに見て、葉の色が赤くなるにつれてクロロフィルが減少する、ということはありますが、クロロフィル量がさほど変わらない状態で、まず赤い色素が蓄積する例も一般に見られます(その場合、まずどす黒い赤になってそれからクロロフィルが減少するに従ってきれいな赤色になります)。
 環境要因の影響を調べるのでしたら、やはり、人工気象器などで、温度、光の強さ、湿度などの要因のうち1つだけを変えてその影響を見る、といった実験が必要になると思います。


Q:環境の違いが植物体内のクロロフィルaとbの存在量に及ぼす影響について質問させていただきます。何卒よろしくお願いいたします。もし何らかの方法で、クロロフィルaまたはbの特異的な吸収波長の部分の光をカットした場合、植物体内のどちらか一方の色素が相対的に増え(あるいは減少し)、人間の目に見える緑色が薄くなったり、濃くなったりすることがあるのでしょうか?また、光以外でこれらの存在量に影響を及ぼす因子は何かあるのでしょうか?ご回答のほどよろしくお願いいたします。(2005.1.30)

A:クロロフィルaとbの吸収波長はほとんど重なっており、どちらかにだけ吸収される光を当てる、ということは技術的にほとんど不可能です。下の質問に対する答えにもありますように、アンテナの役割を果たす集光性クロロフィル複合体はクロロフィルbも含みますから、光が弱くて、より光を集めなくてはならない環境ではクロロフィルbの量が相対的に増えます。ただし、クロロフィルaとbの吸収には大きな差がありませんから、色の差として人間の目で確かめることは難しいでしょう。光以外の要因としては、栄養があります。窒素肥料が足りない時、マグネシウムの欠乏時、などに葉の色が薄くなることが知られており、これはクロロフィルの減少が原因です。


Q:光合成細胞のチラコイド膜において、クロロフィルが吸収した光エネルギーはどのように消費されるのですか。
光化学系I,IIの集光性クロロフィル複合体および反応中心は、それぞれクロロフィルaとクロロフィルbをどのように含んでいるのですか?(2005.1.30)

A:クロロフィルの吸収したエネルギーは反応中心における電荷分離に使われます。
集光性クロロフィル複合体はクロロフィルa,bの両方を、反応中心はクロロフィルaのみを含みます。

訂正:初出時、「反応中心はクロロフィルbのみを含みます」と誤記されていました。(2005.2.1)


Q:葉緑体外への光合成産物の輸送についてお聞きしたいのですが、転流炭水化物(スクロース)は、葉緑体内の光合成産物を元に細胞基質で生産されますよね?そこで、その生産が活発なとき、葉緑体内に不足しがちな物質とは何ですか?また、光合成産物とはデンプンだけではないのですか?(2005.1.28)

A:ショ糖の生産が活発な時、ではなくて、トリオースリン酸の生成が活発な時、ならば、答えはリン酸ですが。葉緑体からは、トリオースリン酸の形で炭水化物が細胞質に出ますが、その際にリン酸と対向輸送の形で運ばれます。従ってトリオースリン酸が細胞質にたまるような状態では、リン酸が足りなくなってしまいます。一方、トリオースリン酸からショ糖の合成の際には、リン酸が放出されますから、きちんとショ糖まで合成できれば、原理的にはリン酸は不足しないはずです。レポートの課題か何かなのかも知れませんが、「不足しがちな物質とは何ですか?」といったなぞなぞのような質問には答えづらいですね。質問が出された背景を理解して、初めてきちんとお答えできると思います。
 光合成産物は定義によると思います。ホウレンソウなどはデンプンはほとんど貯めず、ショ糖の形で貯蔵しますので、ショ糖が光合成産物だと言ってよいでしょう。前述のトリオースリン酸も光合成産物の一種と考えることもできます。


Q:豆が発芽する直前に膨張して、その後芽が出てきますが、この発芽直前の状態には何か名称があるのでしょうか。教えて下さい。(2005.1.28)

A:英語では imbibition でしょうか。日本語だと、吸水膨潤でしょうが、一般的な言葉として使っていて、「種子のその状態の名称」という感じはあまりしません。光合成の質問ではないような・・・


Q:私は、珪藻における葉緑体を用いた新しい同定形質を探すことを目的に研究を行っているのですが、種間において葉緑体の形態や数が変わるのは知られているのですが、種内においても言えるのでしょうか?例えば、水深が深くなるにつれて葉緑体の数が増える、もしくは形態が変化するなど。おそらく形態に関しては、既に同定形質として認められている種も多いので、あまり変化はしないのでは?と考えているのですが、数が増える減るなど量的な事に関しては、勉強不足でわかりません。もしよろしければ文献なども教えていただけたら助かります。(2005.1.18)

A:藻類の専門家でないので、一般論になりますがお許し下さい。細胞1つあたりの葉緑体数が1つの時は、葉緑体の分裂が、細胞分裂とメカニズムとして一体化しているので、環境によって葉緑体数が2つになったり、3つになったりすることはないはずです。しかし、1つの細胞にたくさんの葉緑体が存在する場合は、その数の制御のメカニズムは必ずしも明確になっていません。少なくとも高等植物では、環境によって葉緑体数は変動しますが、藻類の場合はよくわかりません。余りお役に立てずすみません。


Q:弊社は、絶対分光放射照度の測定器を販売しておりますが、ある顧客からμmol/m2/sの標記を追加してほしいという要望がありました。調べてみると光合成光量子束密度(PPF,PPFD)のことで、400 nm〜700 nmの積算値のようですが、分光放射照度(μW/cm2/nm)からの換算式がわかりません。光源の種類によって換算値が変わるようですので、波長ごとの換算式があると思われますので、お教えください。弊社の装置は全天放射計よりはるかに精度よく絶対値で測れる装置ですので、この計算式を追加できれば、光合成の業界に貢献できるものと思います。(2005.1.12)

A:放射照度の単位は W/m2 です。一方で、光量子密度の単位は mol/m2/s です。ここで、光子1つの持つエネルギーEは
E = hc/λ
で表すことができます。hはプランク定数(6.626x10-34 J s)、cは光速度(3x108 m/s)、λは光の波長(m)ですので、エネルギーの単位は、ここではジュール(J)になります。1ジュールは1 W sですから、光量子密度にこの光子1つの持つエネルギーとアボガドロ数 (6.02 x 1023 mol-1) をかけ算すると、結果の単位は W/m2 となって放射照度となります。つまり、
放射照度 (W/m2) =光量子密度 (mol/m2/s) ×アボガドロ数 (mol-1) ×光子1つの持つエネルギー (J)
            =光量子密度 (mol/m2/s) ×アボガドロ数 (mol-1) ×プランク定数 (J s) ×光速度 (m/s) ÷波長 (m)
ということになります。


Q:初めまして。クロロフィル含有率は、生育初期が一番高く、徐々に減少していくのはなぜでしょうか。また、結実後の植物のクロロフィル含有率が増加する、というのはあり得ますか?(2005.1.8)

A:「なぜ」というのは、メカニズムに関して「どのようにして」という質問でしょうか。それとも、理由に関して「どんな得があって」という質問でしょうか。前者の意味でしたら、多くの植物の葉では完全展開直後に老化の引き金が引かれるから、というのが答えでしょう。後者の意味でしたら、若い葉は、通常植物体の一番上(つまり一番光条件のよいところ)につくので、一番条件のよいところに資源を一番投資しておくのが得になるからだ、ということだと思います。
 結実後にクロロフィルが増えるというのは、メカニズムとしてはあり得なくはないと思いますが、植物にとっては何の足しにもならないでしょうから、もしそのようなことが起こる場合、なぜ進化の過程でそのような形質が生き残ったのかを説明するのは難しいでしょうね。


Q:卒論で、イネに50%の遮光処理を約1ヶ月行なった所、無処理に比べ、遮光は葉の厚さが薄くなり、収量も大きく減退しました。しかし、遮光の方が葉の色が濃かったのですが、なぜでしょうか。遮光をすると、窒素吸収が低下し、葉の色は薄くなると予想していたのですが。環境に適応して陰葉化したのか、あるいは光合成ができないので葉緑体の分解が促進されないのではないかと考えたのですが、文献を調べても明確な理由にいきあたらないので、質問させていただきました。
 また、基本的な質問で申し訳ないのですが、葉緑体は分解・分裂を繰り返すと思うのですが、どの位のサイクルで分解するのでしょうか。光合成ができないから、葉緑体が分裂して蓄積されて、葉色が濃くなるということは考えられるのでしょうか。よろしくお願いします。(2005.1.8)

A:前者の質問については、僕でしたら陰葉化の可能性を一番に考えると思います。葉の厚さが薄くなるというのも陰葉の特徴ですし。おそらくルビスコの含量などは低下するように思いますが、弱光に順化してアンテナである集光性クロロフィルタンパク質が増えていれば、葉の色が少し濃くなることは説明できるかと思います。
 葉緑体の分裂は、細胞の分裂の速度にも依存しますので、一概には言えません。また、高等植物では、必ずしも充分な情報が得られていません。単細胞藻類などでは、細胞分裂と同調して葉緑体も分裂する例がよく知られていますが、高等植物ではもう少し複雑で、細胞あたりの葉緑体数をある一定の範囲に維持するメカニズムが働いているようです。分解に関しては、主に調べられているのは老化時の分解で、この場合は葉令の進行や、光条件などによって分解の引き金が引かれるようです。


Q:先生のホームページを,いつも大変参考にさせていただいております。ありがとうございます。
 光合成色素が発する蛍光について教えてください。海藻のノリ(乾ノリ)を水に浸けておくと赤色の色素が抽出でき,紫外線を当てるとオレンジ色っぽく蛍光を発しますが,フィコエリトリンなどによるものなのでしょうか。蛍光の仕組みはクロロフィルの場合と同じでしょうか。蛍光で出る色の波長のずれがクロロフィルのときとは逆のようにも思えるのですが・・・。コンブでやると別の色の蛍光を発しますが,別の色素によるのでしょうか。ノリ・コンブともにアルコール抽出液のときとは違った蛍光色が見られるので大変興味があります。ぜひよろしくお願いします。(2005.1.5)

A:ノリは紅藻の仲間なので、フィコビリンを持っています。オレンジ色の蛍光というのは、フィコエリトリンなどのフィコビリン色素の蛍光でしょう。蛍光の仕組みはクロロフィルの場合と同じです。クロロフィルの場合は、青(400-450 nm)とオレンジから赤(650-680 nm)の光を主に吸収して赤から赤外(680-700 nm)の蛍光を出します。フィコビリンの場合は、緑から黄(600-660 nm)の光を主に吸収してオレンジから赤(650-680 nm)の蛍光を出します。どちらも吸収波長よりは蛍光波長の方が長いことになります。
 フィコビリンは水に溶けてアルコールには溶けません。逆にクロロフィルはアルコールに溶けて水に溶けません。ですから、水で抽出した時と、アルコールで抽出した時には、抽出されてくる色素が異なり、蛍光も違ってくることになります。コンブは褐藻だと思いますから、フィコビリンは持たずに、特殊なカロチノイドを持っていたと思います。ただ、褐藻の蛍光が主に何によるのかは余りよく知りません。