光合成の質問2004年
このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。
Q:光合成の実験で、なぜ湯につけてエタノールにつけるのですか?(2004.12.27)
A:光合成の実験といっても色々あるのですが・・・。でもお湯につけて、エタノールにつけるというとたぶんヨウ素デンプン反応の実験でしょうね。それなら過去の質問箱に回答が載っていますよ。
Q:趣味で園芸をしている者ですが,葉焼けについて質問させて下さい.(2004.12.27)
1.人の場合,紫外線で肌が焼けるそうですが,植物の葉焼けは紫外線をカットするフィルム等で救える物でしょうか? それとも光合成に必要な可視光その物を弱めないといけないのでしょうか? (専門用語では光阻害と言うのかと思い調べると「過剰な光合成エネルギーによる葉緑体の破壊」の様なニュアンスでした.でも,冬でも葉焼けますし,これは熱的な破壊とは別物なのでしょうか? それとも葉焼け≠光阻害ですか?)
2.暗めの場所に置いておいた植物は徐々に慣らさないと葉焼けすると言われていますが,暗めの状態では植物が葉緑素を多く持つようになるのでしょうか?(暗い所のは緑が冴えたと言う話は聞かないような...)
3.葉焼けを起こした植物
葉焼けを起こした場合,復帰させることは可能でしょうか? 紅葉と同じで葉緑素が無くなったから赤くなると言うことでしたら葉緑素を再生産して緑に戻りそうな気もしますが,そのような再生は為されないのでしょうか?(2の疑問と似ていますが)
A:「葉焼け」といっても、人によって葉が白くなったり緑が薄くなる、そして最終的には茶色く枯れることをイメージする場合と、赤い色素がたまって葉が赤くなることをイメージする場合があるようです。
1.葉焼けが紫外線によって促進されることはあるかも知れませんが、一般的には強すぎる可視光によって起こると考えた方が良いかと思います。「エネルギーによる破壊」といっても、熱くなって壊れるわけではなく、過剰な光エネルギーが普段は起こらないような化学反応を起こして葉緑体の機能が失われます。ですから、冬にも起こりますし、むしろ温度が低くて活発に光合成を行えない時は、光合成に使うエネルギーが少なく、従って温度が高い時よりエネルギーが余りやすくなります。光阻害には、見た目は変わらない阻害も含まれますから、光阻害の一種として葉焼けがあると考えてよいかと思います。
2.植物は葉焼けや光阻害を起こさないような防御機構を持っていて、強い光の下ではそのような機構を働かせています。しかし、弱い光の下ではそのような機構を休めていますので、急に強い光が当たると葉焼けが起こってしまいます。徐々に光を強くしておくと、いわば植物が準備をして、防御機構を働かせるようになるので、葉焼けが起こらなくなるのです。
3.一般的には、目で見える阻害が起こる前に葉のタンパク質や酵素などはかなり傷みます。いろいろな不都合が起こったあと、最後に葉緑素までなくなってしまう、というイメージです。ですから、葉焼けをして葉緑素がなくなってしまった葉では、他のいろいろなところも傷んでいるので、元に戻すのは極めて難しいかと思います。
Q:私は、今年から、農業をしていまして、ねぎを作っています。それで先輩達から「ねぎの葉の緑色を濃くするためにはチッソをたくさん入れたほうがよい。」とのことを聞きます。これは本当なのでしょうか?もし違えば、何の成分が葉の緑色を濃くすることにつながるのでしょうか?よろしくお願いします。(2004.12.23)
A:植物の体を作っているタンパク質、そして植物を緑色にしている葉緑素(クロロフィル)は、どちらも主に、炭素、酸素、水素、窒素の4つの元素から作られます。植物は空気中の二酸化炭素(炭素+酸素)と根から吸い上げる水(水素+酸素)を使うことができますから、最初の3つの元素は自然に得られることが多いのですが、窒素は、別に根から吸収しなくてはなりません。窒素が足りないと、タンパク質やクロロフィルが少なくなり、成長が遅くなったり、色が薄くなったりする場合があります。ただし、多すぎる場合にもひょろひょろ伸びてかえって収穫が悪くなる場合があるようです。また、クロロフィルは先ほどの4つの元素の他にマグネシウムを持っています。ですから、マグネシウムが不足した条件でも緑色が薄くなる場合があることが知られています。
Q:質問に対する回答ありがとうございました。
もう一つ質問があるのです。
ねぎ栽培において、夏場に多いのですが、曇りが続いたあと晴れたとき、ねぎが倒伏してしまい、品質の悪化につながってしまいます。これは光合成と関係あるのでしょうか?
できれば、これを改善したいのですがどうしたらよろしいでしょうか?
よろしくおねがいします。(2004.12.26)
A:弱い光の下で育った植物に、急に強い光が当たると、光がかえって光合成に害になる「光阻害」という現象がありますが、光合成がたとえ阻害されたとしても、「倒伏」することは、あまり考えられないので、ご質問の状態が光合成と直接関係するようにはあまり思えません。むしろ、湿度が低下したことによる水不足などが関連しそうな気がしますが、専門家ではないので、よくわかりません。
Q:ポインセチアの赤い部分は光合成するのでしょうか?(2004.12.20)
A:光合成に関する公開実験のページを見て頂くとわかると思うのですが、光合成をするかどうかは赤い色素があるかどうかで決まるのではなく、緑色の色素(葉緑素、クロロフィル)があるかどうかで決まります。ポインセチアの場合、下の方の葉は緑色ですが、その上に、緑色が基調で一部赤くなった葉があり、一番上の方の葉は全体がきれいな赤です。おそらく、緑色の基調の上に赤がのっている部分は充分光合成をしますが、一番上の方の赤い葉っぱは、クロロフィルを持たないので、ほとんど光合成をしないと思います。
Q:はじめまして、葉の光合成産物が果実中の糖と有機酸に変化する化学的メカニズムを教えてください。(2004.12.17)
A:葉の光合成産物は、葉緑体の中ではデンプンとして貯蔵されますが、デンプンはそもそも糖の重合体です。転流して他の部分で使う時には、糖の形に戻して輸送します。師管を転流する時には主にショ糖の形で輸送されると思いますが、それぞれの器官で必要に応じて別の形の糖に変換可能です。果実における有機酸の合成系路となると、僕の専門外です。
Q:極相状態の森林は二酸化炭素の吸収源にも酸素の供給源にもならないって聞いたんですが理由がわかりません。自分が思うに森林が極相状態まで達すると酸素供給量と二酸化炭素吸収量が等しくなるからではないかと思うのですが、詳しい説明、参考になる文献などありましたらお答えいただくと幸いです。(2004.12.15)
A:極相状態というのは、「それ以上変化しなくなった」ということですよね。もし、二酸化炭素が実質的に吸収されたら、それは光合成によって有機物になるわけですから、その分の有機物がどこかで増えるはずです。しかし、もし有機物が増えたら森は大きくなるはずですから、その森はまだ極相状態にはなっていないことになります。ですから、極相状態の森林は二酸化案そを実質的には吸収しないことになるという結論になるのはわかりますよね?
経済や会計の用語に、ストックとフローというのがありますが、森の有機物の全体量をストック、光合成による二酸化炭素の固定と、呼吸や分解による二酸化炭素の放出をフローと考えれば、わかりやすいかと思います。もしわからなかったら会計学の教科書でも読んでみてください。
Q:迅速な対応ありがとうございます。ここでまた1つ疑問に思ったのですが植物は生きている限り呼吸や光合成をするのでは?もしするのであれば極相状態なんてありえないのでは?私の勝手な想像では植物は何年たっても成長(呼吸と光合成)するのではないのですか?それとも極相状態に達すると呼吸も光合成もしなくなるのですか?無知で申し訳ありませんがお答えいただければさいわいです。(2004.12.15)
A:もちろん光合成も呼吸も生きている限りします。しかし、森全体では変化がなくても、1本の木に注目すれば、生きている間は光合成で有機物を合成して自分の体をつくり、枯れた後は、他の動物に食べられるなり腐るなりして最終的に二酸化炭素に戻るわけです。ちょうど植物が育つ分だけ、枯れた木が分解していけば、全体としては「極相状態」になれますよね。言っている意味がわかりますか?
Q:はじめて質問させていただきます。光化学系にはIとIIが存在しますが、この2つでは吸収波長が異なるのでしょうか?また、赤い光を植物へ照射することによって光合成の活性は増加するのでしょうか?(2004.12.13)
A:まず、高等植物ではどちらもクロロフィルがアンテナとして働いていますので、光化学系Iでも、系IIでもほぼ似たような光を吸収します。ただ、系Iの場合は、700 nmより長波長の光を吸収できるクロロフィルを少数結合しているので、そのような長波長の光をあてた場合は、系Iだけに吸収されます。また、紅藻やシアノバクテリア(ラン藻)では、光化学系IIにフィコビリゾームという緑色の光を吸収する色素からなるアンテナからエネルギーが渡されます。従って、緑色の光をあてると、主に系IIに吸収されることになります。
暗所で育てた植物などに光をあてれば、光合成系が発達して光合成の活性は増加しますが、特に赤い光をあてたことによって光合成の活性が増加する、という話は聞いたことがありません。
Q:チラコイドのルーメン側において、水の酸化分解によって発生した酸素は細胞外に排出されるまで、どこにも利用・消費されることはないのでしょうか。例えば、呼吸あるいは光呼吸に利用されるなど。(2004.12.9)
A:酸素の場合、大気中に既に21%の濃度で存在するわけです。それに対して大気中の二酸化炭素濃度は0.035%程度ですから、この二酸化炭素を全て光合成に使っても、発生した酸素によって大気中の酸素濃度は1%も変化しません。ですから、水の分解によってできる酸素というのは、元々空気中にある酸素に比べたら無視できる量で、特にそれが利用・消費される、ということはありません。
ただし、水草の場合などは、水に溶解できる酸素濃度は低く、一方で、二酸化炭素は分子として水に溶けるだけでなく、重炭酸イオンとしても溶けていますから、状況は異なります。その場合は、酸素濃度は光合成によって大きく増大しますが、それでも、元々ある程度の酸素は水に溶けているので、光合成によって生じた酸素が特定の反応に利用される、ということはないと考えてよいでしょう。
Q:光合成色素の一つであるクロロフィルAの分解機構について教えてください。また分解が最も促進される環境条件別の減少率等を教えてください。(気温・日照量等)(2004.12.8)
A:クロロフィルの分解は極めて多数の酵素によって徐々に分解されていきます。最初に、フィトールと呼ばれる脂質の鎖がクロロフィラーゼという酵素によって切り離されてクロロフィリドになります。クロロフィリドはさらにフェオホルビドなどを経て最終的には低分子の有機酸となって再利用されます。一般的な高等植物で分解がもっとも促進されるのは完全暗黒下です。光が遮断されると数日で急激にクロロフィルの分解が進みます。ただ、その減少率などは植物の種によってかなり違うようなので、一概には言えません。
Q:一般に市販されていて一番光合成する植物はなんですか?ケナフが10倍すると聞いたのですが寿命が1年しかないらしくすぐに枯れるそうですが、できれば寿命が長いのも項目に入れさせてください。お願いします。(2004.12.3)
A:植物の生育のエネルギーは、基本的に光合成によってまかなわれます。従って、光合成の速度が高ければ高いほど生育も速い、ということができます。つまり、どの程度光合成をするかはどの程度速く大きくなるかを見ればわかることになります。木と草を比べると、草の方がすぐに大きくなりますよね。ですから、一般的に草の方が光合成は高いのです。草の中でも、明るい荒れ地に最初に侵入して茂るような植物、シロザとかセイタカアワダチソウとかは生育も速く、光合成も盛んです。一方で、長い寿命を持って徐々に大きくなっていくような植物は、光合成の速度がどうしても低くなります。というわけで、寿命が長くて光合成が高い、という植物はなかなか難しいですね。
また、一般的にトウモロコシなどのC4植物という分類の植物は、イネなどが属するC3植物より光合成が高い、という言い方をします。これは、まあ、嘘ではないのですが、もし、C4植物の方が常に有利ならば、世の中からC3植物は絶滅しそうですが、そうはなりません。つまり、環境条件によっては、C3植物の方が光合成の効率が高いこともあるわけです。ケナフにしてもそうだと思いますが、どのような条件で育てるのか、ということが決まっていないと、そもそも比較することは難しいのです。
Q:初めて質問させていただきます。光は光合成のために無くてはならない資源ですが、例えば光が24時間当たっているような環境下では植物にはどのような影響があるのでしょうか。光合成に過剰な光というのはあるのでしょうか。(2004.12.3)
A:一般的には、24時間の連続光条件下でも植物は生育できます。むしろ、光合成のエネルギー源である光が多い分だけ、生育もよくなることの方が多いでしょう。ただし、日長などによって影響を受ける開花などにはもちろん影響があります。光合成への影響という意味からは、光の当たっている「長さ」ではなく、「強さ」が重要です。特に暗い環境に生育している植物に強い光が突然あたった場合は、光合成(と生育)が大きく阻害され、その現象は光阻害と呼ばれます。どの程度の光の強さから阻害が始まるかは、環境条件によって異なり、一般的に、低温、乾燥などのストレスを受けている時は、比較的弱い光によっても光阻害が引き起こされてしまいます。
Q:葉緑体のADPグルコースピロホスホリラーゼについての論文を読んでいるのですが、どうしてもわかりません。この論文ではエンドウマメの葉緑体のAGPaseの活性とカルビンサイクルの酵素の活性は関与していると書いています。3PGAが減少したときAGPaseの活性は上昇し、FBPaseの活性も3PGAが減少することで活性が上がったといっています。しかし、NADPリンゴ酸デヒドロゲナーゼの活性は3PGAが減少したとき増加したといっているのですが、エンドウマメの葉緑体のどこにNADPリンゴ酸デヒドロゲナーゼは関与していて、AGPaseとどうつながっているのでしょうか。(2004.11.30)
A:やさしい光合成の質問ではなくて、難しい光合成の質問という気が・・・。必ずしも専門ではありませんが。
NADPリンゴ酸デヒドロゲナーゼは葉緑体では、NADP+/NADPHの比をある一定の範囲に保つように働いているようですね。活性自体は、チオレドキシンによってレドックス調節を受ける酵素ですから、カルビンサイクル酵素と同様の調節を受けるのは、むしろ当然という気がします。ADPグルコースピロホスホリラーゼは、デンプン合成を担う酵素群の一つですが、3PGAによって活性化され、無機リン酸によって不活性化されます。つまり、カルビンサイクルがどんどんまわって(かつ細胞質でのショ糖合成では使い切れない時に)デンプンを合成するわけです。論文でどのようなデータから何を結論しているのか今ひとつわかりませんが、基質レベルでの活性調節とレドックス調節を同時に考えれば説明できそうにもいますがいかがでしょうか。
Q:はじめまして。私は小学校教員を目指し勉強中です。その勉強の中で、「植物の種子の発芽には水が必要で、光は不要」とありました。ということは、種子の発芽の際には光合成はおこなわれず、呼吸が行なわれているということなのでしょうか? また発芽に、温度・水・空気が必要なことはわかるのですが、どのようにそれらが使われているのかがわかりません。詳しく化学式等あるのなら教えていただけたら幸いです。(2004.11.26)
A:種子の発芽は、一般的には土の中(=光のないところ)で起こりますので、光合成は関与しません。従って、必要なエネルギーは貯蔵物質を分解して呼吸により得ることになります。ただし、一部の種子は光発芽性(発芽に弱い赤色光が必要な現象:光合成とは無関係)を持ちます。
あらゆる化学反応はある程度の温度がないと進みませんが、「温度が必要」というのはそのことでしょうかねえ。あまり、温度が必要、という言い方はしない気がするのですが。呼吸は酸素を吸収する反応ですから空気が必要な理由はわかりますよね。水については、いろいろな考え方があるかと思います。発芽の引き金として水分の吸収が必要である、という面もありますし、細胞のかなりの部分は水が占めますから、そもそも細胞の伸長には水が必要です。そして、種子の状態では、通常組織に比べて水分含量を落としていますから、様々な反応を進める上では水の存在が必要である、という面もあります。
Q:ホームページを拝見しました。私は現在、大学院で研究を行っている学生です。植物は専門ではないので、不勉強なことが多く、困っています・・・。
一般的に市販されている、除草剤と言われるものは、葉緑体(色素体)の増殖を阻害するもの、ととらえていいのでしょいうか。細胞増殖時にかかわる蛋白質であることはわかっているのですが、それが、中でも葉緑体増殖にかかわる蛋白質であるかを知りたいと思っています。培養細胞に対して除草剤を散布すれば、せめて始めの数時間程度は葉緑体特異的に増殖阻害がかかるのではないか。そうであるなら、その時間での蛋白質発現を観察すれば何かかかわりがわかるのではないか、と考えているのですが・・・。勿論、色素体増殖阻害は光合成阻害となることから、致死となることはわかるのですが、細胞増殖と色素体増殖の関係が少しでも崩れるようなことが行えたらいいと思い、このようなことを考えています。もし、何かありましたら教えていただきたいと思います。
よろしくお願いします。(2004.11.25)
A:除草剤の一般的な作用機作については、過去のQ&A「除草剤はどうやって効くのか」をご覧下さい。葉緑体の増殖を阻害するタイプの除草剤もあるかも知れませんが、僕自身は具体例を知りません。材料に何をお使いかによりますが、シロイヌナズナなどにおいては、極めて多くの葉緑体分裂以上変異株が取得されています。変異株を使って解析してみるのも一つの方法かと思います。
Q:突然失礼します。中学校の国語の教材で「植物が光合成とを行うには微量の金属が必要である」という一文があるのですが、なぜ必要なのか、ということを聞かれて困ってしまいました。漠然とでもいいので、必要なわけを書いていただけると、大変ありがたいと思います。よろしくお願い致します。(2004.11.24)
A:一つには、光合成で光を集める働きをするクロロフィル(葉緑素ですね)は1分子に1つマグネシウムを持っていることがあります。光合成はクロロフィルで光を集めますから、植物が持つクロロフィルの量はかなりの量になり、必要なマグネシウムの数も馬鹿になりません。
その他、他の生物の反応と同じで光合成でも、多くのタンパク質(酵素)が反応を進める役割をしていますが、そのタンパク質がうまく機能するために結合している金属が何種類かあります。鉄、マンガン、カルシウムが代表的なものです。これらの金属がないと、タンパク質がうまく機能しなくなり、結果として光合成がうまく働かなくなります。
Q:前回は質問に答えていただきありがとうございました。光化学系I複合体について調べていたらこのようなサイトを見つけました。
http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/hikari/kumazaki/spinach_Amarina.files/frame.htm#slide0034.htm
http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/hikari/kumazaki/research_main.htm
ここで光化学系Iの吸収スペクトルが示されているのですが、複数のスペクトルの重ねあわせによって現されているようなのです。この系Iを分解したスペクトルはいったい何の吸収スペクトルなのか教えてください。よろしくお願いします。(2004.11.15)
A:クロロフィルは、有機溶媒中ではある一定の吸収を持っていますが、タンパク質と結合(正確に言うと配位)するとこの吸収が長波長側にシフトします。しかも、タンパク質との結合の仕方によってどの程度波長がシフトするかが異なります。従って、光化学系Iのようにクロロフィルを多数結合したタンパク質複合体では、その構成クロロフィルはいくつかの(吸収極大の位置の)異なるクロロフィルフォームにわかれることになります。複合体全体ではそれらがいわば混ぜ合わさった吸収を示すわけですが、ご指摘の図は、その吸収スペクトルを解析して、個別のクロロフィルフォームを分離して表示したものです。
Q:①光合成反応とはどんな反応か?
②光合成反応の種類?
③光合成色素にはどのようなものがあるか?(2004.11.15)
A:1については、過去の質問にも答えましたように、光合成はそれだけで1冊の教科書がかけます。何が知りたいか具体的にご質問下さい。2,3については、以前に回答してありますので、過去の質問箱をご覧いただければと思います。
Q:スイカが甘くなるのは、ブドウ糖、ショ糖、果糖などが生成されるからとあります。また水のストレスにより、プロリンというアミノ酸ができるからとあります。スイカなどの果実が、熟して、甘くなる過程を、光合成と糖・アミノ酸・リコピンなどの生成とからめて、教えて頂けませんでしょうか?(2004.11.15)
A:光合成研究者の立場から答えると、「光合成で作った糖を果実に貯めると果実が甘くなる」ということになりますが・・・これだとほとんどご質問の中に答えが書いてありますよね。具体的には何を知りたいのでしょうか?
Q:返信ありがとうございます。私は、すいか農家の生産指導をしています。すいかのおいしさとの要因は何か?というところで、糖、アミノ酸などが登場し、その理論がわからず、メールしました。
1.西瓜が甘くなるのは、ショ糖、ブドウ糖、果糖などがあるようです。熟する時期で、それぞれの、含まれる成分量がことなるようです。光合成によってできあがった糖が、なぜ、ブドウ糖、ショ糖、果糖と形態をかえる必要があるのですか?
2.どの糖が増加したときに甘くなるのでしょうか?ショ糖でしょうか?
3.水によるストレスがあると、果実の中で、プロリンというアミノ酸ができあがり、甘くなるという話があります。窒素を多くやると苦味のアミノ酸ができ、おいしくなくなるという話も聞いたことがあります。光合成の過程で、アミノ酸が、窒素過剰、日照不足、水不足などの要因で、甘いアミノ酸、おいしくないアミノ酸ができることがあるのでしょうか?
4.今年の5月は日照が少なく、温度は高い、降水量が多い気象でした。2月、3月、4月、6月、7月は、日照が多く温度もあり、降水量も少ない傾向でした。6月初めに収穫した西瓜は、赤みが薄く、果実が軟らかい感じでした。西瓜の赤い色は、リコピンの色ですが、リコピンの生成が少なくなる要因はなんでしょうか?根が弱り(高温で)、そこに収穫前の曇天・高温で、転流がうまくいかないなどが要因かと推測しましたが、何となくピントこないので、リコピンがどのように生成され、なぜ赤色が薄かったのか?助言お願いします。
5.ちなみに、西瓜を小さいうちに(果実が白緑色のとき)、ちぎっておいておいても、果実はしばらくすると、少しピンクになりますが、これは、光合成の要因で生成されるのではないですよね。老化の段階でも生成されるのでしょうか?
そのほかにもいろいろ疑問点はありますが、とりあえず、以上をメールします。(2004.11.27)
A:あまり光合成とは関係なさそうですが・・・
1.光合成の過程で最初に安定した形の糖となるのはショ糖としてです。ショ糖というのは、ブドウ糖と果糖が結合したもので、安定なのでデンプンと共に糖の保存形態として使われます。一方で、代謝などによって使われる場合は、ブドウ糖や果糖などの単糖にしてから使われます。これは、ブドウ糖や果糖の方が反応性が高いためですが、一方で反応性が高いといろいろな物質と反応して危ないので、保存形態にはむきません。
2.同じ量あたりでは、果糖が一番甘みが強い、とされています。
3.アミノ酸の合成は、基本的には光合成とは無関係です。プロリンは適合溶質といって、細胞内の塩濃度が上がった時でもタンパク質などを安定化する効果があるため、一部の植物は水ストレス(塩ストレス・乾燥ストレス)がかかった時にプロリンを合成します。苦みのアミノ酸というのが何を指しているのかはよく知りません。
4.リコピンの合成は、果実の成熟過程の一環だと思います。その他の果実の状態がわからないので、何とも言えませんが、リコピンの少ない果実では、糖の濃度なども低いのではないでしょうか。もしそうだとすると、単に5月の天候不順で果実の成熟が遅れた、という可能性がもっとも高いように思います。
5.「光合成の要因で」というのの意味がわかりませんが、光合成というのは色素を合成する反応ではありません。また、スイカの果実自体は緑色であれば、ある程度の光合成が可能です。さらに、果実の成熟というのは、もともと一種の老化といってもよい過程です。
Q:はじめまして。 素人なので、このような質問をさせていただくのは大変恐縮なのですが、どうかよろしくお願いします。 現在、光合成に似た光触媒(酸化還元反応より有機物を水と二酸化炭素に分解する)という能力を持った物質が研究されていますが、植物と同じ光合成(水と二酸化炭素から糖と酸素を生成する)の能力は無生物である金属やセラミックスなどに付与する事は可能なのでしょうか。(2004.11.14)
A:過去の質問箱に類似の質問に対する回答がありますが、見て頂けたでしょうか?これをご覧になってから、わからない点を再度ご質問頂ければお答えするようにいたしますので。
Q:いきなり申し訳ありません!今、学校の授業で光合成について学んでいるのですが、同時に植物の原形質流動についても学んだんです。それで、なぜ原形質流動が起こるのかを知りたくてメール致しました!もしよろしかったら教えていただけないでしょうか??(2004.11.14)
A:同時に教わったとしても、原形質流動は光合成とは直接関係ないのですが・・・
専門ではありませんができる限り。原形質流動は1個の細胞が比較的大きい植物でよく見られます。細胞の大きさが大きくなると、体積は長さの3乗に比例して大きくなりますが、面積は長さの2乗、距離は1乗にしか比例しません。ですから、細胞のそれぞれの場所に必要な物質を届けるのは、細胞が大きくなればなるほど難しくなります。おそらく、細胞が大きくなると、細胞の中をいわば「かき混ぜる」必要が出てくるのではないでしょうか。
Q:初めまして。光合成とはあまり関係のないことかもしれませんので恐縮ですが、今までの質問の中に光のスペクトルについての質問・お答えがございましたので、お尋ねしたいと思い、メールを送りました次第です。
ただ今、緑化植物(木本)の光発芽実験に興味を持ち、光発芽種子と呼ばれるもの(ハンノキ類、ヤシャブシ類)を用いて、LEDなど、光の波長を変える機器を使用して、どの波長にて最も発芽がよいのであるか、などを目的に見てみたいと考えているのですが、一般的に、植物が反応する光の波長の範囲及び、フィトクロームの働きについて、太陽光、赤外光、近赤外光、蛍光灯(白色)などについて、教えていただければありがたく思います。また、この実験に関してのご意見などございましたら、お知らせくださると嬉しいです。(2004.11.13)
A:すみません、もう少し質問の範囲を絞って頂けないと答えるのが難しいかと思います。ご存じと思いますが、光発芽、光形態形成というのは大きな学問分野で、それだけで1冊の教科書がかけます。あと、スペクトルというのは言葉では表現しづらいので、いずれにせよ、実際に実験をする前には何らかの教科書を見て勉強をする必要が出てくると思います。
一般論としては、フィトクロームは赤色吸収型と近赤外吸収型の間で相互変換を行ない、発芽や形態形成を調節します。太陽光は近赤外光を含みますが、蛍光灯は近赤外光の割合がだいぶ低くなります。光発芽とは直接は関係しませんが、植物はフィトクローム以外に、クリプトクローム、フォトトロピンといった青色光受容体を光シグナル受容物質として持ち、青色光にも反応します。もちろんクロロフィルで吸収される光も一種のシグナルとして働きますので、この場合は、青色光、赤色光の両方の領域に反応します。
Q:カラムクロマトグラフィーでパセリの葉の光合成色素を抽出しました。色素はβ−カロテン、クロロフィルa、クロロフィルb、ルテインの順で抽出されました。この順序と各色素の構造にはどのような関係があるのでしょうか?自分なりに調べたのですがいまいちはっきりしません。お忙しいところ恐縮ですが、何か分かることがありましたら教えていただけませんでしょうか?どうぞよろしくお願いします。(2004.11.10)
A:カラムクロマトグラフィーは、原理的には薄層クロマトグラフィーと全く同じなのです。(その意味ではペーパークロマトグラフィーとも基本的には一緒です。)従って、薄層クロマトグラフィーの質問に対する回答を見て頂ければ理解できるかと思います。
Q:植物は日光の光がないと酸素を出せないので夜は酸素を吸っています。しかし、全部の植物が夜、酸素を吸っているとなると、酸素がなくなってしまうと思います。そこで、質問です!
夜、酸素を出している植物はいるのでしょうか?早めにお願いします。(私が調べたところでは、サボテンとサンスべリアとカトレアです。この他にもいるのでしょうか?)(2004.11.7)
A:植物の呼吸(酸素の吸収)速度は光合成(酸素の発生)の速度に比べてかなり低くなります(だから成長できるのですが)。光合成の速度は二酸化炭素の濃度によって変わりますが、空気中の二酸化炭素濃度は0.04%以下です。とすると、おおざっぱな見積ですが、呼吸による酸素濃度の変化もせいぜいその程度だということになります。ところが、空気中の酸素濃度は21%もありますから、外気中ではもちろん、普通の部屋でも、植物の呼吸によって酸素濃度が目に見えて変化することはなさそうですね。
サボテンの多くはCAM植物という仲間で、確かに、夜間に二酸化炭素を取り込みます。しかし、酸素の発生反応自体は昼間に起こっています。昼間は気孔が閉じているので、外気への酸素の漏れ出しはゆっくりのはずではありますが、特に「夜酸素を出す」という程にはならないと思います。CAM植物には、ベンケイソウの仲間、トウダイグサの仲間などがあります(CAMのCはCrassulaceanの略ですが、これは「ベンケイソウの」という意味です)。基本的には、酸素の発生は光によって起こる反応なので、夜間に酸素を出す植物、というのは存在しないと考えた方がよいでしょう。
Q:また質問なんですが光合成すると栄養分ができ成長するのはあたりまえなんですが、成長して大きくなったということを短期間の成長で確認する方法はありますか?(2004.11.6)
A:基本的には極めて難しいです。
植物が目に見えて「大きくなる」場合、ほとんどの場合、それは細胞内に水が運び込まれて細胞伸長が起こっています。ですから、大きさを比較することによって、光合成速度を見積もることはほとんど不可能です。とするとあとは、重さ(水をのぞいた乾重量)を測ることによって、光合成産物の蓄積を見るしかありません。30年ぐらい前までは、光合成の速度を測るのが難しかったので、それを見積もるために、葉半法という方法をとることがありました。これは、1つの葉からその一部を切り抜いて重さを量り、そのあと、しばらく光合成をさせて、最後にまた前と同じ大きさの部分を切り抜いて重さを量ると、光合成の速度に従って重さが増加している、というものです。
理論的にはよさそうですが、実際には、光合成産物は転流によって葉から、その他の組織に運ばれてしまいます。葉半法ではこれを避けるために、何らかの形で師部における光合成産物の輸送を止めるのですが、たとえ、本当に輸送・転流を止めることが可能だったとしても、今度は、その転流が止まったことの影響によって光合成速度が低下するので、正確な値を調べることができません。ですから、現在は全く使われなくなっています。
追記:その後東北大学の彦坂先生から「水耕栽培にすると個体の生重量を非破壊で測定できます。栄養と光をたっぷりやると、1週間で二倍以上に増えるので確認できますよ。今年オオバコでやったら4日で二倍になりました。」と教えて頂きました。(2004.11.24)
Q:はじめまして。私は都内に住む高校生です。私は将来人工光合成の技術開発をしていきたいのですがそれには光合成の機構をもっと詳しく解明する必要があると聞きました。光合成について今どこまでわかっているのでしょうか。そして何が分かっていないのでしょうか。私は高校の生物の知識しかないため、ホームページをみても分からないのですがやはり高校生が理解するのは無理な領域なのでしょうか。
それからもう一つ伺いたいのですが、人工光合成というのは、光化学反応の1と2の間でやり取りされる電子を利用するというものなのでしょうか。
素人の質問で申し訳ありませんがよろしくお願いします。(2004.11.6)
A:光合成の分野は研究の歴史が長いので、何がわかっているかということをメールで簡単に説明するというわけにはいきません。何か、よい日本語の教科書があればよいのですが、あまり、適切なものがありません。少し古くなりますが、東大出版会の出しているUPバイオロジーというシリーズの中の「光合成」が比較的、わかりやすいかと思いますが、それでも高校生には少し難しいかも知れません。でもその辺は頑張ってチャレンジしてみるしかないでしょう。
人工光合成というのは色々ありますが、今、主に研究されているのは、光を吸収して電子をやりとりするような物質を新たに開発して、光のエネルギーを電気的なエネルギーに変換するというものです。最近、掃除機などに「光触媒」というのが入っている場合がありますが、これは、もともと、酸化チタンの触媒に光を当てると水が分解して電流が流れる、という一種の人工光合成として開発されたものが、水の分解の際の有害物質の分解作用に注目していろいろな面で利用されるようになったものです。現在では、まだ、エネルギーを利用する、という面で、実用レベルに達した人工光合成はありません。
Q:はじめまして。先生のホームページ、興味深く読ませて頂きました。光合成について勉強中の者です。質問が二点あります。
1)植物は様々な色素を持っていますが、細胞中のどの場所で合成されるのでしょう?細胞質でしょうか?また、例えばクロロフィルはチラコイド膜へ、アントシアニンは液胞へ、というように、局在が決まっていますが、それは何により決まるのでしょうか?具体的には、個々の色素について、その特異的な局在シグナル、輸送役、レセプターのようなものが存在するのでしたら、詳しく教えて頂けないでしょうか?
2)赤色発光ダイオードを使ったレタス栽培というものが最近話題になっています。ある程度成長したレタスに24h中赤色光照射し(時間は記憶違いかもしれません)栽培すると、葉がやわらかく、甘く、栄養価の高いレタスができるという話です。ここで疑問に思ったのですが、青色光は植物の形態形成や、また、気孔の開閉に重要であるとこのホームページ上にて知りました。しかし、この栽培条件では、ひたすら赤色光を当て続けるというように見えます。植物自体の生育に問題はないのでしょうか?また、赤色光をずっと当て続けることで、なぜ栄養価の高いレタスができるのでしょう?
ご教授頂ければ幸いです。お忙しい折と存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。(2004.11.6)
A:1)クロロフィルの合成場所は葉緑体で、包膜ではないかといわれています。アントシアンは細胞質ではないかと思います。分解されたクロロフィルも葉緑体から外へ移行するのですが、どの場合も輸送の経路などはほとんどわかっていないようです。
2)別に赤色光をあてたからといって栄養価が高くなることはないはずです。ただし、発光ダイオードはエネルギー変換効率が蛍光灯や白熱灯に比べると高いので、同じ電気代で比べると強い光を当てることができます。その意味では、充分な光を当てることができてよく育つ、ということはあるかも知れません。青色光は、いくつかの植物の反応に必要ですが、育つ環境が一定で、全く変化せず、植物が環境に対して応答する必要がない場合は、それほど問題なく育つように思います。ただし、形態などは、太陽光で育てた場合と変わってくる可能性は充分にあります。
Q:共生説の観点から、葉緑体は独自のゲノムを有し、自律的に複製を行っていると聞きます。勉強不足で申し訳ないのですが、この葉緑体のもつゲノム上に、クロロフィルの合成酵素(代謝系の一部を担う酵素?)が存在するということなのでしょうか。それとも、クロロフィル合成酵素自体は植物ゲノム中に存在して、なんらかのシグナルにより葉緑体に移行するのでしょうか??もし前者だとしたら、同じ色素でもクロロフィルとアントシアニンの由来がまったく違うという進化学的にとても興味深い事実かと思うのですが・・・(構造も全然違いますよね)
2点目の赤色ダイオードによるレタス生育に関しては、私も調べていて行き当たったニュースでしたので、信憑性があるのかな?と疑問に思ったのですが・・・もしよろしければ以下のページをご覧下さい。http://www.cosmofarm.com/
ダイオードで光が強いというのは、純粋に光量の問題と考えてよろしいですか?ひょっとしたら、光阻害も起こりうる可能性はありますか?
回答にまたしても質問で返してしまって申し訳ありません。(2004.11.8)
A:
1.葉緑体はシアノバクテリアが共生したものといわれていますが、共生の際に、多くの遺伝子が葉緑体ゲノムから各ゲノムに移行しました。その中には、酵素のサブユニットの1つは、葉緑体ゲノムのままで、残る1つは核に移行している、などという場合もあります。また、同じ酵素の遺伝子が、ある生物の場合は、核に存在し、別の生物では葉緑体に存在する場合もあります。従って、核コードか葉緑体コードかで、生物的な意味を論じるのはかなり難しいかと思います。また、クロロフィルの合成場所は包膜、という回答をしましたが、これは最後の反応ということで、実際には、クロロフィルの合成はアミノ酸から始まって確か20ぐらいの反応からなり、その全てが同じ場所で起きるわけでもありません。クロロフィルとアントシアンは由来が違うと考えてよいでしょう。むしろクロロフィルの合成系路は赤血球などのヘムの合成系路と一部が共通です。植物でもヘムはいろいろな反応に使われています。
2.ホームページを見ても、「赤色ダイオードを使った」、「栄養価が高い」とは書いてありますが、「赤色ダイオードを使ったから栄養価が高い」とはどこにも書いていないように思いますが・・・
3.ダイオードで光が強いというのは、光量の問題ではありません。「エネルギー変換効率が高い」「同じ電気代で比べれば」と書いたはずです。光量自体は、ダイオードの数を変えればいくらでも変えられますから。
Q:とても読み応えのあるサイトを知り、嬉しく思います。多少は地球科学をかじった「つもり」ですが、なにぶん、ん何年も前でしたので、お手数掛けます。「暗い太陽のパラドックス」を考えると、過去の地球が今より暗ければ、
1.植物(ストロマトライト)ができたとき
2.植物が陸上へ進化したとき
太陽光の強度はどの程度で、また温度はどのくらいでそして光合成は現在と同じものだったかあるいは、特に1のとき、たとえ浅海ではあっても、紫外線との関係はどのようなものだったか、興味あるのですが。できれば、計算も教えていただければ、嬉しいのですが。(2004.11.2)
A:僕の専門は光合成で、地球化学ではないため、そらではご質問に答えることができません。以下はごく一般論です。
太陽の光強度は、初期には若干暗かったはずですが、実際に生物への影響を考える場合は、大気の状態の影響の方がむしろ大きいかと思いますので、正確なことは誰にもわからないと思います。また、地球の温度に関しても、聞く人によってかなり差がありますので、確定的なことは誰にも言えないと思います。最近では、スノーボール仮説といって、地球表面のかなりの部分が凍結するという気候変動を何度も繰り返している、という話もあり、これについても信じる人、信じない人がいろいろです。数億年前の温度さえよくわからないわけですからストロマトライトが出現した27億年前の温度などはますますわからないと思います。
一方で、可視光と紫外線の相対的な関係は、水や空気の物性から推測できるのではないかと思います。水や空気を光が通過する場合には、短波長の光ほど散乱されやすいので、必ず可視光より紫外線が先に弱くなります。これは、水や空気の「汚れ方」によって変化しますが、いずれにせよ、光が水の層を通過すれば、紫外線はほとんどなくなるけれども可視光は届く、という深さがどこかに出現することになります。その深さは、赤道域と極域でも違うでしょうし、今のところ、定性的な議論にとどまるかと思います。基本的には、定量的な議論ができるほどの情報が、少なくとも現時点では
ない、というのが結論かと思います。
Q:室内でLEDライトを使って植物を飼おうと思ってるんですが、植物が光合成に必要な光の波長はどれくらいですか?(2004.11.1)
A:光合成に必要な波長は、クロロフィルが吸収する波長と同じと考えればよいので、400-500 nmの青い光の領域または600-700 nmの赤い光の領域になります。短期間の生育でしたら、このどちらかさえあれば充分です。ただし、植物は、光合成以外にシグナルとして光を利用しています。シグナルとしての光が不十分だと、植物の形などが普通の状態とは変わってしまう可能性があります。シグナルとしての光センサーには、クリプトクローム、フォトトロピン、フィトクロームがありますが、前2つは青い領域、フィトクロームは赤い領域の光を吸収しますから、長期間栽培するのであれば両方あてた方がよいでしょう。
Q:このまえも質問したLEDライトのことなんですが、光合成はLEDライトでなく、普通の電球でも植物は光合成しますか?もしするのならどちらのほうが光合成をしますか?(2004.11.4)
A:もちろん電球でも大丈夫です。LEDに赤と青を使った場合、効率はLEDの方が高いので、もし同じ電気代で比べればLEDの方がよいと思います。電気代を惜しまずに充分な強さの光を当てれば、どちらでもあまり変わらないと思いますが、電球の方が太陽の光にスペクトルが近いので、植物体の形などは電球を使った方が野外で育てた植物に近くなると思います。
Q:光合成色素が吸収した光のエネルギーはいったんクロロフィルに渡されてから反応中心に送られますが、反応中心で光化学系の電子伝達に使われる光のエネルギーはどのくらいの波長域(または特定の波長)のものなのですか?色素が吸収する光で赤色光は光合成に、青色光は形態形成などに使われるとありましたが青色光はまったく光合成(電子伝達)に使われないのでしょうか?植物の光エネルギー利用には波長による境界のようなものがあるのかどうか教えてください。よろしくお願いします。(2004.10.26)
A:基本的にクロロフィルは青色光も赤色光も吸収しますから、どちらの光も光合成に使われます。シグナルとして使われる光の場合も、フォトトロピンとクリプトクロームは青色光を吸収しますし、ファイトクロームは赤色光を吸収しますので、その意味ではどちらも使われます。ただ、青色光をあててもファイトクロームの系は働かないので、そのような意味では波長による境界があると言えなくもありません。光合成に関しては、基本的にクロロフィルの吸収する400-500 nmの青い光と、600-700 nmの赤い光が使われます。
Q:ネオキサンチンとシホナキサンチン、カロチンという光合成色素があることを習ったのですが、これもクロロフィルを補助するための光合成色素なのでしょうか?そうならば何色の光を吸収するのかも教えてください。(2004.10.25)
A:基本的にはそのような理解でよいかと思います。色としては青緑の領域の色の光を吸収するので、見たところはオレンジ色から黄色に見えます。ただし、一部のカロチノイド(カロチンの仲間という意味です)は、あまりにも光が強すぎるときに、その光のエネルギーを安全に消去する役割を果たします。そのような役割を果たすカロチノイドとしては、βーカロチン、ゼアキサンチン、アンスラキサンチン、ビオラキサンチンがあります。
Q:プロダクトメーターを使って、タンバノリとアナアオサの光合成光曲線を出したのですが、きれいな光曲線が出せず二つの試料の光合成活性を比較できませんでした。一般的にはどのような違いが表れるのか教えて下さい。また、緑の光を当てた実験をしたのですが、これも正確な結果が出せませんでした。光の波長の違いと光合成活性の関係はどうなるのでしょうか。教えて下さい。(2004.10.25)
A:僕は種としてはタンバノリとアナアオサを両方知らないのですが、名前からして前者は紅藻、後者は緑藻だと思います。光光合成曲線は白色光をあてた場合なのでしょうね。実際にやってみたことがないのでよく確実ではありませんが、光光合成曲線自体はそんなに大きく違わないと思います。一方、緑色の光を当てた場合は、大きく差が出るはずです。これは、紅藻が持っていて、緑藻は持っていないフィコビリンという光合成色素が緑色の光を吸収することによります。どのような差が出るはずかは、ここから考えてみて下さいね。
Q: 水槽で植物プランクトンや水草を入れ,強い光の元で光合成を行わせると,水は強アルカリ(pH10程)になります。この説明を二酸化炭素の消費で説明なさっていますが,生徒から質問された際同じように説明しましても,重曹等は入っていませんから,二酸化炭素の消費のみでは殆どの生徒は納得してくれません。
二酸化炭素の消費だけではなく,光化学系Iによるプロトンの汲み入れが,プロトンATPaseによる放出よりも強光下では勝ることが原因の1つではないかといった発想をする生徒がおります。残念ながら,この発想を肯定も否定も出来る知識がありません。この原因を確認した実験や文献等があるのでしょうか。解る範囲内でご教授下さい。(2004.10.22)
A:「光化学系Iによるプロトンの汲み入れ」というのは、光化学系Iの周りのサイクリック電子伝達によるプロトン濃度勾配の形成を指しているのだと思います。確かにこの場合、プロトンは膜を介して内側に輸送されますが、この膜はあくまでチラコイド膜です。また、2つの光化学系を用いた通常のリニアーな電子伝達の場合とプロトン濃度勾配の形成に関しては特に違う点はありません。従って、光照射により、チラコイド膜の内腔は酸性化しますし、チラコイドの外側、つまり葉緑体のストロマはアルカリ化しますが、これは葉緑体の中での話で、細胞質、ましてや細胞外のpHの変化する原因にはなり得ません。また、ストロマがアルカリ化するといっても、そのpHは8台がせいぜいで、10になるようなことはありません。葉緑体内のpHの測定は、単純ではありませんが、蛍光指示薬などによって可能で、実測例もあると思います。
特に水槽に重曹を入れておかなくても、二酸化炭素が溶けていてれば平衡反応によって重炭酸イオンが生じます。ここで、二酸化炭素の吸収に伴って重炭酸イオン濃度は減少しますから、pHはよりアルカリ側にシフトすることになります。従ってpHのシフト自体は、重曹のあるなしによらずに起こります。ただし、重曹を入れておけば、平衡により二酸化炭素濃度が高まり、これにより光合成活性が盛んになるので、アルカリ化が見えやすくなる、ということはあります。
藻類を実験室で培養する際には、密閉容器で重曹を入れる場合と開放容器で空気(場合によって二酸化炭素濃度を上げた空気)をバブリング(ぼこぼこ通気する)場合があります。実は、培養液のpH上昇が見られるのは密閉容器の場合だけで、空気を通気している場合は、pHの変化はさほど大きくありません。通気している場合は、光合成で消費した分だけ、空気から二酸化炭素が供給されますので培養液中の重炭酸イオン濃度も変化せず結果としてpHも変わらないと考えられます。このことも、pHの変化が二酸化炭素の吸収によるものであることを示していると考えられます。
Q:質問させていただきます。p680・p700が、ある(様々な)光強度が与えれれたときに吸収する光子量が示された文献がありましたら教えてほしいのですが・・・(2004.10.19)
A:P680とP700というのは光化学系IIと光化学系Iの反応中心クロロフィルです。通常、反応中心だけに光を当てることは不可能なのですが・・・。一方で、光化学系全体に光を当てた時は、反応中心の周りにはアンテナクロロフィルがたくさんありますから、そこからエネルギーがわたって反応中心が励起されてしまい、その時には反応中心は光量子を吸収できなくなってしまいます。何か誤解があるように思います。
Q:はじめまして。イネの光合成(蒸発散)に関して種間差を除いて熱帯と温帯で特性の違いを見たいときに、どのようなアプローチの方法があるか教えてください。また、縦軸に光合成速度、横軸に気温や飽差のグラフを描いた時に、上に凸のプロットが見えますが、この時のピークの位置は、何に依存すると考えられるか教えてください。お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします。(2004.10.19)
A:最初の質問は、これは講義か何かを聞いた上での課題か何かでしょうか?質問だけだと意味があまり通りませんね。「熱帯と温帯で」というのは、生育温度の影響について言っているのでしょうか?「特性の違い」というのは、具体的に何を指すのでしょうか?いずれにせよ、アプローチというのは考え方であって、正解があるわけではありません。
また、2番目の質問の方も、実験をしたあとの考察事項か何かではないでしょうか。あるパラメーターを振った時に光合成速度がある点で極大を持つことはもちろんよく見られますが、その極大の位置を決める要因は場合によって異なります。特定の実験をした後に、その実験内容から理由を考察することは可能だと思いますが、前提抜きに考察しろ、と言われても難しいですね。
Q:初投稿です。過去の質問で、『植物は可視光の何%を吸収し、光合成に使われるのはそのうちの何%なのでしょうか?またその他に使われている内容と、%を教えてください。』といった質問があり、その回答では植物の光吸収後の効率についての回答だったのですが、植物は、吸収した全光エネルギーのうち何%を光合成に使用するのですか?また、何%が熱(蒸散など)に使われるのですか?私が調べたところでは、蒸散では70%くらいと文献に書かれていたのですが、実際にはどのくらいなのですか?あと、何%を放出(蛍光やりん光など)に使用しているのですか?植物で使用される全光エネルギーの内訳を教えてください。(2004.10.18)
A:申し訳ありませんが、回答内容をよくお読みになった上で、再度わからない点をご質問下さい。
「植物は、吸収した全光エネルギーのうち何%を光合成に使用するのですか?」という質問に対する回答は「その回答では植物の光吸収後の効率についての回答だったのですが」というその回答の中に書いてあると思うのですが?吸収したエネルギーの中で使われるエネルギーの割合が効率そのものです。
また、その効率は、光の強さなどによって大きく変動してしまう、ということも回答しています。条件を決めないと答えられないよ、ということなのですが、相変わらず条件がわからないままでは答えようがありません。
Q: 昨日(10/14)光化学系Iと同2が必要とする光の波長について質問したものです。早速ご回答いただきありがとうございました。差し支えなければ、さらに次の2点につき質問させていただいてよろしいでしょうか。
1.できるだけ少ない種類の光を遮断して光合成反応を効率的に抑えるためには、やはり赤と青の2つの波長をカットするのがベストでしょうか。 完璧を期そうと思えば可視光全域をカットする必要があるのでしょうか。
2.以下専門外かもしれませんがおわかりになりましたらご教示ください。太陽スペクトルの内地温の上昇に役立つ波長はどの部分でしょうか。太陽エネルギーが熱に変換されるには、光が反射でもなく、透過でもなく、吸収されて分子が振動される必要があると聞きましたが、それはどの部分の波長がどの程度影響するものでしょうか。(2004.10.15)
A:1.どれだけ「抑える」必要があるか、によると思います。赤(400-500 nm)と青(600-700 nm)の光をカットすれば、光合成効率をおおざっぱに見積もって1/5程度に抑えることはできると思いますが、可視光のうち主に通るのは緑の領域(500-600nm)だけになりますから、光も1/3程度に弱くなっていることになります。光を1/3にした時に、光合成が1/5になるのを「効率的」と判断するかどうかは、目的によるかと思います。
2.「どの波長の光がある物質に吸収されるのか」という質問は、実は「その物質が何色か」という質問と同じなのです。植物の葉が緑色に見えるのは、赤と青の光が吸収されて残った緑色の光が反射・散乱されて人の目にはいるためです。可視光が全て吸収されると、反射・散乱される光がほとんどないので、黒く見えます。水は可視光をほとんど通すので、透明に見えますが、赤外線は吸収するので、赤外線を当てると暖まります。人間が赤外線を出す「こたつ」に入ると暖まるのは人間の細胞の大部分は水だからです。物質が光の波長のどの部分を吸収するかは、その物質の色によって違うので一概に言うことはできません。太陽の光を浴びている時に、白いセーターよりも黒いセーターの方が暖かい、という経験はお持ちではないでしょうか。
Q:畑の土の色が仮に真黒だとした場合、気化熱による影響は考えないものとして、この畑の地温上昇には太陽光のどの部分の波長がどの程度影響するものでしょうか。また、地温の変化と光合成の関係についてご教示いただければ幸いです。(2004.10.25)
A:前回の答えを全く理解して頂いていないのでしょうか?「真っ黒」というのは、全ての可視光を吸収するから真っ黒なのです。つまり、「真っ黒だとした場合」というのは、「全ての波長の光を吸収した場合」ということですから、ご質問は、「全ての光を吸収した場合、どの部分の波長が影響するか」ということになります。全ての光を吸収するなら全部の波長が影響する、としかお答えしようがないのですが・・・
地温は、主に根の活動に影響を与えますが、全ての生物の活動は、適切な温度というものがあって、それより下でもそれより上でも活性が低下します。どこが適切な温度かは、その生物・植物の種類によって異なります。葉における光合成はには、根からの水分供給が不可欠ですから、根の活動が阻害されれば、光合成の活性も低下します。
Q:お忙しいところ恐縮です。前回の質問「畑の土の色が仮に真っ黒だとした場合、この畑の地温上昇には太陽光のどの部分の波長がどの程度影響するか」について、質問の仕方が適切でない旨のご指摘を受けましたので、表現を変えて再度教えを請いたいと思います。
いいかえると「太陽光線を赤外、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、紫外という波長帯毎に切り離して、それぞれを別々に地中に吸収させた時の各波長帯毎の地温を上昇させる能力を知りたいのです。例えば赤外域の波長が、俗に熱線といわれていることから各波長が一様の能力でないのではないかと考えてのことです。」
光合成の分野から少しずれる質問ですが、よろしくご教示のほどお願い申し上げます。(2004.11.12)
A:おそらく、熱線という言葉のイメージに引きずられてこのような質問に至ったのだと思いますが、吸収された時に地温を上昇させる能力は波長によって全く変わりません。どの色でも全く同じです。これは、高校で習った物理を思い返すと簡単にわかりま
す。
物理学の基礎にエネルギー保存則というのがあります。これは、系が閉鎖系の場合その系の中のエネルギーの総和は常に変化しない、というものです。植物のように一部の光エネルギーを光合成に使う場合は、その分のエネルギーが糖の合成などに使われますから、熱になるエネルギーは減ります(屋上緑化でビルが涼しくなるというのはこれも原因です)。しかし、一般に色の付いた物質が光エネルギーを吸収した場合、そのほとんどは最終的には熱になりますから、吸収されたエネルギーあたりで計算すれば、どの波長でも、熱になるエネルギーは一定になります。
赤外線が熱線と呼ばれるのは、水が赤外線を吸収するからです。生物の体の70%以上は水ですから、赤外線を吸収し、その分は熱になって暖かく感じます。それに対して、近似的に肌の色が白いと仮定すれば、他の可視光は反射されるので、あまり熱にならないわけです。何度も申し上げていますように、熱になるかどうかは、対象がその波長の光を吸収するかどうかにかかっており、吸収された光のエネルギーあたりで考えた場合は、今の例の場合でも、赤外線と可視光線の間で違いはありません。
Q:今大学の実験でやっている実験なのですが、プロダクトメーターを使って植物プランクトンの光合成と呼吸を計っています。光レベルを変えて実験をしているのですが、最初の値から一定の値がでるまでに少し時間がかかるのですが、この時間がかかる理由を教えてください。(2004.10.16)
A:細かい実験条件がわからないので答えづらいのですが、おそらく二酸化炭素源として重曹をいれて酸素の発生量を見ているのでしょうか。その場合、発生した酸素が水に溶け込んでしまうと気体としては量に変化がない、ということがあるでしょう。酸素が水に飽和すると、それ以降は気体として検出できるようになる、と考えることはできます。
Q:2004.8.15付の小学校6年の方のふくらし粉実験の回答で「クロロフィルは主に赤と青の光をよく吸収するため、このスペクトルで最も光合成反応が促進しやすい。」とありましたが、ある書物によると青は主に水の分解反応に使われ、赤はNADPH2を作るのに使われるとあります。この反応は光合成の一連の反応であるわけですから、全光線のうち青または赤いずれかカットすれば光合成は起こらないと考えてよろしいでしょうか。(2004.10.14)
A:その書物は全くのでたらめのようです。水の分解(光化学系II)とNADPH2の生成(光化学系I)では、吸収する光の波長はほとんど変わりません。強いて言うと、近赤外(700 nm -720 nm)の光に関しては光化学系Iだけが吸収できて、光化学系IIは吸収できません。「一連の反応であるわけですから」という所は、おっしゃるとおりで、光化学系Iのみが吸収する700-720 nmの光を当てた場合は、光合成の反応は非常に低下します。しかし、赤もしくは青の光は、光化学系Iでも系IIでも吸収できますので、光合成が起こらなくなることはありません。
Q:昨日(10/14)光化学系Iと同2が必要とする光の波長について質問したものです。早速ご回答いただきありがとうございました。差し支えなければ、さらに次の2点につき質問させていただいてよろしいでしょうか。
1.できるだけ少ない種類の光を遮断して光合成反応を効率的に抑えるためには、やはり赤と青の2つの波長をカットするのがベストでしょうか。 完璧を期そうと思えば可視光全域をカットする必要があるのでしょうか。
2.以下専門外かもしれませんがおわかりになりましたらご教示ください。
太陽スペクトルの内地温の上昇に役立つ波長はどの部分でしょうか。太陽エネルギーが熱に変換されるには、光が反射でもなく、透過でもなく、吸収されて分子が振動される必要があると聞きましたが、それはどの部分の波長がどの程度影響するものでしょうか。(2004.10.15)
A:1.どれだけ「抑える」必要があるか、によると思います。赤(400-500
nm)と青(600-700 nm)の光をカットすれば、光合成効率をおおざっぱに見積もって1/10程度に抑えることはできると思いますが、可視光のうち主に通るのは緑の領域(500-600
nm)だけになりますから、光も1/3程度に弱くなっていることになります。光を1/3にした時に、光合成が1/10になるのを「効率的」と判断するかどうかは、目的によるかと思います。
2. 「どの波長の光がある物質に吸収されるのか」という質問は、実は「その物質が何色か」という質問と同じなのです。植物の葉が緑色に見えるのは、赤と青の光が吸収されて残った緑色の光が反射・散乱されて人の目にはいるためです。可視光が全て吸収されると、反射・散乱される光がほとんどないので、黒く見えます。水は可視光をほとんど通すので、透明に見えますが、赤外線は吸収するので、赤外線を当てると暖まります。人間が赤外線を出す「こたつ」に入ると暖まるのは人間の細胞の大部分は水だからです。物質が光の波長のどの部分を吸収するかは、その物質の色によって違うので一概に言うことはできません。太陽の光を浴びている時に、白いセーターよりも黒いセーターの方が暖かい、という経験はお持ちではないでしょうか。
Q:突然の質問失礼します。現在、植物の光合成について調査しているのですが、植物は可視光の何%を吸収し、光合成に使われるのはそのうちの何%なのでしょうか?またその他に使われている内容と、%を教えてください。(2004.10.14)
A:まずは過去の同様の質問に対する答えをご覧下さい。そこで不足な点がありましたらあらためてご質問頂ければと思います。
Q:初投稿です。ルビスコについての質問です。ルビスコのサブユニット構造について詳しく教えてください。お願いします。(2004.10.10)
A:ルビスコは8つの大型サブユニットと、8つの小型サブユニットから構成されてます。「詳しく」となると、言葉で構造を説明するのは難しいので、実際に目で見てみるのが一番だと思います。タンパク質の立体構造のデータはタンパク質データバンクから自由にダウンロードできます。そのデータを目で見える形にするためのソフト(ブラウザのプラグイン)も、MDLという会社のサイトでChimeという名前のプラグインが無料で配布されています(ただし登録が必要)。これらを使えば構造の決まっている任意のタンパク質の立体構造をブラウザの中で回転させたりしながら眺めることができます。
Q:質問をさせていただきます。植物が光合成と呼吸を同時に行っているとき、呼吸による二酸化炭素排出量が光合成による二酸化炭素吸収量を上回るのは、どのような条件のときなのでしょうか?教えてください,よろしくお願いします。(2004.10.7)
A:「暗い時」というのがぱっと思いつく答えですが・・・。そんな簡単な答えでよいのでしょうか?
Q:質問をあいまいな形にしてしまっていました。日中,太陽が降り注いでいる中で,二酸化炭素排出量が吸収量を上回ることはあるのでしょうか。たとえば,風が強く吹くことや,光が強すぎること,周囲が高温であることなどの条件によって,呼吸が促進され,その結果として二酸化炭素排出量が増加し,光合成による分解量を上回るといったことはあるのでしょうか。
A:ようやく質問の意図がわかりました。ちょっと変だとは思ったんですが・・・
一般に細胞が大きなダメージを受けると、ダメージの種類にもよりますが、呼吸量はむしろ増加します。一方、光合成反応は、細胞のダメージによってたいてい阻害されますので、条件によっては呼吸量が光合成量を上回ることはあり得ます。ただし、光合成量はもともと呼吸量に比べて圧倒的に多いので、そのような条件は自然界ではかなり珍しいのではないかと思います。極めて強い光を当てて光合成を阻害するなど、人工的に環境条件を変えてやれば、呼吸量が光合成を上回るような条件を作ることは、できると思います。
Q:はじめまして。光合成による水中pHの増大に関して質問があります。過去の質問(2004.5.28)において「アルカリ化のメカニズムとしては二酸化炭素の吸収でよい」とお答えになっていましたが、私にはなぜ炭酸物質の消費がpHの増大につながるのか分かりませんでした。その原理に関してもう少し詳しくご説明いただけませんでしょうか。できれば反応式なども交えてご説明いただければ幸いです。よろしくお願いします。(2004.10.1)
A:二酸化炭素は水中では、CO2 + H2O <-> H2CO3 <-> H+ + HCO3- という平衡になっています。ここで、一番左辺の二酸化炭素濃度が減ると、反応は左へとシフトしますので、一番右辺にある H+ (プロトン)の濃度は減少します。プロトン濃度の対数(の正負を逆転したもの)がpHですから、プロトン濃度が減少すれば、pHは増大することになります。
Q:光合成の問題を解いていて除草剤が葉に及ぼす影響がわからなかったのですが、除草剤は葉に対してどのような働きをするんですか?(2004.9.29)
A:実は、一口に除草剤といってもいろいろなものがあります。「光合成の問題を解いていて」とありますが、確かに光合成を阻害するタイプの除草剤もありますし、光合成の電子伝達から還元力を奪って酸素に渡してしまうタイプの除草剤もあります。さらには、光合成とは無関係の植物ホルモンタイプの除草剤もあります。光合成を直接阻害するタイプの阻害剤として有名なのは、DCMUという薬剤ですが、これは、2つある光化学系の1つ、光化学系IIから電子を受け取るプラストキノンと構造が似ていて、プラストキノンの代わりに光化学系IIに結合することにより光合成の電子伝達反応を阻害します。
Q:C3,C4,CAM植物の二酸化炭素固定の違いについて、本やインターネットで調べているうちに疑問が生じました。CAM植物が夜は気孔を開いて二酸化炭素の濃縮(有機酸として蓄積するので厳密には二酸化炭素の濃縮とは言えないと思いますが)をし、昼は気孔を閉じて二酸化炭素の固定をするというように時間的な分業をしていることは理解できたのですが、このとき発生するであろう酸素はいったいどうなるのでしょうか。昼間は光エネルギーによる水の分解が起こって酸素が発生するはずですが、気孔を閉じた状態では酸素が細胞内に蓄積されるように思います。酸素が蓄積されると光合成効率が悪くなるような気がするのですが、CAM植物は酸素の問題をどう解決しているのですか?(2004.9.28)
A:実は、酸素と二酸化炭素には大きな違いがあります。それは、元々の空気中の濃度です。酸素は空気の21%を占めますが、二酸化炭素はたかだか0.04%です。つまり、光合成の結果、全ての二酸化炭素が酸素に変換されたとしても、21%が21.04%になるだけで、これはほとんど誤差範囲です。二酸化炭素は元々濃度が低いので、光合成によって大きく濃度が変化しますし、逆に二酸化炭素の濃度変化によって光合成速度は大きく影響を受けます。一方、酸素は空気中に元々たくさんあるので、その濃度変化というのは、あまり光合成には影響を与えないのです。もちろん実験的に酸素濃度を1/10に低下させたりすれば、大きな影響がありますが・・・
Q:お忙しい中失礼します。吸収スペクトルの実験をしているのですが、なかなか上手くいきません。光を抽出液に通す以前に、はっきり七色に分光してくれないのです。どうやら光源に問題があるようなのですが・・・。できれば、発表会で分光の様子を展示したいと思っています。中高生でも簡単に入手・使用できる、良い光源をご存じでしたら教えていただければ幸いです。(2004.9.26)
A:どのように分光しているのかがよくわからないので(プリズムをお使いでしょうか?)、もしかしたら見当違いな答えかも知れませんが、一般には、光学実験の光源として優れていて、かつ手に入りやすいのは、スライドプロジェクターでしょう。今は、OHPや液晶プロジェクターの方が一般的かも知れませんが、まだ、学校などには1つぐらいスライドプロジェクターがあるのではないでしょうか。スライドプロジェクターは比較的指向性の高い光を出しますので、手製のスリット(光の範囲を絞ります)を通してからプリズムなどに導けば何とかなるかと思います。ただし、本物の分光器に比べると条件はやはり悪いので、明るい部屋で発表会をやるとすると、どれだけきれいに見えるかは難しいかも知れません。
Q:中学校の教員をしています。授業で植物も呼吸をしていることを実験で確かめました。暗黒下にビニル袋につめた植物を置き、一日後、石灰水に袋内の空気を通すと白濁することから二酸化炭素を出している=呼吸をしている、という実験です。しかし、夜(暗黒下)だけ呼吸をしていると考えてしまう生徒がいました。
何とか昼間に、植物が呼吸していることを実験で確かめられないでしょうか?私が考えた方法ではうまくいきませんでした。
1.葉緑体が無く呼吸量の多い根を石灰水につけ白濁するか?
2.酸素だけの系を作り呼吸しかできない状況にする。出てきた二酸化炭素をBTB溶液や石灰水で検出する。
3.葉緑体のない植物(全寄生植物など)を使う。
3は植物が手に入らずできませんでしたが1.2は実験失敗に終わりました。呼吸で作られた二酸化炭素は気孔から排出されず光合成に使われてしまうからでしょうか?1.2ともに光を当てて実験しました。
昼間に呼吸のみを調べられるよい方法がありましたら教えてください。(2004.9.22)
A:結論から言うと、昼間の*葉*の呼吸を調べるには、酸素の同位体を使って、それを質量分析計で測定する、といった極めて大がかりな実験をする必要があり、中学校はもちろん、普通の大学でも難しいと思います。呼吸で作られた二酸化炭素は、光が当たっている限り光合成に使われてしまいます。これは、そもそも植物の呼吸速度が光合成速度に比べると小さいことにもよります(もちろん、そうでなくては植物は生長できませんから)。一方で、根の呼吸を確かめることは原理的には可能なはずです。ただし、石灰水はかなり強いアルカリ性ですから、根を直接付けた場合には、根が傷んでしまうと思います。また、ただの水につけた場合も、根は傷まないかも知れませんが、ガス交換は周りに空気がある時に比べてかなり遅くなります。これは、空気の20%は酸素なのに対して、水に溶けている酸素濃度は250μM程度でしかないことによります。根が乾燥しないように工夫して(濡れたティッシュペーパーにでもくるむのでしょうか)ビニール袋に入れて、葉の場合と同様に袋の中の空気を石灰水に通すと、差を見ることができるかも知れません。ただ、水分があると二酸化炭素はそこにとけ込みますから、根がある時とない時で差を見るという対照実験をきちんとしないと、結論を出すのは難しいでしょうね(これは葉の場合でも同じですが)。そう高くない植物の呼吸速度をきちんと検出するのは案外大変かと思います。
Q:光合成色素を分離する実験で、藍藻のペーストに炭酸マグネシウムを入れると、クロロフィルが安定する(分解しにくくなる)とありました。クロロフィルの分解について調べたのですが、難しくてよく分かりません。どうして安定するのですか。専門ではないかもしれませんが、宜しくお願いします。(2004.9.22)
A:ぼく自身答えは知りません。ただ、考えてみることはできるでしょう。クロロフィルは一種の脂質であり、周りに水がある状態より、有機溶媒の中などでの方が安定します。「ペーストに」となっているところを見ると、炭酸マグネシウムに水分を吸収させてクロロフィルを安定化している可能性はあります。次に、クロロフィルはポルフィリンと呼ばれる分子の中央にマグネシウムが配位した形になっています。このマグネシウムが取れるとフェオフィチンという別の色素になってしまいます。多量のマグネシウムがあると、フェオフィチンになりにくい、という可能性もありますね。炭酸マグネシウムは、アルカリ領域でpHを安定化する(緩衝作用)もありますが、pH緩衝剤としてならもっと良い試薬がいくらでもありますから、そのためではないでしょう。
Q:学校のレポートで葉緑体の単離に緩衝液を用いるのはなぜか。また、緩衝液にD-ソルビトールを加えるのはなぜか。という質問に答えなければならないのですが、文献、ホームページ等を調べても載っていないためとても困っております。お忙しいとは思いますが至急回答をお願い致します。(2004.9.19)
A:小中学校のレポートなら本やホームページを調べて載っていることを書くだけでも許されると思うのですが、本来は、レポートというのは自分で頭を使って考えたことを書くものです。考えるにあたって、必要な知識を探すことは必要ですが、答えそのものを探しているようでは「載っていな」くても当然かと思います。まず、自分の頭で考えてみましょう。
緩衝液とはどういうものでしょうか?緩衝液を使わなかった時、溶液のpHはどのようになることが予想されるでしょうか。それは、葉緑体に何か変化をもたらすでしょうか?例えばこのようなことを考えてみた場合、最初の質問「緩衝液とはどういうものか」は調べないとわかりませんが、これは、いくらでも本などを見れば載っています。残りの質問は、知らなくても、考えれば答えが見つかる質問です。レポートを書く時に重要なのは、その考える過程であって、ある意味で、その結果が正解かどうかはあまり重要ではありません。(少なくとも、ぼくがレポートを採点する時は正解かどうかは全く重視していません)
D-ソルビトールについても同様です。これはソルビトールでなくても実はショ糖でも構いません。イオンの影響さえ無視できれば、糖でなく適当な濃度の塩でも構いません。水に物質が溶けていると浸透圧が変わりますが、ソルビトールが浸透圧を変えるために使われることは本などを調べればわかります。そこからは、答えをホームページで探すのではなく、自分の頭で考える段階です。
頑張ってみて下さい。
Q:小学校で教員をしているものですが、いろいろとネットを検索していると、先生のHPにたどり着きました。お忙しいところ申し訳ありませんが、質問させて下さい。
先日、小学校6年の理科の授業で、アルミ箔で日光を遮っておいた葉(前日の16時〜次の日の11時)と何もしない葉とを、ろ紙にたたき出しをして、ヨウ素反応を調べる実験をしました。それぞれの班で異なる葉を調べたのですが、6種類中2種類が、日光を遮った葉でも遮らなかった葉と全く同じ強さのヨウ素反応を見せました。その植物の名前を具体的に調べていなくて申し訳ありませんが、でんぷんが葉に残存する時間は植物によって異なるものなのでしょうか。現在、日光を遮る時間を班ごとにもっと長くして再実験をしています。よろしくお願いします。(2004.9.12)
A:ちょうど下の質問にありますように、全ての植物がデンプンを貯めるわけではありません。ですから、お使いになった植物が、たまたまデンプンを貯めないタイプの植物であれば、日光を当てても遮っても、ヨウ素反応の強さが変わらないということは充分考えられます。
デンプンを貯めるタイプの植物だった場合、デンプンは昼間に蓄積され、夜の間にそのかなりの部分が分解されます。ですから、16時から次の日の11時までで比べた場合、16時から日没までに貯めたデンプンはいずれにせよほとんどが夜の間に分解されてしまい、実際に差が出るのは、次の日の朝から11時までの間に貯めたデンプン、ということになります。時間を伸ばす場合、11時までとしていたものを例えば夕方まで延ばせば差が大きくなるでしょうけれども、実験終了の11時を固定したままで前に時間を伸ばした場合は、ほとんど効果は期待できないでしょう。
種間差については、ホウレンソウとクワズイモで調べた報告では、デンプンはいずれも夜の間数時間をかけて分解されており、あまり差がないようでした。
Q:先日は、でんぷんの移動について質問に答えていただきありがとうございました。図書館などでさらに調べたのですが、新しいはてな?が生まれましたので、また質問させていただきます。
①光合成によって、ブドウ糖が生産され、すぐにでんぷんに変わり、夜のうちに、ショ糖に分解されるそうですね。
どうして、ブドウ糖→でんぷん→ショ糖とする必要があるのでしょうか?ブドウ糖→ショ糖となってすぐに運ばれた方が効率が良さそうに思うのですが?
②ネギやタマネギなどは、ブドウ糖がでんぷんに変わらないと聞きました。それはなぜなのですか?
小学校の教員をしておりますが、専門的知識はなく、質問の内容も程度が低いと思われるかもしれませんが、お許しくださいませ。お忙しいとは存じますが、よろしくお願いいたします。(2004.9.12)
A:最初のご質問ですが、基本的にはショ糖にして転流するのだと思います。ただ、転流の速度に対して光合成の稼ぎが多い時は、余った部分をデンプンにする、ということです。上に書いたSPSというショ糖を合成する酵素の活性が高い時には転流の速度が高く、活性が低いと転流が遅くなってデンプンの合成がさかんになる、という結果が報告されています。いわばデンプンは「余り」なのでしょう。
2番目のご質問についてですが、ネギ・タマネギでデンプンを貯めないというのは知りませんでしたが、ぼくが使っている植物では、ホウレンソウがデンプンを貯めません。メカニズムとしては、やはりSPSの活性の違いで説明できるのかも知れません。ただ、デンプンとして貯めた方が得か、ショ糖として転流した方が得か、というとよくわかりません。おそらく、植物の戦略に違いであり、どちらがよい、ということはないのだと思います。
Q:藻類の濃度を測りたいですが、どの方法がありますか?藻類の種が藍藻純株Chroococcus sp.なら、吸光度方法でどのぐらいのnmの吸光度を測ってよろしいです?(2004.9.8)
A:Chroococcusのような単細胞性のシアノバクテリアの場合は、通常の分光測定で細胞濃度を測定できると思います。「通常」というのは、クロロフィルなどの吸収がない730 nmまたは750 nmの波長で、試料セルが光電子増倍管から離れているタイプの分光器で測定する、ということです。分光器によっては、試料セルが光電子増倍管にくっつくようなタイプのものもありますが、そうすると散乱光まで光電子増倍管にはいるので細胞濃度測定には好ましくありません。ただし、細胞の吸収を測定したい場合は、逆にそのようなタイプの分光器を使う必要があります。
Q:初めまして。兵庫県で小学校の教員をしている者です。「葉で光合成によって作られたでんぷんが、どのようにして実に運ばれるのか」を追究しております。でんぷんが一度、水に溶けやすいブドウ糖に変えられて、茎を通り、実に運ばれ、またでんぷんにもどるというところまでは分かったのですが、
・でんぷん→ブドウ糖→でんぷんがどのように行われているのか?どのような酵素が関わっているのか?
・でんぷん→ブドウ糖→でんぷんに変化するのにどのくらいの時間がかかるのか?
・その作業が気温の低くなる夜に行われるのはなぜか?
といったようなことがまだ分かりません。お忙しいかとは存じますが、ご教授いただけましたら大変ありがたいです。(2004.9.4)
A:まず、ご質問の中で、ブドウ糖とありますが、実際に茎を通って運ばれるのはショ糖の形で運ばれることが多いかと思います。ショ糖は比較的安定なのに対して、ブドウ糖は反応性が高く、いろいろな物質と反応をしますので代謝経路の中では重要ですが、蓄えたり運んだりするのには向きません。
葉緑体から細胞質へ炭素が運び出される時は、カルビン回路の中間代謝産物であるトリオースリン酸(炭素3つの化合物がリン酸化されたもの)の形を取ります。光合成をしている時は、カルビン回路のトリオースリン酸が直接運び出されるでしょうし、夜にはデンプンが分解され、グルコースリン酸、フルクトースリン酸などのリン酸化された単糖を経てトリオースリン酸になって運び出されます。トリオースリン酸は細胞質でFBPaseやSPS
(Sucrose phosphate synthase) といった酵素の働きでリン酸化された単糖からショ糖になり、茎を運ばれます。目的の組織についたショ糖は、ショ糖合成酵素(名前はショ糖合成酵素ですが通常ショ糖の分解に働きます)の働きで単糖になり、さらにデンプンになります。
反応に関する時間ですが、昼間に葉に貯められたデンプンは夜の間に徐々に分解されて量が減少していきます。この減少は、明け方まで続くので、その意味では数時間かかる、ということになります。もちろん個々の酵素反応は、基質の濃度によって決まるそれぞれ特有の反応速度を持つことになります。
上に書いたような、トリオースリン酸が直接カルビン回路から細胞質に取り出される反応は昼間でも起こっているはずです。ですから、転流自体は昼も夜も行われていると考えて良いかと思います。いわば、それで処理しきれなかった分がデンプンとして葉緑体に蓄えられるので、見かけ上、昼間にデンプンを貯めて、夜間に分解する形になるわけです。
なお、デンプンの分解産物を葉緑体から運び出すメカニズムについては、この1−2年トリオースリン酸以外の経路もあることがわかってきました。
Q:植物の水ポテンシャルについて、概論お願いします。(2004.8.31)
A:このページは講義のページではありません。前にも書きましたが、「光合成について教えてください」というたぐいのご質問に対してはお答えしかねます。特に大学生になったら、自分でまず教科書などを調べるという習慣をつけてください。その上で、わからない点を具体的にご質問頂ければお答えできるかと思います。
Q:はじめまして、光合成のあとに緑茶の葉に残った葉緑素の除去について教えて欲しいのです。
小生は食品用の油を用い、緑茶粉末をオイルで煮出し濾過後、ドレッシングやマヨネーズ等への加工原料を作っているものです。緑茶の緑=葉緑素は、きれいな色なのでそのまま維持できれば良いのですが時間が経つにつれ、茶褐色に変色してしまいます。天然の色素だからやむを得ないのですが、それなら最初から葉緑素だけを除いた緑茶粉末が作れないものか悩んでいました。このページを見せてもらい、何とかヒントが判れば・・・・と思いメールさせて戴きました。小生、文科系大学出身の素人なのですが何とか教えて戴けないでしょうか。(2004.8.31)
A:クロロフィルの食品への応用については色々研究が進んでいると思います。クロロフィルはマグネシウムを含んだ化合物ですが、これを別の金属に置き換えて変色を防ぐ、などということもされていたと思います。僕自身は、そのような研究はしておりませんが、農学部の食品化学の先生などに相談されるのが一番だと思います。たとえ、方法を思いついても、会社としては既存の特許に抵触して使えない、ということもありそうだと思いますので。
Q:今日、光合成実験をしました。その結果二酸化炭素を多く含む水だと多く気体を出すことが分かりました。でも、何故二酸化炭素を多く含ますと多く気体が出るのですか。教えてください。(2004.8.29)
A:光合成は二酸化炭素を有機物にする反応ですが、いわばその副産物として酸素を発生します。原料の二酸化炭素を増やすと、副産物の酸素も多くなって、気体として出てくる、と考えるとわかりやすいかと思います。
Q:光合成をした量って水が減っているかで分かりますか。(2004.8.28)
A:確かに光合成の反応では水が分解されるのですが、実はそれをはるかに上回る水の量が気孔から蒸発することによって失われています。失われる量は、この蒸散によるものがほとんどなので、水が減った量をはかってどれだけ光合成が行なわれたかを調べることはできません。
Q:夏のレポートが「転流と蓄積について書け」なのですが、探してもなかなか蓄積の項がでてきません。蓄積がどうなれば転流がどうなるのか、詳しくお願します。(2004.8.28)
A:次から次に転流関係の質問が来ますが、皆同じ大学の同じ先生のレポートかな?光合成産物は種子や肥大した根や茎に蓄積されたり、新しい葉の形成に使われたりします。専門用語で光合成産物を作る部位をソース、蓄積あるいは使用する部位をシンクといいますが、蓄積が阻害されるとシンク・リミットといってソースにおける光合成が阻害されます。つまり、光合成産物をそれ以上転流によってシンクに運べなくなると、光合成活性自体が阻害されるわけです。この程度のことは光合成と物質生産に関わる基本的な教科書にいくらでも出ていると思いますよ。大学の図書館などで調べてみて下さい。
Q:今レポート課題で「光合成産物の転流と蓄積について」をテーマに調べています。使っている資料に「転流の過程では細胞膜上のショ糖トランスポーターや糖アルコールトランスポーターが重要な役割を示している」と書いてあったのですが、ショ糖トランスポーターや糖アルコールトランスポーターがどのような仕組みで働いているのかがわかりません。その資料にはトランスポーター遺伝子についで述べてあるばかりで、それがそもそもどんなもので、どんな働きをしているのかがまったくわからないのです。わかりにくい質問であるとは思いますができるかぎり詳しく教えていただけませんか?(2004.8.28)
A:これに関しても、以前似た質問が来ていますので、まずその時の回答をご覧頂いて、わからない点を再度質問して頂けますでしょうか。ちなみに、回答中にあるアンローディングの際にもショ糖トンラスポーターや単糖トランスポーターの働きで糖を輸送します。
Q:転流と蓄積の関係について教えて下さい!(2004.8.27)
A:これはレポートの課題か何かですか?全く同じ漠然とした質問が1月ほど前に寄せられています。その時の回答をご覧下さい。
Q:オオカナダモが身近になくて困っています。先生に聞こうと思ったのですが聞けなく実験ができずじまいです。オオカナダモ以外で光合成の結果が見やすい植物って何かありますか?(2004.8.27)
A:というよりも、オオカナダモは金魚やさんなどで手に入りやすい、ということが大きな利点なのですが。いろいろな場所で野生化している(元々は外来植物)そうですが、熱帯魚ショップなどに行くのが一番はやいと思います。酸素の気泡の発生を見る実験でしたら、水生植物がやはり良いでしょうね。他のクロモなどでも大丈夫だとは思いますが、むしろオオカナダモの方が手に入りやすいのではないかと思います。
Q:紅藻類にはフィコエリトリン(紅)やフィコビリン(青)といった光合成色素が含まれますが、それを薄層クロマトグラフィーで見られたらすごくきれいだなと思い、実験をしてみたのですが、クロロフィルaやcくらいしか見られませんでした。どうしてフィコビリンは見えなかったのでしょう?(2004.8.27)
A:色素のうち、クロロフィルは、クロロフィル分子がタンパク質に配位結合をしていて、有機溶媒によってタンパク質から抽出することができます。しかし、フィコビリンは、色素分子がタンパク質に共有結合をしているので、有機溶媒を入れてもそこに抽出されません。これが違いの理由です。薄層クロマトグラフィーの場合は、そもそも有機溶媒で抽出できる画分を分けることになるので、フィコビリンを分けることはできないのです。フィコビリンは有機溶媒には溶けませんが、タンパク質ごと水には溶けるので、有機溶媒に溶けなかった部分を有機溶媒をとばしてから水に溶かすと、きれいな色の溶液になると思います。
Q:光合成実験をしたいのですが次の準備物でできるでしょうか。
重曹 オオカナダモ ペットボトル
以上です ちょっと重曹でできるかが気になって・・・ よろしくお願いします。(2004.8.26)
A:はい、大丈夫でしょう。重曹は主な成分が炭酸水素ナトリウムで、水に二酸化炭素を供給する効果があります。
Q:初めて書き込みます。質問があるので教えてください。自由研究でグリーンネックレス(多肉植物)のことを調べています。教科書に載っている「植物の呼吸を確かめる実験(①ポリエチレンの袋に新鮮な葉を入れ、ふくらませて口を閉じる。同じものを二つ用意する。②明るい場所と暗い場所に放置し、2〜3時間たったのちに、それぞれの袋の中の空気を、石灰水に通して変化を比べる)」をグリーンネックレスを使ってやってみました。グリーンネックレスはCAM植物なので夜、二酸化炭素を吸ってリンゴ酸にしておいて、昼に、リンゴ酸を二酸化炭素に戻して光合成をする。ということをインターネットで調べました。その通りだとすると、僕がやった実験だと暗い方に放置したものは石灰水の色が変わらなくて、明るい方に放置したものは石灰水が白く濁るはずなのに、両方とも石灰水の色が変わりませんでした。グリーンネックレスは昼も夜も二酸化炭素を吸っていることになるのでしょうか。それとも実験のやり方が間違っていたのでしょうか。あと、グリーンネックレスの気孔を昼間顕微鏡で調べたら、開いていました。グリーンネックレスは昼間も二酸化炭素を吸っているんでしょうか。よろしくお願いします。(2004.8.26)
A:実験をする時に重要なのは、対照実験です。この場合、暗いところ(対照条件)と明るいところに置いたことにより、同じ植物での光の影響を見ているわけですが、実験をする「前」のポリエチレンの袋の空気を石灰水に通した時は、ちゃんと濁るのでしょうか?この実験の場合、元々ある二酸化炭素が光合成で減るのを見るわけですから、元々の二酸化炭素の量が少なくて白濁しなかったら、植物を入れても変化しないのは当たり前です。ですから、最初に対照実験として、光合成をする前の空気で濁るのかどうかを確かめる必要があります。また、もし、実験前の空気ではきちんと濁るのでしたら、今度は、(CAM植物ではない)普通の植物の葉っぱを入れて光を当てると濁らなくなる、という対照実験が必要になります。これによって、普通の光合成はきちんと検出できることを示すことができます。
このような対照実験は全て予想通りの結果となり、かつグリーンネックレスでは予想した結果が出ない場合は、グリーンネックレスの状態が悪くないか、量が少なすぎるのではないか、などをチェックしていくことになります。
グリーンネックレスという特定の植物で、気孔が昼間に開いているかどうかは僕は知りません。なお、一般的に気孔の開閉はかなり速い反応です。顕微鏡で見ようとしているうちに開き方が変わってしまう、などということは充分考えられます。このような場合は、植物体に柔らかいシリコンゴムのようなものをぴたっと押しつけて型を取り、その型の方を顕微鏡でゆっくり観察する、という方法がとられます。僕自身はやったことがないのでわかりませんが、もしかしたら、家庭では、速乾性の透明な接着剤を葉っぱにくっつけて、固まったところをはがして観察すると、案外うまくいくかも知れません。
Q:落葉樹である桜が春に花を咲かせるのには、エネルギーの燃焼が必要と思いますが、葉がないと光合成もできず、酸素も取り込めない(蓄えたエネルギーの燃焼ができない)のに、どうやっているのでしょうか。そもそも落葉樹は冬の間はどうやって呼吸をしているのでしょうか。あるいは呼吸しないでも生きていられるのでしょうか。仮死状態からいきなり、花や葉を出すという大仕事をどうやって行うのでしょうか。(こう書いてくると種子や球根にも同じ疑問が出てきますが・・・)ご多忙の所申し訳ありませんがよろしくお願いします。(2004.8.26)
A:実は、空気中の酸素と二酸化炭素には大きく違う点が一つあります。それは濃度で、二酸化炭素は0.04%程度含まれているに過ぎませんが、酸素は20%も含まれています。つまり、同じ体積の空気を取り込んでも、酸素は二酸化炭素の500倍も取り込めることになります。さらに、植物の呼吸の速度は、光合成速度の最大値に比べると1/10かもっと低いこともあります。つまり、呼吸のために取り込む必要のある空気の量は、光合成の場合に比べて1/5000以下でよい、ということになります。ですから、葉の気孔がなくても、いわば「しみ通ってくる」空気だけで、充分呼吸のための酸素は確保できるのです。
というわけで、冬の落葉樹や、種子、球根などでは、やはり貯めておいたデンプンなどを分解して、呼吸によってエネルギーを得て、葉を出したり花を咲かせたりするのです。
Q:初歩的な質問ですみません。サトイモを日向・日陰に置いて薄層クロマトグラフィーで、クロロフィルa・bの比を知りたいと思っているのですが、a・b比はそれぞれのRf値をb/aで計算する方法で良いのでしょうか。また、自分なりに計算してみたらb/aが0.77〜0.90となりましたが、これは数値的に違いがあると言っても良いのでしょうか。展開液にはアセトンを家庭では扱う自信がなかったので、エーテルだけを使用しました。よろしくお願いいたします。(2004.8.24)
A:Rf値というのは、(溶媒などの条件が同じであれば)その物質に固有の値なので、ものの量が変わっても変化しません。一方で、クロロフィルのa/b比というのは、クロロフィルのaの量をクロロフィルのbの量で割った値、つまり量の比、です。薄層クロマトグラフィーでは量は、スポットの濃さになりますから、a/b比はRf値の比ではなく、クロロフィルaのスポットの濃さとbのスポットの濃さを比べることになります。目で見て数値化するのは難しいでしょうね。実際の研究室では、薄層のスポットの部分のシリカゲルを掻き取って、溶媒に色素を抽出し、それを分光器で調べて定量化します。家庭ではその方法は難しいでしょうから、もしあれば写真などを取り込むスキャナーを使ってはどうでしょうか。スキャナーで取り込んだ薄層の画像をスキャナーによく付属しているソフトで処理すると、スポットの部分の色の濃さを数値にすることは可能なのではないかと思います。
Q:植物が一日にする光合成の量って分かりますか? それと、「双子葉類」、「単子葉類」、「裸子植物」では光合成による酸素の出る量は変わってくるのでしょうか?なるべく早く宜しくお願いします。(2004.8.24)
A:光合成の速度は植物の種、光、温度、湿度などによって大きく左右されますから、一般論としては非常におおざっぱな数字しか言えません。まあ、葉っぱ1平方メートルあたり1日に10リットルの二酸化炭素を有機物に変え、10リットルの酸素を出すぐらいでしょうか。植物種の影響としては、双子葉類と単子葉類ではその間の差よりもそれぞれの中での種間差の方が大きいと思いますが、裸子植物では道管が発達していないために一般的に光合成速度が低いことが多いようです。
Q:光合成には、なぜ 二酸化炭素が必要か?なるべく早くお願いします。(2004.8.20)
A:光合成というのは、二酸化炭素から光のエネルギーを使って有機物を作る反応です。「二酸化炭素がなかったら光合成とは言えないから」というのが、一番簡単な答えなのですが・・・。どのような意図の質問なのでしょうか?
Q:初投稿です。オオカナダモの出す気泡の量を調べるために、実験をしました。光、二酸化炭素(重曹)、水の条件をすべて満たしているのですが、気泡が全然出てきません。なぜでしょうか?教えて下さい。お願いします。(2004.8.19)
A:以前の同様のご質問にも答えたのですが、実験がうまくいかない理由というのは、たくさん考えられるので、ご質問の内容からだけで、「ズバリここがおかしい」とお答えすることは不可能です。
ただ、普通考えると、光・二酸化炭素が充分でしたら、一番怪しいのはオオカナダモが弱っているのではないかという点です。あとは、茎からの気泡を見ているのでしたら、茎の切り口の状態を確認した方がよいかも知れません。ぐちゃっとつぶれていたりするとダメかも知れません。あと、温度は大丈夫でしょうか。直射日光を当てている場合、水があまり熱くなってしまうとダメでしょう。最後に、水に空気が溶けていない状態から出発した場合は(例えば、水を煮沸してある場合など)は、発生した酸素が最初は水に溶け、量が多くなって溶けきれなくなった時から始めて気泡が発生するので、実験してしばらくの間は気泡が観察されない、ということはあります。
Q:光がない時いわゆる遮光の条件で藻類は増殖できますか。遮光で二日後その藻類の数が初期(遮光前)より増えるのはおかしいですか?(2004.8.19)
A:これは藻類の種類によります。ある種の藻類は、光合成が増殖に必須なので、暗所では全く増えることができません。一方で、種類によっては、光がない条件でも糖を栄養として与えると増殖できるものもあります。どちらの種類の場合も、光がなくて、かつ有機物もない条件では、増殖することはできません。
あと、「増殖」と言えるかどうかはわかりませんが、細胞内にデンプンなどをため込んだ藻類は、それを栄養にして短い期間細胞数を増やす可能性はあります。この場合は、デンプンを使い切ったら細胞数の増加は止まります。
Q:勝手なことをいいますが早めにお答えください。今、水をいっぱいにしたペットボトルに水草をいれて光合成をさせそれでできた酸素をほかの容器に水中置換法を利用し移しその容器の中に、火のついた線香をその中に入れるとどうなるかという実験をしています。しかし、酸素がたまる前に水草が枯れてしまいました。水草の種類とかも関係するのでしょうか。コツをおしえてもらえるとうれしのです。(2004.8.19)
A:実験というのは、どこか1カ所ダメだとそれだけで全体がうまくいきません。つまり「うまくいかない」理由というのは山ほど考えられますから、きちんと細かい情報をいただけないことにはお答えのしようがありません。
「枯れた」というのは、どの程度の時間で枯れたのでしょうか?また、「酸素がたまる前に」というのは、どの程度の量をためようとしているのでしょうか?光はどの程度の強さのものを当てているのでしょうか?
オオカナダモを使った場合、十分光を当てれば酸素を多く含んだ空気は茎から泡として出てくるのが目で見えるぐらいですから、10分程度あれば目で確認できる程度の量はたまるはずです。一方で、10分で水草が枯れるとは思えないのですが・・・
Q:陸生植物に光合成をさせると、BTB液が緑色から青色に変わりました。これは光合成により二酸化炭素が減少したためと考えてよいのでしょうか?(2004.8.10)
A:何の液にBTBを入れたのでしょうか?どんな実験をしたのかがわからないとお答えのしようがありません。メールで問い合わせようと思ったのですが、返送されてきたので、ここに載せておくことにしました。具体的な実験条件を再度お寄せ頂ければお答えできると思います。
Q:この前は、わかりづらい質問をしてすみませんでした。私が行なった実験とは、陸生植物を密閉して、十分に光合成を行なわせえた後、その中の空気を抜き取り、BTB液と反応させました。呼吸を行なわせると、BTB液が緑から黄になることは二酸化炭素が増えたためと考えると納得できるのですが、光合成で二酸化炭素が減るとBTB液が緑から青色になるということはどう考えたらいいのでしょうか?BTB液は二酸化炭素の減少で青になったのか、酸素が増加したことで青になったのかと二通り私は考えましたが、一体どうしてBTB液が青になったのか教えてください。よろしくお願いします。(2004.8.18)
A:BTB液は、何に反応するかというと、二酸化炭素や酸素のガスと反応するのではなく、溶液が酸性かアルカリ性かというpHに反応して色が変わるのです。酸素は水に溶けてもpHは変わりません。ですから、酸素の発生(もしくは吸収)があってもBTB液の色には影響がありません。一方で、二酸化炭素は水に溶けると炭酸イオンになるので、溶液は酸性になります。ただし、光合成で二酸化炭素を吸収させても、最大限でも二酸化炭素の濃度が0になるだけですから、その影響で、溶液がアルカリになることは考えられません。対照実験はしているのでしょうか?この場合、呼吸も光合成もさせないただの空気が対照になると思いますが、まさかそれではBTB溶液が青にならないのでしょうね。もしそれで青になるとすると、元々の空気にアルカリ性の物質が含まれていた可能性があります。もし、植物を入れた時だけ青になるのだとすると、僕にもその原因はわかりません。それを調べるためには、空気中の二酸化炭素を、植物ではなく化学物質により除去したものでpHがどうなるか、などの実験を積み重ねていく必要があると思います。
Q:はじめまして!早速質問をさせて頂きますが、光合成産物の転流に関するアポプラストと、シンプラストの役割について教えていただけませんか?またそれらの機構について詳しく掲載されている資料等ございましたら、ご紹介下さい。(2004.8.16)
A:転流においては、葉肉細胞の糖が師管を通して他の場所に運ばれますが、その際に、細胞から細胞へ(シンプラストだけで)運ばれるわけではなく、葉肉細胞から一旦アポプラストに出ます。そして、アポプラストからショ糖トランスポーターにより伴細胞に運ばれ、伴細胞から原形質連絡を通して篩要素に移り、師管を運ばれていきます。運ばれるのに、アポプラストという細胞の外を一旦通るのですが、細胞外なので、「役割」という言葉はあまり適切ではないように思います。糖が運ばれる先としては、種子などがありますが、親と種子はいわば別個体なので、その場合も、一旦細胞の外を通ります。つまり、師管に運び込まれる際(ローディングといいます)にも、師管から目的組織に運び出される際(アンローディングといいます)にも、アポプラストを通るわけです。
転流の研究の歴史は非常に古いので、多くの植物生理学の教科書には何らかの記述があると思いますが、具体的に詳しい本を挙げろと言われるとぱっと思いつきません。まずは、教科書をいくつかあたってみてはどうでしょうか。
Q:私は今自由研究で、光合成について調べています。質問なんですがどのように光合成を調べればいいですか?理科に関する自由研究をしなくてはならないんです。早めにできて、光合成を調べられる方法はありませんか?勝手な質問だとは思いますがご了承ください。(2004.8.15)
A:勝手だとは思いませんが、質問にはなっていませんね。研究というのは、何か疑問から出発して、その疑問に答える方法を考え、そしてその方法で実験を行ない、その結果を解釈して疑問に対する答えを得る、というステップを踏みます。「光合成」自体は疑問ではありませんよね。ですから「光合成を調べる実験」というのはあまり意味をなしません。
もし「光合成について調べている」のでしたら、その過程で、何かわからない点、疑問な点は浮かんできませんでしたか?例えば、当たり前すぎることかも知れませんが、「光合成には本当に光が必要なのだろうか」という疑問が浮かんだとします。そうしたら、その疑問に答えるためにはどんな方法があるのか、と考えます。おそらく、この場合、明るいところと暗いところでどのくらい光合成の能力に差があるか、を調べればよいでしょう。明るい所と暗いところを作るのは難しくないでしょうから、あとは、光合成の能力をどうやって調べたらよいのか、ということがわかれば良いはずです。そこまで行ったときに、「光合成の能力を調べる方法にどのようなものがありますか?」と質問をすれば、その質問に対しては、例えば「ヨウ素デンプン反応を使うと光合成でできるデンプンの量を調べることができます」というように答えることができます。
疑問や質問というのは、何となく「わからなければ生まれる」と思いがちですが、実は、ある程度自分で調べてみないときちんとした疑問は生まれません。まずは、光合成のことを自分なりに調べてみて、それからその過程でわからない点をじっくりと考えてみる、ということをやってみることをおすすめします。
あと、なんでも良いからとにかく実験をしてみたいのでしたら、過去の質問箱にQ:光合成の仕組みを説明する簡単にできる実験(中学生レベル以下)を教えてください。(2002.10.29)」というのがありますが、見てみましたか?
Q:はじめまして。現在6年生です 光合成について実験をしております。内容は、2Lのペットボトルを上3/2ぐらいで切り、水草(オオカナダモ)を中に入れてペットボトルの上の部分を逆さに向けて下の部分に差し込み、水草(オオカナダモ)の茎の部分を口の部分から上に出します。水を入れ別の500MLのペットボトルに水を入れた物を上からかぶせ茎を中に入れて装置を作りランプを当てました。茎の部分より気泡(酸素)が出ることを確認のうえ、ランプより距離をはなして又、黄色、青色、赤色の光を当て気泡の量の実験をしています。
水の状態と、ふくらし粉を入れた物で実験をしたのですが、ふくらし粉を入れた方が気泡の量が多く出ます。これはなぜかを知りたいです。又,ランプを消して半日ほどおいておくと、電気を付けてもなかなか気泡が出ません。この件もお教え下さればと思います。それと、光の波長によりなぜ気泡の量がかわるのか、もお聞きしたいです。宜しくお願い致します。(2004.8.15)
A:ふくらし粉には炭酸水素ナトリウムという物質が入っています。この物質は、いわば中に二酸化炭素持っていて、熱せられると二酸化炭素を出すので、スポンジケーキなどがふくらみます。光合成では反応に二酸化炭素を使いますが、ふくらし粉は水に溶けた状態でも徐々に二酸化炭素を出しますので、ふくらし粉が入っていると二酸化炭素が多い分、光合成がさかんになるのです。
酸素は水草の中で初めは水に溶けた状態で出ますが、量が多くなると溶けきらなくなって気体になって出てきます。ランプを消してしばらく置いておくと、それまでに出た酸素は周りに逃げてしまいますから、水の中の酸素の量はまた減ります。そこでまた光を当てても最初の内は出た酸素が水に溶けていくので、なかなか気体になりません。しばらくしてまた溶けきれないほどの酸素が出ると、ようやく気泡が出始めるわけです。
植物は、光合成のために光を吸収する葉緑素(クロロフィル)を持っていますが、このクロロフィルは主に赤と青の光を吸収します。黄色の光はそれに比べるとクロロフィルに吸収されにくいので、黄色の光を当ててもあまり光合成の反応が起こらないのです。(ただし、実際の実験では、色を変えようとすると光の量も違ってしまうことが多いので、なかなか光の量をそろえるのが難しいかと思います。上に書いたことは、同じ量の光を当てた時には成り立ちますが、黄色い光がすごく強ければ、それは光合成の反応を引き起こします。)
Q:赤い葉には葉緑体があるのか顕微鏡で観察したのですが、葉脈の部分が赤くなっていて、その周辺は緑色でした。(見た目は全体的に赤色です)この結果は合っているのでしょうか?また、赤い色素というのは葉緑体に混ざっているんですか?それとも葉緑体と別のものなのですか?質問が多くなりましたが、お願いします。(2004.8.14)
A:赤い色素の分布はおそらく植物の種によっても違うと思いますので一概には言えませんが、葉脈の部分が赤く見えたのはそこには葉緑体が少なかったせいだと思います。周辺には(赤い色素もあるでしょうけど)葉緑体があったので緑色に見えたのでしょう。見た目と顕微鏡で見た時の印象の違いは次のように説明できるかも知れません。
見た目では上からあたって反射する光が目に入るのに対して顕微鏡では下から透過してくる光で見ることが多いと思います。赤い色素は葉緑体とは別です。赤い色素は(これも植物の種類によって違いますが)葉の表面にあることが多いので、見た目には赤が強く見えますが、顕微鏡で見ると案外緑色に見えた、ということだと思います。
Q:はじめまして。太陽からエネルギーが投射されて、植物によって固定され、作物になるまでにはエネルギーの損失があると聞いたのですが、どのような要因で損失が起こるのでしょうか?また、利用される光は投射されたものの何割くらいなのでしょうか?(2004.8.13)
A:これは実は非常に難しい質問ですね。まず、光が当たっても、吸収されなくては利用できません。葉の光の吸収率はおおざっぱに言って85%程度ですから、15%はまず最初に無駄になります。次に、吸収された光の内、光合成反応を引き起こすものの割合ですが、これは光の強さによって異なります。酵素反応などでは、基質濃度を増やすと反応速度が飽和していきますが、光合成でも同じように光を強くしていくと光合成速度は飽和してしまいます。とすると、当然、光が強ければ強いほど、無駄になる割合が大きくなります。つまり光の強さを決めないとご質問には答えられないことになります。
そこで次に、光が充分弱い時、つまり光の量が光合成を律速している時についてだけ考えてみます。1個の光子があたった時に光化学反応が何回おこるかを考えると、光が弱い時は実はほぼ1になります。つまりこの場合は、この段階での損失は0であることになります。その意味では光合成は極めて効率の良いシステムなのです。
しかしさらに考えなくてはいけないことがあります。クロロフィルは赤い光と青い光を両方吸収できますが、同じ光子1個でも、青い光は赤い光より多くのエネルギーを持っています。ですけれども、どちらの色の光子でも1個の光子で起こる反応は1回で変わりません。つまり、エネルギーあたりに換算すると赤い光による光合成の方が効率がよいことになります。ですから、光の色(スペクトル)も決めないことには、ご質問には答えられないことになります。この部分はいわばクロロフィル分子の中でのエネルギーの損失です。
実際にはさらに光化学反応によってATPを合成する過程でもエネルギーのロスがありますし、ATPで二酸化炭素を有機物に固定する過程でもロスがあります。これらの損失を正確に全て見積もることは難しいと思いますが、何かの本に、当たった光のエネルギーに対して、植物の有機物の燃焼のエネルギーの割合を出すと10%以下だ、と書いてあった記憶がありますが、定かではありません。いずれにせよ、上記のように、効率は様々な要因によって左右されますから非常におおざっぱな値であると考えた方がよいかと思います。
Q:初めまして。私は今、サボテンの光合成について調べています。サボテンには葉が無いので、サボテンの茎で光合成が行われているのかを調べています。茎の表面の1部分にアルミハクを貼り、張っていない部分とヨウ素反応を比較してみましたが、どちらもヨウ素反応が見られませんでした。実験の方法は教科書に基ずき、茎の表面を剥ぎ取ったものをエタノール(消毒用70%)にひたし、その後、ヨウ素液として市販のヨウ素を含んだうがい薬を約3倍に薄めて使用しました。ヨウ素反応が見られなかったのは、実験の方法が悪かったのかのでしょうか?それとも、サボテンの光合成は他の植物と異なっているのでしょうか?できるだけお返事いただけるとうれしいです。(2004.8.13)
A:サボテンの仲間は、光合成に必要な二酸化炭素を空気中から取り込む仕組みが、少し普通の植物とは違いますが、糖やデンプンに変える働きは同じはずです。ただし、植物の種によっては、デンプンをたくさん貯めるタイプと、デンプンをあまり作らずに砂糖として貯めるタイプがあります。もしかしたら、お使いのサボテンはあまりデンプンを貯めないタイプなのかも知れませんね。砂糖はヨウ素デンプン反応を示さないので、その場合はヨウ素反応が見られません。
あとは、実験的な問題ですが、組織が堅いとエタノールによるクロロフィルの抽出や、ヨウ素との反応がどうしても不十分になってしまうことはありそうですね。エタノールで緑色は完全に抜けましたか?普通の葉っぱでは緑色が抜けるのに、サボテンでは抜けなかった、ということがあったら、サボテンの組織が堅くて反応が進まない、という可能性が考えられます。その場合は、エタノールで浸す時に少し温めてやると良いかも知れません。
Q:針葉樹の光合成は、どうやって行われるんですか?早めにお返事ください(2004.8.12)
A:針葉樹は、葉の形こそ広葉樹とは違いますが、基本的な光合成のしくみは同じで、別に特別な光合成を行なっているわけではありません。葉が針状でも、通常の光合成を行ないます。
Q:私の研究で、フラボノイド系色素が主要色素である花の花弁において、カロテノイド色素を発現させたいのですが、調べてもわからないことがあり、いくつか質問させて頂きます。まだ植物に関しての知識が不十分で間違っている箇所があるかもしれませんが、よろしくお願いします。
・ 葉では、葉緑体の中にクロロフィルとカロテノイドが共存しており緑色をしていますが、カロテノイド色素が主成分の花弁の場合、分化の過程でクロロフィルが分解され、カロテノイド色素が残るか増産され、葉緑体が黄色の色素体(クロモプラスト)になるのでしょうか。
・ フラボノイド系色素が主要色素である花弁では、さらにカロテノイドもなくなると思いますが、その花弁では、葉緑体は消滅するのか、色素のない色素体に分化するのかどちらでしょうか。
・ またその過程では合成する遺伝子が抑制されるのか、分解系の酵素が生産されるかするのでしょうか。そうであれば、その抑制遺伝子か分解遺伝子を抑制すればカロテノイドは蓄積するでしょうか。(2004.8.11)
A:ご質問の内容は、光合成というよりは色素体の分化の問題で、僕自身は必ずしも専門家ではありませんが、推測できる範囲でお答えします。ご質問では、花弁にいったん葉緑体が分化することが前提になっているようですが、色素体の分化などは組織特異性が大きく効くと思われますので、一般には、花弁における葉緑体の分化は抑えられていて、原色素体から直接有色体へ分化するのではないかと思います。ですから、クロロフィルやカロテノイドをいったん作ってから分解するのではなく、もとともクロロフィルやカロテノイドがないところに、新しくアントシアンなどの色素を合成するだけなのだと思います。
Q:はじめまして。 質問なんですが、紫キャベツはどうやって光合成をしているのですか?葉緑体は緑色だけではないということでしょうか?検索してみるとアントシアンというものが関係しているようなのですがよくわかりません。 また、紫キャベツの光合成についての実験などはあるんでしょうか?できるだけわかりやすくお答えいただけると嬉しいです。(2004.8.7)
A:紫キャベツや赤ジソなどは確かに紫色をしていますが、これは純粋に紫色の色素だけを持っているのではなくて、葉緑体を持っていて、その上に赤い色素(アントシアン)を持っているので紫色に見えるのです。ですから、見た目の色は緑色ではありませんが、ちゃんと葉緑体には葉緑素(クロロフィル)があり、これで光合成をしています。ですからちゃんと育つことができるのです。ただし、結球部の紫キャベツは、クロロフィルをほとんど持ちません。ナスの皮(これも黒に近い紫色ですよね)で光合成を見ると、ものによってはきちんと光合成の能力がありました。もし学校で実験をさせてもらえるのでしたら、紫キャベツから色素を抽出してみると良いと思います。水で抽出するとアントシアンが溶け出すので、紫/赤色の色素が出てきます。一方、アルコールやアセトンなどの有機溶媒(中学校だと使えないかな?)を使うとクロロフィルが溶け出すので、緑色の色素が出てきます。このようにして、見た目は紫色でも、ちゃんとクロロフィルがあることを確かめることができます。
Q:光合成産物の転流と蓄積について教えてください。(2004.7.21)
A:ちょっと漠然としていて何を答えたらよいのかよくわかりませんが・・・。光合成産物は葉緑体の中でデンプンになるか、細胞質でショ糖になります。どちらになるかは、ショ糖の合成に関わるsucrose phosphate synthase (SPS)の活性の高さで影響を受け、植物種によっても違います。例えばホウレンソウはあまりデンプンを貯めませんが、キュウリはデンプンを貯めます。葉緑体にデンプンで貯める場合も、デンプンは夜の間に徐々に分解されて糖の形になり、転流により他器官へと運ばれます。
Q:植物色素のTLCによる分離の実験を行いました。考察課題として、色素が退色しやすい理由と退色を防ぐ方法を答えなければいけないのですが、退色の原因とは何でしょうか?私は展開溶媒として用いた石油エーテルによる作用だと思ったのですが(石油は色素を退色させることで知られている、という文献があったので。展開溶媒は石油エーテル:アセトン=3:1です。)、それを防ぐために、展開溶媒として石油エーテルの代用が可能なものは何かあるのでしょうか。それとも、退色の原因は、光と反応したとだけ考えるべきでしょうか。文献を調べてもよい答えが見つからなかったので、力をお借りしたいです。(2004.7.18)
A:石油エーテルで色素が退色するという話は、僕は知りません。展開溶媒を変えることは可能ですが、どうしてもRf値は変わると思います。色素は、おっしゃるように光によってよく退色しますので、遮光保存というのは一般的な方法です。その他、分解反応などの化学反応は、一般に、水の存在、および酸素の存在によって進行が速くなることが多いので、乾燥保存、および雰囲気を窒素に置換して保存、などの方法がとられますが、実際に光合成色素でどの程度有効かはよくわかりません。
Q:ペーパークロマトグラフィーで光合成色素を分離させたいのですが、採取しやすいケイソウ類はありますか?あと、ひじきの光合成色素の抽出液も教えて下さい。(2004.7.17)
A:僕は光合成を専門にはしていますが、材料としてケイ藻もひじきも使ったことがありませんので、具体的にはお答えできません。ただ、昔同じ研究室にいたケイ藻の専門家の様子を見ていると、特に陸水性のケイ藻は時期によって消長が激しいので、よく見られるケイ藻でも実際に何度か採取してみないとわからないという感じだったかと思います。色素の抽出溶媒については、一般的にはメタノールが一番よいと思います。他の有機溶媒に比べて水と混ざるので、多少水分を含むものからの抽出も可能です。また、同じく水と混ざるアセトンは、抽出時にタンパク質などを凝集させて色素の抽出効率が悪くなる場合がありますので、その意味でもメタノールの方が安心です。
Q:炭酸固定反応の三つの型とは何でしょう?私は教養科目としてとっているんですが。。。(2004.7.15)
A:おそらくC3、C4、CAMの3つのことを言っているのではないでしょうか。それぞれの違いについては、ここで全てを説明することはできません。C3とC4については、過去の質問箱に短い説明があります。CAM植物の炭酸固定の回路は、C4植物と良く似ていますが、C4植物では、空間的に分離していたC3回路とC4回路を、時間的に分離した形になっています。これにより、夜に気孔を開いて二酸化炭素を取り込んで貯めておき、昼間は気孔を閉じていながら貯めてあった二酸化炭素をを使って光合成を行なうことができます。ですから昼間に気孔を開くと蒸散によってしおれてしまうような乾燥した環境でも育つことができます。キーワードがわかれば調べることができると思いますので、調べてわからない点があったらまたご質問下さい。
Q:初めまして、こんにちは。今、私は、光合成の反応過程の一つである光化学反応の光化学系IとIIの起源と機能について調べています。起源というのがいまいちよく分からないのですが、
1 クロロフレクサスと紅色光合成細菌などは、光化学系II型の光合成反応中心複合体のみで光合成を行う。
2 緑色硫黄細菌とヘリオバクテリアなどは光化学系I型の反応中心のみを持つ。
1と2はどちらも嫌気条件で非酸素発生型光合成をする。一方シアノバクテリアは、光化学Iと、Mn原子を結合した光化学系II型反応中心をあわせもち、直列につなぐことで酸素発生型光合成を行う。別々に進化してきた二つの光合成回路を持つ細菌の共生、合体あるいは遺伝子の導入によって可能になった。
以上のことから、1と2がなんだかの理由で合体して、シアノバクテリアとなり、今の光合成の光化学反応にある光化学系I・IIが出来たのだと思います。
私が分からないことは、
Q1:なぜ、1は光化学系IIを獲得して、2は光化学系Iを獲得したのでしょうか?そもそも光化学系IとIIの起源とは何なのでしょうか?(2004.7.15)
A:系Iタイプと系IIタイプの反応中心の間には、類似性が認められますから、その祖先は共通であったと思われます。祖先型が系Iタイプだったのか、系IIタイプだったのか、それともどちらとも違うタイプだったのかを議論するだけの確たる根拠はまだ見つかっていません。ただ一つ言えるのは、系Iタイプと系IIタイプは、光合成に必要な基質が異なります。ですから2つのタイプは異なる環境において生存することができます。つまり、2つのタイプを獲得したことにより、光合成生物はより広い生息範囲に生育できるようになったはずです。もし2つの光化学系を獲得した理由を聞いているのであれば、これが答えになるのではないでしょうか。一方で、紅色光合成細菌が系II、緑色硫黄細菌が系Iを獲得した理由ということであれば、それには理由はなくて、逆に系IIを獲得したものを紅色光合成細菌と呼んでいる、というだけだと思います。
Q:水草(オオカナダモ)などは、気孔(がく片に開いたままある)から水に溶けている二酸化炭素を吸収し、光合成に使用しているのでしょうか?(2004.7.14)
A:高等植物の場合は、葉から水が失われると致命的なので、細胞の表面にクチクラ層を発達させます。そうすると、細胞表面でのガス交換の効率は極めて悪くなりますから、代わりに気孔を発達させざるを得ません。しかし、水草では、蒸散は考えなくても良いので、何も気孔に頼る必要はない、と考えられます。ただし、細胞層が何層にもわたると、充分に二酸化炭素が供給されなくなります。一般に水草は、葉が薄く、オオカナダモの場合も確か細胞層が2層ぐらいしかなかったと思います。また、常に水に濡れるような場所に生えるシダでも、細胞層が少なく、かつ気孔がほとんどないものが知られています。これらの形態は、気孔ではなく、細胞の表面から二酸化炭素を取り込んでいることによるものだと解釈すると説明できます。
実は、オオカナダモのがく片に気孔があることすら知らなかったのですが、その気孔を使っているとすると、花が咲いていない時には困りますから、少なくとも二酸化炭素のメインの取り込み口でないことは確かでしょう。
Q:日当たりの良いタンポポやシロツメグサなどの陽地性植物は、さく状組織、海綿状組織に細胞がびっしりつまり、葉緑体が多く、ドクダミなどの日当たりに悪い植物はさく状組織、海綿状組織に細胞が少なく、葉緑体が少ないのでしょうか?また、その違いが陽地性草本と陰地性草本の光合成速度に違いに影響するのでしょうか?(2004.7.14)
A:海綿状組織では細胞内間隙が多いのですが、柵状組織の場合は、もともとかなり細胞がびっしりつまっています。ですから、陽生殖物と陰生殖物で細胞のつまり具合が違うということはないでしょう。一方で、柵状組織と海綿状組織の比率は、日当たりによって大きく変動します。陽生殖物の場合は、柵状組織に何層もの細胞がありますが、陰生殖物では1−2層の細胞しかないことが多いようです。同じ植物種でも、光環境によって組織は大きく変化します。
組織の違いが光合成速度に影響する、とうよりは、与えられた光条件のもので光合成が最適になるように組織を作っている、という感じでしょうか。厚い木の葉の場合などは、葉の表から光が来る条件に適応しているため、葉の裏から光を当てると、光合成速度が違ってしまうことが知られています。逆に葉の立ったイネ科の草などでは、葉の表と裏の違いが少なく、どちらから光を当てても光合成には大きな影響がないでしょう。
Q:質問の回答ありがとうございました。また新たな疑問なのですが、陽性植物と陰性植物では、明るい日向では陽性植物の方が光合成速度が大きく生きていくために有利であり、暗い条件では陰性植物の方が光合成速度が大きく生きていくために有利であることを本(植物の科学 ナツメ社)で読みました。このことは、暗いところで生きる陰性植物は柵状組織を1−2層にして細胞の数を減らすことで、呼吸量を少なくし、光合成で得た栄養分などを効率よく利用するためなのでしょうか?(2004.7.15)
A:陰生殖物で柵状組織が少ない一番の理由は、光が弱いと組織を厚くしてもしたまで光が届かないので無意味だ、という点だと思います。光合成速度の違いには、それよりも、光を使う光化学反応に関わるタンパク質と、光を使わないその他の電子伝達反応や炭酸固定反応に関わるタンパク質の量の比が大きな影響を与えます。これは、光が充分強い時には、光化学反応に関わるタンパク質の相対量を抑えることができることによります。また、光化学系の中を見ても、光が強い時には、反応中心あたりのアンテナクロロフィルの数を減らすことができます。しかし、そのように光に関係する成分の量を減らしてしまった陽生殖物では、光が弱い時には充分なエネルギーを得ることができずに光合成活性が落ちてしまうわけです。
Q:光合成反応中心における超高速の電子移動反応が必要とされる理由とそれを実現している機構を式で与えて説明してもらえませんか?あと、光合成膜あるいは光合成たんぱく質の機能応用例について考えてもらえませんか?(2004.7.10)
A:反応中心で電荷分離反応が起こっても、プラスの電荷とマイナスの電荷は引き合うので、そのままではまた再結合してしまいます。そこで、分離した電荷を、次々と電子伝達成分の間で受け渡してしまって、距離を引き離すことによって再結合を阻止しているわけです。「機構を式で与えて」というのがよくわかりませんが、ノーベル賞をとったマーカスの電子移動理論のことを言っているのでしょうか?そうだとしたら、僕の物理の知識では手に負えません。「機能応用例について考えてもらえませんか」というのは、「機能応用例について考えよ」といったレポートの改題でも出たのでしょうか。そうだとすると、レポートの代作依頼はお断りしております。というか、実用レベルに達した応用例はないと思うので、それぞれが自分のアイデアを出すしかないと思います。
Q:葉緑体はDNAをもっていて自己分裂をするときいたのですが、どのようなしくみで分裂をするのですか。(2004.7.10)
A:葉緑体は、原核生物であるシアノバクテリア(ラン色細菌)が他の細胞に共生したものが起源だとされています。ですから、分裂の仕組み自体は、バクテリアなどとかなり似ているようです。このあたりは、実は現在研究が進行中の分野なのですが、分裂リングというリング状の構造が葉緑体をくびりきるようにして分裂することがわかってきました。バクテリアの場合はもちろん全て自前ですが、葉緑体の場合は、DNAを持っているといってもその量は少なく、それだけでは葉緑体を維持できません。細胞核のDNAによって作られるタンパク質が葉緑体に輸送されて、それが自前のタンパク質と協調して、機能の維持や、分裂などがおこります。
Q:はじめまして。大学生ですが全くの素人です。陸上植物には葉や植物体全体が赤みがかった、あるいはほぼ真っ赤なものがありますが、これは紅藻が持つような光合成色素でしょうか?そうでない、しかもそれらを意図的に合成している場合は、その機能について解説していただければと思います。
また、日照りの強い浜辺などでこういった赤い色を良く見かけますが(気のせいかもしれません)日照の量・パターンと植物(植物種あるいは個体)が赤い色を持つこととは関係があるのでしょうか。(2004.7.9)
A:紅藻の場合は、フィコビリン(特にフィコエリスリン)という色素が多いと赤っぽく見えます。陸上植物の場合はフィコビリンは持ちません。高等植物で赤い場合は、アントシアンを持っていることによる場合が一番多いと思います。アントシアンは光合成色素ではなく、光エネルギーを集めるアンテナとしては働きません。むしろ、ストレスがかかっているときなどに余分な紫外線、もしくは可視光線を遮断して、少しでもストレスを軽くするために、いわばサングラスとして働いていると考えられています。
従って、ご指摘のように、光の強いところ、もしくは塩分濃度が高いなどのストレスがかかっている場合に重要になります。光以外のストレスの場合にも見られるのは、ストレス条件下では、光合成の反応がうまく進まず、通常の強さの光でもエネルギーが余ってしまい、いわば「強光」として認識されることによります。
Q:学校の余力課題で、光化学Iと光化学IIの起源と機能を述べよ。というのがあるのです。よい資料が見つかりません。(2004.7.8)
A:うーむ。少し高校生には難しい課題ですね。機能はともかく、起源となると、高校生向けの本では足りないかも知れません。単に、起源を言うだけでよいのなら、緑色硫黄細菌の光化学系が光化学系Iの起源で、紅色光合成細菌の光化学系が光化学系IIの起源とされますが、理由抜きで書いても課題にはならないような気がするし。きちんと理由を理解するには、反応中心の仕組みをかなり細かく調べる必要があります。光合成の教科書としては、朝倉書店から出ている朝倉植物生理学講座の「光合成」が今のところ、一番新しくてよいかと思います。この中の最初の方に光化学系の話があったと思いますので、図書館などで探してみてはどうでしょうか。
Q:初歩的な質問で失礼します。子どもの学習を見ていてふと疑問に思ったのですが、葉の表皮では孔辺細胞にのみ葉緑体があるのはなぜでしょうか。素人として 葉緑体で光を感じてそれで気候を開いたり閉じたりしているのでは?と考えたのですが的はずれでしょうか?(2004.7.5)
A:確かに、葉緑体で光を感じる、ということはいかにもありそうな気がします。ただ、気孔の開閉に直接有効な光は、青い光であるとの実験結果があり、また、青い光を吸収するフォトトロピンという色素が、気孔の開閉に関与しているという実験結果も出ています。ですから、いわば光センサーとしての役割は、あったとしても二次的な可能性が強いように思われます。一方で、気孔の開閉にはエネルギーが必要ですから、そのエネルギーを作り出すために葉緑体の光合成が必要だ、という可能性は残りますね。今のところ、この可能性が一番強いのではないかと思います。なにやら歯切れの悪い答えですが、ご質問は「初歩的」どころか、現在、最先端で研究が進んでいる部分なものですから・・・。気孔の開閉については、九州大学の島崎先生のグループがいろいろな仕事をなさっています。こちら
http://rc28092.rc.kyushu-u.ac.jp/MacHTTP/Web/Shimazaki/Shimazaki.html
をご覧になると参考になるかも知れません。
Q:化学実験でサリチル酸と無水酢酸からアスピリンを合成し、純度検定を薄層クロマトグラフィ−を使って行いました。考察課題として、「アスピリンのRf値がサリチル酸のRf値よりも大きい理由を考察せよ。」と課せられましたが、事前に薄層クロマトグラフィ−についてのレポートも書いたので原理は理解したつもりでいましたが、自分の考えとしてはクロマトグラフィは試料の成分を分離する装置だからサリチル酸とアスピリンでは構造や分子量が違うため展開速度や距離に違いが出るんじゃないかと思うのですが、友達は展開槽に充満させたベンゼンに対する親和性が関係あるのではといっています。どうなのでしょうか。教えてください。(2004.7.1)
A:光合成とは無関係のようですが・・・。まあ、少し自分で考えてから質問をしているようなので、答えておきます。「試料の成分を分離する装置だから」というのは、確かに正しいのですが、あまり理由にはなりませんよね。「構造や分子量が違うため」というのも、正しいのですが、原理を考えた時になぜ、構造や分子量が違うと展開速度に違いが出るのか、という点が、求められている考察だと思います。「ベンゼンに対する親和性が関係あるのでは」ということが正しいかどうか知りたかったら、それを正しいと仮定して、その場合どのようなことが期待されるかを考えてみればよいはずです。親和性なら、相手が違えば違うでしょうから、ベンゼンの代わりに別の溶媒を使ったらRf値も変わるはずです。アスピリンではどうなるかは載っていませんが、光合成色素で溶媒を変えた時のRf値については、過去の質問箱を見ればわかりますよね。
あとは、ここで問題になっているのは、一般論ではなく、サリチル酸とアスピリンなのですから、「構造や分子量が違うため」といった漠然としたことでなく、具体的に分子のどこがどうのように変わっているかがわかるはずです。過去の質問箱を見れば分子の極性が重要だとわかると思いますので、サリチル酸とアスピリンの構造を比較して、極性がどのように変化するかを考えれば、答えが見つかるでしょう。
がんばって考えてみてください。
Q:はじめまして。初歩的な質問ですみません。どうして、緑の花は咲かないのですか?やはり葉緑体を持ってないことや、葉や茎と色素が違うからなのでしょうか?もっと詳しく知りたいので教えてください。わたくし的事なのですが、できるだけ早めにお願いします。(2004.6.29)
A:まず、世の中には探せば緑色の花も存在します。実は、起源からいえば花は葉の変化したものです。ですから、本当に緑色の花もありますし、本来きれいな色の花でも、その発達がおかしかった場合に緑色になる例もあります。
きれいな色の花の場合は、葉緑体の代わりに、クロロフィルではない色素を持った色素体が存在するので、緑色ではなくなります。色素としてはアントシアンなどが代表的ですね。
あと、「どうして」という質問は、どのように(How)という意味以外に、何のために(Why)という意味もあります。何のために、という質問でしたら、それは目立つためでしょう。花の役割は、虫を呼び寄せて受粉することにあるでしょうから、葉の色と同じでは困ります。ということは、緑色の花は、おそらく虫によって受粉する花ではないのかも知れない、という推測もできるかも知れませんね。
Q:タンポポなどの陽地性草本とシダ(ベニシダ)などの陰地性草本では、光の強さによって光合成速度が違うことを植物の科学(ナツメ社 八田 洋章著)で読みました。そこで、実際に確かめる実験を計画しています。シダとタンポポを試験管に入れ、それぞれの試験管に二酸化炭素を加え明るい条件と暗い条件と真っ暗な条件に20−30分置いて、BTB液を加え色の変化を比べるということを計画しています。明るい条件では、タンポポが二酸化炭素をより吸収することがわかりました。暗い条件では、シダの方が二酸化炭素を吸収すると思ったのですがあまりうまく結果がでません。どうしてでしょうか?
また、陽地性草本と陰地性草本では何故、光合成速度が違うのでしょうか?参考書ではヤツデの陽葉と陰葉は、組織に違いがありました。やはり、組織に違いがあるのでしょうか。組織に違いがあれば、その写真も見せて欲しいのですが、私はこの実験を通して、生徒が日向によく生える植物と日陰に生える植物では、生きていくために何か違いがあるのかを確かめたいという疑問に答えたいと思ったからです。どうか、よろしくお願いします(2004.6.28)
A:まず、前半のご質問ですが、BTB液による検出はpHの変化に基づいているので、大きな差は見えますが、小さな差を検出するには向いていません。明るい条件では光合成速度が大きく、差が出やすいのですが、暗い条件ではそもそもわずかしか光合成をしませんので、その中で陰生殖物と陽生殖物の差を見るのは大変です。暗い条件での差を見るのは定量的な測定装置を使っても、慣れないとなかなか難しいかと思います。あと、シダ植物は被子植物とはかなり遠縁なので、生育環境に起因する差以外の差もあることを考える必要があります。例えば、葉がたくさんあればそれだけ光合成は大きくなるでしょうけれども、違う種類だと葉の量をどのように合わせればよいのか、重さで揃えるのか、クロロフィル量で揃えるのか、という問題が生じます。ヤツデのように日向でも日陰でも生きられる植物を用いて、同じ種で、日向の植物と日陰の植物の差を見ると、そのような心配の必要は少なくなります。
陰生殖物と陽生殖物の光合成速度の差は、1)光のエネルギーを利用する光化学系の酵素群と、二酸化炭素の固定を行なう炭酸固定系の酵素群の量のバランス、2)光化学系の反応中心あたりの光合成色素量(アンテナの大きさ)、3)暗呼吸の速度、など様々な要因によって生じます。組織にも違いがありますが(「光合成」朝倉植物生理学講座3、朝倉書店、p.126にシロザとブナのそれぞれ陰葉と陽葉のきれいな写真がのっています)、これはむしろ上記の生化学的な状態を実現するためには、そのような組織の差が必要である、と解釈できます。
うまい材料があれば、薄層クロマトグラフィ−などと組み合わせると、陰葉と陽葉の差を見ることができるかも知れません。光を集めるアンテナの役割を果たす色素タンパク質複合体には、反応中心複合体に比べて、クロロフィルbが比較的多く含まれます。上に書きましたように、暗いところではアンテナを増やしますから、葉から色素を抽出するとクロロフィルbのクロロフィルaに対する比率は、陰葉で陽葉よりも上がるはずです。ただ、僕自身、やってみたわけではないのできれいに出るかどうかはわかりません。
Q:薄層クロマトグラフィーの実験でほうれん草の色素を分離同定したところ、灰色の色素がプレートに出てきました。これは、何が反応したのですか?勝手ですができるだけ早めにお願いします。(2004.6.24)
A:「反応」というのは、何のことでしょう?普通、クロマトグラフィーというのは単に色素が移動するだけなのですが?
光合成色素の中で一見灰色に見えるのはフェオフィチンぐらいでしょうか。ただ、フェオフィチンは含有量が少なく、あまりはっきりしないことの方が多いと思います。もっとも、クロロフィルが酸などで変性するとフェオフィチンになることはあります。
Q:理科のレポートで光合成を説明しなさいと言うのがでたのですがどうまとめたらいいのかわからないので教えてください!!レポートはかなり大事なそうなので教えて下さい♪♪お願いします(2004.6.24)
A:前にも同様の質問がありましたが、「光合成」という題の分厚い本が何冊も出ているぐらいで「説明しなさい」といっても何を説明すればよいのかわかりません。
おそらく先生がそのようなレポートの課題を出したのは、その前に授業かなにかで光合成のことを説明していて、その説明に基づいて自分で考え、わからない点をさらに調べてレポートを書きなさい、ということではないでしょうか?
まずは、先生のおっしゃったことに基づいて自分で考えてみることが大切だと思います。その結果、ある部分について、ここがわからない、ということがあったら、それを具体的に質問してくれれば僕にも答えることができます。
Q:今回学校で色素体について勉強して、光合成についても学び、なぜ物が白に見えるのか疑問に思いました。色素が全ての太陽光を吸収せず反射したからと学びました。が、その場合七つの光がまじって黒く見えるのではないでしょうか?あと、乱反射との関係も気になります。教えてください!(2004.6.18)
A:これは非常に重要な点です。実は、絵の具が混ざる時と、光が混ざる時ではまるで違うのです。赤い絵の具というのは、赤以外の光を吸収する絵の具です。つまり白い(全ての色を持つ)光を当てると、赤に近い光以外は吸収され、残った赤い光が反射されて人の目にはいるので赤く見えます。そこに別の色の絵の具を加えると、その絵の具は(赤い絵の具でなければ)赤い光も吸収するでしょうから、いろいろな色を混ぜれば混ぜるほど反射されてくる光は少なくなって、最後には目に入る光がなくなって、黒く見えるわけです。
一方で、赤い光というのは、そのまま目に入ったときに赤く見えます。そこにいろいろな色の光を足していくと、全ての色が目に入ります。このように全ての色の光が目にはいるときに、人の目には白く見えるのです。
絵の具は混ぜれば吸収によって光の量が減るのに対して、光は混ぜれば光の量が増えますよね。つまり、全く逆のことが起きるわけです。
あと、乱反射との関係というのは何を指しているのかよくわかりませんでした。
Q:白く見えるのと色素との関係、よくわかりました!次に疑問なのが、ガラスなどの無生物に色素は含まれているのかということです。乱反射によって白く見えるというのも習ったんですが、それならば光を全て反射する色素というのはあるのでしょうか?またきれいに反射した場合、白くはみえないのでしょうか?(2004.6.19)
A:色素というのは、色の付いている(=ある光を吸収する)ものをいうので、白い色素という言い方はしないと思います。ですから、透明だったり、白かったりしたら色素は含まれていないと言えるでしょう。
色素が含まれておらず、光を吸収しない場合には、3通りあります。第1は、ガラスのように全て透過してしまう場合。第2は、白い粉のように乱反射する場合。そして第3が、鏡のようにきれいに反射する場合です。
きれいに反射すれば、入った光がそのまま出てくることになりますから、まさに鏡になるということがわかりますよね?白く見える代わりにものの姿が映るわけです。
Q:なぜ植物は、1分子のクロロフィルで1分子のCO2を固定しないんですか?なぜ、2480ユニットのクロロフィルで固定するんですか?(2004.6.18)
A:まず、植物はクロロフィルで直接CO2を固定するわけではありません。高校の生物で習うように、クロロフィルは電子伝達によりATPを合成する反応に使われるだけです。二酸化炭素の固定は合成されたATPを使ってルビスコなどの酵素が行ないます。ですから、そもそも、クロロフィル何分子が二酸化炭素何分子を固定する、といった対応関係があるわけではありません。2480という数もどこから出てきのでしょうか?僕は少なくとも聞いたことがありません。
光によって電子伝達を駆動する光化学系には2つあり、光化学系Iと光化学系IIと呼ばれています。これらの光化学系は多くのサブユニットからなる大きなタンパク質複合体であり、複合体1つに多数のクロロフィルを結合しています。2つの光化学系はどちらもおよそ200程度のクロロフィルを結合していますので、その意味では、200程度のクロロフィルが集まって1つのユニットになっている、という言い方はできるかと思います。
Q:薄暗い講堂で水草の光合成を可視化する展示をしたいと考えています。光合成で二酸化炭素が減少し、水がアルカリ性になるのをpH指示薬色素を使って可視化します。さて、質問は、蛍光灯の光量と水草の量、及び水中での水草の密度の関係です。例えば17cmのオオカナダモ1本あたり何ルクスの蛍光灯光が適当でしょうか。もっと言えば、20W程度の直管蛍光灯1本で光合成速度を最も速くするには蛍光灯からの距離はどのくらいが適当でしょうか。直径2cm、長さ17cmのパイレックス試験管に5cmの水草(オオカナダモ?)と水を入れ、直射日光下で光合成させると20分で色の変化が検出できました。この色の変化は、pH7から8への変化に相当します。この実験を薄暗い室内で蛍光灯を用いて行うとなかなか色が変化しません。光量を増やすために光源に近づけると熱で水温が上昇して、水草が死ぬ恐れがあります。また、光量が強すぎても利用できないと聞いたことがあります。人工太陽灯(例えば商品名バイタライト)というものもあるそうですが、光量に不安があります。多分手ごろな光量とスペクトル、水草密度というものがあろうかと思いますので、もし実験的な経験をお持ちでしたらご教示願えると幸いです。(2004.6.17)
A:まず、光の強さについてですが、蛍光灯の光の強さは、太陽光に比べると格段に弱くなります。もし、直射日光で充分色の変化が検出できたのであれば、蛍光灯の光が強すぎる心配はほとんどありません。水温の上昇が起きない範囲内でできる限り水槽に近づけるのがよいかと思います。蛍光灯では弱い場合は、スライドプロジェクターなどが比較的強い光を出すと思います。スライドプロジェクターの場合は面積を絞ればかなりの強さになりますから、試験管などの小さな対象を照射するには使いやすいかと思います。スライドプロジェクターの光は指向性がありますから、少し距離を離してもそんなに急には光の強さが落ちません。ですから、試験管に直接あてずに、一度水の入った薄い水槽などを通すことによって熱線をカットすることが可能になります。スペクトルについては、これも気にする必要はありません。蛍光灯でもいろいろな色調のものが出ていますが、どれを使っても光合成の効率にはほとんど影響を与えません。その光で何週間も栽培・培養する、というような場合には、含まれる赤外線などの量によって形態が影響を受ける可能性がありますが、短時間の光合成には赤または青の光がある程度含まれていれば充分です。水草の量は、多すぎると相互被陰が問題になって一本の水草が受ける光の量が減ってしまいますが、一方で、水草に対して水の量が相対的に多いとpHの変化が見えづらくなります。一本の水草を使って、それがぎりぎりはいる細さの試験管で実験をするのが一番よいのではないかと思います。
Q:学校の実験でホタライトを使って、「生体内に働く酵素の特性を知る」というのをやりました。わからなくて困ってるのでもしお分かりになられたら教えて欲しいです。まず、ホタライトA・Bを混ぜたら発光しました。その後冷水につけると発光がなくなり透明っぽくなり、常温の水に戻すとまた少し発光し、温水につけると白濁しまた常温に戻すと濁ったような発光を見せたのでが・・これは酵素は生体内温度が酵素の適温?のためよく働くが冷水・温水につけると働きが失われたってことですか?あと、始めに発光した理由と常温に戻した時に酵素の働きに変化はあるのか、教えて下さい。あと、その後に再びホタライトBを入れると発光せず、Aを入れると再び発光しました。これはただ単純に始めと一緒の状態になったからと考えて良いのでしょうか?最後にこの液を半分ずつにしてそれぞれにNaOHとHCLを加えた所NAOHは蛍光黄緑になり濁りが消え、HCLは色がなくなり透明になりました。この理由を生体内の関わりを含めて教えて頂けないでしょうか?長くなってごめんなさい。よろしくお願いします!!(2004.6.15)
A:まず、確認ですが、酵素による発光と光合成は関係ないことはご存じですよね?
さて、ホタライトというのはおそらくハーゲンダッツというようなのと同じような商品名だと思います。ですから、ホタライトA/Bといわれても、実際にそれが何かは僕にはわからないのですが、名前からしてホタル+ライトでしょうから、ホタルのルシフェリンとルシフェラーゼの発光反応を見るキットなのでしょう。ルシフェラーゼは酵素の一種で、ATPと基質のルシフェリンがあると光を出します。ですから、当然酵素の温度依存性を示しますので、冷水・熱水では活性が落ちると思います。また、冷水によっては一時的に活性が落ちるだけですが、熱水の場合は熱失活を起こして落ちた活性の一部は元に戻らなくなるかも知れません。同様に、pHに関しても最適値があるでしょうから、NaOHを加えてアルカリ性にした場合や、HCLを加えて酸性にした場合は活性が落ちる可能性が考えられます。ただ、どのような場合に濁るか、色が変わるか、などは酵素によって違いますから一概には言えません。
基質は反応によって消費されるけれども、酵素は反応によって消費されないことは習いましたよね?だとすると、反応が停止してから、もう一度Bを入れても発光せず、Aを入れたら発光したことから、どちらが基質でどちらが酵素なのかがわかりますよね?
あとは、実験で反応がよく進んだ条件というのが、おそらくその反応が起こる生体内での条件に近い、という仮定のもとに考えてみればよいのではないでしょうか。
Q:教えてください。光合成色素の分離の実験で同じ展開溶媒を用いて濾紙(ペーパークロマトグラフィー)の上端まで展開した場合と濾紙の半分まで展開した場合の二つを比べて、各色素スポットのRf値は変化しますか?あと違う展開溶媒ごとで展開したとき、Rf値はそれぞれ違う値になるんですか?(2004.6.9)
A:まず、展開距離が違う場合ですが、距離が違っても「理想的には」同じRf値になります。ただ、展開槽の内部が充分に溶媒と平衡状態になっていないときなどは、展開中の溶媒の蒸発によって溶媒の組成が変化してRf値が変化してしまうかも知れません。展開溶媒が違う場合は、Rf値は異なる値となります。クロマトグラフィーは、そもそも溶媒に溶けやすい色素ほど移動距離が大きくなることを利用しているので、溶媒が違うと色素の溶けやすさも異なり、結果としてRf値も変化することになります。
Q:ペーパークロマトグラフィの実験で得られた光合成色素は暗いところでは発光現象が見られますがこれはどのような意味を持っているのですか?(2004.6.8)
A:「暗いところで」というのは、「完全に光が来ないところで」ということでしょうか?だとすると、可能性があるのは「リン光」といって、吸収した光によってエネルギーを持った状態(励起状態といいます)になった色素が、あてていた光がなくなったあとにそのエネルギーをゆっくり別の光として出す反応ですが、これは通常肉眼での観察は難しいように思います。一方で、ブラックライト(紫外線)をあてたりすると、目に見える光をあてていなくても、吸収した紫外線のエネルギーを可視光線として放出する「蛍光」という現象もあります。これだと、肉眼で充分見えますが、寿命が短いので、紫外線を切ると、すぐに見えなくなってしまいます。可視光をあてた場合にも蛍光が出ますが、その場合は、反射する光や散乱する光と区別がつきづらいので、見た目には「発光」という感じにはならないと思います。
Q:色素抽出液の吸収スペクトルを観察するときの対照実験はどのように設定すればいいのですか?(2004.6.8)
A:どのような実験かによるので、一概には言えません。薄層クロマトグラフィ−からシリカゲルを掻き取って抽出する場合であれば、色素のスポットがないところでも同じことをして吸収スペクトルを測る、などということが考えられます。
Q:花弁や秋の紅葉にもさまざまな色素が含まれているが光合成は起こらないのは何故ですか?(2004.6.8)
A:光合成のためにはエネルギーを吸収する色素だけではなく、そのエネルギーを化学的なエネルギーに変換するためのさまざまなタンパク質などが必要です。また、色素としても光合成に使われる色素はクロロフィルが中心です。必要なタンパク質がなかったり、クロロフィルがなかったりした場合は、光合成をすることができません。
Q:深い海では緑藻類は少なく紅藻類などが多くなるようですがこの理由を水深が10センチメートルを超えると太陽の透過性のある光が極端に弱くなる事実と光合成色素との関係で説明してください。(2004.6.8)
A:これはレポートの課題か何かでしょうか。質問自体に、かなり親切にヒントが書いてあるようですが、自分で考えてみましたか?
光合成色素として一番重要なのはクロロフィルです。そして緑藻類はクロロフィルを多く色素として持っていますが、紅藻類はクロロフィル以外に、クロロフィルが吸収しにくい緑色の光を吸収できるフィコビリンという色素を持っています。浅いところでは太陽の光が全て届きますから、素直にクロロフィルで光を吸収すればすみますが、深い海では、上の層の光合成生物によってクロロフィルが吸収できる光は吸収されてしまいます。とすると、深い海にまで到達する光で光合成をしようと思ったらどうしたらよいのか、わかりますよね?
Q:分光分析においての、吸光度と透過性の関係という質問があり、分からなかったので教えてください。(2004.6.5)
A:光合成とは直接関係ないようですが、光合成研究には必要な情報なのでまあ・・・。関係だけでよいのでしたら、「透過性が高いほど、吸光度は低くなる」が答えです。光は、試料を、透過するか、吸収されるか、散乱されるか、のいずれかになりますから。
Q:一般的に植物の生育に西日は悪影響を与えるといいますが、どのようなメカニズムでどのような影響が出るのでしょうか。なぜ西日が当たってはいけないのでしょうか。(2004.6.2)
A:全ての植物に西日が悪影響を与えるわけではなく、強光・高温・乾燥に弱い植物の場合だと思います。例えば畑のトウモロコシなどでしたら、西日も含めてなるべく日射時間が長い方が良いはずです。西日は真昼の太陽に比べると長く空気の層を通るためスペクトルの青の領域で若干光が弱くなり(若干赤みがかって見え)ますが、それほど大きな差ではありませんし、それをいうなら朝日もそうです。ですから光の質(スペクトル)が原因ではありえません。ある程度差があるのは西日が当たるときの温度でしょう。光は真昼に一番強くなりますが、温度は午後の方が高くなります。また、一般に午後の方が乾燥も進むことが多いでしょう。光も強すぎると植物に害を与えますが、別のストレス、例えば高温・乾燥などが加わると、さほど強くない光でも害を与えることが知られています。ですから、高温・乾燥状態に弱い植物では、そのようなストレスを受ける時間帯(=午後)に強い光が当たらない方が生育が良くなると思われます。ただ、真昼の直射日光より悪いのか、というとちょっと・・・
Q:カラーシートを用いた光合成実験を授業で行いました。そこで、青色のカラーシートを用いた場合、クロロフィルの活性から考えるとデンプンが多く合成されていることが期待されるのですが、実験ではあまり合成されていませんでした。なぜでしょうか?先生は「プランクの黒体輻射」を考えるとこうなると言っていたんですが、よくわかりません。詳しく教えてください。(2004.6.2)
A:「カラーシート」なるものを知らないのですが、フィルターのことでしょうか。また、「実験ではあまり合成されていませんでした」というのは、カラーシートを使わないときに比べて、ということでしょうね?一応、「光合成によるデンプンの蓄積を、太陽光そのままをあてた場合と、フィルターを用いて青い光だけを当てた場合とで比べたら、青い光をあてた場合はデンプンの蓄積が少なかった。クロロフィルは青い光を吸収するはずなのになぜ差が出たのか?」という質問だと解釈して以下にお答えします。
一番ありそうなこ答えは光の量です。クロロフィルは青い光を吸収しますが、赤い光も吸収します。太陽光そのままの場合は、青い光と赤い光の両方により光合成の反応が進むのに対して、青い光だけの時は赤い光の部分だけ損をすることになります。これが光合成が低い原因かも知れません。もし、量も同じにして比べたいのであれば、どの波長域も均等に強さを減らす灰色のフィルター(ニュートラル・デンシティー・フィルターといいます)を使って、青いフィルターの場合と光の強さを合わせる必要があります。
「プランクの黒体輻射」というのは先生の冗談の可能性はありませんか?黒体輻射というのは、あらゆる波長を吸収する黒い物体は、その物体の温度によって決まる波長の光を放射する、という現象です。太陽光のスペクトルは、約5,780
Kの温度の黒体輻射によってよく近似できます(ちなみに、これから太陽の表面温度は6,000
K程度であると推測できます)。6,000 K程度の輻射では600
nm程度に最大値が来て、青い領域(400-500 nm付近)では若干強度が落ちますが、これと、光合成の実験とは直接結びつかないように思います。
Q:先日、野ざらしの水槽の水のpHをはかってみると10を超えていました。5月上旬にしてはめずらしく気温が上がり、表面には大量の緑藻が増殖していました。水中に緑藻が発生した場合、水がアルカリ性になることがあるのでしょうか。光合成によって炭酸ガスを吸収するため、アルカリ性になることは予想できますが、光合成のメカニズムから考えて、それ以外に考えられる原因はありますか。一般に緑藻の作用でpHが10を超えるようなことはあるのでしょうか。何か、特徴的な種なのでしょうか。よろしくお願いします。(2004.5.28)
A:アルカリ化のメカニズムとしては二酸化炭素の吸収ということでよいように思います。一般的に、水の中の二酸化炭素/炭酸イオンは、空気中の二酸化炭素と平衡関係にあります。ですから、光合成で二酸化炭素が吸収されても、空気から二酸化炭素がとけ込むために大きな池などではpHの極端な変化は抑えられます。ただ、例えば小さな水槽では、特にあらかじめ重曹(炭酸水素ナトリウム)を溶かしておいてから藻類を速く生育させたような場合には、簡単にpHが10を超えてしまいます。どの程度のアルカリまで耐えられるかは藻類の種によって異なりますが、pHを変化させた藻類自体がその変化によって死滅する例もあります。もし、pH10を超える状態で、まだどんどん増殖しているとすると、そのような種は限られると思いますが、pHの変化自体は多くの種で起こりうると思います。
Q:はじめまして。学校のレポート作成のための資料を集めている最中にこのページを発見し、拝見させていただきました。さっそく質問なのですが、トウモロコシはなぜあんなに葉っぱが大きいのでしょうか。ハツカダイコンと比べると、トウモロコシの葉はだいぶ大きいですよね。できればC3、C4植物という概念と絡めてお答えいただきたいと思います。よろしくお願い致します。(2004.5.26)
A:まず、C3、C4植物という概念とは絡まないと思います。確かにトウモロコシはC4植物ですが、オヒシバ(手入れの行き届かないグラウンドなどによく生えています)もC4植物で、しかも葉は小さいですよね。別にC4植物だから葉が大きいということはありません。
また、単に葉の大きさだけを議論するにしても、朴葉味噌で有名な朴の木や、サトイモ、ハスなどの方がトウモロコシより葉が大きいですよね。植物の中で比較を行なう場合、特定の種を1つ取り上げて、別の種をまた1つ取り上げて、その間の違いを考えてもあまり意味のある議論はできないのです。植物は種によって千差万別なのですから。もし、葉の大きさに関してレポートを書きたいのであれば、葉の大きな植物の例をいくつか考えて、また葉の小さな植物の例をいくつか考えて、そのグループ同士で、共通点・相違点を考えてみると何か葉の大きさに関する「原理」がつかめるかも知れません。
Q:植物が光合成をする際に太陽の光が必要なのは知っているのですが、この光合成に必要な光というのはどの程度の強さが必要なのでしょうか?例えば、曇りの日などは直射光はありません。しかし、太陽の光は雲に乱反射して一部が地上に届いていますが、(確か天空日射といいましたか?)この天空日射程度の光でも植物は光合成を行えるのでしょうか?(2004.5.20)
A:一口に植物といっても、光を遮るもののない荒れ地にぽつんと生えているものから、深い森の中の下生えとして生えているものまで、その生育する光環境はさまざまです。ですから、植物によって、明るいところでないと生きていけないものもあれば、逆に直射日光が当たると生育が阻害されるものなど、さまざまです。さらに同種の植物でも、しばらく明るいところで生育させ続けると明るい光に順化するようになり、逆に暗いところで育てると、ある程度までは弱い光でも生きていけるようになります。
あと、「育つ」というのと「光合成ができる」というのは違います。もし、植物が弱い光でも光合成を行えるのか、というだけの質問でしたら、どの場合でも光合成は可能です。もちろん弱い光では少ししか光合成をしませんが、反応自体は起こります。ただ、長期的には、弱い光に適応した植物は、強すぎる光によって光合成が阻害されますし、逆に強い光に適応した植物はエネルギーの消費が大きいので、弱い光の下では収支がマイナスになって生きていけません。園芸植物では、セントポーリアなどは弱い光で育つので有名ですが、これなどは曇り空の光で充分生きていけます。イネなどは比較的強い光を好むので、ずっと曇りでは難しいでしょうね。太陽の直射日光の強さは1800-2000
μmol/m2/s 程度で、曇り空の時の光の強さは100 μmol/m2/s 程度ですが、イネなどは800 μmol/m2/s ぐらいの光が欲しいところです。普通の野菜、キュウリやトマトなどは200
μmol/m2/s ぐらいで充分育ちます。セントポーリアなら20
μmol/m2/s でも育つと思います。
Q:セントポーリアなら20 μmol/m2/s でも育つとご回答いただきましたが、これはあくまでも最低条件の話で、当然、セントポーリアも明るいところで生育させ続け、明るい光に順化させれば、明るい光が生育の障害になるようなことはない、 と考えてよろしいですか?
A:実は、これに関しても植物によりいろいろで、かなり広い範囲の光強度に適応できる万能型のものから、このぐらいの光でないと、といういわば専門化した植物まであります。セントポーリアの場合、強光には弱く、徐々にならしていっても直射日光が当たるような環境ではあまりよく育ちません。どちらかというと専門化した方だと思います。
Q:へキサンとアセトンを7:3で展開した時のクロロフィルa、bとキサントフィルとカロテンのRf値を教えてください。お願いします。(2004.5.20)
A:展開溶媒に使う有機溶媒には数種類あり、さらにそれらを混合して使うことが多いので、それらの全ての組み合わせでのRf値の情報は、僕も持っていません。手元の試料を調べてみたのですが、ヘキサンとアセトンを7:3という場合のデータはありませんでした。役に立つかどうかはわかりませんが、以下にさまざまな有機溶媒でのRf値の予想される範囲を書いておきます。
カロテン:0.9−1.0、キサントフィル:0.6−0.9、クロロフィルa:0.4−0.6、クロロフィルb:0.2−0.5
Q:カルビンベンソン回路のように回路状になっている反応系についてですが、回路状にする利点を詳しく教えてください。(2004.5.19)
A:生体内ではカルビン・ペンソン回路、クエン酸回路、脂肪酸酸化回路などいくつかの回路状の代謝経路が存在しますが、これらは共通して、非常に単純な物質(A)を、より複雑な物質(B)にくっつけて、ある程度複雑な物質(C)を作り、その物質(C)を複数のステップからなる反応系を使って物質(B)に戻すことによって回路を形成しています。この際に物質(B)は物質(C)を経てもとの物質(B)に戻り、物質(A)は代謝されて回路から消えます。カルビン・ペンソン回路では物質(A)は二酸化炭素で、回路上の物質に取り込まれますし、クエン酸回路では物質(A)はアセチルCoAで、回路が回ると二酸化炭素と水に分解されてしまいます。
クエン酸回路を例に取ると、要はアセチルCoAを酸化して二酸化炭素と水にする際にATP(やNADH)などの形でエネルギーを取り出すわけですが、アセチルCoAは(炭素数の少ない)単純な化合物なので、直接酸化しようとすると限られた数の反応ステップによらざるを得ず、その際に得られるATPなどのエネルギー分子の数を多くできません。そこで、炭素数の多い物質に一度くっつけて、分子を複雑にして多くの反応ステップを取るようにして、そのステップごとにATPなどのエネルギー分子を合成するようにしているわけです。ただし、そのままでは最初の炭素数の多い物質が枯渇してしまいますから、反応を回路状にすることにより最初の物質を再生して、反応が継続するようにします。また、このように、物質を少しずつ変化させることにより、1つの反応の進行に必要な活性化エネルギーを小さくすることができます。単一のステップで酸化しようとすると、燃焼の場合のように活性化エネルギーを供給するために高温が必要ですが、多くの反応に分ければ、活性化エネルギーが小さくなり、酵素の助けもあって細胞の中の温度でも反応が進行します。もちろん、細かく分けてエネルギーを取り出しATPの形にする必要がなければ、このような複雑なシステムは不必要で、単純に、「燃やす」場合などは単一の反応で酸化が進行し、エネルギーは熱として放出されます。
カルビン・ペンソン回路のばあいは、逆にエネルギーを使って二酸化炭素を有機物に変えるわけですが、その際に必要なエネルギーはATP一分子では足りず、ATPをエネルギー源とする場合、やはり数多くの反応ステップが必要となります。このために、クエン酸回路の場合と同様に一度分子を複雑にして反応の多様性を確保するわけです。考え方としては、二酸化炭素にATPを数分子一度に反応させる、という方法もありそうですが、そうすると、その反応には多くのATP分子が同時に関与することが必要となり、ATPの濃度がよほど高くないと反応が進まなくなってしまいます。
Q:薄層クロマトグラフィーによるほうれん草の色素分析を行いました。けれども、結果では予想と違い、ルティンの黄色が見られませんでした。この原因は何と考えられるでしょうか?(2004.5.15)
A:「実験結果が予想と違った理由」というのは、山ほど考えられるので一概に言えませんが、薄層クロマトグラフィーの場合、
1)色素の抽出がうまくいっていない
2)色素が分解してしまった
3)シリカゲルにつけた色素量が少ない
4)シリカゲルにつける際にスポットが大きくなってしまった
5)展開する際に溶媒の違いなどによって予想される位置と異なる位置にスポットが出てしまった
などが考えられるでしょうか。この中で、もしクロロフィルなど他の色素は正常に検出できているとすれば、1,2の可能性は少ないでしょう。
クロロフィルに比べてカロチノイドはスポットがやや見づらいので、シャープなスポットにならないとよくわからないことがあります。
ですから、そもそも色素量が少ない場合はもちろん、シリカゲルに急いでつけたため最初のスポットが大きくなってしまったような場合、
ぼやけてしまって最終的なスポットが見えなくなる可能性はあります。最後の5については「TLCのRf値が文献値と合わない」をご覧下さい。
Q:資料集にのっていた紅藻の光合成の作用スペクトルと吸収スペクトルのグラフについて、生徒から質問を受けましたので、ご教授願いたくmailいたしました。アオサでは、両スペクトルがほぼ平行していて、緑や黄色の部分でグラフが下がっていました。アサクサノリでは、吸収スペクトルが緑や黄色を含めて、紫から赤のほぼ全領域で高い値でしたが、作用スペクトルでは、クロロフィルaの吸収極大のある青と赤の部分の値が極端に低くなっています。縦軸は、それぞれの値の相対値としか表示されていないため、実験値についての詳しいことはわかりません。
以上の結果を単純に解釈すれば、アサクサノリの場合、フィコシアニンやフィコエリトリンの吸収極大のある緑や黄色の光は有効に利用されるが、クロロフィルaだけが吸収する波長では十分な光合成ができないと言うことになります。一般的なアンテナ色素の働きが、吸収した光エネルギーをクロロフィルaに渡すことであるとするならば、アオサのように両スペクトルが平行しているべきです。
アサクサノリのこのようなスペクトルの原因について、情報をお持ちでしたらば是非お教えください。お忙しいとは存じますが、是非よろしくお願いいたします。(2004.5.13)
A:フィコビリンは、光合成色素としては極めて量が多いのですが、主に光化学系IIに結合していて、光化学系IIにエネルギーを渡すと共に、一部のエネルギーは系Iにも渡します。一方、フィコビリン型のアンテナを持つ生物は一般に、系IIの量が、系Iの量に比べて非常に少なく、場合によっては1/10程度であることが知られています。
フィコビリンに光をあてた場合は、量の少ない系IIに主にエネルギーがわたって、量の多い系Iに残りのエネルギーがわたるので、バランスよく光合成が進行しますが、クロロフィルに直接光を当てた場合は、系Iは動きますが、系IIは量が少ないため、全体としての電子伝達は系IIで律速されて、収率が落ちてしまいます。これがクロロフィル領域で作用スペクトルが低下する主な原因なようです。高等植物で2つの光化学系があることの発見のきっかけとなったred
dropでは、700 nm以上の系Iは吸収できるが系IIが吸収できない光の領域で光合成の収率が落ちるのですが、これと同じような現象が起こっているようです。
Q:はじめまして。現在『なぜ陸上植物のほとんどが緑色の葉をしているのか』について調べています。進化の過程からすると陸上植物は緑藻類から派生して出てきたので緑色が多いという答え方もできるのですが、ほかに光合成色素の能力の違いによる理由も探しています。光合成色素が違えば吸収できる波長も違うというのはわかるのですが、光合成色素の光合成能力の違い(例えばこの色素は光を吸収する能率がこっちの色素よりも劣っているとか、そのようなこと)はあるのでしょうか?よろしくお願いします。(2004.5.13)
A:光合成色素には大きく分けてクロロフィル、カロチノイド、フィコビリンの3種類があります。この中で、クロロフィルは直接光化学反応を担いますが、カロチノイド、フィコビリンに吸収された光は、クロロフィルに渡されて初めて光合成に利用されます。従って、「能率」という点からすると、どうしてもクロロフィルが一番よいことになります。ただ、水の中では(特に上に植物プランクトンがいたりすると)赤や青の光が吸収されて減りますから、クロロフィルでは有効に光を吸収することができません。そのような特定の光環境のもとでは、(緑色の光も吸収できる)フィコビリンを持っていた方が能率が上がるわけです。つまり結論としては、周囲の光の波長特性(スペクトル)によって、能率は変化する、ということになります。
これとは別に、色素一分子あたりの吸収の大きさ、という観点から能率を議論することも可能ですが、光合成色素は常にタンパク質と結合した状態で働くことを考えに入れなくてはなりません。ですから、色素タンパク質複合体全体の量と吸収の大きさの比が問題になるわけですが、これは同じクロロフィルでも色素タンパク質複合体の種類が違うと異なりますので、一概には言えません。
Q:今日、ユレモの一種を使ってプロダクトメーターを用いた光合成の測定の実験を行ったのですが、予備振とうする理由はそれまでにたまっていたATPやNADPHを消費させるためという説明を受けました。何故、振とうさせるとATPやNADPHを消費するのですか?それと、実験中に酸素放出量が減ってきたのでユレモとNaHCO3の水溶液を変えたのですが、そのあとも同じような結果になりました。これはどうしてだと思いますか?また、他の班の実験結果と比較できるようにするにはどうすればいいのでしょうか?(2004.5.12)
A:実験条件が詳しくわからないので答えづらいのですが、予備振盪はおそらく暗所でやるのですよね?この場合、暗所で光合成を止めておいて、通常の生体内の代謝反応でエネルギーが使われるのを待つわけですが、振盪していない場合、代謝反応の速度が低下してしまうので、それを避けるためではないかと思います。休眠というほどではありませんが、細胞が一カ所に集まってしまったときなど、細胞内の代謝反応が活発でなくなる例は良くあります。
酸素放出量が減ったときに材料を新しくしても活性が戻らなかった、という点については、細かい実験条件がわからないと何とも言えませんね。プロダクトメーターは必ずしも感度の良い検出方法でもありませんし。
「他の斑の実験結果と比較できるようにするには」というのは、「酸素放出量が徐々に減るのを補正するには」という意味でしょうか。それならば、もし、いわゆる対照実験をその時々にしてあれば、その対照実験の数値に対する相対値で表せば良いのではないでしょうか。
Q:先日、高校の科学の授業でペーパークロマトグラフィーの実験をしました。色は緑、青、赤、黄とわかれました。この実験でこのように色素が分かれるのはどうしてですか?勝手ですがなるべく早めの返事を待っています。(2004.5.4)
A:「どうして」というのは、色素が分離する原理を聞いているのでしょうか?基本的には薄層クロマトグラフィ−と同じ原理なので、そちらのFAQを見て頂けるとわかるかと思いますが、一応こちらにも載せておきます。ペーパークロマトグラフィ−の場合、濾紙にスポットされた光合成色素は、濾紙の繊維にくっついたり、離れたりしながら動いていきます。ですから、強くくっつく場合は遅くなり、弱くくっつく場合は速く移動します。洗濯物の繊維にくっついた汚れを洗濯機で落とす場合を考えてください。水で洗ってもなかなか落ちない汚れも、汚れを溶かす洗剤の溶液を使うと落ちます。同じように、色素をより溶かす溶媒を使うと、繊維とのくっつき方が弱くなって速く動きます。光合成色素は、ものによって水に溶けやすさ(極性といいます)が異なり、水に溶けにくい溶媒(つまり極性の小さな溶媒)を使うと、水に溶けにくい色素ほど繊維とのくっつき方が弱くなって速く動きます。それで、違う色素を分離することができるのです。具体的な色素の溶出の順番は、こちらのFAQをご覧下さい。
Q:はじめまして、こんにちは。光合成を行っているのか、知りたいんですけど、どうすれば光合成が行われているのが分かるのですか?高校生でも簡単にできる方法があれば教えて下さい。ないようでしたら、光合成を行っているのを確かめる器具などあるのでしたら教えて下さい。お願いします。(2004.4.22)
A:光合成という反応は、原料が二酸化炭素と水で、できてくるものが炭水化物(デンプン、砂糖)と酸素です。ですから、原理的には二酸化炭素や水が減る速度を測るか、デンプンや酸素が増える速度を測るかになります。このうち、水は細胞内にたくさんあるので、その増減を測るのは難しいのですが、その他の3つは、光合成を測る方法として使われます。デンプンは、小学校でもやるヨウ素デンプン反応を使えば葉でデンプンができることを確かめることができます。水草を使えば、できた酸素を気泡として確認することができます。この場合は、二酸化炭素が減っているはずですが、水は二酸化炭素を溶かすので光合成には水に溶けた二酸化炭素(炭酸イオン)が使われ、気体としての二酸化炭素の出入りは目に見えません。最後に二酸化炭素の減少を測る方法は、案外難しく、通常専門の機械がないと難しいでしょう。ですから、高校レベル以下では、ヨウ素デンプン反応と水草の気泡の観察が光合成の実験でよく使われます。高校レベルまでとなるとそれ以上はなかなか難しいかと思います。
もっと原始的な方法として、空気中の二酸化炭素が固定された結果、葉の重さが増えるのを測る、という方法も過去に使われました。しかし、これは、転流(物質が葉などの器官から別の器官へ輸送されること)を止めなくてはいけないことと、測定する重さの変化が小さいことなどから、正確な測定が難しく、現在は使われていません。最近では、この他に、クロロフィルの蛍光を使って光合成を測ることが盛んに行なわれますが、これには特殊な装置が必要です。クロロフィル蛍光を使った測定については、2002年の公開実験のページや2003年の公開実験のページをご覧下さい。
Q:サイトを見せて頂いていたのですが、C3やC4はなんと読むのでしょうか?また、C3やC4、カム植物は全く別物なのでしょうか?(2004.4.8)
A:C3やC4はそれぞれ「しーさん」「しーよん」と読んでいます。また、C3、C4それにCAM植物はそれぞれ別種となります。二酸化炭素を有機物に変える方法がそれぞれ少しずつ違います。ただし、数は少ないのですが、同じ植物が環境条件によってある時はC3、ある時はC4に変化するような植物もあります。
Q:こんにちは、植物の勉強をしている大学院生です。光合成質問箱を拝見させていただきました。光合成について質問がありましてメールを送らせていただきました。
現在植物に532nmの波長のYAGレーザーをあてて、その反射光をCCDでとり、解析により植物の生長(秒単位の生長、細胞伸長です)の成長を測っています。そこで質問ですが、実験室内でキセノンランプをもちいて太陽光と類似した光を植物に当てて生長を測ろうと思っています。そのときのキセノンランプの532nm付近の波長がレーザー波長とかぶり邪魔になるためフィルターをもちいて560nm以下の波長をカットしなければなりません(赤色光付近の光を通します)。植物の生長には赤色光が有効に働き、青色光は形態形成には作用すると思いますが、生長には作用しないのでしょうか。生長に使われる青色光、赤色光の割合とかわかるのでしょうか。もし青色光が生長にも使われるのであれば、赤色光のみ通すフィルターではなく青色光と赤色光をとおすフィルターを作ろうと思っています。(2004.4.8)
A:光合成だけなら、赤色光だけでも充分に行えます。ただし、例えば、気孔の開閉や細胞内の葉緑体の移動などは、青色光のシグナルによって起こることが知られており、これらが間接的に生育に影響を与える可能性はかなりあるのではないかと思います。目的にもよるかとは思いますが、短時間の細胞伸長などは、光合成の直接の影響はむしろ二次的かと思いますので、青い部分も通すフィルターを使った方が安全かと思います。
Q:趣味で水草育成を楽しんでいます。水槽内での水草の育成における光量と葉の色の関係について質問があります。水草を光量の過剰な状態で育成した場合、水面から25cmくらいでの成長時は完全に緑色だった葉の色が水面付近(5cmほど)の場合には赤みが強くなる。時には完全に紅い色と言っても良いぐらいになる事があるのですが、これはどういった現象なのでしょうか?気中での育成時より水中での育成時の方が明確に発生するようなのも、どうしてなのか判りません。以上よろしくお願いします。(2004.3.29)
A:おそらく水草といっても様々なものがあり、種類によって、また条件によっていろいろなことが起こると思いますが、一般的に考えられることでお答えいたします。光は、植物にとってなくてはならないものですが、一方で過剰な場合はストレスになります。光はエネルギーの一種ですから、必要よりも多く入ってくるとそのエネルギーでいろいろな成分が壊れる場合があるのです。水というのは、案外光を吸収しますから、深いときにはそれほどでもない強さの光でも水面近くなると強すぎる光になるのかも知れません。
光が強すぎる場合の応答として、一つ考えられるのは、光合成の主要な色素である葉緑素(クロロフィル)を減らす、ということです。光が吸収されなければ問題ないわけですから、光が強すぎるときには光を吸収するクロロフィルを減らせばよいわけです。もう一つの手段は、いわばサングラスをかけるように、光を吸収し、かつ、そのエネルギーを無害な熱に変えるような色素を作ることです。一部の植物はストレスを受けるとアントシアンという赤色の色素をためることが知られていますが、このアントシアンの合成などが、「サングラスをかける」ということに相当するのだと思います。つまり、強い光のさらされると、緑色のクロロフィルを減らして、赤色のアントシアンを増やすことは理に適っているので、水草はそのような応答で、赤くなっているのではないでしょうか。
ただ、それでは、気中で育成したときに現象がより明確になる理由はわかりませんね。水中と気中では二酸化炭素の取り込みなど、様々な点で異なりますから、そのようなことが影響しているのかも知れませんが、僕にはよくわかりません。
Q:光エネルギーからのATP生産についてですが、植物はATPを生産していて炭酸固定以外の活動にも使っているのであれば、昼間、呼吸によるATP生産も同時に行っているのはなぜなのでしょうか? 光エネルギーから生産したATPの余剰分が光呼吸で消費されてしまって、あまり有効利用できないということなのでしょうか?(2004.3.20)
A:植物のATP生産は光合成によって葉緑体で行なわれますが、ATPの形で葉緑体から細胞質に行くのはメインのルートではなく、エネルギーは炭素3つの物質の形で細胞質に運び出されます。従って、細胞質でATPを必要とする場合には、その物質を糖に変え、解糖系を経てミトコンドリアでATPに変換することになります。ミトコンドリアは葉緑体と違って、ATPをそのままの形で細胞質に輸送するシステムが発達しているので、細胞質やその他のオルガネラでATPを使うことができるようになります。つまり、葉緑体の内部では、必要なATPを直接合成できるけれどもそれ以外の細胞質やオルガネラでは、ミトコンドリアがないとATPを得ることが困難なので、ミトコンドリアが必要なのです。
Q:20年以上も前に植物生理学を学んだきりなので、申し訳ありませんが初歩的な問題についてお教えください。
1、光合成の反応では光エネルギーからまずATPが生産されますが、このATPは炭酸同化以外の植物の活動(たとえば能動輸送など)に使われることもあるのですか?
2、光呼吸について
ある新書を読んでいたら、光呼吸について次のように説明されていました。
「C3植物は昼間の太陽光の約3分の1しか光合成に使いこなせないため(二酸化炭素不足による)、エネルギーは消費されずに体にたまる。たまったエネルギーは活性酸素をつくりだす。しかし植物は物質を分解して、たまるエネルギーを消費し、二酸化炭素を発生させて、不足する二酸化炭素を補おうとしている。これが光呼吸である」
「活性酸素」と「物質を分解してエネルギーを消費し」の関係がよくわからないのですが、お教えください。光呼吸の基本的なこともお教えいただけるとありがたいです。(2003.3.20)
A:最初のご質問ですが、光合成で作られるATPは特に炭酸同化だけに使われるわけではありません。細胞内(もしくは葉緑体内)のATPは、特に使われる用途が決まっているわけではありません。場合に応じて何にでも使われます。ただ、植物の場合、炭酸固定に使われる割合が高いのは確かです。
もう1つのご質問ですが、その新書の中のご指摘の表現は、あまり正確ではありません。植物は、電子伝達反応でATPと還元力を作り、それらを用いて炭酸固定系で二酸化炭素を固定します。「エネルギーがたまる」というのは、実際には、還元力がたまる、というべきでしょう。還元力がたまった状態では、酸素も還元されてスーパーオキサイドという活性酸素の一種が生成します。スーパーオキサイドはさらに過酸化水素などの他の活性酸素に変化して植物に害を与えるので、これを回避する仕組みが必要です。そのためには、還元力を他の反応に使えばよいことになります。
通常の光合成では、ルビスコという酵素が、炭素5個からなる物質に二酸化炭素(炭素1個)をくっつけて炭素3個からなる物質を2分子作ります(炭酸固定)。ところが、二酸化炭素が足りないような条件では、同じルビスコが炭素5個からなる物質に酸素をくっつける反応を行ない、その結果出来た物質が還元力とエネルギーを使いながら様々な反応を経て二酸化炭素と炭素3個からなる物質を作ります。この一連の反応が光呼吸です。従って、光呼吸では、「無駄に」還元力とATPが使われ、しかも炭酸固定とは逆に有機物の一部が二酸化炭素に分解されてしまうことになります。しかし、光が過剰な(もしくは二酸化炭素が足りない)条件では、還元力を使い、かつ二酸化炭素を作る反応は、還元力の過剰による活性酸素の生成を抑えるのに働くのではないかと考えられています。
Q:光合成によってでんぷんはつくられるのかの実験で、なぜ、葉をお湯につけるのかというもんだいで、葉の呼吸を止め、葉緑素を出しやすくするためと書いたら、×を付けられました。でも、私はどこが間違っているのか分かりません。(←つまり、自分ではあっていると思う)それに、これに関してのHPには載っていませんでした。
できればHP付きで解説して欲しいです。(2004.3.16)
A:どのような基準で採点するかは人によると思うのですが、「葉の呼吸を止め」と書いたので×がついたのではないでしょうか。「葉緑素を出しやすくするため」という方は合っていると思います。葉をお湯につけたあとは、アルコールで葉緑素を抜いたのでしょうね。そうであれば、アルコールにつけてしまえば、どちらにせよ呼吸は止まってしまいますから、それだけでしたらお湯につける必要はありません。ただ、葉が生のままだとアルコールにつけてもなかなか葉緑素がきれいに抜けてくれません。そこで、お湯につけて葉の構造を少し壊しておいて葉緑素を抜けやすくするのです。別の方法として、アルコールで葉緑素を抜く際に、アルコール自体を暖める方法もあるようです。
Q:初めまして、お忙しい中恐れ入ります。光合成によって作られ、葉に蓄えられた炭水化物(デンプンであることが多いということですが)から、植物は糖だけでなくタンパク質や脂肪も作っていると聞いたのですが、それは植物のいったいどの器官で行われ、どこに貯蔵されているのでしょうか。また、デンプンを必要に応じて糖に分解するというのは、やはり葉緑体が行っていることなのでしょうか。大変初歩的な質問ですが、どうぞよろしくお願い致します。(2004.3.10)
A:まず、貯蔵場所ですが、炭水化物はデンプンの形で葉緑体などに、タンパク質は貯蔵の目的に特化した液胞の一種に、脂質はオイルボディーという細胞内小器官に貯蔵されます。ただし、植物が順調に生育している場合は、タンパク質や脂質が機能しない状態で多量に蓄積することはありません。タンパク質や脂質の蓄積が一番見られるのは種子の場合です。植物は、葉以外の場所の細胞にも葉緑体に相当する細胞内小器官を持っており、色素体と総称されます。デンプンの蓄積は植物が順調に生育しているときにも見られ、葉緑体にデンプンが存在するほか、根には、デンプンの蓄積に特化した色素体が存在します。
デンプンは分子が大きいので、色素体を包んでいる膜を通り抜けることができません。従って、分解も色素体の中で起こり、分解されてできた炭素原子を3つ含む炭水化物の形で色素体から細胞質に出て必要な場所に輸送されます。
タンパク質の合成は、細胞質でも起こりますし、葉緑体やミトコンドリアでは独自の遺伝子を持っていてやはりタンパク質の合成を行なっています。脂質は脂肪酸とグリセロールを材料として合成されますが、脂肪酸の合成と一部の脂質の合成が色素体で行なわれ、残りの脂質の合成は小胞体で行なわれます。
葉緑体は、光合成以外にも脂質の合成や窒素の代謝に重要な働きをしていますが、葉緑体が存在しない葉以外の細胞にも、何らかの色素体は存在するので、冬に葉を落とした植物が生育できなくなるということはありません。
(この項は当初3月10日に書いたものを3月13日に改訂しました)
Q:はじめまして、先生のサイトを興味深くよませていただきました。素人の単純な質問で恐縮なんですが、人工光合成の研究つまり、人工的な装置を使って、実際に糖類、でんぷん等を合成することは、本当にできるのでしょうか、その研究はどこまで進んでいるのでしょうか。また、障害があるとすれば、今の時点でなんでしょうか。よろしくご教授お願いします。(2004.3.10)
A:現在までの所、人工光合成で糖やデンプンの合成まで行なった例はないと思います。ただ、水の分解と酸素の発生、エネルギーの取り出しを行なった例はあります。もう30年ぐらい前に、東大の工学部の本田先生、藤島先生が、酸化チタンと白金の電極を水の中に入れて酸化チタン電極に光を当てると、酸素が発生して電極間に電圧を発生することを見つけました。これを本田・藤島効果といっています。残念ながら、効率が極めて悪く、エネルギー源としては実用化されませんでしたが、酸化チタン電極で酸素が発生する際に、汚れの分解や殺菌効果が見られることがわかり、現在、「光触媒効果」と銘打って掃除機やエアコン、冷蔵庫などに広く用いられています。
人工光合成の研究は、その後も続けられていますが、光エネルギーを電気化学的なエネルギーに変換する効率を上げる研究が主で、残念ながら糖類やデンプンの合成までは行き着いていないようです。
Q:ペーパークロマトグラフィについて教えてほしいです。(2004.2.8)
A:過去の質問箱の内容は目を通して頂けましたか?一昨日の質問に対しても書きましたように、漠然と「教えてください」と言われても、何を説明してよいのかよくわかりません。ペーパークロマトグラフィーの何がわからないのでしょうか?そこを質問して頂けると、すぐにお答えできると思います。一昨日の質問への答えに書いてありますように原理的には薄層クロマトグラフィーと同じなので、原理などについては過去の質問箱を見て頂けるとわかると思います。
Q:はじめまして。C4植物における光合成では、葉肉細胞で二酸化炭素を一度C4回路によって固定した後、さらに維管束鞘細胞のカルビン・ベンソン回路で固定してグルコースを合成していますが、私には、この過程がただ二酸化炭素のバトンリレーをしているだけに思えて、なぜ「濃縮」ということになるのか理解できません。多くの葉肉細胞で取り込んだ二酸化炭素が1つの維管束鞘細胞に集められてくるために、維管束鞘細胞中での二酸化炭素濃度が高くなるということなのでしょうか?それなら、1カ所に集めないで各々の葉肉細胞でグルコース合成をしてもよいような気がしますが…。それとも、ルビスコという酵素の活性を上げるために、酸素を発生する明反応と炭素を固定する暗反応を別々の場所で行わせるというメリットがあるのでしょうか?どうか、ご教授願います。(2004.2.6)
A:葉肉細胞の数が多くて、維管束鞘細胞の数が少ないので、二酸化炭素が濃縮される、というわけではないのです。ある物質を濃縮するためには、2つの空間的に隔てられた場所とその間をつなぐ能動輸送系が必要になります。例えば、ある種の藻類では、細胞の外と内とを2つの空間としてあいだ(細胞膜)にCO2や炭酸イオンの輸送系を持つことにより二酸化炭素濃縮系を構成しています。C4植物の場合は、輸送する物質が、二酸化炭素ではなく、細胞内で作られるリンゴ酸などです。従って、リンゴ酸の濃縮系を作ろうと思ったら、単独の細胞ではできず、ある細胞と、別の細胞をリンゴ酸のトランスポーターで結ぶ必要があります。これが、葉肉細胞と維管束鞘細胞なわけです。つまりリンゴ酸合成の場である葉肉細胞の隣に、リンゴ酸の倉庫(維管束鞘細胞)を造ってそこへ一所懸命リンゴ酸を積み込む、というイメージです。この場合の維管束鞘細胞のように別の空間がないと、、そもそも物質を濃縮することができません。
Q:早速のレス、誠にありがとうございます。葉肉細胞から維管束鞘細胞へリンゴ酸を運び込むという過程はイメージできました。
…ということは、外部からのCO2の取り込みはカルビン・ベンソン回路で行う(PGAを作る)よりもC4回路で行う(リンゴ酸を作る)方が効率が良い(単位時間あたりの取り込み量が多い)ので「CO2が濃縮された」ということになるのでしょうか?また、C3植物が「CO2の取り込み」と「グルコースの合成」を同一細胞内で行っているのに対し、C4植物は「CO2の取り込み」を葉肉細胞で効率よく行い、「グルコースの合成」を維管束鞘細胞で行うという分業化を図ることで光合成速度を高めている、と解釈してよろしいのでしょうか?(2004.2.6)
A:PGAを作るルビスコより、リンゴ酸を作るPEPカルボキシラーゼ方が、オキシゲナーゼ活性による光呼吸反応がない分、二酸化炭素取り込みの効率がよいのは確かですが、それだけでは「濃縮」にはつながらないと思います。単純に物理的に考えても、エネルギーの投入なしに、ものが自然と濃縮されるはずはありません。C4回路を見てみると、維管束鞘細胞から戻ってきたC3化合物(ピルビン酸)を最初に二酸化炭素と反応するPEPに戻す反応は、ピルビン酸・リン酸ジキナーゼ(PPDK)によって触媒されますが、この反応はATP2分子の分解を伴います。リンゴ酸の輸送自体は受動輸送のようですが、PPDKの段階でエネルギーを使ってピルビン酸をどんどんPEPに変換すれば、全体の反応としては、リンゴ酸が維管束鞘細胞に送られてそこで二酸化炭素が発生するほうに反応が進みます。この結果、C4植物の維管束鞘細胞の二酸化炭素濃度はC3植物の葉肉細胞の二酸化炭素濃度の100倍に達すると言われています。細胞内の二酸化炭素濃度が高ければ、ルビスコでもオキシゲナーゼ活性が抑えられますから、C4植物ではカルビン・ベンソン回路を使いながら光呼吸はほとんどなく、(二酸化炭素に関して)効率のよい光合成を行えます。一方、C4植物は、上記のように二酸化炭素の濃縮のためにATPを使いますから、エネルギーに関しての効率は、C3植物より低くなります。従って、エネルギーが少ない条件(つまり光が弱い条件)では、C3植物の方が有利になります。
Q:高校の授業でレポートを書くことになって、困ってるんです。その授業の内容が「光合成の同化色素を同定する」なんです。なので、ペーパークロマトグラフィと光合成のことを簡単に説明してください(教えてください)。あと、できれば、Rf値や分子量の関係などこの実験に関わることを教えていただければ幸いです。なるべく早めにお返事ください。(2004.2.6)
A:レポート大変そうですね。ただ、いくら光合成質問箱とはいえ、「光合成のことを簡単に説明してください」と言われても、漠然としすぎていて、何を答えたらよいのかわかりません。ご存じのように、光合成の初心者向けの入門書でも分厚い本になります。ペーパークロマトグラフィーについても同様です。どの部分がわからないのかを明確にしてください。
過去の光合成質問箱で、薄層クロマトグラフィー(TLC)に関していくつか質問がありますよね。薄層クロマトグラフィーとペーパークロマトグラフィーは原理的には同じものです。ペーパークロマトグラフィーでは、薄層クロマトグラフィーのシリカゲルの役割を、紙の繊維が果たします。ですから、過去の関連質問を読めば参考になるのではないでしょうか。そして、そのなかでわからなかった部分を再度質問してくれると問題点が明確になると思いす。
Q:初めまして,早速ですが質問させていただきます.モモに関する実験を行っているのですが,栽培方法(具体的には剪定の量や施肥量)を異にし,樹勢を強制的に差別化した結果,葉色値や葉のクロロフィル含量は大きく異なりました.しかし,光合成速度,気孔コンダクタンスや蒸散速度には全くといっていいほど差が見られませんでした.モモの場合一定の葉色値(クロロフィル含量)以上であれば,光合成速度等は頭打ちになりあまり差が見られないということはわかっているのですが,その一定値におよそ達しっていないものでも同様の数値を示すという結果となりました.栽培環境等により,植物の温度や光の感受性が変化し,その結果,光合成等に影響をもたらすということは考えられますか?そうであれば具体的な影響とはどのようなものかを教えてください.または参考になる本,論文,ホームページ等を教えていただきたいです.不躾な質問ですいません.(2004.2.4)
A:まず、栽培環境の影響ですが、環境が、植物の温度や光の感受性に影響を与える例はよく知られています。一般的によく知られているのは、順化応答で、強い光の下で育てると強光耐性が増し、低い温度で育てると低温感受性が増します。また、一般にあるストレス条件下で育てた植物は、別のストレスに対しても耐性を増すことがよくあります。また、ストレスがかかった植物では、一般に気孔の開き方が悪くなり、結果として低い光合成活性しか得られない、という例もあります。環境と光合成については、東北大学の彦坂先生のホームページが参考になるかと思います。
光合成速度に差が見られない原因は、光合成の測定方法と、得られた値がわからないと判断が難しいかと思います。極端な話、よく光合成の指標として用いられるFv/Fmという蛍光パラメータは、「活性」でなく、「収率」なので、クロロフィル量が多少変化してもパラメータにはほとんど影響がありません。二酸化炭素の吸収で見ている場合は、どの程度の気孔コンダクタンスが得られているか、という点も重要かと思います。どの葉も気孔が閉じていた、というような条件では、光合成活性が同じような値になる可能性はあります。
Q:植物の低温障害が起きる仕組みを光合成の明反応と暗反応の温度反応から説明していただけませんでしょうか?(2004.2.2)
A:「明反応と暗反応」という言葉の妥当性については、いろいろ問題があるのですが、質問に対する答えとしては、炭酸固定反応は酵素反応である上、鍵酵素のルビスコの温度依存性が高いので、低温になると反応速度は大きく低下します。一方で、光化学反応の中の、アンテナによる光の吸収や、複合体内での電子伝達反応などは物理的なプロセスであり、ほとんど温度依存性を持たず、低温になっても速度が落ちません。従って、低温になると、光エネルギーの吸収は元のままで、その利用を行なう炭酸固定反応だけ低下し、過剰なエネルギーが発生して障害をもたらします。
ただし、このメカニズムでは、低温傷害の温度依存性は温度に対してかなりフラットになるはずですが、キュウリなどの低温感受性植物の低温傷害の温度依存性は敷居値を持つ、極めてシャープなものになることが知られています。従って、低温感受性植物などでは、光化学系と炭酸固定系の温度依存性の違いでは、その低温傷害の温度依存性を説明することができません。低温感受性植物の低温傷害については、僕の研究紹介のページをご覧下さい。
Q:初めまして。いつも参考にさせて頂いております。早速ですが、ルビスコは地球上で最も多いたんぱく質といわれていますが、その割にはC3植物での働き(光合成)が小さいような気がします。なぜこれほど多くを含んでいるのでしょうか?オキシゲナーゼ活性と関係あるんですかね????よろしくお願いします。(2004.2.1)
A:ルビスコは二酸化炭素を固定する酵素(カルボキシラーゼ)ですが、おっしゃるように酸素と反応するオキシゲナーゼ活性も持っているため、酸素が存在する条件ではそちらの反応(こちらは二酸化炭素を放出してしまいます)も進んでしまって、全体としての二酸化炭素固定能力は低くなってしまいます。
オキシゲナーゼ活性は、酸素濃度を0にすればなくなりますが、その場合でもルビスコの二酸化炭素固定速度は決して高くないのです。二酸化炭素との親和性も他の酵素の基質に対する親和性に比べると低いですし、基質回転速度をみても極めて低い方でしょう。
この理由、というのは難しいのですが、最近奈良先端大のグループが、ルビスコは、昔別の代謝系に使われていた酵素が進化の過程で二酸化炭素固定能力を持ったらしいことを明らかにしました。とすると、元々は二酸化炭素固定とは全く別の酵素だったわけで、それを改造しても限度があった、ということかも知れません。新しく何か別の酵素を土台に新ルビスコを作れば、もしかしたら、もっと効率がよくなるかも知れませんね。
Q: まったくの素人ですが、ATP合成の結合変換説を教えてください。お願いします。(2004.1.30)
A:「結合変換説」というのは、たぶんATP合成酵素の回転によるATP合成のモデルの話でしょうね。ATP合成酵素はプロトン(H+)の濃度勾配によってADPをATPに変換する酵素です。このメカニズムについて、ボイヤーという人が20年以上も前に、「この酵素は3カ所のATP/ADP結合部位を持っていて回転している」という説を唱えました。つまり、ある一時点で見ると1カ所は空、1カ所はADPを結合、最後の1カ所はATPを結合していて、これが、がしゃんと120度回転すると、結合していたATPは離れて空になり、もと空の所にADPが結合し、もと結合していたADPがATPになるというモデルです。つまり全体としてみるとADPが1分子ATPに変換することになります。20年前にはあまりに革新的なアイデアだったので、眉唾扱いする場合も多かったのですが、この酵素の立体構造が1994年に明らかになると、いかにも回転しそうな形だったので一挙に信頼性が高まりました。さらに日本のグループが1997年に直接回転することを証明しています。ボイヤーたちは1997年にノーベル賞も取っています。もう少し詳しいことは吉田久堀研究室のホームページが参考になるかと思います。
Q:はじめまして。C3とC4光合成の違いと、なぜC4光合成システムの最大速度が高くなるなるのかを教えてください。お願いします。(2004.1.28)
A:一般的な光合成では二酸化炭素の固定をカルビン・ベンソン回路という代謝経路で行ないます。この部分はC3でもC4でも共通なのですが、C4では外から取り入れた二酸化炭素が直接カルビン・ベンソン回路に入らずに、まず炭素原子を4つ含む(これが名前の由来)リンゴ酸などの有機物に固定されます。できたリンゴ酸は、最終的な炭酸固定を担う別の細胞に運ばれて、もう一度二酸化炭素を放出し、その二酸化炭素がカルビン・ベンソン回路に入ります。このように説明すると、C4光合成は二度手間をしているように思えますが、実際には、このような形で二酸化炭素をいわば「濃縮」して光合成の効率を上げているのです。温度や水分条件などがその植物にとっての通常条件である場合、植物の光合成の律速段階は二酸化炭素濃度です。従って、通常の大気条件(0.04% CO2)での最大光合成速度を比べると二酸化炭素濃縮系を持つC4光合成の方が高くなります。なお、C4光合成を持つ方はいつも有利というわけではありません。リンゴ酸の輸送などにはエネルギーが必要ですから、暗い環境などで、使えるエネルギーが少ないときには、かえってC4植物の方が不利になります。
Q:先生のホームページ、大変興味深く拝見させて頂きました。光合成は植物にとって必須の生命現象であるために、非常に複雑な機構を持ち、素人にとっては調べてみたいがついつい腰が重くなってしまう分野でもあるかと思います。当方では花の育種を行っているのですが、生育が早い品種と遅い品種間では光合成能に違いがあるのかどうか、調べてみたいと以前から考えておりました。光合成の専門家が身近におりませんでしたので、恥ずかしながら先送りにした結果、今日に至ります。近くに共通で使用できる実験施設がありますので、いくばくかの実験設備があるということを前提に、「品種ごとに光合成能の違いがあるかどうか」を調べる方法、または詳しく記載されている本をお教え願えないでしょうか。PCRなどを使って調べる方法などもありましたら是非ともご紹介いただければと思います。お忙しい中、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。(2004.1.13)
A:光合成の能力は、いわば光合成反応の「速度」であるので、ものの「量」をはかっても情報を得ることができません。例えば、PCRは、それによってある特定の配列のDNA量を半定量的に調べることができますが、たとえその配列が光合成関連の遺伝子のものだったとしても、光合成の能力との間には、ほとんど関係がありません。光合成の能力を調べるには、その速度を測定する必要があり、通常は、何らかの分光器を使って測定することになります。光合成の分野の様々な測定方法については、「光合成研究法」加藤栄他編(共立出版)という非常に充実した本がありますが、1981年の発行で、内容的には残念ながらかなり古くなっています。
一般的に言うと、光合成の測定には、かなりその目的に特化した測定装置が必要となります。光合成は光によって進行する反応であり、測定には、最低でも、試料に光を当てられるように改造した分光器か、酸素電極が必要となります。1990年代以降、クロロフィル蛍光を用いて、非常に簡便に光合成速度を測定することができるようになりましたが、その場合でも、このクロロフィル蛍光測定装置が必要となります。まずは、そのような測定機器が利用可能かどうかが問題になるかと思います。
Q:光合成によって炭素固定は行われますよね? 1高等植物の炭素固定メカニズム 2藻類と炭素固定 3光合成細菌と炭素固定(性質 生態 炭素固定の方法)を知りたいです。また、化学合成独立栄養生物の炭素固定(種類 性質 生態 炭素固定の方法)もしりたいんですけど。(2004.1.8)
A:これはまた、大きな質問ですね。これらについてだけで何冊もの本が出ています。本当に知りたければ本を読んで勉強するしかないと思います。光合成の教科書としては、比較的新しいものとしては朝倉書店の朝倉植物生理学講座3「光合成」があります。あと、学会出版センターから光合成事典というのが出ていて非常に詳しくてよいのですが、値段がさらに張ります。
せっかくですので、ごく簡単に炭酸固定の分類だけをここで述べておきます。高等植物では、基本的にカルビン・ベンソン回路によって炭酸固定が行なわれます。多くの植物ではカルビンベンソン回路で最初に炭素を固定し、できる物質が炭素3個を含む物質です。一部の高等植物では、これにC4回路という二酸化炭素濃縮装置がついた形になっています。前者をC3植物、後者をC4植物と呼びますが、C4植物でも最終的な二酸化炭素固定はカルビンベンソン回路(C3回路)で行います。藻類の光合成は、炭酸固定系路としてはカルビンベンソン回路なのですが、独自の二酸化炭素濃縮系を持っている場合があります。独立栄養細菌でも、カルビンベンソン回路によって炭酸固定を行うものが多いようですが、一部のものは、還元的カルボン酸回路を使います。さらにメタン合成細菌は、二酸化炭素を直接水素で還元するという特殊な炭酸固定を行なっています。
Q:水草の光合成について質問します。理科の実験で,水草が光合成によって酸素を出す場面を子供達に見せたいと思っています。ほとんどの水草の葉には気孔が無いと聞きましたが,気孔を使わないとしたらどのように二酸化炭素を吸収し酸素を放出しているのでしょうか。また,茎を切断した水草に光を当てると,葉から泡が出ないで切った所から泡が出るのはなぜなのでしょうか。それから,水草の葉の先に気泡がつく水草があると聞きましたが,切った茎以外の場所で気泡が見られることが水草にはあるのでしょうか?どうぞよろしくお願いします。(2004.1.4)
A:僕は形態は専門ではないので、一般的な知識に基づく解答になりますがご容赦下さい。
水草や、水辺の植物では、葉の表皮細胞がうすく、葉の細胞層の層の数も少ないようです。水草でなくとも、水辺で常にしぶきで濡れて気孔のガス交換が阻害されてしまうシダの一種では、葉自体が非常にうすく、葉緑体を持つ細胞層も1層しかないことが知られています。これらを考えると、気孔がない場合は、基本的に葉の表面からの拡散でガス交換をしているのでしょう。
植物の体は、大きく分けて細胞の内側(シンプラストといいます)と、体の内側ではあるけれど細胞の外側(アポプラストといいます)に分けることができます。アポプラストは、人間でいえば、口や胃腸の中に相当する、体の内部ではあるけれど空間的には体の外につながっている部分です。外側を水でおおわれている水草の場合、光合成によって酸素が発生するとアポプラストに酸素がたまることになります。葉の部分のアポプラストは、茎や根の部分のアポプラストとつながっているので、茎が切断されると切断面のアポプラストから泡が出ることになります。
気孔は、別の言い方をすると、アポプラストと外界の接点といえます。植物によっては、気孔とは別に、葉の葉縁などにアポプラストの出口を持っているものもあり、このような場合は、葉の縁や先端に気泡をつけることになるかと思います。