光合成の質問2009年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:カルビン回路を見ていたら、D-リブロース-1,5-ビスリン酸 (RuBP, C5) + CO2 → 2分子の3-ホスホグリセリン酸 (C3×2)、という反応を見つけました。この反応はRuBPとCO2を、ただ単純にかき混ぜれば、簡単に出来るのでしょうか?教えて下さい。 また、RuBPの作り方も教えて下さい。(2009.12.19)

A:この反応は、ルビスコと呼ばれる酵素によって触媒される反応です。基本的に溶液中で進む反応ですので、RuBPとCO2と活性をもったルビスコを試験管中で混ぜれば反応は進むはずです。ルビスコがなければ反応はほとんど進みません。「RuBPの作り方」というのは、植物が、という意味でしょうか、それとも人間が、という意味でしょうか。植物がRuBPを作るときには、まさにカルビン回路が働いています。カルビン回路のほとんどの部分は3-ホスホグリセリン酸からRuBPを再生する過程によって占められています。一方で、有機化学合成で人間が作る方法、という意味でしたら、僕には専門外で全くわかりません。ただ、試薬として売っていますので、購入することはできます。(2009.12.19)


Q:ナスのハウス栽培をしています。 老化した葉における光合成の産物の転流について質問です。教えていただきたい点は、葉は老化するとソースとしての働きは徐々にしなくなると思いますが、老化した葉は、自分自身を維持する為に、他の葉から光合成産物の転流をうけてシンクの様な振る舞いがあるかどうかです。あくまで、葉はソースであり、新芽以外はシンクにならないと思っていますが、よくわかりませんので、よろしくお願いいたします。(2009.12.9)

A:基本的にはおっしゃるとおり老化葉がシンクになることはないと思います。葉の老化は、積極的なメカニズムで、「老化する」というよりは「老化させてその葉の養分を回収する」という表現の方が当てはまります。ですから、老化葉では様々な成分の分解と回収が積極的に行なわれ、逆にそこへ光合成産物を転流するようなことはないでしょう。(2009.12.10)


Q:既出の質問でしたら、申し訳ありませんが、紅色光合成細菌(Rhodopseudomonas palustris)の光合成についてお伺いさせていただきます。紅色光合成細菌のバクテリオクロロフィルは、750-850nmの波長の範囲に強い吸光特性を持つと聴きました。そこで、波長も然る事乍ら、光度などにも気を使い光合成を行なわせようと考えております。波長の選定さえ間違わなければ、光合成にはあまり光度などは関係ないのでしょうか?それとも、紅色光合成細菌の光合成に、最も適当な光の強さ(cdやlxなどの単位で)があるのでしょうか?また、白熱灯を使用するとすると、低格電圧何ワット程度の物を用いればよろしいでしょうか?ご回答よろしくお願い致します。(2009.12.9)

A:「光度」というのはここでは光の明るさ(強さ)のことでしょうね。そうでしたら、もちろん、光合成は光の明るさによって大きく影響を受けます。高校で生物を習っていれば出てきたと思うのですが、光光合成曲線というのが光の強さを変えた時の光合成速度になります。これは、一般的には光が弱い時には光の強さに比例し、光が強くなっていくと頭打ちになる飽和曲線となります。また、光が強すぎるときには光阻害という現象がみられ、光合成速度が落ちることがあります。植物・藻類・光合成細菌の光合成速度はいずれもこのような変化を示し、これは生育の速度についても同様です。光の強さについては、まず、「光の単位」をご覧ください。実際に最適な光の強さは様々で、たとえば細胞の濃さによっても異なります。また、研究の目的にもよりますので一概には言えません。普通の実験では、予備実験を行って最適な条件を決定することになります。(2009.12.9)


Q:過去に同じような質問がありましたら申し訳ありません。一般的な高等植物の葉緑体のチラコイド一袋あたりにクロロフィルaはいくつ存在するのでしょうか?回答よろしくお願いします。(2009.11.23)

A:これは難しい質問ですね。まず、葉緑体のチラコイド膜の構造が立体的にどのようになっているかの確証は現時点ではまだないと思います。切片の上では袋がたくさんあるように見えますが、実際には空間的にはつながっているというのが今のところの予想です。ただ、1つの葉緑体の中のチラコイド膜がすべてつながっているのかどうかはしかとは分かりません。もしすべてつながっているとすれば、チラコイド膜一袋は、葉緑体1つと同じになります。葉緑体はそれだけ取り出すのも大変ですし、植物の種類によっても様々だと思いますので、その葉緑体の祖先であるシアノバクテリアで考えてみると、1つのシアノバクテリアの細胞は一千万分子から一億分子程度のクロロフィルを含む計算になります。なので、葉緑体でも同じぐらいではないでしょうか。なお、陸上植物の葉緑体の場合、クロロフィル全体の1/4程度はクロロフィルbになります。(2009.11.24)


Q:宮崎県日南市でスィートピィを栽培しています。光合成について質問ですが、植物は根から吸収した水と空気中の二酸化炭素によって光合成をおこなっていますが、明反応では太陽の光で酸素を放出して二酸化炭素を取り込みますが、天候が雨天の場合はできません。人工的に酸素を放出する方法はないのでしょうか?(2009.11.17)

A:人工的に酸素を発生する方法は色々あります。水から酸素を作るのでしたら、電気分解が一番有名だと思います。水に少し塩を入れて直流の電圧をかけると水素と酸素が電極から発生します。光のエネルギーを使って人工的に水を分解して酸素を作ることも可能ですが、こちらは天候が悪いとできないのは光合成と同じですね。(2009.11.17)

Q:回答ありがとうございました。酸素を発生する方法を応えていただきましたが、聞きたかったのは、雨天の場合における酸素を放出する方法です。植物は、昼間に二酸化炭素と結合して暗反応に移行して糖をつくっていきますが、雨天の場合は光がないので酸素を放出できません。合成するためには二酸化炭素が必要ですが、雨天の場合に明反応と同じ化学反応をする方法を教えていただきたいのですが。ちなみに、「ミネラル」を使って合成をおこなう方法があるようですが、それはどのような科学反応が行われているのでしょうか?(2009.11.18)

A:光を使わずに植物が水を分解して酸素を放出することは全く不可能です。もし、「ミネラル」を使うと光がなくても植物が水を分解して酸素が出せますよ、というような商品がある場合には、眉に唾をつけた方がよいと思います。(2009.11.19)


Q:初めて質問させてもらいます。私は今、光合成と外部環境の関係性について調べています。光の量や色、水温を条件とし、実験を行なっています。今はなぜそうなったのかという考察を考えているところです。ですが、自分でもネットや本などを使って調べているのですが、よくわかりません。そこで質問なのですが、光の量や色、水温は、光合成に対してどのように関わってくるのでしょうか?教えてください。(2009.10.27)

A:外部環境と光合成の関係、となると非常に大きいテーマで、「どのように」と言われてもなかなか答えづらいものがあります。高校生のレベルで、ということでご質問を頂いていますが、もし、実際に高校生でしたら、ネットではなくて高校の生物の教科書を見るのが一番よいと思います。高校の生物では、光の量と光合成の関係、温度と光合成の関係を詳しく学びます。まずはそのあたりをご覧になって「読んでみたけれども、やっぱり、ここのこの部分の意味がわからない」という部分がありましたら、そこを具体的に質問して頂ければ答えられると思います。
 もしくは、実験の解釈が問題なのでしたら、実際にどのような結果になったのかを詳しく書いて頂ければ、それについて考えてみることはできると思います。(2009.10.28)

Q:回答ありがとうございます。 実験の目的は、オオカナダモに光を当てて光合成させ、発酵する気泡の数を数えることで、光合成速度とし、外部環境として、光の量・光の色。水温の3つを条件として設定し、光合成速度への影響を研究するというものです。 条件として、光の量はライトの数(1〜4個)で調整し、光の色は、ライトにセロハン(赤、緑、青、黄)を貼り付け、水温は、基準となる水温(この場合は26℃)から−4、−2、+2、+4とし、計測時間は全て3分間でした。 結果は、ライトの数1〜4個の順に、2個、2個、1個、0個で、セロハン赤、緑、青、黄の順に、0個、1個、2個、2個で、水温は−4、−2、+2、+4の順に1個、0個、2個、3個でした。 結論と考察という形で教えていただければと思います。よろしくお願い致します。(2009.10.28)

A:まずは、光合成と環境という前に、実験というものがどのようなものかを考えてみる必要がありそうです。実験には誤差がつきものです。この場合、気泡の数を数えているわけですから、気泡が出る切り口の状態によって数は変化してしまうと思います。しかも、光合成による酸素の発生は継続的におこっていると考えられるのに対して、気泡の数はある時点で0から1へ、1から2へと急に変わるわけです。つまり、ほとんど同じ酸素が出たとしても気泡の数が1違うことがあり得ますから、気泡の数の差が1の場合は、実際には光合成に差がない可能性が充分に考えられます。気泡の数が100と200ならば差がありそうだとは言えても、100と101なら差はないと結論しますよね。とすれば、気泡が0と1の時の差を論じることはできないことになります。なお、「 結論と考察という形で教えていただければ」とありますが、「質問のコツ」にも書いてありますように、この光合成質問箱はレポートの代作箱ではありませんので。(2009.10.29)


Q:海洋・湖沼で連続的に海水を汲み上げ蛍光光度計に海水を導入し、クロロフィルa濃度を測定している観測がありことを最近知りました。そこで調べると、蛍光光度計のキャリブレーションをウラニンで行っています。どうしてクロロフィルaを知りたいのにウラニンでキャリブレーションしてるのでしょうか?ウラニンからクロロフィルaに換算式などがあるのでしょうか?クロロフィルaの測定波長でウラニンを測定した蛍光値がクロロフィルaになるのでしょうか?もしご存じでしたら、ご教授お願いします。また、参考資料がありましたら紹介をお願いします。大変不躾な文ですが、宜しくお願いします。(2009.10.20)

A:ウラニンというのはフルオレセインのことでしょうね。最近は機械がみな自動なので意識されないのですが、吸光光度計は測定時に必ず0-100調整(キャリブレーションといってもよいでしょう)を行ないます。透過率の場合、試料がない場合が100%、試料側に光がまったく通らない場合が0%ですから、そのように2点で調整することになります。ところが、蛍光光度計の場合は、0というのは、光がまったく来ない状態でよいとしても、吸光光度計の100に相当するものがありません。そこで、既知の濃度の蛍光試薬で蛍光強度を確認することになります。キャリブレーションをウラニンで行なう、というのはその作業のことでしょう。その上で、既知のクロロフィル濃度の溶液を測定して、クロロフィル濃度をウラニン濃度へ換算する計算式を求めておけば、その計算式に基づいてクロロフィル濃度を計算できます。実際には、この換算式の係数は、励起光の波長や光学系などによって変化しますから、自分の測定系ごとに自分で決める必要があります。簡易的なクロロフィル測定装置などの場合は、典型的な条件での換算式が測定装置に付属している場合があるかも知れませんので、その場合はそれを使うこともできます。ただし、この換算式は別の機械には使えませんし、正確な測定をする場合には、やはり自分で一度換算式を求めた方がよいと思います。(2009.10.21)


Q:はじめまして。質問させていただきます。TLCでアナアオサ(浅所型緑藻)を分離したのですが(展開溶媒石油エーテル:アセトン=7:3) ルテインとビオラキサンチンの間に薄い黄色の点が検出されました。本来ならばルテインとビオラキサンチンの間には何も検出されないと思うのですが、何故このような黄色の点が検出されたのでしょうか? よろしくお願いします。(2009.10.18)

A:「質問のコツ」にも書きましたように、予測と違った結果になった実験について、その理由を考えるのはなかなか難しいものがあります。実験条件の「正しい」組み合わせは基本的には1つなのに対して、それ以外の組み合わせは無限にあるからです。一般的には、予想外のバンドが現れるのは、色素の分解産物の場合が多いと思います。その場合は、色素の抽出の過程で水分をよく除く、温度が上がらないようにする、新鮮な材料を使う、といった工夫で結果が変わると思います。また、そもそもバンドの位置がなにかの理由で異なり、ルテインとビオラキサンチンという同定自体が間違っている可能性もあるかも知れません。各スポットの色素を抽出してスペクトルを測定するなどの方法をとらないと、実際に何が起こっているのかを確定することは難しいと思います。(2009.10.18)


Q:はじめまして,はじめて質問させていただきます.私は大学の卒論で炭酸ガスおよび補光が植物に及ぼす影響を試験しています.光によりクロロフィルa/b比は通常よりも減少する傾向にあるのはいろいろな本や文献にてメカニズムが理解できました.しかし炭酸ガス施用のみがクロロフィル含量,特にa/b比に及ぼす影響(相対的にbが増加するため一般にa/b比は減少傾向?)についての記述がどうしても見つかりません.なぜクロロフィルbが相対的に増加すると考えられるのか教えていただけませんでしょうか?(2009.10.13)

A:強光への応答の場合は、通常、集光性色素の量を下げる方向に変化します。高等植物の場合、主な集光性色素タンパク質であるLCHIIは反応中心複合体に比べてクロロフィルbの割合が多いため、強光になるとクロロフィルa/b比は上昇するというデータの方が多いと思います。「光により」というのが強光のことだとすると話が合いませんが・・・。
 僕自身は二酸化炭素濃度への順化は扱っていないので専門家ではありませんが、Cave et al. (2006) Physiologia Plantarum 51, 171 - 174など、検索するといろいろ引っかかってくるようですよ。この論文ではクロロフィルa/b比が低下していますが、あまり差がないとしている論文もあります。ですから一概にどうとは結論できませんね。二酸化炭素の場合は、気孔のレベルでの制御があること、また、光合成産物を貯めるイモなどの器官があるかどうか、などの要因によって結果が異なること、などのため、なかなか一般論では結論が出ないと思います。(2009.10.13)


Q:光合成細菌の勉強を始めてたった2週間しか経っていないのでよく分からない部分があり,質問させていただきたく思います.以下のサイト[1]で,光合成細菌がもつ集光機能物質の構造を解明したとあるのですが,その中でBChlcはクロロゾーム中で安定した2量体をとっている,とあります.またMillerら[2]の研究によると,クロロゾーム内のBChlcを薬品処理によって取り出し緩衝溶液に加えた試料に有機溶媒を徐々に加えていくと,吸収極大波長が740nmから670nmまで下がっていく.これはBChlの自己集積構造が壊れていっているためだ,というものがあるのですがこれはつまりBChlを囲っている脂質一重膜を取り去った状態でもBChlの構造は保たれているということでよいのでしょうか? つまり,クロロゾーム内のBChlは脂質一重膜に囲われておらずとも自己集合するということでよいのでしょうか?
[1]http://www.nims.go.jp/news/press/2009/04/p200904280.html
[2] Miller et al., Photochem. Photobiol., 57, 98(1993)(2009.10.7)

A:基本的に脂質膜の中のBChlcの数は数百にもなりますから、一般的にいえば脂質の膜がBChlcの会合状態を左右する可能性は少ないと思います。また、クロロフィルの会合による吸収極大や蛍光極大の長波長側へのシフトは、単に有機溶媒に溶けたクロロフィル溶液に水を加えていくだけでも観察されます。「自己集積」をどのように定義するかにもよりますね。会合が脂質の膜とは無関係におこることは確かでしょうけれども、生体内でみられる特定の二量体の積み重なり構造が試験管の中でも「自然に」おこるかどうかは、まだ直接的な証明がないと思います。(2009.10.8)


Q:はじめて質問させていただきます。 今、葉中の光合成によって生産される糖組成の日変化を液体クロマトグラフィーで調べようとしています。 マイナス20℃で冷凍した葉を予備実験で80℃で15分、その後50℃で10時間サンプルを乾燥させて供試験したところ、 糖を検出することができました。 ただ、日変化(2時間おき)の微少な糖の計測ということもあり、 乾燥時の糖の増減はできるだけ抑えたいと考えています。 もしももっと効果的な乾燥方法をご存知でしたら教えていただけると幸いです。(2009.9.3)

A:そもそも乾燥しないといけないのでしょうか?凍らせてあるサンプルをそのまま液体窒素中ですりつぶして微細粉末にし、それから80%エタノールなどで糖を抽出する方法などもあると思います。葉の中の糖や炭水化物の定量は昔からやられていますから、過去の論文の方法にならうのが一番安全な気がします。Rufty and Huber (1983) Plant Physiol. 72: 474-480, Rao et al. (1990) Plant Physiol. 92: 29-36などが参考になるのではないかと思います。(2009.9.4)


Q:初めて質問させていただきます。 会社勤めの傍ら、休日に農業をやっています。 農業は畑10 a、田1 ha程度の規模ですが、現在の課題は作物の栽培より、雑草の除去が一番費用・労力がかかることです。 雑草の光合成を制御することで、簡易に成長を抑制する手法はないものでしょうか。 農薬で雑草を枯らすのではなく、成長を抑制することで雑草除去作業が低減できれば私の様な兼業農家は多大な恩恵を受けられると思います。 安価なフィルターですとか、薬剤など一般でも入手可能な、 雑草の生長を制御できるものはございませんでしょうか。 また仕事でLED光源の開発もやってますので、特定波長の光源を作ることも可能です。 先生のご指導いただけますと幸甚に存じます。(2009.9.2)

A:雑草を除去する場合の一番の問題点は、雑草もまた植物であることです。作物か雑草か、という区別はあくまで人間の目から見た差であって、作物と雑草の光合成は基本的には変わりません。除草剤の中には単子葉植物と双子葉植物で効き目が違うものがあって、それらはどちらかだけを枯らすのに使われますが、「雑草だけ枯らす」というわけにはいきません。そこを完全にやろうとすると、アメリカの種苗会社などがやっているように、作物の方に特定の除草剤に耐性を持つような遺伝子をくみ込んで、その遺伝子組換え作物と除草剤をセットで使うようなことをする必要があります。光に関しても、陸上植物の光合成色素は基本的にクロロフィルaとクロロフィルbの2種類で、あまり大きな差がありません。雑草だけが光合成できないという光条件を作るのは無理だと思います。というわけで、昔からの問題を一挙に解決するような名案は思いつきません。お役に立てず申し訳ありません。(2009.9.3)


Q:夏休みの宿題で、何色の光が1番光合成をするのかという実験をすることにしたのですが、市販のライト(40W)で実験を進めるつもりなのですが、これぐらいの光の強さでは足りないでしょうか?教えてください。お願いします。(2009.8.24)

A:ライトの40 Wというのは使われる電気の単位ですよね。電気のどれだけを光に変えることができるかはライトの種類によって違います。ですから、実際にそのライトからどのぐらいの光が出るかは、蛍光灯なのか白熱灯なのかという種類によるのです。また、太陽光は直進しますが、ライトからの光は四方八方に広がっていくので、ライトのすぐそばでは充分強い光でも、ライトから遠ざかると弱くなってしまいます。というわけで、一概には答えられないのですが、蛍光灯で40 Wでしたらかなり強いので、すぐそばに植物を置けば、光合成を観察できるのではないかと思います。ただ、植物のすぐそばにライトをおく場合は、ライトによって植物が熱くなってしまわないように注意する必要があります。実際にどの程度の光が必要かは植物の種類によっても同じではなりませんので、そのあたりは一度試してみるしかないでしょうね。いずれにせよ、実験というのは、一度やったらおしまい、というものではありません。なにかがうまくいかなかったら、その原因を考えて、その部分を工夫してもう一度やってみる、という繰り返しが、本当の実験なのです。(2009.8.24)


Q:理科の自由研究で水草の光合成について調べました。その結果、蛍光灯に赤フィルムをつけたものを当てるとでてくる泡の量が少なく、緑+黄のフィルムだとまぁまぁの泡の量になり、最終的にはなにもつけない蛍光灯を当てたら一番泡が出ました。…このことをフィルムがついているほうはフィルムがあるから光が通りにくく、光の強さも色によって違うのでは?という内容にまとめようと思います(光の条件によって泡の量が決まったのではということです)。ここで質問なんですが…色によってひかりのつよさはきまるのでしょうか??聞いたところによると赤は光として弱いと聞いたのですが…(2009.8.21)

A:光の「色」と「強さ」というのは別々に決まります。ですから、赤と青でいえば、赤くて弱い光、赤くて強い光、青くて弱い光、青くて強い光、というのは全てあり得ます。フィルムを使う場合、赤いフィルムと青いフィルムでは、通す色が違うと同時に、通す光の強さも違う可能性があります。赤いから必ず光は弱い、ということはありませんが、その赤いフィルムがたまたまあまり光を通さないフィルムだったため、フィルムを通した赤い光は弱かった、ということはあり得ます。ですから、色が赤(もしくは青)であるというだけでは強さがどのぐらいかわからない、というのが答えになります。
 あと、「赤は光として弱いと聞いた」というのはまた別の話だと思います。話が少し専門的になりますが、光は「光子」という粒子が動いているものとして考えることもできます。その場合、赤い光と青い光の違いは、1つの粒子の持っているエネルギーの違いを意味しているのです。そして、赤い光の方が粒子1つの持っているエネルギーは青い光よりも少なくなります。では、その場合光の「強さ」の方は何になるかというと、粒子の数になります。時間あたり、面積あたりに降り注ぐ粒子の数が強さになりますから、やはり「色」(つまり1つの粒子のエネルギー)とは別に決まることになります。(2009.8.21)


Q:はじめまして。去年の自由研究で、気温が低い所で植物が光合成できるか実験をしました。もみじ(緑の)を使い、気温は8度ぐらいにしました。結果は光合成しませんでした。そこで、もみじの葉が冬になると落ちるのは、光合成ができず木にとって役に立たなくなるからではないかと考えたのですが、合っているのでしょうか?(2009.8.19)

A:そうですね。基本的にはあっていると思います。ただ、もう一ひねり考えると、冬の間「がまん」さえすれば、春になったらまた光合成ができるわけですよね?1つの葉を1年以上つけている常緑樹は実際にそうしているわけです。とすれば、冬に一度葉を落としてもう一度春に作り直すのが得な場合と、そのまま持ち続けた方が得な場合があるはずですが、それらはそれぞれどんな場合だと思いますか?その辺を考えてみるのもおもしろいかと思います。(2009.8.20)


Q:はじめまして。 ピーマンの実も光合成をしているかというテーマで自由研究をしています。 ピーマンの実は葉と同様に葉緑体が観察出来ましたが、 ヨウ素液でデンプンがあるかどうか確認したら葉しか反応がでませんでした。 そこで質問なのですが、実には葉緑体があるのにどうしてデンプンが含まれていなかったのでしょうか。 光合成をすればデンプンがあるはずだと思います。(2009.8.14)

A:お盆休みをとっていたものでお返事が遅くなりました。さて、ヨウ素デンプン反応の反応が出ない場合、実は3つ可能性があります。1:光合成をしていない。2:光合成をしているが、その産物をデンプンとして貯めない。3:光合成をしてデンプンも貯めているが、ヨウ素デンプン反応がうまくいっていない。イネ科の植物などには、デンプンは貯めずにお砂糖の形にする種類がありますから、そのような植物では「2」の場合のように光合成をしますが、ヨウ素デンプン反応は出ません。ピーマンの場合は、葉では反応が出たとのことなので、この「2」の場合ではなさそうですね。あと考えられるのが、「3」の場合です。葉でも、木の葉の場合は硬くて細胞の中にヨウ素液が入らずにデンプンは貯めていても反応が出ない場合があるようです。ピーマンの実も、葉とはだいぶ固さなどが違うと思います。実はだいぶ厚さがあるとあると思うのですが、そのままヨウ素液につけたのでしょうか。その場合、もし、もう一度実験できるようでしたら、ピーマンの実の緑色の濃い部分を薄くそぐようにして取り出し(緑の濃い部分だけを薄く取りだした方が反応が見やすい)、しかもできれば表面のつるつるした部分は取り除くようにして(表皮の細胞はない方が反応がきちんと起こる)実験をやってみるとよいと思います。それでも反応が出ないようでしたら、本当にデンプンがないのだと思いますが、その理由は僕にはわかりません・・・。(2009.8.17)


Q:はじめまして。光合成をするときに植物から出される酸素は植物自身の呼吸にも使われるのですか?よろしくお願いします。(2009.7.31)

A:はい。自分が出した酸素でも、呼吸に使うことはできます。ただ、元から空気に含まれている酸素と区別して使われるわけではありません。陸上の植物の場合を考えると、空気中にもともと21%もの酸素が含まれているので、割合としては、空気に含まれている酸素の方が多く使われるのではないかと思います。(2009.7.31)


Q:学校で理科の実験を自分たちで考え、発表するという授業があります。そこで3つの同じ植物を1つは30分前に抜き、2つ目は30分前に抜き根を水につけておき3つ目は実験の直前に抜き、試験管と石灰水を使い二酸化炭素の量を調べました。予想通り1つ目は白く濁り、3つ目は濁らなかったのですが2つ目は少し濁っていました。これはただの実験ミスでしょうか?これも考察ということで発表することになっていますので、ご回答よろしくお願いします。(2009.7.20)

A:これは、1)根を空気に30分さらすと光合成をしなくなる、2)根を水に30分つけておくと光合成は保てる、3)根を直前まで何もしないと光合成をする、という予想を立てたのに対して、根を水につけておいた実験で光合成をあまりしなくなっていたのはどうしてだろうか、という質問ですね?確かに実験ミスの可能性はいつでもあるのですが、それを前提にしていると何も考察できなくなってしまいます。一般論としては、自分の実験を信じて考察し、その上で、どうにも説明がつかない場合にミスの可能性を考えた方がよいと思います。この場合、根を水につけておいたのだから水を吸い上げることができて光合成をするはずだ、という論理だと思うのですが、根を土から引き出すと、根にある根毛(細かい毛のような根で、これが水を吸い上げるに役立っています)が傷むことはよくあります。植物を植え替えたあとは、いつもよりたっぷり水をやらないといけないのは、そのせいもあると思います。また、植物の種類によっては、水に完全につかっていると酸素が足りなくなって根が呼吸できなくなる、という可能性もあります。そのような可能性をいくつか考えてみて、では、その中でどのような可能性が高いかを確かめるような実験を考えることができれば、非常に立派な考察になると思います。(2009.7.21)


Q:光合成をするときに必要な葉緑体。葉が緑色なのは葉緑体だと習いました。ではエタノールで脱色すると葉緑体は葉から落ちるのでしょうか?(2009.6.25)

A:確かに葉緑体が葉を緑色にしているのですが、さらに細かく見ると葉緑体の中に含まれる葉緑素(クロロフィル)が緑色の原因になっています。葉緑素は、水には溶けにくい一方でエタノールには溶けやすいという性質を持っています。葉をエタノールにつけると葉緑素がエタノールの方へ溶け出るので脱色されるのです。葉緑体には、葉緑素以外にもタンパク質などがたくさん含まれていますが、それらはエタノールにつけても葉の中に残ります。(2009.6.25)


Q:初めて質問させていただきます。今、中1で「光合成には二酸化炭素が必要か」と言う実験をやりました。そこでこの実験のレポートを書くのですが、考察の所にどうやって書いたら良いか分かりません。後教科書を見たら「植物が光合成を行うとき、二酸化炭素のほかに、根からとり入れた水も使われる。」(中学校2分野上理科より)と書いてあったのですが、水も光合成の時に使われるのですか?教えてください。(できれば明日までには…)(2009.6.24)

A:「光合成に水も使われるのですか」という質問に対する答えは、「はい。そうです。」になります。なぜ、水が必要か、という理屈は高校の生物の範囲になりますが、ごく簡単に言うと、光のエネルギーを使ってデンプンなどを作る際に二酸化炭素だけではなく、水も材料にしているから、ということになります。
 これ以上は蛇足かも知れませんが・・・。実験のレポートの考察というのは、本当は、知っていることや調べたことを書くのではなく、「自分がやった実験からどのようなことが言えるのだろうか」という「考えの道筋」を書くのが一番です。もちろん知識がないと実験自体を考えることができませんから、調べることは重要なのですが、そのあとに、調べたことを実験に照らし合わせて自分のやった実験の意味を考えることができると本当の意味での考察になります。(2009.6.24)


Q:光合成は、蛍光灯でもできるとのことですが、火の光によってもできるのでしょうか?よろしくお願いいたします(中一の理科の授業での疑問)。(2009.6.24)

A:はい。火の光によっても光合成は可能なはずです。実験してみたことはありませんが・・・。実際にやろうと思った場合は、火の場合は光の他に熱もたくさん出しますので、十分な明るさにしようと思うと、温度が上がらないように何か工夫が必要かも知れません。(2009.6.24)


Q:中学校教員です。充分に光を当てたオオカナダモの葉を,熱湯に入れヨウ素液に浸し,顕微鏡で観察すると葉緑体が青紫色に…。これは中学校の理科の教科書にも出てくる定番の実験です。中学1年生を担当した年には必ず行って来たのですが,これまで全く成功(青紫色に反応)した試しがありませんでした。そんな中,昨年,植物用の蛍光灯を至近距離で照射した所,初めて葉全体が青紫色に反応しました。ところが,同様の方法で今年行ってみたのですが全く反応がありません。熱湯に入れ忘れていたことに気づき,葉を熱湯に入れてからヨウ素液に浸すと,葉脈付近が青紫色に反応しました。昨年は葉の全体が青紫色に反応したので,再現性の確認も兼ねて,蛍光灯を更に近づけて,翌日,同様の操作を行ったところ,今度は反応が全くありません。蛍光灯の熱で水温が27℃ほどになっていたようでこれが原因かと考えています。この実験は,こんなにも再現性が低いものなのでしょうか?(2009.6.15)

A:僕自身、この手の実験に特に詳しいわけではありませんし、「実験がうまくいかない理由」というのは千差万別ですから難しいので、以下は一般論として考えてください。オオカナダモのヨウ素デンプン反応の実験は、同じ材料を使った酸素発生の実験に比べるとリアルタイムで反応を見ることができない分、少し難しくなります。それほど再現性が低くはないと思うのですが、水温が上がったりして失敗する話はよく聞きます。オオカナダモの実験の(熱湯に入れるなどの必要な手順を踏んだ上での)失敗の原因としてよくあるのは、1)オオカナダモが弱っている、2)光が十分にあたっていない、3)温度が上がってしまう、の3つです。いずれにせよ、実験は対照実験(ネガティブコントロール)と共にポジティブコントロール(必ず成功する実験)があると評価しやすくなります。例えば、光合成によって酸素の気泡は出ているのかどうか、という点が確認できると、何が問題なのか、状況の切り分けが可能になります。気泡は温度変化でも生じますので、実験に使う水をまず煮沸して空気を追い出し、炭酸水素ナトリウム(重曹)を溶かして(0.5%程度で十分だと思います)二酸化炭素を供給し、温度変化による気泡の発生がない状態で実験を行なってみてはいかがでしょうか。その状態で気泡の発生があまり見られないようでしたら、上記の3つの原因を疑ってみる必要があると思いますし、継続的に気泡の発生が見られるのであれば、デンプンの蓄積もしくはヨウ素デンプン反応に問題があることになります。光は案外と強い方がよいので、温度が上がらないような対策を講じた上で太陽光で実験をしてみるのもよいかと思います。(2009.6.16)

Q:回答いただきありがとうございます。早速,煮沸&炭酸水素ナトリウム添加しての確認をしてみたいと思います。一点伺いたいのですが,煮沸して空気を追い出したとしても,炭酸水素ナトリウムを添加した場合,水温上昇によってCO2が気泡となってあらわれることはございませんでしょうか。(2009.6.16)

A:おっしゃるようにCO2の場合も溶解度の上限を超えるような温度にまで水温が上昇した場合には気泡が現れる可能性があります。ただ、水に対する溶解度は、酸素や窒素よりCO2の方がだいぶ高いので、温度変化によってみられる気泡の発生は、溶存空気を一度除くことによりかなり押さえることができると思います。(2009.6.17)


Q:小学校6年生の実験で光合成によりでんぷんが作られることを確認する実験を行います(たたき染め法、アルコール脱色法両方行います)。実験の際、どちらの方法でもまず葉を熱湯に漬けますが、この操作をする理由は葉を柔らかくする(アルコール脱色法であれば葉緑体を溶け出しやすくする)ためだという記述がほとんどです。もちろんそれもあると思うのですが、生成されたでんぷんを糖に変える働きを止めるため、という理由は当てはまらないのでしょうか。たまたま前の単元(ヒトの消化)で唾液に含まれるアミラーゼがでんぷんを糖に変える、ということを学び、その際アミラーゼは高温すぎるとその性質を変えてしまい糖への変化が止まってしまう、ということも教えました。熱湯に漬ける理由にその話がそのまま当てはまりそうな気もするのですが、でんぷんが糖に変化するのに要する時間というのはそれほど迅速ではなく、上記の実験では特に問題視する必要もないのでしょうか。ちなみに使用する葉はインゲン、ジャガイモを予定しています。ご回答、よろしくお願いいたします。(2009.6.14)

A:昼間に葉に蓄積したデンプンは、夜の間に分解されて通常はショ糖の形で他の器官に運ばれて(転流)いきます。ですから、原理的には確かにデンプンの酵素による分解反応は起きえます。では、まず茎に着いたままの葉で考えてみますと、光が当たらなくなれば酵素によるデンプンの分解の方が見えるはずですが、その分解は、数秒もしくは数分で完了するような速い反応ではなく、時間の単位で測るような比較的遅い反応です。さらに、葉を茎から切り取った場合には、デンプンの分解産物(つまり糖)が葉の外へ運び出されづらくなりますから、それによってデンプンの分解速度はさらに遅くなります。というわけで、一般的なやり方に従っている限り、デンプンが酵素によって分解されて検出できるデンプンの量が減ってしまうことはないと思います。(2009.6.14)

Q:先日は、迅速なご回答ありがとうございました。でんぷんが糖に変換されるスピードが速いものであれば、葉を採取後、即座に熱湯に漬ける必要があることになり、小学生相手にどれだけの対応ができるものか心配しておりました。(授業が始まる前に熱湯に漬けるまでを教員側でしておかなければいけないのか…?など。)ご指摘のように数時間単位での反応であれば、児童達にも自分で実験準備(葉を選んで採取)〜操作〜結果の確認〜考察までの一連の作業をさせることができそうです。
 ところで光合成により作られるでんぷんの量は、曇りや雨の日ではどうしても晴れの日よりも少なくなる思います。実際実験を行うのは再来週ごろで、梅雨真っ只中です。実験日が雨になり結果が思わしくないものとなった場合でも、それは立派な実験結果ではあります。ただ、晴れの日に採取した葉(でんぷんが十分に合成されたもの)を保存しておくことができれば、比較結果として児童達に見せることができると思います。または逆に実験日が晴れであれば、曇りの日に採取した葉を保存しておいて同様に比較ができます。実験操作前の状態(葉を採取した直後の状態)で葉を保存できる良い方法がありましたら、教えていただきたいと思っております。ご回答、よろしくお願いいたします。(2009.6.15)

A:なかなか、採取した直後の状態で葉を保存するのは難しいかと思います。野外での生態学的な実験の一環で、葉の構成元素の分析などをあとでまとめて行なう場合には、葉を80℃ぐらいのオーブンに数時間以上置いて乾燥させて保存しておくことはあります。しかし、染色などの場合は、乾燥によって染色のされ方が異なると困ります。とすると、乾燥する場合は、当日の葉も同様に一度乾燥させて比較する必要があるでしょうから、あまり実用的ではありませんね。むしろ葉を冷凍保存しておく方がうまくいくかも知れませんが、僕自身やってみたことがないので、何とも言えません。(2009.6.15)

A:晴れた日に採取した葉を熱湯に漬けたもの、熱湯に漬けた後にアルコール脱色したものの2種類を冷凍保存してみました。翌日その葉を解凍後にヨウ素でんぷん反応の確認をしたところ、熱湯に漬けた状態で冷凍保存したものが良好な結果が得られました。実際に児童達が実験した日は運よく晴れていたため、冷凍保存していた葉の出番はありませんでしたが、今後の実験のためにも重要な情報を得られたと思っております。
 ところで、たたき染め法ででんぷんの有無を確認した際、葉脈に沿って鋭敏に反応しており、より青紫色が濃く出ていました。葉脈は道管・師管が通っているところであり、存在するとしても糖の状態ではないかと思います。なぜこの部分がより鋭敏に反応したのでしょうか。葉脈は他の部分より盛り上がっているのでたたいた時に葉のでんぷんがろ紙に移りやすいため…?とも考えましたが、あまり納得できる答えとも思えません。(2009.6.26)

A:冷凍保存できれいに結果が得られるというのは大きな収穫ですね。後半のご質問ですが、たたき染めの場合は、葉の組織がどの程度壊れるか、がデンプンの検出感度に大きく影響すると思います。最後の「盛り上がっているのでたたいた時に葉のデンプンがろ紙に移りやすい」というお考えが一番可能性があるように思います。移りやすい、というよりも、葉の細胞が良くつぶれるので、というべきかも知れませんが。植物の種類にもよりますが、維管束が通っているところでも、葉肉細胞が存在しないわけではないので、少なくとも葉脈の部分にデンプンが見られておかしい、ということはないと思います。(2009.6.28)


Q:樹木の選定にあたり質問をさせてください。庭に樹木を植えるにあたり、一番よく光合成をする「樹木」は何でしょうか?「植物」はすぐ掲載されている事がわかりましたが、「樹木」はわかりませんでした。もし、掲載されていましたら、申し訳ありませんが、掲載アドレスを教えて下さい。今回、仕事で外構(エクステリア)デザインのプランニングをします。建主さんへは「常緑樹」「落葉樹」という事で要望を聴くことがあります。常緑樹ですと落ち葉拾いがないので家事は軽減できます、落葉樹だと四季の移ろいを楽しむ事ができます、というのがよく言われる特徴です。関東近郊で、日向に適した「常緑樹」「落葉樹」日陰に適した「常緑樹」「落葉樹」を幾つか教えて頂けませんでしょうか?「針葉樹」「広葉樹」も大きく影響しますでしょうか?出来ましたら「広葉樹」で教えて頂けませんでしょうか?建主さんから家を建てるのであれば、シンボルツリー(家の象徴となる木)を植えたいが、植えるのでれば少しでも光合成をする樹木を知りたい、と言われました。(これも最近の環境意識なのでしょうか??)正直、よくわかりません。御忙しいところ大変申し訳ありませんが宜しくお願い致します。(2009.6.4)

A:植物は光合成によって生育するわけですから、光合成をたくさんする植物というのは、よく育つ植物というのと同じことになります。ただ、庭木として考えた場合、「よく育つ木」というのは「どんどん形や大きさが変わる木」であり「変えないためには頻繁に剪定する必要がある木」ということになりますので、それでよいのかどうか考えてみる必要があるかも知れませんね。針葉樹と広葉樹を比べると、一般的には広葉樹の方が生育が速い(=光合成が高い)でしょう。落葉樹と常緑樹の場合は、複数の要因があるので難しいですね。植物の生育は日照や土壌の性質の影響を強く受けるので、一般論を言うのはなかなか難しいと思います。具体的な樹種となると、残念ながら僕の守備範囲外です。(2009.6.4)


Q:酸素電極による光化学系Iの活性測定について質問があります。過酸化水素の分解を行う酵素として入れるKCNなんですが、これはKCN以外の試薬では代用不可能なものなのでしょうか?この実験を行ってみたいのですが、KCNでは劇薬のため容易に行うことが困難で困っている次第です。もし代用できるようであれば、その試薬もしくは試薬の物性などを教えていただければ幸いです。(2009.5.28)

A:原理的には代替可能な物質があるとは思います。ただ、問題なのは、測定方法というのは、決められた方法でないと、その方法で確かに測定できているということを自分で確認しなければいけないということです。例えば、光合成活性の測定によくアスコルビン酸が使われますが、昔聞いた話によると、最初の論文ではイソアスコルビン酸が使われていて、長らく、多くの人がアスコルビン酸ではなくイソアスコルビン酸を使って測定していたそうです。最初にイソアスコルビン酸を使った理由は、単に最初の論文の著者の研究室にたまたまアスコルビン酸がなくて、イソアスコルビン酸があった、というだけなのだそうですが、一度、論文に載ると、それを引用して測定する場合にはイソアスコルビン酸を使うことになります。もし、だれかが初めてアスコルビン酸を使う場合には、イソアスコルビン酸を使った測定と比べてみて、結果が変わらない、ということを示す必要があります。そうでないと、過去の論文の測定結果と比べることができなくなってしまいますから。
 KCNを添加するのはチラコイド膜に混ざってきてしまうカタラーゼなどを阻害するためとされていますので、その他のカタラーゼ阻害剤を使うことは可能なはずですが、KCN以外の阻害剤を使った論文は僕自身は見たことがありません。もし、そのような論文がないとすると、上記のようにKCNを使った場合と比較する必要があると思いますので、全く使わずにというわけにはいかないのではないでしょうか。(2009.5.28)


Q:初めて質問させて頂きます。大学の生物の授業で、「光屈性の光受容体が、光合成の光受容体(クロロフィル)と同じものか、違うものかを知るにはどのような実験をすればよいか」という問題が出されました。「クロロフィルa,bの吸収スペクトルと光合成の作用スペクトル」を示す図が与えられているので、おそらく、光屈性の光受容体の作用スペクトルあるいは吸収スペクトルを調べて、それがクロロフィルと同じか比較するのではないか、と思います。そこで、質問なのですが、吸収スペクトルと作用スペクトルとはどのような関係なのでしょうか。「両者は相関する」とは授業で聞きましたし、クロロフィルの吸収スペクトルと作用スペクトルとの関係を見てもそれは納得できるのですが、その関係は、どちらかが分かれば他方も分かる(例えば、実験でどの色の光を吸収しやすいか、を調べることで、吸収スペクトルのみならず作用スペクトルまで類推できるのか)というものなのですか?また、作用スペクトル・吸収スペクトルともに実験で調べられるのですか?もし両方調べられるとすれば、どちらが調べやすい、などはありますか?(2009.5.27)

A:吸収スペクトルと作用スペクトルの具体的な実験方法は以下の通りです。吸収スペクトルは、試料にさまざまな波長の光をあてて、そのうち吸収されずに透過される光の量の割合(透過率)を測定し、そこから波長ごとにどの程度吸収があるかを計算することになります。一方で、作用スペクトルの場合は、やはりさまざまな波長の光をあてて、目的の現象(例えば、光合成や光屈性)がどの程度起こるかを定量し、そこから波長ごとのその現象の「作用」の大きさをプロットするわけです。ここで、得られた吸収スペクトルと作用スペクトルの違いを比較するためには、混合物を例に考えてみるのが一番です。クロロフィルを使って光合成を行ない、また同時にある光受容体を使って光屈性を行なう植物の吸収スペクトルを測定すると、おそらくクロロフィルのスペクトルと、光屈性の光受容体のスペクトルが両方重なったような形になるでしょう。一方で、光合成の作用スペクトルを考えてみます。クロロフィルの吸収があるところでは、光合成が起こるでしょうから吸収スペクトルと作用スペクトルは一致しますが、光屈性の光受容体に光があたっても光合成はしませんから、その部分には作用スペクトルのピークは現れません。逆に、光屈性の作用スペクトルを測定した時には、クロロフィルのあたりには、何も検出されないことになるでしょう。ですから、吸収スペクトルと作用スペクトルは異なりますし、逆に言えば、このことを利用して、複数の色素(光受容体)が含まれている試料の場合でも、その中からある作用を引き起こす光受容体のスペクトルを推定することができるわけです。(2009.5.27)


Q:群落の光合成を測定する方法を教えてください。群落光合成は、群落の持つ 葉面積指数、吸光係数(葉の角度。水平なら1、傾くと1以下になる)、群落上部の個葉の光ー光合成曲線、の三つの特性によって決まると習ったのですが、その三つの値をどのように組み合わせる(どのような計算式に当てはめる)と群落の光合成を数値として表せるのでしょうか。(2009.5.24)

A:群落の光合成は1953年に門司ー佐伯のモデルが出されて、それがいろいろな人によって修正されて現在も使われています。もし、実際の研究に役立てるためのご質問であれば、元の論文やその後の論文を直接お読みになった方がよいと思います。モデルの大筋は、以下の通りです。1)個葉の光ー光合成曲線を測定(もしくは推定)する。2)葉群内の光環境を測定(もしくは推定)する。3)群落の各層において、光合成曲線と光強度からそこに含まれる個葉の光合成速度を求め、それを垂直方向に積分する。
 光ー光合成曲線については、上位の葉の光ー光合成曲線と下位の葉の光ー光合成曲線はそれほど変わらないと仮定するのは一般的だと思うので、「群落上部の個葉の光ー光合成曲線」というのは、群落全体の葉の代表として使われているのでしょう。群落内の光は葉によって遮られ、下に行くほど暗くなります。これは、普通の溶液の光吸収におけるLambert-Beerの法則と同じで、指数関数的な減少を示します。Lambert-Beerの法則の光路長にあたるのが、積算葉面積指数になります。同じ葉面積では葉に角度がついている方が光が遮られなくなりますから、葉が傾いている場合には、吸光係数を葉面積指数にかけ算してやればよい、ということでしょう。(2009.5.24)


Q:貴方のホームページをいろいろ参考にさせて、楽しく光合成を学ばさせていただいております。ブルーバックスの本もつい先日購入しました。本日から楽しく読ませていただいております。ところで、ホームページ上のFAQの中に、緑色植物と光合成細菌のクロロフィルはなぜ違うか?、という質問があります(http://www.photosynthesis.jp/faq/faq2-9.html)。貴方の示す回答の上部3から4行目に以下のようにかかれています。
 クロロフィルは可視光を吸収しますが、バクテリオクロロフィルは赤外光を吸収します。
ここで質問ですが、バクテリオクロロフィルは本当に赤外域の放射を吸収するのですか? もしかして、可視域の赤色帯という意味で赤外光とおっしゃっているのでしょうか?また、同回答の中盤から後半にかけて、つぎのように書かれています。
 いろいろなものが溶けたり浮遊したりしている水の中に光が通る場合、可視光と赤外光を比べると、赤外光の方が深くまで届きます。ですから、。。。(続)
 残念ですがこれは正しくありません。水分子は可視域の赤色から、近赤外や赤外域にかけて大変強い吸収を示す一方、逆に散乱においては減少を示します。特に赤外域の放射は、水面表層で真っ先に水分子により吸収されてしまってすぐになくなります。つまり、水中では吸収が相対的に弱い可視光の方が、赤外放射より断然深く浸透します。水中でスペクトル強度を深度別に測れば一発で分かります。
 また、言葉の問題ですが、貴方の述べる回答の中で赤外光という言葉が使われていますが、赤外放射はその定義により光とは呼びません。批判するつもりで書いているわけではないので、誤解しないでください。万人の閲覧するインターネット上での記載なので正しいことを書いておいたほうが貴方にとっては利点かと思い、コメントさせていただきました。それでは、今後も研究、執筆等ご活躍をお祈り申し上げます。(2009.5.18)

A:ご指摘ありがとうございます。おそらく言葉の定義に確固たる信念をお持ちで、それに従ってのご指摘なのだと思います。同様のご指摘は、これまで、青色光とUV-Aの区別などについても受けておりますが、残念ながら言葉の定義は分野によって異なっていて、異なる分野の方に自分の言葉の定義を前提に議論しても、過去の経験からするとあまり生産的ではありません。手元にある辞典では、光の定義として真空中の波長が 1 nmから 1 mmまでの電磁波となっていますので、すくなくとも、そこでは赤外放射は光です。また、可視光の波長範囲の定義についても人によって異なりますが、比較的一般と思われる750 nmで可視光と赤外光を区分した場合、バクテリオクロロフィルは赤外光を強く吸収します。
 水中のスペクトルについては、おっしゃるように水だけでしたら可視光よりも赤外光の吸収の方が大きくなります。しかし、これもご指摘のように散乱は(水だけでなくいろいろな微粒子でも)赤外光よりも可視光の方が大きくなりますので、引用されている箇所で想定していますように、水以外の物質がたくさん存在している場合には、その量によって可視光と赤外光のどちらがどこまで届くかは変わってくることになり、そのあたりは定性的な議論だけではすまず、定量的な議論が必要となります。(2009.5.18)


Q:ドクダミなどの植物は湿っている所に生息していますよね??日光にめったに当たっていないのに、どうやって栄養を補っているのですか?(2009.5.17)

A:確かに植物の中には日陰に生えるものがあります。そのような植物を陰生殖物といいます。ただ、日陰といっても、直射日光が当たらない、というだけで、別に暗黒の世界ではありませんよね。通常の曇り空ぐらいの明るさがある場合がほとんどです。光の明るさをμmol/m2/sという単位で表した時に、真夏の直射日光は2000ぐらいなのが日陰や曇り空では100ぐらいになります。1/20ですね。でも、陰生殖物の場合は、種類にもよりますが、同じ単位で10から100の明るさの光が当たれば生育していくことができるので大丈夫なのです。では、なぜ陰生殖物が弱い光でも生育できるかというと、一つにはゆっくり生育していて無駄をしていない、ということがあるようです。ですから、一般に日の良く当たるところに生えている陽生殖物に比べると、生育の速度は遅くなります。(2009.5.17)


Q:塾の先生から前に聞いたことがあるのですが光合成をして生きていける動物(人)は実際にいますか?(2009.5.4)

A:海にいるサンゴは刺胞動物という動物の仲間ですが、体に渦鞭毛藻という藻類(光合成をする単細胞生物)を共生させていて、その藻類が光合成をして得た有機物に頼って生きています。また、クラゲも刺胞動物ですが、やはり、渦鞭毛藻を共生させて生きている例が知られています。一方で、人間が光合成により生きていくのは無理でしょう。人間が活動するために必要とするエネルギーはサンゴやクラゲに比べると非常に大きくて、それを光合成で支えようと思うと、最低でも数平方メートルの面積の葉が必要です。夜には光合成ができないことを考えると実際にはさらにその数倍の面積が必要でしょう。人間の体表面積は1平方メートルぐらいだという話ですから、たとえ藻類などを共生させて裸で日光浴をしても、残念ながら光合成により活動のエネルギーをまかなうことはできません。(2009.5.4)


Q:初めて質問させていただきます。個々の色素を吸光度計で測りたいのですが、液体のまま色素を分離する方法はないのでしょうか?もしくはクロマトグラフィーなどで分離した色素ををどうにかして液体にする方法を教えてください。なるべく早目の回答をお待ちしています。(2009.4.23)

A:有機溶媒などに溶けた色素を分離する方法としては、液体クロマトグラフィーという方法があります。これは、シリカゲルなどを詰めた筒に液体を通すと、色素の種類によって出てくるまでの時間が異なることを利用します。分離の仕組みは薄層クロマトグラフィーと同じです。液体クロマトグラフィーには専用の機械が必要ですが、薄層クロマトグラフィーの場合は、分離した色素のスポットの部分のシリカゲルを板から掻き取って小さな容器に入れ、そこに有機溶媒を入れることによって、色素をシリカゲルから有機溶媒に回収することができます。(2009.4.23)


Q:現在、マウスの受精卵に葉緑体を入れようとしている科学者がいるようですが、植物の核に取り込まれた葉緑体に関する遺伝子を選別して取り出すことは、難しいと思います。ならば、何億年も前に共生が起きたように、マウスの受精卵に藍藻を挿入して無理矢理共生させた方が手っ取り早いと思います。この考えは正しいのか、また、この方法は現実的なのか教えて下さい。(2009.3.29)

A植物の核に取り込まれたシアノバクテリア由来の遺伝子の数はおそらく数百ではきかないと思います。それをいちいち取り出して目的の宿主に入れるのは確かにあまり現実的ではないようにに思います。一方、シアノバクテリアを受精卵に入れる場合は、共生を成り立たせることが問題となります。「無理やり共生させる」といっても増殖速度が宿主より遅ければ消えてしまいますし、速ければおそらく宿主を殺してしまうでしょう。また、共生というからには物質のやり取りをしてお互いの利益にならなければいけませんが、そのやり取りも、多すぎもせず少なすぎもしない状態にする必要があります。現時点では、少なくともマウスの受精卵に葉緑体やシアノバクテリアを入れて共生状態を保つのは現実的ではないように思います。世の中には、一度共生によって葉緑体を獲得しながら再び失った生物が存在します。まずは、そのような生物に葉緑体を再獲得させるのなら、少しはハードルが低いかもしれませんね。(2009.3.29)

Q:先日質問させて頂いた者です。質問に丁寧にご回答して下さり、ありがとうございました。もう一つ質問させて下さい。人の手の甲などのの表皮を剥がして、真皮の上にシアノバクテリアを乗せ、再び表皮を被せたとします。この場合、シナノバクテリアは増殖しますか。よろしくお願いします。(2009.4.7)

A:まず、人間の側からすると、表皮や真皮は常に入れ替わっているわけですから、その入れ替わりの時間以上にシアノバクテリアを保持することは不可能です。その範囲内においてシアノバクテリアが増殖できるかどうかは、必要な光・水・二酸化炭素および何種類かの無機元素が供給されるかどうかによります。表皮はかなり光を通しますし、その他の物質もある程度供給されるでしょうから、何とか増殖するのではないでしょうか。ただ、その増殖速度はあまり速いようには思えませんね。(2009.4.8)


Q:初めて質問する高校生のものです。今学校で暗反応を調べたりしているのですが、どうしてもわからないところがあるので質問させていただきます。六炭糖二リン酸から六炭糖とリン酸に分解(?)する過程を教えてください。(2009.2.24)

A:「暗反応」というのはカルビン・ベンソン回路のことでしょうか?カルビン回路には六炭糖二リン酸としてフルクトース1,6ビスリン酸というのがあります。これは脱リン酸化されてフルクトース6リン酸にはなりますが、リン酸のつかない六炭糖にはなりません。何かと勘違いしているのではないでしょうか?(2009.2.24)


Q:ほんとにほんとにすいません。小さい小型の録音機の作り方教えてください。長時間できるものでお願いします。やり方詳しくお願いします。ほんとにすみません。(2009.2.16)

A:こちらこそすみませんが、光合成は音を出さないので録音はできません。植物は、蛍光という光は出すので、光を録画して光合成を解析する装置はあります。(2009.2.17)


Q:初めてメール差し上げます。米の様々な情報提供に関する仕事をしており、たびたび光合成質問箱を拝見、参考にさせていただいています。質問ですが、「イネを蛍光灯で育てるためには蛍光灯が何本あればよいか」ということに関し、単純に光の問題だけに絞って次のような算式を考えてみました。 8畳間30ワット蛍光灯2灯の明るさは300ルックスぐらい。 このときの光量子束密度は、300÷74=4μmol/m2/s イネの光飽和点光量子束密度は800μmol/m2/sぐらい ここから8畳間30ワット蛍光灯2灯の200倍の光が必要=30ワット蛍光灯400本/8畳。自信がないので、間違いなどご指摘いただけるとありがたく存じます。よろしくお願いいたします。(2009.2.4)

A:はい。そのような計算で大丈夫だと思います。順調な生育には800μmol/m2/sぐらいの光が必要だと思いますし。計算結果を見てもおわかりだと思いますが、イネを人工光で育てるのはなかなか大変です・・・。(2009.2.4)


Q:はじめまして。大学で植物学の授業をとっている者です。先日光合成について学んだときに、14CO2中で小麦を光合成させると最初に3-ホスホグリセリン酸のカルボキシ基にその炭素がラベルされることを学んだのですが、これにかかる時間はどれくらいなのでしょうか?また、同じ時間内に最終産物であるグルコースにもラベルされることはありますか?もしあるのでしたらどの炭素がラベルされるのかも教えていただきたいです。よろしくお願いします。(2009.2.2)

A:「かかる時間」の定義にもよります。二酸化炭素はルビスコという酵素によって固定されますが、この酵素の反応回転速度は、1/3秒程度です。ラベルがホスホグリセリン酸に検出できるまでにどの程度の時間がかかるか、ということでしたら、2秒で十分です。ただ、この時間範囲ではショ糖などにはまだラベルは検出されないようです。また、光合成の最終産物はグルコースではありません。実際の最終産物はショ糖やデンプンです。ショ糖やデンプンの合成過程で、グルコース-6-リン酸、グルコース-1-リン酸、UDP-グルコース、ADP-グルコースなどは作られますが。(2009.2.2)


Q:ATP合成の結合変換説とはどのようなものなのでしょうか?(2009.1.29)

A:一般的な名前として「結合変換説」というのはあまり使わないと思うのですが、どういうわけか一月の終わりにこの質問が来ます。光合成の質問2004年の回答をご覧ください。(2009.1.30)

Q:光合成の光化学反応の理論的なエネルギー収率の最大値は8,75%だと聞いたのですが、この数値の算出経緯がわかりません。どういった計算をすればこのような数値になるのでしょうか。(2009.1.29)

A:どこから聞いたのでしょうか?8.75%ということですよね?赤い光が有機物に固定される際のエネルギー効率は34%程度になるはずです。おそらく、講義の中か何かで、何らかの仮定が置かれて、それに基づいての数値なのだと思うのですが、その説明がないと何とも答えようがありません。「質問のコツ」を読んでから質問して頂ければと思います。(2009.1.30)

Q:曖昧な質問ですいません。講義の試験問題を事前に配られたのですが、その試験問題の中に、「光合成の光化学反応の理論的なエネルギー収率は8,75%です。その算出経緯を示しなさい。」という問題がありました。どういう仮定のもとでこの数値が算出されたのかについては、講義の中で説明があったと思うのですが、条件により光合成のエネルギー収率が変わるとは思っていなかったので、ノートには8,75%という数値だけをメモしていて、仮定や条件が大事とは思わず、メモしていませんでした。条件を示さずに質問してしまってすみませんでした。ところで、回答の中に赤い光が有機物に固定される際のエネルギー効率は34%程度になるとありましたが、この34%という数値はどのような条件で、どのような計算に基づいて算出されたものなのでしょうか。8,75%という数値がどのように出されたか、考える参考にさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。(2009.1.30)

A:光合成で使える一番長い波長の光(=エネルギーの低い光)は680 nm程度でしょう。光子1個のエネルギーは波長がわかれば決まります。一方で、二酸化炭素1分子を有機物に固定するのに必要なエネルギーもわかっています(475 kJ/mol)。これで計算すると3個の光子のエネルギーがあれば、二酸化炭素1分子を固定できる計算になりますが、実際の光合成系では、二酸化炭素1分子の固定に最低8個の光子が必要となります。そこで、8個の光子のエネルギーで二酸化炭素1分子を固定するエネルギーを割り算すると約34%という計算になります。より詳細な計算については、「光合成とはなにか」の第7章に「光合成の効率と速度 」という章がありますので、図書館などでご覧いただければと思います。(2009.1.31)


Q:光合成とずれますが科学にくわしそうなのでめんどうかもしれませんがお答えください。だれでもできる簡単な元素のとりだしかた教えてください。質問がはなれてしまってすいません。(2009.1.28)

A:「元素を取り出す」というのは、化合物もしくは混合物の中から1種類の元素だけを取り出す、ということでしょうかね。塩はナトリウムという元素と塩素という元素からなっています。ナトリウムと塩素が結合していた方が安定だから塩の形を取っているのですから、そこから逆にナトリウムだけを取り出すのは非常に困難です。一方で、単体の元素が安定である場合もあります。例えば炭はある程度純度の高い炭素であると考えても良いでしょう。硫黄もそうです。生物は炭素を含む有機物からなっていますから、例えば木を炭に焼けば炭素を「とりだした」ことになりますが、それがやりたいことでしょうか?(2009.1.29)


Q:こんにちは。高校生物の教員を目指しているものです。光化学系IIで、水が酸素とプロトンと電子に酵素分解される際のエネルギーはどのように補給されているのですか?(2009.1.17)

A:水が酸素になるという反応は酸化の反応です。普通、ある物質の酸化反応を引き起こすためには、その物質より強い酸化剤が必要です。光化学系IIでは光のエネルギーを使って強い酸化剤を作り出し、これを使って水の分解を引き起こしています。「どのように」という言葉で具体的に何を聞きたいのかがよくわからなかったのですが、このような答えで大丈夫でしょうか?(2009.1.18)


Q:1.光合成の仕組みの中で、電子の動きの構成を研究すれば、太陽光発電が、もっと効率よくできるようになるのではないのですか? そのような研究がどこかで、なされているのですか。
2.細胞の体液の濃度差の違いで、浸透されるのに、電子のやり取り(イオン反応)があるなら、濃度差による発電の原理になり、濃度差発電(海水)のようなものができるのではないでしょうか? このような、研究がなされているのですか?どうか、詳しく教えて下さい。 お願いいたします。壮年62歳(2009.1.13)

A:まず、植物の光合成における電子の動きに学んで、人工光合成を改良するという研究は行なわれています。しかし、太陽光発電においても、色素をくっつけて光を吸収する色素増感型と呼ばれるものなどは、植物のアンテナ色素に倣ったものといってもよいでしょう。2番目の濃度差の話は、おそらく、光合成や呼吸の反応で膜を隔てたpHの差がエネルギーになるということをおっしゃっているのだと思います。確かに、pHでなくとも塩分などに濃度差があればエネルギーを取り出すことは可能ですが、こちらの方は、生物のメカニズムに倣った研究というのは知りません。(2009.1.14)