絵でわかる光合成のしくみ その起源、進化、喪失に迫る

藤田祐一著、講談社サイエンティフク、2026年、271頁、2,600円

以前「光合成の教科書を振り返る」に書いたように、光合成の教科書はたくさん出版されているものの、光合成を一般向けに、かつ正面から解説した本は案外少ない。『光合成の世界』と『光合成とはなにか』(共に講談社ブルーバックス)ぐらいだろう。前者は55年前の本、後者でも出版されてから18年がたつ。そこに新しい本が加わった。今年の春に出版された本書は、その前半で生態系における位置づけ、光エネルギーの化学エネルギーへの変換、二酸化炭素の有機物への同化といった基本的な光合成のしくみを説明しているが、その最大の特徴は、副題にもある「起源、進化、喪失」が語られる後半にある。光合成の起源は30億年以上前にさかのぼり、その進化の過程はいまだに多くの謎を残している。この本の著者はまさに現在進行形でそのような研究を進めている。著者の専門であるクロロフィルの合成経路の変化から進化を議論する部分などを読むと、進化はゲノムのDNA配列の変化から考えるものだと思っている読者は、代謝からでも進化を議論できるのかと驚くかもしれない。本の前半でわかったことを面白く説明し、後半ではいまだにわからないことを研究する面白みを紹介することにより、若い読者にも光合成とその研究の魅力が伝わる本になっているのではないかと思う。文章は平易であり、高校の生物基礎で習うセントラルドグマをわざわざ途中で1章を割いて丁寧に説明している所を見ると、中学生にも読んでほしいという意図があるのかもしれない。進化を理解するために必要な系統樹に関しても、どのようにして系統樹が作られるのかから丁寧に説明されている。ただし、説明に出てくる化学構造式や官能基についてはある程度前提知識が必要だと思うので、実際には中学生には少し難しいだろう。最後に大学の漫画研究会出身の著者が書下ろしたイラストに触れないわけにはいかない。話には聞いていたその画才がどのように生かされているのか楽しみに見ると、本文にあまりにも自然に溶け込んでいてあまり目につかない。著者は大学院生時代にアルバイトで専門書のイラストを描いていたということなので、お手並み拝見と思って見たのがそもそも間違いだったということなのだろう。

書き下ろし 2026年9月