赤外吸収ガス分析計による光合成と蒸散の測定
光合成の速度を調べるためには様々な測定法がありますが(「光合成の測定」参照)、その中で、高等植物の葉の光合成を非破壊的に測定できるのが赤外吸収ガス分析計です。この方法は、二酸化炭素の吸収を測定することにより光合成活性を見積もることができるほか、植物の光合成にとって重要な意味を持つ蒸散速度の見積も行なうことができます。以下、その方法を見ていきましょう。
赤外吸収ガス分析計の仕組み
赤外吸収ガス分析計の原理
空気の主成分である窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気は可視光を通すため、見た目には透明です。このうち、1原子分子のアルゴン、対照的な2原子分子である窒素と酸素は、赤外領域の光に対しても透明ですが、非対称的な分子である二酸化炭素と水蒸気は赤外線を吸収します。従って、赤外領域での吸収をモニターすることにより、二酸化炭素の濃度変化を見積もることができます。この際、試料をどのように扱うかによって閉鎖型(クローズド・システム)と開放型(オープン・システム)の装置があります。また、見たいのは二酸化炭素の濃度変化ですが、水蒸気も赤外領域に吸収を持ちますから、この影響を補正する必要があります。その補正の仕方にもいくつかあり、使用する装置によって異なる補正方法がとられている可能性があります。
測定と補正の方法
葉を試料室の中に置いて光合成をさせれば、二酸化炭素は固定されて気相中の濃度が減少します。従って、その気相の赤外吸収をモニターしておけば、その吸収減少の速度から光合成の速度が求まります。閉鎖型の装置では、閉じられた試料室中の二酸化炭素濃度の変化をモニターするので、一度の測定で、複数の二酸化炭素濃度における光合成速度が求まります。一方で、開放型の装置においては常に気相を試料室に流しておいて、試料室に入る前の気相の二酸化炭素濃度と試料室から出てくる気相の二酸化炭素濃度の差から光合成速度を求めます。水蒸気の影響の補正には、湿度を乾燥剤で0にしてしまうといった単純な手法や、湿度計を使って水蒸気量を求めておいてその分の赤外吸収を補正する場合、そして、二酸化炭素と水蒸気のそれぞれの吸収を別々の波長で測定することによって、補正する場合などがあります。LI-Cor社製のLI-6400というタイプの光合成測定装置においては、開放型の試料室と、2つの波長において吸収を測定することにより水蒸気の影響を補正する方法がとられています。
赤外吸収ガス分析計
光合成測定のための赤外線ガス分析計として一番広く用いられているのは、LI-Cor社のLI-6400などのシリーズです。LI-6400による光合成測定のプロトコールを以下に載せておきます。