光合成の質問2017年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:先生の本「光合成とは何か?」を読んで光合成に興味を持ちました。その中で、プラストキノールが内側のリーフレットから外側のリーフレットにフリップフロップしてプロトンを運ぶので、プロトン勾配ができるというお話がありました。それに関して詳しく検討してみたいので、その根拠となる実験の論文を教えていただけませんでしょうか?また、化学にはとっても疎いのですが、プラストキノールのプロトンの解離定数を測定した実験の論文をご存知でしたら、ご紹介くだされば幸いです。(2017.12.29)

A:プラストキノンがプロトン濃度勾配の形成にかかわっていることは、長年の研究で明らかになってきたことですので、一つの論文でぱっとわかったことではありません。光化学系IIのストロマ側にプラストキノンの結合部位があり、シトクロムb6/f複合体のルーメン側にプラストキノールの酸化部位があるということも、少しずついろいろな証拠からそれが推定されて、1990年代には誰もがそうだと思っていたはずですが、それが確定したと言えるのは、二つの複合体のX線結晶構造が明らかになった時でしょう。その意味では、キノン回路の存在の確証となったという点から考えても、シトクロムb6/f複合体の構造を初めて報告した栗栖さんたちの論文Kurisu et al. (2003) Science 302: 1009-1014は重要かもしれません。プラストキノールについては、一般的に想定される解離定数を考えるのは、難しいのではないでしょうか。酸がプロトンを解離する場合とは異なって、プラストキノンのプロトンの結合は酸化還元反応と共役していますから。そして、その共役こそが、電子伝達によってプロトン濃度勾配ができる仕組みそのものなわけです。 (2017.12.29)


Q:平場でリンドウを栽培しています。リンドウは宿根草で地下部に養分を蓄え、数年栽培しますが、近年、夏が異常に暑く、株がもちません。株をもたせるには、遮光や土壌水分を十分保つなど、光合成を促進させることを考えればよろしいのでしょうか?また、強日射も株へストレスをけると考えられるでしょうか?(2017.12.20)

A:リンドウは園芸品種もありますから、一概には言えないかもしれませんが、真夏の直射日光などがストレスになることは十分考えられます。したがって、おっしゃるように真夏の遮光、土壌水分の保持は重要だと思います。ただ、これらは、光合成の「促進」というよりは、光合成の強光や乾燥による阻害の緩和の側面が大きいでしょう。ただ、高温自体の影響はなかなか避けることは難しいと思います。温度以外のストレスがなるべくかからないようにして、最低限の生育を維持するぐらいしか手段はないように思います。なお、僕自身は光合成の専門家であっても、植物の栽培の専門家ではありませんので、一般的な植物の特徴から考えた場合のお答えであることを申し添えます。(2017.12.21)


Q:光合成に関連してCO2濃度の差異を目に見える形で小学生や主婦の方々に理解させる身近な方法をアドバイス願います。イメージ的には、人の吐く息を詰め込んだ(またはCO2濃度を高める身近な方法により)容器または袋みたいなものに、CO2・O2チェッカーのプローブとできれば植物も入れてCO2濃度の変化を見るみたいな方法です。具体的には手持ちのCO2・O2チェッカーでのCO2表示0.04%からの数値の増減を見せたいと考えています。このような実験方法は可能でしょうか?密閉空間に、ストローで息を吹くこむとか身近なCO2濃度を高めるのはどのような方法がありますか?このような容器、袋・・身近に作ることのできる実験環境をご教示願います。どうぞ宜しくお願い致します。(2017.12.17)

A:中学校の理科の教科書に載っている定番の実験として、植物の葉を入れた(もしくは対照実験として入れない)試験管に息を吹き込んでゴム栓をしてしばらく光に当て、その後、その試験管に石灰水を少量入れて振って濁るかどうか見る、というものがあります。従って、ご提案のような方法で実験は可能ですし、CO2濃度を高める方法としても、息を吹き込むので十分です。プローブを入れるのであれば、試験管よりもビニール袋の方が良いかもしれません。特に「作る」というほどの実験環境ではありません。CO2チェッカーであれば、検出感度も問題ないと思います(酸素濃度で光合成を検出しようとすると、当然ダイナミックレンジが厳しくなります)。(2017.12.17)


Q:光合成で作られるものについて質問です。1.植物の葉、茎、幹、花、果実、種子、根それぞれすべてが光合成で作られた有機化合物という理解ですが、これは正しいですよね?2.また、別の分類(例:でんぷん)で言えば、でんぷん、セルロースとか・・・ほかにどのようなものがあるでしょうか?3.そして1で列記されたそれぞれは、2で教えていただくどの項目に該当するものなのか?教えていただきたい。例えば、根(芋)はでんぷんとかというふうに・・。具体的な身近な例を上げて、小学生にわかるレベルで説明していただければ幸いです。どうぞ宜しくお願い致します。(2017.12.7)

A:1.「ほぼ」正しいと思います。ほぼ、というのは、例えば、植物は、無機化合物も含むからです。例えば、イネの葉が固いのにはケイ酸が寄与しています。正確に言えば、「植物の体の有機物は、すべて光合成で得られた有機物が材料となっている」ということだと思います。もちろん、寄生植物などは除きます。2.光合成の直接の産物には、デンプン、セルロースの他に、ショ糖やその他の糖類があります。その他の有機物としては、例えば、タンパク質、脂質、クロロフィル、DNAなどがあります。3.根は確かにデンプンの含量が高い場合が多いのですが、デンプンの他にも様々な有機物を含んでいます。植物の器官と有機物の種類の間に、1対1の対応があるわけではありません。(2017.12.7)


Q:植物の一生を考えた場合:芽が出て成長の過程で光合成によりCO2を吸収しO2を発生する。一方、呼吸のケース、枯れて・朽ちてあるいは食べられるとか燃えて土に戻るケースは逆にO2を必要とし、CO2を発生する。植物の一生を考えた場合、CO2/O2は増減なしのプラスマイナスゼロの理解で正しいですよね?従って炭素あるいはCO2を何かに(例えば、材木)固定して残さない限りCO2は減らないということですよね?そして、食物連鎖の最上位に君臨する人間の数が70億人以上存在する、また牛豚鶏の数も莫大な現在、それら自体でCO2発生の要因となると思いますが、いかがでしょうか?これについても、もとはと言えば、植物の光合成がベースにあるから、CO2/O2は増減なしのプラスマイナスゼロとの理解はできますか?また、大昔からの石油・石炭・天然ガスの化石燃料あるいは、永久凍土の下に埋もれた動植物の残骸ともいうべきものは、掘り出さない限りは炭素の固定になっているということですよね?CO2/O2の増減について教えて頂ければと存じます。どうぞ宜しくお願いします。(2017.12.7)

A:はい。すべて正しい理解です。植物が生育して吸収したCO2は、すべて朽ち果てた際にはすべて放出されます。材木などの形で残らない限り、プラスマイナスゼロになります。人間や家畜は、呼吸をしていますが、それらは、生態系の中で植物と釣り合いをとって生活をしている限り、これもプラスマイナスゼロです。また、化石燃料は、使わない限りにおいて、炭素の固定になっています。ただし、植物の生育速度に比べて朽ち果てる速度は一般的に遅いので、植物が早い速度で繁茂している場所では、(朽ちない部分が蓄積していくことによって)CO2の吸収源になることが多いでしょう。(2017.12.7)


Q:光合成の波長域700nmは1mol 170kjのエネルギーがあると本で読んだことがあります。一方、ある施設園芸セミナーに参加した時に冬の晴天日で1000μmol、夏の晴天日は2000μmol程度であるとの話を聞きました。気象庁のデータでは全天日射が夏で多い日には28MJ前後となります。最もエネルギーが小さな700nmの波長で考えても2000μmol以上となるような気がしますが、どのように考えればよいか教えてください。(2017.11.22)

A:すぐ下の質問に対する答えにもありますように、通常の全天日射量は、赤外領域なども含めたエネルギー量であるのに対して、園芸や植物生理学の分野で扱うのは光合成有効放射(400-700 nmの可視光領域の光:クロロフィルの吸収する光でもある)です。まずは、そこで約2倍の差が生じます。あと、エネルギーの小さな波長で計算すれば、エネルギーあたりの光子数はより多くなります。ご質問の「700nmの波長で考えても」という表現からは、そこを逆に考えているように思われます。その二点を踏まえて計算すればよいと思います。その際、「1000μmol」という表記はせず、時間と面積の単位も省略せずに考えて、単位が合うことを確認することをお勧めいたします。(2017.11.22)


Q:放射照度(W m-2)からluxへの変換について質問がございます。NEDOの日射量データベースの水平日射量値を用いluxへ変換してみました。広島市の9月1日の12時頃を例にすると水平日射量は3MJ/m-2程度もあり,換算すると3MJ/m-2は,20.6万lux(3×(1000000/3600)×4.57×54)となり,値が高すぎるように思われました。NEDOの日射量データベースには,水平日射量の他に,直達日射量や散乱日射量のデータがございますが太陽光の放射照度(W m-2)からluxへ換算する場合,水平日射ではなく,直達日射量を用いた方が良いのでしょうか。お手数をおかけし,申し訳ございませんがご教授頂けないでしょうか。よろしくお願いいたします。(2017.10.20)

A:NEDOの日射量データベースの場合、おそらく太陽放射の全波長領域が対象になっていると思います。一方で、光合成の森で紹介しているThimijan and Heinsの論文では、「光の単位の換算」の表の直前の文でも述べているように、波長領域は 400-700 nm であることが前提となっています。実際には、太陽放射の中で 400-700 nm の可視光が占める割合は、おおざっぱに言って5割程度です。一方で、サイトに載せている比視感度のスペクトルをご覧いただければわかりますように、 400-700 nm の外の比視感度は、基本的に0と考えてよいので、元データが太陽放射の全波長領域を対象としている場合は、換算して得られた数値をさらに約半分にしないといけないことになります。実際に計算して得られた数値が約20万luxとのことですので、これを半分にすると約10万luxとなって、だいたいそれらしい値になるように思います。(2017.10.20)


Q:LED街路灯が動植物に害がある事は近年の研究で知られていますが、光合成にも障害を与えている報告があります。国策として日本中にLED光源が溢れていますが、どのような仕組みで植物を枯らしているのか、分りやすく教えてください。(2017.9.13)

A:LED街路灯の害ですが、植物関係の学術論文を調べた限りでは、そのような報告を見つけることができませんでした。当該学術論文の書誌情報(著者名、雑誌名、巻号、ページ番号)を教えていただければ、調べてみることはできます。(2017.9.14)


Q:初めまして、こんにちは。植物の葉の気孔密度に関しての質問なのですが、自分で調べたところ気孔密度の変化には光強度や大気中のCO2濃度といった環境要因が関わっているとの記載がありました。そこには強い光強度で気孔密度が増大すること、また多くの植物では大気中のCO2濃度が高いほど気孔密度が低下するということが書いてありました。今回疑問に思ったことは後者の大気中のCO2濃度に関してです。個人的には大気中のCO2濃度が高いときには光合成を多く行うことができると考えられます、そのために普通は気孔の数を増大させるのではないかと考えていたので、記載されていた事柄とは矛盾が生じてしまいます。
 そこで質問なのですが、もし大気中のCO2濃度が高いと気孔密度が低下するのが正しいのだとしたら、なぜ気孔密度が低下するのか?また光強度、CO2濃度以外にも気孔密度を左右する環境要因が明確にあるとしたらそれは何なのか、可能であればその理由も簡単にご教示いただきたいです。よろしくお願いします。(2017.7.7)

A:これは、そもそも植物が何のために気孔を持つのかを考えれば理由は明白だと思います。もし二酸化炭素を取り入れるだけなら、小さな開閉のできる気孔を作る代わりに、大きな穴をたくさんあけておいた方がよいはずです。ただ、そうすれば、水がどんどん蒸散して、しおれてしまうのが目に見えていますよね。水がなければ、いくら二酸化炭素があっても生きてはいけませんから、気孔を作って蒸散を抑えているわけです。もし、植物が、光合成が最大になるように二酸化炭素の取り込みと蒸散のバランスをとっていた(二つの条件がちょうどどちらも光合成を律速するようになっていた)とすれば、大気中の二酸化炭素濃度が上がった場合には、蒸散の方が律速になるでしょう。その場合、二酸化炭素は大目に入ってきていて律速ではなくなっていますから、気孔を少なくして(もしくは短期的には気孔を閉じて)蒸散を抑えたほうが、光合成の稼ぎは大きくなるはずです。これが、気孔密度を低下させる理由でしょう。
 これを考えると、例えば、蒸散が律速にならないような環境条件、例えば根からいくらでも水を吸い上げられるような条件では、気孔密度を上げてもよいはずです。そのような推論がいろいろできると思います。一方で、おそらく質問の意図とは外れると思いますが、気孔密度を左右する一番明確な環境要因は、水没です。水草の中には、水中でも、気中でも葉を展開できるものがありますが、通常、水中葉では気孔密度は大きく低下します。この理由は、気孔が水中では役に立たないことを考えれば明らかでしょう。(2017.7.7)


Q:学校の総合の授業の個人探究で、二酸化炭素の吸収量が多い野菜について研究しています。二酸化炭素濃度計、照度計、葉面積のデータを取っていて、週に一回土日のどちらかに、10時、12時、14時、16時の四回測定をしています。光合成による二酸化炭素の減少を見るため、一株ずつ袋をかけて、中の空気の変化を実験しています。現在までに、実験した野菜は、キャベツ、ネギ、ピーマン、トマト、キュウリ、ナスのわずか六種類です。この中では、ピーマンが一番二酸化炭素の吸収量が多いのではないかと考えています。それは、ピーマンは、一番二酸化炭素の減少率が良く、安定して二酸化炭素を吸収している野菜だったからです。また、ピーマンは、葉のつき方ができるだけかぶらないようについているので、光合成も効率よくできていたのではないかという根拠も考えられます。
 指定野菜(ダイコン、ニンジン、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、ネギ、レタス、キュウリ、ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、サトイモ、タマネギの14種類)の中で、時間的に育てられなかった野菜についてどんな結果が予想されるか教えていただきたいです。また、二酸化炭素吸収量が多い野菜は何か断定できるのであれば、理由とともに教えてください。もしも、あまり差がない場合は、この野菜とこの野菜は光合成の観点において、似ているなどでも構いません。(2017.6.30)

A:中学生とのことですが、しっかりした文章ですし、きちんと考える能力を持っているようですので、最初に厳しめのコメントを二つ書いておきます。
 1.中学の個人研究といえ、研究と名の付くからには、予想や理由を人に聞くようでは困ります。研究で重要なのは、自分のとったデータから何が結論あるいは推論できるかという点です。データと無関係に人から聞いた事実あるいは意見をもとにレポートを書いたとしても何の意味もありません。6種類は実験をしたけれども、残りの8種類は実験をしていない場合、その8種類については本当に何もわからないでしょうか?6種類の植物で実験を行った結果から二酸化炭素吸収量が多いのはどのような野菜なのかを考えてより一般的な仮説を立てることは可能でしょう。そして、その仮説を残りの8種類の植物に適用した場合に、どの植物で二酸化炭素吸収量が多いことが予想されるのかを自分で考えることはできるはずです。そのような一般化は、自然科学の研究の醍醐味の一つです。そして、そのような予想は場合によって次の実験につながるでしょう。その予想・実験のサイクルの(場合によっては何段階もの)繰り返しこそが研究なのです。
 2.自然科学の実験において、実験条件というのは極めて大事です。それがわからなければ答えようがありません。文面では、野菜というだけで、測定対象が何かが明示されていません。「葉面積のデータ」とあり、また「葉のつき方が」という話があるので対象は葉なのだと思いますが、例えばキャベツの葉というのは丸い部分を含むのでしょうか、それとも外側に広がっている葉だけでしょうか。さらに、二酸化炭素吸収量というのは葉面積あたりなのでしょうか。また、実験の際の光は、それぞれの植物が生育している環境の光なのでしょうか、それとも生育光とは別に一定の光を当てているのでしょうか。例えば、強い光を好む植物と弱い光のもとで生育する植物に、強い光を当てて光合成を測定すれば、前者の二酸化炭素吸収量の方が多くなるでしょう。一方で、ごく弱い光を当てた時の光合成は、後者の方が高くなるかもしれません。イネとサボテンの光合成はどちらが高いか、考えた場合、水田に植えればイネの光合成の方が高いでしょうけれども、砂漠に植えればサボテンの光合成の方が高いでしょう。ここで挙げられた野菜の中で、キュウリやトマトは夏野菜なのに対して、ホウレンソウは冬野菜です。生育に必要な条件は大きく異なりますから、実験をどのような季節に行うかによっても、結果は異なる可能性があります。いずれにせよ、条件をそろえた時の光合成が知りたいのであれば、どのような条件なのかを細かく示す必要があります。
 さて、その上で、答えを書くのではなく、どのように考えればよいのかを書いてみます。
 まず一つ目の観点は成長との関係です。光合成により吸収された二酸化炭素は、植物の体を作るために使われますから、光合成をたくさんすれば、より体を大きくすることができるはずです。つまり成長が速い植物ほど二酸化炭素をよく吸収しているのではないか、という予測が立ちます。ただし、ここでいう植物の体は葉と茎には限りません。芋などには光合成の産物が貯められますから、根も含めて、どれだけ速く成長するのかという視点が重要でしょう。また、成長を考える上では、もし葉面積あたりで光合成を考えるのであれば、当然、葉面積あたりの成長量を考える必要があります。
 二つ目の観点は、葉の色です。光合成には、葉のクロロフィルが重要な役割を果たします。クロロフィルは緑色の色素ですから、葉の色が非常に薄いものは光合成の能力が低いことが予想されます。例えば、キャベツの球になっている部分の内側などは、緑がかなり薄くなっていますから、光合成の能力はそれほど高くないことが予想されるでしょう。
 三つ目の観点は、葉の厚みです。もし、葉面積あたりで光合成を比較するのであれば、面積が同じであれば、薄っぺらな葉でも分厚い葉でも同じとして扱うことになります。この場合、葉の体積当たりの光合成が一定であれば、分厚い葉ほど、葉面積あたりの光合成は高くなるはずです。例えば、ヒマワリは非常に強光条件下での葉面積あたりの光合成が高い植物ですが、それは、この葉の厚みでかなり説明できます。しかし、当然ながら、光合成を葉の体積当たりで比較する場合には、ヒマワリは特別光合成がたかくないかもしれません。これも、測定条件の重要性を示しています。
 いずれにせよ、まずは自分の実験結果から何が言えるのかを考えるのが最初でしょう。(2017.7.1)

Q:前回は、丁寧なご回答ありがとうございました。実験条件が重要になるというアドバイスをいただいて、以下のような実験条件を前回の条件に加えて決めました。一つ目に、葉面積は、写真を真上から撮って(葉が全部映った状態で、定規と一緒に)、印刷したものを葉だけに切ったものと映っている定規5センチ×5センチの正方形に切ったものを、比を使って求めているので(葉の面積:正方形の面積=葉の重さ:正方形の重さ)、真上から見て、葉がかぶってしまっているものや、キャベツなどの内部の葉は、葉面積に含まれないものとして計算しています。二つ目に、二酸化炭素吸収量については、それぞれの野菜の葉面積を変えることは品種改良しないと不可能なので、効率の良さを求めることでは葉面積当たりの二酸化炭素吸収量を用いて、二酸化炭素吸収量は10時台と12時台で二酸化炭素は減っているか、12時台と14時台で二酸化炭素は減っているか、14時台と16時台で二酸化炭素は減っているかという見方で比べることにしました。三つ目に、実験の際の光は、育てるのに適している時期や家庭菜園に向いた苗を利用し実験しているので、それぞれの野菜が生育している環境の光だといえると思います。このような条件で、結論の一般化は可能でしょうか。自分の実験結果をもとに、ほかの実験できていない野菜を含めた一般化の結論を考えてみたので、ご意見を伺いたいです。
 二酸化炭素吸収量が多い(2時間ごとの二酸化炭素量結果の比較から)のは、ピーマンで、続いてナス、トマトが同じくらいという結果だったので、これらの共通点を探すとナス科ということがわかりました。また、キャベツやキュウリは二酸化炭素吸収量が少なかったので、キャベツからは、アブラナ科が、キュウリからは、ウリ科が、それぞれあまり光合成には適していないといえるのではないかと考えました。しかし、根菜類の野菜(大根、ニンジン、サトイモ、ジャガイモ)はデータがなく、どのような結果を利用して予想を立てればよいのかわかりません。どのように一般化できるのか(方法など)、上のような一般化の考え方は適しているのか、教えてください。(2017.7.9)

A:まず最初に、考察や仮説に「正解」があるわけではありません。自分なりに考えることが重要なのです。考えたうえで、一般化した仮説は、次の実験で確かめればよいわけですし、そこで実際には仮説が間違っていた場合でも、それは「適していなかった」わけではありません。考えて実験をするというプロセスが研究の一番大事な点なのであって、否定される仮説も立派に役に立つ仮説なのです。
 今回提案されている一般化の観点は分類ですね。これは別に悪くはないのですが、頭の知識です。知識も重要ですが、自然科学の実験で一番重要なのは観察です。植物を育てていた時に、葉の色の濃さ、葉が増えていく速度、葉の厚み、葉の形、茎の高さ、などを観察していたでしょうか。植物が植えられている場所の土の様子はどこも同じだったでしょうか。光のあたり方はどうだったでしょうか。そのような観察をどれだけしていたかが、観点を増やすには重要なのです。仮説は、ある一つの事実から、正解として一つの仮説が導かれるといったものではありません。様々な仮説を、様々な観点から立ててみて、得られた実験結果を一番よく説明できる仮説を選ぶのが普通です。そのためには、なるべくたくさんの観点を持っておくことが重要です。そして、さらにそのためには、どれだけ対象の生物や環境を細かく観察しているのかが重要になるのです。(2017.7.9)


Q:デンプンとショ糖の分析についての質問です。現在、ハウスでトマトを栽培している大学院生です。昼間に光合成が抑制させるメカニズム(水分ストレスや糖の蓄積)を知りたく、デンプンとショ糖の日変化を測定したいと考えております。その際に各時間(たとえば午前10時と12時)に葉を採取し、分析しようと考えています。そこで質問があります。各時間に採取した葉を乾物にして、保存し、後で分析することは可能でしょうか?乾物にしたことによる影響や時間が経つことの影響はないのでしょうか?(2017.6.30)

A:一般論としては、デンプンもショ糖も安定な物質ですし、変性や吸着の心配も普通はありませんから、乾燥試料として保存したのちでも定量は可能だと思います。ただ、論文として成果を発表する研究として実験をするのでしたら、同じような目的で、できれば同じ材料で測定した論文を見つけてその方法に従うのが本来かな、と思います。100%影響はない、と言い切るのはどんな場合でも不可能ですし、例えば(そんなことはないとは思いますが)トマトの葉は乾燥の過程で特別な酵素が活性化してショ糖が分解される、といったことがないとは言い切れません。もちろん、他の論文の方法だからといって問題ないとは限りませんが、少なくとも、その論文に従ってやったと根拠を示すことはできるようになります。(2017.6.30)


Q:初めまして、インゲンマメの成長について教えて下さい。同じくらいの大きさに育っている3本のインゲンマメの苗を、バーミキュライトを入れたはちに植えかえ、次のA~Cの条件で育てました。
A、水を加えて、日光の当たるところに置いた。
B、肥料をとかした水を加えて、日光の当たるところに置いた。
C、肥料をとかした水を加えて、暗いところに置いた。
はじめの頃に最も背丈が高くなるものをA~Cから選び、記号で答えなさい。
という問題で、私はBだと思いましたが、答えはCでした。どうしてですか? 苗の育ちはじめは、日光がない方がヒョロヒョロと背丈が成長しやすいのでしょうか?日光や肥料があるなど、条件が良い方が植物はよく育つと思ってしまいました。よろしくお願いします。(2017.3.11)

A:「最もよく育つ」ではなく、「最も背丈が高くなる」という点が味噌かもしれませんね。植物は、真っ暗の状態の置くといわゆる「もやし」になります。そして、もやしになった植物は、たいてい光を当てて育てている植物よりも背丈は高くなるのです。まさに推測なさっているように「日光がない方がヒョロヒョロと背丈が」高くなるのです。これは別に苗の育ちはじめだけでなく、かなり大きくなってからでも同じです。問題で「はじめの頃に」と限っているのは、苗の育ちはじめという意味ではなく、「暗いところに置いてしばらくの間」という意味でしょう。これは、暗いところにしばらく置いてもやしになって背が高くなった植物でも、そのままずっと暗いところに置き続ければ光合成ができずに枯れてしまって、そうすると日光のあたる植物に追い抜かれてしまうので、「そのような条件ではないよ」ということを問題として明確にしたのだと思います。(2017.3.11)


Q:ホームページを見て勉強させていただいております.LI-6800でガス交換・クロロフィル蛍光測定を実施しているのですが,葉幅が小さく(例えば0.5cm程度),チャンバー内のLeaf areaを測定するためのアイデアがありません.Leaf areaの値が同化量の絶対値に大きく左右するため,精度よく測る必要があると考えております.しかしながら,測定チャンバーとLED光源が一体でとりはずせないため,葉をはさんだ状態をカメラ等で撮影することができません.ご教示いただければ幸いです.(2017.3.10)

A:チャンバーを小型のもの(たとえば鳥の嘴のような形で先端に光が照射される窓がついているタイプ)に取り換えて、光源自体も別のものを使うのが一つの方法だと思います。これだと、小さな窓を覆う程度の大きさの葉であれば問題なくなります。それでも0.5 cmだと隙間ができてしまうかもしれませんね。イネの葉のように葉身の中央部をとればほぼ長方形に近似できる場合には、チャンバーの幅に直角に葉を置いて、チャンバーの幅×葉の幅で面積を出しても、それほど大きな誤差は出ないと思います。ただ、例えばシロイヌナズナの葉のように、形が不定形の場合は、それも難しいように思います。そのような場合は、逆に、葉よりも十分に大きなチャンバーを使い、葉の基部以外はチャンバーの内側に収まるように葉をはさんで、基部のはさまれた部分の面積は、チャンバーの外側の部分の幅から見積もるぐらいかな、と思います。(2017.3.10)


Q:ジップロックにカリフラワー(50g)を入れ、明所と暗所にそれぞれ2時間置いた後、気体検知管で酸素濃度と二酸化炭素濃度を調べるという実験を行っています。この実験を2回行いました。結果は、酸素は暗所の方が値が大きく、二酸化炭素は明所の方が値が大きくなりました。カリフラワーには葉緑体が無いので、光合成は行っていないという解釈で大丈夫なのでしょうか。また、二酸化炭素の結果で明所の方が二酸化炭素量が多くなった原因として考えられるのは、どのようなことなのでしょうか。(2017.1.14)

A:光によって二酸化炭素の放出が多くなったのであれば、呼吸を上回る光合成はしていない、という結論でよいと思います。放出が多くなった原因として一番考えやすいのは、光照射による温度上昇です。温度の上昇によって呼吸速度が増大するのは、よく見られることです。(2017.1.14)