光合成の質問2007年
このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。
Q:「夢の植物を創る」ということで、酸素を大量に発生する海藻を創りたいのですが、それにはどういった要素が必要となるのでしょうか。酸素は光合成の産物でもあるので、光合成を盛んに行うもの程多く発生すると思うのですが…。また、光合成の速度はあまり水温などに関係しないのでしょうか。必要と思われる様々な要素を教えて戴けたらと思います。(2007.12.19)
A:おっしゃるように酸素は光合成の産物ですから、酸素の発生量は、光合成の速度に依存します。光合成には基質となる二酸化炭素と光が最低限必要です。一般に、水の中の場合は、光が弱いこと、そして二酸化炭素は水に溶けることから、光合成を律速する環境要因は二酸化炭素よりは光になることが多いようです。また、全ての生化学反応と同様に適切な温度も必要です。光合成の機構としては、光を吸収する色素を持つ光化学系を含む電子伝達系とATPの合成装置、そして炭酸固定系が必要となります。光合成のより詳しい機構については光合成の教室をご覧下さい。(2007.12.19)
Q:お忙しい所申し訳ありません。以前(今年の9月頃)、光の単位の換算について質問させて頂いた者です。その後、セントポーリアにLED照射(約20μmol/m2/s)して、その応答を測定しております。実験内容は、密閉型の容器にセントポーリアを入れ、LEDを照射し、容器内の二酸化炭素量の変化を測定しております。その結果、納得のいかない実験データが得られ、色々調べましたが解決できておりません。申しませんありませんが、質問させて頂きます。実験した結果、容器内の二酸化炭素濃度はLEDを照射する事で減っていき、ある濃度(約2〜300ppm)までいきました。しかしその後、容器内の二酸化炭素濃度が上昇していき大気レベルより高くなってしまいました(3時間後には約5〜600ppm)。一般的には、容器内の二酸化炭素濃度は平衡状態となるはずですが、これは何か植物の生理作用が働いたのでしょうか?また、照射時間も関係するのでしょうか?LED照射は実験の1時間前から当て、普段は室内の蛍光灯の当たる所に置いてます。実験を始めたばかりで、これから実験をどのように行っていくか決めかねております。以上宜しくお願いします。(2007.12.7)
A:「容器にセントポーリアを入れ」というのは、葉の部分だけを入れたのでしょうか?それとも鉢ごと入れたのでしょうか?それによってもだいぶ違いますが。いずれにせよ、もし、測定自体が問題なくできているのであれば、二酸化炭素濃度が大気レベルよりも高くなることは呼吸(と場合によっては土壌呼吸)が光合成を上回っていることを示しています。一般論としては、植物体がダメージを受けると光合成の活性はほぼ確実に低下しますが、呼吸の活性はむしろ上昇する可能性があります。従って、一番ありそうなことは、密閉容器内におくことによって植物にストレスがかかり、結果として光合成が低下し(場合によって呼吸が増加し)て二酸化炭素濃度が増えた、という可能性です。細かい状況がわかりませんので、何とも言えませんが、3時間通常の生育環境と違う所に移すことがストレスになることは十分考えられます。
あと、そもそも実験の目的は何でしょう?「これから実験をどのように行っていくか」は、何を知りたいのかということによるかと思います。もし光合成に対する影響を見たいのでしたら、測定すべきなのは二酸化炭素濃度ではなく、二酸化炭素濃度の減少速度です。また、光合成速度は二酸化炭素濃度に依存します。ですから、最初の状態の減少速度と、その状態で3時間おいた後の減少速度を比べることには意味がありません。知りたいことに回答を与えるような実験をデザインしなければ、どんな実験をしても意味のある結果は得られないと思います。(2007.12.7)
Q:ご回答ありがとうございます。植物は鉢ごと容器に入れて実験を行っております。そのため、実験結果は植物の光合成や呼吸、土壌呼吸を総合して得られることになります。先生のおっしゃるように、密閉容器内では植物にとってかなりのストレスになり光合成活性が低下したと思われます。ありがとうございます。
実験の目的は、大気中のガスフラックス(容器内の単位時間当たりのガス濃度変化)を多成分同時に非接触で測定することが目的です。今までの実験で、メタン、二酸化炭素、水については定量することができました。そこで、今回は、LED光を照射し、容器内の二酸化炭素濃度の変化から光合成速度を算出しようと試みております。既存の光合成速度を測定する機械では、葉一枚から光合成速度を算出しておりまして、葉の光の当たり方などによりかなり変わり、精度に問題があると思われます。そこで、非接触でガス濃度(二酸化炭素、水など)を同時に算出出来ればと思っております。そのため今後、植物にとってストレスにならない時間間隔(容器内の二酸化炭素濃度が上昇に転じる前)で測定を行い、その後換気を行い、再び測定を行う、という手順で実験を行っていけばよろしいでしょうか。実験では、LED光を照射し光合成速度の変化(光合成の影響)を測定していきたいと思っております。(換気などにより二酸化炭素濃度を一定にすることが前提になりますが)知識不足で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。(2007.12.10)
A:やはりどうも実験の目的がわかりません。植物体全体を容器に入れてLED光を照射して二酸化炭素濃度の減少を測定したとしても、鉢の置き方によっても光のあたり方は異なりますから、異なる測定結果が出てしまいますよね。とするとそもそも実験の再現自体ができないと思います。鉢の置き方を固定して、例えば、メタンの濃度変化と二酸化炭素の濃度変化を関連づける、ということ自体は多少の意味を持つかも知れませんが、その場合でも、二酸化炭素濃度は光の影響が大きく、メタンの濃度は影響が小さいことが予想されますから、やはり、鉢の置き方一つで違う結果になってしまいます。とすると、そもそも、やるたびに結果が違ってしまって、自然科学の実験として成り立たないように思うのですが・・・。葉の光合成速度は、通常、単位時間あたり単位葉面積あたりの二酸化炭素吸収量で示します。例えば、単位はμmol
m-2 s-1 という形になります。これで、大気条件の二酸化炭素濃度で飽和光で測定することにより、異なる実験の間でも比較できるようにするわけです。飽和光をあてることによって、「葉の光の当たり方などによりかなり変わ」らないようにしているわけですし、一定の二酸化炭素濃度で測定することによって、再現性のある光合成速度が得られるようにしているわけです。
「換気を行い、再び測定を行う」意味もよくわかりません。これは密閉容器に入れて時間をおくことにより、どのように植物がストレスを受けたかを知りたい、という意味でしょうか?おそらく2回の測定の間には、二酸化炭素濃度が植物の影響で変化していきますから、その処理の条件自体が植物の状態によって変化してしまうことになります。とすると、この場合も、再現性を見るという基本的なことが極めて難しいように思います。(2007.12.10)
Q:ご回答ありがとうございます。先生のおっしゃるように、この実験では再現性の確保は困難であることがよく分かりました。光合成速度の定義をよく理解しておりませんでした。勉強不足で申し訳ありません。「換気を行い、再び測定を行う」の点ですが、容器の蓋を開け大気条件に戻してから測定を行う、という事です。意味が分かりにくく申し訳ありません。そこで今後の実験を行う上で教えていただきたいです。鉢の位置を固定し測定を行い、その後蓋を開放して大気条件まで戻し、再び密閉にして測定を行う、という手順で繰り返し(例えば、LED光を点灯した後何回か)実験を行えば、点灯後のそれぞれの測定で得られた二酸化炭素濃度変化からLED光照射によるガスフラックス(単位面積当たり、単位時間当たりの二酸化炭素濃度の変化)の変化を見積もることが出来る、と考えております。これもまた再現性を見ることは難しいと言えるのでしょうか。この実験は植物工場など閉鎖空間内の二酸化炭素濃度や水蒸気量などのモニタリング手法の開発が最終目標となります。閉鎖空間内で二酸化炭素濃度が光合成により低下して来た際、二酸化炭素濃度をコントロールし二酸化炭素施肥の効率化が出来ればと思い、実験を計画いたしました。ですが、ご回答頂いたように実験として成立しないようであれば、再考したいと思います。長文になって申し訳ありませんがよろしくお願い致します。(2007.12.10)
A:ガス組成のモニタリングが目的であるのでしたら、問題なくできている可能性は充分にありますよね。二酸化炭素や水蒸気の測定装置はいくらでもありますから、開発されたシステムで測定した値がきちんとしたものであるかどうかは、すぐに確かめることができると思います。それだけでしたら、別に換気もいらないはずです。植物があろうとなかろうと、また、その植物がストレスで死にかかっていようと、二酸化炭素濃度は二酸化炭素濃度ですから、測定自体の成功・不成功とは関係ありません。
ただ、光合成を測定する目的がわかりません。もし、二酸化炭素濃度を測定するのだから、ついでに光合成速度もわかるかも知れない、という程度の感じで思いついたことでしたら、本来の目的とは関係がないわけですから、別にこだわることもないでしょう。光合成速度をきちんと測定することはできなくても、植物を入れた時に二酸化炭素濃度が変化することは確かなわけですから、その変化の原因が光合成であろうとなかろうと構わないという考え方もできると思います。同じ鉢を入れて、位置を固定したとしても、それを再現することは他の研究室ではできませんし、同じ研究室でも、その植物が育ってしまったら、もう再現できなくなります。しかし、単に、植物を入れたら確かに二酸化炭素濃度が減りますね、ということだけなら再現できるはずです。定量的な議論は難しいにしても、大きな植物を入れたら、より二酸化炭素の減少速度は大きいでしょう。もし、それ以上の情報が本当に必要なら、何が具体的に必要かによってどのような実験を組めばよいかが決まってくると思います。(2007.12.11)
Q:的確なご回答ありがとうございます。今後、GCなどを用いて定量の精度を確かめて行きたいと思います。光合成を測定する目的は、先生のおっしゃるように容器内の二酸化炭素濃度が減少していくことが確認できましたので、光合成速度も算出できるのではと思いました。また、単色光を照射できるLED光で光合成速度の変化を本システムで測定出来ればと思い、光源にLEDを用いました。今後の計画としましては、定量精度に問題が無ければ、LED光源の違い(青/赤比の違いなど)による成長過程での光合成速度の変化を測定していきたいと思っております。そこで、このような測定法では光合成速度の違いを議論するのに不備が生じてきますでしょうか?度々の質問で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。(2007.12.11)
A:もし、異なる色の光で植物を育てて、育った植物の光合成の違いを測定したい、という意味でしたら、お考えのようなシステムでは難しいと思います。生育光の色が違うと、おそらく植物体の形や生育速度なども変化すると思います。その場合、測定された値が違っても、それが光合成速度の違いによるのか、それとも植物体の形が違うことによる間接的な影響なのか、を区別することができません。それを区別するためには、一定の葉面積の葉を用いて、一定の光を照射した時の光合成速度を比較する必要があります。一方で、育った植物に、赤い光を当てた場合と青い光を当てた場合で光合成を測定し、値に差があるかどうかを見るでしたら可能でしょう。その場合、植物体とその位置は一定で、光源だけを変えることができますから、比較することができるわけです。自然科学の実験においては、自分がその影響を知りたい1つの条件だけを変化させて、残りの条件を全て一定にできるかどうか、という点が重要です。(2007.12.12)
Q:私の調べが足りないと思いますが、文献が見つからないので教えてください。トウモロコシの乾燥による水ストレスによる葉の黄化について三つ質問します。緑葉と黄化葉(乾燥による黄化葉)を磨砕して80%アセトンにてクロロフィルを抽出して、分光光度計にて測定、arnon法にて計算したところクロロフィルa,b量共に当然、緑葉の方が黄化葉に比べ、クロロフィルa,bの含有量が上だったので、緑葉(正常)に対して黄化葉(異常)ではクロロフィルに変化(クロロフィルの分解、他の組織への移動、合成量低下など)が起こっていることがわかるのですが、クロロフィルにどのような変化が起こっているのですか?なぜ水ストレスによりクロロフィルの量が減り黄化するのか?生理学的な観点から教えてください。黄化葉は縞状に黄化していたのですが、なぜ葉面一様に黄化せずに脈に沿って縞状に黄化するのですか?(2007.12.2)
A:「乾燥」というだけでは実験条件がわかりませんが・・・。完全展開した葉での代謝回転というのはかなり遅いのが普通なので、クロロフィルの合成量低下がクロロフィルの減少を引き起こす可能性は低いでしょう。また、クロロフィルはある意味で危険物質なので、別の組織に移動することはあまり考えられません。ですから、基本的には分解が起こっていると考えられます。強い水ストレスにより光合成ができなければ、光阻害がかかるでしょうから、これがクロロフィルの分解を引き起こす可能性はあります。不均一なクロロフィルの減少の原因はわかりませんが、トウモロコシはC4植物ですから、葉肉細胞と維管束鞘細胞で乾燥への応答が異なることは考えられるのではないかと思います。(2007.12.2)
Q:このたびは失礼いたします。 大学の卒業研究で海藻のシミュレーションモデルに関する研究をしているものです。
現在の目的はプロダクトメーターを作り、カジメの光合成を定量
(温度曲線・照度曲線・栄養塩曲線←人工海水使用)することです。
こちらを拝見していてプロダクトメーターのことが度々出てきており、
わからないことが何点かあり、質問をさせて頂きました。
まず、プロダクトメーター本体について。 プロダクトメーターは原理が単純で高校の教材としても使われると
こちらで知りました。
1.そういうものは手作りのセットか 教材として売られているものかどちらでしょうか?
正確さはどれほどなのでしょうか? 今年研究室に配属されてプロダクトメーターのことを教授に聞くと、
独特の部品で装置を作れる人が亡くなられたとのことで、
現在うちの大学にはプロダクトメーターがなく困っているとのことでした。
部品だけ遺族の方から譲って頂いて、 大学でプロダクトメーターを作成中です。
手元にあるものは 小さな三角フラスコの反応容器と対照容器、ゴム栓+ゴム管+ゴムブロック、
U字管、目盛付きL字管、容器を取り付けて振とうできるモーター、水槽、
液だめ、液量を調節するねじ、液滴用の液、目盛用の液、
以上です。
2.先生がお話になっているプロダクトメーターは
これと同じものでしょうか?
3.ゴム栓+ゴム管+ゴムブロックは取り寄せたものです。
このゴム管は30 cmで、もっと長いものにしたいと考えています。
作ることは可能でしょうか?
続いて、実験方法について。 大学は大阪、対象海域は高知県にあります。
現地の海藻・海水を使って現地で実験を行った時はうまくいったり
いかなかったりだったのですが、 海藻・海水を持ち帰って大学で行うと
目盛が動かなかったり逆流したりして全くうまくいきませんでした。
ですが12月中旬で再び現地実験ができる機会があるので、
初旬までに実験内容をまとめねばなりません。
光合成が制限される外的要因は照度・温度・CO2濃度・栄養塩濃度 であると考えていますのでそのいずれかに問題があるか、
海藻の状態に問題があると考えました。 容器内に入れる海水は、文献より10ccにしています。
照度・温度については調節が可能です。 栄養塩濃度については問題ありません。
4.CO2については添加せずとも現地ではうまく曲線が取れた例もあるのですが、
毎回添加する必要があるのでしょうか?
5.学校での実験でCO2濃度については飽和させるために、 ガスをストローで直接添加して実験をしてみました。
(現地ではしていませんでした) この方法では反応中に添加ができませんが、
重曹を用いたら反応中ずっと飽和になるのでしょうか?
海藻の状態については、実験経験が少ないもので
ノウハウがなく特にご教授頂きたいと考えております。
6.海藻自体にCO2や栄養塩が蓄積され、 光合成にはそれから使われると聞きました。
上で述べた外的要因のそれぞれの実験条件へ
実験前に海藻を馴致させる必要があると考えますがいかがでしょうか?
また、それは実験のどれくらい前からその環境に置けばよいでしょうか?
7.文献では、海藻を投入して、予備振とうを10分するとありました。
この時光はつけたままで大丈夫でしょうか?
質問は以上です。 長文となってしまい、また1度に何から何まで質問をしてしまって
大変申し訳ありませんが、行き詰まっているもので、
何卒よろしくお願いいたします。(2007.11.30)
A:正直に申し上げますと、大学のレベルで光合成を測定するのに、プロダクトメーターというのは、少しお粗末のように思います。プロダクトメーターの取り柄は、構造が簡単で安価なことですが、光合成研究の世界では、数十年前に使われていた古色蒼然たる手法です。体積の変化を目で見て実感できるので、教育目的には非常に良いのですが・・・。
1.プロダクトメーターはいろいろなものがあると思いますが、簡便なものは高校向けなどにキットとして販売されています。昔は、研究向けのものも売られていたと思いますが、今も売っているかどうかは知りません。精度としては、現在の生理学関係の学術雑誌には受け付けてもらうのは難しいと思います。
2.描写されているものは、確かにプロダクトメーターだと思います。
3.基本的にプロダクトメーターは瓶に管をつけたものです。簡単なものなら、一から全てを手作りすることも可能だと思います。
4.二酸化炭素は光合成の基質です。二酸化炭素濃度が異なれば、光合成速度も異なります。二酸化炭素をどうするかは、測定の目的が何かによって変わります。もし、現場での光合成速度を調べたいのであれば、現場での二酸化炭素濃度を実現する必要があります。一方、二酸化炭素が飽和した時の光合成速度を調べるのであれば、当然二酸化炭素を飽和させる必要があります。
5.重曹を加えることにより溶液の中の二酸化炭素濃度を上げることが出来ます。ただし、pHが変わってしまう可能性があるので、その点をチェックする必要があります。
6.「CO2や栄養塩が蓄積され」というのは、どのような時間スケールのことを言っているのかわかりませんが、短時間の光合成測定であれば、あまり本質的な問題ではないように思います。藻類の一部では二酸化炭素の細胞内濃縮機構を持っていますが、このことを指しているのであれば、光をつけて光合成速度が一定になるまで待つので十分です。
7.予備振盪の目的が今ひとつ僕にはわかりませんので、正確にお答えできません。呼吸速度が無視できない場合、暗所での呼吸速度をベースラインとして引き算する必要があります。もし、この目的でしたら、暗所でやらないと意味がありません。光合成産物の蓄積によるフィードバック阻害を解除しておく、という目的の場合も同様です。単に、環境に慣らす、ということでしたら、光をつけておいてもよいかも知れません。(2007.11.30)
Q:今年の初め、1/22に質問したものです。早速のお答え、ありがとうざいました。私の実験対象はPEPの働きが欠損しているらしく、光化学系I、IIの構成タンパク質も発現が減少しています。しかし全く発現しないわけではなく、また部分的に緑化することも観察してますので、光合成能力が、弱々しいながらあるのではないかと思います。学部内での研究紹介会にて、光阻害によって白色になっているのではないか、と質問されました。そこで質問なのですが、クロロフィルを極少量しか持たない白色変異体が光阻害を受けることがあるのでしょうか?100マイクロアインシュタイン以下、9.5h明/15.5h暗、温度変動範囲18〜23℃の条件で生育したものでは、クロロフィルaが野生型の3%に、bが4%に減少していました。また、白色変異個体が緑色化しやすい条件というものは知られているのでしょうか?破壊された遺伝子により違うと思いますが、ヒントだけでも、お教えいただければ幸いです。よろしくお願いします。(2007.11.27)
A:白色変異体が光阻害を受ける、ということはありませんが、光阻害を受けてクロロフィルが分解する、ということはあります。また、斑入りの変異体などの場合、生育光が強くなるに従って斑入りの面積の割合が増加する例が知られています。強光とは言えない100 μmol/m2/sの光であっても、もともと光合成系になんらかの異常がある場合は光を有効に使うことができず、結果として余ったエネルギーが阻害を引き起こす可能性は十分考えられます。例えば、光の明るさを20 μmol/m2/s以下にまで落として生育させた場合にクロロフィル量が増えたらば、そのような可能性が考えられます。他に、窒素欠乏の場合、葉面積あたりのクロロフィル量が減少しますが、これは、今回の例では関係ないように思います。(2007.11.27)
Q:お忙しいところ初めて質問したします。 現在人工光(蛍光灯、hf蛍光灯)を使用し植物体にどのような生育変化があるか試験をしております。そこで、いままでは疑問もなく光合成有効光量子束密度計(PPFD)を使用し、いろいろな光源での植物体への指標としておりましたが。特に、最近人工光(蛍光灯)を使用するようになってから、蛍光灯にもいろいろな分光特性があり、光合成にもピーク波長があるように、いろいろな植物体が生育に必要とする分光特性をもった蛍光灯を探し出したいと思っております。前置きが長くなりましたが本題です。
Hf蛍光灯(3波長タイプ)を例にあげますが、蛍光灯から約20
cm直下でPPFDを使用し計測した数値が約340μmol/m2/sで、PPFD同様蛍光灯から約20 cm直下で分光放射照度計を使用し計測して出た1
nmごとの数値を、先生の光の単位に出ている放射照度を光量子束密度へ変換する公式に当てはめ400
nmから700 nmを積算したところ、340μmol/m2/sの6分の1程度の55μmol/m2/sになりました。そこで、質問です。
質問1:分光放射照度計で測定した値を光合成有効光量子束密度へ変換が可能でしょうか。蛍光灯もいろいろな波長を含む色の集合体なので無理なのでしょうか。また、何か係数や積分が必要でしょうか、あればお教えいただけないでしょうか。
質問2:分光放射照度度計の計測単位がμW/cm2なのでW/m2へ変換した場合は1μW/cm2=0.01W/m2でよいでしょうか。
参考までに分光放射照度計で計測した値を光量子束密度へ変換する公式に当てはめたExelで計算した計算式を添付いたします。間違いがあれば指摘お願いいたします。
=28.68192/100*546*10^(-9)/(6.02E+23*6.626E-34*300000000)*1000000
最後に、光に関しては素人的な質問ですがよろしく回答お願いいたします。(2007.11.20)
A:まず、質問2から。10-6 x 1002になりますから、換算係数は0.01で問題ありません。次に「参考までに」の部分ですが、これは、放射照度が28.68192μW/cm2で、測定波長が546 nmである時の話ですね。これもこれで正しいと思います。次に質問1ですが、変換は可能ですし、特に係数が必要なわけではありません。積分は必要ですが、実際に400
nmから700 nmを積算しているわけですよね?分光照射照度計が1
nm分の値を出しているのであれば、それで十分だと思います。
というわけで、計算は問題ないように思います。一方で、測定値ははなはだ疑問です。放射照度から換算した55μmol/m2/sという値はむしろよいと思うのですが、340μmol/m2/sという値は、1本の蛍光灯から20 cm 話した地点の光量子束密度としてはあまりにも高すぎます。最近は極めて高輝度の蛍光灯もあるとは思いますが、それにしても高すぎるように思います。僕でしたら、計算の方法を考える以前に、まず光量子計がおかしくなっていないかどうかを試します。壊れてはいなくても、センサーの感度補正値が妙なことになっていないかどうか、なども調べる必要があるかも知れません。きちんとした校正をするのは、なかなか難しいですが、今の場合、値が数倍違う可能性があるわけですから、例えば、太陽の直射日光を測定してみればとてつもなく変かどうかはすぐにわかると思います。太陽の高度が低い今の季節ですと、1600μmol/m2/s程度であれば、正常かと思います。(2007.11.21)
Q:なぜ光合成は、昼の三時(夕方?)から活発に行われるのですか?(2007.11.16)
A:なぜ光合成が夕方から活発になると考えたのでしょうか?通常は、昼間の方が光合成が活発だと思います。ただ、土が乾燥していると、真昼は気孔が閉じがちになるので、むしろ朝夕の方が光合成の活性が高くなることはあります。そのような例でしょうか?(2007.11.17)
Q:赤色光は発芽を促して、黄色光は使わないと言うのは学校で学習してわかりましたが、なぜ植物は、昼に多い黄色光ではなくて、短い時間しかない夕方に多い赤色光を光合成につかうのか、理由をおしえてください。(仕組みではなく、植物がこの事実を選択した理由をお願いします)(2007.11.15)
A:おそらく、いくつか誤解があるようですので、一つずつ。(1)赤色光によって発芽が促進される植物もありますが、全ての植物がそうなのではありません。暗発芽種子といって逆に光があると発芽が抑えられる植物もあります。(2)昼間の光も赤色光を含みます。昼間は他の色の光も含むので、全体として白色光に見えるというだけです。夕方は青い光が大気の散乱によって失われるために残った光が赤く見えるのです。(3)発芽の際にはフィトクロームという色素が光を吸収し、光合成ではクロロフィルが光を吸収します。ですから、二つの現象の間には直接的な関係はありません。
というわけで、これらのことを考えると疑問は解消するでしょうか?もし、クロロフィルが主に赤と青の光を吸収する理由が知りたい場合には、なぜ光合成では緑色の光を使わないのですか?が参考になると思います。(2007.11.16)
Q:主に赤色光などをつかって光合成を行う植物があるとおもいますが、それは、植物が誕生した時からその能力だったのですか?それと、どうして主に赤色光を、光合成でつかう植物は、どうしてほかの色を主にしなかったのか?(2007.11.16)
A:基本的に光合成はクロロフィルが吸収する光を使います。ですから、主に赤い光と青い光を吸収します。主に赤色光だけを使う植物というのは存在しないと思います。植物の進化の中で、水中の単細胞の藻類、大型の藻類、陸上の植物は全てクロロフィルを光合成に使っています。それらのさらに祖先と考えられる光合成細菌は、バクテリオクロロフィルという種類のクロロフィルを持っていて、こちらは赤色光よりもやや長波長の遠赤色光を吸収し、可視光の領域の光はあまり吸収しません。陸上植物型のクロロフィルを使う光合成が出現したのは約30億年前とされていますから、それ以降はずっと同じ光合成色素を使っていることになります。(2007.11.17)
Q:小学校の理科で,発展的な学習の中で,導管の観察を行いました。染色するのに,食紅ではなく,スカーレット3Rという染料を使いました。あるホームページで「文献上よく染まると聞いたのでようやく入手しました。」という記述を見つけ手に入れました。よく染まり観察は成功しました。もっとスカーレット3Rについて詳しく調べたいと思い,文献を探そうとしましたが見つかりません。毒性のないことは分かりましたが,のどに小骨が刺さったような気分です。染色するのにスカーレット3Rは有効なのでしょうか。(2007.11.14)
A:顕微鏡観察は僕の専門ではないので、詳しくはないのですが・・・。「食紅ではなく」となっていますが、そもそもスカーレット3Rは食紅ではないのでしょうか?検索してみると、Scarlet 3Rの別名として、ニューコクシンや赤色102号が挙がってきます。食紅の一種のように思えます。赤色102号については調べればいろいろ情報があるように思います。赤色102号による細胞染色については、「食用色素102号による核と細胞質染色(PDFファイル)」というのがありますね。(2007.11.14)
Q:スィートピィの栽培をしています。毎年9月上旬に定植をし、11月上旬に開花します。ただし、曇天が二日以上続くと、花芽が落ち開花ができなくなります。しかし一月からは曇天が続いても花芽はあまり落ちません。曇天が続くと光合成の量が少なくなり、でんぷんの量が減少し、花芽が落ちるのではないかと思います。この曇天が続いても花芽が落ちない方法(光合成を向上させる)はないものでしょうか?(2007.11.11)
A:残念ながら、光が弱い条件で盛んに光合成をさせる方法というのはありません。光合成は光エネルギーを使うことのできるきわめて効率の良い反応なのですが、それだけに光が弱いと反応は遅くなってしまいます。光合成をさせるためには、人工的に光を補ってやるのが唯一の方策かも知れませんが、太陽光の明るさを補うのは事実上不可能だと思います。ただ、花芽が落ちるのが、光合成の速度が落ちるためなのかどうかに関しては、僕はよく知りません。一月からは花芽が落ちない、というのは、おそらく植物体の大きさ(成熟度)がある一定以上になると花芽が落ちづらくなる、という機構が働いているのだと思います。一般にも、植物が一定以上の大きさになって初めて花をつけるようになる例は良くあります。そのような変化は、植物ホルモンなどによって制御されている例が知られていますので、例えばある植物ホルモンを投与して植物を「だまして」花芽が落ちないようにさせる方法は、もしかしたら可能かも知れません。ただ、そうなると僕の専門外なので、実際に可能かどうかについては全く見当がつきません。投与する、という意味では、植物体に直接光合成産物を与えることも不可能ではありませんが、短い時間で取り込ませることはできないので、実用的にはやはり困難だと思います。(2007.11.11)
Q:昨日は、スィートピィの件で回答いただきありがとうございました。ところで、スィートピィは朝夕の寒暖の差(初冬の頃)が大きくなると、ステムもしっかりとなり花も輪数が多くなりますが、これは光合成の量が多くなるからでしょうか?(冬は秋に比べて日照時間は少なくなるのですが)(2007.11.12)
A:「光合成の量が多くなるから」ということはないと思います。おっしゃるように冬にはいると日照時間も少ないですし、温度も低いでしょうから光合成的には不利だと思います。むしろ花をつける準備がそのころまでに整う、ということではないでしょうか。植物は、花を咲かして子孫を残すわけですが、花をつけるための栄養は葉の光合成でまかなわなければなりません。その場合、種をまいてすぐに花をつけようとしても、光合成が十分できなくて結局つけられる花の数は少なくなりますし、逆に、ずっと葉をつけているばかりだと、光合成はできますが、種を残すことができません。一番よいのは、最初は葉をたくさんつけて光合成で稼いでおいて、ある程度光合成産物を貯めることができたら、そこで、花をつけ始める、という戦略でしょう。そのような葉をつけるモードから花をつけるモードへの切り替わりが、スィートピィの場合、初冬に行なわれるということではないでしょうか。(2007.11.13)
Q:レタスとホウレン草の色素含有量の比較についての質問なのですが、クロロフィルa 100分子あたりの他の色素の含有量は、クロロフィルb、カロテン、ルテインはレタスよりホウレン草のほうが多く、また逆に、ネオキサンチンとビオラキサンチンはホウレン草よりレタスのほうが多かったのですが、これは『緑黄色野菜』、『淡色野菜』の違いによるものと考えてよいのですか?『緑黄色野菜』は色が濃い=色素の濃いものが主流(表現は悪いですが…)という解釈はおかしいのでしょうか。(2007.11.9)
A:植物の光合成色素の含量は、確かに種によっても異なりますが、環境条件によっても変動します。一般にカロテノイドはストレス条件で増える傾向にありますし、クロロフィルbは暗い環境下で多くなる傾向があります。ですから、2種の植物を比較しただけでは、その差が植物種の違いによるのか、生育条件の違いによるのかを区別するのは難しいと思います。さらにレタスの場合は、かなり事情が特殊です。結球レタスだと、八百屋さんで売っているのは畑に植えてあった時は外の葉で隠れている内側の部分だと思います。そうすると、外側の葉で光が遮られて非常に光が弱い環境の葉をいわば選んで取ってきていることになります。そのような特別な環境では色素組成も普通とは違う可能性があります。もし可能でしたら、同じレタスで、結球になっていない外側の葉と、結球の内側の葉を比べてみると、そのあたりがわかるように思います。(2007.11.10)
Q:初めて質問させていただきます。私は学校で助手をしています。オオカナダモによる光合成の二酸化炭素吸収実験で試験管にオオカナダモとBTB溶液(中性・緑色)を入れ、光合成による色の変化と呼吸による色の変化をみるという極簡単な実験を準備しているのですが、光を当てた方は青色に変化しますが、アルミ箔で光を遮断した方は、原理では黄変ですが、逆の青色に変化します。(何度実験しても)光エネルギーがクロロフィルに蓄積されている間は光合成の方が勝るのではないかと思い、採取したオオカナダモを2〜3日光を遮断した状態で置き、実験してみましたがやはり、呼吸の方は黄色でなく青色になりました。何が不都合なのか教えていただければ幸いです。(2007.11.8)
A:暗所で「あまり黄色くならない」というのでしたら、そのようなこともあるかも知れないと思うのですが、「青くなる」というのはやはり変ですね。「質問のコツ」のほうに書いたかと思いますが、実験がうまくいかない理由を正確に言い当てるのはなかなか難しいかと思います。その際に重要なのは、対照実験です。光を遮断した状態においたオオカナダモを使う、というのも一種の対照実験ですが、他にも、いくつか調べてみることはできると思います。理由を考えるためには、いろいろと実験条件を考えなくてはいけません。まさかとは思いますが、オオカナダモを入れなければ、色が変わったりしないのですよね。また、実験は、外気と溶液が平衡になっているようだと意味をなしませんが、試験管は密閉されているのでしょうか?さらに、実験は、そもそももとのBTB溶液にどの程度二酸化炭素と酸素が含まれているかによっても結果が異なります。例えば、極端な話、酸欠状態になっているBTB溶液を使った場合、暗所においても呼吸は起こらないことになりますし、二酸化炭素がなければ光合成はおきません。さらに、呼吸のためには呼吸基質が必要ですが、呼吸に使える基質の量は、それまで光があたっていたオオカナダモと暗所にしばらくおいておいたオオカナダモでは異なることが考えられます。ちなみに、光エネルギーがクロロフィルに蓄積することはありませんが、このように呼吸基質の量には光を遮断したことの影響が出る可能性があります。失敗の理由を考えるためには、このようないろいろな条件を考慮に入れる必要があります。(2007.11.8)
Q:言葉が足りなく申し訳ありませんでした。中学の指導書に従い実験しています。3種の試験管A・B・Cを準備し、Aはオオカナダモ+BTB溶液、Bはオオカナダモ+BTB溶液+アルミ箔で全体を覆う、CはBTB溶液のみとします。3本ともゴム栓をし、BTB溶液はゴム栓すれすれに入れます。それから、日光に当てます。この状態で何回実験しても、Bが青変するので、まずアルミ箔を2重〜3重にしてみましたが結果に変化なし。オオカナダモを蒸留水で洗ってみても×(これは、水道水の影響を考えてです。)。呼吸基質を考えてみるようご意見いただきましたが、日光遮断するまえは、十分に日光が当たる場所で保管してから実験もしましたが×。BTB溶液中の溶存酸素・二酸化炭素の量の測定まで考慮するとは、正直そこまで配慮しなければならないレベルの実験が中学実験分野で要求されるとは・・・悩んでしまいます。(2007.11.9)
A:僕も悩んでしまいますね。日光のあるなしでは、青くなり方は違うのでしょうかね?Bで青くなるとすると、そもそもAの条件で、光合成をしているのかどうかさえわからないことになります。時間変化を見てみる、実験は普通の水で行い、最後にBTBを入れてみる、冷蔵庫などに入れて低温にしてもやはり青くなるのかを見る、など、もしこの原因を解明するのが目的でしたら、色々やってみる実験は思いつきますが、目的は光合成と呼吸を見ることでしょうから、そのような実験をたくさんやってもあまり意味はないかも知れませんね。残念ながら僕にはお手上げです。申し訳ありません。(2007.11.9)
Q:はじめまして。高校で生物を教えおります。授業の準備をしていてふと疑問に思ったのですが「光合成と環境要因」の部分で出てくるのは光(強さ・波長)、二酸化炭素濃度、温度が光合成速度に与える影響のみで、水が与える影響については触れておりません。調べても良い文献が見つからず、こちらのページにたどり着きました。お手数ですが教えていただければ幸いです。(2007.11.8)
A:水は確かに光合成の基質なのですが、横軸に水、縦軸に光合成速度をとったグラフというのは存在しません。これには2つ理由があります。一つは、水は、光合成の基質としてだけでなく、細胞内の化学反応の溶媒としても働いているため、「水の濃度」というものを規定することが難しい、という点があります。例えば、二酸化炭素濃度を半分にした時の光合成速度、というのはよいのですが、水の濃度を半分にするというのはナンセンスです。では、濃度では難しくても、光合成によって水が分解されて「量」が減るのを見ればよいのではないか、と思ったとします。しかし、それでも問題があります。光合成をする時には、気孔を開いて二酸化炭素を取り込みますが、この際に水が蒸散して失われます。この際の、基質として分解される水の量と、蒸散によって失われる水の量を比べると、後者の方が200倍も大きいのです。つまり、根から吸い上げる水のうち、光合成の基質として分解される水の量は、ほとんど無視できる量でしかない、ということです。というわけで、光合成の基質としての水が、光合成速度に与える影響を調べることはほとんど不可能である、ということになります。
ただし、植物が乾燥状態におかれると、蒸散を抑えるために気孔を閉鎖します。気孔が閉じれば、当然二酸化炭素を取り込めずに光合成速度は低下します。手前味噌で恐縮ですが、僕が著者に入っている大日本図書の「改訂生物I」では、177ページに降雨後の日数が経つに連れて(土壌が乾燥するに連れて)特に真昼の光合成速度が低下する現象(昼寝現象)をグラフを見せて取り上げています。これは、まさに土壌中の水が減った状態では、特に相対湿度の低下する真昼に気孔が閉鎖して、結果的に光合成速度が下がることを示しており、そのような意味での「水が与える影響」は観察可能です。(2007.11.8)
Q:ワカメをお湯に通すと,赤色から緑色に変わりました。たんぱく質の変性だと思うのですが、どんな色素が変性しているのですか?ワカメは褐藻なのでフィコビリン系の色素は持っていないと思うのですが・・・(2007.10.18)
A:ご指摘のように、紅藻はフィコビリン系の色素を持っていて、フィコビリンはタンパク質と結合した状態で初めて強い吸収を示すので、湯通しするとタンパク質の変性にともない、フィコビリンの色が失われ、クロロフィルの緑が残ります。褐藻では、フィコビリンは持っていないのですが、代わりにフコキサンチンというカロテノイドを持っています。このフコキサンチンもタンパク質に結合した状態で強い吸収を示すので、やはり湯通しをすると色が失われるのです。(2007.10.18)
Q:プロダクトメーターという装置を用いて、海藻(浅所型の緑藻、深所型の緑藻、褐藻、紅藻の四種)の光合成量を測定し、光合成速度を求めました。最大光合成速度を海藻四種で比較したときに、どんなことがいえますか?生息水深との関連性(陽生植物と陰生植物の特性)が知りたいです。よろしくお願いします!!(2007.10.18)
A:僕が四種の海藻の光合成速度を求めたわけではないので、見てもいない最大光合成速度を比較したときにどんなことが言えるかと聞かれても答えようがありません。質問のコツは読みましたか?もし、一般論として、陽生植物と陰生植物の特性が知りたいのであれば、陽生植物と陰生植物について何を知っていて何が疑問なのかを書いて再度質問して頂ければ、答えることができると思います。そうでないと、何を説明してよいのかわかりません。(2007.10.18)
Q:光合成色素について質問があります。光合成色素は場所によって数が異なるのか?です。というのも同じ個体でも光が多くあたる所(例えばてっペン)には多くの色素が集まり、あまり日が当たらない所(例えば付け根の方)では光合成色素は少なくなったりするのでしょうか?お願いします。(2007.10.17)
A:はい、その通りです。光合成色素の量には場所によって多い少ないがあります。ただし、光合成色素は葉緑体の中に存在するのですが、葉緑体の中での光合成色素の密度が異なるというよりは、葉緑体自体の密度が異なる場合が多いと思います。また、葉の色、という面からすると一枚の葉の細胞の積み重なり(つまり厚さ)が違うために厚い葉では色が濃く見えることもあります。この場合は、密度というよりは、(葉の厚み方向の)全体としての量が色に反映していることになります。このような変化も含め、おっしゃるように、陽の当たるところの方が、陽の当たらないところよりは葉の色が濃くなっている場合が多いと思います。(2007.10.17)
Q:お忙しいところ申し訳ありません。早速質問なのですが、表皮細胞の中で、孔辺細胞にだけ葉緑体が存在するのはなぜなのでしょうか、教えてください。(2007.10.16)
A:「なぜ」というのは、この場合、どのようなメカニズムで、ということではなく、どんな利益があって、ということでしょうね?孔辺細胞は、気孔を構成する細胞ですから、気孔の開閉にともなって大きく形態を変化させ、かなりのエネルギーを使うはずです。とすると、孔辺細胞にエネルギーをつくる役割を果たす葉緑体が存在すること自体は自然ですよね。とすると、むしろ、孔辺細胞以外の表皮細胞がなぜ葉緑体を持たないのか、という問題になりますが、僕にはこの答えがわかりません。想像としては、おそらく表皮細胞の蒸散を防ぐなどの特殊な役割のためには、そのような役割に特化した細胞を作る方が経済的なのだと思いますが・・・。(2007.10.16)
Q:忙しいところ、申し訳ございません。僕は、生体電流の謎を探るというタイトルで1日におけるサクラの木の生体電流を測定しました。すると予想では、光合成と関係があるから昼の間における変化そして夜間は変化無しと考えていました。ところが、日の出直後に変動が見られました。その後、午前中は変動があまりありませんでした。また、午後8時頃から変動がみられ真夜中からは変動がみられなくなりもとの日の出前に戻るというサイクルが見られました。これは、維管束内の物質に関係があると考えています。このように1日における維管束内の物質の生体リズムについて詳しく調べる方法を教えてください。(2007.10.13)
A:うーむ、これは難しい質問ですね。生体電流のリズムとなると、全く僕の専門外です。そもそも、生体電流をどのようにして測ったのかもわかりませんし、その結果が何を反映するのかも知りません。以下の回答は維管束内の物質の移動についての少し考えてみた結果です。
道管における物質輸送は、基本的に蒸散に支えられていますから、お考えのように昼に増大して夜にはかなり小さくなることが予想されます。一方で、師管の中の物質輸送は、なかなか難しいですが、光合成産物の転流は、夜の始め方が盛んになると考えてもよいでしょう。陽生植物の呼吸速度は、基質となる光合成産物の量に依存するようですが、夜の始めに高く、明け方直前に一番低くなります。維管束の中の物質の動きを生きたまま直接測定することは、最近、特殊な波長の光を使った分光学的手法によって可能になっているようですが、まだ、そのような測定装置を持っているところは限られていると思います。とすると道管における動きと、師管における動きをそれぞれ見積もるのが現実的でしょう。道管液・師管液の化学組成を測定した例も、なくはありませんが、これも一般的には難しいと思います。比較的簡単なのは、蒸散量を測定することと、夜間のデンプンの分解速度を見積もることです。師管の中の物質の流れは、デンプンの分解速度とある程度相関があるでしょう。ただ、どちらにしても樹木全体となると難しいですね。例えば、水耕栽培をしている植物の重さを鉢ごと一定時間ごとに測定すれば、蒸散速度を見積もることができます。また、デンプンを貯める植物であれば、夜間においては、ヨウ素デンプン反応などを用いてデンプンの分解速度に関する情報を得ることができるかも知れません。ただ、こちらは、測定に葉を使ってしまいますから、連続的な測定は無理ですね。というわけで、いくつかの方法を考えることはできますが、僕には決定打は思いつきません。(2007.10.13)
Q:実験で薄層クロマトグラフィーを行いました。その際使用したのはヒジキ、マクサ、ホウレンソウ、スジアオノリを使用です。展開溶液は石油エーテル:アセトン=7:3を使用しました。Rf値が約0.65でクロロフィルaと同定したのですが、Rf値が約0.7の色素がわかりません。4つのいずれの植物にも存在しているようで灰色がかったミドリを示していました。
またすべてのものにクロロフィルaもあり、これはおそらく反応中心を担っているからだと思うのですが、そのほかのの理由としてこれらの植物には系統関係があるのでしょうか??
(2007.10.12)
A:おそらく、観察されたRf値が0.7の色素はフェオフィチンだと思います。フェオフィチンは、藻類を含めた植物に一般的に分布しているのですが、その量は、クロロフィルの1%にも満たないので、もし、色素の抽出が理想的に行なわれていればフェオフィチンは検出できないのが普通です。しかし、フェオフィチンは、クロロフィルの分解によっても生じます。特に酸性条件ではクロロフィルの中心金属であるマグネシウムがはずれやすいので、フェオフィチンが生じます。また、新鮮な材料でない場合は、そもそも材料の中のクロロフィルが一部分解している場合もあります。従って、クロマトグラフィーで検出されたバンドは、クロロフィルの分解産物としてのフェオフィチンでしょう。
後半の質問は、意味がよくわからなかったのですが・・・。もちろん、系統関係と色素組成は関連します。おそらく、クロロフィルbは一部の植物でのみ観察されたと思うのですが。キサントフィル類の量も、だいぶ違うのではないかと予想します。そのあたりを、系統関係と合わせて考察することを、実習実験として求められているのだと思います。(2007.10.13)
Q:先日は素早いご返答ありがとうございました。クロロフィルaが多くの植物に含まれていることについて質問させていただきます。クロロフィルaがほとんどの植物に含まれていることには、クロロフィルaにしかできない役割があるからだと思うのですがそれは光を吸収して化学反応を行うことでしょうか?そしてほかの色素は光を集める役割をしていると考えたのですがあっていますか?(2007.10.13)
A:基本的にはその通りです。この際、2つだけ注意しなくてはいけない点があります。1つは、クロロフィルaも大部分は光を集める役割をしている、という点です。つまり、酸化還元の化学反応を行なうクロロフィルa(これを反応中心クロロフィルといいます)はクロロフィルa全体の1%にも満たず、残りは、他のクロロフィルと同じように光を集める役割をしています。従って、昔は、クロロフィルa以外の色素を補助色素と呼ぶことがあったのですが、クロロフィルaもほとんどは光を集める役割を果たしていることが確定してからは、補助色素という言葉は使われない傾向にあります。現在は、色素を機能の面から「反応中心色素」と「集光性色素(あるいはアンテナ色素)」にわけ、クロロフィルaは両方の役割を果たし、その他のクロロフィルは集光性色素としてのみ役割を果たす、というように考えます。
もう1つ、注意しなければならないのは、1996年にクロロフィルdを主要な色素として含む生物が発見され、しかも、その後の研究でクロロフィルdが反応中心の役割も果たしていることが明らかになりました。ですから、反応中心の役割はクロロフィルaにしかできない、という従来の考え方は否定されました。ただし、この生物(シアノバクテリアの一種)はかなり特殊で、ほとんどの生物ではクロロフィルaが反応中心として働いていることには間違いがありません。(2007.10.14)
Q:水田の田面水中のシアノバクテリアを顕微鏡で観察し、培養したいと思います。分かりやすい手順を記載した参考書を教えてください。 (2007.9.27)
A:光合成の質問ではないような・・・。シアノバクテリアの培養などについては、確か東大・総合文化研究科の池内さんが秀潤社から出ている「植物のゲノム研究プロトコール」という本の中に基礎的なことを書いていたように思います。(2007.9.27)
Q:こんにちは、私は、鉢花の生産をしております。ほぼ、単一品目でありまして、長日で開花する特性があります。そこでご教示願いたいのですが、以前、蛍光灯だけで光合成は可能でしょうか?という質問がございましたが、蛍光灯では、光量が不足気味であるとの事ですが、例えば、短日になったら、午後5時から翌日の午前4時までとか、極端に電照時間を長くするとどのような弊害が想像されますでしょうか? 理想的には、ナトリウムランプの導入がベストだと思いますが、導入コストと電気料金を考慮すると、現在設置予定している低コストの家庭用の蛍光電球でも十分なのかなと思っております。
長々となって申し訳ないのですが、質問事項として、短日時や日照不足時の開花促進を目的としたいので、家庭用の蛍光電球の使用(新聞が読める程度の照度)についての問題点、そして、極端に電照時間を長くした場合の弊害等、ですが、その他何か関連することがございましたらよろしくお願いいたします。(2007.9.25)
A:光合成の速度は(光が比較的弱い条件では)光の量に比例する形になります。光の量は、光の明るさと照射時間の積で表すことができますから、まず大事なのはその積を比較することです。「新聞が読める程度の」とのことですと、おそらく10
μmol/m2/s程度の明るさになるかと思います。これは、太陽の直射日光の1/200程度ですから、もし、その植物が、野外で直射日光を好むような植物ですと、光があたっている時間を2倍にしても、光合成の観点からするとほとんど意味がないことになります。もし、曇り空程度(100
μmol/m2/s)でも順調に育つような植物であれば、照射時間を延ばすことには一定の意味があるかも知れませんが、それでも光合成の促進効果はさほど大きくない計算になります。ただし、光照射を極端に長くしたことにより、光合成の面から不利益がある、ということはないように思います。
日長に関しては、長日で開花する特性を持つ植物を電照時間を長くして(=長日条件で)栽培した場合、当然、花が咲くことになります。このこと自体は鉢花としては必要なことですが、一方で、植物によっては、花が咲く前にある程度体を大きくする必要があり、花が咲き始めると成長が止まってしまうものがあります。そのような場合、植物体が小さいうちに極端な長日条件にしてしまうと貧弱な鉢花になってしまう可能性はあります。植物が日長を感知するのに必要な光は、かなり暗くてもよいので、蛍光灯でも何とかなると思います。(2007.9.26)
Q:海水中のプランクトンに対して光合成を活性化させるのに有力な光源はどういったものが有用でしょうか? 河川などの貧酸素状態の箇所へプランクトンの光合成を利用して酸素を発生させたいと思っています。そう考えたときに河川域に生息するプランクトンに光(人工光)を照射して酸素を発生させることを思いつきましたが、どういった光源が良いのか判りません。 可能な限り簡易に手に入るものが良いですが波長など効率よく働く光源の質などを教えていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。(2007.9.21)
A:基本的に光合成に利用される光は、光合成色素によって吸収される光ですから、クロロフィルでしたら、 青と赤の光ですし、紅藻やシアノバクテリアが持つフィコビリンでしたら、緑色の光も吸収できます。従って波長としては可視光の範囲であればほとんど有効だと考えてよいと思います。 むしろ問題は、十分な明るさの光を用意できるかどうかではないでしょうか。湾の奥などで酸素濃度が低くなっているところは、そもそも生活排水や産業排水によって汚染されたところが多く、 なかなか光が透過しづらいように思います。予算の許す限り強力な光源を使ったとしても大規模に行なうのは難しいように思います。(2007.9.21)
Q:はじめまして、私は全くの素人です。CO2削減に関する項目を、色々ネットで調べておりましたら、偶然先生のページにたどり着きました。どうかご教示のほど宜しくお願い申し上げます。私は化石が好きで、現在祇園山のシルル紀サンゴに係わっています。太古の時代から、海が、そしてサンゴ類がCO2の固定に最も大きく貢献している、とある書物で読んだことがあります。するとふと疑問に感じることがあります。それは植物の光合成と呼吸の収支です。森林伐採をCO2削減の悪のように言われますが(勿論悪の要素は他にありますが)、仮に光合成と呼吸の収支が1:1であれば、この件については植物のCO2削減に対する貢献度はゼロということになります(昼、夜の長さを1:1とすると)。それに腐敗の時にもCO2を発生するとなると、実質的な貢献度を疑ってしまいそうですが、真実をお教え下さい。どうか宜しくお願い申し上げます。「Q:植物の一日の酸素排出量と二酸化炭素排出量の割合を教えてください。(2007.8.31)」を参考にさせていただきました。(2007.9.19)
A:いやはや。このご指摘を頂くまで、8月31日の質問の意図は、「光合成または呼吸によって交換される二酸化炭素と酸素の比はいくつか?」ということを聞きたいのだとばかり思っておりました。 その場合、光合成では二酸化炭素1分子を吸収する際に酸素1分子を放出し、呼吸では酸素1分子を吸収する際に二酸化炭素1分子を放出するので、答えに書きましたように、呼吸と光合成の比率がどうであれ、吸収もしくは光合成により放出される二酸化炭素と酸素の分子の比は1対1になります。 しかし、言われてみると、この質問は、二酸化炭素と酸素の比を聞きたいのではなく、単に植物の光合成速度と呼吸速度の比を聞きたかったのでしょうね。そうだとすると、この割合は、植物によっても異なりますから、一概には言えませんが、おおざっぱに言って光合成は呼吸の数倍ぐらいでしょうか。 その差(光合成ー呼吸)が植物の成長に使われることになります。そして枯れた植物が腐敗すれば、その差の分も結局元の二酸化炭素に戻り、最終的な収支は0になることになります。 従って、伐採跡地に植林したばかりのような場合には、植物体の量がどんどん増えていきますから、森林は二酸化炭素の吸収源になりますが、成熟した森林になるほど、枯れた木の腐敗などが進行しますから、二酸化炭素の吸収効率は落ちていきます。 サンゴの場合は、固定化された二酸化炭素が炭酸カルシウムの形になるので、樹木のセルロースに比べてもかなり安定であり、元の二酸化炭素に戻りづらいため、二酸化炭素の固定に貢献していると言われるわけです。 ただし、炭酸カルシウムも永久に安定なわけではなく、海洋のpHが変化した場合などは、二酸化炭素の放出源になる可能性を持っています。以前の質問のところには補足をつけることに致します。(2007.9.19)
Q:お忙しいところ申し訳ございません。以前、光合成について質問させて頂いたものです。
今回は、光の単位の換算について質問させていただきます。植物育成用の光源を、LEDを使って自作しようと思い、
先生が作成された「光の単位」を拝見しました。実際に市販されている植物育成用のLEDユニットを参考にしたのですが、
使用している波長、輝度から必要なLEDの個数を見積ってみましたが、実際の個数とかなり違ってしまいました。
そこで、以下のことを教えていただきたいです。
使用するLEDは、
625 nm、14 cd、半値角15°、比視感度0.321
470 nm、10 cd、半値角15°、比視感度0.09098
で、赤/青比が10になるように作成したいと思っております。その際、赤/青比は、光量子束密度の比で計算すればよろしいでしょうか。
実際の計算方法として以下のように求めればよろしいでしょうか。
1 cdは、555 nmの単色光の、単位立体角(sr)あたり1/683 Wの放射強度に相当します。
625 nmのLEDですと、1 cd・sr=1 lmは、1/683/0.321=0.00456 mW(=4.56W)に相当します。
光量子数は、
放射照度 (W/m2) =光量子密度 (mol/m2/s) ×アボガドロ数 (mol-1)×プランク定数 (J s) ×光速度 (m/s) ÷波長 (m)
から計算できます。実際に、625nmのLEDですと、1 cd・sr=1 lmが
光量子数(mol/s)=(0.00456/6.02 x 1023 /6.626x10-34 /3x108)×625×10-9M
で、0.0238(mol/s)と求まります。
この値と、輝度(この場合、14 cd)と半値角(15°)から、総光量子数を見積もるには、
どうすればよろしいでしょうか。半値角をどう取り扱えばいいのか、わかりません。
非常に長文になって申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。(2007.9.11)
A:目的にもよりますが、青と赤の光では、光子1個あたりのエネルギーが異なりますから、 おっしゃるように、青/赤比は光量子束密度の比で計算するのがよいと思います。 半値角は、光の明るさが半分になる方向がLEDの中心軸と作る角度のことですから、光の指向性の指標となります。ですから、 その角度より内側にだけ光が放出されるとでも仮定すれば、光放出の立体角を計算することができます。 上の計算では 1 sr あたりで計算しているようですが、半値角から立体角を計算して式に代入すればよいはずです。 式や計算が正しいかどうかはチェックしていませんが、0.00456 mW(=4.56W)というのは、パッと見て間違いですね。(2007.9.11)
Q:ご回答ありがとうございます。半値角から立体角への計算方法は、調べて分かりました。
ありがとうございます。しかし、放射強度の計算方法について、知識不足で解決できなかったので、申し訳ないですが教えていただきたいです。
放射強度の算出方法は、参考書を元に計算したのですが、以下の計算では間違っているのでしょうか。
参考書では、
1 cdは、555 nmの単色光の、単位立体角(sr)あたり1/683 Wの放射強度に相当する。
625 nmの比視感度が0.321であるので、1 cd・sr=1 lmは、1/683/0.321=0.00456 W(=4.56mW)に相当する。
と、記述されてましたが、前回質問しましたところ間違いであると指摘されました。
実際に調べてみても、他の波長(555 nm以外)について記述しているものがあまり見つからなく、
中には比視感度を掛けているものもあり、判断に困っております。
上記の波長と比視感度から、その波長の放射強度をどう計算すればよろしいでしょうか。お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。(2007.9.11)
A:申し訳ありません。答え方がぶっきらぼうで誤解を招いたようです。 上の答えの中で「間違い」と指摘したのは、0.00456 mW(=4.56W)という単純なミスについてだけで、 今回のご質問の中でのように0.00456 W(=4.56mW)になっていれば問題ありません。 計算方法としては、比視感度は555 nmでの視感度を1にしているはずなので、上記の式では割り算が正解です。 625 nmの視感度は683 lm/Wに0.321を(この場合は)かけて219 lm/Wになります。従って1 lmは1/219となって、 同じ数字に落ち着きます。(2007.9.12)
Q:BTB溶液にオオカナダモを入れ、光も十分なはずなのに、 青色にならず、黄色になったのは、なぜでしょうか?(2007.9.7)
A:実験の解釈の際に重要なのは、1)何度やっても同じ結果なのか、 2)条件を変えると結果も変わるのか、という点です。おかしいぞ、と思った時は、まず、 もう一度実験をしてみることが重要です。また、光を当てない時は何色になるのか、 オオカナダモを入れない時には何色になるのか、といった実験(対照実験といいます) も必ず必要です。通常、二酸化炭素が吸収されれば、溶液のpHはアルカリ側に傾くはずですが、 それと違った結果が出た場合に、単に一度きりそうなりました、と言われただけでは、 原因を考えるのは難しいと思います。(2007.9.7)
Q:くだらない質問ですが、試験管のなかのBTB溶液にこれ以上黄色にならなくなるまで、 息を吹き込んだ場合BTB溶液の二酸化炭素濃度はどのくらいでしょうか?(2007.9.7)
A:BTB溶液の色が示すのはpHであって二酸化炭素濃度ではありません。 また、さらに言えば、そのpHも一定以上酸性に傾けば、pHが変化しても色は変化しなくなります。 ですから、BTB溶液の色から二酸化炭素濃度を見積もることは無理だと思います。(2007.9.7)
Q:こんにちは。私は大学4年生です。光合成に関する研究をしております。 困った時など、先生のHPを拝見させていただいております。ありがとうございます。 お忙しいところ申し訳ありませんが、研究で悩んでいます。相談にのって下さい。 私は、光合成能力の高い、言い換えますと二酸化炭素を多く吸収する植物を、探索しております。 現在、トウモロコシやサトウキビなどのC4植物が二酸化炭素を多く吸収すると言われていますが、 そのような代表的な植物よりさらに二酸化炭素を吸収する植物の探索をしております。私の研究室、 または大学では光合成の研究をほとんどしておりません。今回、私が4年生になり、光合成の分野の研究を始めました。 そのため、光合成を測定する機器等はほとんどありません。 二酸化炭素吸収量を測定する赤外センサーは購入していただきましたが、 他の光源や光を測定するようなものは照度計くらいしかありません。私は、 植物の葉を密閉容器に入れて二酸化炭素吸収量を測定するつもりでおります。 その密閉容器も身近にあるタッパーようなものに、赤外センサー装置と接続するチューブをつけた手作りのものを使用しています。 また、温度や湿度、光の強さを一定にするために、人工気象器内にその手作りの密閉容器を入れて測定することにしました。 温度、湿度はほぼ一定になります。光の強さも一定にはなりますが、約4000Lux〜5000Luxほどの照度しかなく、 HPで書かれていました、光量子束密度の値に換算してもかなり低い値です。光が弱いほど、 早く飽和点に達しますよね。したがって、その方が、植物の光合成速度を比較しやすいと考えました。 これについてはどう思われますか? 温度、湿度、光の強さは一定になりましたが、二酸化炭素の濃度を一定にすることができません。 人工気象器内には、カルス培養をしている植物がいくつも入っています。そのためなのか全く分からないのですが、 人工気象器内の二酸化炭素濃度を赤外センサーで測定すると、日によって、または時間によって異なってしまいます。 二酸化炭素濃度を一定にする方法としては、炭酸カリウムと炭酸カルシウムの混合溶液を何かに浸して密閉容器内に入れると二酸化炭素濃度が一定になると、 文献で調べました。実際に一定になるのですか?これについて、まだ確認を行っておりません。 行っておりませんのに、質問をさせていただくのは大変失礼かと思いましたが、お願いいたします。 また、他にも二酸化炭素濃度を一定にする方法がありましたら、ご教授お願い致します。 もう1つ悩んでいることがあります。容器に入れる葉についてなのですが、やはり光合成速度は単位時間、 単位面積あたりの二酸化炭素濃度ですので、面積で測定しようと考えておりますが、 多くの植物の二酸化炭素濃度を測定しなければなりませんので、どのくらいの面積と決めておくのがよろしいですか? 長い文で、さらに多くのことを質問してしまい申し訳ありません。最後によろしければ、 私の研究に内容について何かお言葉をいただけたら幸いです。 (2007.9.5)
A:光合成の研究をするのに、光合成の測定装置から手作りをするのはなかなか大変ですね。
20年以上前、僕が大学院の頃は測定装置を手作りすることはそれほど珍しくなかったのですが、最近はなかなか聞かなくなりました。
一部文字化けをして読めないところがありましたが、わかった範囲でお答えをします。
1.光の明るさ:「光が弱いほど、早く飽和点に達しますよね。」というのがわかりませんでした。
何が飽和する点ですか?研究の目的が「高い」光合成速度ということであれば、光について飽和した、
最大光合成速度を測定しないと意味がない、ということはありませんか?
2.二酸化炭素濃度:研究室内での二酸化炭素の最大の発生源はおうおうにして人間です。
人がうろうろしている部屋の二酸化炭素濃度を一定にするのは、そもそも非常に難しいと思います。
できれば、一度ソーダライムなどを通して、二酸化炭素を除いた空気に、
二酸化炭素のガスボンベから流量計を通して一定濃度の二酸化炭素を加える、ということを考えた方がよいと思います。
さらに言えば、通常の光合成測定装置では、いわばタッパーを2つ用意し、片方だけに葉を入れて、
同じ空気を流し、2つのタッパーを通ってきた空気の二酸化炭素濃度の間の差を取ることで安定化を図っています。
3.葉の面積:測定時の葉の面積自体をそろえる必要はありません。面積が異なっていても、測ってさえあれば、
その面積で割り算をすることにより面積あたりの光合成速度を計算することができます。もちろん、
あまり面積が小さければ、二酸化炭素の吸収自体が小さくなってしまいますから、よくありません。
4.研究の内容について:大学で誰もやっていない研究にトライする姿勢は評価しますが、
実際の研究を行なうにあたっては、やはり、専門家の意見を聞いておくことは重要です。このような、
インターネット上のやりとりだけで研究を進めるのは、かなり危険だと思います。近くの大学なりで、
光合成の専門家の人を見つけて、一度ディスカッションをしてもらった方がよいのではないかと思います。
(2007.9.6)
Q:こんにちは。先日はご丁寧に質問に答えていただきありがとうござました。 お忙しいところ申し訳ありませんが、もう少しだけ質問をさせて下さい。 前回の「光が弱いほど、早く飽和点に達しますよね。」と分かりにくい言い方をしてしまい、申し訳ありませんでした。 二酸化炭素濃度を横軸にとり、温度を一定にし、光の量を変化させて光合成速度を測定するグラフを様々な書籍で見かけます。 弱光下では、強光下に比べて早く最大光合成速度に達しています。この弱光下の具体的な数値をご存知ですか? 前回質問させていただきましたとおり、現在は弱い光のもとでしか実験を行うことができません。 弱光下で、二酸化炭素を高い濃度で安定させ、 その中で様々な植物の二酸化炭素濃度を測定することによって最大光合成速度に差が出てくるのではないかなと考えております。(2007.9.7)
A:なるほど、二酸化炭素濃度をふった時に光合成曲線の話ですね。何を言いたいのかはわかりましたが、 実験の目的がよく分かりません。通常、大気条件で充分な光が当たっている場合、 光合成速度を律速しているのは二酸化炭素濃度です。それを弱光かつ飽和するような二酸化炭素濃度にして光合成を測った場合、 実際の植物の生育条件とはかなり異なった条件での光合成を見ることになります。 一口に、光合成といっても、一つの単純な反応が起こっているわけではなく、極めて多数の(条件によって律速段階の異なる) 反応の集まりです。従って、ある条件で得られた光合成速度の情報は、別の条件での光合成速度の見積に使うことはできません。 おっしゃる条件で光合成を測定することは可能だと思いますが、 野外での植物の一般的な光合成能力を見積もる実験にはならないように思います。(2007.9.7)
Q:神奈川県で小学校の教員をしております。
光合成によって作られたデンプンがどこに行くのか?どのように使われるのか?
を子どもたちに説明したいと思い、この夏に色々調べて参りました。
先生のHPを拝読しながら、葉・茎・実・根においてショ糖に変換さるなど何らかの形で運ばれ、
使われているのがわかりました。植物の成長に使われているのだということもわかりました。
そこで質問です。
(1)花びらにも、デンプンあるいは糖が運ばれ、使われているのでしょうか。
(2)もしそうならば、それを証明するために適した花は何でしょうか。
花びらにヨウ素液をつけて実験をしていないので
私自身の調べ不足のままの質問で申し訳ないのですが
お答えいただけると幸いです。よろしくお願い申し上げます。(2007.8.31)
A:花びらでも、当然エネルギーが必要ですから光合成産物が運ばれて利用されます。 しかし、光合成産物の中で、デンプンというのは、貯蔵に適した形です。また、 ヨウ素デンプン反応はあまり鋭敏な反応ではないので、ある程度の量が貯まっていないと、 デンプンを検出することができません。一般的には、花びらは寿命も短いですし、 通常は多量のデンプンを貯める必要性がないと思いますので、ヨウ素デンプン反応を使って花びらのデンプンを検出するのは、 難しいように思います。ただ、花びらの開閉の際に、デンプンの加水分解によって糖を作り、 糖による浸透圧の上昇をによる細胞の吸水を利用して、花弁を動かす例が知られています。 この際には、花弁の運動の後ではデンプンの顆粒が消失します。顕微鏡レベルの観察が可能であれば、 ヨウ素で染めたそのような顆粒の消失を見ることができるかも知れません。(2007.8.31)
Q:お答え頂いた中にあった、アサガオの「開花前」のつぼみに ヨウ素液をつけて電子顕微鏡で見てみました。これがデンプンだというのはわかりませんでした。 光の加減なのか、青く染まったようにも見えましたが何分、 はじめて見たのでデンプンなのかどうかわかりません。 顕微鏡を通してデジカメで撮った写真をご覧いただきましてデンプンがあるのかどうかみていただけないでしょうか。 よろしくお願い致します。(2007.9.4)
A:"電子顕微鏡"ではなくて光学顕微鏡ですよね。スケールがわからないのですが、おそらくデンプン粒を見るためには、 この倍率では難しいのではないかと思います。花弁のデンプン粒の話が書いてあった教科書に顕微鏡写真が出ていた はずなので、探してみたのですが、どの教科書だったか定かに覚えておらず、見つけることができませんでした。これも、もしかしたら、それこそ 電子顕微鏡の写真だったかも知れません。デンプンは、色素体の中に存在し、色素体は細胞の中に存在します。 ですから、最低限、細胞と、その中の色素体が見える倍率は必要になります。例えば、こちらの サイトのスイカの皮の光合成を調べたページ に載せている光学顕微鏡写真を見て頂ければわかると思いますが、かなり高倍率の顕微鏡を使っても、葉緑体の内部構造は、 「はっきり見える」というわけにはいきません。ここで使っているぐらいの倍率を用いて、 ヨウ素液で染めて(葉の場合はクロロフィルを除いて)観察すれば、何とか見えるかも知れない、 というぎりぎりのところだと思います。それでも、おそらく小さな点にしか見えないと思いますので、 染めていないと他の器官との区別は難しいでしょうね。見せて頂いた写真の倍率は、 これで最高の倍率でしょうか?まず葉っぱを観察してみて、 そこで葉緑体を判別できる程度の倍率にしないと難しいように思いました。 どうも、期待を持たせて難しい実験に引きずり込んだようで、申し訳ございません・・・。(2007.9.5)
Q:はじめまして。お忙しいところ失礼致します。私は、太陽光と人工光(LED) 照射による植物の光合成速度がどのように変化するかを研究している者です。LEDは、赤と青色LEDを用いて、 20 cm直下で照度が600 luxほどあります。実際にコマツナを栽培しておりますが、成長が悪いようです。 そこでコマツナの光補償点を教えていただきたいです。また、照度が600 luxで育つ植物はありますでしょうか。 室内と室外で違いを見たいので、この光条件で育つ植物を教えていただきたいです。栽培時期は、 9月以降を考えております。また、栽培期間が短い植物も何回か実験を行いたいので教えていただきたいです。 以上よろしくお願い致します。(2007.8.31)
A:600 luxというと、10 μmol/m2/s ぐらいの光量子束密度ですから、 真夏の直射日光の約1/200というところです。コマツナの光補償点をきちんと調べたことはありませんが、 10 μmol/m2/s というと、多くの植物でちょうど光補償点ぐらいだと思います。研究対象は、 野菜に限るのでしょうか。暗いところでも育つ陰生植物では、10 μmol/m2/s でも育つ植物はありますが、 そのような植物は、成長が遅いことが多く、通常たくさん育てられている野菜の中にはあまり多くありませんし、 成長期間もどうしても長くなります。暗くてもよく育つ植物としては、セントポーリアなどが有名ですね。 シダの仲間などにも、暗いところで育つものが多くあります。ただ、「よく育つ」といっても、あくまで、 非常に暗い割には育つ、ということであって、明るいところに育つ植物のように高い生育速度を示す訳ではありません。 光補償点を小さくするには、呼吸速度が小さい必要がありますが、高い生育速度のためには、通常、 高い呼吸速度が必要なので、暗いところでも育つという性質と、高い生育速度を示すという性質は、 なかなか両立しないのです。(2007.8.31)
Q:再び質問させていただきます。 照度が光補償点ぎりぎりでは、植物は育たないのでしょうか。研究対象は、野菜に限らず、LED照射による光合成速度の変化が観測できれば結構です。 この研究の目的は、人工光と太陽光による光合成速度の違いを定量することです。そのため、弱光下(600 lux程度)でも育ち、屋外でも育つ植物を検討しているとこです。 LEDユニットを既に購入しており、できればこのユニット(照度600 lux)での実験を進めて行きたいです。 セントポーリアについてもまた、暗くても育つのであれば、土壌呼吸より多く光合成をして二酸化炭素を吸収していると考えてよろしいでしょうか。 今後研究がうまく行けば、LEDの照度を上げて実験していきたいと思っております。また、カイワレ大根やスプラウトのような植物でも光照射により光合成するのでしょうか。 以上よろしくお願い致します。(2007.8.31)
A:どうも、研究の目的を把握しきれていないのでお答えが難しいのですが、以下に個別にお答えします。 まず、2種類の光で光合成速度を測定するために、植物を2種類の光で「育てる」必要はありせん。 例えば自然光で育てておいた植物に、2種類の光をあてて、その際の光合成速度を測ればよいことになります。 もちろん、光合成速度の違いではなくて、生育の違いを調べたいのであれば、話は別ですが・・・。 次に、光補償点というのは、呼吸と光合成が釣り合う点です。ここで言う呼吸というのは、植物の呼吸であって、 土壌呼吸とは全く別物です。土壌呼吸の速度は、植物以外の要因によって決まりますから、 「土壌呼吸より多くの光合成をする」かどうかは、栽培条件によって大きく異なり、一概に言えません。 光補償点では、光合成による稼ぎと呼吸による消費がバランスをするわけですから、植物は大きくなれません。 その意味では「育たない」といってもよいと思います。ただ、多くの場合、直ちに枯死するわけではありません。 セントポーリアのように暗いところでよく育つ植物は、一般的に呼吸速度が小さいので、光補償点が低く、 暗い場所でも、稼ぎが消費を上回って生育できることになります。 カイワレ大根やスプラウトというのは、いわば育て方の名前で、植物の種類ではありません。何であれ、 ある程度の光があたって、緑化をすれば、光合成をすることになります。一方で、 モヤシのように完全に暗い条件で育てることによって、白くなっているものでは光合成をしません。 最後に光合成を議論するのに「照度」は適切な単位ではありません。そのあたりについては、「光の単位」をご覧下さい。(2007.8.31)
Q:お返事ありがとうございます。実験の趣旨が分かりにくく申し訳ありません。 本実験では、プランターに植物を育成し、プランターをクローズドチャンバー(密閉型の容器) にかぶせ、一定時間内におけるチャンバー内の二酸化炭素濃度を分析器により定量することで、 見かけの光合成速度や呼吸速度を見積もり、二酸化炭素フラックス(収支)を求めることを目的としております。 プランターをチャンバー内に入れることで、チャンバー内の二酸化炭素濃度は、 土壌呼吸量+植物の呼吸量−植物の光合成量の合計値であると考えております。 光合成量が多いときには、チャンバー内の二酸化炭素濃度が低下していき、 その後平衡状態となります。また、光合成量が少ないときには、 直線的にチャンバー内二酸化炭素濃度が上がっていきます。これらの傾きから、 二酸化炭素フラックスを定量しております。まず、この考え方でよろしいでしょうか。 また、光の強さが変化する太陽光と光の強さが一定である人工光(LED)では、 時間帯における光合成速度の傾向に違いが出てくると思っております。 現段階では、LED照射では、照射下においてほぼ同じ光合成量であると考えております。 そこで、このような一定光強度の照射下における光合成速度についての研究がおこなわれているかどうか ご存知でしたら教えていただきたいです。以上よろしくお願いいたします。(2007.9.1)
A:クローズドなシステムによる光合成測定の概要としては、よいように思います。 土壌の呼吸量は、入れる土壌の量と性質によっていくらでも変わると思うので、 二酸化炭素の収支がどこでバランスするかは、初期条件によることになりますが、それでよい、 ということでしょうね。それでも、土壌呼吸が光条件によって変化する場合は、解析が難しくなりますし、 変化しない場合は、光合成・呼吸とは独立に測定した方が楽ですから、土壌呼吸を込みで測定する必要性については、 今ひとつわかりませんでした。いずれにせよ、そうしますと、光合成の測定自体は短時間ですみますから、 やはり植物を当該光源で「育てる」必要はないように思います。「一定光強度の照射下における光合成速度についての研究」 について、お尋ねですが、実際に光合成を測定する場合は、むしろほとんどが一定の光による測定なのです。 植物の光合成を測定した論文は、年に数百報は出ていると思いますが、 LEDもしくはその他の光源より一定の明るさの光を照射し、光合成速度を測定したものがほとんどです。 むしろ変動する光環境での光合成測定の方が遅れていて、昔は、現場での光合成測定が難しかったものですから、 一定の明るさの光による光合成速度測定から得られた光ー光合成曲線と、現場での光環境の変動曲線から、 モデルをたてて、野外での光合成速度を見積もる、ということが行なわれていました。現在では、 野外で連続的に光合成速度を測定するシステムが発達しましたから、変動する光環境での光合成速度も、 実測できるようになりました。(2007.9.1)
Q:度々申し訳ありません。
光合成についてあまり知見がないため的外れな事かもしれませんが、質問させていただきます。
まず、光合成速度は日射、気温、湿度など気象条件により様々に変化すると思っております。
そこで、急に光条件を変えた場合(太陽光→太陽光+LED照射など)、その植物の応答性は植物により
様々であると思いますが、光条件を変えることにより植物の体内リズムのようなものが
崩れてしまうことはあるのでしょうか。
また、以前ご指摘頂いたように、光合成速度の違いを計測する場合、自然光の下で植物を育てておき、
異なる光をあてて、その際の光合成速度を測ればよい、とのことでしたが、実際に測定を行うに当たって
質問させていただきます。実際に屋外で比較する場合、
1.太陽光下、
2.太陽光下+LED照射、
3.太陽光下+LED無点灯(LEDを植物体の上部に設置するため)
4.LED照射のみ(植物に太陽光が当たらないようにする)
において、実験を行えばよろしいでしょうか。
植物の生育まで考慮する際は、上記のような条件でそれぞれ植物を育て、
測定を行うことで各々評価すれば良いのでしょうか。
以上よろしくお願いいたします。(2007.9.1)
A:まず、リズムの件ですが、多くの植物は、定常光で育てても、正常に生育します。 また、そもそも、自然環境では、昼間だけを考えても常に光の明るさなどは大きく変化しています。 明暗周期を人工的に逆転させる、などといった場合には、植物に悪い影響が少なくとも一過的にはあることが考えられますが、 昼間に光の明るさをかえる程度では、さほど大きな変化はないように思います。また、そもそも、 太陽の直射光の明るさは2000 μmol/m2/s に達しますから、そこにLEDで可視光を足してもほとんど効果はないと思います。曇り空でも、 明るさは100 μmol/m2/s程度はあると思いますので、10 μmol/m2/sのLEDの光をつけても「光条件を変えた」 とは言えないのではないでしょうか。やはり、何が目的で実験をしているのかがはっきりしないと、 なかなかお答えするのが難しいと思います。光の明るさの変化が光合成に与える影響に興味があるのでしたら、 太陽光に暗いLEDを足すという実験デザインはあまり意味がありません。LED照射のみの時と、太陽光を比べるとしても、 2つの条件の間では明るさが100倍程度異なるわけですから、条件が違いすぎて、やはり何かを結論できる実験には、 ならないでしょう。研究を開始するにあたっては、まず、どのような条件を変えた時の、何に対する影響を見たいのか、 ということをはっきりさせて、それに合わせた実験計画を立てるのがよいのではないかと思います。 生育に対する影響を見る場合と、光合成速度に対する影響を見る場合では、全く異なる実験が必要になるはずです。 また、光合成速度に対する光の影響に関しては、毎年山ほど論文が出ています。既に報告があることを実験してもしょうがないので、 実験をデザインするにあたっては、まず、過去の文献に一通り目を通された方がよいのではないかと思います。(2007.9.1)
Q:植物の一日の酸素排出量と二酸化炭素排出量の割合を教えてください。(2007.8.31)
A:光合成では酸素を発生して二酸化炭素を吸収します。その比率は、基本的には、 酸素1分子に対して、二酸化炭素1分子です。呼吸では、逆の反応が起こりますが、やはり比率は1対1です。 種子に大量に油を貯める場合などに、この比率が変わることはありますが、あくまで例外的な現象です。 というわけで、一日を通して行なわれる呼吸と昼に行われる光合成を足し合わせても、 酸素と二酸化炭素の分子の比率としては1対1(両方とも排出量とすれば−1対1)が正解です。ただ、酸素の分子量は約32、 二酸化炭素の分子量は約44ですから、重さにすれば、32:44ということになります。(2007.8.31)
A:この質問について、聞いているのは酸素と二酸化炭素の分子数の比ではなくて、単に植物の光合成速度と呼吸速度の比を聞いているのではないかというご指摘を頂きました。 ご指摘を受けてもう一度質問を読んでみると、確かにそのような気もしますので、補足しておきます。光合成と呼吸の比率は、植物によって異なりますので、一概には言えません。 しかも、昼間の呼吸速度を測定するのは難しい上に、夜間の呼吸速度は一定でないという問題もあります。 ただ、おおざっぱに言って光合成は呼吸の数倍の速度を持つと考えてよいかと思います。(2007.9.19)
Q:ご教示ください。特別養護老人ホームに入所している母の楽しみは鉢植えの植物を育てる事でしたが、 入所4年目に入って初めて、先日「昼間は光合成で酸素を発生している植物でも夜間は人体に有毒なガスを発生している」 という理由から鉢植えを部屋から撤去するようにと看護師から言い渡されました。群馬の施設でのことです。 テレビでも放映されたとの事ですがテレビ局、番組名は分かりません。京都府立植物園、大阪の「咲くや此花館」 宇治のフラワーガーデン、知り合いのKIRIN. Pharma臨床開発部の研究員等に問い合わせてみましたが、 「有毒ガスの発生」に関しては?でした。施設での楽しみを諦めなければならない母の落胆が生きる気力に悪影響をあたえることを案じています。 よろしくご教示ください。部屋に置いてあった鉢植えはカランコエ、源平木、金柑、アジアンタムです。(2007.8.30)
A:その「有毒ガス」なるものが、何であるかによって考え方は異なります。
植物が夜間に放出するガスとしては、二酸化炭素があります。看護士さんが「夜間は」と言っているところを見ますと、
どうも二酸化炭素を頭に置いているように思えます。二酸化炭素は毒ではありませんが、酸素ではないので、
もし、空気が二酸化炭素だけになってしまったら、人間は呼吸できなくなってしまいます。しかし、僕のホームページの
よくある質問のコーナーの「植物の呼吸の速度はどれぐらいか?」
にもありますように、もし植物の出す二酸化炭素が体に悪いようでしたら、隣に人が寝ていたらその千倍も体に悪いことになります。
というわけで、夜間に植物が出す二酸化炭素を心配する必要はありません。
次に、二酸化炭素ではない、特別の有毒ガスを植物が出す可能性があるかどうかです。これについては、
「聞いたことがない」としか、お答えのしようがありません。植物体自体に毒を含むものはいくつかの種類で知られていますが、
ガスの形で毒を放出する植物というのは聞きません。一方で、広い世の中に、そのような植物が一切存在しないとは断言できません。
ただ、ご指摘の4種類の植物は、それぞれ、系統的にもかなり異なる植物です。それらの植物が、
そろいもそろってたまたま夜間に有毒ガスを出す珍しい植物だった、という可能性は、ないと考えてよいかと思います。
というわけで、いずれにせよ室内の植物が出す「有毒ガス」を心配する必要はないように思います。(2007.8.30)
Q:光合成を行なう藻類は昼間、増殖はしないが光合成をしてエネルギーを蓄え、 夜、そのエネルギーを使って増殖するという話を聞いたことがあります。これは本当なんでしょうか? 本当だとするならば、増殖曲線を細かくプロットして描いていくと、階段状になるのでしょうか?(2007.8.30)
A:一部の単細胞藻類は、1日に1回分裂をする形で増えていき、かつ、この分裂は、 夜間に起こる場合が多いので、ご指摘のように「夜間に増殖する」といってよいと思います。 増殖曲線に関しては、どのようにとるかにもよると思います。散乱(濁度)によって見ている時は、 分裂をした瞬間に濁度が上がるわけではないので、難しいかと思いますが、フローサイトメトリーなどを使えば、 階段状のデータも取れるのではないかと思います。DNA量などを見ても、階段状になるように思います。 ただし、全ての藻類がそうなるわけではなく、分裂が同調しない藻類もあります。(2007.8.30)
Q:光合成に適した温度は何度ですか?(2007.8.29)
A:例えば、「人が心地よいと感じる温度は何度ですか?」と聞かれたら、 何と答えるでしょうか?人によって暑がりの人も、寒がりの人もいると思います。また、夏場に暑さに慣れた時なら、 30℃ぐらいはさほど気にならないと思いますが、まだ春先に30℃まで気温が上がったら、きっと暑くて大変ですよね。 光合成も同じです。植物の種類によっても違いますし、その植物がどの程度の温度を経験しているかによっても異なります。 強いて答えるとすると、その植物が普段経験している温度で一番光合成がうまく働くようになっている例が多いと思います。 例えば、光合成をするシアノバクテリアという単細胞の生物を例に取ると、普段30℃ぐらいで生育する種類は、 光合成も30℃ぐらいで最大になりますが、温泉に生える種類では、60℃近くで光合成が最大になるものがあります。(2007.8.29)
Q:光合成を行う際に、土中の鉄イオンはどのような働きをするのですか? プランターなどで植物を育てる場合、鉄イオンが不足して充分な光合成ができないと きいたことがあります。光合成の際は必ず必要なものなんでしょうか?ご回答宜しくお願い致します。(2007.8.27)
A:光合成では電子伝達鎖などで酸化還元の反応が行なわれます。そのために、 何種類かの金属イオンがタンパク質複合体に配位した形で存在し、酸化還元をしています。鉄は、2つの光化学系の内、 光化学系Iに鉄イオウセンターの形で結合しています。この鉄イオウセンターは、 4原子の鉄と4原子の硫黄がタンパク質のシステイン残基に配位したもので、光化学系Iはこの鉄イオウセンターを3つ持ちますから、 系Iの複合体当たり12原子の鉄が存在することになります。光化学系IIにも鉄が1原子だけ存在しますが、 量的に少ないので、鉄欠乏の際は光化学系Iの方への影響が強いようです。 この他、動物の血液のヘモグロビンなどに含まれる鉄とよく似たヘム型の鉄も存在します。 光化学系Iと光化学系IIの間で働くシトクロムb/f複合体や、光化学系Iから電子を受け取るフェレドキシンというタンパク質などでも、 鉄イオウセンターやヘムを持っています。これらの電子伝達成分は、全て光合成に必須なので、 植物は鉄がないと生きていけないのです。(2007.8.27)
Q:アサガオを使って光合成と光の色を調べる実験を行いました。 市販の色セロハンを袋状にして葉にかぶせ、4時間おいた場合と8時間おいた場合で実験をしてみました。 すると、両方とも緑色のセロハンがヨウ素でんぷん反応が濃くでました。逆に青色、 赤色のものは緑色よりも明らかに薄くなりました。植物は、一般に緑色を吸収せず、 赤や青を吸収するときいていたので、実験して出た結果に困惑しています。 どのように結果を処理したらよいか悩んでいます。ご指導お願いします。ちなみに、 脱色は、エタノールで行いました。(2007.8.26)
A:すぐ下の回答はご覧になりましたか?おそらく、この場合も、 何度か実験を繰り返して同じ結果になったのか、それとも、一度だけの結果で、 実験のばらつきのためである可能性があるのか、そこの見極めが一番大切だと思います。 下の回答を読んでみて、その上で、実際はどうだったのか、もしくは自分はどのように考えるのか、 ということを含めて再度質問して頂ければ、もう少し具体的な回答ができるかと思います。(2007.8.26)
Q:お返事ありがとうございました。実験は2日行いました。両日ともとても暑く、 日差しもかなりきつい日でした。ただ、2回の実験とも緑色のセロハンをつけたものがセロハンをつけなかったものと同じ程度のヨウ素反応を示していました。 日差しをさえぎった方が・・・と考えるならば、セロハンをかぶせなかったものよりも強いヨウ素反応を示すはずだと思うのですが・・・ また、赤や青のセロハンをかぶせたものも緑色と同じようにセロハンをかぶせなかったものよりも濃いヨウ素反応を示すと思うのですが・・・? 実験した結果では、かぶせなかったものと緑色が同じ程度の反応を示し、明らかに赤や青の反応が薄かったのですが・・・この結果からだとどのように考えればよいでしょうか。 教えてください。実は、先ほど、別な植物(アジサイと梅)でも実験しようと準備してきたところです。 先生が言われるように何度かやってみたいと思います。また、それぞれの色の強さ(正確には色セロハンをかぶせることでどれくらい照度がさがるかということ) も調べてみたいと思います。(2007.8.28)
A:2回の実験で、同じことが起こっているということであれば、ただのばらつきではなく、 何か理由があるのでしょうね。このような場合、いくつか可能性は考えられますが、どれが正しいかは、 それを確認する実験をしないとわかりません。例えば、調べてみたいと言っている光の明るさは重要なポイントです。 これが原因かどうかを調べるためには、セロハンを2重にしたり、3重にしたりした場合に、 どのようになるか、というのを見てみるのも手かと思います。また、人間が見た時の色と、実際の光の色の分布 (スペクトル)は必ずしも一致しません。虹の七色を全て含む白い光から紫・青の光だけを取り除くと、 人間の目には黄色に見えます。一方で、黄色の光だけをとりだしても、もちろん黄色に見えます。 前者の場合は、黄色といっても、赤の光や緑の光を含みますが、後者は黄色の光だけで、赤や緑は含みません。 つまり、人間の目には黄色としか見えない光の場合でも、そのスペクトルは異なる可能性がある、ということになります。 色セロハンといっても、作っている会社によっては、スペクトルがだいぶ違う可能性もあるわけです。 こちらは、光のスペクトルを測る分光器で、実際のセロハンを通る光のスペクトルを測定してみないといけませんが、 家ではちょっとできないのが困ったところです。 あと、下の質問にあるような透明のセロハンはやってみましたか?セロハンをかけると、当然空気の通りは悪くなりますから、 その影響も考えなくてはいけません。特に袋状にした時は大きく影響するかも知れません。そのあたりもチェックする項目になるかと思います。 いずれにせよ、自由研究の場合は、出た結果をどのように解釈するかが腕の見せ所です。そして、できれば、 解釈した結果に基づいて、それを確かめる実験をすることができれば完璧です。もう少し頑張ってみてください。(2007.8.28)
Q:こんにちは、私は小学6年生です。この夏に植物の生育と光の関係を調べるため、 サルビアの苗に、セロハン紙で覆いをして何色の苗が一番育つか実験してみました。試す色は、 透明、黄色、青、緑、赤、黒の6鉢用意しました。三週間たちましたが、黒が一番小さくて、 赤が一番よく育っています。写真を撮ってみました。見てもらえるとよかったのですが・・・ 予想では黒が一番小さくて、透明が一番育つと思ったのに、透明もよく育っていますが、 赤と緑が透明よりよく育っています。それはなぜでしょうか。実験の仕方が悪いのでしょうか? それとも、光合成の関係ですか?教えてください。(2007.8.21)
A:このような場合、2つ可能性が考えられます。1つは、たまたまそうなっていただけで、 もう一度実験をすると違った結果になる場合です。生き物というのは、工場でたくさん作る製品とは違いますから、 1つ1つばらつきがあります。たまたま、透明なセロハンで覆ったサルビアの苗が、ちょっと調子が悪かった、 ということもあるかも知れません。実験をした苗の数は各色1本ずつですか?何本かずつやるか、もしくは、 実験を何回か繰り返せば、観察した差がばらつきによるものかどうかわかると思います。もしばらつきの場合は、 もう一回やったら別の結果が出るでしょうし、ばらつきでない場合は、何度やっても同じ結果が出るはずです。 何度やっても同じ結果が出る場合は、もう一つの可能性を考えなくてはいけません。その場合は、 本当にそのような差があることになりますから、その理由を考えなくてはいけません。ここから、あとは、 頭の使いどころです。別に正解があるわけではないので、ともかく考えてみることが大事です。 例えば、ここしばらく、とても暑かったですよね。もしかしたら、暑くて光が強すぎて、 透明なのはへばってしまったのかも知れません。赤や緑のセロハンで、光が少し弱まった方が元気になるのかも知れません。 人間も日焼けをしますが、光合成をする植物も、あまりに光が強い時にはかえってよくないこともあるのです。 今からだと、ちょっと時間がないかも知れませんが、できれば、どちらか確かめられるとよいですね。(2007.8.21)
Q:ホームページを見て、光合成とは還元力を使った代謝のすべてということがわかりました。 また、高校などで教える光合成とは「植物が光によって水を分解して酸素を発生し、二酸化炭素を有機物に固定する反応」 という程度ですが、それはそのことが一番大切なことだから、その大切な一部分だけを教えているのだと思いました。 そこで質問なのですが、植物は、最低限、光と水と二酸化炭素だけで成長することが出来るのでしょうか? それとも「光合成とは還元力を使った代謝のすべて」ということは、二酸化炭素固定以外の代謝もなければ、 絶対成長できないのでしょうか?なぜなら、現代の私たちは豊かな食生活の中で暮らしていますが、その生活を変えて、 質素な食事だけでも最低限生きてはいけると思うからです。例えば、毎日ご飯と味噌汁だけでも、 (寿命に影響はあるとしても)別に人類の存亡にかかわるほどに窮することはないと思います。 次の世代を作ってから死んでいくくらいの生命の営みはまっとうできるように思えます。植物もそうではないかなと思い、 質問させていただいた次第です。よろしくお願いいたします。(2007.8.20)
A:植物に限らず、生物を構成しているのは、主に水、タンパク質、脂質、あとはDNAを構成する核酸です。
タンパク質の働きを助けるためなどに微量の金属が働いていますが、取りあえず、今は考えないことにします。
脂質は、元素としては主に炭素、酸素と水素からなりますから、これは二酸化炭素と水から、原理的には作ることが可能です。
一方、タンパク質を作るアミノ酸は、炭素、酸素と水素の他に窒素を必ず含みますし、硫黄を含む物もあります。
また、核酸は、炭素、酸素、水素の他に窒素とリンを必ず含みます。ですから、水と二酸化炭素に加えて、
必ず窒素とリンだけは生きていくのに必要となります。
これを別の面から考えてみましょう。植物の肥料を買いにいくと、箱にK, P, Nの比率、というのがよく書いてあります。
これは、カリウム、リン、窒素の元素記号で、要は、肥料の主成分はカリウムとリンと窒素だということです。
リンと窒素は、上に述べたようにタンパク質と核酸を作るために必要です。カリウムは、細胞の中の、
イオンのバランスをとるために必要なのです。というわけで、いくら質素でよい、といっても、
窒素、リン、カリウムぐらいは必要だ、ということになります。実は、その他にも、量は微量でよいのですが、
生育に絶対必要だ、という元素がいくつもあります(硫黄、鉄、マグネシウム、マンガンなど)。ただ、
微量でよい物質は雨水に含まれている量でもよかったりしますので、あまり普段気にしないだけなのです。(2007.8.20)
Q:現在、光合成の条件である「光」に関しての実験を始めたところです。 水草の「マツモ」7cm(約2g)を息を30秒吹き込んだ水道水(29℃)の入った容器の中に入れて、 蛍光灯から5cm毎離す実験をしていました。距離を変える間と記録の時間(1分から30分) は蛍光灯を消してすすめていきました。その実験を進めていく中で、一発目の気泡の出かたに時間差が出ることに気づきました。 これは、光の当たっていた時間に関係しているのではと思いました。そこで、同じ条件で、 光をあてない時間(1分、2分、3分…60分まで時間を延長しながら、 一発目の気泡が出るまでの時間を記録していきました。結果、光の当たっていない時間が長くなると、 一発目の気泡が出る時間に遅れが出てくることが判りました。しかし、ある時間に来ると変化が見られなくなりました。 これは、光合成の働きが完全に止まって呼吸するシステムに変わったことを意味するのではないかと思いました。 時間が一定になる前の状態は、車で言えばアイドリングの状態で時間に変化がなくなった時点でエンジンを止めたことと似ているのではないかと想像しています。 そこで質問なのですが、僕の実験で出た結果はどんな植物の働きを示しているのでしょうか。 光合成のエンジンがかかるまでの時間にある程度の規則性(?)があるのでしょうか。 エンジンのアイドリング状態,エンジン停止状態をなんと言うのでしょうか。 また、このようなことが書かれている資料はあるでしょうか。 それから、同じ条件で、光から15cm、30cm離して実験を行いました。予想と違って僕の実験では5cmの時とほぼ同じ時間からエンジンがストップしました。 驚いています。もう2,3回同じことを繰り返して結果を出したいのですがとても時間がかかる実験なのですぐには結論が出ません。 夏の自由研究で提出する時間は迫っていますが、今後も続けて生きたいと思います。 続けて行っていくうえでのアドバイス(この実験の方法など)もうかがえれば助かります。よろしくお願いします。(2007.8.19)
A:ううむ。質問の際のカテゴリーでは「中学生以下」になっていましたが、
もし本当に中学生が一人で、ここまで実験・考察をしたのだとしたら、驚きですね。高校生だとしても非凡なものを感じます。
出た結果をもとに新しい実験をデザインすることは、残念ながら大学生でもできない場合が多いのですが・・・。
それはともかく、本題に。ここで発見された現象は、光合成の光活性化でしょう。光合成の反応は、
光エネルギーを化学的なエネルギー(実体としてはATPという分子)に変える反応(光リン酸化反応)と、
そのATPのエネルギーを使って二酸化炭素を糖に変える反応(炭酸固定反応)に分けられます。当然、
前者の反応は光を必要とするのですが、後者の反応に必要ないくつかの酵素は、
実際には光があたっていない時には不活性化されることがわかりました。
従って、前者を明反応、後者を暗反応と呼ぶことが一般的に多いのですが、暗反応は暗所では反応が進まないので、
現在は、あまり適切な用語とはされていません。炭酸固定反応に関わるいくつかの酵素は、
光があたっている時には活性を持っているのですが、暗所においておくと徐々に活性を失ってしまいます。
そして、失活した酵素は、光があたると再び活性化されます。今回発見した現象は、これを反映しているものと思われます。
炭酸固定の酵素以外にも、ATPを合成する酵素や、NADPHという植物の中で還元剤として働く物質を合成する酵素などが、
同じように暗所で失活し、光で活性化されることが知られています。では、なぜこのような制御をしているのでしょうか。
生物の体の中の反応というのは、たいてい逆方向にも進む(可逆的といいます)反応がほとんどです。
ですから、例えば、光があたっている時にATP合成酵素によって一所懸命ATPを作っても、酵素をそのままにしておくと、
暗所では、せっかく作ったATPをその酵素がどんどん分解していってしまうことになります。そこで、
そのようなことがないように、暗所では酵素を失活させておくわけです。アイドリング状態では酵素がまだ活性を維持しており、
暗所の時間が長くなると、酵素が失活してエンジンが停止する、ということになりますね。実験結果は、
これだけで十分面白いと思いますが、もし、続けるとしたら、光合成の光活性化以外の可能性を検討した方がよいかも知れません。
最初の気泡が出るまでの時間は、水に酸素がどの程度飽和しているかによっても変化します。光合成が同じでも、
水にほとんど酸素が溶けていない状態から出発すればなかなか気泡が出ませんし、酸素が飽和状態になっていれば、
すぐに気泡が出始めるでしょう。光を当てない時間を変化させたことによって、酸素の飽和状態が変化し、
実はそれが原因で、観察されたような現象が起こっていないかどうかを確かめる実験をうまくデザインできれば、
やってみる価値があるかも知れません。(2007.8.19)
Q:お返事ありがとうございました。お答えいただいた内容でわからない言葉がたくさんあったので、 「明反応」「暗反応」「炭酸固定反応」をキーワードに調べてみました。 先生のおっしゃられたことがやっと理解できるようになりました。 僕の実験でわかることは炭酸固定反応に関わる酵素などが失活する時間を意味するのですね。 ただ、調べていくうちに疑問に思ったことがひとつあります。酸素を放出するのは明反応だけで、 炭酸固定反応では出ません。気泡だけを見ていた僕の実験は明反応の部分だけでの結果じゃないかと言うことです。 実験結果から、炭酸固定反応に関わる酵素の働きまで導き出せるでしょうか。 …けれど明反応はいつもスタンバイ状態にあって、炭酸固定反応の状態によりON,OFFされるのでしょうか。 明反応と炭酸固定反応がどのように橋渡ししているのか理解できないでいます。(2007.8.19)
A:すみません。なかなか内容が高度なので、簡単な言葉で、とは思いつつ、どうしても、 表現が難しくなってしまいます。確かに、酸素を出すのは、いわゆる明反応の部分で、炭酸固定反応自体は、 酸素発生とは無関係です。そして、光リン酸化と炭酸固定反応をつなぐのが、上で出てくるATPとNADPHなのです。 ATPはADPという物質から作られ、炭酸固定反応に使われると元のADPに戻ります。同様に、NADPHも、NADP+という 物質から作られ、炭酸固定反応に使われると元のNADP+に戻ります。 炭酸固定と光リン酸化が協調して働いているうちは、このサイクルがうまく回転しますが、炭酸固定が止まると、 ATPやNADPHが余って貯まり、ADPとNADP+が足りなくなります。光リン酸化が進むためには、 ADPとNADP+が必要なので、結果として反応が「つまって」しまうのです。 人工的にADPやNADP+の代わりになる物質を添加すると、炭酸固定が止まっている状態で、 酸素を発生させることができますが、自然の状態では、光リン酸化と炭酸固定は協調しないと働けないのです。(2007.8.19)
Q:ふ入りの葉ができる原因として、遺伝的なものやウイルス感染などの病的なものもあると言われますが、 この他に何かの良い効果を期待してふ入りになっているなどの理由はないのでしょうか。 「ふ」が入れば光合成の効率が落ちるなど、デメリットしか思いつかないので疑問に思っています。 よろしくお願いします。(2007.8.19)
A:おっしゃるように「斑」が入って得をするケースはあまり考えられないと思います。 現実に斑が入るのは、遺伝的なケースでは葉緑体の異常の場合が多く、ウイルス感染の場合と同様、 デメリットになります。身の回りで斑入りの植物が多いのは、見た目の美しさのために人間が選抜した例が多いからだと思います。 「人の目から見て美しいので園芸品種として選ばれやすい」という以外のメリットはないように思います。 沖縄に行くと葉がきれいな黄色をしている黄金ガジュマルというのがよく植わっています。これも、 やはり、クロロフィルが少ないので、光合成的にはデメリットになるのですが、人間が選んで植えているので、 たくさんあります。ただ、光合成では損をしているので、変異がおきて元の緑色の植物ができると、 そちらの方がよく増えて、放っておくと黄金のは駆逐されてしまいます。斑入りも同じで、 人間が関与しているので維持されている例が多いのではないでしょうか。(2007.8.19)
Q:はじめまして。薄層クロマトグラフィーで植物の『色素』を調べたいと考えています。 二次元展開をするために必要な2種類の展開液を教えて下さい。 (学校の授業では 石油エーテル:アセトン=6:4 を用いて一次元展開を行いました。) アミノ酸やグルタミン酸などの展開に用いる展開溶媒はネットで調べることができたのですが、 『色素』については分かりませんでした。よろしくお願いします。(2007.8.18)
A:薄層クロマトグラフィーをする場合には、確かに一次元だけで展開する場合と、 異なる展開液を用いて二次元に展開する場合があります。当然、二次元展開をするのには余計に手間がかかりますが、 なぜ、その手間をかけるか、というと、1)異なる溶媒系を用いるので、親水性の強い(水に溶けやすい) ものと疎水性が強い(有機溶媒に溶けやすい)ものが混在していても分離が可能、 2)広い面積に展開することになるので、多くの種類の物質を同時に分離可能、という2つの理由があるからです。 アミノ酸や、様々な代謝産物(有機酸や糖)を分離する時は、1)それらの物質の親水性にばらつきが大きく、 物質の種類数も数十から場合によっては数百になる、という理由で、二次元展開をすることが必要になります。 ところが、光合成色素の場合は、クロロフィル、カロテノイド、フィコビリンのうちで、 フィコビリンはタンパク質に共有結合をしているので、そもそも薄層クロマトグラフィーでは分離することができません。 残りの中では、カロテノイドの仲間のキサントフィルが他のものに比べるとやや親水的なぐらいで、 基本的には疎水性の強い物質です。従って、展開溶媒を変えるメリットがさほどないことになります。 また、種類数も、クロロフィルが2−3種類、カロテノイドが数種類といった程度です。従って、分解能もさほど必要ではありません。 というわけで、通常は一次元の展開で十分なので、あまり二次元展開をしない、というのが回答になります。 生物によっては、変わったカロテノイドを持っているものもいますので、場合によっては、 二次元展開の必要性が出てくる場合もあるかも知れませんが、その場合には、そのカロテノイドの性質に合わせて、 自分で展開溶媒を工夫する必要があるかと思います。(2007.8.19)
Q:植物に含まれるでんぷんを調べていたら、花の部分には確認されず、 おしべとめしべの部分で確認できました。 光合成をしない部分ではでんぷんの反応はでないと思っていたので不思議です。回答お願いします。(2007.8.18)
A:デンプンは、食品としては片栗粉として用いられますが、普通の片栗粉は、 じゃがいものデンプンを使っています。じゃがいもは地面の中にあるわけですから、当然光合成はしません。 では、どうしてじゃがいもにデンプンがあるかといえば、葉っぱで光合成をして作った光合成産物を、 茎を通して芋の部分に送り(転流といいます)、そこでデンプンに変えて貯めているからです。 雄しべと雌しべの場合も同様で、葉で作られた光合成産物が輸送されて、その場でデンプンに変えられていると考えられます。 今回は花の部分には確認されなかったとのことですが、花弁にデンプンが貯まる場合もあるようです。(2007.8.18)
Q:酸素発生型の光合成において、葉緑体のチラコイド膜のPSIIのP680の周辺で、 アンテナ複合体が光子エネルギーを受け取り、共鳴励起移動でエネルギーが反応中心へと運ばれると思いますが、 そもそも、空間を移動してきた光子が、アンテナ色素の電子と相互作用するミクロな メカニズムが分かりませんので、お教え願います。量子論の観点から電子や光子の大きさ等を考慮し、 相互作用する瞬間の軌道の3次元解析結果等が有れば幸いです。また、お勧めの論文等をお教え頂ければと思います。 宜しく御願い致します。(2007.8.17)
A:ご質問の趣旨は、光合成やPSIIのP680とは特に関係ないと思うのですが・・・。可視光の吸収は、 クロロフィルやカロテノイドの共役二重結合上のパイ電子系で起こりますが、別に、光合成に特有の現象が起こっているわけではありません。 クロロフィルの光吸収のメカニズムは、例えば、ベンゼン環のパイ電子系が紫外線を吸収するメカニズムと何ら変わりはありません。 クロロフィルやカロテノイドの方が、ベンゼン環よりも長い共役二重結合を持っているために、基底電子状態と励起電子状態のエネルギー差が小さくなり、 結果としてより波長の長い可視光を吸収できるようになっているだけです。従って、光合成関連でそのような論文は、 あまり見つからないと思います。むしろ、基礎的な量子化学の教科書をご覧になってはいかがでしょうか。(2007.8.17)
Q:自由研究で、ピーマンとスイカの光合成について行い、石灰水と、ヨウ素液で、 実験をしたのですが、ピーマンのほうは、うまく結果が出たものの、スイカのほうは、うまくいきませんでした。 どうしたらよいですか?(2007.8.17)
A:実験をしたあとにまずやらなければならないことは、「考える」ことです。 「うまく結果が出た」「うまくいきません」とありますが、これは、実際には、「光合成を検出できた」、 「光合成を検出できなかった」ということですよね。結果が予想に反していた、ということと、実験が 失敗だった、ということは全く別のことです。もし、スイカの実は光合成をしないという立場に立てば、 スイカの方もうまくいったことになります。実験をする前には、結果について予想を立てると思いますが、 実験が終わったら、一度予想を忘れて、実験結果から何が言えるかを考えましょう。この場合、3つぐらい、 可能性が考えられると思います。1.スイカの実験は失敗した。2.スイカは光合成をしない。 3.スイカはピーマンに比べて光合成の活性が低いのでうまく見ることができなかった。 ピーマンでは光合成をしていたわけですから、実験自体はうまくいっていると考えた方がよいでしょう。 特にスイカで実験をした時だけに何かまずいことをしたのでなければ、1の可能性は低いかも知れません。 僕の研究室で実験をした場合には、スイカの光合成を検出できますが、だからといって、石灰水やヨウ素液で、 必ず光合成を検出できるとは限りません。ですから2や3の可能性は充分にあると思います。その場合、 それを確かめるためには、どうしたらよいでしょうか?それを考えて、できたらその「確かめる実験」 を実際にやってみるところこそが自由に実験をできる自由研究の面白いところです。(2007.8.17)
Q:オオカナダモを水の入ったコップにいれて、そこに二酸化炭素を吹き込んで 蛍光灯から10cmはなれたところに置き、5分間でオオカナダモの茎から 何個気泡がでるかをはかり、また20cm、30cm・・・と蛍光灯から、はなして 60cmまではかる実験をしてました。 それに発展で、セロハンで蛍光灯の光の部分を覆い、(黄/赤/青/緑/透明) それぞれ10cmはなしたところで気泡が5分間に何個でるかも しています。そこで質問なんですが、ここでみた、 よくある質問でほぼ同じ質問をみたんですが、赤と青が吸収される とかいてあったんですが、参考書には(透明−>)赤−>黄−>青−>緑とのっていました。 実際にやってみたところ、参考書通りの順番がでました。赤−>黄−>青−>緑の順番に どういう規則があるか、教えて下さい。あと、緑が4色のなかでダントツに 気泡のかずが少ないんです(青:17個、緑:5個)。 それは葉が緑色ということとは関係あるのでしょうか。詳しく、わかりやすく 教えていただけると嬉しいです。(2007.8.16)
A:まず、緑からですが、葉が緑色に見えるのは、クロロフィルは緑色の光を吸収する効率が悪く、 吸収されずに反射・散乱された光が人間の目に入るからです。いくら光を当てても、 吸収されなければそのエネルギーを光合成に使うことはできませんから、 緑色の光をあてた場合には、気泡の数が少なくなるのはわかりますよね。 さて、残りの色の光は、赤でも黄色でも青でも、みなある程度クロロフィルに吸収されます。 そうすると、今度は、色だけでなく、光の明るさも考えなくてはいけません。その場合、 赤い光、といっただけではどのぐらいの明るさなのかがわかりません。 ですから、「規則」からでは、赤、黄、青の順番を決めることは難しいのです。 おそらく、お読みになった参考書を書いた人は、きちんと自分で実験をしてみて、 その結果を書いたのであって、「規則」から導き出したのではないのではないかと予想します。 というわけで、規則から導き出せる結論は、透明−>(赤、黄、青)−>緑、というところまでだと思います。 セロハンではなく、アクリルの板などを使うと、赤、黄、青に関しては別の順番になる可能性があると思います。 (2007.8.16)
Q:二酸化炭素を溶かし込んだ水に水草を入れました。そして、光を当て、 水草から出る気泡の数を数えて、どのくらい光合成を行っているのか調べる実験をしました。 その後、使用する水をただの水道水ではなく、食塩水と砂糖水と酢にかえて実験してみました。 実験の結果は、食塩水も砂糖水も酢も、水道水より光合成を行う量は少なかったのですが、 その理由が分かりません。なぜ、食塩水と砂糖水と酢より、水道水の方が、 光合成がさかんなのか教えてください。申し訳ありませんが、はやめに教えて下さい。(2007.8.15)
A:これは、本来は「教える」ことではありません。というのは、僕自身、
水草を砂糖水やお酢に漬けて光合成をさせる実験をしたことはないので、本当の意味での「正解」
というのは知らないからです。ですから、できることは「考える」ことだけで、これなら、
僕でなくてもできますよね。ただ、それでは回答にならないので、「僕なら考えること」を書いておきます。
植物でも動物でも、生物は、その生きている環境で一番よく働けるようになっているはずです。
例えば、ホッキョクグマなら寒さに強いでしょうし、サボテンなら砂漠の水のない環境でも生きていけるでしょう。
しかし、もし、いつもの環境とは違う環境に放り込まれたら、うまくいかない点が出てくるでしょう。
おそらく、(よく知りませんが)ホッキョクグマは暑いところは苦手なのではないかと想像します。
今回の実験の場合、水草は、おそらく海に生えるものではなくて、淡水に生えるものですよね?
そのあたりを考えてみると、答えがわかると思います。(2007.8.16)
Q:大変忙しいところをすみません。学校の宿題で「ピーマンなどは光合成をするか」というテーマにしました。色々なページをみたのですがパルスとか難しい機器をつかっています。今僕が持っている気体検知器と顕微鏡ではこの実験は出来ますか?測定方法は「無理やり光合成-八百屋さんで購入したきゅうりを光合成」のページに載ってたやり方でやります。また、測定する野菜はどれくらい新鮮なものがいいのですか?スーパーのものでは新鮮ではないと思います。やはりもぎたてじゃなければ駄目なのでしょうか。色々と質問しましたが宜しくお願いします。(2007.8.14)
A:「無理やり光合成」はペットボトルを使う方法ですよね。おそらくピーマンでも可能だと思います。材料に関しては、もちろんもぎたてであれば、それに越したことはないと思いますが、普通にスーパーにう売っているものでも、充分光合成をすると思います。こちらの光合成実験でやった時の材料は、みな普通の八百屋さんで買った物を使いました。(2007.8.14)
Q:生きている野菜の実が光合成をしているかを調べたいのですが、きゅうりを炭酸水素カリウムの水溶液を入れた、ふたのない容器にいれ、気体の発生が確認できたらそのきゅうりは光合成をしているといえるのでしょうか。教えてください。(2007.8.12)
A:これは、どこまで厳密に証明する必要があるか、ということによって変わると思います。また、実験条件によっても異なります。基本的に気体の発生する現象というのはさほど多くないので、気体が発生すれば光合成をしている、としてしまう場合もありますが、例えば、水を温めれば、中に溶けていた空気が気体となりますから、少しは泡が見えたりします。これなどは、もともと水を煮沸しておいて空気を追い出しておけば、起こりませんから、実験の条件に依存することになります。また、出てきた気体が酸素かどうかを、火をつけたお線香などで調べれば、より確からしくなるでしょう。どこまで厳密に調べたいのかを決めて、それに応じて、では何を調べればよいのかを考える、というプロセスは、まさに研究の基本です。(2007.8.13)
Q:こんにちは。今年の夏休みの理科の宿題で、テーマは自由なのですが科学研究をして、レポートを提出しなければいけません。で、たまたま「ピーマンは光合成をするか」をみていいなぁと思ったのですが、家にパルス変調蛍光測定装置はありません…。学校でよく勉強する、ヨウ素液を使っても光合成をしたか、していないか、確認することはできますか?(2007.8.9)
A:ピーマンできちんとヨウ素反応が出るかどうかは、試したことがないのでわかりませんが、やってみる価値はあるように思います。実を全部やろうとすると難しいと思うので、表面の緑の濃い部分を薄くそいでやってみてはいかがでしょうか。ただ、もし、反応がきちんと出た場合、むしろ考えなくてはいけないのは、ヨウ素反応は、光合成をしたか、していないか、を見るものではなく、デンプンがあるかないかを見るものだ、という点です。つまり、葉っぱで光合成をして、その光合成産物を実に運んでデンプンとして貯めている場合には、実では光合成をしていなくともヨウ素の反応は出ることになります。そのような場合、どのような実験をしたら、実自体が光合成をしているかどうか、わかるでしょうね?そのあたりが、自由研究の腕の見せ所です。
あと、最後に一つ。もし、ピーマンの実ではヨウ素反応が出なかった場合、そこで、「失敗だ」と思ってあきらめないで下さい。実験というのは、予定どおり進むのがよいわけではありません。もし、ピーマンの実ではヨウ素反応が出ない場合、では、ピーマンでは葉っぱも含めてヨウ素反応が出ないのか、それとも実の場合だけなのか、また、他のスイカの皮などではどうだろう、といった新しい疑問が生じると思います。そのような疑問を解決するためにさらに実験を思いつくことができれば、それこそが理想的な自由研究のあり方です。(2007.8.9)
Q:学校の自由研究で光合成の実験をしたいんですが、どうやってすればいいか分かりません。教えて下さい。(2007.7.27)
A:これについては、下の質問と回答を見て頂けますか?もし、学校で何か既に光合成の実験をしているのでしたら、それについて、疑問に思ったことなどを発展させるのが一番よいと思います。科学の源泉は好奇心ですから。(2007.7.27)
Q:よろしくお願いします。まったくの初心者です。孫、小4(男)。よく、わからないまま、地球環境に関心があります。木を植えて酸素を。と、言う程度だと思いますが、夏休みの自由研究に 葉っぱの何かしたい。多分光合成のことと思い、春に芽を出した、どんぐりの木の葉っぱに アルミ箔、黒い紙等々で覆い太陽が大切という事を知る為の観察を、と考えていますが、後少し進んで考えて見るという、何かが私もよくわかりません。後一歩進んで考えるとよいことを教えてください。(2007.7.26)
A:自由研究というのがなかなか難しいのは、我が息子を見ていてもわかりますが、理想を言えば、何かの疑問から出発するのが一番です。たいていの研究というのは、自分の観察や他の人の研究から、「おかしいな」とか「なぜだろう」という疑問がわいて、その答えを見つけるために始めるものです。ですから、最初に何かを観察してそれを土台にするか、もしくは学校で習った地球環境なり、光合成なりについて考えてみて、何か腑に落ちない点があれば一番よいのですが。
例えば、太陽が大切である、という実験を考えます。おそらく、植物を真っ暗にしてしばらく置けば、その植物は枯れると思います。それを見て何を考えるかが勝負です。例えば、真っ暗なら枯れたが、薄暗がりにしたらどうだろう、と疑問に思ったとします。そうすれば、光の明るさを何段階か変えてみてその結果を見よう、という実験を思いつくかも知れません。さらには、光の色を変えるのはどうだろう、と疑問に思うかも知れません。そのように、疑問が出れば、それに対応する実験を考えるのは(ある程度の知識があれば)それほど大変なことではありません。できれば、お孫さんにそのような疑問を思いついてもらって、その疑問を解決する実験方法を考える部分を助けてあげるのがよいのではないかと思います。
さらに、もう一つ言えば、生物が関わる実験はばらつきが大きいのが普通です。そのため、実験は、何回か繰り返して行なうか、もしくは、一度にたくさんの生き物を使ってやることが望ましくなります。もし、ドングリの木を使おうと思った場合には、同じようなドングリの木がたくさんないと、実験の結果を解釈する時に難しくなるかも知れません。もし、明るいところの木一本と、暗いところの木一本で違いが出たとしても、それがたまたまそのどちらかの木がおかしかったのか、それとも明るさの違いを反映しているのかを区別できません。それに対して、5本ずつを比べて、全てで違いが出たら、それは明るさの違いを反映していると言えるでしょう。実験を計画する際には、そのような考え方も必要となります。(2007.7.27)
Q:赤い色の葉が光合成するのか不思議に思い、とりあえずコリウスなどの葉を使い、ヨウ素液でデンプンがあるか調べてみたら赤い色素の部分にはデンプンがなかったのです(コリウスを含め3枚の葉全て)。その後インターネットで調べたらこのHPを見つけ、赤色でも紅葉でなければ光合成していると言う事が分かりました。赤い色素があると、クロロフィルがあるにもかかわらずデンプンは出来ていないのですか?(2007.7.25)
A:ご質問の前半にある「赤い色素の部分には」というのは、「赤い色素があると、クロロフィルがあるにもかかわらず」という後半の部分から考えて、「赤い色素があってクロロフィルがない部分には」という意味だと考えてよいでしょうか?その場合、デンプンができない理由はわかりません。植物の種類によって、ホウレンソウのようにデンプンを貯めずに糖分の形で光合成の産物を貯めるものがありますので、その場合には光合成をしてもデンプンがたまりませんが、コリウスがそのような植物であるかどうかは知りません。そのような植物の場合には、緑色の部分でもデンプンを貯めないはずです。一方、このHPで使ったコリウスなどは、赤い色素を持った部分でもちゃんとクロロフィルを持っています。ですから、光合成もしますし、光合成の産物も作られます。基本的には、赤い色素は光合成の色素ではありませんから、赤い色素があってもなくても光合成をするかどうかとは関係がありません。クロロフィルがあるかどうかが大事なのです。さらに、ヨウ素デンプン反応の場合、充分に光合成をさせないとデンプンをちゃんと検出することができません。緑色の部分ではちゃんとデンプンの反応は見えていたのでしょうか。そのあたりの情報を教えて頂けると、もう少し具体的にお答えできるかも知れません。(2007.7.26)
Q:小学校の教員をしております。午前中,6年の理科の授業でアルミ箔で日光を遮っておいた葉と何もしない葉のヨウ素デンプン反応を調べる実験をしたところ,教科書と逆の結果になってしまったということでした。見せてもらったところ,日光を遮っていた方の葉が,教科書の「日光を当てていた葉」の写真と同じくらい染まっており,何もしていない方の葉はほんの少ししか染まっていませんでした。どの班でも同じ結果が出たそうです。同日,同じ実験をして確かめたところ,日光を遮っていた方の葉からデンプン反応が見られました。確かめたのが午後だったため何もしていない方の葉からもはっきりとデンプン反応が見られました。実験に使用した葉はプランターでそだてているインゲン豆で,念のため前々日の夕方からアルミホイルで覆っていたということです。葉はアルミホイルできちんと覆われていました。ちなみに,前々日は晴天,実験当日は曇りで肌寒いくらいでした。一昼夜以上光を遮っていても葉にデンプンがたくさん残ってしまったのはなぜなのでしょうか。(2007.7.18)
A:この場合、午後には何もしていない葉でデンプンの反応が見られたわけですから、光合成は正常に起こっている、ということですよね。午前中の実験で、ほんの少ししか染まっていなかったのは、光のあたる時間が少なかったからだ、と解釈できます。デンプンの蓄積量は、当然、デンプンの合成量と、消費量の差によって決まります。光合成が正常とすれば、問題はデンプンの消費にあることになります。つまり、デンプンの分解か、もしくは葉の外へのデンプンの輸送(転流といいます)が夜の間になぜ起こらなかったのか、ということになるかと思います。「一昼夜以上光を遮っていても」とあることからすると、アルミ箔で覆ったのはその日の朝ではなく、前の日ということですね。具体的な理由となると難しいのですが、アルミ箔で覆う操作によって、デンプンの分解もしくは転流が阻害された、と考えるのが妥当だと思います。一例ですが、弱い光を当てた葉のデンプンの蓄積量を温度を変化させて観察すると、室温から温度が下がって行くにつれて(光合成速度が遅くなるため)デンプンの蓄積量は減少しますが、摂氏0度近くになると再び蓄積量が大きくなります。これは、0度近くになるとデンプンの分解・転流が抑えられるせいだと考えられます。このようにデンプンの分解・転流の速度も環境の影響を受けますので、例えば、アルミ箔で覆う際に葉柄を痛めてしまった、などと言うことがあれば、アルミ箔で覆った葉で、デンプンの蓄積が増えることもあり得るかと思います。(2007.7.19)
Q:初めまして一般人です。植物の光合成について今までは間違った考えを持っていました。”二酸化炭素から有機物合成に必要な炭素を取り出すと酸素が余って出てくる”と思っていました。とんでもない間違いで、”水を分解して水素イオンを取り出して有機物を合成している”が正しいと本HPで教わりました。そこで3つ質問です、
1.水素を出す(生物)光合成の例は無いのですか?
2.通常の光合成で発生している水素イオンから水素分子を取り出す研究は何処まで進んでいますか?
3.光合成の原理を、半導体集積回路に組み込んで、水素や電気を取り出す取り組み例は有りますか?
企業秘密ないし国家秘密も絡む様でしたら、回答を濁して下さい。宜しくお願いします。(2007.7.11)
A:おそらくここで言う水素というのは、燃料などに使う水素ガス(水素分子)のことでしょうね。実は、水素イオンと水素分子というのは全く違うものなのです。水というのは分子式でH20ですが、これは自然とH+とOH-にある一定の割合で別れます。そして、このH+が水素イオンです。ですから、水素イオン自体は、水さえあれば、その中にある濃度で含まれているものです。そして、その濃度を対数で示したものが化学で習うpHです。
一方で、水素分子はH2であって、これは水素イオンとは直接関係がありません。水素イオンから水素を作るのも、自ら水素を作るのも、そうたいして差はないのです。ですから、水素イオンがあると水素分子を作りやすい、ということ自体ありません。
さらにもう一つ注意しなくてはならないのは、光合成の反応では確かに水が分解されて水素イオンができますが、その水素イオンは光合成の酸化還元反応に使われるわけではないのです。水が分解されて水素イオンと酸素ができる時に、同時に還元する力が生まれます。この他の物質を還元する力を利用して、光合成のその後の反応が進むのです。というわけで、お答えは、
1.光合成の反応として水素を出す生物はいません。ただ、光合成の反応によって得られた還元力や化学エネルギーなどを用いて水素を作っている生物はいます。
2.上に述べましたように、水素イオンから水素を作るのはあまり意味がないので、研究もされていません。
3.光合成の原理によって電気を取り出す、人工光合成の実験はいろいろ行なわれています。ただ、残念ながら、実用レベルに達した研究はまだないと思います。(2007.7.11)
Q:みかんの生産者です。果実の糖度を上げる為、減肥と水分ストレスを与えています。そうすると葉の色が薄くなり糖が上がるものというふうに教えられました。しかし翌春になっても葉色が濃くならずに樹勢が弱っていきます。肥料を与える時期が寒くなってからなので根からの吸収が行われない為、尿素の葉面散布を春までに数回行っています。それで質問なのですが、みかんの収穫が終わる12月ぐらいから翌春にかけて葉色を濃くする方法と、糖度を上げるために水分ストレスをかけても落葉せずに、なおかつ果実の着色を早める方法がありましたら教えてほしいのですが、よろしくお願いします。(2007.7.3)
A:ここでのお答えは、あくまで光合成から見た解釈になることをはじめにお断りしておきます。ミカンの専門家ではないので・・・。
樹木の葉の場合は、新しく出た葉を除いてクロロフィルの合成などはあまり活発に起こりません。ですから、一度色の薄くなった葉が、またどんどん濃くなることは期待しづらいと思います。特に冬場は、気温が低いので、細胞の中のいろいろな反応も起こりづらくなっています。肥料の根からの吸収が冬場には遅い、というのは、根が低温によって不活発になっている、という面もありますが、そもそも、吸収しても使い道があまりない、という側面もあるのです。ですから、葉面散布によって施肥をしても、成長期でない場合は必ずしも期待通りの効果が得られるとは限りません。というわけで、樹木の活動が抑えられている「12月ぐらいから翌春にかけて」何かをすること自体が極めて難しいと思います。うかがう限りでは、ストレスのかけ方が、少なくとも植物の光合成にとっては少し強すぎるように思います。ミカンの糖度・着色などの問題は僕ではわかりませんが、今用いている水分ストレスの与え方などが最適かどうかの検討も必要なのではないかと思います。(2007.7.4)
Q:葉緑体呼吸とサイクリック電子伝達系路のNDHの関わりが複雑でいまひとつ理解できません。どのように関与しているのか教えてください。(2007.7.3)
A:「関わり」といっても、サイクリック電子伝達の経路そのものにNDHがのっていますよね。その上で、「どのように」と言われても、それこそどのように説明したらよいのか、よくわかりませんが・・・。NDH自体が電子伝達をしているわけですから、「関わり」というよりは、NDHがサイクリック電子伝達の一部であると思います。「関わり」以前に、サイクリック電子伝達の道筋自体は理解できているのでしょうか。そのあたりからわからないのであれば、何か簡単な光合成の教科書で、道筋を確認してみるのがよいと思います。(2007.7.4)
Q:窒素を科学的に固定する方法は現在利用されていますが、炭素を科学的に固定する方法が余り利用されていないのは何故なんですか?お金がかかるからですか?(2007.7.2)
A:これは光合成の質問ではなく、経済学の質問のようですが・・・。「利用」を考える上では、「何に」利用するのかを考えることが一番大切です。窒素の化学的固定の場合は、窒素肥料を作ることが一番の目的です。以前は、動物の排泄物などを使っていたのが、安価な合成品に置き換えられたわけです。一方で、二酸化炭素を固定して有機物を作る場合、何に利用することを想定しての質問でしょうか?
現在行なわれている生物学的な二酸化炭素の固定の中で一番大きな利用方法は食料だと思います。その場合、自然の食品の代わりに人工合成有機物を人に食べさせるという利用法が広がるとは思えませんし、動物の飼料としてもあまり歓迎されないように思います。過去に生物によって固定された炭素に関しては、石油・石炭といった燃料が利用法となります。しかし、これに関しては、二酸化炭素を固定するのにエネルギーを使ってしまったら、できた有機物をエネルギー源として使っても割が合いません。
どのような利用法を考えての質問なのかがわかれば、もう少しきちんと答えることができるかも知れません。(2007.7.3)
Q:光合成においては、「水が二酸化炭素の還元剤となっている」といわれていることがある。なぜなんでしょう。回答をよろしくお願いします。(2007.7.1)
A:「質問のコツ」は読みましたか?大学の課題か何かだと思いますが、まず自分で考えてみる習慣をつけて下さい。よく考えれば、高校のレベルの知識で答えがわかると思います。(2007.7.1)
Q:屋上緑化のプレゼンをすることになりました。芝生のCO2削減効果、吸収量というのは1平米当たりとかであらわせるものですか?光合成によりどのくらい吸収されるものですか?二酸化炭素の固定化と光合成のによる吸収?消費?とは意味が違うのですか?(2007.6.29)
A:植物の光合成速度については、過去の質問(よくある質問のページ)を見て頂くとわかるかと思います。光合成の話をしている時には、二酸化炭素の固定速度と光合成による二酸化炭素の吸収というのは、同じものをさします。ただ、植物も呼吸をしていますから、正確には、光合成の速度から呼吸の速度を引いたものが固定の速度となります。(2007.6.30)
Q:無着色、無漂白水煮山菜の開発に努めているものです。葉緑素は熱や酸によりフィオフィチンとなり変色するということで、可能な限り変色を制御できる方法を検討しています。山菜加工時にボイル発色させて塩漬保管を行い、大腸菌群が殺菌できる最低温度で殺菌。ほぼ無添加状態なので微生物制御の為、冷蔵保管を行いましたが2週間ほどで退色してしまいました。目標として30日間、葉緑素を保ち、更に食品添加物は出来るだけ使用を控えたいと考えております。葉緑素変色制御方法等で他に何かいい方法があるのでしょうか?宜しくお願いいたします。(2007.6.25)
A:水分がある状態で、色素を保つのはなかなか難しいと思います。特に添加物を加えないでできるのは、pHの調整ぐらいでしょうか。クロロフィルのフェオフィチンへの変換は酸性条件で促進されますから、もし溶液が酸性側でしたら、アルカリ化することによって多少は変色を抑えることができるかも知れません。前にも同様の質問がありましたが、僕の専門はあくまで光合成で、食品管理については、専門ではありませんのでこの程度の答えしか思いつきません。(2007.6.26)
Q:植物の実の光合成量の測定にはどのような実験装置が有効でしょうか。また二酸化炭素緩衝液を使った実験というのを聞きましたが実際に、どのような方法で行うのでしょうか。お願いします。(2007.6.23)
A:特殊な測定装置を使わずに植物の実の光合成を測定しようと思った場合に、一番簡単なのはペットボトルでの酸素発生の実験でしょう。「測定装置」というご質問からすると、もう少し洗練された方法をお求めかと思いますが、案外、簡単な系の方がうまくいく場合もあります。二酸化炭素緩衝液を使った実験というのは、おそらく、気密の容器に二酸化炭素緩衝液(を含ませた濾紙など)を入れておくことによって、容器内の二酸化炭素濃度を一定にする方法のことだと思います。よく、中学や高校の実験でプロダクトメーターとか光合成測定装置とか言われている実験装置で使います。要は、二酸化炭素濃度を一定にすることによって、酸素の発生を体積の変化として検出しようと言うものです。呼吸速度の測定であれば、出てきた二酸化炭素を全てアルカリの溶液などに吸収させてしまえばよいのですが、光合成の場合は、二酸化炭素がないと困るので、緩衝液によって一定濃度になるように工夫をするわけです。(2007.6.24)
Q:現在、大学で栽培実験を行っている者です。今CO2施肥について調べておりまして、CO2を高めると光合成が一時的に高まり、生育および収量が高まるということはご存知かと思います。しかし、時間経過に伴いCO2順化が起こり、光合成速度などが元に戻ってしまうという現象が起きるのですが…これは光合成のRubiscoに影響が及ぶのでしょうか。また、こういう現象が起きるのは植物によって異なるのでしょうか。光合成の専門家ということで少し聞きたいと思いました。お時間があればよろしくお願いします。(2007.6.23)
A:CO2順化のRubiscoに対する影響については、1990年代から論文が出ています。基本的には、Rubisco量は減少する、Rubiscoの活性化状態は同じか、もしくはやや減少する。という結果が多いように思います。論文によっては、CO2順化による光合成の低下を全面的にRubisco量の減少のせいにしているものもあります。ただ、実際には、植物種によっても違うでしょうし、他のストレスがどの程度かかった状態での栽培なのかという条件によって、結果は大きく違うはずだと思います。(2007.6.24)
Q:実習のレポートの課題ででたのですが、薄層クロマトグラフィーにおいて色のない物質の検出法がわからないのですが、教えていただけませんか?(2007.6.20)
A:「質問のコツ」は読みましたか?これも、何か前提があるのではないかと思うのですが。基本的に、ある物質を検出したい場合は、その物質の性質を使います。色がついていれば、目で見ればよい、というのもその一種です。実習の中で何かの説明があったのではありませんか?使っている物質が何かによって答えは変わります。(2007.6.21)
Q:たびたび申し訳ありません。光阻害についての質問です。植物が過剰な光照射(相対的な)によって障害を受けるということが言われ、実際に障害が受ける所は、葉緑体の光化学系IIの反応中心のD1タンパクであるという仮説がありますが、、、なぜそういうことがわかったんですか?なぜD1タンパクが原因であると決定できたのですか?その証拠を特定できた実験手法などがあれば教えて頂きたいです。(2007.6.19)
A:ご質問の意味が「どのようにD1タンパク質の分解を検知したか?」ということであれば、光阻害処理ののちに、チラコイド膜のタンパク質を電気泳動して、WesternなどでD1タンパク質の分解産物を検出した、というのが答えです。(2007.6.20)
Q:光合成に興味があります。植物は光合成で1日当たりどのくらいの量の二酸化炭素を吸収して酸素を排出しているのでしょうか。また植物の種類によって光合成の効率(二酸化炭素の吸収量と酸素の排出量の差?)に違いがあるのでしょうか。できれば植物の順位などがあれば嬉しいです。よろしくお願いします。(2007.6.19)
A:光合成速度については、FAQをご覧下さい。効率(二酸化炭素の吸収量と酸素の排出量の差?)というのは何を聞きたいのかがよくわかりませんでした。基本的に二酸化炭素の吸収と酸素の発生は分子数にして1対1になります。(2007.6.19)
Q:光合成の光阻害について質問があります。よく「二酸化炭素固定能が低下したときに、植物に「強い光」を照射すると葉緑体の中が過還元状態となり、活性酸素などの有害物質が生まれ・・・」といったことが言われていますが、そこで出てくる「強い光」というのは、一体どの程度強い光なのでしょうか?強いって何がどう強いんでしょうか?実際の実験でこの条件を作り出したいと思ったときは、どうすればよいのでしょうか?実験値的に言うと、具体的にいかほどの光のことを言っているのでしょうか?本当に基礎中の基礎の質問で申し訳ありません。(2007.6.15)
A:確かに、教科書などを読んでも、具体的な数値はあまり出てきませんね。これには、理由が二つあります。一つは、「強い」というのは、通常生育光と比べて強いか弱いかが問題になる、という点です。夏に野外で育てている植物に
2000 μmol/m2/s の光を当ててもびくともしませんが、同じ光を実験室で
20 μmol/m2/s の光で育てている植物にあてたら、すぐに枯れてしまいます。つまり、光の強さというのはあくまで相対的なものである、ということです。
もう一つは、「二酸化炭素固定能が低下したときに」という点です。通常、生育光の強さの光は、もちろん光阻害を引き起こしませんが、他のストレス、例えば、温度ストレスや乾燥ストレスなどがあると生育光の強さの光でも光阻害を引き起こします。つまり、光以外のストレスが、どの程度かかっているかによっても、光阻害を引き起こす光の強さは変わってくるのです。
ですから、一概にどのぐらいの強さか、という質問には答えることができません。一つだけ例を挙げると、僕が前に研究材料としていたキュウリは、200
μmol/m2/s の光で30℃で育てた植物を4℃においた場合は、約100
μmol/m2/s の光で大きな阻害を受けました。この光の強さは、真夏の南中時の直射日光の1/20程度です。(2007.6.15)
Q:光合成において吸収された二酸化炭素がすべて同化されずに一部は排出されてしまうのはなぜか?という課題が出されわかりませんでした。よろしくお願いします。(2007.6.15)
A:「質問のコツ」を見て頂けましたか?これも、おそらく何か説明があった上での課題ではないかと思うのですが・・・。二酸化炭素が「光合成において吸収され」ることを同化といってよいと思うので、そのままだと、「同化された二酸化炭素が全て同化されずに」という文章になってしまいます。PGAにはなるけれどショ糖の合成までは行かない、とか、一度ショ糖やデンプンになっても再び二酸化炭素になってしまう、などといったことを指しているのだと思うのですが、それは、前提がわからないと何とも言えません。光呼吸のことを言っている可能性が一番高いかな、とは思いますが。いずれにせよ、このコーナーは課題の代作箱ではないので。(2007.6.15)
Q:子供にわかりやすく説明したいと思っています。光合成と光の速さのグラフを見ていて思ったのですが、グラフ上の補償点は、日常の生活で言うと大体何時くらいにあたるのでしょうか。(2007.6.14)
A:まず、生き物というのは、工場で大量生産される商品とは違いますので、その性質は種類によって違いますし、また、同じ種類でも、周りの環境によって大きく変化します。ですから、補償点といっても、植物の種類が異なれば全く違ってしまう、ということをご理解下さい。 その上で、比較的明るいところに生えている日照を好む植物で考えてみると、おそらく光補償点は、照明をつけた普通の部屋の明るさぐらいかと思います。とすると、夕方暗くなってきて、そろそろ部屋に電気をつけようか、というぐらいの時の明るさが光補償点である、という言い方ができるかと思います。(2007.6.14)
Q:こんにちは。初めて質問させていただきます。学校の実験で、紅色非硫黄細菌による水素発生実験を行ったのですが、その細菌が、水素を発生する機構がよくわかりません。実験は、菌を洗浄し、窒素を洗い流した後にニトロゲナーゼ活性条件下で水素発生の経過を観察しました。 とある参考書には『ニトロゲナーゼ・還元型フェレドキシン・ATPが存在し、N2が存在しない条件下で、水素発生が起こる』と書いてありましたが、式がのっておらず、また、還元型フェレドキシンについても理解していないので、自分の頭で納得することができませんでした。 さらに別の参考書には N2 + 8e-+ 8H+(水素イオン) + 16ATP → 2NH3 + 12ADP + 12Pi という式が乗っていて、これではN2が存在しているのでは…と、頭がこんがらがってきてしまいました。実験では窒素を洗い流しているので、この式とは別の反応になるのだと思いますが、では紅色非硫黄細菌はどのようにして水素を発生させているのでしょうか?長くなりましたが、ぜひ回答よろしくお願いします。(2007.6.14)
A:まず、「別の参考書」に載っているという式ですが、おそらく N2 + 8e-+ 8H+(水素イオン) + 16ATP → 2NH3 + H2 + 16ADP + 16Pi の間違いではないでしょうか。水素とATPの数が合いませんよね。これは、ニトロゲナーゼによる窒素固定の際に水素が発生する場合の式です。e-というのは電子ですから、還元力を示します。還元型のフェレドキシンというのは、この還元力を供給するためのものです。還元型のフェレドキシンがe-を供給して、自分は酸化型になるということです。ニトロゲナーゼの窒素固定は必ず水素発生を伴う、と習いますが、「とある参考書」が正しいとすると、逆に水素発生は、窒素固定を伴わなくてもよいのでしょうかね。僕は、このあたりは専門ではないのでよく知りません。「窒素を洗い流して」とありますが、N2は気体ですよね。窒素を洗い流す、というのがどのような操作なのかイメージできませんでした。 あと、光合成細菌では、ヒドロゲナーゼによって水素を発生する例もあるはずです。その場合の式は、 2H+ + 2e- → H2 となります。この場合も、還元力は還元型のフェレドキシンから供給されます。ただし、この反応は可逆的で、ニトロゲナーゼ反応によって発生した水素が、この反応の逆反応で水素イオンに戻される場合には、むしろ水素吸収に働くことになります。(2007.6.14)
Q:私は81才になるバラ作りで、老後の楽しみに多数バラを栽培していますので光合成には関心があります。それにしてもこれだけ地球温暖化を各国が憂えているのに、なぜ人工的に葉緑素をつくることに無関心なのかが疑問です。たしか松下電器産業は米アリゾナ州立大と共同で、化学的に合成した人工葉緑素を使う発電技術を開発したと2003年に発表したと読んだことがあります。私が生きてきた年月だけでこれだけ科学が進歩したのだから、いつの日か人類は合成葉緑素を使ってデンプンを作るようになると思いたいのですが。(2007.6.12)
A:人工光合成自体は、技術的にはそれほど不可能なことではないと思います。ただ、問題なのは、現在植物が行なっている光合成よりも効率がよいなど、何らかのメリットがなければ、人工光合成をする代わりに、単に植物を植えればよいことになってしまいます。自然界が何億年もかけて完成してきた植物の光合成よりも効率の良い人工光合成ができるか、ということになると、なかなか難しいと思います。
一方で、現在植物がほとんど育っていない砂漠地帯に人工光合成の装置をおけば、それは、プラスになるでしょう。ただ、その場合の問題点は、光のエネルギーというのは「薄い」エネルギーで、使うためには広大な面積を必要とする点です。植物ならば、広い面積に種をまくことはそれほど難しくありませんが、人工光合成の機械ができたとしても、それを何ヘクタールもの面積に敷き詰めるのは、それなりのコストがかかりますし、その機械を作るにもエネルギーが必要になるでしょう。とすると、少なくとも短期的には、人工光合成に頼るよりは、何らかの方法で砂漠の緑化を考えた方が、まだしも実現可能性があるように思います。(2007.6.13)
Q:光合成によって葉に生じたデンプンは加水分解されてショ糖となり、植物体内を流れて幹や枝で養分(デンプン)として貯えられると理解していますが、ある枝Aから出ている葉を全部むしった場合、他の枝Bについている葉に貯えられたデンプンは枝Aの養分としても貯えられるものですか。また若い枝と古い枝とでは、貯えられる養分の量に違いがあるものでしょうか。(2007.6.11)
A:養分が枝の間をやりとりされているかどうかに関しては研究例があり、多くの植物では枝には自律性がある、つまり、1つの枝はいわば別の枝とは自主独立路線を取っており、他の枝とは養分のやりとりをしない、とされています。ただ、植物本体(根・幹)との間では、栄養のやりとりがあるので、冬場に葉を落とす樹木などでは、1年以上の期間で考えれば、ある程度他の枝の影響を受けます。また、ある枝に蓄えられる養分の量に関しては、その枝の稼ぎ(光合成量)に大きく影響されることが知られています。つまり、稼ぎのよい枝はどんどん太くなりますし、日当たりが悪かった、もしくは葉がむしられた、などの理由で稼ぎが悪かった枝は、太らないことになります。これは、よい条件の枝に投資をして全体としての光合成量を上げようという戦略と考えれば理解することができます。(2007.6.12)
Q:光合成についても、すごく奥深いことが分かりました。驚きました。既に質問されている内容かも知れませんが、よろしくお願いします。今、森林があれ放題になっており、近くの里山でもヒノキなどが密集し、枝が枯れているもの、樹木自体枯れているものが見受けられます。このままでは、全部枯れてしまいそうな勢いです。樹木が生長していく過程において、枝にある葉で光合成を行うことは当然ですが、極端に日影になったり、密集したりすると下枝から枯れていく状況を見かけます。光が不足し光合成ができなく(行われなく)なったためだと思いますが、通常、どれくらいの期間(日数)、光合成が行われないと枝は枯れるのでしょうか?樹種や光の量などいろんな条件によって違うと思いますが、よろしくお願いします。(2007.6.11)
A:樹木などの場合は、暗くなってもその年の間は何とか持ちこたえて、翌年新芽が出る時に、芽の出る数が大幅に減ることによって暗くなった部分の枝が枯れていく、という場合が多いように思います。樹木の場合は、年に1回春に新芽を延ばすというタイプのものがありますが、そのような場合は、暗くなったからといって、その分を年の途中に別の枝に振り向ける、ということができません。一方、草本の場合は、常に新しい葉を出し続けていくタイプが多いので、暗くなると2−3週間で葉を枯らすことがあります。ただし、特別に葉を枯らすシステムがあるわけではなく、通常の老化の進行が早まるという感じのように思います。
光に対する反応は、植物の種類によっても違いますし、また、同じ暗くなるといっても、植物体全体が暗くなる場合と、その枝もしくは葉だけが暗くなる場合では、反応が異なるようです。例えば、草本などでは、ある1枚の葉だけを暗くすると、その葉の寿命は短くなりますが、植物体全体を暗くした場合は、むしろ葉の寿命が長くなる場合があります。これは、1枚の葉だけが暗い場合は、他の明るいところにその葉の資源を回した方が得になりますが、全体が暗い場合には、資源を回す先がないので、なるべくじっと我慢して、状況が良くなるのを待つ、と考えると合理的に説明ができます。
最後に、多くの草本では、葉を3日ほど完全な暗黒状態におくと、急速に老化が進んで葉が枯れることが知られています。自然界では、暗いといっても完全に暗黒になるわけではないので、かなり人工的な環境ですが、この場合には、極めて速く変化が進行します。(2007.6.11)
Q:糖質の高い大豆を作るのに適した場所につき興味があります。高い糖質は活発な光合成に負うところが大きいと思います。一般的に同じ品種の大豆を地理、気候条件の異なる場所で栽培した場合、光合成のスピードにどのような違いが出るのでしょうか。例えば、中緯度の関東地方と高緯度の北海道ではどのような違いになるのか。また同じ北海道でも、内陸性気候の特徴が強く、成熟期(7−8月)の寒暖の差の大きいところと、そうでないところでは、光合成にどのような違いが出ると考えられるのでしょうか。(2007.6.8)
A:光合成の速度自体は、光の明るさと温度によってかなりの部分が説明できます。従って、光が弱く、温度の低い高緯度では光合成速度は一般に低くなります。また、当然ですが、夜の間は、光合成をしませんので、夜間の気温自体は、光合成に影響を与えません。
しかし、光合成産物の蓄積と言うことになると、光合成の速度だけでは説明のできない部分が出てきます。例えば、夜間の気温が低いと呼吸が抑えられますから、光合成産物の消費は抑制されますし、同じように光合成産物の夜間の転流も抑制されます。しかもこのような転流などがどのように行なわれるかは、植物の種類によってかなり異なります。というわけで、ダイズにおける糖質の蓄積が光合成に負うところが大きい、というのは間違いないのですが、実際に栽培条件による糖質の違いを議論しようと思った場合には、光合成だけでなく、その他の代謝転流などを考慮する必要があるのです。僕自身の専門は光合成なので、その他の要因については、夜間の気温が低い方が呼吸が抑えられる、といった一般論を少しご紹介できる程度で、残念ながら、ダイズという特定の植物で実際に栽培条件の違いがどのような影響を与えるかについては、よくわかりません。(2007.6.8)
Q:私は今、光合成色素の単離と吸収スペクトルの実験を行っています。単離の状態の色素とタンパク質に結合した状態の色素の吸収の違いを教えてください。(2007.6.5)
A:「吸収の違いを教えて」ということですが、具体的に何が知りたいのでしょうか。スペクトルということですと、一般にタンパク質に結合することにより、吸収の極大が長波長にシフトします。もし、この答えが、知りたいことと違っているようでしたら、「質問のコツ」をご覧になって、再度具体的に質問をお寄せ頂ければと思います。(2007.6.6)
Q:私は今、NY日本人学校の中学一年生なのですが「植物の葉と光合成」について学んだときに赤じそなどの植物はどのようにして光合成をしているのか疑問に思い、このホームページにたどり着きました。「緑色以外の葉でも光合成はできるのか」という実験をみたのですが、簡単にまとめると、「葉にクロロフィルはあるが、そのほかにも赤い色素がある。クロロフィルがあるので光合成はできている。また、赤い色素は光合成には関係ない。」ということでいいですか?(2007.6.3)
A:はい。その通りです。完璧なまとめ方だと思います。(2007.6.3)
Q:クロロフィルとカロチノイドの単離の仕組みを教えて下さい。(2007.5.30)
A:「質問のコツ」は読みましたか?「クロロフィルとカロチノイドの単離」というのが、具体的に何かがわからないと、その仕組みを答えようがありません。(2007.5.30)
Q:葉ネギの葉やけについて質問させて下さい。水耕栽培ネギにおいて強日照下で葉の上部5から6cmくらい葉緑が2,3日のうちに完全に抜けてしまう現象が5月から6月にここ数年発生します。 この時期の温度変化が急激なことが原因かとも思いますが、このメカニズムをお教え下さい。 遮光などの資材も使い温度、光量も調節しているのですが。 適切ではないようなもので。(2007.5.29)
A:いつもながらの言い訳なのですが、僕自身は、さほど植物栽培の経験が豊富というわけではないので、お答えは、あくまで光合成の見地から見た回答ということになることをお断りしておきます。
植物は、強光、低温、乾燥などによってストレスを受けますが、通常、光以外のストレスを与えても、暗所ではさほど障害を受けず、光との複合ストレスによって光合成機能が失われる光阻害による例がほとんどです。この場合、光以外のストレス要因によって光合成の速度が低下している場合に、光合成で処理しきれない強さの光が入射することが活性酸素の生成などを通して光阻害が起こることになります。そのような場合、危なそうな時は光量を落とすことが一番の対策かと思います。あと、葉先だけが障害を受ける場合、活発な蒸散に水の吸い上げが追いつかずストレスになることが原因である場合もあります。これは、植物体内での水の輸送の問題なので、水耕栽培でも起こりえます。温度は高いのに湿度が低い時に起こりがちです。もし湿度をコントロールできるのでしたら、湿度を上げてみるのも効果的かも知れません。(2007.5.29)
Q:早速の回答大変ありがとうございます。光と他のストレス要因の複合ということでしたが、今回葉緑が失われたことには光は絶対要件として考えてもよいのでしょうか。また今回の現象の複合要件は乾燥が考えられるということでしたがハウス内の状況を考えると先生の言われると考えます。また、光と高温のストレスによっても今回のような現象が起こるのでしょうか。また、葉緑の抜けた様子によって複合要件が低温、乾燥いずれだったのか特徴は出るものなのでしょうか?専門外の部分の質問をして申し訳ありませんがよろしくお願いします。(2007.5.29)
A:障害にとって光が絶対条件かどうかは、試してみなければわかりませんが、2,3日のうちに進行する速い障害のようですので、光が関与している可能性はかなり高いと思います。温度と光の複合ストレスの場合も、葉の退色が起こる場合はあります。ただ、これは単にいくつかの観察例からの推測ですが、温度ストレスの場合は、葉が退色する場合でも、比較的均一に起こる例が多いように思います。葉先など一部に退色が見られるのは、何となく湿度の問題を思わせます。(2007.5.30)
Q:はじめてご質問させていただきます。ホウレンソウやスイカの皮で光合成実験をするページを拝見しました。植物の種類によって光合成能力は違うと思いますが、光合成能力の高い植物はどのようなものでしょうか。たとえば、ホウレンソウよりも草花や、木の葉の方が光合成をしているのか、また、草花の中でもどのような草花(タンポポなど)が光合成能力が高いのか等を知りたいです。現状お分かりになる範囲でお教えください。よろしくお願いいたします。(2007.5.28)
A:光合成の能力というのは、環境条件によって大きく左右されますから、一概には言えないのですが、一般論としては、光と水、温度が十分の条件で一番光合成を盛んにするのは、トウモロコシ、ヒエ、オヒシバ、ジョンソングラスといったC4植物というグループの草本です。C3植物でもイネ、ヒマワリなどはかなり高い光合成を示しますが、一般的にはC4植物よりは低めです。アサガオ、ホウセンカなどは低い方ですね。樹木は、草本に比べるとさらに光合成能力は低くなります。(2007.5.28)
Q:少し疑問に思ったことがあるので質問させてください。光合成に興味を持っているのですが、色々調べた結果、光化学系IIの反応機構はまだ解明されていないと知りました。今の技術を持っても解明されていない原因は何だと思われますか?またいつごろ解明されると思われますか?(2007.5.20)
A:光化学系IIは確かに未解明な部分が多いのですが、これは、水を分解して酸素を発生する、という他にはどこにも見られない反応を行なう点に原因があります。科学の研究というのは一人で行なうものではなく、過去の知識の集積の上に立って進めるものです。その際に、違う研究分野で、自分の興味を持っているものと同じような現象があれば、それを参考にして研究を進めることができます。しかし、水を分解する反応というのは、極めて起こりづらい反応で、光化学系II以外では参考になる現象がありません。
では、いつ頃解明されるか、という点になると、これは、何をもって「解明された」と判断するか、という問題に帰着します。実は、例えば、光化学系Iであっても、反応中心複合体を構成する多くのサブユニットのうち、機能がきちんとわかったものは半数程度です。残りは、存在はしていますが、何をしているのかわかりません。また、定常状態における機能がわかったとしても、反応中心複合体がどのようなシグナルを引き金にどのように合成されていくのか、という点に関しては未解明なままです。実際に、現在も光化学系Iの研究を進めている研究者も大勢いるのです。
ある疑問を持って研究を進めれば、その解答をいずれは見いだすことができるでしょうけれども、たいていの場合、その解答には新たな疑問が伴います。その意味では、何かが、あらゆる意味で完全に解明される、ということはあり得ません。ただ、例えば、光化学系IIのうち、水の分解に直接関与する部分の3次元立体構造が、2オングストロームの分解能で明らかになるのはいつか、という具体的な質問であれば、3−4年以内かな、といった推測をすることは可能です。(2007.5.21)
Q:この前の質問の続きをさせてください。光化学系IIの反応が解明されない理由が水の分解にあるとお答えいただきましたが、これまでに電気化学的には水の分解はありますよね。電気を使わずに水の分解をすることは不可能なのでしょうか?(2007.5.23)
A:少し誤解を招く表現だったかも知れませんが、「他にはどこにも見られない反応」というのは「他にはどこにも見られない生物反応」という意味で使っていました。化学反応であれば、電気分解の他にも、例えば、特に酸化チタンなどの触媒の存在下において、紫外線により水が分解する例は知られています。ただ、物理化学的反応は、条件が生物にとっては過激である場合が多く、メカニズム自体も、生物においては実現し得ないようなものであることが多いのです。従って、生物の反応のメカニズム解明には応用できない場合がほとんどです。光合成以外に、水の分解を起こす生物現象があればよいのですが、それがない、ということを言いたかったのです。ちなみに、酸化チタンによる水の分解は人工光合成の実現を期待させるものでしたが、実際にはその方向では大きな成功を収めず、代わりに、光触媒として汚れの除去などに広く使われるようになりました。(2007.5.23)
Q:何度もすいません。では、今でも人工光合成の研究は進んでいますよね。人工光合成に成功するとどんな利益があるのですか?(2007.5.24)
A:酸化チタンによる水の分解の場合について言えば、光照射によって起電力が発生すると共に、水が分解されて水素ガスが発生します。現在、エネルギー源としての水素ガスは、二酸化炭素の発生源にならないという点から、有力な代替エネルギーの候補の一つとなっています。
このあとは、余談ですが・・・。研究の動機づけや研究費の分配の基準に「どんな利益があるか」を使うのが最近の風潮ではありますが、個人的には、利益を考えて研究をするのはあまり好きではありません。(2007.5.25)
Q:葉緑体を活性を保ったままの状態で単離する方法と、ちゃんと葉緑体が取れたかどうかを評価する方法について調べています。単離法については色々と調べて、パーコール密度勾配やショ糖不連続濃度勾配などを使えばよいのかなあ、という所までは理解が進んだのですが、活性を保った葉緑体の評価方法については、「これだ」といったものが見つけられません。なるべく操作が簡単で、効率が良く、こういう結果が出れば確実に葉緑体は活性を持っている! と言えるような良い方法は無いでしょうか?専門が植物ではないので、ほぼ一からのスタートです。先生のご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。(2007.5.24)
A:ここで言う「葉緑体」というのは、無傷葉緑体のことでしょうね。包膜が完全でない葉緑体であれば、単離するのにパーコール密度勾配を使う必要はありませんから。とすると、その場合の「活性」というのは単に電子伝達をする活性ではなく、ストロマでの二酸化炭素固定も含めた活性なのだと思います。その場合、重要なのは、どれだけ葉緑体の包膜が損なわれていないか、という部分です。包膜が傷むとストロマ画分が外へ溶け出てしまうので、活性が失われます。包膜が傷んでいるかどうかを確かめるためには、外から与えた塩が葉緑体内部に入るかどうかでチェックします。
測定には、通常、酸素電極を使います。酸素電極は酸素濃度を測定する器械で、電極自体は5万円ほどで手に入ります。電極システムとして買うと50万円ぐらいでしょうか。チラコイド膜にフェリシアン化カリウムを加えると、フェリシアン化カリウムが光合成電子伝達系から電子を受け取って、それに伴って酸素を発生します。しかし、無傷葉緑体の場合は、フェリシアン化カリウムが包膜を透過しないので、活性が出ません。そこで、まず、無傷葉緑体にフェリシアン化カリウムを入れても、あまり酸素発生活性が見られず、次いで、低張液か何かで葉緑体を破砕してからフェリシアン化カリウムを入れたら活性が出たら、葉緑体の包膜が損なわれていなかったことの証明になります。酸素電極の代わりに、クロロフィル蛍光測定装置を使うことも可能ですが、こちらは数百万円します。
このあたりの実験手法については、かなり古いのですが、「光合成研究法」加藤栄他編(共立出版)という本をご覧になるのが一番かと思います。おそらく版元では品切れになっていると思いますが、図書館で見るか、古本屋で探すことはできるかも知れません。(2007.5.24)
Q:昨日は、質問に御回答いただきありがとうございました。新たにもう一つ疑問が浮かび上がってきたので、もう一つ質問させてください。「無傷葉緑体」の単離法についてです。パーコールやショ糖の密度勾配、濃度勾配を利用して遠心分離をし、「この濃度の液と、この濃度の液との境界面にあるバンドの中に無傷葉緑体が存在している」などといったことが、色々な本に書かれていたのですが、、、では、実際にその実験をやってそのバンドの中には本当に無傷の葉緑体が入っているの??と聞かれたときに、それを証明するためにはどんな実験を行えばよいのでしょうか。前回御回答頂いた、包膜の破損の有無を調べれば活性の有無を判断できるという内容は理解できました。今回疑問に思ったのは、そのバンドの中には無傷葉緑体のほかにも、傷ついた葉緑体やミトコンドリアやペルオキシソームなどが含まれているのではないか?という点です。「この中には無傷葉緑体以外は含まれていません」と、証明できるような実験を組み立てるにはどうすればよいでしょうか??長くなってしまい申し訳ありません。よろしくお願いします。(2007.5.25)
A:無傷葉緑体に包膜が壊れた葉緑体が混入している場合には、フェリシアン化カリウムを用いた無傷性の検定の際に、値が無傷葉緑体とチラコイド膜の中間になりますので、それによって判定することができます。一方、その他のオルガネラの混入は、マーカータンパク質のWesternなどで行なうのが普通です。例えば、ミトコンドリアには、ミトコンドリアにだけ含まれる(特有の)タンパク質がありますから、得られた画分の一部を電気泳動して、そのタンパク質の抗体によってWesternを行なえば、ミトコンドリアが混入しているかどうかがわかります。同じことを他のオルガネラ特有の抗体で行なえば、混入の有無を調べることができます。(2007.5.25)
Q:自然条件下において、どのような植物が、それらが持つ最大光合成能力を実現できるんですか?(2007.5.23)
A:どうも質問の意味がわかりません。質問に何か前提条件があるのではないでしょうか?「どのような植物」というのは、植物の種名を要求しているのでしょうか?最大光合成能力を実現できない、というのは、具体的には光が弱い、などといった環境要因を想定しているのでしょうか?「質問のコツ」をご覧になって、再度ご質問頂ければと思います。(2007.5.23)
Q:木から切り取った葉と木についたままで切り取っていない葉の光合成速度の違いを調べたいのですが、調べるにあたって、何かいい方法はないでしょうか?(2007.5.22)
A:光合成の研究室であれば、このような場合は、特別の装置で二酸化炭素の吸収速度を測定します。ただ、高校レベルで、となるとそれは無理でしょうから、難しいところです。可能性のあるのはヨウ素デンプン反応でしょうか。ただ、ヨウ素デンプン反応は光合成産物の量を見ることになりますから、たとえ差が出たとしても、光合成の速度が違うのか、それとも、光合成産物が木の本体の方に転流されるかどうかの違いが見えているのか、は判断がつきませんね。また、木の葉は硬いので、あまりヨウ素デンプン反応ではきれいに結果が出ないと思います。
申し訳ありませんが、よい方法を思いつきません。(2007.5.22)
Q:光合成には、なぜ太陽光線が必要なのですか?ほかの光でなく太陽光線が必要な理由がよくわかりません。教えて下さい。(2007.5.19)
A:「ほかの光」というのは、太陽光線以外の電球の光とか、蛍光灯の光、という意味でしょうか?それとも、目に見える光(可視光線)以外の赤外線や紫外線という意味でしょうか?
前者でしたら、別に太陽光線ではなくても、電球の光でも、蛍光灯の光でも光合成はします。ただ、太陽の光に比べると弱いことが多いので、それだけだと不足しがちなのです。でも、植物工場などといって、十分強い人工的な光で部屋の中で野菜を育てている例がありますから、十分強い光であれば、蛍光灯の光でも光合成をします。
後者ですと、いろいろな答え方があります。一つは、クロロフィルが主に可視光線を吸収するから、という答えです。それでは、紫外線や、赤外線を吸収する色素をクロロフィルの代わりに使えばよいのかという疑問が生じます。赤外線の場合は、赤外線を吸収できるクロロフィルも存在して、生き物によっては赤外線も利用できます。ただ、普通の陸上植物は、そのようなクロロフィルを持っていません。また、紫外線は使えないでしょう。紫外線は、体の中のいろいろな物質に害を与えますから、その紫外線を利用するのは危険なのです。(2007.5.20)
Q:ピーマンとスイカの皮とアボガドとナスの皮と紫キャベツとほうれん草とさやえんどうの鞘に、クロロフィルがあるのかを実験して光合成をする能力があるのかを調べたいのですがどのような実験方法がありますか?(2007.5.19)
A:高校生でできる実験となると限られますが、クロロフィルがあるかないかを調べるのでしたら、有機溶媒で抽出して濾紙でクロマトグラフィーをやるのが一番簡単だと思います。ただ、メタノールなどの有機溶媒の入手は、未成年だと難しいかも知れません。高校で購入してもらうか、大人に買ってもらう必要があります。クロマトグラフィーのやり方自体は、高校の生物の教科書にも載っていますので、それを参考にしてください。留意点は、なるべく混じる水の量を少なくする点です。通常行なうのは、シリカゲルなどの乾燥剤と植物を一緒に乳鉢と乳棒ですりつぶして、そこに有機溶媒を入れるようにすると、水分が乾燥剤に吸収され、比較的うまくゆくと思います。水分が多いと色素の抽出がうまくいきません。
光合成を調べるのは、やや難しいのですが、水をいっぱいまで入れたペットボトルにナスの皮などを入れ、太陽の光を当てることにより、光合成によって出てくる酸素を泡として検出する方法が使えるかも知れません。オオカナダモなどの水草では非常に有効ですが、陸上植物にも応用可能です。キュウリの皮では、実際に光合成を検出できるそうです。方法に関しては、森田先生のHPなどが参考になるでしょう。ただ、光は十分強い必要があるので、太陽の光が十分あたるようにすることと、その際に、水が暖まって、熱くならないようにすることに注意してください。一旦煮沸した水を使って、重曹を少し入れておくと、かなり純粋な酸素を集めることができるはずです。(2007.5.20)
Q:何度もすみません。クロロフィルは光合成をする植物には必ずあるのですか。また収穫してから時間が経って光合成能力がおちた野菜でもクロロフィルは抽出されますか。(2007.5.20)
A:はい。クロロフィルは、全ての光合成生物が持っています。ただ、一口にクロロフィルといっても多くの種類があります。陸上植物の場合は、その中で、クロロフィルaという種類が中心的役割を担います。また、光合成能力がなくなっても、クロロフィル自体は分解されずに残る場合がほとんどです。例えば、お浸しにしたホウレンソウは、もちろん光合成はしませんが、クロロフィルはかなりの部分残っています(一部は壊れますけど)。逆にクロロフィルが完全に分解されるような条件、例えば、きれいに赤く紅葉した葉っぱ、などでは光合成の能力はなくなっていると考えられます。(2007.5.20)
Q:光合成の内容は、ホームページ上または一般常識内で理解した上でのご質問ですが、根を持たず土につかずある場所に固定されながらも一定の光合成が可能な物質があるかを教えて頂きたいのですが、例えば壁材等に混ぜ込む事が可能なものを教えて頂きたいのです。宜しくお願いします。(2007.5.4)
A:下の方に、光合成をするコンクリートを作れるか、という質問があるのはご覧になりましたか?これをご覧になって、その上で質問の焦点を絞って頂けると適切に答えることができるかと思います。また、光合成というのは、一般に生物の営みです。「光合成の可能な物質」というのが、そもそも何を指すのかがよく分かりませんでしたので、再度質問を頂く時は、そのあたりも補足して頂ければと思います。(2007.5.6)
Q:一般的に広葉樹では、光合成速度は面積あたりで表示されることが多いですが、針葉樹では、乾重量あたりで表示されることが多いです。では、重量あたりで表示することの有利な点、不利な点はどういったものがあげられますでしょうか。(例えば針葉樹は立体的な葉の形態をしているから、面積より重量のほうが正確な値が出る、など。)(2007.5.2)
A:光合成という反応は、光によって進みますから、一番重要なのは、(少なくとも光が律速になるような条件では)光が来る方向から見ての断面積、つまり投影面積です。実際に、投影面積を測るのは、一日のうちでも光の来る方向が変わるわけですから非現実的です。ただ、、広葉樹の葉に垂直に光を当てて光合成速度を測るような時は、投影面積=葉面積になりますから、葉面積を使って問題ありません。しかし、針葉樹の場合は、葉が平面ではありませんから、「垂直に光を当てて」という部分がそもそも実現できません。また、投影面積にしても表面積にしても正確に測るのは難しいでしょう。その点、重さの計測は正確にできるでしょうから、おっしゃるような「面積より重量のほうが正確な値が出る」という理由は大きいと思います。不利な点としてぱっと思いつくのは、光合成にとって重要な光との関係が希薄になる点でしょうか。例えば、大きな木全体の光合成速度を見積もりたい時、いくら葉がたくさんあっても、光が来なければ光合成はしませんから、全体としての光合成速度の上限は、葉面積あたりの光合成速度にその木全体の投影面積をかけ算したものになります。しかし、乾重量あたりの光合成速度がわかっても、実際の樹木でお互いに重なり合った葉を持っているような場合、どの程度の光合成が行なわれているかを見積もることは難しいように思います。もちろん単一の種においてであれば、重量と(何であれ)面積との間には、一定の関係があるでしょうから、その種の中で比較するのであれば、どちらでも構わないのではないかと思います。(2007.5.3)
Q:はじめまして、私はバラを栽培しているのですが市販の肥料(葉面散布剤)を散布する事で光合成で得るエネルギーと同等の物質を得られると唱っている物がありますが、酵素糖化ぶどう糖その他手軽に入手出来る物を葉面散布した場合植物の生育は活性化するのでしょうか? よろしくお願いします。(2007.4.26)
A:植物の研究では、光合成の機能が失われた植物を扱う場合があります。そのような場合は、もちろん光合成でエネルギーを得ることができないのですが、根にお砂糖を供給すると、何とか生き続けることができる場合があります。ですから、原理的には、糖を与えることによって光合成を代替することは可能です。ただ、これは、研究室の中で細菌などが繁殖しないようにしているので可能ですが、普通の栽培では難しいでしょうね。また、葉面散布となるとちょっと難しい気がします。一般に、葉面散布は、吸収速度がさほど要求されない微量元素の供給には良いのですが、光合成産物のように、量的に多いものを供給するのには向かない方法です。具体的な成分がわからないと何とも言えませんが、少なくとも、暗いところでバラが育つのは期待できないと思います。(2007.4.26)
Q:昨日は回答いただきまして有難うございました。本日の質問ですが昨日の回答「成分によるが葉面散布の効果は少ないのでは」でしたが、植物にある過剰窒素を効率よく同化させるには光合成は不可欠でしょうが低温低日射期に窒素同化作用を向上させる手軽な方法を教えて下さい、よろしくお願いします。(2007.4.27)
A:これもなかなか難しいと思います。窒素を取り込むメカニズムとしては、窒素を炭素化合物にくっつけてアミノ酸にするという形の同化が代表的ですが、これには、材料の炭素化合物と、それに加えて還元力とエネルギーが必要です。この炭素化合物と還元力は、どちらも光合成によって供給されますので、低温低日射の場合は、窒素が過剰になるのは避けられません。炭素骨格には、2−オキソグルタル酸という物質が使われますので、これを外から加えることは不可能ではないのかも知れませんが、その他に還元力も供給する必要があります。ただ、細胞内の酸化還元状態というのは、極めて微妙なバランスの上に成り立っているので、外から還元力を供給するのは非常に危険でしょうね。また、エネルギーも必要ですし。やはり、低温低日射が予想される場合には、施肥を控えると行った予防的な方法しかないのではないかと思います。ただ、僕はあくまで光合成の専門家なので、確定的なことは申し上げられません。(2007.4.27)
Q:植物が1年間に固定できる有機物のエネルギーはどのくらいですか?(2007.4.23)
A:生物学というのは、物理や化学とは違います。例えば、1リットルの純水の重さはどのくらいですか、という質問に対しては、1 kg と答えることができます。厳密に言えば、温度によってわずかに変化するはずですが、その誤差は1%にもなりません。一方で、世の中に植物というのは、とてつもない種類があり、それぞれ光合成の能力は全く異なります。さらに、種によっても、植物の大きさによっても、光の強さ、昼の長さ、温度などの環境条件によっても異なります。そのような条件がわからないとお答えのしようがないのです。(2007.4.23)
Q:光合成の比較実験の問題なのですが、一晩暗いところのおいたアサガオを朝になって一つの葉に透明のビニール袋でおおい、一つの葉はそのままで日光に数時間あてたあとのデンプンのできる量のちがいをヨウ素液を使って調べたときに生成量に差がでるものでしょうか。つまり濃い、薄いを聞かれているのですが、違いは数時間ででるものかどうかわかりません。教えてください。(2007.4.23)
A:葉緑体にデンプンは、一日の単位で増えたり減ったりしているわけですから、数時間光合成をすれば、デンプンを貯める種類の植物であれば、ヨウ素デンプン反応によって検出することができます。その意味では、答えは、Yesなのですが、問題なのは、ヨウ素デンプン反応というのは、あまり量を量るのは得意でない(つまり定量的ではない)という点です。ビニール袋で覆ったことによって、光合成が、例えば1/10になるのでしたら、差を見ることができると思います。しかし、光合成が1割減って9/10になるだけでしたら、おそらくその差を見るのは、まず不可能です。ですから、実際にヨウ素デンプン反応で検出可能かどうかは、実験の条件によって変わってしまいます。透明のビニール袋で覆った時にどうか、という点になりますと、そのビニール袋の材質や大きさ、実験の様々な条件によって左右されると思いますので、実際に実験をしてみないと何とも言えないと思います。(2007.4.23)
Q:質問なのですが、実験の際の酸素と二酸化炭素の量の関係と光合成によるデンプンの生成量との関係はいかがでしょうか。呼吸による二酸化炭素の排出は一定であっても、光合成による二酸化炭素の吸収量から考えると多い少ない(ビニール袋内は一定量しかない)は生成に影響が少なからず出るのではないでしょうか。(2007.4.23)
A:その通りです。ビニール袋をかぶせれば、光合成によるデンプン合成量は影響を受けると思います。ただ、その影響をヨウ素デンプン反応によって検出できるかどうかは、実験の条件ややり方によって異なり、たとえ影響があっても検出できない可能性がある、ということなのです。例えば、より鋭敏で定量的な方法、例えば直接光合成の速度を酸素の発生などによって測定すれば、差を検出できると思います。(2007.4.23)
Q:光合成とはちょっと違うのですが、炭素固定について生徒から受けた質問で、このようなものがありました。
◎長年の疑問なんですが、炭を酸素と化合させてエネルギーを得ている微生物とかいないのでしょうか?
◎単体の炭素は、自然界では燃焼以外では半永久的に単体のままなのでしょうか。
私なりに、調べては見たのですが、わかりませんでした。反応熱が発熱で、一度燃焼が始まれば自発的に反応が続くこと、二酸化炭素や一酸化炭素を固定する事ができることから、私が知らないだけでそういう微生物がいるのではないかと思い、質問をさせていただきました。現在判明していることがありましたら、教えていただけないでしょうか。よろしくお願いします。(2007.4.19)
A:このような質問が来ると嬉しくなりますね。非常に面白い着想だと思います。ただ、結論から言うと、僕はそのような生物は知りませんし、以下のような理由で、そのような生物はあまりいそうにないように思います。
おっしゃるように、還元剤と酸化剤が反応すれば、酸化還元反応が起こって、エネルギーが放出されます。酸素呼吸の場合は、糖を酸素で酸化することによってエネルギーを得るのですが、これが、通常の燃焼反応と異なるのは、極めて多くのステップからなる点です。解糖系からクエン酸回路、電子伝達系にいたるまで、酸素呼吸の反応のステップ数は全部合わせると100ではきかないかも知れません。これは、糖の酸化の際に発生するエネルギーを、いわば細かく分割することにより、生物が使うATPのような化学的エネルギーに変換することを可能にするためです。燃焼の場合は、酸化が一度に起こりますから、そのエネルギーの大部分は熱になってしまうのです。
ところが、多くのステップに分けようとすると、単純な化合物では種類が足りなくなってしまいます。例えば、クエン酸回路を考えてみます。クエン酸回路では、まず、炭素2個の化合物を炭素4個の化合物にくっつけて、炭素6個の化合物にします。そして、その炭素6個の化合物を少しずつ変化させて、炭素4個の化合物に戻す中で、エネルギーを少しずつ取り出すわけです。ここで、何故、わざわざ、最初に炭素6個の化合物に変換するか、といえば、炭素2個の化合物をそのまま酸化する場合には、構造が単純すぎて多くの反応ステップに分けることができないからです。
とすると、炭は、いわばもっとも単純な炭素ですから、少なくとも、そのままでは、生物がエネルギーを取り出す対象にはなり得ません。クエン酸回路の時のように、何か別の化合物にくっつけて、複雑さを増してからエネルギーを取り出す、ということは原理的には可能ですが、化学反応としては、単体の炭素から有機物を作るのは非常に難しいと思います。というわけで、そのような生物はいそうにもありませんが、今までにもいそうにない生物が見つかってきていますから、完全には否定できないかも知れませんね。
なお、単体の炭素も、表面では、極めてゆっくりと酸化反応が進みます。ただ、非常にゆっくりなので、通常は無視できます。ただ、微粒子にすると表面積が増えますから、酸化反応を検出することはできるかも知れません。ただ、「自然界で」となると、やはり非常に安定であることは確かです。(2007.4.19)
Q:おはようございます、以前にも質問させていただいたキュウリ栽培農家です。きゅうりの葉色についてですが、仮に同じ作型・定植時期の2つのキュウリがあったとします。ちなみに、作型としては収穫期が11月末〜翌年6月末の長期栽培です。
1.そのキュウリは、上方にある葉色が、薄い緑・濃い緑である場合はどちらの葉が光合成能力が高いのでしょうか?
2.私の考えでは、葉の寿命としては、薄い緑の葉は能力は低いが長期にわたり持続性がある、濃い緑の葉は能力が高いが老化が早く持続性がないと思うので、長期の作型では、葉色薄く、短期の作型では葉色濃くと作型によって葉色の見極めが大切なのではないかと思うのですが、実際のところ光合成能力と葉色と老化速度とはどのような関係にあるのでしょうか?
3.栽培上の経験では、水量減・肥料濃度高く、あるいは、冬季の管理のままで、春季〜夏季を迎えると葉色は濃くそして、葉のサイズも小ぶりになってきます、なぜそのような変化が葉色に起こるのでしょうか?(2007.4.19)
A:
1.一般に、葉のクロロフィル含量と光合成の能力の間には、非常によい相関関係があります。従って、濃い緑の葉の方が光合成速度は高いはずです。ただし、この場合の光合成速度というのは、葉の面積あたりの二酸化炭素固定速度です。クロロフィルの量あたりで計算したら、話はまた別になります。
2.老化の速度は、葉自身の性質も受けなくはありませんが、それよりも周囲の環境による影響の方が圧倒的に大きいものです。例えば、植物体の中で、特定の葉だけを暗くすると、その葉の老化は非常に促進されます。また、栄養として窒素が足りない時は、植物体全体で、葉の老化が促進されます。葉は、どうしてもお互い重なったりしますから、葉の色の影響よりは、そのような光環境や栄養条件の影響の方が大きいと思います。むしろ、葉の色は、そのような光環境や、栄養条件の結果として決まるとも言えます。
3.おそらく、ご指摘の場合、冬季と夏期で異なるのは光の明るさではないかと思います。植物は、暗いところでは、なるべく光を集めようと大きな葉を展開し、また、弱い光はあまり葉を通り抜けませんから、1枚の葉の厚さは薄くした方が有利です。明るいところでは、葉に差し込む強い光を最後まで吸収するために葉の厚みを厚くし、むしろ葉のサイズは小さくする傾向があります。葉の厚みが厚くなれば、当然葉の色も、濃く見えるようになるでしょう。光環境の変化に対する順化応答であると考えると理解しやすいのではないかと思います。(2007.4.19)
Q:CAM植物について教えてください。夜に二酸化炭素を吸収するCAM植物を24時間昼の光のあるところで育てたら、どんな影響がでるのでしょうか?二酸化炭素を吸収する量が減少したりするのでしょうか。また逆に24時間、日照不足の日陰においたらどんな影響がでるのでしょうか?CAM植物の光合成の特性を発揮させるには、昼夜はっきりさせた方が良いと思うのですがどう思われますか。ご意見を聞かせてください。(2007.4.16)
A:CAM植物というのは、CAM型の光合成をしなくては生きていけない、というものではありません。CAM植物では、夜間に二酸化炭素を有機酸の形で液胞に貯めて、昼間はその貯金で光合成をするわけですが、有機酸を使い切ってしまうと、そのあとは普通のC3型の光合成に移行します。CAM型の光合成は、耐乾燥性という意味では、非常にうまくできた仕組みなのですが、単に盛んに光合成をしてどんどん育つ、という点に関してはC3型の光合成に軍配が上がります。ですから、「CAM植物の光合成の特性を発揮させる」という点に関して言えば、おっしゃるように昼夜がはっきりしていた方がよいのですが、そのことは、「CAM植物の生育をよくする」ということと同じではありません。一般には、CAM植物の光合成の特性を発揮「させなくてすむ」条件の方が、むしろその植物の生育をよくする場合も多いようです。(2007.4.17)
Q:私はデンドロビュームや胡蝶蘭などの素人向きの蘭を趣味で育てております。貴サイトのQ&Aの朝日夕日のことを読ませていただいた感想です。 感想ですので、お忙しいところ、特にご回答の必要はありません。植物に朝日は好ましいが夕日はダメとよくいわれます。また夏期に夜間温度を下げよといわれます。夏期の熱帯夜とはいっても、温度は午後の2時ごろを中心とした時間帯より上回ることはないとおもわれます。夏期でなくても日中と夜間の温度差はあったほうが好ましいようです。西日や夜間温度については、対象をクロロフィルの光合成としてでなく、対象を生物として考えると、一日という地球時間と眠りといかなくても休息は関係はないでしょうか。(2007.3.31)
A:うちにも、10年以上前にお祝いに頂いた胡蝶蘭が一株あって、いまだに毎年花を咲かせています。胡蝶蘭は、日照と温度の条件を選んでやれば、放っておいても毎年花を咲かせるのがいいですね。さて、それはさておき。
植物にも体内時計があります。体内時計を構成する遺伝子もかなり知られていて、それらを破壊した植物では生育に影響が出ることがわかっています。ですから、一日のリズムというのは、植物にとっても非常に重要なのですが、一方で、多くの植物は、24時間一定の温度、一定の光、というリズムのない条件で生育させても全く正常に生育します。このことからわかるのは、植物にとって重要なのは、リズムを持つこと自体ではなく、リズムを持つことによって変化する環境に起因する様々な不都合にあらかじめ対処しておくことが重要である、ということです。また、体内時計の特徴の一つは、外部環境のリズムがなくなっても、しばらくは体内だけでそのリズムを維持できるという点です。これらの点を考えると、環境のリズムがなくなるだけでは植物にはそれほど悪影響はないと考えられます。
夜間温度に関しては、一般論としては、呼吸の影響も考える必要があるかと思います。植物でも常に呼吸をしており、光合成のできない夜間は、細胞活動の維持に必要なエネルギーを呼吸によって賄われます。細胞活動も、呼吸自体も、温度が低いと抑えられますから、夜間は低温の方が無駄なエネルギーを使わなくてすみます。もちろん、一定以上の低温になると植物は障害を受けますから、昼間の温度よりかけ離れて低温になっては困ります。このようなことでも、昼夜の温度差の必要性は説明できます。
ただし、胡蝶蘭のような植物は、湿度の影響を強く受けます。温度が変化すると相対湿度が変化しますから、その影響も考慮する必要があります。また、一日の温度は、普通、日照の変化に遅れて変動します。つまり、同じぐらいの光の明るさの時を選んでも、午前中は、相対的に温度が低く、湿度が高くなります。午後は、反対に温度は高く、湿度は低くなります。夏場は蒸散が激しいので、湿度が低いと気孔の閉鎖によって光合成が律速されてしまいます。西日が悪いといわれるのには、そのような影響もあるでしょう。ただ、この場合は、冬場は、むしろ西日の方がよい、ということになります。(2007.4.1)
Q:NADPHは光合成によって再生されますが、NADHは光合成によって再生されることはありますか?かんたんな質問で申し訳ありませんが宜しくお願いします。(2007.3.25)
A:NADPHの葉緑体における再生は、酸化されたNADP+がFNRと呼ばれる酵素によって還元されることによって起こります。NADHの再生も同様に起こるかどうかは、1)葉緑体におけるNADHとNAD+の合計量、2)FNRの基質特異性、の2つの要因によって決まります。実際にどの程度の濃度かは覚えていないのですが、葉緑体ではNADPHの方がNADHよりもかなり濃度が高かったように思います。さらに、FNRはNAD+よりもNADP+の方を基質として認識しますので、NADHの再生が光合成によって起こるとはいえないでしょう。ただし、NADHはリン酸化酵素によってNADPHに変換されますし、相互に変換は可能なはずです。そのような形で光を当てた時にNADHの生成が見られる、ということはあるかも知れません。(2007.3.25)
Q:現在、バナナの果皮が緑から黄色になる過程のクロロフィルの分解について調べています。クロロフィルの分解が起こり、クロロフィリドaになったあと、マグネシウムデキレターゼの働きによりMgがはずれて緑色がなくなっていく過程は理解しているつもりなのですが、その過程がおこるきっかけはなにがあるのでしょうか。バナナの追熟においてはクロロフィルの分解が起こる過程は自然条件下での老化とは違うきっかけがあるのでしょうか。また、分解のスピードを促進させるような条件(湿度、温度、二酸化炭素濃度、エチレン等)はあるのでしょうか。
よろしくお願いいたします。(2007.3.7)
A:バナナのクロロフィル分解については専門ではありませんので、ごく一般論になりますがご容赦下さい。クロロフィル分解については、クロロフィラーゼの発現が上昇する例が知られているようです。この場合は、成熟などがきっかけで、全般的にクロロフィル分解速度が上昇することが予想されます。一方で、ストレス条件下などで光合成系に障害が起こった場合には、障害を受けたクロロフィルタンパク質だけが選択的に分解される場合もあります。この場合には、活性を保ったクロロフィルタンパク質に結合しているクロロフィルは分解されませんので、単にクロロフィル分解活性が上がった、というよりはクロロフィルと分解酵素の近づきやすさが効いているように思われます。バナナの場合は、おそらく前者のメカニズムでしょうか。葉の老化などと似たようなプロセスだと思われます。エチレンではクロロフィル分解が促進されますし、温度などもある程度高い方が分解は早いでしょう。ただ、バナナは低温感受性植物なので、10度以下の温度では追熟とは別に低温傷害が起きますから、話やややこしくなります。基本的に、環境変化(細胞内の内的なものも含む)をきっかけに植物ホルモンを経て標的の発現調節、というシグナル伝達の仕組みは老化の場合と一緒だと思います。(2007.3.8)
Q:丁寧な回答どうもありがとうございました。もう一つ質問させてください。
エチレンがクロロフィル分解を促進させるということですが、その際の酸素濃度や二酸化炭素濃度とクロロフィル分解との関係性はあるのでしょうか。(2007.3.9)
A:酸素や二酸化炭素の効果は僕もよく知りません。酸素は空気にもともと21%含まれていますので、多少変動しても大きく影響はないと思います。ただ、酸素を全く除くような処理をした場合には、呼吸が止まりますから、そのような場合には、影響はあるでしょう。ただ、これはかなり人工的な状況なので、実際の影響がどのようなものかはよくわかりません。バナナは呼吸により二酸化炭素を放出しますから、密閉容器中では二酸化炭素濃度が上昇して行くはずで、もとの濃度が0.04%以下であることを考えると、濃度上昇は無視できないと思います。ただ、これも追熟や老化に対する影響と言うことになるとよく知りません。植物の老化を左右する環境要因としては光が非常に大きく、他に栄養条件によって影響を受けることが知られていますが、二酸化炭素濃度の影響については知りません。お役に立てずに申し訳ありません。(2007.3.9)
Q:DCMUは電子の伝達を止めることで植物を枯死させるはずですが、NBT還元法によって細胞が青色に変色しました。これは、枯死した植物がO2-を生成したのですか?それともO2-以外でもNBTのdiformazanへの変化が起こるのですか?(2007.3.7)
A:これは、生理的条件下でのO2-の発生場所は主に光合成電子伝達の系I還元側であるはずなのに、電子伝達を止めてもなぜO2-が発生するのか、という質問だと思います。
NBTの還元の特異性は、それほど高いものではありません。ですから、O2-以外の物質(還元剤)によっても、発色が見られることは十分に考えられます。他に考えられるのは、非特異的なO2-の発生です。実験を、DCMUを加えてからどのぐらいたって行なったかにもよりますが、もし、DCMUを加えてかなり時間をおいてから実験をしているのでしたら、細胞が死ぬ際の様々な反応の結果を見ている可能性があります。死にかけた細胞の中では、光合成とは無関係にO2-が発生している可能性は十分あります。光合成はDCMUによってほぼ即座に止まりますから、DCMU添加直後の場合と比較すればもう少し何が起こっているのかわかるかも知れません。(2007.3.7)
Q:ペーパークロマトグラフィーに抽出液をしみこませると色が変わるのはなぜですか。(2007.2.25)
A:これは、抽出液の見た目の色と、抽出液をしみこませた紙の見た目の色が異なる点についてのものでしょうね。もしかしたら、何か特殊な要因があったと考えられなくはありませんが、一般的には溶液とそうでない場合の光学的な性質の違いが一番大きく効くと思います。光は物質にあたった時、そのまま通り抜けるか(透過)、吸収されるか(吸収)、あちこちに反射されるか(散乱)します。ものが均一に溶けている状態では、散乱は小さいのですが、紙の上に色素がある場合は、散乱が極めて大きくなります。一般的に散乱が大きいと、より白っぽくなります。この例として上げることができるのは、都会の空で、あまり青くないのは空気中の微粒子が多く散乱が多いためです。もう一つ、量的な問題もあります。溶液と紙にしみこんだ場合では、量を比べることは困難です。一方で、吸収が大きい時と小さい時では、人が見た時の色は違って見えます。例えば、クロロフィルの濃い溶液は青緑色に見えますが、薄い溶液は黄色っぽく見えます。答えとしては、散乱の大きさの違いと濃度の違い、ということになるでしょう。(2007.2.26)
Q:初めまして、ホテイアオイの水処理利用を考えている者ですが、文献によると水中での燐吸収率が低いとありましたが、燐吸収率が低いということはショ糖燐酸酵素の合成が小さく糖合成も支配されると考えられるでしょうか?また水生植物で燐吸収の高い植物は何でしょうか?お忙しいところ恐縮ですがお教え頂ければ有り難いです。(2007.2.22)
A:光合成のリン酸律速のことをおっしゃっているのだと思います。確かに、細胞内のリン酸の濃度が下がると光合成は抑えられますが、これは、同じ植物でリン酸の濃度が下がった場合です。生物の代謝は多くのプロセスから成り立っていますが、特定のプロセスが低い場合に、他のものをそのまま高く保持していても損をするだけです。ですから、通常は、あるプロセスが低ければ、他のプロセスも抑えられることが多いのです。ある植物において、もともとリン酸の吸収量が少ないような場合には、その植物の光合成は、そのリン酸濃度に見合った状態になっている場合が多いと思います。それをもってして、「糖合成も支配される」というのでしたら、その通りですが、そのような場合は、リン酸を多く与えたとしても、すぐには光合成は上がらないことになります。
僕自身は、栄養塩の吸収は専門ではありませんので、ホテイアオイのリン酸吸収がどの程度なのか、他の水生植物で、何が高いリン酸吸収能を持つか、などの点については、よく知りません。(2007.7.22)
Q:こんにちわ。わたくしは、現在の地球感環境のことを思ったとき、未来の子どもたちのために、自分にいまできることはなんだろう、と日々思いを熱くしている主婦でございます。そこで、いま、植物のCO2吸収率について調べているのですが、どこを見てもそういう資料がみつからなくて、困っています。どこで、調べることができますでしょうか?どうぞよろしくお願いいたします。(2007.2.21)
A:植物がどのぐらい二酸化炭素を吸収するか、これはどのくらい酸素を発生するか、でも同じですが、それについては、このサイトの「よくある質問のページ」にもいくつか質問と回答が載っています。ご覧頂いて、わからない点がありましたら、ご質問頂ければ、またお答えできるかと思います。「資料」というのが、ホームページなどではなく、書籍などである、ということでしたら、やはり光合成の教科書が一番だと思います。朝倉書店から出ている「光合成」などが、一番一般的かと思います。(2007.2.21)
Q:私の見た文献では、スーパーオキサイドアニオンは反応性が低いため、直接タンパク質や脂質などの修飾に関与しないというものと、葉緑体などの細胞内の遺伝子の核にあるDNAを破壊し、植物を枯死させるというものがありましたがどちらが正しいですか?(2007.2.16)
A:生理的な役割というのは、たいてい生体内でのある一定濃度範囲での話である場合がほとんどなので問題ないのですが、阻害の効果というのは通常生育条件でのものから、ストレス条件下の場合、さらには人工的に加えた物質の効果を調べる場合など様々ですので、そのような条件がわからないと一概にお答えできません。逆に言うと、文献の間の矛盾は、そのような条件の違いを反映しているのではないかと推測します。
一般論としては、スーパーオキサイドアニオン自体の反応性は、酸素とさほど変わらず、スーパーオキサイドアニオンに特別弱いいくつかの酵素を除いては、生理的な条件での直接的な阻害作用はあまりないはずです。しかし、活性酸素種というものは自発的な不均化反応などによって常にお互いに変換していますので、スーパーオキサイドアニオンが多く存在する条件では過酸化水素やハイドロキシルラジカルの濃度が上がります。その場合に、例え阻害が見られたとしても、それが本当にスーパーオキサイドアニオン自体によるものなのかどうかを確認するのはかなり困難を伴います。僕の知る限りでは、生理的な濃度のスーパーオキサイドアニオン自体がDNAを破壊する、ということは考えにくいように思います。(2007.2.17)
Q:中学1年です。宜しくお願いします。学校でオオカナダモを使って細胞の観察をしました。表の細胞と裏の細胞を較べて、何故、裏の細胞の方が葉緑体が多くあるのか疑問におもいました。表の方が水中とはいえ光を多く吸収できるので表の方が多いと予測していました。水中の植物だからでしょうか?また、表の細胞のほうが大きさが大きいのは、こちらの方があとでできた細胞で成長したからなのでしょうか?(つまり、裏がわのたくさんの葉緑体によってでんぷんができ栄養が表側に送られる?)すみません。想像からの考察で、根拠がありません。いろいろ調べて見つからず質問させていただきます。宜しくお願いいたします。(2007.2.11)
A:「何故」という疑問は、この場合、どのようなメカニズムで、ということよりは、何の利益があって、ということでしょうね。「想像からの考察で、根拠がありません」とありますが、何の利益があってという問題点は、ある意味で、生物がどのように進化してきたかということとも関わり、誰にとっても実験的に証明することは極めて難しいのです。というわけで、僕が考えても似たものでしょう。まさに想像からの考察こそが重要なのです。
ただ、そのような考察をする際に重要なポイントがあります。それは、その生物が実際にどのような環境でどのように生育しているか、という点です。オオカナダモの場合、水底から立ち上がっているというよりは、水面に茎を横たえている部分の方が多い気がします。とすると、葉の表と裏で光の吸収が異なる、ということは、あまりないかも知れません。陸上の植物でも、例えばツバキの葉などは表と裏でだいぶ違いますが、葉がほとんど垂直に立っているイネの仲間の植物などでは、葉の表裏にあまり差がありません。オオカナダモの場合、細胞の層はそもそもたくさん重なり合っているわけではないですから、表と裏はどちらも外の水に接しているわけで、ますます表と裏を違える必要はないように思います。というわけで、少なくとも僕には「これが正解では?」と積極的に言えるような回答は思いつきません。もしかしたら、他の人も似たようなもので、だからいろいろ調べても見つからないのかも知れません。是非独創的なアイデアを考えてみて欲しいと思います。もし、思いついたら教えて下さいな。僕も考えてみたいと思います。そして、そのように考えることこそが科学の出発点なのです。(2007.2.11)
Q:たびたび失礼いたします。乾燥ストレスでクロロフィルが減少することは現在わかっているそうですが、クロロフィルが減少することと、光合成速度が減少することは関連があるのしょうか?また、それに関するおすすめの文献、参考書などがお願いいたします。(2007.2.11)
A:前にも言ったと思いますが、植物種や条件を記載しないで、「乾燥ストレスでクロロフィルが減少する」という言い方をするのはあまり適切ではありません。それはさておき、ご質問の件ですが、「光合成速度」というのは、高等植物の葉における葉面積あたりの最大光合成速度のことでしょうね。そこがきちんとわからないと答えられませんので。一応、そうだとしてお答えしますが、一般的には、クロロフィル量と葉面積あたりの最大光合成速度はかなり良い相関を示します。逆に言うと、クロロフィルあたりの光合成速度、つまり光合成の量子収率の変動は、クロロフィル量の変動に比べると通常は小さい、ということになります。ただ、これは短期的な強いストレスを受けた場合は別で、短い強光照射や、低温光阻害などにおいては、クロロフィル量がほとんど変化せずに光合成速度が低下する場合があります(=量子収率が低下する)。日本語の参考書としては、朝倉書店の「光合成」「環境応答」などでしょうね。英語の総説としては、今はSpringerに吸収されたKluwerの"Regulation of Photosynthesis"などが参考になるのではないかと思います。ただ、一般論ではなく、特定の乾燥ストレス条件について知りたい、ということですと、自分で論文を検索して調べてみないといけないと思います。(2007.2.11)
Q:ほうれん草などクロロフィルを持った野菜を使って野菜ジュースを作った場合、当然クロロフィラーゼが存在するものと思いますが、この場合フェオホルバイドの増加は心配ないのでしょうか。(2007.2.10)
A:まず、一般論としては、酵素の活性というものは、細胞内の状態に活性が最適化してある場合が多いようです。細胞を破砕してしまうと酵素活性は細胞内の時よりどうしても下がってしまいます。クロロフィルの分解系については、合成系ほどは詳しく調べられていないようですが、クロロフィラーゼなどの活性は老化する葉で上がる、という結果があったように記憶しています。従って、クロロフィルの分解は若い葉でも少しは起こっているでしょうけれども、やはり老化の過程などでクロロフィルを分解したい時に分解酵素を発現していると考えた方が合理的でしょう。黄色くなりかかったホウレンソウからジュースを作って、さらにそれを飲まずにしばらく放っておけば、もしかしたらクロロフィルの分解産物ができるかも知れませんね。ただ、その場合でも、分解産物をさらに分解する酵素の活性も上がっていることが予想されますから、特定の中間代謝産物が蓄積する心配はあまりないように思います。ましてや、生きの良いホウレンソウをジュースにしてすぐに飲んだ場合なら問題ないでしょう。(2007.2.10)
Q:DCMUを植物に与えたとき、D1タンパクのQB部位にDCMUが結合するために電子伝達が阻害され、クロロフィルに電子を蓄積させ過剰な酸化を行うとありましたが、どこか特定の部分を酸化するのですか?また、炭水化物欠乏により植物を枯死させるとありましたが、なぜ炭水化物欠乏が起こるのか教えてください。(2007.2.9)
A:「とありましたが」というのは、一体どこにあったのでしょう?「QB部位にDCMUが結合するために電子伝達が阻害され」というのはよいのですが、「クロロフィルに電子を蓄積させ」や「過剰な酸化を行う」というのは、誤りだと思います。
おそらく中学で習ったのではないかと思うのですが、光合成というのは、光のエネルギーを利用して炭水化物を合成する反応です。光合成の電子伝達が阻害されれば当然炭水化物を作れません。植物は、動物と違って他の生物を食べることはほとんどしませんので、光合成ができないと炭水化物が不足するのです。(2007.2.9)
Q:光発芽種子に赤色光を当てるとフィトクロムがPfr型となりジベレリンが活性化され、発芽が促進されると理解をしているのですが、暗発芽種子の場合はどのようなメカニズムなのでしょうか。光合成の質問ではなく申し訳ございませんが教えていただけければ幸いです。(2007.2.6)
A:これも僕の専門ではないのでわかりません。やはり光受容体からのシグナルが植物ホルモンを通して発芽を調節している、という意味では同じメカニズムが働いていると思うのですが、具体的には知りません。ちょっと見てみましたが、簡単な教科書には載っていないようですね。おそらく実験的に解明しようと思った時に、光発芽の方が圧倒的に実験をしやすいので、暗発芽の方は解明が遅れているのかも知れないと思います。(2007.2.7)
Q:吸光係数(K)の求め方の式は知っているのですが、計算方法がよくわかりません。。もしよろしければ教えて下さい。(2007.2.5)
A:「計算方法」というのが何かがよくわかりませんが・・・。しかも求め方の式はわかるのですよね?ただの割り算ですけれども。
ある物質の 1 M の溶液を作って、 1 cm の幅のキュベットに入れて吸収を測定したら吸収が2だったとすれば、2
÷ 1 (M) ÷ 1 (cm) = 2 M-1 cm-1 がモル吸光係数になります。(2007.2.5)
Q:1㎡の植物の葉が24時間で吸収する炭酸ガス量はおよそどれくらいでしょうか?快晴の日を標準にすると春夏秋冬でそれぞれどれくらいの炭酸ガスを吸収するのでしょうか?又出来る植物体は何グラム程度か?(2007.2.4)
A:最初と最後の質問に対する答えは、過去の質問をまとめたよくある質問のページに同様の質問と回答がありますので、そちらをご覧下さい。真ん中の「春夏秋冬」という部分は、もう少しきちんとした条件を挙げて頂かないと答えられません。(2007.2.4)
Q:はじめまして。簡易型分光器や手作り分光器(空き箱に分光シートを貼ったもの)を使って太陽光のスペクトルや葉緑素の吸収スペクトルをデジカメで撮影してみたのですが、うまくいきません。きれいに撮れる方法を詳しく教えて下さい。よろしくお願いします。(2007.2.4)
A:申し訳ありませんが、簡易型分光器や分光シートというのは使ったことがないので、わかりません。大学にいると、分光器はふんだんに転がっているので、簡易型のものを使う機会がないのです。あと、うまくいかない理由というのは、何にせよ簡単な質問から突き止めるのは難しいのです。どのようにうまくいかないのかもわかりませんし。機会があったら、僕も試してみようとは思いますが、現状ではわかりませんので、ご勘弁下さい。(2007.2.4)
Q:以前の質問の答えにDCMUは光化学系IIから電子を受け取るプラストキノンと構造が似ていて、プラストキノンの代わりに光化学系IIに結合することにより光合成の電子伝達反応を阻害するとありましたが、他の文献にはDCMUはD2タンパク質のQb部位に結合するとありました。これはどちらが正しいのですか?(2007.2.2)
A:「D2タンパク質」というのであれば、明らかにその文献は誤りです。正しくは、DCMUはD1タンパク質のQB部位に結合します。このD1タンパク質は光化学系IIの構成サブユニットの一つで、QB部位というのが、プラストキノンの結合部位なのです。ですから、D1タンパク質と書いてありさえすれば、特に矛盾はありません。(2007.2.2)
Q:Rf値からどのようにして色素の名前を決めるのか?(2007.2.2)
A:光合成色素のクロマトグラフィーの話ですね。過去の質問をまとめたよくある質問のページに回答がありますので、そちらをご覧下さい。(2007.2.2)
Q:ビニールハウスでイチジクを作っている農家です。農業改良普及センターから二酸化炭素測定器を借りて二酸化炭素の量を測りました。朝9時に計ったところ、外気で500ppmくらい、ハウス内で1000ppm位でした。ビニールハウスの中で植物を育てていると二酸化炭素濃度が低くなると聞きました。ハウス内の濃度が外よりも高いのは、重油ボイラーで加温しているのと、堆肥を施肥したので微生物が二酸化炭素を排出しているのだと思います。二酸化炭素が多ければ植物の生育が早くなるとききました。光の強さによっても光合成の量が変わるのだと知りました。ここからが質問なのですが、イチジクが生長するのに、晴れの日と曇りの日でどの位二酸化炭素の量があるのが良いのか教えて下さい。逆に、どの位二酸化炭素の量が減ると生育が阻害されるのか教えて下さい。温度や湿度で気孔が開いたり閉じたりすると聞きました。気孔が全開になる最適な温度が有るなら教えて下さい。(2007.2.1)
A:おっしゃるようにハウス内の方が二酸化炭素濃度が上がるのは重油ボイラーが原因である可能性が高いように思います。ただ、外気の500
ppmというのもだいぶ高いですね。現在の大気中の二酸化炭素濃度は380
ppm程度だと思いますので、外気といってもまだ、ボイラーの影響があるのかも知れません。
一般的に、二酸化炭素濃度が上がると光合成の活性は上がりますし、少なくとも短期的な生育はよくなります。380
ppmで育てた植物の場合、500 ppmぐらいまではかなり直線的に上がりますが、そのあとはだんだん頭打ちになって1000
ppmぐらいになると、あまり変化しなくなります。ですから、ご説明の状態では、二酸化炭素濃度は既にかなり十分にあると想像されます。曇りの日には光合成活性が低くなりますから、二酸化炭素の必要量はさらに小さくなるでしょう。また、温度については、ほとんどの生物的な現象は、その生物の最適温度で一番働くようになっているものです。ですから、イチジクが一番よく育つ温度で、気孔が一番開きやすくなると考えるのが妥当でしょう。(2007.2.1)
Q:お返事頂き有難うございます。一日の二酸化炭素濃度を昨日一日測りました。
時間 ハウス内 外
9:00 1000ppm 500ppm
0:00 500ppm 400ppm
15;00 300ppm 350ppm
17:00 400ppm 400ppm
21:00 800ppm 450ppm
0;00 1000ppm 450ppm
12時〜日没までが二酸化炭素濃度が低いので二酸化炭素濃度を1000ppmまで上げようと思います。方法として、二酸化炭素発生装置を使う(灯油を使う物です)、石油ファンヒーターを使う(これも灯油です)、寝太郎という炭酸ガスを発生する物を使う、練炭や炭を燃やす。この方法が思いつきました。お金をあまりかけれないので練炭や炭を燃やそうと思いますが無謀でしょうか?二酸化炭素濃度を上げる他の方法があれば教えて下さい。(2007.2.2)
A:きれいに昼間に減少していますね。外の二酸化炭素濃度も昼間に減っていますから、これは、光合成によって二酸化炭素が吸収されたせいではなく、昼間は暖かいのでボイラーの稼働が減少するせいなのでしょう。研究などでは二酸化炭素のボンベを買ってそこからガスを放出する場合もありますが、コストは非常にかかります。基本的に炭素を含むものを燃やせば二酸化炭素は発生しますので、あとは、簡便さとコストの問題を考えて決めることになるでしょう。ただ、不完全燃焼の可能性や、硫黄などの不純物による亜硫酸ガスの発生などを考えると、自分で装置を作成するのはお勧めできません。
また、葉物野菜などであれば、光合成の活性は収量に直結しますが、それでも、二酸化炭素の効果が非常に大きいかどうかは疑問です。ましてや木であるイチジクでは、光合成や木の成長と実の収穫量は、必ずしも一致しないように思います。僕の専門は光合成の基礎研究で、実の収穫となると専門外ですが、二酸化炭素濃度を増やしても収穫にはさほど反映されないのではないかと心配です。(2007.2.2)
Q:学校の実験でペーパークロマトグラフィーをやっていて材料にほうれん草を使っているのですが、「ほうれん草にシリカゲルを加えてつぶしたものに抽出液(メタノール:アセトン=3:1)を8ml入れ、乳棒でもう一度すり潰す」ことによって、葉中の色素にはどのような性質があると考えられるのでしょうか?(2007.1.31)
A:どうも日本語がよくわかりませんが、別に「すり潰す」ことによって何か色素の性質がわかるとは思えません。おそらくは、すりつぶした時に観察した何らかの現象か、もしくはすりつぶしたあとの実験が重要なのではないでしょうか?(2007.2.1)
A:これは、知識というよりは想像力の問題だと思います。光合成に必要な条件を考えて想像してみることが大事です。
光合成をするには光と水が必ず必要です。あと、その他の物質も多少必要ですが、これは、量が少ないので、何とかなるかも知れません。水は、細かい隙間がたくさんあるような多孔質のコンクリートにすれば、雨が降った時などの水をためておいてこれも何とかなるかも知れません。しかし、光はコンクリートの内部には入り込まないでしょうから、表面だけの光合成で我慢するしかありません。とすると、コンクリート自体に光合成をさせるよりは、コンクリートの表面に光合成をする物質・生物・機械を貼り付けた方が簡単でしょうね。とすると、一番簡単なのは、植物を表面に生やすことです。これは、今でも、屋上緑化などで使われていますし、愛・地球博ではバイオラングというのが展示されていましたよね。
光合成には光が必要で、たくさんの光を受けるには大きな面積が必要です。ですから、コンクリートであれ、何であれ、「混ぜて」しまったら、内側の部分は無駄になってしまうのです。もちろん、透明なコンクリートを作れば、何とかなるかも知れませんが、それはそれで、光合成をするコンクリートと同じぐらい難しいような気がします。(2007.1.30)
Q:蘭科植物の斑入りについての質問・・・斑入りを作成するには、x線、ウイルス、栄養欠乏状態のクロロシス・・・などが考えられますが、蘭の無菌播種の培地に、ヨードを加えると斑入り植物ができる??そうです。しかしどのステージにどのぐらいの量のヨードを加えればよいのか良くわかりません。もし、お分かりでしたらご返答宜しくお願いします。また、ウイルス以外の方法で、斑入り植物の作成法がございましたら教えてください、(2007.1.30)
A:僕にはどうもわかりませんね。言い訳としては斑入りの葉は光合成をしないので・・・。ヨードの話も聞いたことがありません。僕に比較的近い分野の話としては、葉緑体の発達などに関与する遺伝子の欠損によって斑入りになる例が知られています。ただ、このような場合は、生育ステージや生育光の明るさによって斑入りの程度が変わってしまいます。(2007.1.30)
Q:初めまして。今、卒業論文で、たたき染めについて研究しています。イネ科のエノコログサで実験したところ、葉脈に沿って、ヨウ素でんぷん反応がありました。イネ科の植物は、糖葉なのですよね?なぜ、ヨウ素でんぷん反応が見られたのでしょうか??お忙しいところ、こんな低レベルな質問をしてしまって申し訳ありませんが、ぜひ、回答をお願いします。(2007.1.29)
A:僕自身は、エネコログサが糖葉かどうか実際には知りません。生き物というのは、なかなか一筋縄ではいかなくて、イネ科は糖葉であるといっても、必ず例外はあるでしょうし、普段はあまりデンプンを貯めない植物でもストレス条件下ではデンプンを貯めたりするものです。
個人的には、書物の上での知識と、自分の実験結果が異なったら、自分の実験結果を信じてその上で、自分の得た結果をさらに証拠づける実験系を考えるのが良いのではないかと思います。卒業論文の目的にもよりますが、たたき染め以外でのヨウ素デンプン反応の実験や、暗いところにエノコログサを半日ぐらいおいてからたたき染めをしてみる(光合成産物としてのデンプンが反応しているのであれば暗所にしばらくおくと反応が弱くなるはず)などといった実験が考えられるのではないかと思います。(2007.1.30)
Q:高等植物であるホウレン草から、集光性複合体(LHCII)を単離し、ガラス基板(アミノプロピルトリエトキシシラン-トルエン溶液中でシラン化し、基板表面にアミノ基を導入した)上に吸着させているのですが、その時にリン酸塩緩衝液(pH7)を用いています。このリン酸塩緩衝液の塩の濃度が濃いとLHCIIの吸着が困難になるのは分かっているのですが、なぜリン酸塩緩衝液を用いるのでしょうか。塩の含まれない緩衝液もあると聞いたのですが、そこのところを教えていただきたいのですが、宜しくお願いします。LHCIIを基板上に固定化した後は、メチルビオローゲン、NADPH、白金コロイドを含む溶液中での水素発生です。(2007.1.28)
A:まず、LHCIIを基盤に固定する「一般的な」方法、というのがあるわけではありません。これは卒業研究か何かでしょうか。研究室でリン酸緩衝液を使うにはおそらく何らかの理由があるのだと思いますが、それは、研究室の外の人間にはわかりません。
一般的には、よく使われる緩衝液として、リン酸緩衝液、Tris-HClや、Goodの緩衝液といわれる一群のものがあります。後者の方が、塩の効果がなくてよいのですが、値段は高くなります。リン酸緩衝液は一番安いので、特に高濃度で使う場合(場合によって0.8Mといった濃度で使うケースがあります)などによく使われます。また、紫外部の吸収などを測定する必要がある場合には、紫外に吸収を持たない緩衝液を用いる必要があります。Goodの緩衝液は、極めて一般的ですので、試薬のカタログなどにも説明があると思います。(2007.1.29)
Q:ガラス基板を化学修飾(アミノ基を導入)してLHCII を吸着させていると言ったのですが、LHCII を基板表面に吸着させた場合、その基板表面にどれだけの量が吸着しているかを確認する方法というものはあるのでしょうか。教えていただければ幸いです。宜しくお願いします。(2007.2.8)
A:使ったあとに量を量るのであれば、ガラス基盤を有機溶媒で洗うことにより、有機溶媒中に LHCII の中のクロロフィルが溶け出ると思いますので、そのクロロフィル量を分光的に定量すればよいかと思います。使う前に(非破壊的に)確認するのは少し難しくなります。例えば、分光器に入るサイズの基盤であれば、蛍光光度計でクロロフィルの蛍光を測ることにより、相対的な量を見積もることは可能かと思います。(2007.2.8)
Q:「光合成と湿度の関係」 友人との会話ですが、あまりに、ハウス内の湿度を保ちすぎると葉裏の気孔が湿度により塞がり光合成に悪影響があるのではとのことでした。湿度計でハウス内を測ったわけでもなく、また、具体的な湿度数値を設定して話しているわけではありません。そんなことが、ごく普通のハウス栽培であるのでしょうか?
また、私は、湿度管理について、午前中は、湿度を保持し、午後は湿度を抜くように心がけています。つまり、湿度に関して午前・午後と差をつけています。この管理は光合成力を高めることに期待して行っている作業ですが、有効な手段でしょうか?環境は、加温設備のあるハウス栽培で季節は厳冬期とします。(2007.1.27)
A:「気孔が湿度により塞がり」ということはないと思います。一般に、気孔は乾燥ストレスにより閉鎖します。これは、根が乾燥状態におかれた時に根で作られる植物ホルモンが葉に移動して気孔を閉鎖するのが主です。空気中の湿度の影響については、あまりはっきりした実験結果はないように思いますが、少なくとも湿度が下がる時に気孔が閉鎖することはあっても、湿度が上がる時に気孔が閉鎖することはないでしょう。ただし、液体状の水が葉に触れた場合(つまり雨などの時)は、気孔が閉鎖することが知られています。
純粋に光合成だけに関していえば、湿度が高すぎて光合成ができない場合はないと思います。ただ、病気の中には湿度が高い中で発生するものがありますから、午後はどうかわかりませんが、夜間は湿度を下げた方が良い場合があるかも知れません。ただし、これも植物種によって大きく異なります。一般に葉面積が大きく、蒸散が激しい植物では、高い湿度を要求するものが多いように思います。(2007.1.27)
Q:植物に乾燥ストレスを与えると、Rubisco、クロロフィルは減るのですか?またその理由も教えてください。お願いします。(2007.1.26)
A:「乾燥ストレス」といっても、どれだけ乾燥するか、どの程度の時間ストレスにさらされるか、植物の種類は何か、などによって千差万別だと思います。老化や暗黒ストレスの場合は、場合によっていろいろであるといっても、最終的にはRubiscoとクロロフィルの減少が見られますが、そのような意味での一般的な減少は、乾燥ストレスの場合は見られないと思います。(2007.1.26)
Q:以前、植物に乾燥ストレスを与えると、Rubisco、クロロフィルは減るのですか?またその理由も教えてください。お願いします。と質問した者です。お返事ありがとうございました。現在実験で使用しているものはクサソテツで、クロロフィルには差はないのですが、Rubiscoは乾燥ストレスをかけた後は減っていました。また光合成に関する本でも減ると書かれたものもあるのですが、ほんの少ししか書かれていないため詳しくわかりません。ストレスは2ヶ月、土壌含有量の20−30%としました。乾燥ストレスを与えると、光合成速度は落ちることはわかっており、その原因の1つとしてRubiscoの減少があると考えていたのですがどうもよくわかりません。お願いします。(2007.1.29)
A:なるほど、長期の乾燥ストレスですね。そのような例では、奈良先端の横田さんの研究室でRubiscoが乾燥ストレスによって減少するという発表があったと思います。ただ、減少する理由というのはわかりません。理由といっても二種類あって、どのようなメカニズムでという理由と、どのような得があってという理由がありますが、どちらについてもわかっていないはずです。(2007.1.30)
Q:こんにちは。シロイヌナズナ白化変異体を用いて研究をしています。成長しすぎ材料に使えなくなった個体を放っておいたところ、少々ですが緑化し始めたようです。そこで、「緑化条件が分かればなぜ白化しているかのヒントになるかも」と考えたので質問しました。一般の植物では、緑化する条件とは何でしょう?緑化に辿り着くまでの情報伝達経路のことをお教えいただけると幸いです。(2007.1.22)
A:元の意味での緑化は「光によるクロロフィル合成」です。暗所ではクロロフィル合成系が止まっていて、プロトクロロフィリドが蓄積しているのですが、これは、プロトクロロフィリド還元酵素の活性に光が必要であることによります。暗所ではプロトクロロフィリドとこの還元酵素とNADPHが複合体を形成していて、これが光を吸収すると、クロロフィルの合成がスタートして緑化します。この場合は、プロトクロロフィリド自体が光受容体として働きます。この他、いわゆる光形態形成という様々な反応を含めて緑化という言葉を使いますが、この場合は、フィトクロムや青色光受容体が光を感知して、その信号により様々な遺伝子発現が制御されます。これらの場合の「緑化する条件」は光とそれに続く情報伝達系路になります。
いわゆる白化変異体には、このような緑化に関わる遺伝子の変異体もあるでしょうけれども、多くは、葉緑体の形成に必要な遺伝子の変異のようです。葉緑体は極めて多くの遺伝子の働きによって維持されていますから、その中で必須の遺伝子が壊れれば、クロロフィル合成系の遺伝子が正常でも緑にならないことになります。この場合の「緑化する条件」は正常な葉緑体の形成になります。
いずれにしても、関与する成分は極めて多いのでリストアップするような形での説明は無理かと思います。(2007.1.23)
Q:サクラソウの花びらをペーパークロマトグラフィーをして(展開剤には水を使用しました)何という水溶性色素が入っているかを調べたのですが、文献やネットでさがしてもその色素が何なのかわかりません。何という色素なんでしょうか?分離したときの色は紫と青でした。(2007.1.17)
A:光合成の質問ではありませんが・・・。色素としてはアントシアン系の色素ではないでしょうか。
大学・一般レベルでの質問とのことですが、そもそも何のために実験をしたのでしょうか?普通、実験をするというのは、疑問があって、それを解決する方法を考えてやるものです。今回のご質問の場合、疑問は、サクラソウの花びらに含まれる水溶性色素の名前が知りたい、ということではっきりしていますが、ペーパークロマトグラフィーをしてもそれだけでは疑問に答えることにならないのは明らかですよね。ペーパークロマトグラフィーで名前が印字されるわけではありませんから。文献やネットで調べて、サクラソウの色素が何かがわかったとしても、それは実験とは何の関係もありません。もし、実験によって名前が知りたかったら、少なくとも、いくつかの代表的な色素を精製もしくは購入して、標準として一緒に流してみる、といったことが必要になると思います。実験を成功させるコツは、やってから考えるのではなく、やる前に考えることです。(2007.1.18)
Q:我が家は、ハウス農家を営んでいます。栽培品目は、果菜類(キュウリ)・葉菜類(ニラ)・根菜類(みょうが)です。そこで栽培品目の違いと温度管理と光合成の関係の質問です。
キュウリであればハウス内の1日の温度管理は、午前中は28度前後で、午後は25度前後、日の入りから5時間〜6時間は15度前後で、それから日の出までは、12度前後で管理するのが良いとされています。上記の方法での温度管理は、光合成で得られた同化産物を生産→流転→消費と効率良く動くことができてキュウリが高品質で増収することが出来るベストな管理としたものです。
さて、葉菜類(葉を食べる物)・根菜類(根を食べる物)では品目が違ってくるので、温度管理としては果菜類とは違えた方が光合成で得られた産物をより効果的な品質管理(高品質・増量)に向かわせることが出来るのでしょうか?私は、作物(果菜類・葉菜類・根菜類)が違えば、それぞれに光合成がベストに発揮される温度管理があるのではと思います。つまり、品目によって上記の温度管理を変える必要があるのではと考えます。それとも、作物が色々あっても光合成と温度管理の関係は、その産物を効果的に品質管理に向かわせるにはそれほどの違いはないのでしょうか?ここでの、温度管理とは40度を超える高温やマイナス気温になる管理はしないものとします。また、水・肥料管理やハウス内の温湿度はそれぞれの作物にとってベストの条件として考えます。(2007.1.17)
A:果菜類、葉菜類、根菜類を比べた時に、おそらくある程度の差はあると思います。ただ、実際には、例えば同じ葉菜類の中でも、暖かい地方が原産の植物と、寒い地方が原産の植物では、温度の影響は大きく異なります。そのような、もともと生えていた場所での環境の影響が大きいので、果菜類、葉菜類、根菜類というグループの間での差をきちんと考えるのは案外難しいかも知れません。
実がなるのは夏場の場合が多いのに対して、葉を使う場合は、ホウレンソウのように冬場でも作れますから(花や実が付くと商品価値がなくなるという面もありますね)、ごく一般論としては、果菜類の方が葉菜類よりも低温に弱い場合が多いように思います。ただ、グループの間での差というよりも、種と種の間の差の方が、一般的には問題になるのではないでしょうか。グループ間で、というよりも植物の種類によって温度管理を変える必要があるように思います。
僕のところでは、光合成の研究材料としてキュウリと、これは園芸作物ではありませんが、シロイヌナズナを栽培していますが、この二つは必要とする温度が全く異なるため、同じ場所では栽培することができません。(2007.1.17)
Q:葉の葉緑素をアルコールで抜いた葉をまた光に当ててももうその葉には葉緑体はできないのですか?また、葉緑素を抜かずに葉の一部を銀紙などで包んで長時間光に当てたら、包んでない部分と包んだ部分に葉の色の違いはみれますか?(2007.1.8)
A:葉をアルコールに浸してしまうと、葉緑素は抜けてしまいますし、タンパク質なども変性してしまいますので、葉緑体は完全に壊れてしまいます。そのような状態になったら、もう一度葉緑体を作ることはできません。
次の質問の「葉の色の違い」というのは、葉そのものの色の違いではなくて、ヨウ素デンプン反応を行なった時の色の違いのことでしょうね?葉そのものは光合成をしても別に色が変わるわけではありません。クロロフィルを抜かない場合は、クロロフィルの色が邪魔をしますので、差を見るのは難しくはなりますが、不可能ではありません。ただ、その場合でも、ヨウ素液が葉の中にきちんと入るように、あらかじめ葉をゆでるなどしておくことが必要になります。アルコールでクロロフィルを抜く操作には、単に色を抜くだけでなく、ヨウ素液が葉に入りやすくする効果もあるのです。従って、その代わりになる作業が必要になります。その場合、やはり葉緑体は壊れてしまうでしょう。(2007.1.8)
Q:植物単位重量を光合成するために使われた熱量と同じ単位重量を燃した時発生する熱量は同じでしょうか?(2007.1.8)
A:「光合成をするために使われた熱量」というのは「光合成をするために使われたエネルギー」ということでしょうね。光合成は光をエネルギーとして使いますので。結論から言うと、同じではありません。光合成の効率というのは太陽電池などに比べれば高いのですが、有機物を固定するまでのエネルギー効率として考えた場合は、100%にははるかにおよびません。全ての不可逆的な化学反応と同じで、必ず失われる部分があります。その失われる部分は、有機物を合成する過程で熱になってしまいますので、最後の有機物を燃やした時のエネルギーは、必ず、最初に使ったエネルギーよりも小さくなります。(2007.1.8)