The Music of Sunlight
Wilbert Veit, Jr.著、Sunlight Books、2000年、169頁、$19.95
本書は、昨年オーストラリアのブリズベンで開かれた第10回国際光合成会議の会場で希望者に配られたものである。内容は、光合成におけるトムキンスものといった感じである。ガモフの有名な物語では、良識あるトムキンス氏が主に奇妙な物理の世界に引き込まれていくが、本書では、しゃべる形容詞の8割が"cool"という男の子(中学生ぐらいか?)が、電子となって光合成の電子伝達の世界を経験するというもので、GovindjeeやJohn Whitmarshが助言しているだけあって、サイクリックな電子伝達やb/f複合体上のQサイクルまできちんと描かれていて、細部にこだわりが感じられる。主人公があまり優等生でないのも好感が持てる。英語は、口語的表現に慣れさえすれば平易である。一体このような本を誰が読むのか、という疑問もあるが、「不思議の国のトムキンス」にしても読者層は限られているのは同じだろう。このような本は、若い世代に光合成の紹介をする必要性を考えると貴重な存在であろう。現在、日本光合成研究会では「光合成事典」を編集中であるが、光合成研究の将来に必要なのは、むしろこのような本なのかも知れない。 http://www.molecadv.comに出版社の説明があるので興味のある方は訪ねてみるとよいだろう。