クイズ植物入門
田中修著、講談社ブルーバックス、2005年、224頁、903円
日本植物生理学会では、学会の質問コーナーに寄せられた質問から面白いものを選んで「これでナットク!植物の謎」としてブルーバックスを1冊2007年に出していますが、その二年前に出された本書も、基本的には植物生理学の話題が中心となっています。内容的にもほとんど同じ話題を取り上げている例も多いのですが、やはり切り口には違いがみられます。「植物入門」ではどちらかというと基本的な部分を知識から解説している感じがするのに対して、「植物の謎」の方は質問コーナーが母体になっているだけに、ある意味で偏った、マニアックな質問も含まれていますし、回答者が「わかりません」と兜を脱ぐケースも見られます。また、夏休みの自由研究などに関する具体的な話題も多く含まれます。それに比較すると本書は安定感はありますが、教科書的な常識から逸脱する部分がないことが少し物足りない印象を与えることは否めません。ところどころにコラムが挿入されているのですが、その内容が比較的本文に近いこともその印象を強めているように思います。例えば、コラムの部分には現在進行形の最先端の研究の動向を易しく紹介する、といった本文と機能を分けた書き方をすると印象が変わったかもしれません。とは言え、紹介するに足る面白い話題を過不足なく一冊の本に仕立てているという点では十分に読むに値する本になっています。「植物の謎」ではついつい難しくなりがちな回答も、本書では極めて平易に丁寧に解説されているのには感心します。本書の方がより初心者向けなので、もしどちらも読んでいない方は、こちらを読んでから「植物の謎」に進むとよいかもしれません。