ヒトはおかしな肉食動物
高橋迪雄著、講談社、2005年、244頁、1600円
ヒトというものをその生き方の戦略、特に生殖戦略の面から様々に眺めてみた、という本です。生殖などを進化の道筋の中で選ばれてきた戦略であると考える部分は、しばらく「生態学研究室」というところにいた評者にとってはなじみ深い論理展開で、面白く読み進むことができました。その中で、アミノ酸の摂取のバランスが悪い時に、過剰なアミノ酸の分のエネルギーは熱として放散しなくてはならないという概念は、今まであまり考えたことがなく、考えさせられました。マウスがケージの中で走り回ることが、過食と消費による必須アミノ酸の確保であるという考え方は、なるほどとは思いましたが、バランス栄養食を与えたら、あまり走らなくなるのでしょうか。そのあたりが気になりました。草食動物と肉食動物の違いを考えるところも、あまり普段考えたことがない部分で、反芻胃によってセルロースを分解する部分が、いわば草食動物のエッセンスである、という概念は、新鮮でした。専門雑誌に連載されていた記事をまとめて本にしたとのことで、内容にやや重複が多い気はしましたが、ともかく面白く読めますし、一読の価値はあると思います。装丁も変わっていて面白いですね。