植物が地球を変えた(植物まるかじり叢書1)

葛西奈津子著、化学同人、2007年、163頁、1200円

本書は、植物生理学会の企画で発行される「植物まるかじり叢書」の第1号である。サイエンスライターがいくつかの研究室を訪問して、その研究内容についてレクチャーを受け、それを素人向けに紹介する形を取っている。内容的には、日本光合成研究会が協力し、光合成の仕組みとその地球環境へのインパクトが中心課題となっている。面白いのは、植物生理学会の本である割には、生態学的視点、進化や環境との関わりといった、どちらかというと、従来の植物生理学の枠組みとは少しずれる点に力点が置かれている点である。これは、本書の監修者である寺島一郎さんの視線であると同時に、光合成という学問分野の、分野横断的な性質を示していると思われる。本書にも登場する、日本光合成研究会の会長である伊藤繁さんの所属は、そもそも物理学科であるし、高校でこそ光合成を「生物」の範疇で勉強するものの、光合成という学問は本来は生物の枠組みにとどまるものではなく、物理、化学など、幅広い分野にまたがる学問であろう。そのような特色が、もう少し強く打ち出されてもよかったかも知れない。

書き下ろし 2007年4月