プリオン説はほんとうか?
福岡伸一著、講談社ブルーバックス、2005年、246頁、900円
狂牛病のプリオン説を唱えたプルシナーはノーベル賞を受賞しましたが、一方で、その説の真偽や、研究スタイルにはいまだに批判がつきまとっています。本書は、狂牛病、羊の病気であるスクレイピー、人のヤコブ病の間の関連が発見されていく歴史的経緯や、プリオン説が唱えられるに至った経緯から始まって、実際のデータの再検討まで、極めて広範にわたって丁寧に解説されています。書き方としては明確に反プルシナーの立場を取りつつも、全体としては客観的にデータを検討している印象を受けます。プリオン説を裏付けるとされる図の横軸を、もと論文のログスケールからリニアなスケールにすると、むしろプリオン説では説明できない現象を示しているところを紹介するくだりなどは、論文を批判的に読む例として大学院生などにも読んで欲しいところです。非常に面白く読みましたが、実際に実験をしたことのない人にどの程度理解されるのか、という点についてはやや心配ですね。