藻類30億年の自然史
井上勲著、東海大学出版会、2006年、472頁、3,800円
すばらしい教科書ですね。よく、「何がわかったか」しか書いていない教科書がよくあって不満を覚えるのですが、この本では「どのような謎がさらに残されているのか」が繰り返し強調されていて、若い学生さんが読むと非常に刺激的でしょう。藻類の研究者人口がこの本によって増えるのではないでしょうか。僕自身、光合成関連の講義をするにあたって、地球化学の本などを勉強し、著者の井上先生の研究室のホームページからは藻類の写真や系統樹の図などを無断拝借して、地球と生命における植物・葉緑体・光合成の進化と意義を強調するのですが、この本をみると、僕が勉強したことなどは光合成から地球環境問題までほぼ網羅されていて、著者の幅広い勉強ぶりがうかがわれます。また、副題に「藻類からみる生物進化」とあるように、光合成や真核生物の起源に関しても深く考察されていて、一読の価値があります。