植物の観察と実験を楽しむ -光と植物のくらし-
松田仁志著、裳華房、2004年、159頁、1,600円
本書は裳華房から出ているポピュラー・サイエンスの1冊で、対象読者は中学生から高校生であろう。光発芽、光形態形成、光周性、光合成などのテーマそれぞれについて、高校生レベルで十分できる実験の紹介と、関連する知識の解説がなされ、バランスもよい。大学にいるものからすると、解説が比較的専門的な割には、実験が簡単な気がするが、これは、高校生などが家庭で実験をすることを考えると、設備の面の制約からぎりぎりのところなのかも知れない。テーマの中には根の観察など、直接、副題にある「光」とは関連のないものも含まれるが、全体を通してスタイルが統一されているので、違和感はない。高校レベルの生物は、一般に暗記科目と見られて理系の生徒からは逆に敬遠される傾向がある。そのような状況を改善するためには、このような生物の様々なメカニズムを実験から探る本の存在は貴重であろう。さらに欲を言えば、単にメカニズムを明らかにするだけでなく、それぞれのメカニズムがどのような必然性をもって発達してきたのかについて理解させることができればと思う。本書でも、光発芽については、自然界で遠赤色光が豊富に存在する環境がどのような環境であるかまで考察しており、「なぜ」光発芽という性質が植物にとって有益であるかがよくわかる。他のトピックでも、このような姿勢が見られればと思う。