植物生態生理学(第2版)

Walter Larcher著、佐伯敏郎・舘野正樹 監訳、シュプリンガー・フェアラーク、2004年、350頁、5,700円

学生の頃は教科書を読まないことで有名であった評者も、教える立場になると教科書を読まざるを得ない。特に、自分の直接の専門ではない周辺分野に関しては講義に厚みを持たせるためにも勉強が必須である。そこで、Larcherの教科書を読んでみた。通読してみて、まあ一人でよくこれだけ広範囲の話題をカバーしたものだと感心した。環境条件の詳細な記述から始まって、光合成、無機物代謝、水分生理、成長生理、ストレス生理まで、極めて広い範囲のトピックを網羅している。加えて、可能な限り生態学的な現象の背景にあるメカニズムを生理学的に説明しようとする意志が感じられて好ましい。「生態生理学」という題名だが、重点は生理学にあるようだ。植物と環境の関わりを研究しているものにとっては読み甲斐があった。情報が盛りだくさんなため、やや羅列的な印象は受けるかも知れないが、手元に置いてリファレンスとして使うには最適な教科書であろう。個人的には、師部輸送のメカニズムについてのコラムが面白かった。評者の専門分野と重なる「チラコイド膜反応」には不正確な記述がが多いが、光合成の教科書ではないので許容範囲内かとも思う。 読者対象は、大学院生以上という感じだろうか。専門用語も説明なしに使われることが多い。評者にとっては、リゾダーム、アーバスキュールなどといった言葉には説明が欲しかった。最後に編集上のことであるが、図の中に、縦軸と横軸でフォントが異ってたり、さらにはキャプションが反対に取り違えられていたりするものもあった。増刷時に修正を望みたい。

生物科学ニュース 2005年3月号(No. 399) p.7