光環境と生物の進化
大石正、小野高明編、共立出版、2000年、180頁、3,400円
頂いておきながら全部読んでいなかったものがまだあることを思い出して読みました。本書は、「光が拓く生命科学」というシリーズの中の1冊で、日本光生物学協会の編集によるものです。この本は第1章の「地球の光環境史」が出色のできで、地球における光環境というものが3名の著者(中島映至、中根英昭、清水勇)によって、簡潔かつ生き生きと描かれています。これが導入になって、第2章以降で生物の進化に与える光環境の影響が論じられていればすばらしい本になったと思いますが、残念ながら、第2章以降は光環境との関わりはおざなりにしか扱われていません。色覚を扱った2つの節、「視物質と分子進化」(徳永史生・小林優子)と「霊長類の進化」(相見満)では、光環境との関わりについてある程度論じていますが、ほかの節では「光にある程度関係のある」研究の紹介といったレベルです。たまたま、上の本の著者の黒岩先生も節を1つ書かれていますが、やはり、自分の研究の紹介で、光環境についてはほとんど論じられていません。生物発光を扱った節なども、それ自身としては面白いのですが、やはり光環境との関わりは希薄です。 これは編者の責任でしょうね。もっとも題名を「光環境」と「生物の進化」という2つの別々のトピックに関する文章を集めたもの、と解釈すれば、それはそれで理解できますが。