英語には昔から苦労してきました。中学の頃の英語など悪夢そのものです。単語のスペルなど、seeとseaでどちらが「海」で、どちらが「見る」なのか、どうやって判断しろというのか、見当もつきませんでした。そのような文句を先生に言うと、当然、「それは判断するのではなくて覚えるんだ。」ということになります。
そんな中で、名詞の複数形の授業をしていたある日、同級生の一人が、「複数形のsを発音する時に濁るかどうかは、規則性があって・・・」と言い出したので、そんな規則があるなら英語も楽になるかもしれないと胸を躍らせました。ところが、英語の先生はその発言を「英語をしゃべる時に規則など考えていたら間に合わない。考えなくても自然と口に出るようにしないといけない。そもそも英語の規則など例外が多いから、覚えるしかないんだ。」と遮ってしまいました。結局その規則を聞くことはできず、以来英語がさらに嫌いになったのでした。
規則を考えていたら間に合わない、というのは本当だとしても、だいたい、こちらは流暢に話すどころか、ひとつの単語をどのように発音するのかすら、わからない状態です。その発音をいちいち人に尋ねなくてもわかる方法があるなら、なぜ教えないんでしょうかね。40年近くたって、教える立場になった今でもやはり理解できません。
高校に入るとしょうがないので、自分で規則をこしらえました。例えば、rightとlightといったRとLの区別にはいつも泣かされていたのですが、Lは光るものと自分で決めました。そうすると光は当然lightの方になります。右は特に光らないのでrightです。コレクションは金ぴかものも入っているでしょうからcollectionで、訂正は光らないのでcorrectionです。もちろん、例外はたくさん出てくるのですが、規則に合うケースの方が多くなるように最初に規則を決めれば、例外は最大でも50%です。100の単語を覚える時に、50未満の例外と規則を1つを覚える方が、100の単語を全て覚えるよりも効率がよいのは明らかです。このような工夫をして、天性の記憶力の悪さをカバーして何とか大学受験を乗り切ったのでした。
もっとも、この汗と涙の物語を聞いて妻がもらした感想は、「ふーん。頭の悪い人は苦労するね。」という一言でした。
2013.06.17(文:園池公毅/イラスト:立川有佳)