フィコビリンを薄層クロマトグラフィーで分離できないか?
紅藻類やシアノバクテリアにはフィコエリトリン(紅)やフィコビリン(青)といったきれいな色の光合成色素が含まれますので、それらをクロロフィル(緑)やカロテノイド(黄)と一緒に見たいと思うのは人情です。しかし実際にやろうとするとうまくいきません。この原因は、色素としての性質の違いにあります。色素のうち、クロロフィルやカロテノイドは、分子がタンパク質に配位結合をしていて、有機溶媒によってタンパク質から抽出することができます。しかし、フィコビリンは、色素分子がタンパク質に共有結合をしているので、有機溶媒を入れてもそこに抽出されません。これが一番大きな理由です。薄層クロマトグラフィーの場合は、そもそも有機溶媒で抽出できる画分を分けることになるので、フィコビリンを分けることはできないのです。フィコビリンは有機溶媒には溶けませんが、タンパク質ごと水には溶けるので、有機溶媒に溶けなかった部分を有機溶媒を完全にとばしてから水に溶かすと、きれいな色の溶液になると思います。薄層クロマトグラフィーの展開溶媒は別に有機溶媒でなくてはいけない、ということはないので、原理的には水でフィコビリンを展開することも可能なはずですが、大きなタンパク質ごと展開することになるので、実際にそのような方法で分離するのはなかなか難しいと思います。