落葉樹は呼吸のための酸素を冬にどうやって取り込むのか?

落葉樹は、冬場には光合成をしませんが、常にある程度の呼吸はしています。呼吸には、酸素が必要ですから、それをどこから取り込んでいるのか、という疑問が生じるのは当然かも知れません。教科書などには、葉の気孔において、二酸化炭素を取り込み、酸素を出しているような絵が描いてありますから、光合成をしない夜間には呼吸に必要な酸素を逆に気孔から取り込んでいるというイメージがわくのだと思います。その場合、確かに、葉を落としてしまう冬の落葉樹では呼吸のための酸素の取り込み口がなくて困るように思います。

実は、共に空気中に含まれる酸素と二酸化炭素には大きく違う点が一つあります。それは濃度で、二酸化炭素は空気に0.04%程度含まれているに過ぎませんが、酸素は20%も含まれています。つまり、同じ体積の空気を取り込んでも、酸素は二酸化炭素の500倍も取り込めることになります。さらに、植物の呼吸の速度は、光合成速度の最大値に比べると1/10かもっと低いこともあります。つまり、呼吸のために取り込む必要のある空気の量は、光合成の場合に比べて1/5000以下でよい、ということになります。ですから、葉の気孔がなくても、いわば「しみ通ってくる」空気だけで、充分呼吸のための酸素は確保できるのです。というわけで、冬の落葉樹や、種子、球根などでも、やはり貯めておいたデンプンなどを分解して、呼吸によってエネルギーを得て、葉を出したり花を咲かせたりすることができるのです。

ただし、これはあくまで周りが空気の場合です。酸素は、水に溶け込める濃度がさほど高くありませんので、水に覆われているとたまに問題になる場合があります。よく、鉢物に腰水(鉢の下にお皿を置いて水をためておくこと)はよくないといいますが、この原因の一つは、根が水に覆われてしまうと呼吸が阻害されかねない、ということにあるようです。