なぜ植物は呼吸もするのか?

確かに、植物は光合成によってATPを合成することができますから、それとは別に呼吸によってATPを作る必要はなさそうに思えます。しかし、問題点が2つあります。第一に、植物が葉緑体で光合成によって作ったATPを細胞質で使う場合、ATPの形で葉緑体から細胞質に運び出されるのは主要な道筋ではありません。エネルギーは炭素3つの物質の形で細胞質に運び出されます。従って、細胞質でATPを必要とする場合には、その運び出された物質を糖に変え、解糖系を経てミトコンドリアでATPに変換することになります。ミトコンドリアは葉緑体と違って、ATPをそのままの形で細胞質に輸送するシステムが発達しているので、細胞質やその他のオルガネラでATPを使うことができるようになります。つまり、葉緑体の内部では、必要なATPを直接合成できるけれども、それ以外の細胞質やオルガネラ、さらには別の組織、例えば根ではミトコンドリアがないとATPを得ることが困難なので、植物にもミトコンドリアとその中での呼吸が必要なのです。

もう一点は、貯蔵の問題です。光合成ができない夜の間でも、また落葉樹などであれば冬の間でも、生きていくためには一定のエネルギーが必要です。そのエネルギーは昼または夏の間に光合成で稼いでおくわけですが、それをATPの形で貯めようと思うと非常にかさばるのです。そのため、よりコンパクトにエネルギーを貯められる、デンプンなどの形で貯蔵します。その場合、使う時にはデンプンを分解してATPを作らなくてはいけませんから、そのために、ミトコンドリアとその中での呼吸が必要になります。