太陽の光のうちどれだけが光合成に使われますか?

せっかくだから太陽から出発しましょう。太陽の放射するエネルギーは3.8 x 1026 Wと言われています。この光は四方八方に広がるので、このうち地球に届くのは20億分の1程度の1.8 x 1017 W程度です。さらにこのうち、大気圏と通って地表に届くのは約半分、届いた光の内光合成に使える可視光の光はさらにその半分です。このうち、どれだけが植物や藻類に吸収されるのかという地球規模の見積は残念ながらよくわかりません。

次に植物の葉にあたった光のエネルギーの行方を考えてみます。あたった光のうち光合成色素によって吸収される割合が約9割、吸収された光によって光合成の反応が引き起こされる割合はほぼ100%です。ですから「使われるエネルギー」ということでしたら、約90%ということになります。光合成の初期反応の結果、光のエネルギーはATPやNADPHといった化学エネルギーに変換されますが、この化学エネルギーはこの「使われる」光エネルギーの最大で38%程度です。そして、この化学エネルギーで二酸化炭素から糖が合成されますが、合成された糖の持つエネルギーは使われたATPやNADPHのエネルギーの80%程度です。つまり、糖の合成の段階で、糖の持つエネルギーは吸収された光エネルギーの30%程度になります。これが、光合成の反応としての効率の上限の値となります。実際の植物では昼には光が強すぎて無駄になる分があるかも知れませんし、夜には(実際には昼間も)呼吸によって失われる分があるでしょう。これらも計算に入れると、植物が有機物としてエネルギーを固定する効率は、吸収した光エネルギーに対して最大でも5%程度、実際の野外の畑などでは最大でも1%程度、通常の植生では0.1%程度だと見積もられています。