MultiCultivatorによる藻類の培養
2026.2.23最終更新
以下は、8本の試験管について異なる光量及び光質の光を照射してシアノバクテリアや微細藻類を培養することができるPSI社のMultiCultivatorのプロトコールです。オプションユニットにより一定ODで培養する連続培養が可能です。
構成
Photon Systems Instruments社製Multi-Cultivator MC 1000-MIX
- 85 mlまでの培養液を入れられる8本の試験管で同時培養可能
- OD (720 nm, 680 nm)と温度が測定可能(ODは、630 mm-750 nmのバンドパスフィルターを付けたPINフォトダイオードにより測定している)
- 光源は、UV405, B450, B475, WW, G530, R615, R660, R730, All colorsが利用可能(最大で合計1000 μmol m-2 s-1)
- 隣接する試験管への光漏れは最大2%程度
- デフォールトの光量は、球状センサーでキャリブレーションされているため、平面センサーで測定した値とは大きく異なる(球面センサーで測定しても異なる:下の参考情報を参照)
- キャリブレーション値は、ファームウェアをアップデートすると失われるため、その際は、再度キャリブレーションする必要がある
- その場合、キャリブレーションは、暗所で、試験管1本ごとに行う
- キャリブレーションの値は、上書きされれば失われるので、何らかの形で保存しておいた方がよい
- 試験管は3つの穴の開いたシリコンゴム栓で蓋をするようになっている
Cooling Unit AC-710
- 15℃から60℃の間で培養可能(加温は本体の150 Wヒーターによる)
- AC-710 water pumpとHailea HC-130A冷却器からなる
Turbidostat TS-1100
- 連続希釈培養が利用可能
起動
- 主電源(緑色の平たいスイッチ)をonにする
- パソコンを起動する
- 隠れているメニューからBioreactor Clientを選ぶ
- デフォールトでは以下の情報でログインする User: bio-reactor PW: reactor
- MC-MX O62-groupを選択する
- Protocolで条件を設定する
- 右のスペースの項目を選んで、真ん中のスペースで必要な条件に変更する
フロントパネルの表示の確認
- 左側のREADY(緑色)は温度制御により目的温度に達したことを示す
- 左側のHEAT(オレンジ)はヒーターがオンになっていることを示す
- 左側のCOOL(青色)はAC-710からの冷却水を循環させていることを示す
- 左側のWATER(赤色)は水槽の水位が低下していることを示す
- 中央の2行のディスプレーに機能が表示される
- 右側の[M]は「戻る」もしくは「終了」する際に使う
- 右側の[S]は「選択」「保存」「on/offの切り替え」の際に使う
- 右側の上矢印はメニューを上に行くか数字を増加させる際に使う
- 右側の下矢印はメニューを下に行くか数字を減少させる際に使う
試験管の設置
- OD測定は、試験管を通して行うので、試験管に汚れがない状態になっている必要がある
- 必要に応じて、70%エタノールを含ませたティッシュで試験管の外側を拭く
- 各種測定センサーは試験管の中央を測定するので、単なる培養器としてではなく、測定機器として使用する際は、バブリングに使うガラス管は付属の細いものを利用し、正面から見てガラス管が試験管の左右の壁に沿うようにする
- シリコンゴムでのガラス管の位置は右か左に寄せ、その上で、シリコンゴムをわずかに傾けて、ガラス管がさらに試験管に沿うようにする
- OD測定時には、最初に、培地のみの試験管をセットしてODのゼロ合わせを行う(本体のフロントパネルからでも、ソフトからでも可能:後ろの参考情報を参照)
- その後、実際にODがほぼゼロになったことを確認してから、試験管を実際の培養試験管に取り換えていく。この際、水位の変動を避けるため、すべての培地試験管を取り出してからすべての培養試験管に取り換えるのではなく、1本ずつ取り換えてゆくのがよい
Cooling Unit AC-710の準備
- HC-130冷却器のスイッチを入れると、前面のディスプレーに冷却水のリザーバーの実際の温度が表示される(ただし、現在の機械は初期不良で一部のLEDが欠けているが、数字は理解できるはず)
- 温度設定は、MC1000の本体のディスプレーから行う。「Sensors > Temperature > 15°C」により最低温度を15℃に設定し、次に「Sensor > TControl > ON」によりコントロールをonにする
- 冷却水自体の温度は常に5℃に設定する(冷却器のフロントパネルのSETボタンを長押しし、点滅する値をUPまたはDOWNのボタンで5に変え、SETボタンを押すと設定される)
- 温度制御は、MC1000の側が、冷却水の循環量を調節することにより行っている
- 冷却水のリザーバーの水位は、半分を下回らないように注意する
生育曲線の測定
測定開始前- OD=0.4を超えたあたりからOD測定が正確ではなくなってくるという話もあるので、開始ODは0.05程度から始める方がよいかもしれない
- 培養液は30 mlでは足りず、40 mlでぎりぎり、50 mlあったほうがよい
- BG11のみが入ったきれいな試験管をMCに入れ、フロントパネルからSettings > OD Calibration > Runにより0点調整をする(この際、ODが高い培養液が入りっぱなしになっているとErrorが出るため、細胞の入った試験管などは取り出しておくこと)
- フロントパネルのSensor > OD Measure > Runで0点調整後のODが0になっていることを確認する
- 実際に細胞を植菌した試験管は、その入れる順番、試験管の向きなどを、可能な限り0点調整の際と同じにする
- ガラス管が正面から見て壁際に沿っていることを確認する(ガラス管が中央に来るとセンサーによる測定が妨害され、値が異常になる)
- Startボタンを押す
- これ以降は、それ以前のODなどの記録は見ることができなくなるので注意する
- Startボタンを押さなくてもODや温度の測定自体は自動的に行われるため、記録をとるのではなく様子を見たいだけの場合はボタンを押す必要はない
- 培養している間は、恒温槽の水位、バブリングの強度、ガラス管の位置が変化していないかに常に注意を払う
- Exportボタンを押す
- 左のスペースから保存したいデータにチェックを入れる
- ODとCurrent Temperatureの両方にチェックを入れるとグラフを作りにくくなるため、必要ない場合はCurrent Temperatureのチェックは外しておくとよい
- Durationで、どの期間のデータを保存するかを選択する
- OKを押すとExportが完了する
- Stopボタンを押すとそれまでのデータが見られなくなるため、必ずExportがうまくいっていることを確認したうえでStopボタンを押すようにする
プロトコールの作成
定常条件で細胞を培養する場合には、フロントパネルから光量や温度を設定することができるが、条件を変化させる場合(変動光など)には、Protocolから設定する必要がある
- Protocolを開く
- 右のスペースから設定したい項目を選ぶ
- (Actinic Lightの場合であれば)真ん中のスペースの▼がついている選択肢は
- 真ん中のスペースの+を押して、条件を加えていく
- 例えば、試験管1について730 nmのActinic light (Light1)を5 μmol m-2 s-1で5分照射、20 μmol m-2 s-1で30秒照射するのを繰り返したい場合、右側のスペースからActinic light#1-730 nmをチェックし、真ん中のスペースで以下のように入力する
- 上記のうち、「<<」は、前段階の設定と同じであることを示す
- 実験開始時(Startを押すとき)に、プロトコールをどれだけの時間続けるかを選ぶことができる。指定した時間は設定したプロトコールがずっと繰り返されることになるので、特定の回数繰り返したいときには、1回のプロトコールのかかる時間に繰り返し回数を掛け算した時間を実験継続時間を指定する
- 他のActinic Lightでも同じ条件に設定したい場合、真ん中のスペース右上にあるImportボタンを押してから、右のスペースで他の項目のチェックを押し、ImportボタンのとなりのExportボタンを押すと条件がコピーされる
- Protocol全体を保存したい場合は、画面の上方にあるSaveボタンから保存すると、次からはメニュー上のLordボタンから同じProtocolを呼び出すことができる
・Constant:入力した条件(value)で光量を(Durationで設定した期間)一定に保つ
・Linear:Start valueからEnd valueまでの光量を(Durationで設定した期間をかけて)直線的に変化させる
・Sine:MinimumからMaximumの間で光量を正弦波の形で変化させる(この際、MinimumからMaximumを経てまたMinimumに戻るまでの時間がDurationの値になる)
Duration 00:05:00 Constant value 5 μE
Duration 00:00:01 Linear Start value << μE
End value 20 μE
Duration 00:00:30 Constant value << μE
Duration 00:00:01 Linear Start value << μE
End value 5 μE
参考情報
試験管とバブリング用ガラス管の注意点
- ガラス管の高さを各培養管でそろえる
- ガラス管の位置が高すぎると試験管の底に細胞がたまりやすくなるので注意
- バブリングの空気を水に通すことは必須ではない
- 水を使うときには、逆流の可能性があるので、一部の試験管だけを使う場合にも8本ともエアバルブをあけておくとよい
- 装置の機能でODを測定するわけでなければ、通常の綿濾管とシリコ栓を用いてバブリング用のチューブに接続することにより培養可能(ただし、その場合、バブリングが弱くなりやすく、特に空気を水に通している場合には綿が濡れることにより空気がさらに通りづらくなるため注意が必要)
- 専用の通気用ガラス管を滅菌する場合は、通常の綿濾管と同じように試験管をセットしてオートクレーブする
- 現在は、管(ガラス管、Turbidostat用の管、シリコン管)に竹串を使って綿を詰めてから滅菌している(通気用ガラス管の中に綿が詰まると取り出せなくなるため、押し込みすぎないようにする)
恒温槽の注意点
- 水位はぎりぎりまで高くした方がよい。▽で示された水準線では低すぎる
- 水は約1―2日で蒸発するので、長期間培養する場合にはその都度水を補給する必要がある
照射光量の注意点
- 装置の測定による光量と、試験管の中の細胞が受ける実測光量には乖離があり、それは乖離の程度は光源によっても異なる
- 2025年12月の時点では、All colorsで40 μmol m-2 s-1に設定した上で、球面センサーで試験管の中の光量を測定すると、150 μmol m-2 s-1であったので培養開始時に実際の光量を確認することが推奨される