全学自由研究ゼミナール
光合成の科学
東京大学・教養学部 夏学期 学部1,2年生対象 6号館一階126/127教室
月曜日5限(16:20−17:50) 担当 佐藤、寺島、箸本、園池、池内、増田、和田、田中、村田
平成21年度スケジュール
4月20日 佐藤 全体の紹介とイントロダクション
4月27日 寺島 光合成器官の構造など
5月 7日 和田 光合成膜の物質構成など
5月11日 園池 初期反応など,光合成一般の話も
5月18日 増田 光合成色素など
5月25日 池内 光捕集系など
6月 1日 池内 電子伝達など
6月 8日 村田 人工光合成など
6月15日 田中 窒素同化と炭酸同化,遺伝子発現
6月22日 和田 光合成膜の合成,環境適応
6月39日 増田 シグナル伝達,糖代謝,光形態形成,環境
7月 6日 箸本 色素体の分裂,葉緑体運動,進化
7月13日 佐藤 進化,ゲノム,まとめ
本講義は、地球生態系を支える光合成反応のメカニズムと重要性を学ぶ講義です。
成績評価
毎時間、授業の最後に感想や意見を書くミニレポートを実施します。成績は、ミニレポートと出欠によって決定します。
講義に対するコメントと解説
5月11日の園池担当分の講義に対する学生さんのコメントに関して、そのうちの2つについては説明しておいた方が良いのではないかと思い、以下に解説しておきます。
- 動物のバイオマスに占める人間のバイオマスの割合が高い、という話をしたところ、そもそもヒトを生態系ピラミッドに当てはめること自体に疑問を感じる、というコメントがありました。産業革命以降、人間と自然は一種の対立概念として扱われることが多くなりましたから、自然の生態系ピラミッドに人間を当てはめることに違和感を感じること自体は理解できます。ただ、生物学的に見た場合は、人間も動物の一種で、そのエネルギー源として他の動植物を食べることが必要な点では何ら変わりません。地球環境のバランスを考える上では、人間も自然の一部である、という認識が今後重要になってくるのではないかと思っているのですが・・・
- キュウリの低温傷害の話で、光があたっている低温処理時には光合成が低下し、光があたっていない低温処理時には光合成に変化がないことを紹介しました。この点に関して、光があたっていない状態では、時間が経っても酸素発生量が変化しないのは当然ではないか、というコメントがありました。これについては、説明が不足だったかも知れません。紹介グラフでは横軸が低温処理時間、縦軸が酸素発生量となっていましたが、この「酸素発生量」というのは、それぞれの処理時間の終わりに葉を取りだして、普通の温度で(当然光をあてて)光合成を測定した値です。環境応答の研究の場合、植物の環境(ストレス)条件としての光や温度と、光合成を測定する際の光や温度を区別する必要があります。ある条件で植物をしばらくおき、その後、別の条件(通常は最適条件)で光合成を測定するということがよく行なわれます。「暗所においた葉の光合成」というのは「暗所での光合成(=当然0)」という意味にも使われますが、「暗所においたあとに測定した光合成」という意味に使われることも多いのです。