ポストゲノム時代の生命科学 第4回講義
昆虫の擬態と変態の分子機構
第4回は、遺伝システム革新学分野の藤原先生が担当されました。
今回は、レポートに課題が設定されています。
課題:昆虫以外で、擬態の成立している例(極端な場合は、人間社会などでの例でもかまわない)を挙げ、モデル、信号発信者、受信者とその擬態のメリットなどについて考察せよ。
寄せられたレポートの中からユニークだったもの3つを以下に載せておきます。
擬態の例:<ラフレシア・アルノルディー> ー東南アジアに生息する寄生植物。ブドウ科植物の茎に寄生し、最大で直径1.5m、重さ8kgの花を咲かせる。地下に根茎があり、これから死骸臭のある肉色で雌雄で異なる花を生ずる。いわゆる”世界最大の花”として有名であるー
・・・植物である点では通常の擬態とは異なりますが、モデルは動物の死骸、信号発信者は本植物、信号受信者はハエなどの死骸に群がる昆虫である、という点では、擬態と呼んでも差し支えないのではないでしょうか。この擬態のメリットは、ハエなどの昆虫に花粉を運ばせられることでしょう。雌雄異花であるため、虫媒が必要不可欠で、視覚的(肉色)にも嗅覚的(死骸臭)にも動物の死骸に似せていると言えましょう。
昆虫は、ものを「考える」ことはできません。それにもかかわらず、彼らは実に多様な姿で自然に紛れ込んでいます。進化のストラテジーの凄さを実感できる講義でした。
擬態は生物間の関係の上に成り立つという論理がおもしろかった。鳥の糞の擬態を始めて知ったが、言われなければ気づかない。世の中には擬態をしているつもりの種がいて、人間以外の別のある種にはそれが効いているけど人間はまだその関係に気づいていない、という擬態の可能性がおもしろい。以下、課題。主体が生物でないのが若干難点。しかし、人間は他の生物とは違い、道具のような文化的所産も含めて人間だと私は考える。[かかし]モデル:人間。発信者:人間の意図を介した人形。受信者:鳥など。メリット:農作物を襲われない。
人間社会で擬態が起こっている例を挙げると、アメリカでは事故発生現場では救急隊員やマスコミに紛れて倫理感に欠けた弁護士達が集っています。彼らは、事故の被害者やその遺族のショックで分別がつかない状態に付け込んで、自分の名刺を渡す。被害者達は何の疑いもなく、それを受け取る。そして、被害者が我に戻ってそれを見た時、慰謝料を請求することを思いつく。弁護士の目的はもちろん、被害者を代表して事故の慰謝料を裁判でがっぽりもらうこと。そして、その3割をその恩恵としてもらうこと。(3割はアメリカの相場です)
モデル:救急隊員およびマスコミ
発信者:弁護士
受信者:事故の被害者
メリット:弁護士は自分が不純な動機(被害者の不幸のおかげで儲かること)で被害者に接近したことを気付かれずに名刺を渡すことができ、そのため、被害者に雇われる可能性が高くなる。ここで、昆虫の擬態と少し違うところは、受信者も得をすること。(ただし、弁護士が下手な場合を除く)