ポストゲノム時代の生命科学 第3回講義
糖鎖と免疫
第3回は、医薬デザイン工学分野の山本先生が担当されました。 寄せられたレポートの中から目立ったもの3つを以下に載せておきます。
「自分とは何か」という哲学の命題があります。今回の講義では、その生物学的な答えを見つけられたように思えます。免疫系での「自己」と「非自己」の見分けは極めて重要です。自己を決して攻撃することなく、非自己は確実に排除しなければならないとすると、先述の問いには答えが用意されていなくてはならないはずです。多細胞化に伴い、より伝達に適した物質(講義中の言葉では「言語」)が必要となり、それが同時に自己を規定するというのが、あたかも、哲学者が自我の何たるかを言葉を駆使して主張しているようで、とても面白く感じました。糖鎖がエネルギー源としてではない重要な働きをしている、といった程度のことは以前から聞いていましたが、受精における種の特異性や血球の破壊にまで関わっているというのは初耳でした。ポストゲノム時代、新たな魅力を持った存在として現れるのは、「雄弁」な糖鎖なのでしょうか・・・・・・?
他の講義で「これからは糖の研究が生命科学の最重要課題になるだろう」と聞いていたので、大きな関心を持って受講した。その講義では糖の構造、機能など、細かいことにはまったく触れていなかったので、今回の講義は非常に役に立ち、糖の研究の今を垣間見ることができた。その意味で講義の前半はとても刺激的でわくわくさせられたが、後半の一部は少し内容が高度すぎてついていけなかったところもあった(講義中の説明やスライドに分からない言葉が数多くあった)。しかし講義全体としては、例えば「ゲノム解読は机の上に裏向きにおかれた三、四万のジグソーパズルを表向きに返して、書かれてあることをまず全部先に呼んでしまう様なものだ」いうように、新しい見方をあたえてくれ、とても満足のいくものだった。今回までの三回の講義で、今まで漠然としかわかっていなかった生命科学の実像が少し見えてきたような気がする。もっともっとこの分野のことを知りたいので、あとの講義でもできる限り多くのことを吸収したいと思う。
いままで、糖の働きといえば、エネルギーとなること以外知らなかった。糖がこんなにもいろんな場面で活躍しているとは、 正直言って想像もしてしていなかった。(生物を高校のときに履修していなかったので) 遺伝子の糖鎖についてのところに一番興味を持った。言語としての糖鎖、認識するための信号。そういえば高校化学で知った範囲でも、糖の種類は思えばたくさんあった。細かい差異がこういう場面でいかされているとは。遺伝子といえば、タンパク質というぐらいそれまでタンパク質のことしか考えていなかったので、この講義に刺激を受け、まだまだこれからだなーと更に勉強する意欲が沸いてきた。免疫の方についても、糖によってコントロールされていて、また抑制の役目も担っているとは驚きだった。奥が深い。とりあえずこの90分間、驚きの連続だった。