代謝生物学 第1回講義

地球と生命の歴史

初回は一種のイントロダクションとして地球と生命の歴史について概説しました。参考資料は丸山・磯崎著の「地球と生命の歴史」(岩波新書)です。今回の講義に寄せられた意見と、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。


Q:27億年前に形成された強い磁場は放射線を排除する効果を発揮し、生物が水中深くでなくても生存できるようになったとのことだが、その後、10億年前までに磁場は弱まっていたので、そのときもし大気が存在しなかったら真核生物やさらに複雑な多細胞生物の出現はもっと後か、起こらなかったかもしれない。ストロマトライトの登場、光合成による酸素を含む大気の形成自体が、磁場形成の影響であると考えられているから、このような仮定は意味が無いようにも思われるが、連続して起きた変化が生物の生存と繁殖に有利に影響し、ヒトに至ったことを考えると、人間は、限られた環境条件下にしか生きられそうにもないのに、環境条件を大きく変えるような活動も行っていて、自分の首を締めている。しかし、そのような活動は、人間ではなく地球を苦しめている、などと表現されることもある。およそ世に言われる、地球に優しくする、などということは、人間の生存に有利なことを指しているから、地球が人間なら地球に優しいといえる気もするが、人間でない地球もあるので、不適切な表現だと思う。

A:生命の出現自体は海さえできれば必ず起きたような気もします。それに対して多細胞生物の出現は、確かに必ずしも必然的に起きたことではないかも知れません。多細胞生物の出現のきっかけが酸素濃度の増加であった可能性が1つありますが、最近はやりのスノーボール仮説論者は地球凍結がそのきっかけになったと言っているようです。ただ、スノーボール仮説は、地質学的な説明はある程度納得できるものですが、生物との関わりに関してはまだきちんと議論できるレベルになっていないようです。


Q:熱水噴出口付近のような高温の環境下に生息している細菌には高温下であることを利用した独自の代謝系があるのでしょうか。PCRで使われるDNAポリメラーゼのような耐熱性のある酵素のように、高温下で変性しないタンパク質を利用することが必須となることが考えられますが、高温下であるために起こりやすい化学反応を利用した代謝経路、逆に言うと現在の常温環境に移行する為に捨ててきた代謝経路があってもよいかと思うのですが。それとも好熱菌の環境は新たに利用できる化学反応が起きるほどの温度ではないのでしょうか。メタンや硫化水素をエネルギー源とする化学合成細菌のような話は聞くのですが、何か常温では起こらない化学反応を利用している例がありましたら聞いてみたいです。

A:うーむ。ある代謝経路、もしくはその一部の化学反応が、高温でのみ起こるという例は思いつきませんね。ただし、タンパク質のコンフォーメーションが高温に最適化されていて、ある化学反応に必要なタンパク質同士の結合が室温では起きない例はあります。ただし、この場合、室温で生育する生物ではタンパク質のアミノ酸に置き換わりが生じ、同じ反応が室温でも起きるようになっています。ですから、「捨てた」わけではありませんね。生体内での化学反応はほとんどタンパク質により触媒されていますから、たいていの場合は、アミノ酸の置き換えなどによって三次構造を変化させて、何とか適応してしまったのではないでしょうか。


Q:授業ではあまり詳しく触れませんでしたが、シロウリガイがなぜ高等動物と同じくヘモグロヒンをもっているのかが不思議で、興味をもちましたので、それについて調べてみました。
 シロウリガイはユノハナガニ類などと一緒に深海の熱水噴出口に生息している。熱水から供給される硫化水素を酸化的に利用する独立栄養細菌が作る有機化合物を、シロウリガイなどがエネルギー源として利用している。
 ここで考えたのは、葉緑体が二酸化炭素へ適応して進化していくと同じように、ヘモグロヒンは最初が硫化水素などを運ぶ役割だったが、酸素の大量増加とともに、動物の体もより酸性の弱く安定な酸素を呼吸に使うようになり、ヘモグロヒンも酸素を運ぶ血液の主成分となって進化していった。またはシロウリガイがじつは高等動物であって、たまたま深海の底に落ちて、酸素の代わりに硫化水素を呼吸に使うようになったのかも考えられる。調べた資料によれば、シロウリガイはヘモグロヒンのほかに体内に硫化水素を運ぶ専用のタンパク質があるという。それは太田らの研究で分かりました。考えるだけでとても興味のそそるものでした。

A:東大の海洋研の太田先生のグループは、ヘモグロビンが、酸素と硫化水素を結合する2種類の基質結合部位を持つ特別なものであるといっています。
http://www.umi-net.toba.mie.jp/kikanshi/aquarium/tsa32wi/son33.html
このことですね?ただし、次回の講義で説明しますが、そもそもエネルギーを得るためには硫化水素だけではなく、酸素が同時に必要なのです。ですから、やはり最初から両方に親和性を持っていないといけないような気がしますね。
 硫化水素を運ぶ専用のタンパク質というのは海洋科学技術センターの研究でしょうか。
http://www.cosmo-oil.co.jp/kankyo/dagian/41/06.html
こちらと海洋研の研究の関連についてどう解釈すればよいのか、面白いところですね。


Q:現代社会において人間が消費・破壊しつつあるものは、過去の光合成の結果として捉えることができるものである、という説明に納得した。太陽光エネルギーは地球生態系へ供給される唯一のエネルギーであるため、そのエネルギーを有機物に変換する光合成の生態系への影響が多大なことは、直感的にはわかり易い。具体的な光合成の重要性は、食物連鎖を支えていることや二酸化炭素固定などで例示されることが多いように思うが、実際にはより多方面に影響を及ぼしているはずである。また、光合成の影響は、現在だけでなく過去においても、大きかったことが知られている。自分自身の場合、このように考えてきて光合成の地球への影響を理解しようとしていたため、その理解はかなり漠然としたものになってしまっていた。しかしながら、人間が消費・破壊しているものが過去の光合成の結果である、という見方をすると、漠然としていた理解が少しは具体的になった気がした。無論、それ以外の見方も存在するとは思うが、日常生活に結びついたわかりやすい説明だと思った。
 今後の講義では、代謝と生態学の接点もできるだけ扱って欲しい。また、緑色植物やシアノバクテリアの光合成だけでなく、硫黄細菌の光合成や化学合成細菌のエネルギー獲得も取り上げて欲しい。

A:エネルギー獲得戦略については、化学合成最近なども含めてかなり詳しくやる予定ですので、楽しみにしていて下さい。


Q:今までは「植物が光合成をするようになったから大気のCO2濃度が下がった」ということに何の疑問も抱かなかった。しかし植物がCO2から得たCは植物の体を作るのに使われ、植物が死んで分解されると再びそのCはCO2として大気中に放出されるのだから、結局のところ大気中のCO2量は変わらない。(地球全体を植物が覆うなどすれば多少はC量が変わるだろうが、あそこまで急激にCO2量は変わらないであろう)では、なぜCO2濃度は急激に下がったのか?それは生物のもつCが分解されずに地面に埋まっていき、大気中にCO2が放出されなかったからだと考えられる。現在CO2濃度の上昇が問題になり、森林の再生などを目的とした運動なども行われているが、地中から掘り出してきたCを再び地中に戻すといった作業をしなければ、いくら森林を再生したとしてもCO2量を減らすには限界があるのではないだろうか。

A:その通りです。植物は盛んに光合成をしますが、その速度というのは「フロー」です。一方、二酸化炭素濃度の上昇といった時に問題となるのは、「ストック」です。基本的に、何らかの形で半永久的に固定されなくてはストックには影響を与えません。そこを考えて、サンゴや一部の藻類に見られる炭酸カルシウムへの二酸化炭素の固定を上昇させる研究なども行われていますが、地球規模で影響を与えるような結果に結びつけられるかどうかは難しいように思います。


Q:第一回目の授業、楽しく拝聴させていただきました。地球と生命に関する内容の中で特にクジラの背骨のまわりに生態系が構築されている図に興味を惹かれました。一列に並んだ岩のようなものを見て初めは何だかわかりませんでしたが説明を聞くとなるほど脊椎骨だとわかります。暗黒の深海も太陽光がエネルギーを供給する生命のサイクルの一端にあるのですね。

A:今後もなるべく楽しい講義を心がけますが、次回からは少し代謝経路や化学反応式などが出てきます。


Q:今回の授業で特に興味をもった内容は、酸素濃度の急上昇がマントルの海水逆流の結果、光合成生物の死骸などの有機物が堆積物によって覆われ、それによって有機物が分解しなかったために、酸素濃度が上昇したということです。今まで、光合成生物が増えたことによって酸素濃度が上昇したと単純に考えていましたが、それらが作った有機物が分解されてしまえば、酸素は消費され、結果的に酸素濃度は大して変化しないということになるということは、少し考えれば当然のことで、自分が物事を浅く考えていたのを痛感しました。過去の光合成生物の死骸などの有機物を、現在になって、我々は化石燃料として使用しているので、このような話を考えると、その有機物の分解によって二酸化炭素の濃度が現在上昇してきているのは、熱帯林の破壊などを考慮しなくても、当然のことなのだと思います。

A:熱帯林の破壊にしても、もし、切った木などを全て何らかの形で封じ込めることができれば、二酸化炭素濃度の上昇にはさほど寄与しないように思います。実際には、たいてい焼き畑などによって、燃やされてしまいますから、せっかくの炭素のストックが二酸化炭素に戻ってしまうわけです。


Q:物理化学的な視点から地球の歴史を見られたので高校で生物を取らなかった僕でもよくわかりました。講義を聴いて興味を持ったのは人間という生物がいかに特殊なものかということでした。人間活動は、過去の生物(化学)が固定してきたもの、たとえば石炭紀の植物や珪藻の死骸である石炭石油を燃やして、固定してきたCを再放出したり、光合成の作用によって酸化してきたFeを再還元したり、オゾン層をなくしたりするなどということでした。それはつまり、地球環境を原始的なものに引き戻すような方向で人間は活動しているのではないか、と思いました。そう考えると、人間は改めて特殊なものだと思いました。地球の生命の物質固定の流れを逆行しながら生きているということで、人間は生命の歴史の中で折り返し地点にいて折り返す方向に活動していくという役割を持った生態学的に特殊な生物なのかもしれないと思いました。このまま地球は原始的な方向に向かうのでしょうか?もしそうだとするならば、それはとてもバランスの取れたことなのかもしれないとも思いました。というのは、地球の生命(寿命)も今46億年で、地球が太陽に吸い込まれて消滅したしまうまでの時間のちょうど半分くらいだ(と言う人もいる)からです。地球の歴史にとってのターニングポイントに生命活動のターニングポイントが重なっているようにも思えます。こういう風に、地球の生命(寿命)とバランスを取って生物の歴史がバランスをとって折り返すと考えると、"人間"という主観的な特殊な視点から見れば憂うべきことではあるけれども、物質的な大きな視点から見れば実にバランスの取れた地球の成り行きなのかもしれないと思いました。

A:講義の最後に触れましたが、人間のバイオマスは、動物全体のバイオマスの約2割を占めると言われています。このことは、生態学的に上位のものほどバイオマスが小さいという通常のピラミッド構造を大きく逸脱しています。少なくとも、人間の存在は、現在の地球上で極めて不自然な位置を占めていることだけは確かなようです。


Q:今回の授業では生物と地球環境がお互いに影響しあって変化してきた歴史が順序立てて理解できました。なるほど、そうだったのかと思うことが多くて面白かったです。
 今回の講義で紫外線以外の宇宙線も生物の上陸を阻んだ要因だったとはじめて知りました。オーロラが宇宙線によって光っていることや鳥達が方位を感知することに地磁気が関係していることは知っていましたが、なんとなく地磁気は昔からあったものだと思っていました。ですが、今回の講義で現在の地磁気が27億年前に地球の内部で鉄が固まって出来た大きな磁石が、その由来になったということや、イオン状態だった鉄が酸化されて固体になるのに、シアノバクテリアが生産した酸素が使われていたと知って、へえーそうだったのか、面白いなと思いました。まず、地磁気が強くなったことで宇宙線が減って、その次に光合成が可能になって、オゾン層ができたという順番だったんですね。知りませんでした。
 もう一つ印象深かったのが、人間が絶滅しても地球は一向に困らないということです。以前、植物好きの仲間と環境保護について話あったときに、一番の環境保護は人間が死ぬことだよ、生かされている立場の人間が環境を保護するなんておこがましいよ、と言う人がいました。怖いこというなあと思ったのですが、よくよく考えるとその通りだよなあと思ったことを思い出しました。地球に優しくと聞くと、強いものが弱いものを守るような印象を受けますが、文明がどれだけ発達しても、人間は地球に生かされているんだから、人間の方が弱いものなんですよね。迷惑かけてばかりいるバカ息子を黙って見守っている親みたいだな、地球は、と思いました。

A:「内部で鉄が固まって出来た大きな磁石」というのは間違いですよ。地磁気は、地球の外核の溶けている鉄(とコバルト?)が流動することによって引き起こされているのです。ですから、地質学的な年代で見ると、その時の流動の加減で地磁気の方向が変わることがあります。実際にこれまで何度も地磁気の方向は逆転していたようです。
 バカ息子があまりひどい家庭内暴力に走らないことを祈っていましょう。

P.S. Q:.講義内容とは関係ないのですが、先生の特技を聞いたとき、歌会はじめで歌をよむとか、昔の衣装の着付けだとか、蹴鞠だとか、まるで平安時代の貴族みたいだなあと思ったのですが、先生はお公家さんと何か関係のある方なのでしょうか。個人的な質問なので、差し障りがあれば、お答え頂かなくて結構です。変なこと気にする奴もいるなあと、忘れてください。

P.S. A:うちの先祖は公家でした。ただ、園池の名前自体は、残念ながら平安時代まではさかのぼりません。初代の園池は別の公家から分家したのですが、関ヶ原の合戦の少し後の生まれです。


Q:深海でも間接的に光エネルギーが利用されている場合があること、生命は深海で誕生した可能性があることから、地球上のエネルギーの流れについて様々な見地から考察する必要を改めて感じた。光合成・環境応答の機構には興味があるので次回以降期待している。個人的には今回の内容に関連した生態系・地球規模的環境等も気になるところなので、なるべくその辺りのよりマクロな視点も絡めて説明してほしい。

A:そうですね。進化多様性の近藤先生が退官されて地球規模の話をする先生もあまりいなくなったと思いますので、なるべく生態的な視点も含めて講義を進めたいと思います。


Q:初回からとても刺激的な講義、ありがとうございました。これまでに(本郷では特に生化あたりで)受けた講義では、代謝(といおうか、酵素が絡むと)といえば非常にミクロスケールに限られた話になる、かと思っていました。しかし、一連の講義の冒頭にまず大づかみに、光合成という重要な代謝システムがどのように地球で生まれ、生命が今の諸相をとるようになった経緯を先生が触れたことで、以後の講義を位置づけやすくなったと思います。
 内容についていえば、やはり生命の起源というトピックは刺激的でした。今回も浅海と深海(=熱水鉱床)のどちらの起源か、という問いに、考えるところが多かったです。それはやはり、この問いが一意にどちらとまだ決められない領域にあるからでしょう。以下はすべて私の思弁ですが、深海起源の説も、紫外線による生命への破壊効果をうまく説明していて頷けるものなのですが、逆に考えれば、浅海において紫外線は、プラズマ放電などと並んで、生体高分子の生成に対して重要な役割を担っていたのではなかったでしょうか。また、生命の起源を、ひとつの細胞の原型であるコアセルベートに求めることが多いですが、私はこのコアセルベートの成立という必要条件に対して深海起源の説は弱いように思えます。コアセルベートは浅海で(比較的に)マイルドな干満の中で気泡ができ、それを足がかりに膜構造が生成したと従来は考えられていたはずですが、これは深海では成立するでしょうか。たしかに、成立はするでしょう。たとえば、熱水鉱床といって湯が出ている部分しか知りませんが、その湯の通る岩場の中は洞窟のように入り組んでいて、坑道で気泡が生まれて溜まることも十分あると思います。その中は硫化水素などのガスが充満していることでしょう。しかし、浅海の穏やかな環境とは違って、鉱床の中は、動くときには非常に急激な流れが生じるのではないでしょうか。そうすると、膜系が生じてもそれが維持されるというのは、何十億年というタイムスパンがあるにしても、浅海に比してという観点からは幾らか難しくなるのではないでしょうか。

A:実際には、最初の生命自体は、「何十億年というタイムスパン」ではなく、海洋が成立してから「ほんの」1億年ぐらいの間に生まれたのではないかと考えられます。膜構造の成立の仕方についてもいろいろな考え方があると思います。いずれにせよ、現在の熱水噴出口の生態系がどのように成立しているかさえよくわかっていない状態ですから、生命の誕生の本当の成り立ちが明らかになるのはまだ先でしょう。


Q:今回の授業で取り上げられた地球と生命の歴史は、今まで知識があいまいだった部分なのでとても興味深く聞かせていただきました。地球の歴史の大部分を占める「人類出現以前の歴史」も大変勉強になりましたが、私は特に人間と地球の関わりに興味があります。
「ヒトは高次捕食者であるのにその個体数は多い。生態学的ピラミッドは不安定な形である。」というコメントが特に印象に残りました。もちろん生態学的ピラミッドは絶対ではありませんが、生態系の一部である人間の存在がいつから、なぜそのような不安定な段階に位置するようになったのかが疑問です。また、ヒトのバイオマスが植物のバイオマスの0.002%程度であるなら、ヒトが植物を主食とする第一次消費者になれば不安定なピラミッドもいくらか安定化するのでしょうか。
地球は人間がいなくても困らない。その人間が地球で生存するために人口を減らすかベジタリアンになるか選ぶとしたら私は後者を選びたいです。1haの土地で牛を育てて生存できる人の数と、穀物を育てて生存できる人の数は大きく違うでしょう。ずいぶんと非科学的ですがそんなことを考えました。

A:確かに植物のバイオマス(ストック)は非常に大きいのですが、その多くが森林の幹のセルロースの形で存在します。従って、生産量(フロー)にして考えると、それほどではなくなります。現実に、人が栽培している作物の生産量は、陸上植物の生産量の1割を占めるといわれています。これはこれでやはり異常な状態です。ですから、人が植物だけを食べて生きていくようになれば動物生態系の中での不自然さは解消されますが、植物との関わりにおいては、やはり不自然な状態にあるということになるでしょう。


Q:地球の成立についての知識を得られるのは、楽しいことです。聞き逃してしまっただけかもしれませんが、分からないことがあります。海洋の形成から生命の誕生までは、あまりタイムラグがないとのことですが、どういう証拠があるのでしょうか。また、そんなに短期間で(と言っても、どのくらいの長さかよくわからないのですが)、生命が誕生するものだろうかと思いました。
 環境破壊に関する話では、バイオマスや生産量の比率の話が衝撃的でした。計算の仕方は分からなかったのですが、ヒトの活動がこれほど大きなものになっているとは、思っていませんでした。環境を守るのは地球のためではなくヒトのためであるという話は、その通りだと思います。結局ヒトの都合にあった環境をつくる事が理想でしょう。そう考えると、なかなか環境問題が解決される日は来ないだろうなと思ってしまいました。

A:海洋の生成は、枕状溶岩や花崗岩といった形成に水が必要な岩石の成立年代からわかります。これと最古の生命化石の成立年代を比べるとどちらも38−40億年前という値が得られるので、海洋が生成してからせいぜい1−2億年の間に生命が誕生したと推定されるわけです。
 おそらく200年前の地球人口に戻すことができれば、地球環境問題のかなりの部分は解決できるのではないかと思います。200年なんていうのは、地球の歴史から見ればまばたきする暇もないような時間ですから、この200年間の変化というのが如何に大きなものであったかがわかります。


Q:地球原始大気中の水蒸気のマグマへの溶け込みによる減少で地表温度の低下が起き、大気中の水蒸気は雨となり地表に落ち海を形成。岩石からの鉄が溶けこんだ海に酸素発生型光合成生物が出現し海中で酸素と鉄が結合、縞状鉄鋼ができ、現在私達の利用する鉄鋼のほとんどの原料となっている。海水のマントルへの流入により大陸の形成、酸素濃度の高まりによりオゾン層の形成、それにより生物が地上進出しやすくなり、陸上の乾燥から身を護るためクチクラ層に覆われた植物が繁茂、それらの植物は地層に残りやすく主に3億年前のシダ植物森林が石炭になる。先に陸上進出した植物を栄養源として動物も陸上進出、私達の使う石油は1億年前の動物の遺骸からできた。人間の現在の文明がこのような地球の歴史と生命の営みの上に成り立つことに興味をもった。人間はその活動で地球環境をさらに少し変化させているが、酸素の発生で嫌気性生物の繁栄が好気性生物の繁栄に移行したように、これまでの大気組成や温度の変化への対応と同じく生物はこの変化にも対応していけると思う。ただ人間は私達にとって絶妙な今の環境の中でしかなかなかに生きられないため、その変化により確実に危機にさらされてしまう。そのため私達は自分達の活動により起こる影響を打ち消したり最小のものにする努力をすることなしには生き延びていけない。

A:「自分達の活動により起こる影響を打ち消」すというのは、極めて難しいことですよね。もし、自分の活動が、自分の生存を脅かすのであれば、それはいわゆるネガティブフィードバックがかかっているということです。ネガティブフィードバックがかかっているシステムでは、量が多くなりすぎると量を減らす圧力がかかり、量が減った段階で再び安定化します。このことも、人間の人口を減らすことが、解決策になることを示しているように思います。


Q:私は以前オーストラリアに行った際にストロマトライトを見に行ったことがあり、講義を聴いていて、そのころのことを思い出しました。すごく不思議で、珊瑚のようなものだったと記憶しておりますが、これが、自分たちの生活する大気(酸素)を作り出したかと思うと、不思議な気持ちになります。うまく言えないですが、地球の歴史というとてつもなく大きなものを考えると、ため息しか出ないような・・・小泉さん流で言えば「感動した。」ですが、酸素が出てくるまで、様々な要因が積み重なって出てきたものだということ、その偶然(と言ってよいのか分かりませんが)に、とても惹かれました。
 また、二酸化炭素などによる温暖化に関して、いろいろと調べてみました。最近の異常気象事例として、世界的に過去10年間の気象状況は観測史上最も温暖であったことは当たり前として、1、スペインで重さ3.6キロのひょうが降った。2、アメリカでは月間発生数としては最多の562個の竜巻を観測。3、アメリカ北東部の一部では、観測史上最も深刻な異常寒波を観測。4、スイスで、250年間で最も暑い6月の気温を観測。5、南極では、デラウェア州と同じ大きさの氷山が大陸から離脱。6、南太平洋で観測史上最大のサイクロンを複数観測、最大瞬間風速80m/秒を記録。7、オーストラリアで、今までで最悪の干ばつとなった。8、中国北東部の一部で72年間で最多となる降雨量を観測。9、イスラエルで、2000年に、50年間で初めて雪が降った。
 自分としては、温暖化はそのうち、氷河期へつながっていくのではないか、と思われました。氷河期の前には、気温が上がる、というデータがあり、そこから考えました。そうすれば、人類の滅亡もあり得る、と思います。講義で、人類が滅んでも地球は困らない、とありましたが、なるほど、と思いました。

A:異常気象の事例は、確かに地球の温暖化などを反映している可能性は高いと思いますが、科学的に評価する場合には十分に注意する必要があります。地球上の継続的な気象観測地点の数はかなりの数になるでしょうし、1つの地点の観測データの種類もかなりの数でしょう。そうすると、地球上のどこかの観測地点で、何かのデータが、史上最高または最低を記録する確率はかなり高くなることが予想されます。ですから、本当は、その確率と、実際の事例の出現頻度を比較しないと科学的な判断は下せないことになります。


Q:初回の講義では生命と地球の歴史がいかにしてわかってきたかについて学んだ。その中で僕は特に、生物や地球の進化の理論をどんなに考えたりつくったりしても、それが正しいと実証されるのは、ほとんどの場合、化石が発見されてからということに強い印象をもった。これは言いすぎかもしれないけれど、講義のなかで進化の証拠となる化石や現生生物の写真が多用されてたのをみると、生物や地球の進化の研究において化石が重要な位置を占めてるのは間違いないであろう。
 例えば、真核生物がいつ誕生したかどんなに理論だてて予想しても、正しいことはグリパニアが発見されるまではわからなかったわけだし、この先もっと古い化石が発見されるかもしれないし、グルパニアが偽化石だとわかるかもしれない。つまり、化石によって大きく生命史が変わるくらい化石は大きな重要性をもっているのだ。
 僕は事象を合理的に説明しうる理論を頭で考えて編み出したいなどとよく考えるのだが化石採集やフィールドワークもバランスよくしたほうがいいなと思うようになった。

A:この分野は、「実験」で何かを再現することが極めて難しいので、どうしても化石に頼ることになります。グリパニアにしても、細胞の大きさから真核生物であると言う人もいますが、別に細胞内の構造が残っているわけではないので、本当に真核生物だったかどうかは、まだ決定的ではありません。


Q:地磁気の形成が生命誕生後に起こり、しかも生物の進化に大きな影響を与えていたことは初めて知りました。オゾン層の形成とともに生物の進化を考える上で重要なことであり、生命誕生は深海で起きたという説が分かった気がします。深海の熱水噴出口ではまだまだ未知の生物が発見される可能性は高いと思われるので、今までの常識を覆すような発見を待ちたいと思います。
 もう1つ興味を引いたのは人のバイオマスが動物のバイオマスの2割を占めるという話です。人間の飼育している家畜もかなりのバイオマスがあると思われるので、人および家畜で動物の3分の1を占めていると考えると、人間の自然界への影響力の強さを実感するとともにこのような人間中心な世界がずっと続けられるのか心配になってしまいました。

A:少なくとも、今の人口のままで、全ての人が日本人並みの生活水準を保つことが無理なことだけは明らかでしょうね。となると、解決策はかなり限られることになります。よく考えると誰でも心配になりますね。


Q:学部時代の専攻が機械工学だったため、すごく新鮮に聞かせてもらいました。生命の誕生が深海であり、ストロマトライトという岩石にしか見えないものが地球上に初めて酸素を作り出し、その後の生命の進化を支えてきたことには驚きました。また、講義の終盤で人間の生存活動について触れられましたが、かつて人間が地中から取り出したCを、現在になって、CO2の地中固定や海中固定などして大気中のCO2量を減らそうとする研究がありますが、が、CO2と岩石の反応は高温ほど速く、炭酸塩鉱物は高温ほど沈殿しやすいので、地熱地帯にCO2を地中貯留すると、岩石中のCaやMgと反応して、CO2が炭酸塩として沈殿固定化される、ということだそうですが、こういう固定プロセスは、自然現象と同じなのでしょうか?全く負荷などはないのでしょうか?

A:地中には、確かに大気由来の炭酸塩鉱物がありますが、これが今までに大気中の二酸化炭素固定にどの程度寄与したのかについてはよく知りません。固定プロセス自体は、たぶん同じでしょうけれども、実際に大気中の二酸化炭素濃度を減らすほど大量に炭酸塩として固定した時に何が起こるかを予測するのは大変でしょうね。