植物科学I 第1回講義
光合成とその研究の概略
初回は一種のイントロダクションとして光合成の人間にとっての意義、生物にとっての意義、地球環境にとっての意義について最初に触れ、また、光合成の研究の歴史を概観し、さらに研究の今後の方向性についても触れました。今回の講義に寄せられた意見と、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。
Q:太陽を食べました。今日も3食ちゃんと食べました。このエネルギーを確保する為に行う食事と言う行為はもとを考えると、太陽のエネルギーを植物が変化させ、その植物を捕食する動物が存在し、更に、それを食べると言う食物連鎖の流れを見ると、あらゆる生物は太陽を食べて生きているのでは?太陽っておいしいんですね。でも、僕は太陽を直接は食べられない。植物がその形を変えてくれないと、凄いえらい奴等だ、植物って。 今とは異なった酸素の少ない昔々の地球において、現在も嫌気性の細菌など酸素で消毒されるように、生物にとって害であった酸素を自らの体からいくら効率の良いエネルギーを得る為とはいえ、毒である酸素を自ら放出してしまう、植物、葉緑体はやっぱり凄い。人間だとしたら、毒ガス、ビュービュー噴射しながらエネルギー満タンな元気な奴ですね、きっと。光合成、光合成と小学生の頃から慣れ親しんだ言葉だが、実は画期的と言うか、革命的なことでは?そんな植物って、動かなくて、ものも言わないけどかっこいいと思う。
そして、生物に共通してエネルギーとして使われているATP勿論、植物の中でも大事みたいですね。光合成の流れはかなり複雑でした。このP(りん)phosphorusギリシア語で“光を運ぶもの”って意味らしいです。多分、燃える事からきた言葉だとおもうんですが、もしかしたら、アリストテレスみたいな、ギリシア人達は、実は知っていたのかもしれませんね。リンが太陽の光と言うエネルギーを運ぶ事を。光合成のケミカルな所は難しくて、すぐには理解出来きないと思いますが、何だか植物の秘密の一部が垣間見え、もっと植物が知りたくなる講義でした。まだまだ秘密が隠されていそうなので。
A:最近はポケモン(ポケットモンスター)の技にも光合成があるそうです。なんでも、それを使うと何もしないでも体力が回復するそうです。しかも、ご丁寧に夜には効果が低いとか。最近のゲームには夜昼もあるんですね。とにもかくにも、それほど人気のある光合成をこれからもよろしく。まだまだ秘密も隠されていますので。
Q:今回の講義の中で紹介された、クロロフィルの吸光度を利用した衛星写真によって、海洋の植物プランクトン量を測定した調査結果に興味を持った。この調査方法は、海洋における光合成を行う生物の量を測定する、という目的を極めてシンプルな原理を用いて実践したものだと感じた。この衛星写真で特にクロロフィル濃度が大きかった地域はオーストラリア大陸の南東部と、北大西洋であった。この原因を考えてみた。これらの海洋の特徴を挙げると、まず水深が2000~6000 mであること、暖流の通路であることなどである。これらのことから、この海域では水深が浅いので得られる光量は大きくなること、暖流によって赤道付近から富栄養海水が運ばれてきたことにより光合成生物に適した環境が作り上げられているのではないかと推測できる。しかしこれらの地域は南回帰線より南極側、および北回帰線より北極側である。これは直射日光が注がれにくい地域であることを示し、光合成生物にとって不利な条件であると考えられるが、その影響が見られないのはなぜなのかがわからない。
A:このように、物事の理由を自分で考えてみるのは非常にすばらしいことです。せっかくですので、いくつか、前提となる事実関係を指摘しておきます。まず、水深についてですが、光合成で生きていけるほどの光が届くのは、実はどんなに深くとも 100 m いかないでしょう。つぎに、赤道付近では海水は貧栄養です。これは、温度が高いと生物活性が高くてすぐに栄養を使い切ってしまうことと、海水表面が太陽で暖められて比重が軽くなっているので、下から栄養の多い海水が上がって来にくいためです。つまり植物プランクトンにとって大事なのは、栄養の多い深いところの海水が太陽の光の届く浅いところまで何らかの理由で上がってくることです。この理由を考えると植物プランクトンの分布を説明できるかも知れません。
Q:16日の講義では、ミクロとマクロの両面から光合成をみるということを学んだ。原始レベルでの構造から地球規模としての話である。原子レベルでは、全体を通してプロトンの動きがとても重要であり、光合成が酸化還元反応を繰り返すことにより光エネルギーを利用していることがわかった。
一方、地球規模の話として特に興味深かったのはリービッヒの最小律により、海洋に足りないのは鉄と判断し、撒いたところプランクトンが増えた、という話である。これは一時的なもの、非実用的なものであったが、地球の2/3を占める海洋を使って積極的な光合成を行わせるというのは合理的であると思う。しかしそれによる生態系の変化など、課題も多いのも事実であると思う。
他にも普段見落としていた情報があった。もやしの形は単に、暗い=光を求め高いところに行きたい、ではなく、暗い=土の中だと認識するという新たな情報に感動した。しかし結果的には、光を求めて細長くなる、と考えてもよい気がする。種子に含まれている養分は限られているので、背丈が高くなるためには太さを犠牲にしなければならないからである。
光合成はそのエネルギーの効率性と、副産物として酸素をつくる、ということから次世代のエネルギーとして活用したいものであろう。光合成の解析は今後重要になると思われる。(ってなわけでこの講義をとりました)
A:養分が限られているために太さを犠牲にしなければならない、というのはその通りでしょうね。エネルギー源としては、人工光合成の研究というのも行われていますが、なかなか植物のようには行かないようです。
Q:今回の授業で最も興味をひかれた点は授業の展開の仕方でした。今まで生物の授業というと(これは僕の独断と偏見ですが)つらつらと今まで研究されてきた事実などを述べ教えていく形式のものが多かったように思えます。その点今回の講義では、光合成というひとつのトピックに対して今までどのようなアプローチがなされてきたのか、またどのようないきさつによって新たな研究そして発見が生まれたのか、という研究の方向性が各項目に関してしっかりと示されていたのが興味深かったです。同時に生物学の研究においてこれから何の目的で、何を研究するかという方向性の議論の必要性(これは現代科学全般に言える命題だと思いますが)を認識させられました。植物という多くの未知の領域を含んだ世界はさまざまな可能性を秘められていると思います。光合成ひとつをとってみてもそのメカニズムが完全に解明されれば、それを応用して太陽エネルギーを極めて効率的に活用することが可能になるでしょう。今後の講義もこれから生物を学んでいくものとして、研究の方向性とその吟味を念頭に聞いてみたいと思います。
A:この講義を取っている人の中で、研究を職業にする人がどのくらいいるのかわかりませんが、僕が思うに研究に重要なのは、持っている知識の量ではなく、どのような研究をしたらよいか、その方向性を見極める第六感と、自分の研究を面白いと思える能力だと思います。その意味で、僕の講義では、研究の方向性と、研究の面白みについて、なるべく紹介できたらと思っています。
Q:地質学の授業で「海洋の植物プランクトンの方が陸上の植物より多く二酸化炭素を吸収しているかもしれないが規模が大きすぎることでまだ調べられていない」ということを聞きました。しかし、今回の授業で教わったように衛星からクロロフィルの蛍光を調べることができるのなら海洋の植物プランクトンの吸収する二酸化炭素量が地球全体の植物が吸収する二酸化炭素量に対してどの程度の割合を占めるのか分かりそうな気がするのですがそのようなことはまだ分かっていないのでしょうか。
それから、光合成のメカニズムについての質問なのですが2枚目のプリントの「b/f複合体」の下に書かれた「プラストキノン/プラストシアニン酸化還元酵素」と「光化学系I」の下に書かれた「プラストキノン/フェレドキシン酸化還元酵素」というのはどのような意味ですか。”The
Cell”に書かれていた光合成のメカニズムの図を見るとプラストキノンは光化学系IIからb/f複合体への電子伝達を行っているようでしたがb/f複合体や光化学系Iの反応中心複合体にも存在しているのですか。
A:すみません!光化学系 I は、プラストシアニン/フェレドキシン酸化還元酵素のまちがいでした!申し訳ありません。
海洋のプランクトンの二酸化炭素吸収量に関しては、既にいくつか見積が出されていると思います。僕自身はあまり詳しくありませんが、まだずいぶん幅があったようなので、「わかった」と言える段階かどうかは微妙なところだと思います。
Q:光合成について、これだけ研究の方向があり、その研究手段が多くの学問領域に及んでいることに感銘を受けました。動物が光合成をしない理由など考えたこともありませんでしたが、人間が陽の光を浴びて心地よいのは、単に温かさを感じるからだけではなく、体内で光合成のように何か人体に有益な物質が作られているからではないか、また、それは動物の進化の過程で残された光合成に準じた機能なのではないかと根拠もなく考えたことがあります。(植物が光合成を心地よいと感じているかどうかはわからないことですが、窓辺などで陽にあたっていると、何となく光合成をしている気分になりませんか?)一方で、授業の動物と光の特徴を考えたうえでの推論は説得力があり、生物のみごとな適応戦略の一つなのだと思いました。この適応戦略という言葉は、動物も植物も必死に生きている感じがして、生物学のコアになるトピックであるように思いました。その生物の必死さを、howだけで理解することは無理であり、いかにwhyを頭に置いて探求する姿勢が大切であるかわかった気がします。(質問)ATP合成酵素の所で濃度勾配がエネルギーを持つという仕組みがよくわかりませんでした。また、H+が逆方向にも流れることができるということはどういう意味を持つのですか?
A:うーむ。自分が「光合成した気分」になった記憶はどうもあまりない気がします。話が即物的になって申し訳ないのですが、たしか、ビタミンDは動物も、光で合成するんでしたよね。
質問に関してですが、基本的には、ある物質の濃度が2つの場所で違う場合、放っておけば同じ濃度になりますが、逆の反応は起こりません。つまり、物質の濃度に差があると、それを均等にする方向に物質は移動するので、その動きを使えば、水力発電で水の動きから発電できるように、エネルギーを取り出すことができます。実際には、プロトンが膜を通過するときにATPが合成されます。プロトンが逆に流れてATPが分解する反応は、チラコイド膜のATP合成酵素の場合は、積極的な意味がなく、それを阻止するような制御メカニズムがあります。ただ、例えば酸性環境に生育する単細胞藻類などでは、自分の細胞内が酸性化しないように、ATPを使って細胞からプロトンをくみ出しています。
Q:今回の講義では光合成についてさまざまなアプローチからの概要を紹介するといった内容であったが、視点が広く理解しやすかった。個人的には光合成が地球環境を形作った点と光合成のメカニズムについて興味深く感じたが、今回のメカニズムについての内容は他のコースの講義での知識からほぼ理解できたため、今後メカニズムについてより細かな知識が得られるとよいと思う。地球環境についてはいくつか疑問に感じる点があった。講義では27億年前に地磁気が発生し放射線などを防ぐようになったため生物が海の浅いところへ上がってきて光合成を始め、酸素濃度が上昇し、そこからオゾン層の形成や生物の呼吸の利用といったことが始まったとしてあったが、同時にオゾン層の形成によって紫外線が防がれ、その結果生物が海の浅いところへ上がってきたという話もあり、多少混乱を感じた。また呼吸の利用と真核生物の出現を結びつけて考えていたが、どちらが先であるのか(真核生物が現れたため呼吸という行動が必要になったのか、呼吸が出来るようになったため真核生物が現れたのか)や進化の過程についてもう少し解説が欲しいと感じた。
A:地球環境の話は、ちょっと触れただけなので、言葉足らずだったかも知れません。オゾン層の形成のところで話したのは浅い海へ上がってきたということではなく、浅い海から地上へ上がったのではないかということです。呼吸や、真核生物の出現に関しても、絶対の真実を講義したというよりは、ある一つの考え方を説明したと受け止めてほしいと思います。
Q:植物のエネルギー生産や環境応答などをとおして、当たり前のことなのですが、植物も人間と同じように生きているということを再認識させられました。そして、光合成が地球の成り立ちに大きく関係していることなど、最初の授業は興味深いものでした。なかでも動物と植物の環境応答が少し気になりました。気になるというよりは疑問に近いものなのですが、動物が恒常性により環境の変化に対応しているのに対し、植物は自分の体を変えるとあるのですが、その違いが少し分かりません。植物の自分の体を変えるというのは動物でも長い進化の過程で見られるように思えます。動物の恒常性についても植物にも似たような機能があるように思えます。たとえば気孔による蒸散や葉緑体の定位運動なんかがそれにあたるように思えるのですが。授業に関しての要望なのですが、光合成のメカニズムを詳しく説明していただきたいです。高校で生物を履修していなかったうえ、大学でも化学の授業ばかりを履修していたため、生物の知識に関しては少し弱いです。
A:確かに、動物と植物を全く分けて考える考え方が正しいとは思っていません。個々の現象についてはオーバーラップする部分はいくらでもあるでしょう。ただ、それでも、動物、特に恒温性物の体内環境の変動の幅と、植物の場合の幅が、全く違うことは事実だと思います。その事実を前提に、動物と植物では、環境応答のしくみに差ができていることも間違えないのではないかと思います。光合成のメカニズムに関しては、今後の講義でも触れます。
Q: 第1回目の講義は光合成に関してのイントロダクション的な部分であったが、おおいに興味を惹かれた。ICUで今まで自分が受けていた植物に関するコースは植物の機構の一つとして光合成を扱っていたが、本コースの光合成を中心に置いた視点からの講義は新鮮であった。特に雨のおおもとである水の蒸発は太陽のエネルギーにより、そのため水力発電によるエネルギーも太陽由来であるというくだりである。また、太陽エネルギーは総量として大きいが、密度が薄いとの話があった。当然のごとくその密度として薄いエネルギーを効率よく利用するための研究がなされていることと思うが、その最先端の研究例とアイディアを講義で紹介していただきたいと思った。
ただ、疑問点が残らなかったわけではない。「光合成のメカニズムは解明されたか?」というトピックでチラコイド膜での一連の電子伝達反応についての説明があったが、肝心の光合成のメカニズムで解明されていない点、そして解明されている点は現在どのように人間社会に利用されているかという点についても解説が欲しいと感じた。また、実際の研究例は後半の授業で紹介していただけるとのことだが、前半にもいくつか触れて欲しい、そして先生自身の研究内容についても詳しく一度講義して欲しいと感じた。
A:植物が、光を集めるしくみなどについては、今後の講義で触れる予定です。前半でも、なるべく、研究の面白みが伝わるような講義の仕方にしようと思っています。僕自身の研究内容もできれば紹介する予定です。
Q:授業のはじめに、先生が光合成の研究をはじめられた理由のひとつに、「研究の進んだ動物にはない、植物独自の機能を研究したかったからである」と言われていました。私はなんとなく研究材料が豊富な植物のほうが研究が進んでいるのではないかな?と思っていたので、これは驚きでした。私は動物の行動、最終的にはヒトを対象とした実験心理学の分野に興味があります。この分野は動物に特有であり、その点で植物の光合成と似たおもしろさがあるとおもいます。しかしまた、動物の行動も、光合成も、それぞれ無機的な環境の影響を大きく受けるというマクロな点や、逆に遺伝子レベルでの制御などミクロな点で共通する点も多いと思います。この授業が、これから生物を勉強していく上で、自分の視野を広げるきっかけになるようにしたいです。最後になりましたが、授業ででてきたIsaac Asimovの著書で何かおすすめのものがあったら教えてください。それから先生のいらっしゃる新領域創成科学研究科というところは名前がとてもおもしろそうですね!もし時間があったら紹介していただきたいと思います。
A:研究者の人口からすると、医学関係を含めれば動物の研究者の方が農学を含めた植物の研究者よりかなり多いと思います。研究に類似点、相違点があるというのはその通りでしょうね。僕の講義が何らかの参考になれば幸いです。
Asimovの著書では、「私はロボット」「銀河帝国の興亡」が好きです。これらは、道具立てはSFですが、最大の魅力は、その登場人物の心の動きと行動にあります。「黒後家蜘蛛の会」という分類としてはミステリーのものも好きですね。こちらも、登場人物の間の機知と場合によっては衒学趣味的な会話が魅力です。いずれも早川書房and/or東京創元社から文庫で出ています。
Q:今回の授業で特に印象に残った箇所は、時間と空間スケールで見た光合成研究についての説明と、環境応答における植物と動物の違いです。光合成研究は、その内容そのものを学ぶ際にも、「その研究やそれから得られたことが全体の中でどのような位置を占めるか、どのような意義を持つか」というような鳥瞰図があると、より関心をもって楽しく進めていけると感じました。(これは、どのような分野の学問も同じだと思いますが。)その次に、光合成研究の方向についての説明がありましたが、第1回目の講義ということで、これから学んでいく光合成に対しての興味が強まったので、授業の展開としても大変わかりやすく良かったです。
環境応答において動物がいかに環境の変動があっても体内の恒常性を保とうとするのに対し、植物は自分の体を環境に合わせるように変えていくという点も、あたりまえのことのように感じていましたが、改めて二者の違いを考えると、植物に対しての驚きを覚えました。
余談ですが、先生が講義中に「戦略」というような言葉を嫌われる研究者もいるとおっしゃっていましたが、確かに擬人化は多少の先入観等を与えかねませんが、私自身はそういった表現がより的確にニュアンスをとらえている場合も多いと思うし、それによってよりその生物に対しての興味や驚きが増すような気がするので、そういった表現もありなのでは・・・と思いました。
このレポートに何を書けばいいか、よくまとまらずになんだか感想しか書けていないのですが。今後は授業の内容に対する質問等も書いていきたいと思います。
A:僕自身、生物について how という疑問を考える場合、ある程度擬人的な考え方というのは、その限界を充分に考慮している限り、非常に有効だと思います。レポートに関しては、感想でも、質問でも、特に新鮮な視点からのものは、大歓迎です。
Q:「学問の細分化」という言葉を最近よく聞くのですが、18世紀、19世紀にいわゆる現代の大学および大学院体制の発展に沿って進んだ結果、近年においてはそれが過剰に進みすぎた印象を受けることが多くあります。科学はその中でも特に顕著だと思うのですが、実際そのような懸念を抱いた学者が少なくないようで、最近では学問の統合化による幅広い知識と視野をもった研究者の育成をはかる動きが出てきています。たしか園池先生のいらっしゃる東京大学大学院新領域生命科(という名前で正しいのかわかりませんが、間違っていたらごめんなさい)や創成科学研究科の創設は日本におけるそのような動きのなかで最も知られているものだったと思います。
実際今日の講義を受けてみても、たとえば、今日先生が講義されたのは「光合成」についてでしたが、それを葉緑体レベルで説明するだけで生物学的学問分野だけでなく、化学、物理、情報科学などアプローチの仕方は幅広くあることを実感しました。講義なので学生の私たちにそれらすべての知識を要求されることはないですが(ないですよね?)、実際に研究を始めるとしたらやはりこれらの基本的知識は最低限必要になるだろうことは確かだと思います。化学的見地から研究するとすれば、光合成とはどのような化学反応で、どのような場所でどのような反応が起きて最終的に糖と酸素が生成されるのかという方向から見るだろうし、物理、情報科学的分野からみれば、葉緑体各部を機械とみなし、どのような部分がどのような機能を持っているのか、そしてそれらは実際どのような働きをするのかシミュレートするなどのアプローチが可能だと考えられます。しかも「光合成」というひとつの反応だけでミクロからマクロまでさまざまなレベルがあるわけですからそれぞれにこのようなさまざまな方向からの研究方法があったとしたらものすごいことです。けれど言い換えればそれだけの選択肢の中から適切だと思えるものを選ぶことができる、ということだと思います。私が「教養学部の理学科」を選んだのも、化学専攻ながらこの授業を取ったのもそのような考えがひとつにあったからです。次回も楽しみにしています。
A:僕の講義では、ある知識を持っていることを前提とするようなことは極力避ける予定です。講義では、なるべく、いろいろな側面からのアプローチについて解説したいと思っています。ちなみに、僕の所属の正式名称は、大学院新領域創成科学研究科・先端生命科学専攻 です。
Q:光合成といえば葉緑体を舞台とした反応であり、ミクロな視点というイメージがある。光合成の研究において植生のような大きなスケールまで視野に入れていることや、地球の成り立ちにおいて光合成が重要な役割を担っているということは意識してこなかった。今後の授業ではミクロな視点とマクロな視点、両方から考えられるような内容を希望したい。
A:僕自身は、どちらかといえばミクロな仕事が主ですが、常にマクロな視点を忘れないように気をつけています。講義でも、常にさまざまな視点を意識していきたいと思っています。
Q:初回なので何を書いたらいいかちょっと戸惑っていますが、まず配られたプリントについて。授業で使ったスライドがぜんぶプリントとして配られるのは、わかりやすくて良かったです。ただ、説明を聞きながらその図にメモしたいときもあるので、火曜日のプリントの図の大きさだと書き込むのにはちょっと小さく感じました。ひとつひとつの図がもう少し大きいと、より使いやすいプリントになるかなと思います。 あと、光合成のしくみを取り上げた授業は一応前にとったことがあるのですが、教科書も使用言語も英語だったので、授業で扱う用語が日本語だけだとそのときにやったことと頭の中ですぐにリンクできなくて戸惑いました。「光化学系」とか。もちろんあとで家に帰って辞書を引いたりして調べればいいわけですが、折角前にやったことをもう一度説明してもらっているのだし、以前理解したところや逆によくわからなかったところなどを思い出しつつ説明を聞けるにこしたことはないと思うので、用語を黒板に書いたりするときに英語も付け加えてもらえると嬉しいです。
授業の内容では、「光合成の重要性」のところで、酸素濃度が上昇した結果、温室効果が軽減されたという説明があったけれど、これは酸素濃度が上昇したから割合として相対的に二酸化炭素濃度が減ったということなのか、あるいは二酸化炭素の量自体が減ったということなのか(もしそうなら、それがなぜなのか)が、いまいちよくわかりませんでした。
動物が光合成をしない理由、というのはとても面白かったです。広い面積を持って移動するのは効率的でない、という先生の推論とほとんど変わらないかもしれないけれど、私の言葉でいうと「(広い面積と移動する能力を)同時に持つことのメリットよりデメリットが多いから」というふうに理解しました。つまり動くための筋肉と、広い面積(葉っぱが沢山、とか)というのは簡単には相容れないわけで、わざわざそれら2つを機能として併せ持つ器官を持つ、あるいは自分の体に広い面積を確保する部分と動くための筋肉を別々に同時に持つよりは、「役割分担」するほうを選んだ、という感じ。
A:プリントは、もう少し大きくしようかとは思ったのですが、字だけのスライドだと今の程度でも問題ないし、と思って、今の大きさにしました。今回でいえば、時間と空間のスケールで見た光合成のスライドなどは、確かにもっと大きい方がいいですね。できるかどうか考えてみます。
温室効果の軽減は、二酸化炭素の吸収によります。これは、酸素が増えたから、相対的に二酸化炭素の濃度が減ったということでなく、光合成の反応では、二酸化炭素の吸収と酸素の発生が1:1の関係でおこることによります。
動物が光合成しない理由は、確かに役割分担という言葉でも説明できるでしょうね。