植物生理学I 第6回講義
実際の研究例−植物の低温障害
第6回の講義では、植物の光合成の低温阻害のメカニズムについて、具体的な実験例を、1つの実験から論理的に導き出される推論・結論をもとにさらなる実験を計画するという、研究のプロセスに重点を置いて紹介しました。また、研究で使われる、光合成の部分反応測定法や、酸素電極測定法を簡単に紹介しました。
Q: 低い温度によって光合成活性が低下するが、それは光合成経路のどの部分が阻害されることによるのかが、今回の講義のテーマだった。光化学系のPSI、PSIIは、温度の変化によって異なった速度変化をおこなうことは、初耳で興味深かった。
ところで、疑問に思ったのだが、この2者の反応速度はどのように別々に測定するのだろうか。授業で紹介された、試薬を添加する方法では、PSIの反応速度は測定できても、PSIIの速度はPSIに独立に測定できないように思われる。また、両者を合わせた全体の反応速度はなぜPSIIのものとイコールではないのかわからなかった。
A:PSIIの部分反応の測定は説明が不十分でした。単離したPSIIで測るときはDCIPという試薬を加えてその色の変化を見ればよいのですが、PSIも存在するときには、DCIPを加えて酸素電極によって酸素の発生量として測定します。説明ではその辺が混ざってしまったかも知れません。また、PSIとPSIIを合わせた全体の反応速度は、光が非常に弱い光律速条件ではPSIIの活性に一致します(光が弱いと、PSIかPSIIのどちらかが律速になりますから)。しかし、光が十分強い条件では、PSI, PSII以外の部分(b/f複合体など)が律速になりますから、全体の活性はPSIの活性より、PSIIの活性より低くなります。
Q: Chillingが光合成を阻害するという論文だけで、条件によってどの過程を阻害するのかということでいろんな結果が出ていて(その一つ一つは嘘ではないんだろうけれども)、そのことについてあまり「どうしていろんな結果が出てきてしまうのか?」ということが問われなかったということに対してびっくりしました。例えば自分がレポートを書く時に「ChilingはPSIを阻害することで光合成を阻害する」と書かれている文献を最初に見つけてしまったら多分、これはどういう条件なのか、自分がやったものと同じなのかということをいちいち考えずにレポートに書いていたと思います。今まで文献を疑うこと(事実かどうかというよりも、自分のやっていることとその文献は本当に同じ事なのかを疑うこと)をいかにしていなかったかということに気がつかされました。DCIPとか、夏にやった植物生理のラボで出てきた試薬名がでてくるとなんであのときこれを使ったのかということが分かって面白いです。(当時はDCIPって何に使っているかあまり理解せずに実験をしていてレポートを書く時点でやっと何のことか分かったため)最後の方は難しくてあまりついていけなかったような気もしましたが、やっぱりこういう形式の授業のが実践的だと思うし私個人にとっては嬉しいです。そして、どういう実験をするのが有効なのか、どう解釈して理論化すればいいのか訓練したいです(とはいってもまだ一人で実験をしたことはないのですが)。もっといろんな実験の例をやってほしいのでよろしくお願いします。
A:実験と講義のかねあいというのは難しいですよね。実験をせずに講義を聴いても内容が実感できないし、講義を聴かずに実験をしても内容がわからないし。本当は1つのテーマごとに実験と講義を組み合わせるとよいのでしょうけど、なかなか実際にやろうと思うと時間的にも難しいでしょうね。
Q:今回の講義では、阻害がどのように起きるかの理由などを、考えたりすることができた。一つ一つのデータを、なぜそうなったかや、どのよう考えがあるかなどを知れて非常に興味深く、楽しい分野でした。この講義で興味をひかれたところが2つあります。まずchemical処理とphotochemical処理をしたものとでは、PSI activatesが大きく違う理由に、光では電子受容体が壊れていると電子を受け取ってもらえない、電子受容体が阻害されていると考えられるから、還元剤や酸化剤を加えたchemical処理とグラフが違うという論理での説明。次にチラコイド膜に過酸化水素を、光をあてたものとあてなかったものとのグラフの違いでの部分です。暗所では全く阻害を受けていないのに光をあてると阻害を受けているというのは、過酸化水素自体は阻害を起こさないという矛盾が生じる理由を打ち消す説明が非常に興味深かった。光を当てる事によって、光化学系Iの鉄イオンが電子を受け取る事で、還元型の金属イオンになり、過酸化水素が変わってしまったと考えるという説明を聞いて、グラフひとつのデータでこんな考え方もできるんだなあと実験の結果に対する考え方を変えられました。
A:高校までの生物学は、一般に暗記科目として認識される場合が多いようですが、生物の研究というのは暗記とは全く違うんだということをわかってもらえたらうれしいです。Science である以上、論理性というのは常に必要です。
Q: 細胞内の液体が凍ることによる細胞破壊以外で、植物の低温障害について学んだのは初めてであった。加えて、chilling
とfreezingの違いを考えたこともなかった。教わってみれば、確かに
freezingな気温ではないにしても0℃~15℃くらいの低温でも植物は枯れてしまう。そのようなことに疑問すら抱かなかったが、生物の研究などはすべて小さな「なぜ」から始まるような気がした。
今回の授業も、非常に有意義であった。グラフや表の説明も詳しくしていただいたので分かりやすかった。ただ、それらの表の意味が分かったとしても、そこから読み取れる結果を考察するのはやはり難しい。経験と知識をこれからゆっくり養えたらと思う。また、すべての実験がひとつひとつ意味があり、各々の結果が合理的につながり、そしてひとつの大きな結論につながるさまもまた、学ぶことの楽しさを助長してくれているように感じる。
また、酸素に電子が渡ることによる活性酸素の発生、それに伴う過酸化水素、そしてハイドロキシルラジカルの発生が低温障害の要因である可能性が高いということであった。以前、光の消去のために過酸化水素を故意に作っている可能性のことについて学んだが、同じ物質、しかも基本的には植物そのものにとって有害である物質が、時には植物を保護する役割を果たしていることに少なからず驚きを覚えた。
A:生物は利用できるものは何でも利用するようです。たとえ、有害な活性酸素であろうとも、それが過剰なエネルギーの消去に役立つのならば使ってしまえ、ということでしょう。「小さななぜ」は本当に大事ですよ。
Q: In my opinion, the previous lecture
was the most interesting one that we have
had so far. I really enjoyed learning, and
actually utilizing the information that we
learned in previous lectures. On the whole,
it was very challenging, and at times, a
little difficult to follow. Some people might
not agree, but I felt that it would have
been better if you retraced your steps more
often during the explanation of the experiment
because it was so easy to lose the big picture
and to get lost in details.
It seems so difficult to get some results
for a single experiment. Even though we were
shown just the data of successful processes
in the experiment, it still is such tedious
work, which requires lots of cumulative thinking.
Just to move on to the next step, the resulting
data from the previous step must be considered
carefully. The experiments that we perform
in our labs are not nearly as complicated,
obviously because we already know the results,
but I still feel that they are difficult.
I suppose that it takes experience to get
used to developing experiments.
In an experiment, it is vital to get organized.
One of the most important things to consider
is the variables in each experiment. For
example, in one of the first experiments
the rate of photosynthesis relied on the
changes in temperature and amount of light,
when other variables such as nutrition and
amount of water, etc were not changed. Organization
is required in order to prevent holes in
the argument. Of course, this is not restricted
to scientific experiments, but applies to
other areas of study as well.
Moving on to the lecture itself. The reaction
of producing super-oxide and water from oxygen
became clear to me. But I missed something
very important. Where exactly does this reaction
occur? Since the quantity of MV effects the
production of the hydrogen peroxide, is it
right to assume that the reaction occurs
near the PSI?
Reflecting the lecture, and my understanding
of the lecture, it is likely that I learned
more about how to think about preparing and
executing an experiment than learning “pure”
facts. I have to admit, I am unsure of what
exactly I need to know to understand the
experiment better…
A:お察しの通り、活性酸素の主な発生部位は光化学系Iの還元側です。もっとも、光化学系IIでも1重項酸素が発生して、光阻害の原因になると言われています。生物学にとっては、もちろん、pure facts も必要ですが、これは必要なときに自分で調べることもできます。まずは、生物学のおもしろさがわかってもらえれば一番いいと思っています。
Q:植物の低温障害についての実際の実験例についての授業でした。植物によっても色々と違うとおもいますが、光合成の限界の温度というのは存在するのでしょうか?植物はその植物にとって自然の環境に適応している機能をもっているがもしその植物が違った環境に移されてしまった場合、その植物はその環境にだんだんとAdaptして自分を進化させていく。その進化に成功した本来の環境とはちょっと違う環境で生えている同じ種類の植物でもやはり同じ実験結果がでるのでしょうか?
A:「光合成の限界の温度」というのが何を意味しているのかは微妙ですが、当然、凍ってしまえば光合成の反応は進行しません。また、光合成反応は温度依存性を持ちますから低温では速度が低下し、ひいては生育速度も低下します。このほかに、授業で紹介したように chilling による傷害が一部の植物で発生します。この傷害は低温耐性の植物では見られず、低温感受性植物では10℃付近を敷居値にそれより低温で現れます。この敷居値は標高の異なる場所に生えている近縁の植物で、少しずつ違っていたという報告はあります。
Q: 今回の授業で、実験のデータから結論を導いていく過程を聞いていて、すごい、と感心しました。実験結果を解釈して、そこから論理的に結論を組み立てていく、といったことを一からやっていくのはとても大変なことだと思います。現に、私は授業中に配られたハンドアウトに載っているデータの解説を聞いて初めて、そのデータの持つ意味が理解できました。同じ植物の中でも、寒さに強いものもあれば、弱いものもある。植物の間でこのような違いが出てしまったのはなぜだろう、と思いました。個人的には、寒さに弱いよりも強いほうが生き延びるためには有利なように思えるのですが。寒さに弱い植物は、普通冷気にさらされることのないような環境で育つようなものばかりなのですか?だとしたら、寒さに弱い植物は、寒さへの耐性を持つためにわざわざコストをかける必要がない、ということで納得できるのですが。また、実験の結果から、寒さに強い植物でも弱い植物でもPSI自体は同じであり、寒さに強い植物は冷気にさらされた時、PSIが壊れないよう保護するシステムが葉の中にあるのではないか、とのことでしたが、そのシステムがどのようなものかはもう解明されているのですか?
A:低温感受性植物は、基本的にその原産地においては、低温にさらされることがないので、低温耐性を持つためのコストをかけていないと解釈しています。保護するメカニズムについては、いくつか候補は考えられているのですが、まだ確定するまでには至っていません。
Q:実験データを分析して、論理的に話を進めていくところがとても面白かったです。一つの事に着目して、仮説を立ててそれを実験し、立証していく事にも興味を覚えました。いろいろな植物についてその特性を広く浅くもやって欲しいと思います。
A:了解しました。
Q:今回の授業で、一つの疑問の答えを出すのには長い時間がかかることがよくわかりました。「植物の低温障害」が起こる条件としてまず温度による影響が光合成のどの段階で起こるものかをしらべ、PSIであることを結論づけてから、さらに低温処理した際のPSIが律速条件になっている原因を、光粒子と酸素にあると考え、低温処理下でO2を含む空気とN2のみ含む環境下でのPSIの反応を調べることで酸素も阻害条件の一つであることを結論づけ、また、光粒子についても、化学的PSIを活性化させるときと比べることにより、光粒子も阻害条件の一つであることを導き出しました。しかも、そこからさらに、葉そのもので阻害と、PSIが行われるチラコイド膜での阻害を比べることにより、葉では低温でのみ見せた阻害を、チラコイド膜では温度にかかわらず阻害されることを見つけ出し、さらにそれは陰生植物、陽生植物にかかわりなく出てくることがわかりました。(ちなみに、プリント3のCucumberとSpinachのチラコイド膜での阻害を調べる実験のグラフで“100μE/m2/s”と”300μE/m2/s”は光の強さを表しているという理解の仕方でいいのでしょうか?)ここで、通常の温度である“25℃”で処理したチラコイド膜における光粒の影響を光のある場所とない場所で比べ、結果を見ると化学的には光のあるなしにかかわらずPSIが進むのに比べ、光のある場所での光粒子の活性化率が低くでました。ここで、より詳しくチラコイド膜と葉とで起こる温度による阻害を調べると明らかに葉とチラコイド膜で違いが出ました。
この辺までは、なんとなく流れがつかめたのですが、この辺から、果たして何が本当に阻害をもたらしているのか混乱してきました。はじめは「低温」阻害といっていましたが、流れを見ていると、「温度」による阻害というよりは「光」による阻害の話になっている気がしました。プリントで、In
Vivo と In Vitroで温度に関係なく光の影響を受けるが葉にはその光の影響から守るsystemが存在すると考えられることはわかるのですが、これは同時にその保護systemそのものが温度と植物種に影響を受けていると理解するので正しいですか?さらに、4枚目のプリントで、”The
presence of oxygen and the reduced iron-sulfer
centers are necessary for the inhibition
of PSI”のグラフが何を示しているのかわかりませんでした。加えた物質が起こす効果がいまいち理解できず、このグラフによってO2が阻害に必要であることを示しているとして、その後のグラフで、O2がどのように影響しているかをMVに注目して調べているのはわかりましたが、なぜMVにのみ注目したのかが理解できませんでした。ここまでくると、最終的に何が結論であったのかがはっきり理解できませんでした。PSIに存在する金属イオンが活性酸素と酸化還元反応を起こすことが結局酸素が阻害を起こす原因の一つになるメカニズムであることを示したかったのでしょうか?
今回、葉の中に光からPSIを保護するSystemがあり、そのSystemは低温にすることによってこわれると結論付けられましたが、その保護Systemそのものの研究はなされているのでしょうか?さらに、その保護Systemと温度の関係は実証されたのでしょうか?
最後に、今回の授業で一つ思ったのですが、学部生にとって、測定器具をあまり見たことがないため、器具の説明をして下さっても、たまにぴんとこないことがあります。もし、よろしければ、器具の写真(全体をあらわすものなど)みたいなものをOHPで見せてくださるとより理解できてためになるとおもいました。また、ふだん、Text内容をあつかう本はたくさんあるのですが、実験に必要な器具などを説明する本があまりみあたりません。そういった本で参考になるものを知っていらしたら教えてもらいたいです。
A:最初の質問の“100μE/m2/s”と”300μE/m2/s”は、推察の通り光の強さを示しています。2番目の質問の「その保護systemそのものが温度と植物種に影響を受けている」というのもその通りです。活性酸素のところは少し難しかったでしょうか。おさらいをしますと、
1)阻害には酸素と光化学系IIから流れてくる還元力の存在が必要である。
2)このことは酸素の還元による活性酸素の発生が阻害の原因であることを示唆する。
3)そこで活性酸素消去剤の影響を調べたところハイドロキシルラジカルを消去する試薬で保護効果が見られた。
4)ハイドロキシルラジカルは過酸化水素と還元型の金属イオンとの反応で生じることが知られている。
5)そこで過酸化水素を暗所で加えたところ全く阻害効果はなかった。
6)従って過酸化水素自体は阻害効果を持たないことがわかる。
7)光が当たっていると阻害が見られるが、そこへ過酸化水素を加えると阻害が促進される。
8)このことは、光によって還元型の金属イオンが生成し、それと過酸化水素の反応でハイドロキシルラジカルが発生している可能性を示唆する。
9)系Iの電子受容体として働く鉄イオウセンターは中に金属を含むことから、光によって還元された鉄イオウセンターが、この還元型の金属イオンとして働いていると考えられる。
といったところです。保護Systemについては上にも書きましたが、決定的な証拠は得られていません。
実験に必要な器具を説明した本というのは、確かにあまりありませんね。光合成の分野では、むかし、「光合成研究法」という本が出ていましたが、これは今出ているかどうかわかりませんし、内容もかなり専門的になってしまいます。
Q:今回のテーマ、植物の低温障害は気付いていながらもあまり気にすることがないテーマだけに、それだけで興味深いものでした。実際の実験手順と考察方法にのっとって、低音により光合成が阻害される原因を調べていく解説は非常にエキサイティングで、興味が持てます。無味乾燥な解説と違い、実際の研究をどのように行っているかが解り、非常に参考になりました。実験や研究の思考法というのは身につけるのが大変なだけに、この種の講義は貴重だと思います。ただ、解説の最中で、実験の方法論から話が膨らみ、そのために実験の目的などが解りにくくなりがちでした。そのため、ついていくのが大変かもしれません・・・・・・それもこの種の講義の醍醐味かもしれませんが。なお、徐々に温度を下げていった時に生産されるプロテインがどのようなものか気になり、調べている最中です。
A:確かに、実験をわかってもらうには方法論の理解が必要である一方、方法論にこだわりすぎると、実験の目的がかえってわかりづらくなるかも知れませんね。その辺注意して進めたいと思います。
Q:今回の授業もやはりデータの解釈が追いつかず、全体を見通すことも難しかったのですが、概要を振り返ると、光合成に関係する低温障害についてその障害の温度依存性から光化学系の阻害が予想され、PSIとPSIIの個別分析からさらにPSIに原因があると考えられ、最終的にはその中でもP700ではなく電子伝達体が破壊されてしまうためという流れだったように思います。また、鉄‐硫黄センターがMVによって特異的に阻害(酸化)されると過酸化水素からヒドロキシラジカルが生じないため阻害が緩衝されるという説明も何とかついていけました。この程度の理解から考察することは難しかったので今回は先にもあげたデータ解釈についての質問と感想をもってレポートとさせていただきます。
議論のはじめのところでつまずいてしまったのですが、やはり低温障害がある温度をさかいに発生する事実からこの障害が光学系によると考えられるのかが分かりませんでした。あとは感想になってしまうのですが、電気泳動の実験で得られたバンドの解析で当初考えていた結果と異なるものが現れたときにその理由を考えてみることの大切さを感じました。失敗をするとどうしてもいいかげんに処理してしまいがちだった自分の実験態度を見直したいです。つぎに葉そのものを用いた実験とチラコイドを抽出して行った実験の対比について思ったことですが、後者は対象こそ生体組織ですがやっていることは化学とあまり変わらない気がしました。このことから、生体を対象とするときはサンプリングする組織そのものだけでなく、その組織が生命活動、もしくはそれに順ずる相互作用をまだ行っているのかというのも考慮しなければいけないのかなと思いました。
A:傷害を引き起こす温度に敷居値があることに注目して実験を進めたわけですが、低温障害の原因が光化学系にあると考えた理由は、そこにあるのではなく、光が光合成を律速するような弱光下でも光合成の阻害が見られたことにあります。例えば、もし炭酸固定系が阻害部位であれば、光を弱くしていって光化学系が律速になったときに、阻害によって炭酸固定系がどうなっていようと光合成の速度は律速された値で変わらなくなるはずです。この論理はわかりますか?
試験管内の実験についていえば、生物学と称するからには、常に、その実験が生体内での反応を反映しているのかどうかを考える必要があると思います。
Q:本日の授業では、データーから組み立てられるロジックを主に展開されていました。なので、「ああ、なるほど」と思うくらいで、あまり疑問に思うことはありませんでした。ただ、今回の授業は、全体を通して何を言いたかったのか、つまり、テーマが掴みづらかったです。個々のグラフが言いたいこと、個々のグラフから読み取れること、はわかるのですが、それらの関連性がうまく掴めませんでした。要するに、ヒル反応のことを述べるための前振りということなのでしょうか?
ヒル反応について調べましてみました。ヒル反応:要点は、光合成の際に発生するO2は、CO2由来ではなく、H2O由来であるということ。O2の生成量には、CO2の量は関係ない。また、H2Oからの電子は最終的にNADPへと授与される。反応式は、以下のとおり。
2H2O+2NADP+光 → O2+2NADPH+2H+
この反応は、1937年に英国ケンブリッジ大学の生化学者ヒル(R.Hill)によって発見された。酸素の発生を促進する物質(酸化剤:FeBr3)を加えておけば、CO2の吸収は起こらないのに酸素発生が起こることを発見した。以後、この反応の原理は、明反応を暗反応と切り離して解析する有効な手段として用いられるようになった。
また、酸素発生のしくみについて。現在に至っても、不明な点が最も多く残されている分野である。現在では、4つの段階を経て、2分子の水から4個の電子と4個のH+を引き抜くことによって酸素原子をO2として遊離させると考えられている。このこともヒルが発見した原理に基づいていることがわかる。
A:今回の授業は、内容というよりは、実際の研究を進めるにあたって、どのように実験をデザインし、得られた結果からどのように論理を展開していくか、という点に注目しました。内容的には、植物の低温傷害のメカニズムではありましたけれどもね。
Q: 今回の授業では植物が低温障害を受ける原因について、実際のデータを解析しながら実験を重ね、事実を導いていきました。一つの事実を発見するためには様々な角度からアプローチが必要で、事実を導くための実験を疑似体験しているような授業構成は面白かったです。新たな実験へと進むときのアイデアには感心させられ、とても興味深かったです。しかし、たくさんの情報が次々と与えらる授業スタイルなので説明についていくのがやや大変でした。
植物の低温障害は光化学系Iを壊してしまうが、チイラコイド膜を単離してみると低温耐性植物でも障害を受けてしまうことから、葉には障害を回避するシステムがあるが、低温環境に置かれることによって機能しなくなってしまうという仮定から始まり、障害が起こる条件として酸素が必要であることからFeX‐が還元型金属イオンとして働き最終的にハイドロキシラジカルが生成してしまうことが低温障害の原因であるという結論が導かれましたが、やはりハイドロキシラジカルは生命にとって邪魔ばかりする存在なのだと実感しました。
A:ハイドロキシルラジカルは拡散律速といって、その反応性が高いため、他の物質との反応速度はハイドロキシルラジカルの拡散速度自体が律速してしまいます。つまり、ぶつかりさえすれば相手を壊す、といってもよい物質です。ただし、生体の防御反応などの中で、活性酸素をわざと作って外敵を攻撃するという例はありますよ。