植物生理学 第3回講義

生体のエネルギーと代謝

第3回は、光合成の代謝を理解するために、解糖や好気呼吸、発酵といったエネルギー代謝系の概略を説明し、一部脂質代謝や窒素代謝についても触れました。今回の講義に寄せられた意見の中からいくつかを選び、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の講義で興味を持ったのはなぜNADHが生物のなかで多く使われているのか。ということでした。酸化剤にもなり還元剤にもなりうるような物質なら他にもありふれていそうなのになぜNADHなのでしょうか。これについて自分なりに推測してみました。まずNADHの特徴として注目すべきなのは地球上にありふれている物質との酸化還元電位(差)の大きさです。これが大きいことで高い反応性を発揮することができます。この電位が外界の物質に対し高すぎたり低すぎたりすると、酸化か還元のどちらかしかできなくなってしまうのに、NADHは高すぎず低過ぎない電位を表すために、見事に代謝を行うことができるのだと考えました。

A:今までいろいろな大学で、代謝関係の講義をしてきましたが、このような観点からレポートを書いた人はいませんでした。それで紹介したのですが、途中、ちょっとわからない部分があります。括弧内は僕が追加した語句です。「物質との」というからには「差」だと思うのですが違いますか。また、酸化還元電位の差が大きいと、反応性が高いかというと一概には言えません。これは講義の中で話した活性化エネルギーが効くからです。


Q:個々の生物がもともと持っている酵素などによってエネルギー獲得様式や代謝経路が異なり、それによって得られる最終産物や中間生成物もまったく違う。そのような性質を利用して、人間には代謝できない汚染物質を微生物が分解する場面も少なくない。そこで、私が注目したのは嫌気性生物処理である。最終的に燃料として利用できるメタンを生成するメタン発酵という代謝反応を用いている。このメタンを作ることのできるメタン生成古細菌は生育のためのエネルギー源が四種の有機物と水素ガス、炭素ガスとかなり限定されていて、まずそれらの有機物へと分解するために加水分解、酸発酵、酢酸発酵という段階が必要とされる。この各段階に関与する他の微生物うちひとつでも機能が低下し、妨げることがあれば反応はうまく進まなくなることから、代謝阻止物質を除去したり、pHや温度条件を整えることが重要視される。最近は、糸状に増殖して絡み合うメタン生成古細菌の周りを酢酸や水素ガスを生産する細菌が取り囲み、 またそれらをおおうようにして有機物を有機酸に分解する微生物が集合して形成されている顆粒状の塊が微生物の共生構造体として注目されているらしい。表面から取り込んだ有機物から最終産物のメタンまでの経路が直接つながった効率の良い形をしており、生態系をうまく利用して廃水処理のために存分に発揮できると言える。

A:ある点について注目してそれについて調べてみる、というのは良いのですが、レポートとしては調べたことについての考察が欲しいように思います。最後の一文がそれに相当するのかとも思いますが、せっかく調べたら、もう一押し、自分なりの考えを推し進めて欲しいところです。


Q:動物はエネルギーを自ら作り出すことはできない。だから、他の食物や必要なものを取り入れることで生きている。体にいいとか美容にいいなどといったものは世の中にいくらでもあるから、どれだけ摂取すればいいのか?と気が遠くなるほどだ。 これだけ、いろんなものを取ってエネルギーを得ているのにヒト、いや従属生物全般の動物は不要なものを排出するのにエネルギーを使う。これは矛盾することっだと思った。栄養にはならないし、捨ててしまうものなのになぜ違う物質に変える必要があるのか分からない。排出するものが有害であるから、それを緩和していると言われれば納得できないわけではない。しかし、それをどうやって動物は自分の出すものが有害だと分かったのか、疑問である。一番の例のアンモニアの排出で言えば、ヒトは尿素として、両生類は水中生活と地上生活でアンモニアのまま出すか尿素として出すかで分かれている。鳥類にいたっては、尿酸として排泄する。鳥は体を軽くして、空を飛ぶために尿酸という方法を取ったらしい。でも、体重が軽いものならみんなこれでいいのになんで分ける必要があったのか、この関係は考えれば考えるほど不思議である。

A:確かにいろいろ不思議な点はあるのですが、せっかくここまで考えたら、何か自分なりの仮説を、「トンデモ理論」でもよいので考えて欲しいところです。


Q: 私が今回の授業で興味を持ったことは、バクテリオクロロフィルによって光合成を行うバクテリアが一つの光化学系(PS)で光合成を行うのに対して、植物が光合成を行う時には二つの光化学系を用いていて光合成しているということです。バクテリアは光化学系を進めるための酵素を酸化できる物質が身の回りにあれば、一つの光化学系の反応で進められますが、植物は酸化還元電位の低い水という物質を酸化するために二つの反応が必要です。プリントのエネルギー図をそれぞれの生物で見比べたところ、PS1と他のバクテリアの光化学系は似ています。だから、植物はバクテリアなどの原核生物が水を酸化するために生体膜にPS2を発達させて誕生したと考えられるので、このことは進化の過程を考えるとやはり原核生物から進化して植物が誕生したという証拠になると思いました。

A:水を酸化するために系IIを発達させた、というのはその通りでしょうね。ただ、反応中心の中身を見ると、ある種の光合成細菌は系IIに似ていて、別種の反応中心は系Iに似ています。つまり、系IIも、土台は片方の光合成細菌の反応中心だった、ということですね。


Q:今回の授業で、クエン酸回路でわざわざ炭素数を増やしていることの意義が分かった。 活性化エネルギーを生物の体温内で得るため、また、発生するエネルギーを熱として放散させないために反応を分割させる必要がある。この分割を実現させるためには、何通りもの化合物が必要となる。そのために炭素数を増やす必要がある。とても道理に適ったやり方だと思う。進化の過程で、このやり方を確立した生物以前の生物はどのような代謝経路をしていたのだろうか。やはり、エネルギーを発生させることも、それを効率良く使用することもできないような経路だったのだと思う。 また、代謝経路の決まり方も分かった。何通りもの経路を設定しておくことにより、もし1つの経路が何らかの変化により駄目になったとしても、他の経路の酵素の働きに よりATPの産出が止まらなくてすむ。この話で、グルコースを含む培地で培養されている大腸菌をラクトースを含む培地に移すと、すぐにはラクトースを利用することはできないが、後にラクトースを利用するための酵素を作り出し、これによりラクトースを利用できるようになるという現象を説明できると思われる。

A:「何通りもの経路を設定しておく」とありますが、細胞内には膨大な種類の化合物と酵素があるわけですから、わざわざ設定するというよりは、区分けしてなければ自然といろいろな可能性が生まれてしまう、ということだと思います。オルガネラの話をした時に触れましたが、オルガネラの機能の一つは、細胞内に区画を作ることによって、そのような可能性を少しでも限定する、ということなのだと思います。


Q:ミトコンドリアはプロトンの濃度勾配をエネルギーとしてATP合成を行うという理論はイオノフォアを利用して検証できると考える。まず、プロトンを通過させるイオノフォアをミトコンドリアに投与してプロトンの濃度勾配を平均化する。そして、ATPの有無を調べるためにルシフェリン・ルシフェラーゼを加えて発光の有無を確認する、あるいはグリセリン溶液で処理した筋繊維の収縮の有無を確認する。発光・収縮が確認できなければ化学浸透説は正しい、逆に発光・収縮が観察できれば誤りと解釈できる。また、イオノフォアがミトコンドリアの内膜で作用しているか確認するためにイオノフォアに蛍光色素を付けて存在位置を観察する、イオノフォアが膜に入り込むこと自体がATP合成を阻害していないか確かめるためにプロトン以外のイオンと通過させるイオノフォアをミトコンドリアに投与するといった実験も並行して行うと、より信用できる実験になると考える。

A:そうですね。ミトコンドリアでも化学浸透説の証明をすることは可能でしょう。ヤーゲンドルフが葉緑体を使った理由は、ミトコンドリアより葉緑体の方がはるかに単離しやすい、ということがあったのではないかと思います。


Q:ATP合成酵素の模式図を見ると3つのサブユニットでは空、ADP、ATPと回転に従い反応が起こるようだが、3つのサブユニットでそれぞれ別の反応が行われるのはひどく複雑に思え、回転の利点もよく分からなかった。回転はプロトンの濃度勾配によるものなので、反応にかかわらず常に回転し、その回転によりATPが合成されると考えると、各サブユニットではばらばらにATPが合成されているのではないか。このことはプロトン濃度が一定の条件でATP合成酵素の回転速度を一定に保ち、ADPとPの濃度とATP合成速度との関係を調べることで分かるのではないか。回転の利点は、回転速度とATP合成量との関係を調べることで分かるはずだ。ただ、回転を利用した反応経路の解明については何もいい案が浮かばなかった。(これってもう分かってるんですか?) また、120度の回転角について考えてみた。これは物理的に意味がありそうで、90度や180度の回転角に比べ、回転に効率的な構造なのではないか。さらに、サブユニットは回転しやすいような形状になっているのかどうか立体視できたら面白いと思う。

A:実は、ATP合成酵素には、共役因子(カップリング・ファクター)という別名があります。これは、プロトン濃度勾配とATP合成を共役させる因子、という意味で、ATP合成ができない条件では、プロトンが酵素部分を通らなくなってしまいます。逆にATPが多くあると、ATP合成酵素が逆回転して、プロトン濃度勾配を作られます。つまり、プロトンはATP合成酵素を単に通過するのではなく、酵素の回転(やATPの合成)と結びついて(共役して)いるのです。


Q:なぜ発酵の際ピルビン酸をわざわざ乳酸やエタノールの形にエネルギーを使用してまで作りかえるか、その理由がNADHをエネルギーを消費してNAD+を得るためだという説明に対して疑問を持つ。どの道エネルギーが必要だからNADHが作られるのであり、それを作るためのNAD+を作るために使うというのは本末転倒である。またピルビン酸を化学変化させるためだけにブドウ糖を消費するのはあまりにも無駄である。NAD+が不足するからだとは言うが不足するならNAD+を大量に作っておくことはできないのだろうか。そちらのほうがわざわざ作ったエネルギーを消費するという行動よりよほど合理的な気がする。また体内でエネルギーを使う速度を上げることはできないだろうか。そうすればNAD+は増えていく。 植物は二酸化炭素を有機物に還元する目的にNADHを使うため発酵しないといったが微生物でもエネルギーがあれば増殖のための細胞周期の回転速度を上げるのではではないか。だが実際に植物は発酵をしないし微生物は発酵する。植物は回路の回転を早めることができるが、微生物ではそれには限界があり植物より低いのではないか。だから大量のNADHがあってはいけないのではないだろうか。

A:面白い考え方ですね。ただ、まず注意しなくてはいけないのは、ATPはエネルギー物質といってもよいと思いますが、NADH自体は還元剤であり、周りに酸素などの酸化剤があって初めてエネルギーに変換しうるのです。ですから、還元的な環境にあっては全く役に立たないのです。 次に、大量に作っておくことができるかどうかです。NADHでは計算した例を聞きませんが、ATPでは良く教科書に載っています。人間が1日に使うエネルギーを全てATPの形で持っていようとすると、だいたい体重分のATPが必要になります。これではどうにもなりませんよね。だからこそ、生物は、エネルギーを糖や脂質の形で貯めていて、必要な時にATPやNADHに変換するようにしているのです。


Q:今回の授業で驚いたことは,全ての生物がクエン酸回路を持つわけではない,ということだ。αケトグルタル酸とスクシニル酸の間が切れているシアノバクテリアがあるという。そもそもクエン酸回路は,電子伝達系とともに働き炭水化物,脂肪,たんぱく質などを水と二酸化炭素に完全に分解し,ATPを効率よく生産するためにある。ここでクエン酸回路が切れている生物がいる,ということは,クエン酸回路は完全じゃなくても生物の全ての活動に大切なATPは必ず作り出すようになっている,ということだ。αケトグルタル酸とスクシニル酸の間で切れているということは二酸化炭素がひとつ作り出されないから,非常に効率が悪いように思えるが,もともとクエン酸回路は計算でだしたような100%効率というものではないし,可能性は大いにありうる。しかし,最終産物,つまりαケトグルタル酸とスクシニル酸が溜まってなにか影響があるのではないか?クエン酸回路は名の通り,サイクルになってることにより最終産物をなくしている。切れた回路では最終産物がなにかしら溜まってしまう。 αケトグルタル酸とスクシニル酸はグルタミン酸とヘム合成の生合成に関与している。過剰なグルタミン酸は神経細胞に影響があると聞いたことがあるので,なにかしらシアノバクテリアにも影響があると考えられる。ところが実際にクエン酸回路の切れている生物が存在することから,それらは最終産物を消費するか逆に戻す経路を持っていると思う。

A:教科書では、代謝経路というのは、この道を通る、と決まっているように書いてありますが、実際には、様々な経路があって、その中で一番「流量」が多い経路に名前を付けているだけなことが多いのです。ですから、クエン酸回路の場合も、他の経路から代謝が進み、ある物質がたまってしまう、ということはないようになっています。


Q:今回の授業で私が興味を持ったのはATP合成酵素が回転することによってATPが合成されるということです。今までATP合成酵素がATPを合成するという事実は習ったので知っていましたが、どのように合成されるかについては考えたこともありませんでした。その上、ミトコンドリアの膜上を回転しているということには驚きました。ただATP合成酵素が3分の1回転すると1分子のATPを合成するらしいですが、回転すること自体にはATPは利用されないんだろうかと疑問に思いました。もし、ATPを合成するためにもエネルギーを使うのであれば、若干効率が悪いように思います。それでも合成に利用するエネルギーは微々たる物なら、多少の消費は問題ないでしょう。1分子のATPでどれだけの仕事ができるのか、ATP合成に利用するエネルギーがどれほどなのか興味があります。

A:確かに!。ATP合成酵素を1回転させるのに必要なエネルギーがATP何分子に相当するのかを計算してみるのは面白そうですね。


Q:今回の講義では、ちらっと出てきた動物がアンモニアを捨てるためにエネルギーを要するという点が気になった。アンモニアには神経性や皮膚刺激性の毒性がある。体内にあるアンモニアを体外に排泄しなければ、高アンモニア血症になってしまうだろう。ただ、わざわざエネルギーを使ってアンモニアを尿素に変換しないで、そのまま固体の防御機構として利用している動物はいないものだろうか。自分の身を守るために毒をもっている動物は多い。その毒をいかにして作っているのか、きちんと調べるにはいたらず反省しているが、天敵に対抗する手段として毒をもつ能力を高めていったとしてもその方法は、摂取した餌を利用して毒を取り出すものや、体内で毒を合成するものなどいくつもあるだろう。それらの動物は、エネルギーを使って毒をつくり保持しているのか。毒を環境中から体内に取り込むだけであればエネルギーはさほど必要ではない気がする。それなら代謝産物を老廃物質としてではなく、有効物質として利用している種もいそうなものだ。アンモニアの場合どうなのでしょうか。

A:非常に面白い考えですね。ただ、天敵に対する対抗手段にするためには、自分には被害が及ばないようにどこかに隔離しておく必要があります。ところが、アンモニアというのは電荷を持たない低分子で、そのままで生体膜を通過することができます。しかも、水に溶けてアンモニウムイオンになることができるので、水の中も自由に拡散することができます。ですから、どこかに隔離しておくことはほとんど不可能なのです。


Q:ミトコンドリアと葉緑体の電子伝達系や化学浸透共役が酷似していることがわかった。ここで疑問に思ったのは、各オルガネラの構造の相違である。ミトコンドリアが表面積を増やし、化学浸透共役におけるATP合成酵素の設置台数を増やすためにクリステを持ったことは合理的であるが、葉緑体のようにグラナを何層も重ねてしまうと、濃度勾配の差がほとんどないチラコイドが隣り合ってしまい、化学浸透共役には不利なのではないか。グラナを持つのはコケ以上の高等植物であることから、陸上植物は太陽光を水中よりも得やすいため、水中と同じように光合成を行うと、過剰な反応により正常な生体を維持できないので、表面積を抑えて、光合成量は少ないが、電子伝達系の酵素を分業的かつ連続的に並べて酵素反応を効率的に行えるようにチラコイドがグラナへと分化したのではないだろうか。これは、藻類とコケの葉緑体を同一の環境および同一の照度に置き、照度の変化に対するATP合成量を測定することで、より深く考察できる。

A:これは、良い考察ですね。実は、なぜ高等植物でグラナを形成するのか、つまりグラナの利点については、まるでわかっていないのです。基本的なことなのですが、いまだに謎で、これから誰かが解明していく点でしょうね。


Q:ATP合成酵素の回転速度について考察しました。アクチンフィラメントをくっつけた状態では、肉眼で確認することが出来た回転速度ですが、『回転子γサブユニットに接続した目印を検すつ出来る限界まで小さくして回転の最大速度を測定したところ、室温で130Hzであった。』(野地研究室HPより抜粋)とあるので、実際の速度はコレよりも大きいようです。 ここで、エンジンの回転速度を調べてみました。メルセデス・ベンツ・M275エンジンの場合、最高出力は373kW/5000rpm対するATP合成酵素のほうは、40pNnm/130Hzところで、
 130(Hz) x 60(s) = 7800(rpm)
馬力の方は比べるまでも無いんですが、回転速度ではATP合成酵素が勝っていることが分かりました。

A:大きいアクチンフィラメントで肉眼で見ることができ、小さくすると130 Hzになるということは、アクチンフィラメントがない、生体内での状態では、もっとずっと速いことになります。馬力の方も、大きさあたりで比べるとどうでしょうか。


Q:今回の授業で私がもっとも興味をひかれたのは、ATP合成酵素の回転に関してであった。ATP合成酵素の回転を証明した実験において、アクチン繊維をどのような手法で合成酵素にくっつけたのか、図のようにガラス基盤にATP合成酵素が垂直に立たせることをどのようにして可能にしたのか、回転しているのはab2-α3β3σ複合体ではなく本当にγε-c12リング複合体の方であるのか、などの疑問が生じたので、実験の手法に関して調べてみた。 αサブユニットN末端を遺伝子操作で6His残基延長しておく。これがHis Tagであり、αのN末端は頭部にあるのでHis Tagは合成酵素の頭部に付く。また、His Tagが強く吸着するNi2+−ニトリロ三酢酸を結合させた西洋ワサビペルオキシターゼでスライドガラスをコーティングする。この処理によりF1F0-ATPアーゼはガラス面にF0側を上にして倒立に接着される。酵素のcサブユニットはGlu2をCysに変異させ、これにアビジンと強く結合するビオチンを共有結合しておく。蛍光ラベルとビオチンを共有結合したアクチン繊維を、ビオチンを強固に結合するストレプトアビジンを介してcサブユニットと結合させる。 以上のように、アクチン繊維のATP合成酵素への結合方法と、ガラス基盤へのATP合成酵素の吸着方法は調べられた。しかし、何故回転しているのがF0だと言えるのかという根拠は得られなかった。もしかしたら、膜に貫通している状態ではこの実験とは逆にγε-c12リング複合体が固定されab2-α3β3σ複合体の方が回転している可能性が考えられるのではないだろうか。 そこで、ATP合成酵素のロータ(回転子)の回転方法について、考えてみた。膜を貫通している輸送体をプロトンが通過すると柄の部分であるγサブユニットが頭部の中で回転して、頭部でATPが合成されると言うが、どのような仕組みで回転するのであろうか。私は、cサブユニットはかざぐるまのような構造をしているのではないだろうかと想像している。そう考えれば、プロトンが通過する際のエネルギーでロータが回転することも、回転の方向がプロトンの輸送方向と関連して一定方向であるのも(しかも反対方向に輸送されるときは逆回転である)大いに納得できる。また先の私の疑問、回転しているのはどの複合体かという疑問も解決することになる。しかしcリングの詳しい構造に関する資料は今回私の力では探し出せなかった。本当はどうなっているのでしょう? 最後に、今回は考えたことと調べたことを全て文章に書いてしまったので、長文のレポートとなってしまったことをお詫びします。

A:別に、メールで出してもらったレポートは「かさばる」わけではないので、長くても大丈夫です。プロトンは、自由に動いていくわけではなく、ATP合成酵素のサブユニットのアミノ酸残基にくっついたり離れたりしながら通過していきます。ですから、風車という感じとはやや異なるかも知れません。