植物生理学 第10回講義

地球の歴史と生命の進化

最終回はやや植物生理学の内容からは離れ、地球と生命の共進化の様子を振り返り、最後に、現在の地球生態系が人間の存在によって以下に不自然な状態になっているかを考えました。


Q:ストロマトライトというのは、シアノバクテリアの増殖と砂の堆積の繰り返しで層を形成しながら成長するということでしたが、ストロマトライトが大きくなったとき、内部のシアノバクテリアはどうなるのでしょうか?当然、内部に埋没してしまい呼吸も光合成もできなずに死んでしまうと思われるのでしょうが、どうでしょうか?もし、死んでしまうのだとすれば、ストロマトライトを形成することはシアノバクテリアにとってのデメリットでしかないのではないでしょうか?

A:もちろん内部のシアノバクテリアは、大昔に死んでいます。東京でビルを建設しようとして地下を掘ると江戸時代の遺跡が出てきたりします。そしてその下には、さらに昔の時代の遺跡が残っていたりします。それと同じで、昔の生活が層状構造になるのは、別にメリットがあってのことではありません。古いものが下にたまる、というだけです。


Q:今回の講義は最後ということで、今までとはちょっと違った視点から植物の活動にアプローチをしていて楽しかったです。地球誕生から現在に至るまで植物がどのように地球環境に寄与してきたかということを改めて学んでみると、植物の存在の大きさには感心させられるばかりで、今も昔も我々生物は植物のさまざまな活動の恩恵にひたり生きていることを感じました。そんな中現在の我々人間の活動が地球のバランスを崩し地球存続の危機にまで発展させようとしていることを痛感し、人間はそのバランスを崩すだけの知恵と力を持っていますが、立て直すように促していけるのも人間だけなのではないかと感じました。
 授業の最後に先生がおっしゃっていたことがとても印象に残り自分も将来まだどんなことを専攻していくか決めかねていますが、地球環境あるいは生態系によいことというか、とにかく人間の都合に合わせた人間の独りよがり的なことだけであるような研究にはならないようにしたいと思いました。

A:人類の生活が今のままでよい思わないのですが、では何ができるか、というと難しいですね。


Q:今回は植物生理学最後の授業でした。色々な普段学ぶ事がないような植物のマクロな世界や実験の知識を自分の物にできたのかな?と思いながら受けた最後の講義でとても感心したことは、地球と人の関係でした。これまで地球の成立が起こり原始海洋の出現が起こり、酸素発生型の生物であるシアノバクテリアが存在し、シアノバクテリアの出すヌルヌルの液体により形成されたストロマトライトなどの存在に至った。このころから地球上の酸素濃度が増えてきて、嫌気生物の生存やそれにあったそれに耐性な進化が起こってきたといわれている。それにより長い年月をかけ現在の高等生物や植物に至っている。このことから考えて思うこととしては、現存する生物の原核及び真核生物はとてもすばらしいものだと感じた。現在地球の温暖化や環境破壊により絶滅してしまった生物や絶滅寸前の生物はこのような環境変化に対する進化がなされていなかったのだろうと思った。少し話がずれるが最近知った知識ではチーターは免疫細胞の寛容性が少なく現在絶滅寸前だと聞いた。ではヒトはどうなんであろう??園池先生もお話になっていましたが、ヒトが絶滅することなんて地球規模からすると何の違和感もないようなことだということには『あ~そうだよな』と思った。しかし僕の勝手な考えだが実際ヒトは自分で自分を苦しめているが、今後反対に地球に合わせた人間の生活に切り替わり、ヒトとして環境の悪化に合ったような施設や機械などの開発などによるイタチゴッコが数百年にわたって起こると思う。それとどうにかして生き延びる為にもどんな手でも使ってしまうであろうと思い、ますます環境破壊などさまざまなことにたいして恐怖を感じてしまう。講義の最後でお話になっていた生態系のゆがみなどもふまえ今後生物工学科として考えられることなどは考えて行こうと思った。

A:確かに、人類もなかなかしぶといですから、そう簡単には絶滅しないかも知れません。ただ、その際に、現在でも見られる人の間の格差がどうなるかが問題でしょう。


Q:私が今回の講義で興味を持ったのはバイオマスについてである。砂漠が森になればバイオマスは増加するが、極相林ではバイオマスの変化はない。このことは考えてみると多少おかしいことがあるように思える。地球上のすべての森が極相林になってしまったとしたら、地球の二酸化炭素濃度は上昇し続けるのではないのだろうか。森以外の場所にも動物は存在し、また、人間がかなりの二酸化炭素を排出している。であるから、現在の温暖化の原因とされている二酸化炭素濃度の上昇は極相林も関係しているのではないかと思われる。
 ここでこの状況を改善するためには逆に極相林を減らせばよいのではないだろうか。木を人為的に切り、それが再生するために活発に光合成するのを利用して二酸化炭素を吸収させるという方法が考えられる。だが、これには動物の生態系の崩壊が伴うだろう。バイオマスの増加には何もない土地が必要であろう。やはり砂漠のような土地の緑化が最も有効ではないだろうか。

A:極相林の二酸化炭素収支が0である、というのは、その中にすむ微生物や動物も合わせての話です。生長した木は最後には腐るわけですが、それには微生物の呼吸が関わります。講義の中で言ったのは、極相林があるからといって、その他の地域で発生した二酸化炭素の吸収源になるわけではない、ということです。極相林の植物自体は、その中の動物や微生物の呼吸と釣り合って二酸化炭素を吸収していることになります。木を人為的に切った場合は、それが腐っては元も子もないので、そこをどうするかでしょうね。


Q:最終回の講義は地球の環境に関することであったが、これから生物分野に携わるものとしては切っても切り離せない関係であるし、生物だけでなく人々全体が考えていかなければいけない問題である。講義の中でヒトのバイオマスは動物のそれの約2割を占めると聞き、驚いた。今までは自分たちのことだけを考えていても寿命を延ばし、繁栄することができてきたが、今後はそうはいかない。食物連鎖における下層に位置する者たちがいて初めて、上層のヒトは成り立つ。下層に変異が起きてる今、それを戻さなければならない。ヒトが減れば下層の者が増えるといっても、医療は発達し続け、ヒトはますます長生きできると思う。ならば私たちが植物を増やす努力をすればよいといっても限られた地球という範囲では限界があるし、現在の地球の状況から簡単にできるものではない。今どうすればいいのかははっきりいってよくわからないけれども、ヒト以外にはこの問題は解決できないし、してはくれない。今後私もそのことを心にとめて、生物を学んでいきたいと講義を聞き、感じた。

A:日本の人口は、今年から減り始めたようですね。ただ、世界的に見るとまだ人口は増加していますから、どうなりますか。


Q:私は、第10回目の講義において、過酷な環境での生態系にもっとも心を惹かれました。人間の暮らす環境からすると過酷で、そうであるが故にあまり発見されず、研究もなされ難い生態系は確かにいくつか存在し、まだまだ未知の生態系があることを期待させられてしまいます。熱水噴出口の生態系は、火山性のガスをうまく固定、利用し、光が届かない深海の底では、カニがクジラの骨から栄養を得ている。信じがたい環境適応だが、基本原理はこのように理解できる。すなわち、生命活動にはエネルギーが必要であり、エネルギーが得られる環境であれば、生命は生きていけるのだ。エネルギー獲得の方法は、住環境により異なるのが普通であるが、ほとんどは酸化還元電位の差を利用したり、化学合成細菌を共生させるなどして生きていく。ただ、過酷環境下の生態系の発生がどのようなものなのか、私はわかりません。もうひとつ興味を抱いたのは、授業の最後に少しふれた、バイオマスに関することです。砂漠が森になれば生物量は増加するが、極相林では変化はない。確かに言われてみると理解できましたが、これまでそこに考えが及んでいませんでした。そしてもう一つ考えたのは、過酷な環境での生態系の形成とストレス応答は大いに関連があるのではないか、ということでした。友人が鳥取で砂漠の研究をしているので話を聞いてみると、やはり植物のストレス応答も研究しているそうです。未知の生態系を探ることや、未知な生物を発見し研究することは、好奇心だけではなく、ひょっとすると人間に好都合な発見が見越せるかもしれない。私はそう思って研究をしたいと思います。

A:熱水噴出口のような環境で生物が生きていけることがわかった結果、地球以外にも生命が見つかる可能性はだいぶ高まったように思います。そのような意味でも、重要な発見でした。


Q:今回の講義を受けて、今までの講義がずっとミクロな視点で語られてきたのに対し今回はずっとマクロな視点だったのがよかった。熱水噴出孔について取り上げられていたが、このような熱水噴出孔は周囲から隔絶しているためそこにある生態系も独自の進化をそれぞれ遂げるのではないかと思う。洗剤に使われている酵素が深海の熱水噴出口に生きる微生物から取られたものであるという話だが、深海がもっと開拓されていけばどんどん新しい発見があるだろうと思うと嬉しい。植物生理学の講義を半期受けて、とにかく授業内容が難しくてびっくりした。講義中はなるほどと思って聞いていた話も、家に帰ってからレポートを書こうとすると全然頭に入っていなくて授業プリントを何度も見直したり、金曜締め切りを忘れていてあわててパソコンに向かったりということが何度もあった。実験の進め方や、生物学を物理的な観点からみての講義があり、自分としては大変参考になった。

A:僕がいるところは、大学院しかないので、他の大学や、学部から呼ばれた時でないと学部の学生を相手にすることがあまり無いのです。ですから、どうしても難しくなってしまうのだと思います。言い訳に過ぎませんが・・・


Q:最後の講義が私の好きな生物進化に関することだったので非常に興味深かったです。絶滅してしまった古生代型や中生代型の生物が、今生存している生物とどれだけ内部の作りが違ったのか、大変興味があります。化石からではそれらの生物のDNAを得ることができないのでしょうが、それらの生物のDNAを解析し現在の生物のものと照らし合わせてみることができたら、古代生物についてのさまざまな謎が解明できるのではないでしょうか。
 全体の授業を通しての感想ですが、スライドも説明もわかりやすく、理解しやすかったと思います。ただ、全部の講義の中で、8・9講あたりは、とても難しく感じ、後日プリントを読み直してもあまりよくわからない部分もありました。そのあたりの講義は、1.5講分くらい時間をさいて説明してもらえたらよかったかもしれません。

A:具体的な提案をありがとうございます。確かに内容はそのままで、回数をもうちょっと増やした方がよいかも知れませんね。また、僕は、講義をしているうちにだんだん早口になっていくのが欠点のようです。


Q:この講義を受けて、光合成や植物そのものの見方が変わりました。受ける前は、光合成は植物がエネルギーを得るために行っているもの、ぐらいにしか思っていませんでした。まずは光合成の仕組みがあんなに物理化学的な複雑なものだとは…思っていませんでした。私には少し難しかったです。「もっと物理化学の酸化還元電位の話や、エネルギーと光の関係、電子伝達の話を勉強しておけばよかった…そうしたらもっと興味が持てただろうな…」と思いました。また、植物の色々な応答について、本当にうまくできていると思いました。ストレスに対抗する術も持っているし、植物は動けない分、独自の応答反応を作り上げてきていて、上手に周りの環境と生きていっているのだなと思いました。そして、一番思ったのは、今の私達の生活はほとんど光合成の上に成り立っているのだということ。このことが分かってからは光合成を尊敬するようになりました(笑)。昔の生物が光合成によって残してくれたものがあるから、今いろんな生き物が生きていられる。間接的なものも含めて、光合成の色々な産物って本当にすごいと思います。でも、今はそれをどんどん掘り起こしてエネルギーとして使っていっているし、今光合成してくれている植物もどんどん切り払っていってしまっています。今のままでは、光合成をしてくれている植物に対して恩を仇で返していると思います。今の生活があるのは光合成をした植物のおかげなんだ、ということをほとんどの人が気づいていないのでは…人間の目先の利益に捉われすぎているのでは…と考えてしまいます。
 私達は物があってエネルギーもあって便利な暮らしに慣れすぎています。特に私達の世代なんて生まれたときから、車もあるし、電気製品もなんでもあるし、紙も水も食べ物も超大量消費な暮らしをしてきました。そんな私達がこれから環境のために生活を改めて、極めて省エネの世界にしようとしても、かなり難しいのではないかと思ってしまいます。私達に何ができるのか、何をしたらいいのか、まだ全然分かりません。でも、少なくとも私はこの講義を受けて危機感を覚えることができました。遺伝子とかの小さな範囲の話もおもしろいですけど、それより地球規模で物事を考えることの方がこれからは大切になってくるのではないか、と感じました。

A:光合成に思い入れのある研究者からすると、可愛い光合成が何億年も欠けて作り上げてきた生命の星を、わずかこの100年ぐらいの間に人間がめちゃめちゃにしようとしている、という感じでしょうかね。人間も何かをあきらめなくてはならない時期になったように思います。


Q:十回の講義を通しての率直な感想は「レポートが大変だった」に尽きます。あまり今まで講義内容からさらに自分で独創的に考えを発展させるというものがなかったせいか、苦労したし、満足に書けないレポートもありました。しかし後半になるにつれて実際の研究の紹介が講義でされるようになってからはレポートでやることが研究においてはやっぱり一番大事なのだなと思いました。たまに研究の紹介で自分には難しくついていけないこともありましたが、研究の段取りの大枠が掴めた手応えというのはありがたく感じています。最終講では普段よりも写真が多く、長めの動画も入っていてよかったと思いました。内容とそれますが今は論文に動画を添付して発表する時代なんだと驚きました。今回の京都議定書の嘘(?)のような自分にとっては新事実や植物に対して持っていた誤った認識を改めることが出来たことや知識から自ら概念を構築するいい意味での難しさを体験出来たのが講義を通しての大きな収穫だと思います。約三ヶ月という短期間でしたがありがとうございました。

A:特に研究に限らず、いろいろ仕事をしていくと、論理的に文章をまとめる能力、人を説得できる文章を書く能力が必要になってきます。よい文章を書くために最初に必要なのは、よい文章を書くのが難しいと気がつくことです。それだけでも、まずは収穫だと思って頑張って下さい。


Q:最終回の講義は今までと違い、地球の誕生から植物や動物の誕生などを、多くの写真やビデオで紹介されたもので、大変おもしろく聴かせてもらいました。まず深海の生物も、海中で光合成の恩恵を受けているクジラの背骨を栄養として生きていて、つまりは光合成に依存しているということがおもしろったです。生物の進化の過程で、光エネルギーを生体エネルギーへと変換できるようになったことは非常に大きいことであると改めて思いました。また、大量絶滅が起きるごとに生物の主役が交代していった地球ですが、もしこの先に隕石の衝突などによる人間の絶滅が起きたとしたら、隕石衝突によるエネルギーがなんらかの形である生物の誕生を引き起こし、現在地球を破壊へと導いている人間に代わって、地球の崩壊を遅らせたり、起こさずに済むのかなぁと思ってしまいました。(講義を聴いてて、今のままだと地球は破滅へ向かっていると思ったからです)
 今までの講義を振り返ってみて、普段は人に関すること中心の講義ばかりの私たちですが、植物における光合成の働きや光エネルギーから生体でのエネルギーへの変換などの細かい仕組みを、様々な写真や資料を用いて講義をしていただいて、大変興味深かったです。エネルギー伝達におけるアンテナ構造やルビスコタンパク、過剰な光による植物への影響などが印象的でした。また機会があれば、植物の生理機能を学んでみたいと思います。

A:講義をするようになってから、何か研究の話を聞いても、面白い写真を見ても、これは講義に使えるかな、と考えるようになりました。昔に比べると、専門雑誌の論文もカラー写真が増えましたし、取り上げることができる題材もだいぶ増えてきました。インターネットの発達もありますしね。