生命生存応答学 第2回講義
植物と水の関わり
第2回の講義では、植物と水の関わりについて、気孔、蒸散、道管の太さを決める要因、葉の濡れの光合成に対する影響などといった具体例を含めて紹介しました。以下に、学生からのレポートとそれに対する回答を示します。
Q:授業中の説明で、葉が雨に濡れると気孔が閉じてしまうとありましたが、水中の植物や半水棲の植物ではどのようになっているかが気になりました。気孔の主な役割として、水分を蒸散させることにより導管内の水を動かし、物質を運搬するというものがあるそうですが、水分の蒸散が起こり得ない水中では気孔は無用の長物ではなのではないかということです。一般に水中に生える『植物』は、そもそも陸上に進出したことがない藻類と、一旦陸上に進出したのち再び水中に戻って行った水草の二つに分けられますが、ここで問題となるのは後者です。調べてみたところ、そうした植物の多くでは気孔は退化してしまっているそうです。しかし、興味深いことに一部の植物は完全沈水性にも関わらず気孔が残っているそうです[1]。それを踏まえると、近縁種の多くには気孔が無いが、一部の種類には気孔が残っているというような水生植物を探し出せば、それらの植物がどのように水中に進出していったかという進化の道筋を追うことができるのではないかと考えられます。恐らく、そうした研究を単独で行うのは費用と手間の問題からして難しいと思われますが、たまたまそうした植物が見つかった際についでで行うことは可能だと思いますが、いかがでしょうか?
A:面白いことに、滝のそばに生えていて常に滝のしぶきがかかるような場所に生えているシダなどにも気孔が見られない種類のものがあるそうです。そのような植物では、葉の厚み方向の細胞数が少なく、表皮から直接二酸化炭素を取り込んでいるようです。さて、それで、近縁のシダと形態などを比較することは可能だと思いますが、それで「進化の道筋を追う」ことになるでしょうか。研究としては、もう一ひねり必要なのではないかと思いますが、僕にも何をしたらよいのかぱっと思いつきませんね。
Q:授業の中で「雨が降ると植物はどうなるのか」を扱った。雨を実験条件を整理することで、実験室で科学的に実験した、というものだった。結論として雨処理=低二酸化炭素濃度処理+αというになった。低二酸化炭素濃度処理だけでは生態学的に説明がつかなかった。α、すなわち野外環境は、こんなに単純ではないということだ。αとして何が考えられるのか。考える上で、植物に対する影響でも光合成の機能という面からではなく、生態学的な植物を考えてみたい。野に生えているシロイヌナズナと、実験室での育てているArabidopsis thalianaとでの違いは差は大きい。そこで、野外で「雨が降ると植物はどうなるのか」を実験してみたいと思った。たとえば、畑に二つのコドラートを作る。ひとつは水はけのよい土、ひとつは悪い土で作る。雨が降っているとき、晴れているときで、それぞれの光合成活性を平均値から値を出す。こうしてみると、生理的反応は実験室ではないと無理なことが想像できた。
A:光合成は野外でも測れますが、一番問題なのは、環境をコントロールしない限り二つのコドラートを作っても、その差が、例えば、水はけの違いによるのか、それとも別の違いによるのか、それを確かめるのは一苦労かと思います。あと、αは野外環境というよりは、雨と低二酸化炭素濃度の差ですから、むしろ葉が濡れることそのものかも知れません。講義で触れましたが、リーチングといって、クチクラを隔てても葉が濡れると細胞内のイオンが一部失われる例が知られています。