生命応答戦略科学 第5回講義

雨、導管と光合成

第5回の講義では、雨の植物に対する影響のお話しと、導管の太さが植物の分布域によって異なる、というお話しをしました。導管のお話しは、東大・日光植物園の舘野さんのグループのお仕事です。


Q:光エネルギーを化学エネルギーに変換する反応であるため、「光」は光合成反応に影響を与える重要な環境因子である。今回の講義で、二酸化炭素も光合成において重要な環境因子の1つであることを改めて認識した。植物にとって自然界の利用可能な二酸化炭素は大いに不足しており、その上二酸化炭素より約700倍も多い酸素にルビスコの炭酸固定反応が阻害される。今回の講義でも、低二酸化炭素ストレスが系Iー系II間の電子伝達活性とルビスコの活性化率の低下を引き起こすデータが示されていた。光合成の光化学反応で生じた還元力は二酸化炭素を固定する炭酸固定反応に利用されるため、二酸化炭素が少なくなると、光化学反応で生じた還元力が余ってしまう。植物にとって、この過剰な還元力は活性酸素などの障害となる物質を作り出すため、過剰に還元力を作り出さないために電子伝達活性を低下させるなどして積極的に光合成活性を低下させていると考えられる。低二酸化炭素環境によって生じる電子伝達系の過還元状態がシグナルとなって、光合成活性の低下を誘導していると考えられる。実際に、系Iー系II間の電子伝達を担う役者として知られているプラストキノンやb6f複合体が葉緑体の酸化還元状態を感知して光合成遺伝子の発現を制御しているのではないかという報告もある。雨ストレスも低二酸化炭素ストレスと同様に系Iー系II間の電子伝達活性とルビスコの活性化率の低下を引き起こしていたことから、雨ストレスが葉緑体の過還元状態を引き起こして種々の反応を誘導していることが考えられる。

A:ある現象によって引き起こされる、活性などの「阻害」と遺伝子発現などの「制御」は、なかなか区別して解析するのが難しいし、つい同じに考えてしまいがちですが、実際にはまるで別の経路によって誘導されることも多いようです。


Q:高木がなぜ高所まで水を吸い上げれるのかについて、毛細管現象と蒸散により生じる力によるものであることが理解できた。また、それらが広葉樹と針葉樹の分布にも深く関与しているお話は非常に興味深かった。

A:できれば感想以外に何か一言・・・


Q:雨が降ると植物はどうなるのか、という研究に興味を持ちました。素朴な疑問を研究材料にできる、ということ自体も面白いと思いましたが、その中で特に、研究の方法、雨チャンバーと晴れチャンバーを作ったという発想や、葉の濡れやすさの測定に興味を持ちました。結局は光がないところでルビスコ阻害がおこらないということで、自然界を実験上で再現するのは難しいと感じました。お天気雨や、晴れの日に水やりをしたりすることは、植物に対してあまり良くないのかもしれない、と思うと不思議です。

A:芝生のスプリンクラーなどは、おそらく芝の葉が水を比較的はじくので大丈夫なんでしょうね。