生命応答戦略科学 第3回講義

過剰なエネルギーの消去

第3回の講義では、光環境が変動する中で、光のエネルギーが過剰になってしまった時に植物がどのように対応するのかについて解説しました。葉緑体運動の話は、都立大学の和田正三先生の研究室の成果で、シアノバクテリアの変異株の話は埼玉大の日原グループとの共同研究です。


Q:講義の中で植物は細胞の伸長によってしか動けないという話がありましたが、挿し木などの場合、どんどん繰り返していくとどうなるのか疑問に思った。やはり細胞が伸長して巨大になっていくだけなのでしょうか?それとも種子から育てた植物体と全く同じものができるのでしょうか?

A:植物が「動く」のは、多くの場合、細胞の伸長によっている、と言っただけで、細胞分裂をしない、と言ったわけではありませんよ。もちろん植物体が大きくなる場合には、細胞が分裂していきます。


Q:葉緑体運動に興味を持ちました。強光を照射後に葉緑体が寄ってくる場合、それは強光のために発生した活性酸素を除去するためで、弱光を照射した場合は光合成をするためで、それぞれ集まってくる目的が違うのでしょうか。また、そのためにも、光受容体のフォトトロピンが二種類あって、両方の役割を果たす事ができるのかもしれないと考えました。

A:講義の中でも触れましたが、二種類のフォトトロピンが、それぞれ1つの役割を果たす、というわけではないようです。葉緑体の集合運動にはPhoto1とPhoto2の両方が働いているようです。


Q:過剰なエネルギーは活性酸素を生成するため、植物は活性酸素を除去する活性酸素消去系を備えている。活性酸素には、スーパーオキサイド、過酸化水素、ハイドロキシラジカル、一重項酸素などがあるが、今回の講義で一重項や三重項という言葉に対する自分の理解が曖昧であった。
 電子の性質は4種類の量子数によって表されるが、ここで関係するものは、スピン量子数である。スピン量子数は各々の電子がもつ回転の向きとして表され、その向きと値は1/2と正反対の向きの-1/2の2つの状態しか存在しない。通常の分子内において同じ電子軌道を回って対を作っている2個の電子は、互いに逆のスピンで打ち消しあっているため、スピン量子数は0となる。スピンを打ち消す相手が存在しない場合は、不対電子と呼ばれ、不対電子が1個ある時は全スピン量子数が1/2となります。通常の酸素分子は不対電子を2つ持っているため、全スピン量子数は1となります。全スピン量子数の合計が0の場合を一重項、1/2の場合を二重項、1の場合を三重項と呼ぶ。従って、通常の酸素分子は三重項状態である。ここへ、紫外線などの過剰なエネルギーにより、2個ある不対電子のうち1個が励起されると、スピンの向きが逆になり、残りの不対電子と対を作ってスピンを打ち消し合い、全スピン量子数が0の一重項状態になる。この状態は非常に不安定な状態なので、簡単に他の物質と電子の受け渡しをしてしまいます。これが活性酸素の1つである一重項酸素である。

A:講義では、量子力学的な説明は省いてしまったので、かえって曖昧な印象を与えてしまったかも知れません。このように、きちんと調べてレポートに書いてもらえると、僕にとっても助かります。