生命応答戦略科学 第1回講義
生物のエネルギー獲得様式
第1回の講義では、生物とエネルギーの関係についてATPの合成を中心に解説しました。以下に寄せられた感想および質問と、必要に応じてそれに対する答えを掲載します。今回の講義は非常に受講者が少ないので、どうしようかと思ったのですが、やはり予定通りレポートを公開することにしました。
Q:講義内で脂肪酸の酸化回路について簡単に触れていた。脂肪酸アシルCoAからアセチルCoAヘの変化はミトコンドリアのマトリックスで行なわれる。しかし、脂肪酸の合成はミトコンドリア以外の場所で行なわれている。私は、脂肪酸は炭素鎖が長い上に疎水的な領域を持つにも関わらず、どのようにしてミトコンドリアの膜を通過しているのか疑問に思い、今回調べてみた。
合成された脂肪酸は細胞質で活性化されてアシル-CoAになるが、アシル-CoAはミトコンドリア内膜を通過することができない。そのため、カルニチンと結合してからカルニチントランスポーターの働きによって、ミトコンドリアのマトリックス内に取り込まれ、再び脂肪酸アシル-CoAに再生される。そしてミトコンドリアに取り込まれた脂肪酸アシル-CoAは脂肪酸酸化回路によってアセチル-CoAにまで分解される。
A:このように疑問を持つことが研究の出発点ですね。調べても答えが見つからない場合は、自分の手で確かめるしかないわけですが、そのように、本当の興味から出発した研究ほど面白いものです。
Q:講義名を見て、何だか凄くわくわくしました。生命の起源を探れば探るほど、こんなにも精密に出来ているものなのかと、感動します。今回の講義では、私は、熱力学第二法則に従いながら、外から与えられる光のエネルギーを巧みに利用し、システムとして循環している地球の仕組みがよくわかりました。特に、植物の光化学系やエネルギー代謝は、どの経路や回路を見ても、本当に効率よくエネルギーを取り出しており、最初に分子生物学で勉強た時も感動したことを思い出しました。身の周りで当たり前のように起こっていることながら、生命の応答戦略は侮れないなと、改めて思いました。システムの構造が分かり、個人的には、どうやってこのシステムが作られたのかという疑問を持ちました。「地球と生命の歴史」の講義が今から楽しみです。
A:単に、「自然は良くできていますね」と言うだけでは研究にはなりません。自分なりの視点を持って教わったことを解釈できるようになると良いですね。