植物生理学II 第10回講義
CAM型光合成
第10回の講義では、CAM型の光合成の仕組みを中心に解説し、その他の炭素同化についても少し触れました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:今回の講義では、アイスプラントの話題が印象的だった。アイスプラントは、乾燥ストレスや塩ストレスを与えないとC3光合成を行うが、乾燥ストレスや塩ストレスを与えると、CAM型光合成へ移行するという性質を持つことを学んだ。また、アイスプラントはこのような特徴から塩水溶液中でも生育でき、これによって生でも塩味がすることから食用として利用もされていることを学んだ。一方で、サボテンのようなCAM型光合成生物は生育が遅くなるというデメリットがある。このことから、アイスプラントもずっと塩水溶液中で生育するのではなく、塩分濃度を調整した水中で水耕栽培することで、適度に塩ストレスを調整することにより、本来よりも素早く生育することができ、生育のスピードと塩味のバランスをとることができるのではないかと考えた。アイスプラントについてさらに調べてみると、土耕栽培を行うと、一般生物以上にカドミウムなどの有害金属を吸い込むという特徴を持つ植物であることがわかった。水中の塩分を吸い込んで塩味がすることと、土壌の成分を他の植物より吸い込みやすいことに因果関係があるのかはよくわからないが、この事実から水分にさまざまな成分を混ぜることで、味を調整することができるのではないかと考えた。アイスプラントは高級食材とされていることから、このような調整によって価値を向上させることの意義はわりと大きいと思う。
A:どこに着地するのかがわからずに途中まで読んでいました。もう少し、全体の流れがあるといいですね。最初に、アイスプラントの農業利用の改善をテーマとして示して、その性質を議論の基盤にして(1)途中から塩濃度を上げることにより生育速度を上げる方法、(2)水耕液の成分を変えることにより付加価値を与える方法、の2つを考えた、というストーリーにすれば、見通しがよくなります。ちなみに(1)は、実際にそのような方法がとられています。
Q:今回の講義では、CAM植物は、蒸散によって水分を失うのを防ぐために昼は気孔を閉じ、涼しく湿度の高い夜に気孔を開きCO2をリンゴ酸として蓄えておくことを学んだ。よって、CAM植物の気孔の開閉には気温・光・湿度が関わっていると考えられる。また、自然界において気温・光・湿度は密接に関わっているが、蒸散において重要なのは気温と湿度であると考えられる。つまり、気温が低く湿度が高ければ蒸散による水分不足は防げるが、このような条件になるのは夜や明け方であり光は弱い。ここで、気温が低く湿度が高い環境は維持しつつ光を強くしたら蒸散を行うのかという疑問が生まれた。この条件下ではCAM植物はCO2をわざわざリンゴ酸に換えて貯める必要がない。光合成も蒸散も同時に行える環境といえ、仮に蒸散をしたなら、この環境ではCAM植物の特性は必要ないと考えられる。この環境でCAM植物を育て、これを交配させたらCAM植物の特性は次第に失っていくのだろうか。
A:レポートはオープンクエスチョンで終えるのではなく、考察で終えるようにしましょう。また、最後の1文に関しては、獲得形質の遺伝が前提になっているようにも読めます。もう少しきちんとした説明が必要でしょう。
Q:今回の講義では、CAM植物について学んだ。昼間にデンプンを生産し、夜間ではデンプンからリンゴ酸を生産して蓄える。トータルするとデンプンは最終生産材料でありながら、出発材料になっている。NADPHについて考えていると、このデンプンがCAM植物の光合成を効率的にしていると考えた。そもそもNADPHは不安定でNADP+に変化することを前提に考える。オキサロ酢酸には、NADPHが作用しリンゴ酸を生んでいて、このNADPHは夜間に生産されたものだと推測できる。酸化還元を基にすれば、デンプンからオキサロ酢酸になる時には還元力が生産されているのに対し、リンゴ酸からピルビン酸になる時は還元力が使われている。デンプンは酸化還元を通して、昼間から夜間へNADPHの還元力という一つのエネルギーを蓄積し管理しているという、最終生産物以外にも重要な役割を担っているということが考えられる。
A:「リンゴ酸からピルビン酸になる時は還元力が使われている」という部分だけ気になりましたが、全体としては、昼間に生成した還元力をデンプンの形で夜まで保存している考え方は面白くてよいと思います。
Q:今回の授業でサボテンなどのCAM植物の炭素同化について学んだ。サボテンは昼夜の温度差が激しい環境を活かして、時間的分化による光合成をしている。しかしサボテンは日本などでも観葉植物としてホームセンターなどでも見かける。砂漠と比べて日本は昼夜の温度差も少なく、近年夏は熱帯夜も多いのでサボテンがCAMを続けている利点が少ないと考える。そこでサボテンについて生物時計を調べるフリーラン実験に絡めて考える。その生物の昼夜のリズムが時間によるものか、光によるものかの判定する。方法としては昼夜の交互で生育していたリズムを、突然夜の連続といったように変えた時にその植物がどのような応答をするかを見る。例えばサボテンなどCAM植物では気孔の開閉や電子伝達系を見ることでサボテンが時間で動いているのか、光で動いているのかが分かる。しかしその実験方法で疑問に感じたことは昼夜の設定が光を与えるか与えないかということである。サボテンの場合、昼夜の温度差が激しい環境に生息しているので、気温変化も要素に加えたフリーラン実験を提案する。以下のようなサボテンなど昼夜の温度差が激しい気候に生息するCAM植物に実験を提案する。(昼:気温高い 夜:気温低い)→(昼:気温高い 夜:気温低い)というリズムから、(昼:気温高い 夜:気温高い) →(昼:気温高い 夜:気温高い)というリズムに変化させた時の応答を観察する。サボテンが昼間気候を開かないのは気候からの乾燥を防ぐためである。涼しい夜のうちに二酸化炭素を吸収して、リンゴ酸を合成する。しかし授業より、リンゴ酸の量と気孔伝導率は関係性があるため、以上のような気温が高い夜を設定しても、気孔を閉じ続けていることはないと予想される。そのように予想しても、この環境でCAM光合成を続ける利点はない。砂漠に住んでいるサボテンに比べて、昼夜の分化が不明確になると考えられる。つまりこのような実験を組むことでCAM植物の環境に対する応答を調べることができる。また観葉植物として東京で育てられているサボテンは砂漠の個体ほど明確なCAMをしていないと予想する。
A:考え方は面白いですし、よく考えていると思います。ただ、フリーラン実験については、生物時計が光によって調節(リセット)されているという前提がありますから、まず、「サボテンの場合には、生物時計が温度によっても調節されているのではないか」という前提条件を明示してから議論を進めた方がよいかもしれません。
Q:今回の授業でアイスプラントという植物が登場した。アイスプラントは味付けをしなくても塩の味がするという特徴がある。このことからアイスプラントを塩以外の味がするようにできないかと考えた。そもそもアイスプラントは土壌に含まれる塩化ナトリウムを吸収する吸塩機能を持っている。よって育成する際には土壌に少々の塩を加えることが必要である。このことを利用して塩にうま味や甘味、酸味、苦味を持つ化合物を付加することによって植物内に吸収させることができ、塩味以外の味を植物内に入れ込むことができると考えられた。通常、アイスプラントの表面の細胞の中に塩水が詰まっているが、植物が吸収した水分から塩分を切り取ることによって起きる。ここで塩と付加した化合物が切り離されると考えられる。よって塩と付加する化合物の割合を調整することによって表面の水分を含む細胞内の塩分濃度を緩和させることはできると考えられた。塩分と切り離されたとしても化合物は植物内に存在し続けるため味を感じることができる。結論として、塩味以外の味をさせるためには塩と他味がする化合物の割合が重要になると考えられた。
参考文献:野菜のいろいろ アイスプラント、https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/iroiro/1006_iroiro.html、アイスプラントの塩味は生命力の証、https://lne.st/2012/09/13/iceplant/
A:「切り取る」「切り離される」「付加」という言葉が使われていますが、実際の現象には全くそぐわないように思えます。「切り取る」「切り離す」は「分離する」という意味で使っているのでしょうか。「付加」は「添加」?もう少し日本語に気を配るようにしましょう。
Q:今回の講義で、乾燥している地域の多肉植物などがCAM型光合成を行っているということを教わった。しかし、コチョウランなどの一部のラン科の植物はCAM型光合成を行っている。ラン科の植物は、熱帯から亜寒帯に棲息している。コチョウランは樹木や岩場に生息する着生ランである。なので、土から水を常に吸収できなかったために、水分不足を解消するためにCAM型光合成を行っている。しかし、普段コチョウランを見るときは、樹木や岩場に着床している状態ではなく、植木鉢などで土で生育している状態で見ることが多い。このことから、コチョウランは土壌でも生育することができることがわかる。コチョウランはCAM型光合成を行っているが、ほかのラン科の植物はCAM型光合成を行っていない。なので、コチョウランは土壌で生育するとC3型光合成を行うことができるようになる可能性があると考えられる。しかし、コチョウランは土壌に水がある状態にすると生育しなくなる可能性もあるので、根に水をあげた場合と葉に水をあげた場合でコチョウランの生育状態を比較する必要があると考えられる。
A:全体として主張したいことは理解できますが、もう少し論理の流れをしっかりした方がよいでしょう。例えば、最後の方で「水がある状態にすると生育しなくなる可能性もある」ので、「根に水をあげた場合と」となっていますが、水がある状態だと生育しないのであれば、「根に水をあげた場合」には生育しないのですよね?そうであれば、目的は「比較」ではなく、水がある状態でも生育することの確認なのではないでしょうか。
Q:イネの単純な実の数だけではなく環境との相互作用を考えることが重要であるというお話から、高木をACEやPRE1, AtIBH1を調整して低木にした場合、果実の数はどうなるかについて考察する。高木を19m,低木を2mと仮定する。[参考文献1]より、極相林の場合、19m地点の相対照度は100%, 2m地点の相対照度はおよそ1%ほどであった。そのため周りに高木がある環境では照度がおよそ1/100になるため、光合成が十分に行われなくなり、果実はつかず生命の維持が難しいと考察した。また周りの環境を光の遮らないようにした時、低木の2mの果実の量は高木の19mの時に比べ、少なくなると予想した。理由としては相対照度100%になったとしても、ACEやPRE1, AtIBH1を調整して低木にしたため総合して、葉面積が小さくなったり柵上組織が小さくなることによって葉の中で光が進む距離が短くなるため、結果として光合成の量はへり、それに伴って果実を作る量も減ると考察した。どちらにせよ果実を多くするには植物は高いほど有利であると判断した。
参考文献 1. 森林の階層構造と環境教育、山口修、畠山真由美、米田敬司、発行日2000/09/20, 閲覧日2022/06/13 https://core.ac.uk/download/pdf/70291966.pdf
A:題材はよいと思うのですが、「ACEやPRE1, AtIBH1を調整して低木にしたため総合して、葉面積が小さくなったり柵上組織が小さくなることによって葉の中で光が進む距離が短くなるため、結果として光合成の量はへり、それに伴って果実を作る量も減る」のであれば、「ACEやPRE1, AtIBH1を調整」するという方法自体が、あまりこの実験をするのに適切ではないということではないでしょうか。そうであれば、むしろ理想的な「調整」方法を仮定して、それによって議論を進めた方がよいように思います。
Q:PEPCはRubiscoと同じく炭素固定に用いられる酵素である。Rubiscoの大サブユニットは葉緑体の、小サブユニットは核の遺伝子にコードされているが、PEPCについてはそのような記述は見当たらない。Rubiscoでは遺伝子の移行が起こり、PEPCでは起こらなかったのはなぜだろうか。PEPCは、C4植物やCAM植物がCO2を濃縮するために用いる酵素だが、これらのス植物だけでなくすべての独立栄養生物、従属栄養の原生生物、および大部分の細菌に存在する[1]。ということは、Rubiscoと違い、細胞内共生の際にシアノバクテリアの宿主もPEPC遺伝子を持っていたということになる。PEPCは本来クエン酸回路やアミノ酸合成のためにC4―ジカルボン酸を供給するという役割を持つ[2]。したがって、共生が進み核では遺伝子発現、葉緑体では光合成という分業が確立していくと、光合成に関係のないPEPC遺伝子は葉緑体では必要なくなったのだと考えられる。対してRubiscoはもともとシアノバクテリアしか持たず、光合成に不可欠な酵素であるため、葉緑体から失われず、共生が進んでいく中で一部が核へ移行したのだと考えられる。講義ではシアノバクテリアに比べて葉緑体のゲノムサイズは小さいということを学んだが、PEPCは葉緑体から失われた遺伝子の1つであろう。
[1]光合成辞典、https://photosyn.jp/pwiki/index.php?ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、[2]泉井 桂, C4光 合成の炭酸固定酵素とその遺伝子 構造・調節・進化、https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/28/11/28_11_714/_pdf
A:面白いアイデアですし、よく考えていると思います。ただ、結局Rubiscoも、小サブユニットは遺伝子の核移行が見られたわけなので、「光合成に不可欠な酵素」だからという論理は、少し説得力に欠ける面があるかもしれません。
Q:授業ではCAM植物が取り上げられた。そこで、CAM植物であるサボテンが葉ではなく棘を持つ3つの理由について考えた。1つ目の理由は、普通の植物では葉で光合成を行うが、サボテンは茎で光合成を行うからだと考える。例えばサボテンの茎に付いているものが棘ではなく葉だったとする。すると、葉は棘に比べて表面積が大きいので茎に当たる日光を遮断する可能性が高く、茎による光合成の邪魔になるだろう。よって葉が棘に変化したと考えられる。2つ目の理由は、夜に植物内に取り込める範囲の二酸化炭素のみで光合成を行うので、一般的な植物よりも光合成速度が遅いからだと考える。光合成速度が遅いと必然的に光合成で作られる有機物量も少なくなる。棘を持ち、動物を近づかせないようにすることで、動物に体内の貴重な有機物を取られることを防いでいるのだろう。最後に、棘があることで、個体間の距離を一定に保てるからだと考える。個体間の距離が狭いと水分や日光の奪い合いにもなるので、棘同士が妨げになり距離を保つようにする。特に地面を這うように分布しているイルカというサボテンの棘は太くて硬いが、これは地面と接触する面が広いと熱がこもるので、丈夫な棘により地面との距離を保つ必要があるからだと考えられる。
A:読み始めたときはどうかな、と思いましたが、一つ一つの理由の是非はさておき、物事を複数の視点から眺めている点は評価できます。細かいことですが、最初の文の最後は、日本語としては「棘を持つ理由を3つ考えてみた」でしょうね。
Q:アイスプラントのCAM化はC3から行き来しているとの記述がある。非ストレス条件下ではC3光合成を行うが、乾燥ストレスや高濃度の塩による水ストレスにさらされるとCAMに移行する。つまりアイスプラントを基に考えるとCAMとC3は同じ植物内に共存しうる関係であると考えられ、CAMとC3に大きな機構の差はないとの推測も成り立つ。また同様にC3とC4を行き来するEleocharis viviparaも存在し、CAM、C3、C4に関しても大きな機構の差は存在せず、植物はCAM、C3、C4のどれにでもなることができる可能性があるとも考えられる。構造自体大きな違いが無いのならあとは環境要因によって変化させることができる可能性がある。C4植物はC3植物と比較し高ストレス環境下でも生存できる特色があるため、C3とC4を行き来する仕組みを模倣できたならより強い植物ができるかもしれない。
A:どうもよくわかりませんね。「記述がある」というのはどこにあるのでしょうか。「構造自体大きな違いが無いのなら」という部分は、講義の中でクランツ構造の話をしましたよね。最後の文も、そのような植物があることを講義で紹介したわけですから「模倣」で作る必要もなさそうです。もう少し講義内容に即したレポートをお願いします。
Q:クエン酸回路の逆回しのような反応が起きているクロロビウムの炭酸同化が紹介され、この炭酸同化は嫌気生物に多く見られると紹介された。なぜ嫌気生物に多く見られるのだろうか。呼吸においてクエン酸回路が見られるということとクロロビウムの炭酸同化で逆回しが起きるということから考えると、この回路の反応は基本的に可逆反応であると考えられる。呼吸のクエン酸回路にはいくつかの反応でCO2を産生する反応があり、一方クロロビウムの炭酸同化ではいくつかの反応でCO2を取り込む反応がある。これらのことをふまえると、CO2に対するO2の割合が高い好気的な条件の場合には、CO2を取り込む反応よりもCO2を産生する呼吸のクエン酸回路の方向に反応が進みやすくなってしまい、クロロビウムの炭酸同化の方向に反応が進みやすくなってしまう可能性がある。これを検証するためには、クエン酸回路やクロロビウムの炭酸同化の各反応がCO2濃度にどれほど依存するのかを確かめる必要がある。
A:よく考えていると思います。ただし、CO2とO2の比は、ルビスコの活性と光呼吸にとっては重要ですが、その場合は、酸素があっても、二酸化炭素の濃度が高ければ、光呼吸は抑制されます。一方で、普通「嫌気的・好気的」という場合には、酸素の有無だけをさすと思うので、二酸化炭素との比で議論するためには、もう一つ前提が必要かもしれません。
Q:今回の講義では、ジベレリン欠乏の稲は背丈を抑えることで分決本数が増えることや、肥料を与えても背丈が伸びすぎることによる倒壊などが起こらないことから多収量となるが、自然界では背丈が高く、理由として他の植物と光を取り合っているからだということを学んだ。しかし、ジベレリンが少ないことによる光条件以外のデメリットもあるのではないかと考える。ここで、ジベレリンの主な作用について考えていくと、種子の休眠の打破が挙げられる。もしジベレリンが欠乏している場合、胚でジベレリンが合成されないことからアミラーゼの合成や糖への分解が行われず、発芽しないと考えられる。そこで、現在品種改良された稲はそもそもアミラーゼを含んでいる、もしくは水や温度などの発芽条件を感じると何らかの伝達物質を使用してアミラーゼを合成しているのではないかと考えられる。
A:これは、僕自身はあまり考えたことがなかった点で、よく考え付いたと思います。実は、ジベレリンというのは単一の化合物の名称ではなく、特定の生理活性を持つ一連の物質の総称です。また、異なる種類のジベレリンの量は、時期もしくは組織ごとに異なる場合もあります。なので、実際には、状況は複雑ですが、それでも、このような考え方をすることは重要だと思います。
Q:授業で、C3細胞とC4細胞をもつエレオカリスという植物について取り扱った。C3細胞は湿潤に強く、C4細胞は乾燥に強いという特性をもつ。夏は高温湿潤で、冬は寒冷で極めて降水量の少ない、季節によって気候条件の異なる地域(Cw気候)で過ごす植物はどのような細胞を持つのだろうか。仮説として、エレオカリスのようにC3細胞とC4細胞を両方もっており、夏はC3細胞を働かせ、冬はC4細胞を働かせている植物を想定する。この論理であると、植物自体に周辺環境の乾燥度を察知する能力がなければならない。例えば桜は花を咲かせる為に温度察知能力を持つ。仮説を立てた植物は、桜と比較して気候変動が激しい等、生育上厳しい環境に置かれてるといえる。よって、桜以上に器官が発達している事が考えられ、周辺環境の乾燥度変動を察知する能力を保持している事が考えられる。この仮説を検証するためには、Cw気候に生息する植物を用いて乾燥度を変えてみる事で、光合成産物の量に影響を及ぼすか実験すればよい。光合成産物量に変動が無ければ、細胞のスイッチングが起こっている事が考えられる。
A:考え方は面白いと思います。ただ、「桜以上に器官が発達している」という部分がわかりませんでした。ここで言いたいのは厳しい環境に応答する能力のことでしょうか、それとも、その直後に出てくる環境変動を察知する能力なのでしょうか。
Q:今回CAM植物の二酸化炭素固定について学んだ。CAM機構は乾燥ストレスに耐性を持てるような蒸散抑制の機能を持っている。このことから海水にさらされているCAM植物について考察を行う。今回考察を行う海水にさらされている植物とは海藻ではなく海草などである。CAM植物は乾燥に強いという特徴を持つ。つまり水中に生育する植物ではCAM機構を利用する必要がないといえる。しかし、水中で真水が重要になる環境がある。それが海水である。海水が周りに存在すると植物中の水分が浸透圧の関係で出ていってしまうことになる。つまりなるべく蒸散によって外界とつながる気孔を閉めていたいことになるといえる。このことから海水にさらされているような植物ではCAM機構を持つと考えられる。
A:うーむ。これは褒めるとすれば独自の考え方という評価ができますが、植物生理学Iの講義で、水中の植物は気孔を使えないという話をしましたよね。たとえ、それを忘れてしまったとしても、水中で気孔を開く意味がよくわかりませんし、水中ではクチクラにより蒸散を抑える必要もないという点も考えるべきでしょう。