植物生理学II 第12回講義
光合成の速度
第12回の講義では、光合成の速度の見積もりの様々な方法の原理について解説しました。また、オープンエアで大気中の二酸化炭素濃度上昇の影響を調べるFACE実験についても触れました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:今回の講義では、二酸化炭素濃度の上昇による植物の生育や、光合成速度の測定方法について学んだ。その中で、二酸化炭素濃度が上昇した場合、植物の生産量は初めこそ伸びるものの、葉に糖分が蓄積する事で光合成阻害が発生し、総合的な生産性は変わらないという話を聞いて、葉野菜の中には葉の糖度が果物並みに高い種が存在し、その種であれば、高糖度に対する耐性を持ち、この種の光合成関連遺伝子を任意の植物に導入すれば、高濃度の二酸化炭素中でより生産性が上がるのではないかと考えたため、これについて考察する。まず、考えられる懸念としてはこの高糖度耐性が後発的なものである場合である。糖度の高い作物は多くの場合、積雪地域での自身の凍結防止の為に糖濃度を高めている。この特性が低温環境に応答して起きている後発的なものである場合、作物を低温環境での生育が必要となり、代謝の低下から生産性の向上は考えにくい。また、高糖度の作物は雪に埋もれ、そもそもあまり光合成が出来ない環境であるため、光合成阻害に対して全く対策を講じていない事も考えられる。ここで私はプチヴェールという農作物に注目した。この作物は葉の糖度が果実並みに高いことが特徴の農作物であり、新潟県、静岡県、愛知県などで特産品として栽培されている。この作物は先述のように高糖度を売りにしており、さらに愛知県、静岡県など比較的積雪の少ない地域でも栽培されていることから、光合成阻害に対する何らかの対策を持っている可能性が高いと考えられる。よってこのプチヴェールの光合成関連遺伝子を導入した作物を高二酸化炭素濃度下で生育すれば、生産性はある程度向上すると思われる。
A:面白い考え方だと思います。このような考え方の場合、プチヴェールでは、なぜ光合成関連遺伝子を抑制しなくても構わないのか、という点についても考慮したほうがよいでしょうね。普通の植物で光合成の抑制をしているからには、そこには何らかのメリットがあると思いますから、そのメリットが消えることが、農作物の特質にマイナスに働かないことを示したいところです。
Q:今回の講義では光合成速度の測定方法について学んだ。植物の生活を考えるためには光合成の速度を測ることはとても重要なことである。測定方法には光合成産物量を測定する葉半法、酸素量を測定する酸素電極、二酸化炭素量を測定する赤外線ガス分析計、光を使って測定するクロロフィル蛍光測定などがある。どの方法を使うのが良いのか。葉半法は問題点が多く、新たな測定方法が多く開発されているため今はあまり使われない。酸素電極は比較的安価な機器で測定でき、試薬の組み合わせにより光化学系Ⅰ、Ⅱそれぞれ個別に測ることもできるのが強みである。赤外線ガス分析計は葉を非破壊的に測定でき蒸散速度の見積もりも行うことができる。クロロフィル蛍光測定は従来の測定では測れなかった場所による光合成能力の違いを2次元画像を元に解析することができる。しかし機器がとても高価という難点がある。それぞれメリットデメリットがあるが手軽にやるなら酸素電極、研究用ならクロロフィル蛍光測定が良いと考えられる。
A:別に悪いレポートではありませんが、結論がやや常識的かな、と。この講義のレポートとしては、もう少し独自の考えを主張して欲しいところです。