植物生理学II 第7回講義
二つの光化学系
第7回の講義では、光合成を研究することの意義を、光合成の地球生態系に対するインパクトや、人間生活における役割などから解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:エマーソンが、「700nmより大きい波長の光について吸収はするが光合成はしない」という結果から光化学系が2つ存在すること気づいたというのが、鋭い考察だと感じた。もし自分だったら、このような結果をうけて他の仮説が立てられないか考えてみた。ただし普通の人は光化学系が2つあるということは思いつかないので、光化学系は1つで、1度の光の吸収で目的の物質になるまで電子伝達が行われるという前提である。以下仮説である。光合成の反応中心クロロフィル以外の他の色素の中に、700nm以上の光のみを吸収し励起されるものがあった。この色素はクロロフィルによく似た構造をとるが、酸化還元反応を繰り返してもNADPHにはならない。この色素が励起状態からエネルギー準位が落ちていく過程で、例えば、(P680)+とPheoの間のエネルギー準位の物質Xになるとする。そうすると、それまである程度のエネルギー差があることによって進んでいた光合成反応中心クロロフィルの反応が物質Xが現れたことで、溶媒効果により阻害され反応が進まなくなった。
A:うーむ。二つの光化学系仮説は確かに鋭い考察から生まれたものだと思いますが、ここで提案されている仮説もずいぶん複雑な気がします。
Q:電子がどのように移動するかという問いの答えの1つとしてトンネル効果というのがある。トンネル効果というのは、古典力学的には考えられないが量子力学的には壁をある確率で通り抜けることがあるという効果のことである。壁を通り抜けることができる理由は、電子や原子が持つエネルギーが不確定なため、ある一瞬に壁を通り抜けてしまうぐらい大きなエネルギーになることがあるからである。トンネルダイオードや走査型トンネル顕微鏡などの装置に応用されている。人間が壁をすり抜ける確率は0ではないという話を聞いたことがある。これはトンネル効果のことを言っているようだが果たして本当に0ではないのか。なぜ人間でも起こると考えたのか。量子論においては人間も壁も元々は素粒子からできていてその素粒子がトンネル効果を起こせば確率的には0ではないということになる。トンネル効果が起きるのは電子だけではないが質量が大きいほど起こりにくくなる。どれどけ透過するかは電波の波長や壁の材質によるがある条件が揃えば壁のすり抜けは可能とされる。実際に起こる可能性はほぼないが、0パーセントではないと考えると夢がある。
参考文献:https://www.ureagnak.com/fushigi_27.html
A:全体として読んだときに、あまり主張が感じられませんね。関連する話題についてよしなしごとを書いた感じです。科学的なレポートの場合、問題設定をなるべく明確にして、その問題に対して根拠を挙げて論証するようにしたほうがよいでしょう。
Q:今回は光合成の化学・物理学的な側面について学んだ。その中で、いくつかの光化学系の内、水を電子供与体として利用出来るのは、極めて高い酸化還元電位を持つP680というクロロフィルaを持つ光化学系Ⅱだけという話を聞いた。しかし、この光化学系Ⅱの元となる反応経路を持っていたと考えられる紅色硫黄細菌は水を利用せずに光合成を行っている。この事から、光化学系Ⅱの遺伝子に変異が起こったことが考えられ、今回はこの光化学系Ⅱの変異の時期について、先日同講義で学んだFusion説を前提として考察する。光合成で水が利用できるようになった時、それまでの光合成生物よりもかなり有利になること、水を利用する光化学系Ⅱは自身の反応のみで、NADPHを生産できない事から、2種類の光合成細菌に分化し、生育していたタイミングは光化学系Ⅱを持つ方が生育できなくなるため、プロトシアノバクテリアが最初から水を利用する光化学系Ⅱを持っていたという考えは第2回の小レポートで考察したようにより古い地層に繁栄の痕跡が残ってなければおかしい事から、この2つの可能性は考えにくい。そのため、この変異の時期はこの2種の光合成細菌が遺伝子の水平伝播によって光化学系が統合された後だと考えられる。
A:面白い話題だと思いますが、もう少し説明を丁寧にした方がよいと思います。これだと、文章を読み進める際に、その行間を推測していく必要があります。自分の頭の中の前提条件は、案外と人には伝わりませんから、前提条件を必ず言語化する習慣をつけると、レポートだけでなく、いろいろな場面で役に立ちますよ。