植物生理学II 第5回講義

光合成色素の多様性

第5回の講義では、光合成における最初のイベントである光の吸収にかかわる様々な光合成色素について解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の講義では光合成色素の種類及びその意義について学んだが、その中で水中では水深によって届く光が変わる為に魚は4種類の色を感じ取ることができるという話があった。この話から、私は何故タコは比較的浅瀬に生息しているにもかかわらず、色覚を持たないのか疑問に思い、これについて考察する。タコが生息している主な水深は3-30mであり、この範囲での水深では赤付近の色以外は通過している為、色覚を持つメリットは十分あると思われる。この時、タコは夜行性である事から、他の夜行性生物と同じく視覚があまり必要でなく、発達しなかったことが考えられる。しかし、タコの視覚は優れた分解能をもち、視覚を利用していると考えられる。夜間の海は人里近くでもない限り、ほとんど光は無く、視覚は使用できないと考えられることから、夜での行動は他の夜行性生物と同様に視覚以外の感覚器官を利用し、視覚は生殖など他の行動に利用される事が考えられ、その結果獲物を捕らえる事よりは重要度がある程度低い為、分解能のみで色覚が発達しなかったのではと考えられる。

A:なるほど、面白い考え方ですが、その場合、生活は夜行性なのに生殖行動だけは昼間にすることになりますよね。タコの生態については全く知りませんが、そのようなことが一般的にあるのでしょうかね。


Q:白い色素というのは光を吸収しないだけで色素ではない。では、白い花はなぜ白く見えているのか。白い花にはアントシアニンやカロテノイドと言った赤色や黄色の色素は含まれない。フラボノイドという「無色」の色素が含まれている。この色素は可視領域の光を全て吸収してしまうため人間の目には見えない。白く見えているのは花弁に含まれている小さな空気の泡が光を反射するからである。白く見えるということはあくまで人間の目の話である。昆虫の目には一体どのように見えているのか。紫外領域の光を反射するため昆虫の目には色がついて見える。人間が感じることができる波長域は400-700nmに対し、昆虫の複眼は250-400nmである。植物は花粉を運ぶ昆虫に認識されないと生き残ることができないため、フラボノイドが蓄積していない、虫にとっても白色に見える花は自然界にはほとんど存在しない。しかし品種改良の研究は進んでおり、カーネーションなどの純白な品種も存在はしている。
参考文献:https://www.naro.affrc.go.jp/flower/kiso/color_mechanism/contents/white.html

A:「可視領域の光を全て吸収してしまうため人間の目には見えない」という部分は、「可視領域の光を全て吸収しないため人間の目には見えない」ですね。すべて吸収すると「無色」ではなく、「黒」になります。この部分は、参照元の農研機構のホームページで間違っているのですが、講義できちんと解説したところなので、その間違いに気がついて欲しいところです。