植物生理学II 第7回講義
緑色でない葉
第7回の講義では斑入りを中心に、緑色でない葉の存在意義について考えてみました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:ユキノシタの解説の中で「ユキノシタの白斑は食痕の擬態ではないか」という説が紹介された。私は、擬態は動物の行為であって植物の行いではないと思い込んでいた。「植物がなぜこのような構造になっているのか」を考えるときに、擬態という言葉が出てくることはありえなかっただろう。調べてみると花の形や模様が猿の顔や人の姿、白鳥の姿などに似ている植物が数種類ある。しかし、これは「人間からそう見える」だけであり、機能的な擬態とは言いがたい。隠蔽擬態や攻撃擬態といったように、擬態にはなにかしら明確な機能があるものであり、ただ何かにそっくりだから擬態だと言い示すことはできない。正しい意味での、動物の擬態は多く知られているが、どうやら植物の擬態はあまり知られていない。これはなぜか。
擬態という形質(?)を獲得する確率が一定であるとすれば、動物種と植物種の種数が関わっている可能性も考えられる。動物種は450万種程おり、植物種は40万種ほどである。擬態を行うことで得られるメリットについて考えてもみる。擬態は捕食から逃れるため、あるいは効率よく捕食を行うための行為である。植物は動物と違って動くことができず、しかし個体数は極めて多い。植物にとって、擬態は動物ほど重要な能力ではない、とも考えられる。
参考:カラパイア http://karapaia.livedoor.biz/archives/52164926.html、擬態 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%93%AC%E6%85%8B
A:論理展開自体はよいと思います。ただ、おそらくWikipediaに「ごくまれな例であるが」とあるので、植物にはほとんど擬態がないと解釈したのだと思いますが、これは、動物の場合、繁殖のための擬態が、隠蔽や攻撃の為の擬態に比べて圧倒的に少ない、という文脈なのではないかと思います。植物ではごくまれ、という話ではないでしょう。あと、食痕の擬態として紹介したのはユキノシタではありません。ユキノシタは、光学的な性質により葉の色が変わる例として紹介しました。
Q:食痕の擬態をすると、卵をつけられにくいという話があった。確かに、他の個体がその葉にいれば、葉ごと卵が食べられてしまったり、卵が落とされてしまったりする可能性が高いので卵はつけられにくくなるのであろう。では逆にどうしてもっと多くの葉が斑入りになっていないのかを考察してみる。斑入りになっていない葉も多いという事は、斑入りにすることによって生じるデメリットもあるはずだ。まず考えられるのは、光合成効率が悪くなると言う事だ。白い色素も存在すると授業で習ったが、小学生のころにやったヨウ素の実験では白い部分は染色されなかったので光合成は行っていないことが分かる。植物体で行われている光合成量のほとんどの割合が葉によるものである。そのため、葉に模様を入れることは、植物体の光合成量を大きく削ることになってしまうと考えられる。しかし葉が食べられてしまっては元も子もない。このメリットとデメリットの釣り合いによって斑入りか否かが自然選択されていると考えられる。
A:論理展開としては、やはり食痕がをどれだけ見たことがあるのか、という点が重要でしょうね。「もっと多くの葉が斑入りになっていないのか」の一番簡単な答えは、食痕を残すような虫に食べらる機会が少ないから、というものです。そもそも選択圧が生じなければ生物はある方向に進化しないでしょう。あと、「白い色素は存在しない」と教えたのですが・・・。
Q:今回の授業において、シロイヌナズナの変異体についての話があった。すべてのFtsHプロテアーゼが変異しているはずだが葉の一部しかふ入りにならない理由がまだわかっていないとのことだった。そこで、この現象が起こる理由についていくつか仮説を立ててみる。 一つ目は、ふにならない細胞では強光の影響を抑える活性酸素消去系が非常に発達していること、もしくはふになる細胞では活性酸素消去系に異変が起きている可能性である。強光によりサブユニットが壊されなければふは生じないため、このような可能性が考えられる。二つ目は、シロイヌナズナの葉は成長するにつれて光への耐性が高まっていくという可能性である。若葉のころは葉の表皮やクチクラ層が薄いため光への耐性が弱く、この時期に壊れてしまった葉緑体がふとして現れる。ある程度表皮やクチクラが発達した葉において増殖した葉緑体は強光による影響を受けにくいため、葉の一部のみがふになると考えられる。以上が、シロイヌナズナの葉の一部だけがふになる理由の仮説である。
A:変異体の解析は、注目する遺伝子以外は変化していないものの間で(バックグラウンドをそろえて)行います。そうでないと、何を解析しているのかわからなくなりますから。そのことを考えると、特定の細胞で活性酸素消去系などが異なっていると説明しても、では、なぜ負の部分だけで活性酸素消去系が異なるかの説明ができませんから、結局、あまり進歩がありません。成長して光への耐性が変化する可能性は十分にありますが、別に若い葉が白くなって、古くなると緑になるという話ではありませんよね。同じ葉で白や緑になるからこそ斑入りです。結局、斑入りの説明にはなっていないようです。
Q:シロイヌナズナやユキノシタで見られるように、斑入りの葉をもつ植物体が稀に見られる。この斑入りの葉は通常と同じみどり色の部分と白色の部分にはっきり分かれている。その原因についてはまだわかってはいないようなので、FtsH変異体のシロイヌナズナを対象として、その原因について自分なりの仮説を立ててみる。このシロイヌナズナの全ての細胞においてFtsHに変異が生じているわけだか、葉の全ての部分で白色になる訳ではないので、FtsHの変異以外の別の因子が関係する可能性が高い。また、斑入りの葉は、通常と同じ緑色の部分と白色の部分にはっきり分かれていることから、個々の細胞がそれぞれ独立して緑色/白色になるのではなく、近隣の細胞の影響を受けている可能性があると考えられる。斑入りの葉ができる背景には、FtsHの変異に加えて、先に白くなった細胞を起点にしてなんらかのシグナル物質が近傍の細胞に伝染することで、斑の白色が拡大するのではないかと考えられる。また、斑ができるという点において、ヒトのシミができるメカニズムが参考になるのではないだろうか?
A:よく考えていると思います。あと、さらにもう少し進めて、「近隣の細胞の影響」というのをあと一歩具体的にするとよいでしょう。もし、白い部分からは周囲を白くする方向へのシグナルが、緑色の部分からは周囲を緑にする方向に働くシグナルが出ているとすると、それぞれ正のフィードバックが働くので、表現型はall or noneで出るようになります。おそらくは、そこが鍵ではないかと思います。
Q:新芽なぜ目に眩しいのか。常緑樹で顕著なこの現象についての意味づけは授業で考察した。では、芽生えの形態には何か工夫がみられるだろうか。いわゆる双子葉植物多くでは個性のない二枚の子葉が芽生えとしてみられる。本葉の形態の多様性を全く反映しないような子葉の形態の類似性から、有名な発生学の教科書には実生は植物のファイロティピック段階であるという内容が書かれている(ウォルパート発生生物学)。ファイロティピック段階という概念はヘッケルの反復説で知られる、脊椎動物の咽頭胚期の形態的類似性を説明するのに用いられることが多い。この時期の胚では個体のボディプランの成立に決定的な遺伝子発現ネットワークが機能しており、たとえわずかな変化でさえも許容されない状態にあると説明されている。この変化に対する堅牢さは発生拘束というかたちで個体発生の特定の段階にある胚形態の多様化を妨げるため、異なる系統間である発生段階の形態が類似する。このような意味で双葉が双子葉類のファイロタイプであるといえるならば、双葉の形態が本葉ほど多様化するのを許さないような拘束がかかっているはずである。私は双子葉植物の場合にはこの拘束は発生システムの堅牢さによるというより子葉の置かれた環境の影響が大きいと考える。子葉が受ける物理的ストレスとしては①発芽の際の土を突き抜ける際のストレス、②胚が種子内の限定された空間に収納されるストレスが考えられる。①は発芽に際して種子植物が茎頂の分裂組織を保護するために茎を屈曲させるか鞘状の葉で覆うかのどちらかの戦略をとることから〔1〕子葉の形態は影響しそうにない。②はおおかた楕円体に近似できる種子内の空間に使用を収納する際に複雑な構造の子葉を折りたたんで収納するよりもその空間にぴったりと沿うような構造をとった方が子葉の体積を多くとれること、子葉の収納が問題にならない有胚乳種子では子葉の形態が本葉とあまり変わらないことから支持されるのではないかと考えた。参考〔1〕福岡教大、福原先生のページhttp://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/2-1.html
A:よく勉強をしていますし、論理展開も非常に良いと思います。
Q:今回は葉の色がメインの講義であった。ジャングルに斑入りの葉をもつ植物が存在し、これは食害を受けないためのものだと考えられるという話があった。ふと家にあったシクラメンの葉を見てみると、斑が大量に見られた。そこで、シクラメンの葉が斑入りの理由について考える。まずは講義であったように、食害を避けるためという理由があると考えた。調べてみると、夜盗虫という虫に葉が食われるという記述をみつけた。(みやし花園HP、http://www.miyashikaen.com/howto/shikuramen-sodatekata/shikuramen-byouki) このことから、シクラメンも食害を避けるために斑入りになったのかもしれない。また、何度も話があったように、人為的に斑入りのものを選んだ可能性も考えられる。さらに、シクラメンは地中海沿岸~小アジアに生育しているという記述(ヤサシイエンゲイ、シクラメンの育て方、http://www.yasashi.info/shi_00017g.htm)があった。この地域は比較的日差しが強いと考え、斑入りにすることで葉緑体量を減らし、強光を避け、エネルギー過剰の状態を防ぐのだと考えた。
A:考え方はよいと思います。ただ、夜盗中は、外側から葉を食べるので、斑入りにしても防御効果はないでしょうね。あと、最後の点は、エネルギー過剰を防ぐのであれば、一部の葉を白くするのではなく、全体的に緑を薄くしないといけないでしょう。
Q:私が今回の授業内で興味を持った話は「パラオの海にはタコクラゲがたくさん生息している」という話題である。一見動物の形態に近い話題かと思っていましたが植物との関連性もあったので考察してみる。タコクラゲの生態として、生きるための栄養素となっているのが自分に身体の中に生息させている褐虫藻が行う光合成により作られた栄養分であることがわかった。つまりは自分で食物をとるという機能は備わってなく、光合成を行える状況下でなければ生息できないと考えられる。パレオに大量発生しているのは環境や気候も関係していると思われるが、パレオの海の透過性により、光が入りやすくなっているため光合成を効率よく行えているため、タコクラゲも生きやすい環境下にいると考えられる。そしてこれは自論であるが周りのサンゴなども同じような生き方をしている中でタコクラゲはとても効率が良いと思う。まず自身の体内が透明に近いため光を遮ることなく褐虫藻に届けることができ、体内に飼っているため周りの外敵からの攻撃も少なく、浮遊していられるため多く繁殖でき場所では多く生き残っているのではないかと考える。
A:言っていることはよいのですが、全体として一本の論理になっていません。考察というからには、問題設定があって、そこから根拠に基づく推論という論理展開が欲しいところです。
Q:植物のなかには、食痕の擬態をすることで虫からの食害を防いでいる種があるということを知った。葉を食べられてしまうより、斑入りにするほうがデメリットが少ない、というとこであろうが、やはり斑入りにしてしまうことで食害のリスクが減る分、光合成の効率は落ちてしまうと考えられる。そのため、毒を生成し食害を防ぐなどといった方法のほうがより賢明なのではないかと考えた。毒を生成できる種と斑入りの種のどちらのほうが繁栄しているのかはわからないが、毒を生成する事の出来る仕組みを進化の過程で得られる確率は相当低いのではないか、と考えた。
A:毒をつくる植物は実はたくさんあります。一般に、野草は野菜に比べて「えぐみ」が多いものですが、そのような「えぐみ」「苦味」は、一種の弱い毒と考えてよいでしょう。人間は、野菜の品種改良において、そのような毒の少ないものを選抜してきたわけです。
Q:本講義で若葉はクチクラ層が発達するまで葉緑体数が少ないと学んだ。もし若葉に強光が当たった場合、クチクラ層が完全にできていないため葉肉細胞は光によって損傷を受けやすい。普通、損傷を受けた部分は分解酵素によって分解することで損傷部分を再生し、斑入りになるのを防いでいる。しかし、若葉はタンパク質の宝庫である葉緑体をあまり持っていない。分解酵素はタンパク質が基になっているが、葉緑体が少ないことでこうした酵素を作るタンパク質が作りにくいのではないかと考える。これにより、若葉は強光によって細胞内の機能が損傷を受けた際、分解・再生するための酵素が作れずに斑入りになりやすいのではないかと考える。
A:論理的に考えようという姿勢はよいと思います。ただ、クチクラ層は、特に色がついていませんから、あったからといって、それほど光損傷に影響があるようには思えません。光は吸収されなければ、使うことができない一方、害を与えることもありません。その意味では、葉緑体が少ないことの方が、光の吸収という面では大きな影響を与えるでしょう。
Q:今回の講義では、葉の色が通常と異なる植物について学んだ。弱光の部分でのみ葉緑体が発達するため、上部の葉が金色に光って見えるオウゴンガジュマルや、FtsHプロテアーゼに変異が入ることでふ入りになるシロイヌナズナなどが挙げられた。中でも私が興味を持ったのはユキノシタである。網静脈の付近が白色になっているため変異体と思われるが、他の変異体と異なり白色の部分にも葉緑体がある。表皮と柵状組織の間にある空気の層が光を反射するため、葉緑体まで光が届かず緑色にならないという仕組みである。光合成を行うことができない葉緑体をわざわざ作ることはエネルギーの無駄使いに思われるが、生存競争において不利にならない理由を考察してみる。
ユキノシタは日陰など光の弱いところで生育する植物とある。多くの植物はいかに多くの日光を取り入れるか、という点に重点を置いた構造をしているがそれとは異なり、少ない量の光を有効に利用するための仕組みがあるのではないかと考える。つまり、他の植物と住み分けを行うことで生存競争を有利にしているという仮説が立つ。さらに、日陰で生育する植物は多量の光を浴びると弱ってしまうため、ユキノシタは多量の光が当たる環境では葉の内部を守るために表皮と柵状組織の間にある空気の層を作り、光が少なくなったら空気の層を薄くするのではないかと考える。最後に、ユキノシタが落葉樹ならば葉の寿命が短いため日に当たらない部分に葉緑体を作ることは無駄であるかもしれないが、ユキノシタは常緑樹のため一度作った葉緑体が無駄になることはないと言える。
参考文献:http://sodatekata.net/flowers/page/446.html
A:きちんと考えていてよいと思います。ただ、もし光の有効利用や光阻害の防御が目的だったら、やはり斑入りにするのではなく、一様に葉緑体の量を調節したほうがよさそうに思えます。
Q:今回の講義でシロイヌナズナの斑入りには強光を受け、損傷した光化学系を復帰させる経路の一部で働く酵素の遺伝子に突然変異が入ることが原因として考えられているが、この遺伝子突然変異はその植物体すべてにみられるはずなのに斑入りは葉の一部だけにしか起こらないことが挙げられていた。そこで、このシロイヌナズナの斑入りについて、自分なりの解釈を出してみたいと思う。先にも挙げたように、シロイヌナズナが斑入りとなるのは損傷した光化学系のサブユニットを分解する酵素に異常が発生するからである。しかし、もし強光を受けたとしても細胞内すべての光化学系のサブユニットが損傷するわけではないはずである。そして、自然環境の中では葉はまんべんなく強光条件にさらされるわけはなく、葉の一部では強光をあまり受けない場所もあるはずである。また、斑入りにのもととなる細胞が同じような箇所に集まってしまうことで斑入りになっているというように解釈してみる。これらのことよりシロイヌナズナの葉の細胞には光の強弱を感知する器官があり、強光阻害が比較的小さいところで生じた損傷したサブユニットは、強光阻害が比較的大きい細胞へと輸送されているため強光阻害が大きい箇所の細胞に損傷したサブユニットが集まりその結果、斑入りができたのではないかと考えた。しかし、サブユニットの移動が細胞間で起こるかどうかは実際にGFPなどをそのサブユニットにつけて強光阻害を与える実験をして、追跡してみないとわからないものである。
A:これは、非常にユニークな考え方でよいと思います。ただし、論理自体はよくわかりません。損傷したサブユニットは役に立たないわけですよね。それをわざわざ輸送する意義は何でしょう。
Q:黄金ガジュマルでは葉の色は均一に薄くなるのに対して、シロイヌナズナでは”ふ”として葉の表面で部分的に色が薄くなる。この原因を考察してみる。シロイヌナズナの場合葉にふが入る原因は、強光によって損傷を受けた光化学系Ⅱのサブユニットを分解する酵素の変異によって、葉緑体が壊れてしまうことによる。一方黄金ガジュマルでは、強光による活性酸素の消去系がダメになってしまうことに原因がある。ここで、ある箇所で生じた活性酸素はその周辺に部分的に影響をあたえるとする。すると、黄金ガジュマルでは、葉全体で生じた活性酸素全てに対抗できないので、葉全体で均一に影響を受けることになる。一方でシロイヌナズナの場合、活性酸素が葉全体で生じたとしてもその消去系は生きている。しかし箇所によってはその消去系で対処し切れなかった活性酸素もあるだろう。その部分的に対応し切れなかった活性酸素によって葉緑体が壊され、結果的に葉の部分的にふが入るのだと考えられる。
A:考える姿勢はよいと思います。ただ、この場合も、なぜそももそ「箇所によって」違いが生じるかの説明になっていません。例えば、葉にあたる光の強さの不均一性が考えられますが、そうであっても、隣同士でくっきり光の強さが違うということはないでしょう。そのあたりの説明が必要でしょうね。
Q:本講義では葉が斑入りのユキノシタについての話が印象に残っている。斑入りの部分は光合成をしないため、必然的にその植物の葉面積あたりの光合成量は少なくなり自然界の競争でもハンデとなってしまうだろう。しかしこのハンデを持ちつつも、斑入りのユキノシタは現在も生息している。その理由を少し考えてみた。1つは授業で挙げられていたように人為的に栽培されているからである。確かに斑入りのユキノシタは美しく人間の鑑賞用には良いものかもしれない。ただこの理由は人為的なものであり、自然界にとってはごく僅かな理由としてしか考えられないだろう。2つ目はそもそもユキノシタは光合成量を減らしてでも斑入りの葉にしなければならなかった理由があったからであると考える。まずユキノシタの葉が斑入りとなった原点は間違いなくウイルス感染だと思われる。ウイルス感染した葉を食べる虫は少ないだろう。おそらく昔ユキノシタは折角光合成して得られた有機物を虫たちに食べられてしまうという習慣があった。それを阻止するために自ら光合成量を減らしてでも虫たちに食べられないように、遺伝子変異によって斑入りの葉を形成したと考えられる。現在は虫たちに食べられてしまう習慣はさほどなく、また斑入りの遺伝子は劣性のものであるため個体数も減っている。現在は個体数が減ってる途中の段階である。しかし再び虫の脅威に襲われることがある場合は、ユキノシタという種の保存のために斑入りのユキノシタが発生すると考えられる。
A:これも、論理の展開の仕方はよいのですが、ここで示されたのは斑入りの生態学的意義であって、色素量を減らすタイプの斑入りであっても全く同じに適用されるでしょう。そうすると色素量を減らす方が得だと思いますが。
Q:今回の授業で新芽が紅い植物の理由として、紫外線を吸収して幼い葉を守るため、葉緑体を作らないことで食べられた際のリスクを減らすためということが挙げられていました。私は以前から、モミジや生け垣によく使われているカナメモチの新芽が緑ではなく紅い色をしているのを見て、なぜそのような色をしているのかと疑問に思っており、その理由として葉を食べる昆虫は葉の存在を色で判断していて、新芽はまだやわらかく食べられるリスクが高いため、緑色ではなく赤色をしているのだと考えていました。実際に昆虫が葉の存在を色で判断しているのか調べるためには、葉を様々な色で染色して昆虫の集まり方を調べる必要があると思います
A:この場合、最後の実験系の考察から問題設定がわかりますが、科学的な文章では、そこを以心伝心で伝えるのではなく、明確に記述することが必要です。
Q:今回の授業では照葉樹についてお話があり興味を持ったので考えてみた。照葉樹は乾燥や紫外線からの防御機構であるクチクラ層が発達している。クチクラ層の発達している植物の葉はほかの植物よりも厚く色も濃く光沢がある。葉の表の色が濃いのは柵状組織を多く持つことで光が奥まで届きやすくするためでありまた厚くすることで光をできるだけ効率的に利用するためである。照葉樹にこれらの特徴がみられるのはクチクラ層によってほかの植物よりも多く光を反射してしまうため、葉の内部に入ってくる弱い光を無駄なく使いきるためだと考える。しかし厚くすると多くの葉緑体を光合成に用いることができる反面、ほかの植物と比べると葉の内部に入る段階で弱い光が内部を進めば進むほど、どんどん弱くなっていくため逆に非効率的なのではないかと疑問が生じた。これを確かめるには普通の植物の表面にクチクラの代わりになるような光を反射するものを表面に塗るなどして光合成量を比べる必要がある。多くの照葉樹が上記に書いたような特徴を持つため、あまり非効率的な側面はないと仮説を立てる。
A:異形葉の話をした時に、光が弱い水中では葉を薄くするという点を議論したと思います。とすると、光が弱い際には、空気中であっても薄くすると考えるのが論理的ではないでしょうか。また、反射や散乱という現象は、主に物質の界面で起こります。均一な物質層の厚みが厚くなっただけでは、反射率に対する影響をさほど大きくないのではないかと思います。
Q:今回の講義でシロイヌナズナの斑入り変異体についての話があったので、斑入りになる理由について考察する。シロイヌナズナの斑入り変異体では、強光によって損傷を受けたサブユニットを分解するFtsHプロテアーゼの遺伝子が変異を起こしている。しかし植物体全体で遺伝子変異が起こっているはずであるのに葉緑体がない(斑入り)であるのは一部のみで、その理由については未だに解明されていない、というお話があった。したがって、自分なりにその理由について考える。
同じ植物体の中で葉緑体がある細胞とない細胞ができる理由は、
・強光による損傷を受けるサブユニットが細胞ごとに異なる
・一部の細胞でFtsHプロテアーゼ以外の物質が分解の役割を果たす
の2つであると考えた。1つ目については、葉緑体を含む細胞が分解されていれば斑入り、含まない細胞が分解されていれば正常の葉の細胞になる、と考えたからである。しかしこの考え方だと、植物が成長するごとに強光による損傷を受けるサブユニットが多くなり、確率的に成長するにしたがい葉の葉緑体が減ってしまうことになる。したがってこの考え方は可能性としては低いと考えられる。2つ目は、葉緑体を失うのを防ぐため、損傷を受けたサブユニットを分解する役割を他の遺伝子が果たすことで、葉緑体を含む細胞が損傷しても生育できる、という進化の一種ではないかと考えた。これを確認する方法は、葉の葉緑体がある細胞と斑入り部分の細胞で働く遺伝子を比較することである。また、もしこの説が正しいとすると、植物体全体で代わりの遺伝子が働けばいいのではないか、という疑問が生まれる。これに関しては、(生育環境によるが)葉の一部を斑入りにすることによって強光に対する防御が働いている、と考えることができる。また、講義でもあったが人間の栽培によって斑入りの状態でも生育が可能であった、という理由も考えられる。
A:「細胞が分解」という部分がどのような意味なのかが分かりませんでした。また、上の複数のレポートでも指摘しましたが、そもそもなぜ細胞によって異なるのか、という根本的な疑問がこれでは解消されませんね。
Q:若葉は最初、葉の色が薄く、次第にその色が濃くなっていく理由として食害など、葉の防御機能が確立していないときに起こりうるリスク回避の一環であるという見解を取り上げた。一方で、「窒素は植物にとって貴重な物質である」という側面から考えると、若葉に含まれる葉緑体の量を減らすことは、窒素の節約にも関係あるのではないかと考えたので、以下で考察をする。若葉の色が薄いのは光合成色素である葉緑体の量が既存の葉と比べて相対的に少ないからであり、必然的に葉に含まれている窒素量も若葉のほうが少ないはずである。このことを踏まえ、最初から既存の葉と同じものを作るのと若葉を作るのとでは、どちらがコストは低いだろうか。もちろん後者であろう。言い換えれば、植物はできるだけ少ないコストで光合成に必要な機能を葉に搭載できるように計らっているということである。植物にとって窒素が貴重な資源であるということを踏まえれば、それを節約しようとするのは当然のことと言えよう。ではあらかじめ葉緑体の量を少なくするメリットとはなんだろうか。そのひとつとして「葉緑体の量を調節しやすい」ということが挙げられる。葉は光の受容器官としても働くことを踏まえると、葉が受容した光量から若葉周辺の光環境を察知し、その光量に合わせて適切な葉緑体の数を配置することが可能になるはずである。葉に適切な量の葉緑体を配分できるようになると、光環境に対して必要量以上の葉緑体を配置することがなくなるので、最終的に窒素の節約につながる。つまり葉緑体数の未成熟な若葉を使って、若葉周囲の光環境を感知し、光合成が効率的に行えるような葉緑体数を配置することによって、低コスト、低リスクで光環境条件に適した葉緑体の数を保持した葉を生産し貴重な窒素の節約をしているということである。
A:これは面白いですね。光環境の感知は、もっと短い時間でできるのではないか、という疑問がわきはしますが。
Q:今回の講義で斑入りは虫食いの擬態として働いてる可能性があるとのことだったが、私は昆虫が虫食いを判断しそれが幼虫にとって不利な状況になると考えることができる脳を持っているのか疑問に思った。脳で考えるというよりも本能といわれるものに近い行動なのではないか。そこで一つの仮説を考えた。昆虫が虫食いを判断することができるとしたら、それは脳による判断ではなく遺伝子によって遺伝する記憶が存在し、それにより判断している。本能といわれるものは遺伝する記憶だと私は考えた。暗闇が怖いと感じるのは進化の過程で夜に天敵が表れ捕食されていた名残だったりするのではないか。この仮説を証明するためにマウスを使った実験を考えた。マウスに特定の匂いを嗅がせて電気ショックなどの不快感を与えることを繰り返す。そのマウスの次の代にも同様条件付けとショックを与え、何代か繰り返した後に匂いだけを嗅がせた場合の反応をみるという実験である。匂いだけで不快感を示すようであれば、記憶が遺伝する根拠となる。もし、匂いに対する反応の変化が全くない場合は、遺伝することはないかもっと長い経験が必要である
A:一般的なレポートとしてはよいと思います。ただ、生物学専修の学生だったら、「何が遺伝するのか」という議論に関しては、もう少しきちんとした定義に基づく議論をすることができるのではないかと思います。
Q:講義で,体毛が緑色に変化したホッキョクグマについて触れた.これは,体毛に多数の微細な穴が生じ,そこから藻が侵入,増殖するというメカニズムで発生する.北極では白色の個体の方が隠蔽色として有利であるから,自然状態では緑色の個体は淘汰されるだろう.実際この現象は,動物園ではたびたび見られるのに対し,自然状態では見られない.ここで,自然状態では変色自体が起こらないと仮定し,環境の違いから変色の原因(メカニズムではなく)について考察する.まず,変色には当然藻が必要である.文献より,北極海の氷の下には一般海域の4倍もの植物プランクトンが存在する.故に,海水中の藻の量はそれほど差がないと考えられる.次に,毛に穴が生じなければ藻は侵入できない.穴が地面や氷との摩擦で生じるのならば,北極でも変色は起こりうる.また,液性や成分の差だとすれば,穴が生じるのではなく全体が融けるだろう.あるいは,藻および別の微生物が穴を生じている可能性もある.変色していないホッキョクグマの毛で穴が確認できないならば,これが原因かもしれない.最後に,侵入しても増殖しなければ変色しない.動物園は北極と比べ低緯度であるため温度が高く,光強度が強いため,藻が増殖しやすいと考えられる.
参考文献 http://www.afpbb.com/articles/-/2882716
A:面白いところに注目しましたね。この話は、以前小学生相手に講演した時には、一番人気のトピックでした。僕自身は、この件に関しては正解を知りませんが、なんとなく動物園でのストレスが毛の状態を悪くするのかな、と思っておりました。
Q:植物においては、クロロフィルなどの色素が、主に青や赤の光を吸収し、緑の光は吸収しないことを授業で学んだ。私は、植物が黒い色素を持てば、緑の光も含むすべての太陽光を吸収出来るため、効率よく光合成出来るのではないのかと考えた。しかし、実際に黒の色素を持つ植物を私は見たことがない。黒の色素を植物があえて持たない理由は何かあるはずなので、その理由を考えたいと思う。黒の色素を持つメリットとしては、光合成で利用できる光エネルギーが多くなる点である。光エネルギーは、化学エネルギーへと変換される。ルビスコは、その化学エネルギーを使用し、二酸化炭素の固定を触媒する酵素として働くが、その効率が非常に低いと以前習った。有機物の合成効率を上げるためには、ルビスコの量を増やせば良い。だが、増やす前からルビスコの量は十分に多いため、これ以上増やし、合成効率を上げることは難しいだろう。このように、受け取った大量の光エネルギー(化学エネルギー)を効率良く使用するシステムがないのでは、黒い色素を通して、大量の光エネルギーを取り入れる必要がない、つまり、黒い色素を持つ必要がないのだと推測する。
A:きちんと考えていると思います。ただ、もし「光の吸収が律速していないからそれほど光吸収しなくてもよい」という理由であれば、黒い色素を少しだけ作る、という選択肢もありますよね。そのような場合と比較する必要があるように思いました。
Q:私は今回の講義を聞いて、ユキノシタの性質について非常に興味を持った。ユキノシタは斑入りが多く、この斑の部分にはクロロフィルが含まれているといい、授業では斑が食痕の擬態であり、人間が生育させてきた結果であると考えた。私はこの点に付け加えて、ユキノシタから光合成能力が失われていく結果こうなったと考えた。というのも、ユキノシタは日陰や湿気の多い場所で発育しやすく、あまり光合成を行う必要がなくなったからである。自分が小学生の時に育てたアサガオにも一部斑入りができたことがあった。これはアサガオが光合成をする必要がなくなったというわけではなく、ユキノシタとは異なる過程で斑ができたと考えられる。観賞用植物としてもこのユキノシタが用いられるということで、これは弱い光でも光合成が行われるというユキノシタの性質を生かしたものであり、斑入りであることで虫もあまり寄ってこない点は室内でも育てやすいと考えられる。
A:ちょっと論理があちこちに行っていて筋が通っていませんね。「光合成能力が失われていく結果こうなった」が仮説なのであれば、それとは関係のないアサガオを持ち出しても、何の意味もありません。また、この仮説では、クロロフィルを持つことの理由にはならないように思います。