植物生理学II 第2回講義

光合成と生命

第2回の講義では地球上の生態系とそれを構成する生物が、どのようにエネルギーを取り入れて自らの秩序を保っているのかについて話しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の講義では太陽と人間のエネルギーを比較し、単位質量あたりでは人間のほうが太陽の10万倍発熱しているという結果になった。ここで疑問に思ったことは、人間の発熱量の計算方法である。今回は食事の摂取量のカロリーから換算したが、もうひとつの案として人間の表面温度をはかる方法があった。しかし私はそれら2つの方法が同じエネルギー量になるとは思えなかった。食事から得るエネルギーは生体機能を維持するためにそのほとんどが使われる。人間の表面温度は食事から得られたエネルギーの最終的な産物であって、その熱は生体機能を維持するために作り出すエネルギーの全体量ではない。よって授業中にでた2つの案は同様な結果にはならないと予測する。同様に、太陽のエネルギーも放射された熱量だけでなく、太陽の機能を維持するためのエネルギーも存在するとしたら、総エネルギー量の数値は変わってくるのではないかと推測する。

A:自分なりに考えていて、かつ、僕が話した内容を鵜呑みにせずに批判的に考えているのでよいと思います。ただし、「機能を維持するためのエネルギー」が熱にはならないように考えているようですが、ATPを使って筋肉を動かす、あるいは細胞内の秩序を保つと、そこで使われたエネルギーはやはり熱になります。熱にならないのは、脂質などの形で化学エネルギーとして長期的に保存される場合です。これは、講義の中で触れたように、体重などが変わらない定常状態にある場合は、無視できることになります。


Q:太陽光エネルギーの効率の悪さについて興味を持ったので、どうしたらこの点を少しでも改善できるのかを自分なりに考察してみる。太陽光の絶対量やエネルギー密度の大きさを大きくすることはほぼ不可能に等しいので、太陽光を受け取る部分に工夫をすることが必要である。具体的には太陽光パネルを太陽の直射日光を受け取りやすい角度に設定する、温度が高いと効率の下がる要因となるので秋冬の季節に集中して利用する、等の方法が挙げられると思う。しかし実際に太陽光エネルギーを利用し効率をあげるために面積を増やしていくと、ただでさえ高い初期費用がさらにかかってしまう。従って、この太陽光パネルにより得られた少しのエネルギーから他のエネルギーに変換する機器をパネルに取り付けることで更に効率を上げていけると考えられる。再生エネルギーの利用という点から考えると、ミドリムシを用いたエネルギーなどと共に用いるなどすれば効果的であるともいえる。

A:自分なりに考えていてよいと思います。「他のエネルギーに変換する機器をパネルに取り付けることで更に効率を上げ」という部分がわかりませんでした。これは、電気エネルギーよりも他の形態のエネルギーに変換したほうが効率が上がるだろう、ということでしょうかね?


Q:今回の講義では、エントロピーの法則について、部屋の片付き具合を例に考えた。そこで、私はエントロピーが高い時の方がエネルギーを必要としないならば、なぜ生物はエントロピーが高い状態を保ち、エネルギーを節約しないのかという疑問を持った。今回の講義と同様に部屋の散らかり具合を例に考えてみた。エントロピーの高い状態を保つということは、部屋の汚い状態を保つということである。部屋が散らかったままで生活ができないということはない。しかし、その部屋で私達が何か行動を起こすとき私達は片付けてる片付けてないを意識せず、自分の使いやすいように物を動かしていることがある。そして、その物を元の散らかっている位置に戻すということはまずない。これでは、散らかり具合を一定にする(エントロピーが高い状態を保つ)ことはできない。物を動かす前後でわずかな差かもしれないが、散らかり具合が変わるとエントロピーも変化し、エネルギーを消費する。どうせ、エネルギーを消費するならこまめに片づけてきれいな状態に部屋を保てば、気分もスッキリするし、物も見つけやすいので、部屋を散らかったままにするよりもメリットが多い。よって、エネルギーの無駄遣いに思える部屋がきれいな状態を保つことも全体としてはメリットが多く、適していると考えられる。このような理由から、生物もエントロピーを低く保っているのではないかという結論に至った。

A:たとえ話は、理解するためにはなかなかよい方法なのですが、最終的にはエントロピーの議論に戻って結論をしないとあいまいなままに終わってしまいます。熱力学の第2法則は、エントロピーが「増大する」ということを示しているのであって、エントロピーが「大きい」か「小さい」かという絶対値については何も言っていません。たとえ話でいえば、部屋が「より散らかる」という部分が本質的で、最初にどの程度散らかっているのかは本質ではないのです。そのあたり、「変化」と「絶対値」を区分けして考えると、よりわかりやすい議論になるでしょう。


Q:今回の授業において、太陽から地球に降り注いでいるエネルギー量について触れる部分があった。その際に、では月の光は地球にどの程度のエネルギーを与えているのかということが気になった。ある程度の情報をもとに月の光のエネルギー量を算出してみる。
 月の表面積は約3800万平方km、地球からの平均距離は約384400㎞、光の反射能は0.136である。太陽は地球からの距離がおよそ150×10^23mであり、総エネルギー放出量は3.84×10^26W/sである。また、太陽から地球に降り注ぐエネルギー量は1.8×10^7W/sである。月の表面積は地球の約1/13.4であり、また太陽からの距離は地球とほぼ同じであることから降り注ぐエネルギー量は1.8×10^7/13.4=1.34×10^6W/sと考えられる。月の反射能は0.136なので、月は太陽のエネルギーのうち1.34×10^6×0.136=1.82×10^5W/sを反射している。このうちのどれだけが地球に届いているだろうか。エネルギーの減少率が距離と関係していると考える。太陽が発したエネルギーは地球に届くまでの150×10^23mでおよそ1.8×10^7/3.84×10^26=4.69×10^-20も減少していることがわかる。これを月と地球の関係に当てはめるとエネルギーの減少率は4.69×10^-20÷(3.8×10^10/150×10^26)=1.85×10^-2となる。よって月の光の全エネルギー量は1.82×10^5×1.85×10^-2=3.4×10^3W/sとなる。これは太陽が地球に及ぼすエネルギーのおよそ3.4×10^3/1.8×10^7×100=0.019%となる。
調べたところ月の光のエネルギー量は太陽の7%ほどであった。上記の式では、表面積から月に 降り注ぐエネルギー量を推定し、距離を利用して月の光が地球に届くまでのエネルギーの減少率を求めたが、そこに間違いがあったと思われる。

A:面白いですねえ。このような計算をすれば、満月の明るさと、皆既月食のときの明るさの比率なども求めることができそうですね。なお、「調べたところ」という場合は、出典を明記してください。これは著作権の問題ではなく、もとデータの信頼性を確認するためです。7%というのは、直感的には大きすぎる気がします。


Q:この講義で、ヒトと太陽で同じ質量でのエネルギー量を比較するとヒトは太陽の約100倍のエネルギーを持つことが分かった。そこで、ヒトが放出するエネルギーを活用できないのかについて少し考えてみた。多くの人にとって、日常生活の中で最も人口密度が高くなる場所はラッシュ時の電車の車内であろう。国土交通省鉄道局の調査によると、東京圏内におけるラッシュ時の乗車率の平均は162%(平成23年)である。このことと、ヒト一人あたりが121kWのエネルギーを放出し、電車1両の定員を150人と仮定すると、1両に乗っている乗客が放出するエネルギーは3×10^4kWにもなる。また、電車の屋根に降り注ぐ太陽のエネルギーは1.37kW(太陽定数)×20m(車両の長さ)×3m(車両の幅)≒82kW であるので、乗客が放出するエネルギーがなかなか高いことがわかる。赤外線からエネルギーを取り出せる装置が実用化できれば、新しいタイプの人力発電が可能になると考えられる。

A:これも発想がユニークでよいと思います。ただ、エネルギーの中でも熱、しかも放射としては赤外領域に現れるもの(=比較的低温)は、何か別のエネルギーに変換しようとしたときに非常に効率が悪いのです。そこが問題ですね。


Q:今回の授業の中で、物理の第二法則、物質は自然状態ではエントロピー増大の方向にあるという話題が出てきた。生物の中には単細胞生物でも多細胞生物でもなく、その中間的な群体が存在する。群体中の個々が機能をもつことで多細胞生物になったとされているが、各々に特に機能がない状態で群体として存在している生物もいるはずである。では、なぜ群体がわざわざ物理の法則に逆らって集まっているのかと不思議に思った。そこで、その利点について知りたいと思った。もしそれに関して実験を行うなら、群体として存在してる生物をバラバラにしてみれば良いのではないかと考える。そして、群体とバラバラにした個体とを同じ条件下において、代謝の速さとか動きとかについて調べる。群体の中にいる個体数を数えて、群体で得られた実験値を個体数で割れば、一個体として存在している場合の平均が算出できる。もし、群体で存在した場合と個体で存在した場合とで差が生じていれば、群体として存在している利点が見えてくるのではないかと思う。

A:これも、自分なりの発想が出ていてよいと思います。実験を提案している点も評価できますが、あまり独創的とはいえませんね。実験を考えるときは、単に「群体」という抽象的なものを考えるのではなく、群体を作る何か特定の生物種について具体的に考えると説得力が増します。


Q:今回の授業では太陽の生命エネルギー源であることを学びました。そこで太陽の光は植物に影響を与え、それはどのような結果からわかるかを考える。代表的な例として植物の光合成には太陽の日光が必要である。この日光に含まれる紫外線は強力である。しかしこのように活力として日光を使えるのは日光に含まれるUV-B はおもに成層圏オゾンの吸収により減少し、UV-Aはおもに大気分子による散乱の影響により減少しているからである。しかし波長が短いほど散乱の影響は大きい。これによって植物に害のない状態で日光が届いて光合成に使われていると考える。そしてこれは人の紫外線の影響に活かすことができると思う。植物の光合成に問題が生じれば二酸化炭素濃度は上がると考えられる。その結果から植物の異常は日光にあると考えられオゾン層の減少の問題があるのではかと推測することができる。植物の機能の観察で環境対策に生かしていくことができると思いました。

A:これは、植物を、炭鉱のカナリアのように使おうという趣旨ですね。もう少し日本語の記述の論理展開をわかりやすくしたほうがよいでしょう。1文から次の1文へのつながり方を工夫すると、ずっとわかりやすい文章になります。


Q:太陽エネルギー3.8×10^26 wのうち、地球に届くのは1.8×10^17 wで、1時間で人類のエネルギー消費の1年分をまかなうことができるにもかかわらず、太陽光は分散するため、効率よく太陽光を利用できていないということを初めて知った。太陽光を効率よく利用するためには、宇宙空間で太陽光発電を行うことが最善の方法ではないかと考えた。
 太陽の単位質量あたりの発熱量は、1.93×10^-4 w/㎏で、人間(1日2500kcal摂取する体重60㎏)の10^-4倍で、人間のほうが大きいということには驚いた。なぜ、これほどまでに生命は効率の良い方法に満ち溢れているのかが、本当に不思議であると感じた。人間は、様々な生物の特徴や性質を活用している(カタツムリの殻は、汚れが付着しても雨により汚れが落ちるという仕組みを家の外壁に応用していたり、下のような例があったりする)が、これからも人間はさまざまな生物から学び利用できることはたくさんあるのではないかと思った。
 「クモがぶら下がる際に用いる糸は、フィブロインというタンパク質によって強さと伸縮性を兼ね備えることができている。そのため、バクテリアに遺伝子導入することでフィブロインを回収し、糸状に成形することで人工のクモの糸が合成される。ヤモリは、足の裏に吸盤や粘着物質をもたないが、壁や天井を自由に歩き回ることができる。これは、数億本に枝分かれした微細な毛が生えているためで、物質と引き合う特殊な力が働いていることが判明した。これを応用し、接着性が強くかつ簡単に剥がすことができ、繰り返し何度も使用できるというヤモリテープがつくられた。」(1)
参考文献(1)NHK クローズアップ現代ホームページ http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3373_all.html (最終閲覧日:2015.10.2)

A:個々の議論が悪いというわけではないのですが、ばらばらと議論されていて、全体としての論旨がまとまっていませんね。レポートの評価のところで説明したと思いますが、この講義のレポートでは、複数の点について議論するレポートより、1つの点について深く議論するレポートのほうを高く評価します。


Q:講義で全ての生物の存在を支えている植物は食物連鎖の起点と酸素濃度の維持という重要な役割を担っていると学んだ。今回は植物の光合成による酸素濃度の維持について考えてみた。生物多様性や人口増加に伴う呼吸量の変化、また産業の発達による影響で年々大気中の二酸化炭素濃度は増えている。そんな中、酸素濃度の維持には呼吸と光合成のバランスが必須とされている。二酸化炭素濃度の増加に伴い、植物は空気中の酸素濃度を維持するために植物個々の光合成の活性能力を上げる必要があると考える。植物を植えて全体量を増やす方法もあるが、植物1個体あたりの光合成速度を上げることも酸素濃度の維持に重要だと考える。生物は地球環境の変化や突然変異により生活環境に適合するよう長い年月を経て進化している。植物も生育環境の変化に応じて生態系を維持するために光合成のメカニズムにも影響が見られるのではないかと考える。

A:ちょっと気になるのは、「生態系を維持するために」あるいは「酸素濃度を維持するために」という表現です。これは「人間が維持する」という意味でしょうか。そうだとすると、「光合成のメカニズムにも影響が見られる」という表現と矛盾するように感じます。一方で、自然や生態系は、「○○のために」という目的があって変化しているわけではありません。


Q:今回の講義では、地球上の生命の循環は太陽から始まるということについて学んだ。太陽光が植物に光合成で使われ、植物の生み出す酸素と糖分が動物に使われ、動物が化学エネルギーを放出し、さらに一緒に生み出される二酸化炭素や水がまた植物に光合成として使われ・・・という具合である。人類が太陽光を普段の生活に必要なエネルギーとして利用するためのものとして太陽光発電があり、地球に降り注ぐ太陽エネルギーをすべて使えれば1時間で人類全体の消費エネルギー1年分をまかなえるはすだが、太陽光は面積単位当たりの電力が少なく、人類全体のエネルギーをまかなうのは不可能であると考えられている。果たして本当に不可能なのだろうか。仮に日本だけで考えてみる。一年は24×365=8760時間なので、日本に当たる太陽光の1/8760を回収できれば太陽光だけですべてのエネルギーを補えるとする。雨の日はパネルから吸収できる太陽光が極端に減り、10%程度になる。さらに、雨の日は年間のおよそ1/3弱ということも考慮する。日本の面積は377962(km^2)なので、必要な太陽光パネルの面積は、377962÷8760÷(2/3×100+1/3×10)×100=61.64・・・(km^2)。自然環境を壊さず、住宅地の屋根をソーラーパネルに変えた場合を考える。住宅地の面積は16755(km^2)である。屋根を太陽光設備に変える工事費などを考えなければ、日本の電力を太陽光パネルだけで補うことは可能であると考える。
参考文献:統計局ホームページ/日本の統計 2015 http://www.stat.go.jp/data/nihon/01.htm、曇りや雨の日に太陽光発電はまったく発電しないのか? http://thaio.net/tenkou/rainy.html

A:単に抽象的に議論するのではなく、定量的に物を考える姿勢は評価できます。実際には、太陽電池のエネルギー変換効率(現在は20%程度)、住宅地の面積と家屋の面積の違い、などを考える必要があると思いますが、方向性はよいと思います。


Q:全ての物事は乱雑さの方向へと向かうとされる熱力学第二法則より、生物は無限大の方法がある乱雑さ状況を数通り程度しかない秩序ある状態にするためにエネルギーを必要とするということを今回の授業で学習した。しかし、例えば細胞では膜の外と中の物質の濃度差を利用した受動輸送を行いエントロピーの増大を起こす。ではなぜ、秩序が必要な生物の中でこのようなエントロピーの増大をわざと引き起こしているのだろうか。そもそも、エントロピーの増大は物理の原理でありこれはすべての物事で起こりえることである。つまり、エントロピーが増大するときにはエネルギーを必要としない。そのため、受動輸送時にはエネルギー消費がゼロとなる。一方でエントロピーの増大は増大する前に小さい状態があるはずである。エントロピーが大きい状態から小さい状態を作るためにはエネルギーが必要となる。したがって生物が保とうとするエントロピーが小さい状態はエネルギーが貯蓄されている状態であり、その状態からエントロピーを増大させることでエネルギーを取り出して活動していると考えた。そのため、エントロピーの増大で起こる物質の移動も見かけ上エネルギー消費はゼロとなるが、実際は間接的にエネルギーは消費しているはずである。

A:これも自分で考える姿勢が感じられます。ただし、「エントロピーの増大で起こる物質の移動」といった(日本語の)表現にはやや違和感を感じます。物質が受動的に移動する場合には、たいていエントロピーが増大しますが、これは、エントロピーを増大させる「ために」物質が移動するわけではありませんから。それでも考え方としては悪くないと思います。


Q:生命と地球のエネルギー源は太陽の光エネルギーである。1時間分で全人類のエネルギー消費の1年分をまかなえる。太陽の光エネルギーがどのような形で我々に影響しているのか考えてみた。例えば太陽光発電は光エネルギーを元に電力を生み出し、その電力であらゆる機械を動かしている。また植物が光エネルギーを利用した光合成により有機物を生み出している。この有機物を直接摂取する。つまり野菜を食べることで光エネルギーを変換して生み出した有機物を摂取することで人間に間接的な影響を与えている。また食物連鎖を考えるとどの生物を食べても、その有機物の起源は光エネルギーにあると考えることができる。これらのことから太陽の光エネルギーが様々な形に変換され、その後相互に作用することで新たなものが生まれるという現象が地球では起きていると思われる。

A:考えてみた結果であることは確かだと思いますが、結果としては、講義の内容をなぞる形になっています。もう少し、自分なりの考え方をもてるようになるといいですね。


Q:今回の講義で光合成と生命について学び、光合成を行うのは植物だけではなく、ウミウシの中にも光合成を行うものがいるという記事を見たことを思い出した。そのウミウシは藻類を摂取し、その葉緑体を体内に保持して光合成を行っており、餌を与えなくても1年ほど生きることができる。他にもホヤやクラゲなどの水棲無脊椎動物が光合成でエネルギーを得ているようである。一方、ヒトなどの脊椎動物ではそのようにしてエネルギーを得る生物は知られていない。もし、ヒトもこのように葉緑体を取り入れて光合成を行うことができるとしたら、葉1㎡で当たり1日に作られるエネルギーは数十 kcalであり、ヒトにも体の全表面に葉緑体があり光合成を行えるとすると成人男性の体表面積は約1.7 ㎡であるので、ヒトが1日に作ることができるエネルギーは100 kcalにも満たない。ヒトは1日に2000 kcal程必要なので、光合成によって作られたエネルギーは人にとって微量であることが分かる。この結果より、ウミウシなどの水棲無脊椎動物は必要なエネルギーも少ないため、光合成によってエネルギーを得るという進化を遂げる種類もあらわれたが、脊椎動物にとっては光合成によって得られるエネルギーは必要なエネルギーに対して微量なためそのような進化を遂げなかったと考えられる。

A:話としてはきちんとしています。ただ、このあたりはすでに言われていることなので、もう少し、自分なりの考え方が前面に出るとよいですね。


Q:今回の授業において触れられた太陽と地球の輻射について、太陽放射のスペクトルと絡めて述べる。授業で触れたグラフより太陽放射のスペクトルは可視光領域がピークであり、これは植物の光合成に使われる波長と似通った波長であることを学んだ。植物の光合成に必要な光波長のピークは660nm付近と450m付近であり、大体赤色と青色の光が光合成に特に有効であることが分かる。葉の色が緑なのも、赤と青の光を吸収した結果残りの光に緑が多くなることによる(文献1)。このように光合成に必要な光の波長と太陽放射のスペクトルのピークは一致しているが、植物の進化の過程で光を吸収する葉の仕組みが物質的に変化していったのか、それとも吸収する光の波長が段々とずれていったのかといった点が気になった。地球が進化していく段階で、太陽光の波長も変わっていったことが予測されるが、それに対する対応は光吸収を行う物質の変化なのか、その物質自体の吸収波長が移動していったのか。化石を分析していくという方法は思い付くが、それ以外に何か考察していく方法はあるのだろうか。
※参考文献1※http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333537.htm、文部科学省HP 資源調査分科会「豊かなくらしに寄与する光 光と植物—植物工場」(2015年10月4日最終閲覧)

A:話の展開自体はよいと思います。ただし、議論されている「波長のずれ」というのが、どの程度のものなのかが説明されていないので、評価が難しいところです。赤外光や紫外光の領域まで含めた話なのか、それとも可視光の領域の中で色の違いを議論しているのかによって、問題は大きく異なりますから。議論はなるべく具体的にすることが重要です。


Q:今回の講義では光合成に必要な太陽が出すエネルギーについてであったので、私はそこからエネルギー利用について考えた。私が考えたのは、
・太陽からの光エネルギーを効率的に回収、利用できないか
・人間の活動からエネルギーを生み出すことはできないか
の2点である。1つ目について、太陽のエネルギーをより多く回収するには、地球上に届く太陽エネルギーをより効率よく回収するか、もともとの母体数を増やすか、のどちらかである。前者については、太陽のエネルギーは大きいが濃度が薄いということで、太陽光発電のパネルをより多く設置することで改善できるのではないだろうか。後者の方は、太陽光の大きさを変えるわけにはいかないので、エネルギーを回収する場所を太陽に近づける、という方法を考えた。地球上より太陽に近い宇宙空間でエネルギーを回収、変換することが可能ならば、それを地球に送ってエネルギーとして利用できれば今よりも多くのエネルギーを利用できるのではないだろうか。2つ目について、私は以前人間が踏むことによって発電できる「歩行発電」を聞いたことがあったので調べたところ、ロントンオリンピックの際にイギリスの主要駅に設置されていたそうで、1回踏むと5-7ワットの発電ができるという(文献1)。この装置を日本の主要駅の改札口やホームなどに設置すれば、私たちは通常の生活を営みながら多くのエネルギーを生み出すことができるのではないだろうか。以上、今回のレポートは植物生理学という観点とは少し違う内容となってしまったが、人間がエネルギーを取り出す方法が少し変わるだけで環境に影響する。その影響をまず最初に強く受ける生物は植物ではないか、と私は考える。
*参考文献:文献1 ロンドンの駅に「歩行発電」装置 http://wired.jp/2012/07/20/people-light-olympic-walkway/

A:この講義のレポートでは、「植物生理学という観点」を考慮する必要はありません。自分の論理をきちんと展開してくれれば、植物生理学的な観点であっても、物理的な観点であっても、社会学的な観点であっても構いません。このレポートの場合、自分でアイデアを考えている点は評価できますが、アイデアの提示に終わってしまって、論理の展開が弱いように思います。もう少し、自分なりのロジックが欲しいところです。


Q:化学合成エネルギーを用いて有機物の合成を行う生物がいる一方、どうして光合成を行う生物はそのエネルギーを光に求めたのか。以下、光合成に光を使う利点として考えられる3つを考察する。1つ目は「光が半永久的に継続して得られるエネルギーである」ということである。光はある日を境に途絶えてしまう可能性がほとんどない。これは、光を用いた有機物合成システムを確立することによって、半永久的に有機物を合成できることを意味している。2つ目は「量を調整しやすい」ということである。植物を例に挙げると、光合成の場はその大部分が葉であるため、葉量を調節することにより光量を調整できる。加えて葉の傾きや葉緑体の配置を変化させることによっても、光量を調節することができるため、個々の生物にとって必要量の光量を満たしやすい。3つ目は「光と熱は同一の場所で享受できる可能性が高い」ということである。いくら光が得られたとしても、光合成を行うために必要な各種の反応系が進行しなければ有機物を合成することはできない。その進行には熱(=温度)が必要不可欠である。太陽は光とともに熱も放出していることから、光を求めることで反応系の進行に必要な熱も受容できるような環境を得ることができる。

A:これは、3つのポイントをきちんと考えた点は評価できます。ただ、これもいわば3つのアイデアの提示であって、論理展開にはなっていません。例えば最後のポイントであれば、葉以外の器官、例えば根は、太陽光を受けていないにも関わらず、熱に関して問題を生じていません。とすれば、この議論だけでは、葉だけで熱が問題になる理屈がつきません。そのようにロジックを追いかけることで、考えたアイデアの妥当性を検証するところまでできるとすばらしいでしょう。


Q:地球に届く太陽からのエネルギーは3.84×10^26 Wという値だが、それを利用することを考えると火力発電や原子力発電と比較すると非常に大きな面積を必要としてしまう。これは1 m^2あたりで得られるエネルギーが小さいからである。面積あたりに得られるエネルギーが大きなものとなるとしたら将来的には太陽光エネルギーの利用はより需要が増えると考えられる。黒い紙に対して虫眼鏡を通して太陽光を当てることで燃やすことができる。この技術を利用することでより効率よく太陽光エネルギーを利用することができるのではないかと考えた。高い位置にいくつかの虫眼鏡のように太陽光のエネルギーを一点に集める装置を設置しその先にパネルを設置することで面積あたりで得られるエネルギーを増やすことができるのではないかと考えた。また、太陽の位置は日の中や季節により変化するため、それに対応できる装置が必要となる。そのため得られるエネルギーに対して装置を維持するためにエネルギーを消費してしまうので効率がそれにより落ちてしまうことも考えられる。

A:自分で考えてはいますが、もう少し独創性が欲しいところですね。面積を稼ぐためにレンズを使うというアイデアを思いつくところまではよいのですが、実際にそれで問題は解決するのかという思考過程がさらに必要です。結局のところ、レンズの面積は必要で、その面積は最初に必要とされた面積と変わらないのではないでしょうか。


Q:今回の授業では、物理の法則で生物について考えたことについて考察したいと思います。生物が自分の体内の秩序を保つためにエネルギーを使っているというとらえ方は、そう考えてみると細胞が酸素や水分など必要なものを取り込む仕事、老廃物を排出する仕事などがエネルギーをつかうという事実にあっていると感じました。また、昨今の健康のために運動を推進する考え方は、上記の活動がいくつかつながってできている体内でエネルギーを用いる物質のサイクルにおいて、より少ないエネルギーでサイクルを回して体内の調子を整え健康を保てるようになるからかなと考えました。

A:これだと「考察」にはなっていません。第1回の講義の際に説明したように、感想は評価の対象になりません。評価されるのはロジックです。最後の一文は、きちんと敷衍すればロジックになった可能性はありますが、いかんせん一文では論理展開するのは難しいでしょう。


Q:太陽と人間の単位あたりの光放射量の比較についてとても驚きました。また、エントロピーについての話でも、散らかった状態にすることも意図的でないということは考えたことがなかったので、すごい納得しました。

A:第1回目の講義の際のレポートの書き方についての注意を聞いていなかったようですね。同じ内容は、コースナビのこの講義の「お知らせ」の所にも書いてありますから、確認してください。感想だけのレポートは評価の対象になりません。


Q:今回の授業では、エネルギー密度の話があった。太陽からのエネルギーは、全体としてみた場合、その量は多いが、エネルギー密度が薄いために、それらを集めようとすると効率が悪いということであった。ここで、エネルギー密度を上げる方法はないかと考えた。密度を上げればよいわけなので、広がったエネルギーを一つの場所に集結させる手法をまず考えた。調べたところ、実際に平面型のリチウム電池を折り紙のように折り曲げることでエネルギー密度を上げることに成功したグループがある(アリゾナ州)ことが分かった[1]。これを、太陽エネルギーにも応用したらどうだろうか。従来のソーラーパネルをベースに作り、なるべく一つの場所に集中させる方法を考えたい。まず思いついたのが、電波を集めるアンテナのような形で、かつ、ミラーなども利用しながら光を様々な方向から集め、エネルギーを利用する方法である。おそらく、ミラーでの跳ね返りの段階でエネルギーが減少してしまうことが考えられるが、反射などと言った光の性質をうまく利用すれば、地理的な問題を克服して、結果的に狭い場所でも太陽エネルギーを効率良く利用できるのではないだろうか。そしてこれは、エネルギー密度を上げることにつながるであろう。
[1] “Study shows paper-folding concepts can compact a Li-ion battery and increase its areal energy density” (2013/9/25)、Green Car Congress http://www.greencarcongress.com/2013/09/20130925-asu.html (閲覧日 2015/10/02)

A:これは、思いついたアイデアについて、問題点を考慮している点が評価できます。ただし、リチウム電池の場合は、太陽電池と違って受光面積の問題が生じるわけではありませんから、話がだいぶ違うように思います。