植物生理学II 第5回講義

植物の茎

第5回の講義では茎や幹の形と機能のかかわりについて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:タンポポのように茎がほとんどない植物の生息する場所として草原や、落葉性の森林の林床があげられていたが、他に生育に適した場所はあるのだろうか。茎がほとんどない植物の利点は、茎の分の現存量を減らすことができることである。また、葉が地面に近くなるため、風の影響を受けづらい。という事は、風が強く吹く場所でも生息しているのではないかとも考えたが、それでは面白くないので、川に生息する可能性を考えたい。水中で生活する植物は多く知られているが、そういった植物は流れの緩やかなところにしかいないのではないだろうか。なぜなら、流れが速いと流されてしまう危険性が高いからである。その点、タンポポのように茎がなく、背が低ければ川の流れにも耐えられる。川の水中で生育する植物がほとんどいないのならば、光の取り合いがあまり起こらず、川の水中で生育できれば有利になりそうである。問題点として水中への光の通りづらさがあげられるが、他の植物との競合を考えれば、浅い川ならばまだそこに住むことに意味がある可能性がある。もう一つの問題点として、子孫を残すのに工夫が必要なことがあげられる。水中で花粉を播いたらただ下流に流れてしまうだろうし、茎を水面まで伸ばそうにも、流れが速くて支えるのが難しい。考えられるのは、茎や根を伸ばしてそこから新しい芽を出すことである。もしくは、季節により川の水位が変化するところならば、その季節に絞って子孫を残すことも考えられる。いくつか問題点を挙げたが、おそらくこれ以外にも問題点はたくさんあり、光の取り合いがないという事以上に欠点が多く、茎がない植物に限らず川の水中に住むのは、難しいのではないだろうか。

A:よく考えていると思います。ここに、一つでも実際の自然界の観察例についても一緒に議論できたら素晴らしいと思います。これだけだと、頭の中で考えた結果だけで終わってしまいます。もちろん、頭で考えることは一番重要なことですが、その結果の妥当性は、自然科学の場合、自然の観察によって裏付ける必要があります。この場合でしたら、川底の石の表面のコケなどは、「葉」ではありませんが、「茎」の長さが極限まで短くなった植物としてとらえることは可能だと思います。


Q:今回の授業では、植物の茎や根の形と、その形状の意味について学んだ。その中で、茎の形や長さがいかに水分を吸収するのに役立っているのかについて考えさせられた。このことから、植物の茎がもしも正六角形でもっと太い茎だったらより安定させられるのではないだろうかと考えた。なぜ正六角形なのかというと、自然界で最も安定した形を保てるのが正六角形だと聞いたことがあったからである。例えば、蜂の巣の形状(ハニカム構造)は正六角形をつなげてできたものであることなどが挙げられる。蜂の巣は上から踏み潰してもなかなか壊れにくい。それと同様に植物の茎の形状も正六角形にすると、円形や尖った四角形のものより安定するため、より長さを長くでき、光合成や毛細管現象による吸水という点で今までの植物より生存に有利になるのではないだろうか。ここで、正六角形とまではいかないが、六角形の形状の茎を持つ植物を調べてみたところ、カナムグラ(鉄葎)という名前の植物で、鋭利な棘を持った茎を持ち、周りの低木につるを巻きつける植物が存在した。詳しくはよくわからなかったのだが、授業で言っていたような蔓植物の仲間ならば、吸水という点では他の植物よりもはるかに生存に有利であるから、やはり植物の茎に最適な形状は正六角形に近い形状なのではないかと思う。
参考文献:http://sizenkan.exblog.jp/14599053

A:考えたことと調べたことを結び付けていてまあよいでしょう。強いて言うと、ネットで調べるのではなく、近くの公園ででも実際の植物を観察してくれると最高ですが、まあ忙しい毎日でしょうからそこまでは要求しません。でも、カナムグラは早稲田近辺でも捜せばすぐ見つかりますよ。百人一首に採られている「八重葎繁れる宿の・・・」の八重葎は、現在のヤエムグラではなく、カナムグラのことだと言われています。


Q:今回の講義で、タンポポは中空の茎を持っているという事を学んだ。中空の茎であることメリットについて考察する。タンポポはロゼットに茎を持ちその先端に花をつけている。タンポポの種子は風によって運ばれるためどこで成長するかがわからない。例えば学校の校庭や公園など人が多くいる場所に行き着くかも知れない。人が多くいるところでは踏みつけられてしまう可能性がある。その場合、中身が詰まった茎では簡単に折れてしまう。しかし中が空であればある程度の衝撃が吸収することが出来るので、折れづらいはずである。こういった茎の特徴はタンポポがいろいろな場所で発芽し成長することを助けていると考えられる。

A:タンポポも中空と言えば中空ですが、僕が講義の中で言ったのは、ハルジオンとヒメジョオンの見分け方の話ですよ。本題ですが、生物に「意味」を考える時には、必ず逆の面からも考えてください。「中空の茎が折れづらくてよい」というのがよいとしても、そうしたら「中身がつまった茎」を持つ意味は何でしょう?何かメリットがあるからこそ、「中身がつまった茎」を持つ植物がいるはずです。その場合、タンポポはなぜそのメリットを捨てても構わなかったのでしょうか?そこまで考えて一つの考察です。


Q:今回の授業では植物の茎やそれを含めた全体的な形態について学んだ。その中でも植物の形態を決める要因のシミュレーションについて興味を持ったので、その研究を応用する方法がないか考える。授業で用いられたスライドでは繁殖効率、受光効率、力学的安定性などの様々な要因のどれを優先するかによって植物の形態がシミュレーションでき、その結果は実際に存在する植物と似た形態を示すことがわかった。ここで、このシミュレーション結果と似た形態を持つ植物群を定め、その分裂組織の細胞や形態形成に関わる役割を持つ細胞での遺伝子発現パターンのデータをとる。それを用いて、上に挙げたような「ある要因を優先した結果の植物群の形態」と「その植物群の遺伝子発現パターン」に関連性がみられるか調べる。関連性がみられれば、例えば、力学的安定性と受光効率を優先して植物を効率よく育てるにはどの類の遺伝子を導入または発現の上昇をすればいいかわかるであろう。このやり方は、ある単一の植物の形態的特徴と遺伝子発現を結びつけるより多くの植物に対して一般に言える形態と遺伝子の関連性を見つけることができるかもしれない。

A:よく考えていてよいと思います。特に最後の部分、「ある単一の植物の形態的特徴と遺伝子発現を結びつけるより」という部分が素晴らしいと思います。単に一つの実験系を考えるだけでなく、その実験系と他の実験系のメリット・デメリットを総合して考察することは、実際の研究を進める上で非常に重要です。


Q:今回の授業では、茎について学んだ。また、茎は断面が丸い植物だけではなく四角い植物もあると知った。シソなどが四角い茎をもつ理由として曲げに対して強くするためであると分かった。しかし、四角い茎についてさらに考えてみると欠点も多いのではないだろうか。四角い茎では4つの側面にしか更なる茎や葉が生えてこないと考えられる。そうすると茎や葉の重なりが大きくなり光合成に不利である。上のほうの葉は光が十分あたりよく成長するが下のほうの葉は光が当たらずあまり成長しにくいということが想像できる。また四角い茎だと丸い茎に比べて表面積が大きくなるのでそれだけ風や雨なの外部の刺激によって傷が付きやすいという欠点もあるだろう。このように考えていくと自身の支持に重きを置いて四角い茎をつくるより、丸い茎にして背を低くするなどしたほうが、効率が良いのではないだろうか。四角い茎を持っているのがシソであるということを考えると、シソは食用でもよく使われたり幼虫がたべたりして上のほうの成長の進んだ葉は取られるということを考えると下のほうの葉にもいずれ光が当たるようになり光合成という面からみると不利ではないのではないかと考えられる。こういった葉のサイクルを考えると茎を丸くして低くするより茎を四角くししっかりとさせたうえで光を求めて上に伸び葉を増やしていくほうが効率的なのではないだろうか。

A:考えている点は評価できます。ただ、効率がよい・悪いで議論が終わってしまっていますが、実際には、すべての点でまるい茎の効率が上回っていたら、四角い茎をつける植物は競争に負けて絶滅するはずです。講義の最初に、多様性は環境との相互作用から生じると述べたことを思い出してください。そうであれば、まるい茎が有利になる環境と、四角い茎が有利になる環境があるはずです。多様性を論じるためには複数の環境について考察することが重要です。


Q:今週の授業では、茎の話題を中心とした授業であった。その中でも、植物の中には茎を持たない植物があるということが印象に残りました。理由としては、周りに日光を遮るものがないので、自分自身の背丈を伸ばす必要がないので、茎を持たないということでした。理由は理解できるのですが、あっても困るものでもないし、わざわざなくすのには他の理由もあるのではないかと思いました。そもそも、茎も緑色をしているわけで、葉に比べると少ないものの、少なからず光合成をできる器官であるのになくしてしまうのは、この観点からのみ考察すれば、実は効率が悪そうに考えられる。さらに、種子植物であるならば、遠い土地に運ばれることも十分にあり得るわけで、そうした場合、子孫は繁栄できずに枯れてしまうと考えられる。茎をなくすほかの利点として、茎の役目は体の支持と、水分・栄養分の運搬だといえると思うので、この運搬機能のほうでほかに利点があるのではないかと考えられる。思いついたのが、茎が長いと根から吸収した水分を上方向にもっていくのに余分なエネルギーが必要となる、根から直接に葉へと水分・養分を運搬できれば少ないエネルギーで済むのではないかと考えられる。この運搬に要するエネルギーが茎全体の光合成によって得られるエネルギーを上回っていれば、茎をなくす意味があるのではな以下といえる。さらに、ひょろっとした茎の上に花がついているよりも、地面に近いところで咲いているほうが安定感があるようにも思える。

A:よく考えていると思います。ただ、もう少し一つのポイントに絞って論理的に文章を構築した方がよいでしょう。この場合、レポートの主題は、「背が高ければ余分なエネルギーが必要になり、それが背を低くする方向に働くのではないか」という部分でしょう。最初の部分から真ん中あたりの問題設定の部分はそれでよいと思いますし、そのあとに主題を置いているのもよいと思いますが、最後の安定感はむしろない方が主題をはっきりさせるでしょう。その代わり、植物の高さの上限などについての考察ができるとよいかもしれません。世界で一番高い木の高さは110 mぐらいですが、そうなると、まさに水をそこまで上げられるかどうかも、高さを決める制限要因の一つとなるでしょう。


Q:つるの蒸散流速が異常に早いことに興味を持った。蒸散流速が早いということは、浸透ポテンシャル、マトリックスポテンシャルが高いということである。つるは”樹木に比べて地上部に占める葉の割合が3倍程高”い。土壌分、空気中の水分量に関係すると思うが、葉が多く光合成量も多くなれば、蒸散流速も早くなり、植物自体の代謝もはやくなるのだろうか。もしそうならば農作物で遺伝子操作を行い、つるのように葉を大きくし導管の太さを太くする実験をしたら、興味深い結果が得られるかもしれない。
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/59/D2-19.html

A:話題としては面白そうですが、論理展開がバタバタしていますね。もう少し、科学的レポートでは、文章できちんと論理を展開していくことが必要です。何を問題点として設定し、その問題点に対してどのような証拠and/or論理を考えるとどのような結論が得られるか、という流れが必要です。また、「興味深い結果」というのは情報量がほぼ0です。何がどのように興味深いのかを記述しない限り意味がありません。


Q:今回の講義では茎の配置について学んだ。多くの植物では茎は側面に葉をつけ、上部および上部あたりの茎などに花を咲かせる。だが、花は下部ではダメだのだろうかと疑問を持った。下部に花をつければ、蜂や蝶を招きにくくはなるが、蟻など他の生物を呼び寄せる可能性がある。受粉により子孫を残すことに重点を置く花の位置だが、光が最も当たる上部は葉の方が光合成を行う点で良い位置になり、花の位置を下げれば受粉を媒介する生物種が増えるのではないだろうか。

A:これも話題としてはよいのですが、考察が少し不足です。ちょっと考えれば、ありなどを呼び寄せる花はそれほど目立たなくてよいわけですから、人の目には付きづらいと予想できます。「多くの植物では茎は側面に葉をつけ、上部および上部あたりの茎などに花を咲かせる」というのは観察の結果だと思いますが、そもそも観察しての印象は、目立つ花に左右されます。つまり、実際には、目立たない花を下の方につける植物も多いかもしれないですよね。その辺りまで考察してください。


Q:今回の講義は葉や花を高い位置に配置するには、という導入から入った。これは同じ質量で高い位置に配置するには、細くて長い茎によって実現するとのことだった。続けて、環境(場所や季節)に対応して植物には特徴が見られることを学んだ。これは例としてはタンポポが生息場所を選んだことで根~葉区間の茎が短い特徴があることが取り上げられた。導入とタンポポの話から浮かんだ疑問について言及したいと思う。それは同じ質量で植物を構成する際にタンポポでは茎を長くするはずだった質量が他の部位に使われていてもおかしくないのではないかという疑問である。タンポポは根からすぐロゼットと呼ばれる形の葉を出すが、これこそ質量的に葉を特化した形なのではないだろうか。タンポポは講義内でも説明があった通り周りに背の高い植物が育てないシビアな環境に生息する。タンポポにとっても多少なりともシビアな環境である中で光合成を行うことは必須であり、葉が光を吸収することは大前提となる。そんな中でロゼットという形状は葉自体が光を受ける面積を確保していると同時に、根から放射状に生えることで葉の重なりを避け効率よく光を吸収できていると考えられる。また非常に地面に近接していることから風によって煽られることを避けされ、地熱による熱の確保も可能にしていると考えられる。導入では高い位置にものを配置することこそ目的であったが、タンポポはシビアな環境で安定して生存することを目的として自身の形態を持てる限りのポテンシャル(質量)で各部の構成をしていったのではないだろうか。

A:きちんと考えていると思います。ロゼットの葉の利点についての議論になっていますが、最初のイントロの質量の話とのつながりはあまりよくないように思いました。「質量的に葉を特化」とありますが、ロゼットでない葉でもタンポポのような葉をつける植物はよく見るように思います。


Q:今回の講義では茎の役割について学んだ。茎というと、師管や道管を通して水分や養分を送る役割に注目しがちだが、実は葉や花を高い位置に配置し、その葉や花と根をつなぐ役割が一番の役割であるということが分かった。今回のレポートでは水中に生息する植物(沈水植物、浮漂植物、浮葉植物)の生活環境に合わせた形態の変化の過程を今回や今までに学んだ茎の役割に着目して自分なりに考えていきたいと思う。まず、沈水植物は水底に生息していて、植物体が完全に水の中に沈んでいる。水分が十分あることなどの利点もあるが、光合成が行えないという欠点がある。そこで、陸上植物と同じように茎を伸ばすことで効率よく光合成が行えるような浮葉植物という形態に一部変わっていったと考えられる。このことによって葉や花は常に水面に出ていることになり、光合成が行えるようになる。しかし、水中では水分や養分を根から葉に運んだり、植物体を支持したりといった構造(師管や道管など)は必要がないと考えられるため、次第に茎は衰退してなくなり、また、根も衰退し地中に埋まっていない状態になり、根とそれに直接つながった葉や花が水面に浮いている浮標植物という形態が登場していったのではないかと考えられる。以上のように考えると、沈水植物→浮葉植物→浮標植物と形態を変えてきたと予想できることから、水中での生存を選んだ水中植物も環境に合わせて必要な機能、不必要な機能を取捨選択し、進化していっているということが伺える。

A:これもよく考えていると思います。ただ、「沈水植物→浮葉植物→浮標植物」という考え方は、あたかも進化が一方向に進むようにもとらえられかねませんから、少し注意が必要かもしれません。それぞれがどのような環境に適しているのか、という視点を常に忘れないようにする必要があります。


Q:今回の講義にて「植物の形態を決める要因のシミュレーション」について学習した。そこで、この事について触れていきたいと思う。これはいわゆる平均化というものである。では、自然環境を生き抜く中で必要なことは、今回取り上げられたA:繁殖効率,B:受光効率,C:力学的安定性の3つの平均された植物なのだろうか。私はこの平均とはどこにでも通用することではないと思う。というのも、確かに我々が住む日本においては南極などとは異なり、極寒の地に対する対策は特には必要がない。しかし、例えば砂漠においては受光効率を上げても、あまりある光を寧ろ抑えなくてはならないため、逆効果なのである。また先程の南極の話では、見かけでは植物は見られない。しかし、南極にある湖の中に潜ってみると、そこには明らかに植物が存在する(http://www.waseda.jp/wias/researchers/monthly/spot_y_tanabe.html)。ここでは、そのことについて深く言及しないが、上記の参考文献のサイトにしても結論として、受光効率を下げることによって、植物が生育しにくい環境でも生育するのだ。従って、まとめると確かに極地外の地域では植物の各効率の平均化した植物が生育しやすいが、環境の厳しいところではその平均化した植物よりも寧ろ特化型の植物の方がより生育しやすいと考えた。

A:これもよく考えていますね。おそらく南極の生物よりも形態的特徴のはっきりした例はいくつか挙げられると思いますから、そのような具体例を一つでも挙げると、より説得力が増すと思います。


Q:今回の講義では、植物の茎について学んだ。茎は、師管や道管などの植物体内の循環機能を司る構造を含んでおり、また、植物体全体を支持するという役割も担っている。しかし、これはあくまで一般的な植物にいえることである。蔓植物について考えてみる。蔓植物にとっての茎は、直接的な支持機能を果たしてはいない。蔓植物は己の茎を他の高木や崖などに張り付けたり巻き付けたりすることで、間接的に自身を支えている。つまり、蔓植物にとっての茎の機能は、あくまで循環機能がメインなのである。ここで一つの疑問がわいてきた。蔓植物は通常の植物と異なり、その茎を上へ下へ右へ左へと縦横無尽に伸ばしていく。そのような茎の中をどのようにして水は移動していくのだろうか?今回の講義の中で、水の移動の原動力には、圧・浸透・マトリックスの3つのポテンシャルがあることを学んだ。そのうち、圧と浸透に関しては、重力に対するそれらの向きはポテンシャルの大小に関係ないと判断できるので、毛細管現象に関してのみ重力との関係性を資料にて調べてみた。その結果、毛細管現象は(さらには表面張力なども)、重力に対する力の向きはポテンシャルの大小には影響しないということがわかった。また、毛細管現象の効力に影響を及ぼす主要因は、その毛細管の断面積であった。よって、毛細管の太さが適当であれば、その毛細管の重力に対する向きは問題ではなく、蔓植物のような縦横無尽に張り巡らされた茎であっても、水の運搬には支障をきたさないと判断できる。

A:これは、考えてはいるけども、講義を聞いていないような。毛細管現象では導管の通導は説明できない、という話をしたはずです。


Q:動物の血管の繊維は進行方向に伸び、植物の導管の繊維は進行方向と垂直の方向に向いているという違いについて、なぜそのような違いがあるのか興味を持った。植物に焦点をあて、動物の血管と比較しそのような構造を取る利点を考える際に、まずそれらの形態を探ると、血管には心臓というポンプの力が働くのに対し、植物の導管にはそれにあたる様な動的要因が存在しないという点が挙げられる。講義で扱ったように、水の移動の原動力となるのは圧力ポテンシャル、浸透圧ポテンシャル、マトリックポテンシャルが挙げられるが、これらが作用する際にこの構造であると何か利点があるのであろうか。動物血管では心臓により進行方向への力が生み出されるのに対し、植物では高低でのあらゆる差(圧力の差、溶媒濃度の差、など)が求められる。つまり、進行方向と垂直の方向に繊維が伸びることで、高いところと低いところで異なる繊維から成ることになるので、自然と段階的に区切ることができそれらの差を調整しやすくしているのではないかと考えられる。また、逆流を避ける弁の様な働きとしても有効なのではないだろうか。

A:導管の中を水が移動する仕組みについては、次回の講義で詳しく解説します。


Q:生物は環境とのかかわり合いで形が決まってくるといったことが印象に残りました。タンポポは周りに光を邪魔をするものはないから、茎が必要ないとのことでした。ここで思い出したのが、タンポポの根がとても長いということです。茎を成長させる必要がないと、根を成長させ水や栄養を得ることに集中させるのかと感じました。上方に体をのばして光を得るのか、下方に体を伸ばして水や栄養をえるのかについても、環境によって生物がとりうる戦略は変わるのだと感じました。タンポポとその付近に育っている背の高い植物の茎の長さと根の長さを比較すれば、負の相関が得られるかもしれないと思いました。

A:少し考察が足りないかもしれませんね。環境との関わりから出発していますが、結論は根と茎の逆相関になっています。その場合、茎が高くなると、根は短くなるはずですが、乾燥地帯で水が足りないときはどうなるのでしょうか。環境とのかかわりについてしっかり考える必要があるでしょう。


Q:前回の授業では茎について学んだ。茎の役割として通導、葉や花の配置、貯蔵器官、光合成といったものが挙げられていたが、ここでは通導について考察する。通導を担う組織として導管と師管があり、導管は水や無機塩類、師管は糖などの通り道となっている。ここでわざわざ導管と師管に分ける意味について考える。そもそもどちらも物質を移動させるための管なのだから一緒にしてしまった方が効率が良いように思える。それでも2種類の管に分けている理由を考えるため、その管が通す物質の違いに着目する。導管が通す水や無機塩類は土から根で吸収したものだ。光合成などに利用するため葉などのある上方に移動させると考えられる。それに対して師管を通る糖は基本的に葉で合成されたものが自給できない根などに運ばれるので、下方の移動が伴うと考えられる。以上のことから通す物質の輸送先が真逆になることがあるため分けた方が都合が良いと考えられる。しかしここで、更なる疑問が生まれる。全く違う方向へ輸送する場合がある導管と師管を含む木部と師部が隣り合って存在するのは一見不都合のように感じられる。しかし師管を通る糖はそれ単体ではなく溶媒に溶けた状態であると考えられその溶媒は水であると考えるのが自然であることを考慮すると、導管は師管が移動させる物質の溶媒の供給源として重要だからと考えられる。

A:きちんと考えていると思います。強いていると、結論がやや当たり前という気がしなくもありません。できたら、その人なりの独自の考え方を展開するようにしてください。サイエンスの世界では人と同じことを考えていてはだめですから。