植物生理学II 第3回講義
植物の葉
第3回の講義では、葉の紅葉と色素の関係について最初に触れ、その後表皮の構造について紹介しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:蒸散が起きた結果温度が低下していると習った。一方で、水を失って温度を下げることができるということは、それを有効活用している植物がいるのではないかと考え考察してみる。温度上昇によって、光合成速度と呼吸速度の両方が上昇する。しかし、互いに同じだけ上昇するのではなく、光合成速度は光の強さに依存するが、呼吸速度には光の強さは関係しない。つまり、温度が上昇し続けるとどこかのタイミングで光合成速度がマイナスになり、これは光が弱いほどおきやすくなる。以上から、弱光下では温度の上昇が光合成に与える悪影響が大きくなると考えられる。そのとき、蒸散により温度を下げることができたら光合成速度を高く保つことができる。また、CO2をより多く取り込むこともでき光合成速度の上昇を後押しする。しかし、これには欠点があり自由に水を使うことができるほど水が豊富になくてはならない。以上の条件を満たし、温度低下のために蒸散を行う可能性があるのは、熱帯雨林などの水が豊富、かつ、背が低く日が当たりにくいようなところ(ジャングルの林床は光が弱いはずである)にいる植物なのではないだろうか。
A:これは面白い考え方ですね。よく考察しています。確かに光が弱ければ光合成は光によって律速されますから、原理的には温度上昇は二酸化炭素吸収を低下させることになります。ただ、熱帯雨林は熱帯と言っても最高気温は近頃の東京よりも低かったりします。日の当たらない林床では温度はそれほど上がらないかもしれません。
Q:二酸化濃度と気孔開度の関係を調べてみた。二酸化炭素濃度が高いほどたくさんの二酸化炭素を取り込むために気孔開度が上昇すると予想したが、実際は低いほど気孔開度は大きかった。原因ははっきりとわかっていないが、蒸散が関係しているように思える。気孔を開くと光合成に必要な二酸化炭素を取り込むことができるが、それと同時に植物体内の水分も逃がしてしまう。二酸化濃度が低いとたくさん開いて二酸化炭素をたくさん取り込むことが必要であるが、濃度が高いとたくさん開かずとも光合成に必要十分な量の二酸化炭素を取り込むことができるため、極力気孔の開きを抑え、無駄な水分蒸発を防いでいると思われる。
A:「調べてみた」というのは自分で実験をした、ということですか?そうでなく、何か調べ物をしただけだったら、きちんと出典を明記してください。また、その後の考察の内容は講義で説明した部分です。レポートは自分の考えを書くようにしてください。
Q:今回の授業では、植物が紅葉や黄葉を起こす際の色素に関して学び、そこからさらに植物は何を優先的に対処して環境に適応するのかについて学んだ。授業では、植物は実際には体内の水分量についてを最優先とし、体温は二の次にすると考察していたが、もしも植物が水分量ではなく体温を優先させたらどのような植物ができていたのかについて考えたい。水分量よりも体温調節を優先させた場合、まず考えられることは、気孔の開閉が水分量によってではなく、体温の上げ下げによって起こる仕組みになるということである。つまり、現在のような水分量による濃度勾配で気孔の湾曲の度合いが変化することはなくなり、温度によって気孔の湾曲の度合いが変化する仕組みになる。どのような仕組みができるか考えたところ、温度によって植物が変化する事象には温度傾性があり、これを考えに利用すると植物の花芽形成など温度に敏感な反応を示す事象に必要なジベレリンやフロリゲンなどのホルモンが気孔に存在すれば、気孔が温度の上げ下げで動くことがあり得ると考えられた。植物は気孔以外の部分で温度を感知するシステムが存在するため、気孔にそのシステムが存在してもおかしくはないのではないかと感じた。ただ、このシステムが植物に存在した場合、温度の低い地域では植物が生えなくなってしまうため、問題が生じると考えられた。
参考文献:成長の調節、http://www.keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_1_kaitei/contents/bi-1/4-bu/4-2-1.htm
A:独自の視点に基づいた考察でよいと思います。自分でアイデアを考えて、それに基づいて論理的に考察していて評価できます。ただ、最後の部分は、水分量で調節する場合でも、乾燥地域では植物が生えなくなってしまうので、同種の問題が生じると考えられるのではないでしょうか。
Q:高校生や中学生の時に、植物は気孔を使って温度の調節をしているというのは実は結果的なもので、実は植物体内にある水をなるべくなくさないようにしているということを学びました。では、二酸化炭素の濃度が高いまま植物をしばらく放置しておくとどうなるのか?いくら水が大事だからといってずっと気孔を閉じて温度が上がったままでは植物体に大きく影響をするはずなので、こういった条件になった場合には昔習ったような働きを優先的に行うのではないかと思います。
A:いまひとつ論理がはっきりしませんね。「温度が上がったままでは植物体に大きく影響をするはず」だとしても、干からびたら枯れてしまいます。どちらを優先するか、という話なので、その影響の大小をきちんと比較して議論しなければ意味がありません。
Q:今回の講義では植物における気孔の役割を学んだ。その中でいかに植物にとって陸上に生存することが厳しいのかが分かった。水分の蒸発を防ぐクチクラ層をもつなどして乾燥に耐えている。では、砂漠などの水分環境の厳しい地域に生育する植物はどうなっているのだろうか。このような環境に生育する植物の一種に多肉植物がある。多肉植物には葉が退化しているものや、葉が肉厚で水分を多く含んでいるものが多い。乾燥の厳しい環境に生育するためには、限られた水分を保つことがとても重要になるはずである。そのため、一般的な薄い葉ではなく肉厚な葉をつけ乾燥に耐えてると考えられる。生育する環境に適した、水分の蒸発に対する形態があるのではないだろうか。
A:乾燥地帯の植物の葉の形態については今後の講義で触れる予定です。
Q:今回の授業ではクロロフィル、アントシアン、カロテノイド等の色素を頭に入れて、紅葉について考えた。紅葉が起こる主な理由は、葉と木の間に離層が形成されることによって葉に蓄積した糖がアントシアンに変化するからである。このアントシアンは多くのエネルギーを扱うことができなくなったクロロフィルを光から守るサングラスのような役割があると考えられている。そうすると、植物の種類によって秋になると紅葉するもの、黄葉するものがあるが、紅葉するものは落葉するまでの間にクロロフィルは徐々に分解されつつもアントシアンによって光合成が行うための葉緑体が守られていると考えられる。これはできるだけ枯れるまでに有機物の合成をするための時間稼ぎとして機能しているかもしれない。
A:これは、やや論理に無理があるような。転流が妨げられてアントシアンができるのだとすると、そのアントシアンが保護することによって光合成ができたとしても、その産物は転流ができないのだから無駄になるのでは?
Q:今回の授業で1つ気になった点があった。それは、表皮細胞が葉緑体をもたない(孔辺細胞を除く)ことにどのような利点があるのかということだ。表皮細胞の外側にクチクラがあり、葉の表皮は外部からの機能に特化しているということを授業で教わったが、それでももし表皮細胞が葉緑体をもっていたとすれば葉全体の光合成量が増すのではないだろうか。表皮細胞で光を集め光合成をし、表皮細胞をすり抜けた光が柵状組織で光合成をしさらにすり抜けた光が海綿状組織まで伝わり、光合成効率が上がるのではないか。しかし、表皮細胞が葉緑体をもち光合成能力にもたけているとしたら、柵状組織の細胞の役割が減り細胞がぎっしりと並んで組織を作ることがなかっただろう。あるいは表皮細胞と柵状組織の区別がなく一体であっただろう。表皮細胞は葉緑体をもたず、光合成は柵状組織や海綿状組織に担当させているということから機能分化した理由は何なのだろうか、やはり保護機能の重要性故なのだろうか。表皮細胞が保護機能に特化した故であるならそれだけ植物にとって光合成が大切であるということがうかがえる。たしかに、自然環境の中では風、空気、雨、温度など様々なストレスがかかる。よって葉緑体をできる細胞がこのようなストレスにさらされることなく光合成能力を発揮させることができるように表皮細胞が保護しているというのは単純に多いにありうることだ。また、外部からのストレスから守ることに表皮細胞が特化しているのなら、様々に葉にかかるストレスを変え表皮細胞がどのように発達するのか、あるいは逆に全くストレスが当たらないような適した環境で育て表皮細胞がどう発達するかを観察し比較することで、表皮細胞の役割がさらに見えてくると思う。
A:文章としてはよいと思います。ただ、問題点について考えられることを色々挙げているだけで、根拠をもとにある結論を導く、という論理の流れが今一つであるように思います。色々考えることは重要なのですが、その過程をレポートに欠くのではなく、考えた結果、これだ、と思いついた論理構造を示すことができれば一番です。なかなかいつもそのようなレポートを書くのは難しいかもしれませんが。
Q:今回は授業の初めに紅葉について詳しく学習した。葉が紅葉する理由の一つに色素であるクロロフィルを分解してタンパク質を再利用しているというものがあった。これを聞いたときにまるで動物のような機能が植物にも備わっていると思い驚きました。そこで、この機能はどのように制御されているんかが気になりました。どのような遺伝子が働いてクロロフィルを分解しているのかを調べてみましたが、参考になるような文献は見当たりませんでした。もう少し調べて、クロロフィルの分解のメカニズムを知りたいです。
A:これで終わりだと感想レポートですね。この講義で求めているのは、調べ物レポートではなく、自分の論理を記述するレポートですから、文献に頼らなくても、自分の頭で考えればよいのです。文献を論理の材料にするのはもちろん結構ですが、重要なことは自分の頭を使うことです。
Q:今回の講義において、紅葉は植物に必須である窒素などの栄養分を最終的に回収するための過程でおこると学んだ。葉が紅くなったり黄色くなったりすることは、クロロフィルが分解される過程や結果から起こることが理由と分かったが、紅葉にはそれ以外の影響があるのではないかと思った。理由は、紅色や黄色は自然界で目立つ色なので他に影響がある可能性があるとか感じたためである。派手であることは動物などを引き寄せる可能性があると考えられる。紅葉、黄葉と言えばモミジやイチョウが真っ先に思い浮かぶ。イチョウは黄葉する少し前に、実である銀杏を落とす。この銀杏を動物が食べることや、体について運ばれることによって実が運ばれる可能性もある。モミジも同様に紅葉する前に種を付ける。派手な色で地面に落ちている方が、茶色や緑よりもよく目立つ。これらのことから、二次的な効果として色がつくことで実や種の散布に役立つこともあると考えられる。このような例があるか調べたが、特に記述は見つけられなかった。
A:目の付けどころはよいでしょう。最後の所、実際にそのような例があるかどうかは、この講義のレポートでは全く重要ではありません。紅葉と種子形成の時期が符合するという観察から、説得力のある論理を展開できさえすれば十分です。
Q:今回の講義では紅葉についてや気孔の役割について学んだ。私はその中でも特に維管束延長部について興味を持った。1枚の葉の中でもそれぞれで葉の色が違っているのはこの維管束延長部によって葉の中で細胞が分かれてしまっているためにおこる現象であるということであった。このように同じ一枚の葉であるのに色が違っていると不都合が生じてしまうのではないかと考えた。そこでまずこの維管束延長部の存在意義について調べてみた。すると維管束延長部によって葉の強度を上げると共に、傷の影響などが他の場所に行かないようにすることができるということがわかった。しかしながらこのような機能のせいで光を吸収しないことで制御できなくなったエネルギーを持たなくするといった紅葉の機能がうまく働かなくなるといった不都合が起きてしまっている。しかし私は1枚の葉に様々な色がついてしまっている葉はそこまで多く見たことがないのでおそらく極一部の葉にこのような現象が起きてしまっているのではないかと考えた。よって植物は少しのエラーよりもこの維管束延長部によるメリットをとるため、特に不都合は生じていないと私は考えた。
参考文献:葉の内部構造 基本組織系、http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~algae/BotanyWEB/leaf3.html
A:目の付けどころはよいのですが、最後、ちょっと論理が腰砕けですね。「そこまで多く見たことがない」という事実は、論理を構成する事実としてはやや弱いでしょう。むしろ、「傷の影響などが他の場所に行かないようにする」というのが目的の一つなのであれば、傷などで光合成機能が失われた部分だけ早く紅葉する、といった仮説なども成り立つのではないかと思います。
Q:ある種の植物は冬に近づくと、紅葉した後、葉を落とす。こうすることで冬になり光合成の活動が低下する中、葉を維持するためのエネルギーの消費を防いだり、土中の水分が凍結するなどして根が十分に水分を吸収できない代わりに、葉からの蒸散を防いだりすることができる。冬が過ぎると春に近づくにつれて、植物はまた新たに葉をつけなくてはならないが、葉の生成には大量のエネルギーが必要となるはずである。結果として冬にはエネルギー消費を抑えられたが春には新しくエネルギーが必要となるなら、冬でも葉を落とさない常緑樹のようにした方が都合が良いのではないだろうか。常緑樹は葉を残す代わりに、陰樹であったり、針葉樹であったりして、葉のエネルギーの燃費を良くしている。冬のエネルギー消費を最小限に抑え、かつ春に新たに葉を生成するエネルギーが省けるため、落葉樹よりエネルギー効率が良いように思える。もしそうだとしたら、落葉樹が存在するのにはそれを上回るメリットがあるはずである。その一つとして一度葉を落とし、新しく生成することで葉の老化をリセットすることができることである。落葉樹は毎冬、葉を落とすわけではないため時間が経過するにつれて葉が老化し、光合成の能力に影響を及ぼすが、落葉樹ではこの点では常緑樹よりも利点があるといえるのではないだろうか。
A:一つの仮説ではありますが、この場合、もっと単純な仮説があると思います。すなわち、冬の長さです。冬の間のエネルギー消費は冬の長さに依存する一方、春に葉を作るエネルギーは一定ですから、冬が長ければ葉を落とした方が得ですし、冬が短ければそのまま葉をつけていた方が得になります。
Q:今回の講義では、紅葉のメリットについて議論していた。クロロフィル自体が危険因子になる可能性があることや、葉を分解して自身の養分とすることがわかった。しかし、紅葉のしくみ自体理解していなかった。元々葉には、クロロフィル・アントシアニン・カロテノイドが含まれているが、クロロフィルの緑色が一番強く発色している(緑色以外の光を吸収している)。気温が下がることで、クロロフィルが減少し、他のアントシアニンやカロテノイドの葉の中での比率が増加し、紅葉するのだと考えた。しかし、気温が下がると活動が減少し、糖分や水分などの供給が停止することでクロロフィルが破壊され、紅葉するということがわかった。動物の冬眠のような現象が葉もあると知りました。
紅葉豆知識,10月19日閲覧http://kids.goo.ne.jp/parent/seasonevent/momijigari/detail_01.html
A:このレポートは「考えた」という言葉が一か所でてきますが、実際にはあまり自分の論理を展開するレポートになっていませんね。何かしらの問題を設定して、自分なりの根拠でその問題に解答を与える論理を構成するように努力して見てください。
Q:気孔は蒸散や二酸化炭素の取り込みのはたらきをもち、気孔の開閉は周囲の二酸化炭素濃度や温度に影響を受けている。蒸散によって植物体の温度調節を行ったり、蒸散流によって物質の運搬を行っている気孔の開閉において重要視されるのは水分である。例えば温度が上昇し二酸化炭素濃度が高い条件下で気孔は閉じている。植物体の温度低下が必要であり、二酸化炭素の取り込みが容易であるこのような状況で気孔が閉じていることから、植物の、主に気孔にまつわるシステムにとってどのような条件が適当なのか、またシビアなのか疑問に思った。講義中に「塩水と空気の比較」というテーマで細胞における過酷な条件を探るトピックがあったが、植物体で見た時はどのような条件がシビアと言えるのだろうかという疑問が交錯した結果生まれた疑問である。さて、光合成を行うにあたり普通の植物は二酸化炭素の吸収が必須である(CAM植物等を除く)。また自身で合成した栄養分や部分的に吸収した栄養分や水分を運搬するために蒸散が関わることから気孔の開いた状態は必要である。以上を踏まえて、ある空間の気温と二酸化炭素濃度を調節し一定期間の植物の気孔の様子や発育を観察することで適当・シビアな条件を確認することができると考える。
1.二酸化炭素濃度:高、温度:夏の平均気温 2.二酸化炭素濃度:高、温度:冬の平均気温 3.二酸化炭素濃度:低、温度:夏の平均気温 4.二酸化炭素濃度:低、温度:冬の平均気温 (各番号の光量を等しくする)
1から4を例として更なる細分化した条件分けを行い、気孔のはたらきへの影響やその結果を観測することが必要である。
A:前半と後半がやや独立してしまっていますね。前半がイントロになっているのかもしれませんが、どちらかに絞って議論した方がよいように思いました。後半は、方向性を示しているので、許容範囲ですが、もう少し結論にまで持って行けるとよいですね。
Q:今回の講義では紅葉が起こる理由について学んだ。具体的には、葉と土壌細菌によってクロロフィルを窒素まで分解することで生態全体での窒素循環を行うことや、葉が手元を離れる前にクロロフィルを無色の分解産物にまで分解することで制御不能のエネルギーが合成されることを防ぐということである。したがって、これらのことを踏まえると、葉を意図的に落とす際には、紅葉が必要であるということが言える。一般に、1年を通して緑色の葉をつけていて紅葉しないものとして、常緑樹が知られている。“1年を通して”とはいうが、では常緑樹は落葉しないかということを考えてみる。もし、常緑樹がずっと葉が落とさず、成長するにつれて新しい葉を増やし続けていけば、光合成から得られるエネルギーと植物体全体を保つために必要なエネルギーのバランスが釣り合わなくなってしまうと考えられる。したがって常緑樹も落葉することはあるということが想像できる。この仮定が正しいとすれば、最初に述べたような紅葉が起こる理由から、いくら常緑樹といえども葉を落とす際には紅葉するのでは、ということが言える。アントシアニンの合成量が増えるかどうかはわからないが、少なくともクロロフィルの分解は進み、カロテノイドによる黄色が目立つようになり、黄色の葉になるとは考えられる。このように今回の講義で学んだことをもとに考えると、常緑樹という分類こそされているものの、毎年決まった時期に落葉をしなかったり、紅葉も一度に起こるわけではなかったりするだけで、紅葉というのは全ての樹木で起こっていると想像することができる。
A:実際に、常緑樹のマンリョウなどをよく観察すると、暑いころに葉を紅葉させて落とします。ただ、この場合、なぜその季節に?という疑問は湧きますね。
Q:今回の講義では、クロロフィルは環境によっては危険物質であり、アントシアニンは防御物質だという話を聞いた。それが紅葉のメカニズムであり、紅葉が起こる理由だということであったが、ここで一つの疑問が浮かんだ。ではなぜ常緑樹が存在するのかということである。クロロフィルが本当に危険物質になりえるのならば、常緑樹は環境適応できずに絶滅しているはずではないのか?おそらく、この疑問に対する解答は至極単純であるように思われる。紅葉をする樹木が生息している環境と常緑樹が生息している環境が異なっているから、というようになると思われる。しかし、紅葉樹も生息していれば常緑樹も生息している環境もあるので、そのような環境においてそれらの樹木が共生している理由を突き止めることが今後の自分の課題となるであろう。
A:ちょうどこの上のレポートにあるように、常緑樹は、葉が永遠に生き続ける木ではありません。常緑樹でも葉は落としますし、紅葉するものもあります。ただし、事実は、この講義では重視しません。現実とは異なっていても、自分の考えた前提の中で論理的にレポートを構成していれば高く評価します。
Q:黄葉したイチョウの葉が赤くはならず黄色く見えるのはクロロフィルが分解された葉の中にアントシアンが合成されず、カロテノイドのみが作られるためである。他の紅葉する植物ではアントシアンがクロロフィルに日光が当たることを阻害し、更に葉内の活性酸素を除外する。アントシアンを合成しないイチョウについて考察する。イチョウは古くから存在する植物であるため、アントシアンを合成する他の植物の機構は進化の過程で後に生まれてきたと考えられる。イチョウにおいては多量に含まれるカロテノイドがアントシアンの代わりに活性酸素の発生を抑えている。もしくは、イチョウは黄葉から落葉までの期間が短いため活性酸素の影響をあまり受けないと考えられる。
A:考えようという努力は感じられます。一つ一つには論理的な関係があるのですが、全体として何を主張しようとしているのかがもう一つわかりません。「イチョウについて考察」というと「について」という部分がどうしても漠然としてしまいます。もう少し問題設定をはっきりさせた方がよいでしょう。
Q:今回の講義で印象に残ったことは、どちらが植物が生長していく上で過酷な環境なのかを調べるには、環境を直接比較する方法があるということです。ここで飽和食塩水と湿度80%の空気を比較して、飽和食塩水の水が空気に移動することから、湿度80%の方が過酷だという例を知りました。ここで思ったことは、湿度が100%でなければ、食塩水の水は空気に移動していくのだから、空気中は植物にとって海水で生きるよりも過酷な環境なのではないかということです。しかし、現実として植物は陸地でも繁栄しているので、海水の中にいるよりも植物にとって利益があることがあるのだと考えられます。それは、おそらく光を陸地の方が多く得ることができるからなのであろうと考えました。つまり、光合成をするのにあたっては空気中の方が都合がいいということです。植物は多くのエネルギーを得られる場所の方が、自分が生きやすい場所で成長するよりも繁栄していくのではないかと思いました。
A:ほぼ一点に絞った議論になっていますが、よいと思います。ただ、やや結論がありふれているのでもう少しユニークな観点から議論できるともっとよいでしょう。科学では、人と同じというのはマイナス評価ですから。
Q:前回の授業では教科書によく書かれている「葉の蒸散には葉の温度上昇を防ぐ」ことについて、これは積極的なものではないと考えられることを学んだ。根拠として二酸化炭素濃度を下げると気孔を開いて二酸化炭素を取り込みやすくするが葉の温度は低下し、二酸化炭素濃度を上げると気孔を閉じて水の蒸散を防ぐが葉の温度が上昇するという現象を挙げていた。これは葉の蒸散が葉の温度上昇を積極的に防ぐことの否定には少し足りないと考えられる。というのもこれでは葉の温度上昇を積極的に防ぐ必要がなかった場合の説明がなされていないからである。そこで植物にどのような現象を観察できれば葉の蒸散が温度上昇を積極的に防いでいるかどうか決定できるのか考察する。まず植物を生育が妨げられるほどの高温環境下に置くことが必要だ。なぜならこの環境では蒸散を行って葉の温度を下げなければ生育に支障がであるため、植物としては普通の状態では蒸散を強要される環境を作り出せるからだ。さらに水分を過不足無く適切に与えるようにする。そしてこの環境下で二酸化炭素濃度を上下させる。もし二酸化炭素濃度を上げたときにも気孔を開いたとすれば蒸散により積極的に葉の温度上昇を防いでいることが証明され、逆に気孔が閉じればこの環境下で葉の温度上昇を防ぐより水分の確保を優先することは考えにくいので、この働きは積極的でないことが証明されると考えられる。
A:きちんと考察されていてよいと思います。また、講義で僕が行ったことを鵜呑みにしていない点も評価できます。