植物生理学II 第2回講義

植物の葉

第2回の講義では葉の形と機能のかかわりについて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。最初なので、数は20人と多かったのですが、全員のレポートを載せることにしました。


Q:植物の形はなぜあのような形をしているのかという授業の中で、葉の厚さや縦横の比率についてや葉柄が棒状の理由についてをよく理解できたので、それ以外の部位はなぜ特殊な形をしているのかを考えてみることにした。
 これまで、植物を考えるときに、花がひらいたり葉が生い茂ったり紅葉を起こす時期は容易に様子が思い浮かぶが、冬に関しては何も思い浮かばないと感じていた。そこで、冬には植物はどのような形状をしているのかよく思い出してみると、冬芽と呼ばれる特殊な器官が形成されていることに気づいた。このため、芽について詳しく調べたところ、サクラのような樹木に代表されるような鱗片のように硬い鱗芽、アジサイに代表されるような芽の中身を隠していない裸芽、モクレンのような芽に毛がたくさんついている芽など、たくさんの種類があった。これらの芽がなぜこのような形状になったのかをよく考えてみると、そこにはやはり冬という特殊な環境が影響していると思われた。冬は他の季節に比べ、極端に気温が下がり、関東では特に火事に気をつけなくてはならないほど乾燥している。これは、蒸散により水分量を調節している植物にとって特に厳しい状態である。鱗片のような硬い芽は乾燥も寒さも防ぐことができ、毛に覆われていれば動物の毛と同様に寒さを防ぐことができる。アジサイのように覆いのない芽でも、薄く毛が生えていたりすることで寒さや乾燥を防ぐことができたり、生育環境により暖かさも異なるため、環境に適応して生活していると考えられる。この他にも、植物の大きさや、樹木であるのか草木であるのかの違いなどにより、その植物に適した位置に芽が形成されていると考えられる。植物は動物と同様に上手に冬という厳しい季節を乗り越えているのだと感じた。
参考文献:冬芽の解説、http://www.tuins.ac.jp/~ham/plnttuin/spc/me.html

A:きちんと考えたレポートになっています。ただ、今回の講義では、多様性と普遍性について考えてみたと思います。鱗芽、裸芽、毛の生えた芽という多様な形態を、単純に同一の原因に求めてよいのか、という点についてもう少し考慮があってもよいように思いました。


Q:授業において単葉と複葉について触れた。進化によって一枚の葉に切れ込みが入り複数の葉になったものが複葉であり、タンポポなど葉に切れ込みが入った種は単葉から複葉に移る途中の過程であると考えられている。単葉が複葉になることの利点を考える。大きな一枚の葉ではなく多くの細かい葉をつけることによって一部の葉が病気などで使えない状態になったとしても、被害を最小限に抑えることができると考えられるほか、切れ込みが入った葉と葉の間にすき間ができるので、大きな葉をつけた状態よりも風圧に強くなると考えることができる。

A:「タンポポなど葉に切れ込みが入った種は単葉から複葉に移る途中の過程であると考えられている。」というのは、進化の過程で、という意味でしょうか?そうだとすると、進化の途中ということが何を意味するのかをよく考えてみる必要があるように思います。なお、葉の平面的な形については、次回に触れることができると思います。


Q:機能が形をつくるという事を学んだ。一方、以前別の講義で、機能は構造からうまれるという事を習った。このふたつは相反しているように思える。それではどちらかが間違っていてどちらかが正しいのだろうか。この疑問を解く鍵は説明している人の立場が重要になるのではないか。生物学は大きく分けて生理学と解剖学に分けられる。生理学は機能を、解剖学は構造を主に研究している。つまり、生理学をやっている人には機能がその形を誘導したようにみえるだろうし、解剖学をやっている人にはその逆に見えるのではないだろうか。これだけでなく、別の視点から考えてみることも必要である。そこで、進化の過程から考えてみる。進化するうえで、自然選択を適用するならたまたま構造ができて、たまたま機能を持った者が生き残ってきたと考えられる。ここで生存に必要なのは機能であり、必要な機能をもった構造しか残らなかったことから、結果的に機能が構造をもたらしたという事ができるのではないだろうか。

A:自分なりの論理を展開しているので、よいと思います。一方で、やや禅問答的で、言葉を明確に定義すれば、自然と解決する問題ではないか、という気がします。


Q:茎の周りの葉の付き方を葉序という。葉序は輪生、対生、互生の3種類がある。輪生は1つの節に何枚も葉がついているもの、対生は1つの節に2枚の葉が向かい合ってついているもの、互生は1つの節に葉が1枚しかついてないものを指す。効率よく光を浴びるため、極力上の葉と下の葉が重ならないように生えている。互生では螺旋を描くように葉がついていたり、対生では下の葉の組と上の葉の組が90度回転した十字の形をとった生え方をしているものが多い。1本の枝に葉がたくさんある方が光を受ける葉は増えるが、葉が多すぎて重なりすぎると1枚あたりに受ける光の量が少なくなり効率が悪い。基部では葉が重なりやすいので、基部の方が葉が小さい植物や葉の形が細い植物なども多い。

A:ここまで考えたらもう一息。では、その光が当たる効率を最大にする葉のつき方に、全ての植物が収れんしないのはなぜでしょうか?せっかく、講義で多様性と普遍性について学んだのですから、そのあたりまで踏み込んで考えてほしいと思います。


Q:葉の大きさ、 茎の長さがなぜ様々な植物で違うのか考えてみる。まず一つの植物が生えている場所に違う植物が生えるとする。もとから生えている植物をA、違う植物をBとする。Aが生えている場所に、Bが同じような成長をしてしまうとAに成長が妨げられてしまう。よってBはAに妨げられられないような葉の成長をしなければならなくなる。それは葉によって光合成をして栄養を作らねばならないからである。この繰り返しが違う地域・場所で起きているために植物の葉や茎は違う形・成長をしているのだと考える。

A:これは、多様性の起源を複数の植物の競争に求めていて、非常に面白いと思います。本当は実際の植物を観察して、ここに具体的な例を一つでも取り上げて議論できると説得力がぐんと増します。


Q:今回の講義で、植物の葉の形を2次元的に見た場合と3次元的に見た場合にはそれぞれ意味があるということについて学んだ。では茎についてはどういった意味があるだろうということを考える。大体の植物体の茎の断面は丸い。茎の役割を考えると茎は植物体を支えることが思いつく。例えば風に対して断面が丸いと一定方向から風を受けた時にあたる面積が四角や三角の場合と比べて少ないために風の影響を受けにくいと考えられる。また丸い場合は四角や三角と比べてしなりやすいということもあって、風によって折れてしまうということを回避しているということが考えられる。また葉を付けるという観点から考えると、断面に頂点があるものでは頂点に葉を付けてしまうと不安定になってしまうので、頂点がない円形にすることで、どの方向にも葉を付けられるようにしていると考えられる。

A:茎の話は、今後の講義で取り上げる予定です。実際の植物にはシソ科やゴマノハグサ科などに四角い茎をもつものがありますから、そのあたりまで考えて議論できるとよいでしょう。


Q:今回の授業で“葉の基部では細胞分裂をしているうちに、先端部の細胞の大きさが決まる”“基部の細胞は若い細胞(分裂途中の細胞)で先端の細胞は古い細胞であり先端部は自分の葉の大きさがわからないうちにも細胞分裂を調節し一定の大きさの葉になる”ということを習ったが、とても興味深くどのようにして先端の細胞は細胞数の制御をしているのだろうかと不思議に思った。このことについてまず考えられるのは基部の細胞の状況(あとどれくらい分裂できるか、どのくらいの大きさになりそうだ、など)が先端の細胞に伝わるようなネットワークがあり、基部から間の細胞を通り先端の細胞に伝わるのではないかということである。私はある仮説を以下に立ててみようと思う。
 私の仮説:基部の細胞が基部での細胞分裂の状況や細胞の大きさなどから葉が少し小さそうだということを判断すると基部の細胞で細胞分裂を促進させる植物ホルモンを合成し、それを他の細胞に放出し葉内部の細胞に広がり先端の細胞に届き先端の細胞にある特殊な受容体で植物ホルモンを受容し細胞分裂が促進される。
 上のことを調べていくためには先端の細胞側の反応の原因は何なのかを考えていかなければならない。まず先端の細胞で分裂が促進されるのは植物ホルモンによるものなのか調べる必要がある。これは先端の細胞をとりすりつぶして植物ホルモンとされる物質があるかないか確認しなくてはならない。もし、植物ホルモンとなりうる物質が発見されたとすれば、次は、基部でもその物質が発見されるか確認しなくてはならない。先端の細胞では物質が発見されたとしても基部で発見されなければ、植物ホルモンが基部から先端に伝わるのではなく他の方法で何らの情報が伝わり先端の細胞で物質が合成され細胞分裂が促進されたということが考えられるだろう。基部、先端の両方の細胞で発見されればそのほかの間に位置する細胞での物質が発見されるか実験してみる必要がある。実際私の立てた仮説は間違っていると思うが植物器官内での細胞を通じた情報ネットワークというのはとても面白いテーマだと思い興味をもった。

A:実際には、正体がまだわかっていない植物ホルモンを物質として同定することは非常に難しいでしょう。最初に必要なことは、何らかの生理学的な検定方法を確立することでしょう。その方法を考えるのが第一ですね。もう一つ、「細胞分裂の状況や細胞の大きさなどから」とさらっと書いていますが、実際に自分の細胞の大きさをどうやったら判断できるでしょうか?考えてみると案外難しいと思いますよ。


Q:今回の授業では葉の形について学んだ。授業なのかでいくつか形に関する形容詞があげられたが、その中でギザギザというものがあった。葉が厚かったり、表面積が広いという理由は光合成が効率よくでき、生存に有利であるというような理由が考えられるが、ギザギザであることで生存に関係があるとは考えにくいので、調べてみた。まず、ギザギザの部分は鋸歯と呼ばれる構造であった。さらに、理由も調べてみると、葉で光合成をする際に二酸化炭素が吸収され、酸素が放出され酸素濃度が高くなる、この層を葉面境界層という。この層は酸素の濃度が高いので植物にとっては、光合成の効率が悪くなってしまう。そこでギザギザを作ることで風で空気の渦ができるため、光合成速度が上昇して効率が良くなるのである。というような理由がみつかった。
参考文献:葉っぱはどうしてギザギザがあるの http://greenfactory.blog50.fc2.com/blog-entry-667.html

A:「みつかった」といって満足していては、この講義のレポートとしては物足りません。それが本当だろうか。ほかの理由はないだろうか。そのあたりを自分の頭で考えた結果をレポートに書いてください。


Q:今回の授業で、細長くしたり広くしたりと多様な形の葉にするには、遺伝子レベルで調節されており、細胞の大きさではなく、数を増やすことで形作っていることを学んだ。細胞を大きくするには、細胞の数を増やすもしくは一つ一つを大きくする方法がある。細胞の大きさを大きくするのではなく、増やす理由について考える。もし細胞一つを大きくして葉を横長にした場合、葉は薄く、より広くなることになる。葉の形を保つために細胞壁を利用しようとしても、面積当たりの細胞の数が減ってしまうので耐久性に劣ってしまう。また、一部分の細胞の大きさを大きくするより、部分的に細胞分裂を多く行ったほうが複雑でなく効率的である。よって葉の形は細胞の数を増やすことで調節されているのだと考えられる。環境によって植物が、それぞれ葉を多様な形にして適応するために遺伝子レベルで調節していることに感動した。

A:自分で考える姿勢はあってよいと思います。ただ、やや常識的な考察で終わっているので、本当は、もう少し自分ならではの論理が欲しいところです。


Q:今回の講義では植物の構造、形の意味、多様性と共通性、部位の役割について学んだ。私はその中でも葉柄の役割について特に気になった。葉柄の役割としては長さに違いを持たせることによってそれぞれの葉の光の当たり方に違いを持たせるためであり、また葉を支えるためにある。このように葉柄にはきちんとした役割があるのにも関わらず葉柄がない植物も存在している。これについて考察してみることにする。葉柄を持たないものと持つものの差はやはり葉の部分の面積の大きさであると考えた。これによって葉柄の役割である葉にあたる光の変化を葉の部分を大きくすることにより、1枚での光合成量をあげることによって補っているのではないかと考えられる。しかし葉の面積が大きくなることによってより風の影響を受けやすくなってしまうため、葉柄をなくすことによって生じるデメリットもあると考えられる。このことから葉柄をなくすことによって葉柄の役割は補えるが、デメリットも生じてしまうため葉柄をなくさない方がいいのではないかと私は考えました。

A:これは、メリットとデメリットの比較から葉柄の多様性を論じていて非常に良いと思います。これも、実際の植物の観察から一つでも具体例を挙げることができるとぐっと説得力が増します。


Q:今回は、なぜ植物の茎は円柱型が多いのかということについて考えてみた。強度を考えると、円柱型も四角柱型がもし同じ素材で同じ硬さなら、形による強度の違いはないと考えられる。内部構造を考えると、木部や師部を配置するという点で考えると円柱でもその他の形の茎でも問題がない。光に当たるために曲がったりするのにも、円柱である必要はない。このように構造や機能から円柱型が多い理由を探ったが特に機能的には円柱である意味はそれほどないのではないかと考えられる。実際に三角柱型や四角柱型の茎をもつ植物も多くある。考えられる円柱型である理由は成長がしやすいということが大きいのではないのではないかと考えられる。四角柱などであると太くなるのに分裂の調節が難しくなるのではないかと考えられる。

A:まず、「円柱型も四角柱型がもし同じ素材で同じ硬さなら、形による強度の違いはない」という部分は、建築の人などが聞いたらカンカンに怒りだすと思います。実際にはかなり違うはずです。また、せっかく「実際に三角柱型や四角柱型の茎をもつ植物も多くある」ことに気づいているのですから、講義でやった多様性を考えれば、それぞれ環境との相互作用によって円柱だとメリットがある場合と、四角柱だとメリットがある場合があるのではないか、と想像できるはずです。そのあたりを考えてみるようにしてください。


Q:今回の授業では植物の葉の形がなぜそのような形になるのかをメカニズムと目的の二つの観点から理解に迫った。葉の形を表す形容詞として丸いことや薄いことなどが挙げられたが同時にどの葉も共通して左右対称であるという性質をもつことに気が付いた。この性質をメカニズムの観点からみると葉の細胞一つひとつで左右対称になるような遺伝子が発現し結果として全体的に左右対称になるのではないかと推測される。次に目的の観点からみる。つまり、左右対称にすることにどのような目的があったのかについてである。メリットとしてすぐに思いくのはバランスの良さである。葉の肋が物理的安定をもたらすように、左右対称にすることで安定感を増しているのではないかと考えられる。物理的安定を得られれば、その分、風や雨などの環境に対する抵抗に優れるようになり生存に有利になる可能性が高くなる。

A:これは、必要最低限のことをピシッと論じていてよいと思います。しいて言うと、「すぐに思いつくのは」とあるように、常識的な回答であるのが残念ですが、まあ、実際にそうであればしょうがないでしょう。


Q:今回の講義では、「光エネルギーが薄いため、葉は葉のような形状をしている」というワードが気になった。生物の進化として環境に適応した葉の形状には納得したが、「光エネルギーが薄い」とは、どういうことなのか考えてみた。太陽の光エネルギーが薄い(弱い)というよりは、葉緑体の吸収率は高く、葉を分厚くすると葉の裏まで光が届かず、光合成の効率が悪くなる。そのため、葉の形状は薄く平たい方が効率よく光エネルギーを吸収することができる、という意味ではないかと考えた。

A:悪くはないのですが、やや物足りない気がします。せっかく着目点は面白いのですから、では葉緑体の吸収率が今の1/10だったら葉の形状はどうなるか、などと考えてみると、独創性を持ったレポートになると思います。


Q:今回はメカニズムや目的などの異なるアプローチから植物の葉について学んだ。植物の葉について考えるならばまず光合成が頭に浮かぶが、今回の講義内容も光合成について考えさせられることが多かった。葉の形は多くのものが平たいが、平面的に見ると多様性に富む。光合成において光を多く取り込むことは重要であり、そのため大きい葉は表面積を確保するために役立つであろう。しかし、小さい葉を持つ植物は葉の数を増やすことでそのデメリットを補償している。大きい葉を持つ植物が多くの葉を持つことが一番ではないことは言うまでもないだろう。つまり光合成は葉の大きさとその数に影響を受けるわけだ。今回の講義で葉の大きさを調節しているのはan遺伝子とrot3遺伝子であることがわかったが、葉の数はどのように調節されているのだろうか。葉の大きさとの直接的な関係を踏まえて考えるとan遺伝子とrot3遺伝子の発現調整によって葉の数がどのように変化するか数値化する方法が考えられる。an遺伝子の発現量とrot3遺伝子の発現量をそれぞれ調節して組み合わせることで葉の形と数の関係性を調べられるのではないだろうか。

A:最後のところの論理が今ひとつわからなかったのですが、遺伝子の発現量を変えると、それに応じて葉の数が変わるはずだ、という理屈でしょうか。科学的なレポートの場合は、面倒でも、そのような論理のステップをひとつづつ追って書いたほうが良いでしょう。


Q:今回の授業では、生物を考えるうえで“多様性と共通性”を見ることが大切であるという話から、“植物はどのような得があって、そのような形をしているのか”について学んだ。植物に限らず生物は、長く種を残していくために個体を取り巻く環境に合わせて進化していく。例えば熱帯雨林地方に生息するマドカズラは、激しいスコールによって葉が損失することを防ぐために穴の開いた葉を持っている。しかし、昆虫や小さな動物を捕え、消化するように進化した葉を持つ食虫植物は、生息する環境に合わせてエネルギーを効率よく得られるように、また、光合成の場である葉の損失を防ぐために、といった進化とはまったく異なるように感じる。なぜ食虫植物が食虫植物になることを選んだのか、自分なりに考えてみた。まず、光合成だけでは必要なエネルギーが得られないということが考えらえる。しかし、食虫植物は他の植物とは異なり、虫などを捕える部分が大きく発達していることや、消化酵素を分泌しなくてはならないため、より多くのエネルギーが必要になると考えられるが、この理由だと本末転倒となってしまう。そこで、昆虫や動物に食べられることを防ぐことも理由の1つにあると考えてみるとつじつまが合う。食べられてしまう前に相手を捕え、そこから得たエネルギーで食虫するための環境を整える。このように考えると、食虫植物が光合成だけではエネルギーが足りないことも、食虫することも納得できる。こういったことから、すべての植物は共通点を残しながら、個体が自身の生育環境に合わせて独自の多様性を生み出していると考えられる。

A:食虫植物が虫からエネルギーを得ているという出発点が実は誤解です。とは言え、自分なりの論理を展開していて非常に良いと思います。大事なのは自分の頭で考えることですから。


Q:今回は植物の葉メカニズムについて学習した。そこで注目したのが、いかに効率良く光合成を行うために太陽光を葉に集めるかということだ。植物の成り立ちから、葉は光を集めやすくなるよう、自ら調整して成長していく。だが、自然に育った植物と人工的に育てた植物とはその植生は全く異なることに気付いた。というのも、それには植物がどのような間隔で育っていく違いがはっきりと分かる。自然な森林などに行くと植物は沢山あり、光を吸収するために競争する。しかし、人工的な森林ではある程度間隔をおいて植生されているため、光を吸収するための競争はそれほどない。そうしたなかで、植物とは自然の中で光を吸収しやすくするために、葉の面積が形、薄さや葉柄を調整する。考えてみると、農業においても全く同じことが言える。田植えを行う際に密に植えてしまっては十分に育たないが、一定の間隔をあけることにより育ちやすくなる。つまり、これは植物間における競争を減らすことによって、1個体に対する光の吸収量があがる。従って、ここではいかに太陽光をテーマとしたため、植物が太陽光を吸収するための要因には葉の形成だけでなく、植生も関係しているのだと考えられる。

A:文章の書き方が今一つですね。思いつくままに書いていっている感じですが、科学的なレポートは、問題設定を最初に明確にして、それを明らかにするために自分なりの論理を展開して、最後に結論を書くようにします。それに加えて、その結論は最初の問題設定にピシッと答えるものである必要があります。このレポートの場合、「植生と関係する」という問題設定が曖昧なのが論理性がぼやける原因の一つです。せっかく光の吸収についても考えているわけですから、「関係する」ではなく、もっと具体的にどのように関係するか、という点を議論するようにするとよいでしょう。


Q:本授業では植物構造の意味合いについて考えた。植物のあらゆる特徴は、進化の過程で、あらゆる部分が意味のあるものになっているようだ。今回は葉や葉柄にフォーカスを当てて講義をされていたので、私は果実の美味について考察をしてみようと思う。果実は生息域を広げる為に、より遠くに種子を飛ばそうという工夫を凝らす。その為に、果実は虫や鳥にとって美味なものとなり、糞に紛れ込んで遠い地へ種を運ばんとする。ヒト以外の動物の味覚とヒトの味覚は違うらしいが、果実はいつ頃からヒトにとって美味になったのであろうか。私は、ヒトが衣服を身につけはじめ、農耕文明が始まった頃からだと考える。火山の大爆発によって地球が寒冷期に入った頃からヒトは衣服を身に纏うことを覚え、生活域を爆発的に広げた。その彼らが多くの技術を発明し、様々な環境での農業が可能になったことで、ヒトは果実にとって「都合の良い生物」となった。ヒトにとって美味であり、「栽培を行いたい」と思わせることが出来た果実が、植物間の生存競争において大きなアドバンテージを得られる。よって、果実がヒトのために(あるいは自身ために)美味であろうとしだしたのは、地球が火山灰によって寒冷期に入って暫く後であろう、と考える。

A:ちょっと論理にギャップがあるような。「生活域を爆発的に広げた」とありますが、ここで広がったのは、ヒトという種の分布では?一方で、果実にとって重要なのは、個人の行動範囲でしょう。農耕文明によって定住生活に移行すれば、行動範囲はむしろ狭くなるように思えますが。


Q:光を効率的に集めるためにたいていの植物が上に向かって成長していることを少し疑問に感じました。葉で光を効率的に集めるのだったら表面積を増やすためには、水平的な成長をした方が、多くの光を集められるのではないかと思いました。葉柄を作らなくても、水平にもしくは斜めに成長すれば葉の重なりを考慮しなくてもよいのではないかと考えました。しかし、これでは単体の植物だけを考えてしまっているので、ほかの植物との競争も考慮した場合には、やはり垂直方向に成長した方が効率かいいのでしょう。また、1枚の葉の表面積が二倍になるのと、葉の枚数が1枚増えるのでは、当たる光の量が等しいと仮定した場合どちらの方が効率のいい光合成ができるのか疑問に思いました。葉の機能を考えた場合に、葉もコンパクトな方が蒸散や光合成の機能を効率よく行えるのではないのかと考え、葉の枚数を1枚多くした方が効率よく機能することができるのではないかと考えました。

A:自分で考える姿勢は見られてよいと思います。ただ、ちょっと結論が常識的なので、何かもう少し冒険が欲しいですね。


Q:第一回の授業では、植物の体は器官と組織という2種類の視点でそれぞれ3つに分けることができ、これを組み合わせることで9つに分類できることを学んだ。このように植物の個体の中で分類することにどのような意義があるのかについて考察する。現在の生物学は、対象の細胞や組織などについて他のものとの共通点に着目することで、その役割や働くメカニズムを解明するのが主流である。例えばヒトのある因子が体のどこに働きかけているかを解明したいとき、ヒトとよく似た生物モデルであるマウスを用いて研究することがある。以上のことから植物について研究するときその体を分類することは、植物全体で共通するメカニズムの理解を妨げると考えられる。しかしある個体の葉の表皮組織と別の種の個体の根の維管束系を比較したとすると、異なる点が多過ぎて分かることが少なくなってしまうと考えられる。この場合比較するものは同じ器官、組織にする必要があるため、より容易に比較対象を見つけるために植物の個体内における分類は必要と考えられる。これらのことから生物学は基本的に共通点からその機能およびメカニズムを解明していくが、共通点のある適切な比較対象を見つけるために様々な次元での分類が必要であることがわかる。さらに言うなれば、分類なしには共通点を考察することは難しいとも考えられる。よって分類は現在の生物学の基礎という意義を持っていると結論づけられる。以上よりもし未開拓な分野に足を踏み入れることがこれからある場合、まずその分野の視点で分類することが研究の第一歩であると考えられる。

A:これは、これまでにない独自の視点で、非常に高く評価できます。この植物生理学の講義を早稲田で始めて6年目に入りましたが、器官と組織についてのこのようなレポートは初めてです。科学の基本は、人がやらないことをやることですから、その意味では満点でしょう。


Q:考察の前に、授業の導入で植物の成長は無限とういうことがあげられたが、魚はどうか。今までの経験上、魚の成長には限界があるように思う。コイやウナギは1mくらいが限界ではないだろうか。また、水槽が小さい中で金魚を長年育てるとある程度の大きさで成長がストップした。本来フナの突然変異種であるので、金魚は30cmくらいまでは成長するはずだが、そこまで成長させるには小さな水槽では成長が途中で止まってしまいできなかった。
 本題では、基部での細胞分裂が盛んなときに細胞分裂が盛んでないところでは、細胞を成長させているのではないかという話がされた。このメカニズムを調べるために、細胞分裂時に特異的に発現する物質をあげていき、その物質量のコントロールによって細胞分裂していないところでどのような細胞の成長が見られるかを調べる方法でメカニズムを解明できるのではないだろうか。個人的には、基部で常時出ている物質が先端部の細胞成長を抑制していて、細胞分裂が盛んに起こることでこれがストップして、その結果抑制が解除されて細胞成長が開始されるのではないかと考えた。なぜなら、そのほうが前者よりも細胞数が基部よりであればあるほど多いということに付随しておこる葉の基部から先端までの細胞の成長度合いの勾配が説明しやすいからである。

A:植物の成長が無限だとしても、例えば、ある一定以上の高さになると、そこまで水や栄養を上げるためのエネルギーが、そこで稼ぐことができるエネルギーを上回ってしまいますから、結局、事実上の上限は存在します。同様のことが魚にも起こっている可能性はありますね。上の方のレポートにもありましたが、調節因子は大抵極微量で効きますから、最初に物から迫るのはなかなか大変です。物を追いかけるためには、結局生理的な検定方法を最初に確立する必要があるでしょう。