植物生理学II 第7回講義
栄養塩の吸収、窒素固定
第7回の講義では、根からの栄養塩の吸収と、根粒菌との共生による窒素固定について概説し、最後にアーバスキュラー菌根菌などとの共生によるリンの吸収について触れました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:今回の授業の最後の部分で、窒素固定と光合成の分業を昼と夜で行っているのには生物時計が関連しているということを学んだ。動物における生物時計は脳の松果体で分泌されるメラトニンの量が関与していることが知られているが、このように動物でいうところの自律神経の中枢のようなものがない植物ではどのような制御が行われているのだろうか。それにはやはり植物の持つ光化学系の存在が挙げられる。光エネルギーの量に応じて光化学反応を行うため、光合成産物以外にメラトニンのような分子が分泌されて生物時計が制御されているのではないかと考えられる。
A:動物でも、全体としての生物時計と個々の細胞の生物時計の関係は簡単ではありません。また、「生物時計の制御」といった場合に、時計を回す制御と、時計を合わせる制御の二つがあります。今回は、時計のメカニズムの話はしなかったのですが、そのあたりも非常に面白い話題です。
Q:カナダモは根からも葉からもリン酸を吸収するが、根から植物体全体に行き渡るのに対し、葉からは根にはいかない。これは、リン酸の輸送には道管が用いられていることを示している。道管は根から上方向に物質を輸送する。そのため、土壌中のリン酸は水に溶けており根から吸収されると考えられる。
A:あまり頭を使っていないような気がします。導管のメカニズムのところで説明したのは、葉からの蒸散が導管液を動かす駆動力だということでしたよね。水草の場合、葉から蒸散をしないわけですから、そもそも導管液の駆動のメカニズムが陸上植物の場合と同じか、という点から考えなくてはいけないと思いませんか?
Q:移動が可能なシアノバクテリアについては昼に光合成を行い、夜に窒素固定を行う。この昼夜の感知については、温度や光ではなく生物時計によって感知する。生物時計の維持には温度や光などの環境要因が必要であるが、なぜこのようなシステムが構築されているのだろうか。考えられるのは、光や温度といった直接的な環境要因によって制御されていると不利益を被るということである。例えば天候が悪い日が続くと丸一日光合成が行えないことになる。こうなるとエネルギーが不足し、生存が困難になる。天候の悪い日などは余計に光合成に割く時間を増やさなければならないのである。つまり温度や光などは比較的変動しやすく、これらの要因に依存すると一定量のエネルギーを得ることができない可能性があるということだ。時間と環境要因には基本的に相関があるため、この時間という要因をクッションに使って昼夜の感知に反映させたと考えられる。
A:どうも論旨がよくわかりませんでした。もし、その日の日照によって対応を変えたいのであれば、いつも同じ時計に頼らずに、その場その場の光条件に応答した方がむしろ良いと思いますが。光が少ないといつもより長く光合成をしなくてはいけないのであれば、時計によって区切られては困りますよね。
Q:根粒菌についての話が印象に残った。人間に病原細菌などを防御する仕組みがあるならば、植物にもあるのではないかと考えた。そこで根粒菌はどのようにその防御システムを潜り抜け、植物との共生に成功しているのか考えてみる。細菌というのは一般的に細胞膜を持った原核生物とされる。根粒菌は一重の細胞膜ではなく、二重膜の構造をとっている。このことによって、葉緑体などの細胞小器官と同じだという認識をしてしまい、防御は行われないのではないかと考えた。
A:講義の中で話したと思いますが、根粒菌の共生は、単に防御を潜り抜けるといったものではなく、植物側が積極的に応答して準備し取り込んでいるのです。合言葉の話をしましたよね。
Q:今回の授業では、陸上植物の約8割~9割がアーバスキュラー菌根菌との共生を選択し、残り2割の陸上植物は自力でクラスター根を形成するとのことだった。では、大半の植物がアーバスキュラー菌根菌との共生を選択する一方、クラスター根を形成する植物にはどのような違いがあって異なる戦略をとるのか。文献1によると、アブラナ科やアカザ科植物などの根の滲出液には、菌根菌の感染を誘引するシグナル物質(授業ではこのシグナル物質はブランチングファクター(BF)であると紹介されていた)が他の植物より少ない、もしくは菌根菌の感染を抑制する物質が多いことがわかっている。さらに、これらの非共生植物は早い段階から派生していることもわかっている。この文献には、クラスター根が発達し水分や養分を充分に得る能力があるため、アーバスキュラー菌根菌との共生が必要なかったのでは?と書かれている。他にも授業にもあったように、植物にとって害のある他の寄生菌がBFに反応して寄り付くのを避けるためにBFの分泌をやめてクラスター根をつくる選択をした場合も考えられる。これは、一度菌類に寄生されると大きな打撃を受ける植物の戦略であると考えられる。もしくは、アーバスキュラー菌根菌の宿主特異性(少しは特異性があることが実験的に証明されている)によって、養分が受け取りにくい植物として認識され共生しなくなり、植物はしょうがなくクラスター根を形成し、BFもあまり分泌しなくなった可能性もある。また、菌根菌に寄生することで病原菌に耐性を持つことも知られている。非共生型植物は、もしかしたらこれらの病原体に対してもともと強い耐性をもつことも考えられないだろうか。このように様々な理由が考えられるが、確かな理由を知るには非感染型植物の特徴を詳しく調べる必要があると思う。
参考文献:1.植物とアーバスキュラー菌根菌の共生戦略と生体防御, 久保田真弓著, 2006年, http://root.jsrr.jp/archive/pdf/Vol.15/Vol.15_No.3_111.pdf
A:このように、色々な可能性を並列してしまうと、論旨がぼやけてしまいます。できたら、何らかの自分なりの根拠をこしらえて、自分はこの可能性が一番強いと思う、と言いきってしまった方がよいでしょう。もちろん、他の可能性を完全に否定する必要はありませんが、自分なりの立場をしっかり示すということは重要です。
Q:今回の授業では根粒菌やアーバスキュラー菌根菌など、植物の根に共生する菌類についての話があった。特にアーバスキュラー菌根菌は植物の根の細胞に菌糸をのばし、細胞内に樹枝状体や嚢状体で存在する。ここまで細胞内に入り込んでいるのなら、いっそ好気性細菌やシアノバクテリアのように細胞内に取り込まれ、それぞれの役割を果たす細胞内小器官として働くことはできないのかと考えた。まず、いまだに菌が細胞に取り込まれていない理由として「細胞内小器官として進化するには共生を始めるのが遅かった為、まだその段階に至っていないのでは」と考えた。しかし、「植物が菌根菌と共生しはじめたのは、 化石の証拠から約4億年前、陸上植物の出現とほぼ同時期であり、植物微生物共生の最も古い形態は植物と菌類の共生である(1)」ということだ。つまり、シアノバクテリアなどが植物細胞と共生を始める前から菌根菌は共生していたのだ。次に、胞子が取り込まれずに根の外部に残り、そこから菌糸を伸ばしているという形態から、根の細胞内に胞子がはいることができない理由があるのではないかと考えた。また、根の細胞すべてに菌根菌の樹枝状体などがあるわけではなく、根毛付近の細胞数個にできていることから、細胞数と樹枝状体や嚢状体の割合に適切な関係があることが考えられる。つまり、全ての細胞に必要としている器官ではないため、菌根菌を取り込んで器官にすると細胞分裂時に数の調整が難しくなるのではないかと思った。植物個体がすべての役割を遺伝子にコードし管理するよりも、他の生物と共生関係でいるほうがお互いの利益になるということを分かって何千年も共生してきたのだということに驚き感動した。
1、東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 植物科学大講座 植物生理学研究室
http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seiripl/naiyou2.html
A:全ての細胞に必要ではない、という点からすると、葉緑体もそうですよね。根には葉緑体は必要ありませんから。でも、数の調整が難しくなるというアイデア自体は面白いと思います。あと、「陸上植物の出現」というのは、シアノバクテリアの共生よりもずっと後の話です。シアノバクテリアの共生は、藻類として始まっていますから。
Q:根粒菌について。マメ科の植物の根にくっついている根粒を生やす菌で根の先端にくっつくと菌糸をのばして中でコロニーを作るという話を聞いた。その時に気になったのだがどのようにして菌が根の表面まで移動するのか。また根は菌を受け入れる体制をどのように作っているのだろうか。菌が土の中を縦横無尽に動いていて根に付着するのかもしれないが、根がまだ発達してない時期(発芽直後)に根粒ができても根の成長の邪魔になりそうな上に窒素固定をしてもそれを利用しきれないだろう。他にも菌を受け入れる事ができるという事は根粒菌以外の菌にも入り込まれてしまうのではないだろうか。発芽直後のマメ科の植物に根粒菌が着くのかどうかや根粒菌がまだ着いていない根は菌に弱いのかどうかを様々な組み合わせで育てる事で調べる事ができると思う。
A:共生関係の確立のためには、化学物質を合言葉として使うんだという話は講義の中で紹介したと思います。他のレポートで具体的に説明されているものもありますから、きちんと勉強してください。
Q:今回の講義では窒素固定について学んだ。講義中で窒素固定を行う根粒菌はマメ科植物に特異的に見られる構造であると学んだが、今回はどのような利点があってマメ科植物でのみこのような構造が見られるのか考察する。そもそも窒素固定菌を持たない植物はどこから窒素を取り入れているのだろうか。地上では動植物の死骸中の窒素などが菌の力により土壌中に帰り、再び植物に取り込まれている。また死骸に含まれる窒素の一部は大気中に戻るが、逆に大気中の一部の窒素は根粒菌を始めとする細菌の力により土壌中に固定されている。このような循環を通して植物は窒素を得ていることが分かっている。では根粒菌と共生することの利点や欠点にはどうなものがあげられるだろうか。まず根粒菌と共生する事の利点については窒素を安定して豊富に利用できることや土壌中に窒素の少ない荒れた土地でも生育できることがあげられる。特に前者については大豆などがタンパク質を多く含み畑の肉と呼ばれていることからも見て取れるだろう。逆に根粒菌と共生することの欠点としては根粒菌に栄養を供給する必要があることや根に根粒を形成する必要があること、共生することが前提なので何らかの理由で共生できなかった場合と生育できないことがあげられる。これらのことを考慮しマメ科植物のみが根粒を形成する理由を考える。まず挙げられるのはマメ科植物あるいはその祖先となった植物が生育するには他の植物よりも窒素を多く必要であったという理由である。この仮説が正しい場合は他の植物は土壌中の窒素だけで生育できるため共生という方法はとらなかったと考えられる。他の仮説としてはマメ科植物が土壌中に窒素の少ない環境に適応したためというものがある。こちらの場合、他の植物は荒れた土地よりも他の環境条件に対して適応したものと考えられる。更に他の仮説として窒素固定を行うニトロゲナーゼという酵素は酸素存在下では失活してしまうため他の植物は根の呼吸を優先したというものがあげられる。ただしこの仮説は、根粒が酸素を遮断するという性質を持つため根での呼吸をある程度抑制しているという仮説が前提となっているため先にそちらの検証を行う必要がある。
A:やや常識的ではありますが、よく考えていると思います。根の呼吸に関して言えば、根粒中では、むしろ呼吸活性を高くしている場合もあります。呼吸を盛んに行うことによって酸素を吸収して酸素濃度を下げるわけです。呼吸の末端酸化酵素(これが酸素と反応する)の酸素に対する親和性は高いので、酸素濃度が多少低くなっても活性はそれほど落ちないので、酸素濃度を低下させる仕組みとして使うことができます。
Q:講義ではシアノバクテリアのヘテロシストへの分化について議論を行った。ヘテロシストへの分化とヘテロシスト同士での間隔の調整はどのように引き起こされるのだろうか。①ヘテロシストに分化した細胞が隣接する細胞に分化を抑制する物質を伝達することで調節する。②細胞が群生するときにヘテロシストに分化する予定のあるシアノバクテリア同士は隣接しない。③すべての細胞がヘテロシストを誘導する物質を持っており、この物質は互いに親和性をもっている。シアノバクテリアが複数体集まると1つの個体に物質が集合してヘテロシストに分化させる。④ヘテロシストへの分化は完全にランダムである。①の場合、ヘテロシストに分化したシアノバクテリアのサンプルを大量に入手し、含有物質の全てを分離して探すことで分化を抑制する物質を見つけ出すことができる。②の場合は、仮にヘテロシストに分化することがプログラミングされたシアノバクテリアがいることが証明できれば、クローン個体の培養によってその是非を調べることができる。ヘテロシストに分化したシアノバクテリアを集中的に殺し、分化していない残りのシアノバクテリア同士を集合させて分化する個体があれば②は否定される。この方法では①は隣接する細胞に分化を抑制する物質が時間経過で消化される可能性があるので否定できない。また、③はヘテロシストを誘導する物質が新たに精製される可能性がある。④は分化に関連する情報が「分化するorしない」ということのみであるからゲノムサイズを圧迫しないという利点がある。
A:必要な条件を満たすメカニズムをきちんと一つずつ考えているという点で評価できます。あとは、どれが一番もっともらしいか、という議論も欲しい所ですね。4番には利点が挙げられていますが、それぞれのメリット・デメリットを比較して、自分なりにこれだ、という結論を出せるとよいと思います。
Q:今回の講義では、主に窒素固定について学び、その中でも根粒菌の働きやシアノバクテリアについて理解を深めることができた。植物の葉の開閉状況が昼と夜で異なっているのを解明するにあたって、さまざまな環境で原因を追究したところ、植物に体内時計が存在するという考えに至ったという話が今回の先生のお話で最も興味深いと感じた。そこで今回は、「植物の体内時計を人が操ることによって、なにか環境に貢献することはできないか」について論じる。私は、体内時計を操ることによって、最近各地で起こる異常気象による植物のダメージを軽減できるのではないかと考えた。例えば米やレタスなど以前は豊富に収穫されていた地域が突然江戸時代のように飢饉に陥るような場合でも体内時計を調整することによって食糧問題を少しでも軽減できるのではないかと思う。また、現段階で体内時計についてどれほどの研究がなされているかを調べてみたところ、以下のURLのサイトでは、現段階で植物の体内時計に関与するタンパク質「PRR9、PRR7、PRR5」を発見し、これらの遺伝子と関与する遺伝子を解明することができたと記されている。また、今後として体内時計に関与したタンパク質の機能を人工的にデザインすることが課題であるということがわかる。
http://www.riken.jp/pr/press/2010/20100318_2/
A:問題点の設定はよいと思うのですが、具体性がないと議論になりませんね。「操る」「調整する」「デザインする」といったものの内容をきちんと示す必要があります。「何かやれば、何かが起こるかもしれない」というのではサイエンスになりませんから。
Q:今回の講義では植物の窒素固定について学んだ。マメ科植物は地中で根粒菌や菌根菌が窒素固定を行い、その代わりに植物から有機物を得るという共生関係が成り立っている。有機物を得るという恩恵を受けている根粒菌にとっては、光合成器官により近い部分に共生したほうが多くの有機物を得やすくなり、効率がよいのではないかと考えた。そこで根粒菌がなぜ有機物が多く含まれるはずである師管に共生しないのかについて考察する。師管では有機物が多く含まれるというメリットの他に、空気中には78%も含まれるため地中で窒素固定するよりも多くの窒素を取り込むことが可能となると考えられる。だが授業で学んだ通り窒素固定を行う酵素、ニトロゲナーゼは酸素共存下では失活してしまう。そのため酸素から保護するためには細胞壁を厚くし、酸素が浸透しないような構造にしなければならない。だが酸素を通さないという事は窒素の吸収もまた阻害されるのではないかと考えられる。さらに根粒菌の侵入経路についても述べる。地中で共存する場合ほとんど根毛から侵入するため比較的容易である。一方師管で共生する場合には、表皮細胞や導管など様々な器官を経る。そのため菌根菌にとっては非常に距離が長くなってしまいエネルギー的に負担となってしまう。したがってニトロゲナーゼに対する酸素の影響および菌根菌の侵入経路の観点から、師管ではなく地中において共存していると考えた。
A:根粒菌の共生が、なぜ根でおこって篩管ではないのか、という論点の設定はよいと思います。また、侵入経路の議論も面白いと思います。酸素の方は、根粒の代わりに篩管粒を作るのでは、なぜいけないかがよくわかりませんでした。
Q:なぜ根粒菌は地下部に存在するのかについて考える。今回の授業で根粒菌は、窒素固定を行う場所であると習った。ならば単純に窒素が最も多い空気中、つまり地上部に根粒を作ればよいのではないかと思える。地上部で根粒をつくることに最も障害となると考えられることは、根粒内で窒素固定を行うニトロゲナーゼは酸素によって失活してしまうという性質を持っているということである。空気中の酸素に関しては、根粒の周りを厚い細胞壁で覆うことで酸素の流入を防ぐことができる。しかし、光合成によって生産された酸素は、内部で生産されているため防ぐことができない。つまり、光合成を行っている器官の近くでは存在できないと考えられる。根粒菌と共生している植物はマメ科である。マメ科の地上部は葉と茎の配置が極めて近くなっていることから、マメ科では地上部に根粒を作ることができないと考えられる。しかし、茎と葉が離れている植物では茎側に根粒を作ることが可能ではないかと考えられる。
A:これも上のレポートと同じ趣旨ですね。こちらは酸素の方だけを考えていて、葉との関係を主に議論しているのでわかりやすくなっています。
Q:根粒について興味を持った。根粒の形成は根毛に根粒菌が付着し、根毛に包み込ませることで植物の内部に感染糸を伸ばして根粒を作る。ここまでは分かっていたが、根粒菌がどのようにしてマメ科植物を見分けて共生関係を作るのか疑問に思っていた。植物と根粒菌は特定の物質でお互いを認識し合っていたと習った。植物が持っているフラボノイドによって根粒菌はnodファクターを合成し、それが植物体に作用することで共生関係を作るようだ。しかしこのフラボノイドはマメ科植物に限らず植物が分泌する物質であるようだ。それではなぜ根粒菌はマメ科植物を共生相手に選んだのだろうか?まず根粒菌とマメ科植物の共生関係のメリットを思い出してみた。根粒菌は窒素固定を行ってマメ科植物に窒素を供給している。窒素は安定しているので、固定する為にはエネルギーが必要だ。その点でマメ科植物にはメリットがある。根粒菌はマメ科植物から光合成によって生産された有機物を受け取ることで栄養を得ている。両者のメリットを見ると、マメ科植物でなく、他の植物でも根粒菌との共生関係を築けるのではないかと思った。メリットの面で考えると、根粒菌が植物に感染するときにマメ科植物だと何か都合のいいことがあるのではないかと思った。フラボノイドは他の植物にもあるようだが、根粒菌のnodファクターを活性化させるのはマメ科のフラボノイドだということだった。マメ科のフラボノイドを調べると、イソフラボノイドというもので、この物質はもともとマメ科植物の生体防御の為の物質であるようだ。そして根粒菌との共生シグナルにもなってる。共生関係の確立でイソフラボノイドが根粒菌以外を排除する様なものになったのかどうかは分からないが、根粒菌がマメ科植物の防御を破り、感染したところ、根粒菌の窒素固定によって、マメ科植物は窒素をより多く吸収できる様になったことからだんだんと共生関係が作られて行ったのではないかと考えた。しかし大雑把な推測であるので、マメ科植物と根粒菌の共生の歴史に答えがあるのではないかと考える。
参考:日本大学21世紀COEプログラムHP 微生物共生系に基づく新しい資源利用開発、
■微生物との共生で機能するマメ科植物の遺伝子と化学因子 http://hp.brs.nihon-u.ac.jp/~coe14/research_01_e.html、閲覧日時2013/11/17 22:50
A:非常によく考えていてよいと思います。ただ、最後にちょっと腰が引けましたね。単なる講義のレポートですから、「大雑把な推測」に逃げるのではなく、「自分はこれが真実だと思う」ということをストレートに主張した方がよいと思います。
Q:マメ科植物は根に宿した根粒菌により窒素固定をおこなっている。それはほぼ全てのマメ科植物で同じだ。が、調べてみたら根粒菌の種類はそれぞれの品種で様々で、インゲンは3種、ダイズは2種もの根粒菌が存在している。何故同じマメ科植物で存在している根粒菌が違うのか、例えばインゲンの根粒菌はRhizobium(培地上の生育はやく,窒素固定と根粒形成の遺伝子はプラスミド上にある)、ダイズの根粒菌はBradyrhizobium(培地上の生育おそく,窒素固定と根粒形成の遺伝子は染色体上にある)とその特性が違う。これはおそらく品種改良で生まれた違いではなく、マメ科植物の進化過程の中で生まれた違いだろう。おそらく窒素固定と根粒形成の遺伝子の場所の違いにより生まれた年月、環境も違うと思う。
・根粒菌の共生的窒素固定 http://www.asahi-net.or.jp/~it6i-wtnb/KONRYU.html
A:違いが生まれたのは確かでしょうけれども、おそらく問題なのは、何故その違いが生まれたのか、という点だと思います。「違いがある」という所までは事実なので、その事実から論理的に考えると、何が理由でそうなったのか、という点まで行くと科学的なレポートになります。
Q:単細胞のシアノバクテリアの生物時計について考察した. 窒素固定に働くニトロゲナーゼの活性を保つためには低酸素条件が必要である. だから, 光合成が活発に起こると不都合なため, 自然条件下では, 光の当たっていない暗期の長さが重要になる. ここで, 窒素固定を行うために一定時間以上の暗期の長さが必要だとすると, L:D=24:0, 23:1, 22:2, 21:3, 20:4…という異なる条件下でこの生き物を生存させると, 生存に必要な窒素固定を行うための暗期の長さがわかる(窒素化合物が水中に十分ある場合はこの限りではない). 逆に, 十分な光合成を行えない日が連続で何日か続くと生存できないため, 時計の設定にも限度が存在する. 例えば, L:D = 24: 24で生息させ, この周期を一週間ごとに1時間ずつのばす(25:25, 26:26, 27:27…)と, いつか, 生存の限度の周期にさしかかると考えられる. すると, 生息地の緯度にも限界がある. そう考えた矢先, 以下の情報を見つけた. 「雪に宿る生命 雪氷藻類 竹内望」http://www-es.s.chiba-u.ac.jp/~takeuchi/pdf/1304_Kyokuchi.pdf
チノリモという単細胞の藻類が極地に生息しているというのだ. 同資料によると,チノリモは, 生存に不都合な時期に休眠するのだという. すると, 休眠さえできれば極端な日照条件下でも生存可能だということになる. もし, チノリモの休眠のメカニズムやこれを制御する因子をコードしている遺伝子がわかれば, 他の単細胞生物にこれを導入して, 長期間生きたまま保存できるのかもしれない(但し, 休眠といっても一年のどこかで活動期が来ると考えられるので, これにも, 長さの異なる生物時計による制御がかかっているに過ぎず, 何十年も休眠したままにはできないのかもしれないが).
A:良く考えていると思います。前半の展開からすると、後半の最後に、休眠することによって得られるメリットが、窒素固定と光合成で違うのかどうか一言議論されていると全体としてまとまりのあるレポートになるでしょう。
Q:以前水草がどの程度明確に維管束の構造を持っているかについて調べたが、なかなかそれについて説明された試料が見つからなかった。師管・導管が明確に区別されているなら、根から葉への栄養塩の輸送について根圧が重要な要素となっていることがわかるが、導管・師管が明確に区別されていないと仮定して、その時の輸送の仕組みを考えてみたい。まず、水草と陸上植物の生育環境で大きく異なるのは光の強さである。光の弱い水中に棲息する水草は最大光合成速度が転流速度の影響を受けないかもしれない。
A:出だしはいいですが、尻切れトンボですね。途中で時間切れかな?
Q:水生植物のカナダモの講義の中で、植物の成長に必要なリン酸の取り込みがどこからでも可能である。そしてその具体的な取り込み方法は詳しくはわかっていないとのことでした。このリン酸の吸収をしている方法を明瞭にするのに、1つの実験系を考えた。まずリン酸は水ではないために浸透圧で吸収できるはずがない。そこで生体内のポンプのようにリン酸を他の物質と別にして特異的に吸収する働きがあると推測。それには植物の体表面にポンプの役割になる箇所が存在する。カナダモの表皮を薄くスライスして顕微鏡で観察する。まずこの方法では発見は厳しいと予想。次にリン酸を追う方法であるが、リン酸をマーカーすることはできないため却下。ポンプのように取捨選択をしているのであれば、反応する機構が存在するはずである。その反応にはATPの使用は予想でき、ATPの消費量を計算する。しかし、グルコースがリン酸化されて解糖系が動いていては計算が難しいため代謝系を一時止めておく。ATPが消費されていればリン酸の吸収はポンプのように選択的に取り込む装置が体表面にあるとわかる。
A:講義で紹介した実験はリンを放射性の32Pでラベルしているわけなので、リン酸を追いかけることは可能です。最後の部分、ATPの消費量を比べるのであれば、リン酸濃度が高い時と低い時の差を見ると、結果を解釈しやすいかもしれません。
Q:ニトロゲナーゼによるアンモニアの生成反応では,副生成物として水素が生じる。ニトロゲナーゼは酸素存在下では活性を失うということであったが,この水素は,ニトロゲナーゼ近傍の酸素分子と反応することで,ニトロゲナーゼが酸素分子と衝突する確率を低下させているのではないかと考えられる。しかし,酸素分子と反応するだけが役割であるならば,水素である必然性はない。酸素分子に対し還元剤として働く物質は生体内にはたくさんあるはずである。では,なぜ水素なのか。その理由は主に水素分子の小ささあると考えられる。例えば,水素よりイオン化傾向の大きい金属元素について考えると,リチウムやナトリウムなどの大きさの小さい元素の単体を生み出すには大きなエネルギーが必要であるし,水素とイオン化傾向の比較的近い鉄などはとても大きな元素であるので,ニトロゲナーゼに含まれるモリブデンなどとの相互作用も大きくなり,ニトロゲナーゼの立体構造は大きく変化することとなるだろう。まとめると,酸素と強く反応する小さな分子を作りだすには大きなエネルギーが必要であるし,大きな分子がニトロゲナーゼ近傍に集中すると適切な立体構造が保てなくなるということである。そこで,小さく,それに加えて比較的作り出すために必要なエネルギーの小さい水素分子が選ばれたのではないかと考えられる。
A:これは、ニトロゲナーゼの反応の際に発生する水素の役割が、酸素と反応させるためのものであると仮定して、それに基づく議論を展開していてよいレレポートだと思います。ただ、実際にその仮定が正しいかどうかは別問題ですけど。