植物生理学II 第6回講義
転流、植物の根
第6回の講義では先週に引き続いて転流について解説したのち、植物の根と水の移動、そしてそれに関わるアクアポリンについて解説しました。アクアポリンについては、二酸化炭素チャンネルとして光合成との関係も解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。
Q:水銀イオンの光合成速度への影響について考察する。光合成には水分子が必要であるが、植物はアクアポリンを通じて水分子を得ている。アクアポリン1では、中心部が細くなった砂時計のような形をしており、中心にある穴の直径は約3オングストロームであり、水分子は約2.8オングストロームである。よってアクアポリンを通過するとき、水分子はぎりぎりで通過する。水銀は唯一の液体の金属であり、金属結合によってイオン同士がひきつけあう。一度でもアクアポリンの孔にはいってしまうとそのまま詰まってしまい、水分子を通さなくなってしまうために光合成が阻害されてしまうのではないか。 参考文献 http://www.4348.co.jp/pdf/toku2/a-01
A:講義の最後に解説したと思いますが、光合成にとってのアクアポリンは、水チャンネルとしてよりも二酸化炭素チャンネルとしての働きの方が直接的に効きます。考察しているのは最後の一文だと思いますが、あまり科学的な考察になっていませんね。「詰まる」というのなら、せめて水銀イオンのイオン半径を調べて、それと穴の直径を比較するといった手続きが必要だと思います。
Q:今回の授業では植物の根とアクアポリンの関係について扱った。このことに興味を持ち、調べたところ、イネにおいては根の内皮にアクアポリンが高発現している場合、低温耐性が強くなるという知見があることがわかった。これは恐らく、低温によって、植物の体温が下がるのを水によって防いでいるのではないかと考えられる。
A:これも、最後の一文が考察だと思うのですが、なぜそのように考えたのかのロジックが全く不明です。せめて、なぜ、水があると温度が下がるのを防げるのか、といったメカニズムをきちんと記述してください。
Q:講義で、根毛は表面積を増やすための構造で、他に根の表面積を大きくするには粉状・スポンジ状などが考えられるがどちらも植物にとっては実用的ではないという話があった。1本の根ではスポンジ状は難しいが、スポンジ状に根を張り巡らせる根群がある。水分をプールし吸収を補助する仕組みだと考えられるため、スポンジ状の根群を形成する植物は乾燥地帯に多いのではないかと考えたが、調べてみると乾燥地帯に限らず分布していた。また、スポンジ状の根群の他の働きとして、柔らかい土壌で植物体を安定させるためだと考えられる。この仮説を実証するためには、やわらかさの違う土壌で同じ種の植物を生育させ、根の形状を比較すれば良い。
A:最後の部分は、安定させることが目的であれば、必要のないときには形状が変わる、ということを前提にしているのだと思います。しかし、異なる形質を持つ植物が、それぞれ適した環境に生育する場合には、一つの種類では環境が変化しても形質が変化しない場合もあるでしょう。環境を変えたときに種の交代が起こる場合についても考える必要があるかもしれません。
Q:僕たちが普段食べているジャガイモの部分は塊茎と言って土の中にあるにも関わらずに茎の一部なのだが、なぜこのようなものを作ったのか考えてみた。辞典で調べてみると塊茎において養分を貯め込んでいるとのことだが、地上でなく土の中にこのような組織を持ったのは動物などの他の生物に食べられにくくするためだと考えられる。また茎根葉など植物の体全体に均等に栄養を蓄えるのではなく、塊茎として一部に集めたのは、地上部の葉や茎を食べられにくくするためであったと考えられる。
A:考えているという点ではまあ良いのですが、科学的なレポートとしてはやはり根拠がもう少し必要でしょう。考えるだけでなく、なぜそのように考えたのかを読み手に納得させる論理を構築するようにしてください。
Q:講義ではホヤの祖先ではセルロース合成酵素を持たず、バクテリアが感染することで得たとされたが、それはつまりホヤへと進化する過程でセルロース合成により有利になる条件が多かったためであると考えられる。
ホヤにおけるセルロースの役割は皮のうの形成と、固着による変態を正常に進行させることである。セルロース合成酵素獲得前ではこのような働きはなかったかというと答えは否で、ホヤの生存にとってセルロースは必要不可欠というわけでもないのである。必要不可欠ではないが、セルロース合成酵素を持たない個体に比べて皮のうをより強固にし、固着能力を高めることができるため選択的に保存されたと考えられる。元来固着の力が弱く皮のうもそこまで強固でない場合、水中を浮遊し様々な外的と遭遇する可能性が高く、外敵に出会った際には自身の身を守るには皮のうの強固さが不十分であったためにこれらの個体群は淘汰されていったのではないだろうか。つまりホヤはバクテリアが感染することで移動しない代わりにより強固に自身を固め外敵から身を守るという戦略を実行したと考えられる。
参考文献:筑波大学 下田臨界実験センターマリンゲノム研究室 変態メカニズム 2013/11/09更新 http://www.shimoda.tsukuba.ac.jp/~sasakura/research_metamorphosis.html
A:これは、進化の過程と、幼生から生体への変態を絡めて議論しているのでしょうか。そのあたりがやや不明瞭に思います。ホヤの祖先として幼生のような形態を仮定しているのであれば、そのように仮定する妥当性も議論する必要があるでしょう。
Q:マングローブ林の膝根の話が印象に残った。マングローブ林の写真や映像を見ると、確かに根が顏出してことがよくある。また、マングローブ林では地上部分から根がたこ足のようになっている木もある。マングローブの中でもそれらがどのような場所に適しているのか考える。まず膝根というのは、水がかぶりやすく酸素不足になりやすい場所に生息している木が根でも呼吸できるように膝を折り曲げたような形で地上に出している根のことである。膝根は一部が地上に出ているのに対し、たこ足のような根は、それに比べて多くの根が地上に出ている。また、たこ足のような根は空気に触れる表面積が広いため、より酸素吸収に適していると考えられる。以上より、たこ足の方がより水辺に近く水にかぶりやすい場所の生息に適しており、膝根は根をしっかり地中に張りながら、水がかぶることにも適応しているのではないかと考えられた。
A:ここで議論されていないもう一つ重要なポイントは、支柱根は根の幹側の端なのに対して膝根は根の途中であることです。根への酸素供給という面からすると、当然、根の途中に酸素を送り込んだほうが効率的と考えることができます。
Q:今回授業の中でモジュールの自律性について教わった。隣り合った、つぼみを持つ繁殖枝とつぼみを取り除いた非繁殖枝の光合成産物(養分)の転流の様子を調べたものだった。繁殖枝の葉で作られた養分はその枝のつぼみに転流される一方、非繁殖枝の葉で作られた養分は隣の繁殖枝には転流されず、根の方へ転流されるという内容だった。私は、これではまだ自律性を証明できていないと思う。この実験では、繁殖枝に充分の葉がついていたため、他の枝から養分を補う必要がなかったことも考えられる。追実験として、繁殖枝の葉をすべて取り除き、他は同じ条件でもう一度転流を調べるべきである。結果として、繁殖枝から養分を得られないつぼみは、非繁殖枝から養分を得るのではないか。一度根の方へ向かって転流した養分がわざわざつぼみまで戻ってくるよりも必要とするエネルギーは少ないだろうし、効率がよいからだ。よって、私はモジュールの自律性があると断言するにはデータが足りず、追実験を要すると思う。
A:つぼみではなく実です。講義の中で説明したと思いますよ。確かに図だけ見るとつぼみに見えなくはありませんが・・・。実験の結果は、通常の条件ではモジュールは独立しているが、実がある場合は、その実へと栄養が送られる場合がある、というものです。繁殖というのは植物にとって、モジュールの独立性という原則を破ってでも優先すべきことであるというのが結論です。
Q:根の役割として植物体の固定というのがあるがこれは結果論であってそのために根を生やしているわけではないという話があった。中学生の理科の授業案作成の際に、「植物の根」という単元についてつくったときには「根の役割は水の吸収と植物体を支える事」と書いた。中学生の教科書にはそう書いてあるのだ。しかし根の役割の第一は水や土壌中のイオンの吸収であり、支えであることは結果論だと知って、その役割を並列に教えることに疑問を感じた。前回の授業のことだが、「篩」の字が常用漢字ではないために「篩管」を「師管」と教えるなど、「大人が教えやすいように簡略化した理科」は本質を遠ざけているように感じる。また、中学生の教科書で「根」の例としてあげられているのはタンポポなどの身近な植物(草本)ばかりで、今回見た色々な根を教えることで生徒にもっと植物に興味を持ってもらうことができるのではないかと思った。先生の正しい知識、知識量、話術で生徒は正しいことを、興味を持って学べるということを感じた授業だった。
A:知識というよりも、なぜそうなっているのかという理由を考えるのがサイエンスとしては重要なのだと思います。現実に、根が植物体を固定しているのは確かですが、では、それは根の本当の目的なのだろうか、もしそうならば体が固定されていない植物はどのように困るのだろうか、といった、当たり前のように思われることまでも頭を使って考える、という姿勢が重要だと思います。この講義のレポートへのコメントで繰り返し言っていることも同じです。せっかく持っているのだから頭を使ってレポートを書こう、ということですね。
Q:マングローブなどの、オヒルギやヤエヤマヒルギの根について。これらの植物は沖縄やフィリピンなどの熱帯・亜熱帯に存在していて日光が十分で、水も十分なように思える。しかし、海水がある所にいるために通常の植物のようにはいかないのではないだろうか。通常の植物にとって海水は浸透圧が高すぎて吸収できないどころか逆に水分を失ってしまう。調べた所、マングローブには海水を吸い上げて、塩類を排出する機能のようなものがあるらしい。授業の写真で見た大きいヒダになっている支持根を持つヒルギも存在するらしい。地上に根が存在する事もあって光合成を行うヒルギの仲間もいるようである。この事からこれらの植物は根が一番他の植物に比べ変化(進化?)していると考えられる。根以外については普通の植物とあまり違いがないようにも思える。この事を確認するにはどうしたら良いか。最近、大根と白菜を合体させたり、ジャガイモとトマトを合体させたりなどの新種の野菜が開発されているらしい。これらと同じように小さいヒルギの根と他の植物を合体させて海水につけてどうなるかを見て見るとよいと考える。
A:途中までは調べもの系のレポートかな、と思いましたが、最後、独自のアイデアが出てきて良いと思います。実際に実現可能かどうかは別として、ヒルギ類の地上部に特殊性があるかどうかを調べる実験としては、非常に適切でしょう。
Q:今回の講義では根の機能と構造について学んだ。講義中で特殊な形態をしている根の代表例である支柱根、気根、板根についてどうしてそのような形態になったか学んだが、今回は菌根を持つ植物がどのような目的であのような形態になったのかについて考察する。菌根を持つ植物として有名なものにギンリョウソウがある。この植物は葉緑体を持たない植物であり、菌から栄養をもらうことで生きている従属栄養生物である。ギンリョウソウは自身で光合成をする必要がないために日陰にも生育することができる。実際に多くの山で生えているらしい。このように菌根は光の当たりにくい場所など栄養を得難い環境に適した結果であると考えられる。ギンリョウソウと同様に菌根を持つ植物に着生ランがある。着生ランはその名の通り木や岩の上に着生しているランで、熱帯、亜熱帯域に生息している。木に根を伸ばしてはいるが、木に寄生し栄養を奪っているわけではない。また、常に根が空気中に出ているため水分が不足する。そのため着生ランはCAM植物である。熱帯・亜熱帯のような雨量が多く高温多湿の地域にしか生息しないのも他の地域では水分量が足りなくなるためであると考えられる。また話の本筋からはそれるが、講義スライドにあった根がカーテンのように垂れ下がっている植物も着生ランと同様に高温多湿の地域に生息しているため根を空気中に出しても水分が足りていると考えられる。さて話を元に戻すと、着生ランは菌根を持っているものの木の上という養分も水分も吸収しにくい環境にいる。水分に関しては前述したが、栄養塩類はどのようにして得ているのだろうか。普通の植物は地中から栄養塩類を吸収している。しかし着生ランは土に根を伸ばしていないため地中からは吸収できない。これに関してはいくつかの仮説が考えられる。例えば窒素に関しては大気中から菌が窒素を固定しているかもしれない。また前に木に寄生しているわけではないと述べたが、木から糖類は取っていないが栄養塩類は吸収しているという可能性もある。どのようにして吸収しているにせよ地中から吸収するよりも更に手間がかかりそうに思える。では着生ランはどのような利益があってこのように進化したのだろうか。葉緑体を持ち自身で光合成をする以上ギンリョウソウのように弱光条件下だけが木に着生するようになった原因であるとは考えにくい。もちろん菌から栄養をもらうことで弱光条件にも適応してはいるだろうが、それだけではないだろう。一つ考えられることとしては光条件がより良いということである。つる植物のように他の木を支えにより高いところへ葉を伸ばすことで地上よりも多くの光を得ることができるだろう。
参考文献:色・大きさ・開花順で引ける季節の野草・山草図鑑
A:全体としてよく考えていると思います。もう少し短くてもよいと思いますし、光に関する部分と栄養塩に関する部分を分けて考察したほうがわかりやすくなるかもしれません。あと、「栄養」という言い方は、案外混乱の原因となります。有機物も無機栄養塩も、どちらも栄養といえば栄養ですが、植物にとっては全く異なる意味を持ちますからね。
Q:落葉樹コナラの転流パターンの実験より、偽輪生枝から先端枝への転流はなく、先端枝から偽輪生枝への転流は起こりうることを知った。ここで私は「師管の走行する向き」に原因があると考えた。光合成産物が師管が枝の先端から枝の表皮に近い部分を通って幹→根→幹→枝の中心を通って先端へ…という順で循環することは光合成産物は植物体の中心へ、根で吸収したリンや窒素は根から枝の先端までの隅々まで届くようにするためには当然あるべき機能だろう。ラベルされた炭素の行方を植物の幹や根まで計測して、徐々に濃度が減っていればこの理論は証明できる。先端枝から偽輪生枝への転流が起こるのは、明らかに相対的な照度が高いとされソースとして有能な葉と、内側にあることで枝が揺れても落ちづらいためシンクとして有能な果実をリンクさせるため、植物が獲得した経路ではないかと考えた。例えば植物の枝の先が折れたとして、それでも別の無傷なモジュールが生育を確保できるのはモジュール同士が1対1の関係ではなく1対複数の関係を持っているからだと思う。モジュールに自律性があっても、モジュール同士の関係は否定できない筈だ。
A:「篩管の向き」というところがちょっと引っかかりました。篩管の場合、圧流説のメカニズムで篩管液が移動しますから、人間の血管とは異なって流れる方向は一定ではありません。圧流説との関係をもう少し明確に議論できるといいですね。
Q:今回の講義では、主に根の働きについて学び、①水、イオンの吸収を行う働き、②貯蔵器官としての働き、③植物体を固定する働き、という3つの働きがあることがわかった。レポートでは「環境に応じて根の張りよう、長さ、太さは変化するのか」について言及する。私が思うに、例えば強風の中で育った植物は植物体を風に負けずに固定させなければいけないことから、もじゃもじゃと根が張り巡らされるようになり、土に栄養が不足している環境では植物体は自ら移動することができないため、根を太くすることでより多くの水分や栄養素を取り入れるよう根が変化したり、土の中の広い範囲を網羅できるように根が太くなったりすると思った。つまり、当たり前であるかもしれないが、植物の葉の講義で教わった通り、根も生息する環境に応じて細かく変化するということが考えられる。私が、根の長さと土の条件の関係の実験を行うとしたら、以下のような実験を行いたい。まず、①5段階の土の環境(栄養分の豊富さ)で普通に植物を育てる。そこから、根の様子を観察する。②次に、新しく同じ植物を用意し、根から近い部分の土は環境が悪いものとして、少し離れた部分の土は環境が良いものとして、根がどのように伸びていったかを観察する。このようにして、根と土が大きな関係性を持っているのかを比較できるのではないかと考えた。
A:実験系を考えるところまでは良いと思います。ただ、考えたら、それが本当に十分かどうか、再度考えてみたほうがよいでしょう。例えば、根から離れたところに肥料を置いたら根が長く伸びたとします。それでめでたしめでたし、といって終わっては夏休みの自由研究のレベルです。単に、肥料によって植物の成長がよくなった結果、根の発達も促されたのかもしれません。実験で一つの条件を変えようとしても、実際には複数の条件が同時に代わってしまうことが多いものです。そのあたりにまで気を配れるとよいでしょう。
Q:空気中にでている根についての話を聞いたとき、アンコールワットは木の根が遺跡に絡み付いていることで有名であることを思い出した。アンコールワットの木の根はなぜ、遺跡に絡みつくように根を伸ばしたのだろうか。アンコールワットはいまでは熱帯雨林が伐採され開けた場所にあるように見えるが、かつては熱帯雨林の中にひっそりと存在していた遺跡であった。つまり人間に発見される前までは、湿気の多い場所に存在していたことがわかる。よって、アンコールワットがまだ熱帯雨林に覆われていたとき、アンコールワットの建物の上に落ちた種は成長する際湿気が多いため土の中まで根を伸ばさなくていいことから、自身を固定するために建物に絡みつくように成長した結果だと考えられる。
A:大筋よいのですが、「自身を固定するために」というよりは、やはり土を探して根を伸ばしていたのではないでしょうか。たとえ湿気が多くても、土に根を生やしたほうが生育はよくなると思いますから。土の中まで根を伸ばさなくても枯れない、というだけのように思います。
Q:今回根の働きについて学んだ。その中で大根の芽生えのスライドがあった。身の回りにある他の植物では、根は植物体よりも細い。植物には様々な形があることも紹介されていたが、それぞれの環境に適応した結果が形に現れている。根は同じ体積で表面積を増やすのに根毛をたくさん生やしてスポンジ状のものを形成する。しかし、成長した大根を見ると、側根は生えているがスポンジ状になるほど生えてはいない。あの太さで効率よく水分や栄養分を吸収することができるのか疑問に思った。発芽した直後の大根の根を見ていないが、別の種の発芽後の根の状態を写真で見たが、根毛がたくさん生えていた。発芽したときは植物体が小さく、柔らかいので外敵に食べられやすく、環境の変化に耐えづらい。そのため早く体を大きくする為に表面積を増やしているのではないかと考えられる。また、十分成長していないので、根が短い分、栄養分や水分を取ってこれる範囲が狭い。そのため表面積を増やしているのではないかと考える。成長すると、大根では根や胚軸に水分や栄養分を蓄えることができ、主根が伸び側根を伸ばすことで吸収できる土壌の領域が広がるので、表面積をそれほど増やす必要がないのではないかと考えた。
A:個体の大きさと根の関係を考えていてよいと思います。ただ、八百屋さんで売っている大根の形だけから、ダイコンの根を考察するのは危険かもしれませんね。側根や根毛の状態が実際どうなっているのか、品種改良によって特殊な状態になっていないか、などという点を考慮する必要があるかもしれません。
Q:植物には導管と篩管がある。そのうち栄養を運ぶのは篩管、葉は光合成によって合成したグルコースをまた合成し、ショ糖にする。このショ糖が主に夜に篩管に流され、ショ糖を多く含む篩管は浸透圧が上がり、周りから水を吸収し圧力が上がる。植物はショ糖を転流することで篩管に栄養を流している。この転流は、おそらく植物の光合成能力によって具合が左右されているので、ショ糖が使われる部分(果実)が巨大なほど転流が大きくなると考えられる。
樹木のモジュール構造について考えてみる。樹木がモジュール構造をしているメリットは「モジュール粒度(モジュールが持つ機能の大きさを粒度という。階層を深くしていくに伴い、粒度は小さくなり、極端には一つの命令にまでなる。逆に、機能を大きくして、出力処理というレベルを一つのモジュールとすることもでき、極端には売上処理というモジュールを考えることもできる。)」に関係が有ると思われる。例えば、モジュール粒度を小さくすると、<モジュールの内容が簡潔になる>・・・樹木構造が簡潔になり、構築に必要なエネルギーがわずかで済む。<モジュールの個数が多くなり、管理ができなくなる>・・・管理ができなくなるのはデメリットだが、個数が増えることで結合度が減り、ある部分が壊れても平気になる。モジュール粒度を大きくすると、この逆になる。樹木のモジュール粒度の大きさは、樹木の大きさ、葉の多さ等で違いが有ると思う。
・モジュールの強度と結合度(サイト:「経営と情報」に関する教材と意見)木暮仁、http://www.kogures.com/hitoshi/webtext/kj2-module/index.html
A:前半と後半で話題が違いますから、この場合だったら、後半だけで十分です。論理がしっかりしていれば長いレポートである必要はありません。このレポートの場合、最後の一文が重要だと思いますので、「違いが有ると思う」で済ますのではなく、具体的にどのような違いであって、なぜそう思うのかが議論されているとよいレポートになります。
Q:今回の授業では、植物は水と栄養塩を吸収するために、大きな表面積を有する根毛をもつと習った。スポンジは植物では有するのが難しいと習った。この分野に関して考察する。まず、植物にとってスポンジを作るのが難しいという点に関して私は植物でもスポンジを作ることができると考えた。その根拠としては動物界に属するもっとも下等な動物であるカイメンがスポンジ状の体を有していることから推定した。ではどうして持たないのか。スポンジを有することで蒙る不利益とは何なのか。それはスポンジの保水力が高すぎることが原因だと考えた。スポンジでは一度水を吸水すると、外部から力をいれないと水を放すことができないと考えた。このことにより、もし根がスポンジ状の組織を有するとすると、根には常に多量の水が飽和状態に存在することになる。このような環境では根が腐る可能性を否定できない。これが原因で、植物は根にスポンジをもつという選択をやめ根毛をもつようになったと考えられる。
A:カイメンと比較して論理を構築していてよいと思います。あとは、カイメンの場合は、カイメンと根の環境の違いに触れれ、スポンジが不利益にならないのかを一言加えると説得力が増すと思います。
Q:果実がシンクとしての役割を果たしているという話と関連して, 栄養生殖について考察する. サツマイモなど, 根を伸ばして他所で株を伸ばす事ができる種も存在する. これらの根の先端部分の未分化細胞は,他の器官に分化する能力を有していると考えられる. いずれも, 貯蔵組織を持っており, 根粒を形成する事で根に栄養を蓄えられる.果実が離れた枝から同化産物を受け取る事ができるように, 根も複数の離れた株から同化産物を受け取って貯蔵することができる. そして, これらはどちらも生殖によって新たな株を他所で生育する機会を与えうる(それに充足する有機物量が蓄積している). 栄養を貯蔵する果実の場合, 種子は他の動物に運搬され, 栄養生殖の場合は長く伸びた地下茎の先から直接新たな芽が伸びる. 従って, 植物体の存続上重要なこれらの組織には, 有機物を蓄積させるために転流を調節し, 同化産物の貯蔵を促進してこれら流出を抑制する性質があるのかもしれない.一方で, 根から吸収された無機質の大半は根に残らず, 複雑な光化学反応装置を構成する葉に多く分布するのかもしれない.なぜなら, 成熟した果物は他の動物に食べられたり落果したりして失われるため, 発芽に必要な分を除き無機物は最低限しか含まないと考えられる. また, 根は葉緑体を作らない分, Mgなどの無機物をさほど必要としないと考えられる. しかし,サツマイモは種芋だけを植えても発芽する事から,栄養生殖に他の器官は関与せず, 根の成長組織中で発芽に必要なホルモンを合成できると考えられる. よって, 栄養生殖は, 親株から離れた地点の土壌中から, 根が他の器官を形成するのに十分な量の有機物を獲得できたときに始まると考えた.
A:いろいろ考えていることはわかりますが、全体としての論旨が明確ではありませんね。短いレポートですから、できたら論点を一つに絞って、問題点ー仮説ー論拠ー結論といった具合に、論理を構成したほうが主張がはっきりすると思います。
Q:植物はホルモンを生成して根でのクロロフィル合成を抑制している。クロロフィルの有害性については以前の講義でも話があり、強光条件下で害となる活性酸素を生成するということであった。根は地上に出るとしても地表面近くで、一般的には当然強光条件となるとは考えにくい。少ない光エネルギーならば光合成に利用されるため、クロロフィルを持った細胞に害はない。クロロフィルはエネルギーによって初めて活性化されるので、クロロフィル獲得後に地中に埋まっても細胞にとって有害だとは考えにくい。そこで、長くなってしまったが、ここからがレポートの内容である。ホルモンの生成を行い、根で局所的なホルモン受容体遺伝子発現をしてでもクロロフィル合成を防ぐ利点について2つの仮説をたてた。1つ目は、ホルモンを介したクロロフィルの合成抑制をする機構を持つことにかかるコストより、根でクロロフィルを合成するコストよりも低いという考え方である。ただ、合成抑制には根全体でホルモンとホルモン受容体、それに続く細胞内シグナル伝達の機構を作る必要があり、光が当たった局所部分でクロロフィルを合成することと比較してコストが低いとは考えにくい。また、根以外の器官でもこれらに必要な遺伝子を持つため、コストは高いはずである。上記の仮定が成り立つことは正直考えにくい。2つ目は、圧流説においてシンクにあたる根で光合成を行われるとショ糖の濃度差が小さくなり、植物体全体において師管内の転流速度が遅くなってしまうため、それを防止しているという考え方である。こちらの方が植物にとっては大きな問題で、圧流説から必然的に生じることが予想できるので、おそらく後者が原因であるのではないかと考えている。ホルモンを阻害して根でクロロフィルを合成させた植物個体と通常の個体を光・二酸化炭素条件の十分な環境で光合成させ、葉の葉緑体での澱粉濃度を比較すると実験的な裏付けがとれると思う。また、できるかどうかわからないが、大型の植物で師管にくだを指して直接転流速度を比較することもできるかもしれない。
A:これは、きちんとした論理構成のレポートになっていると思います。クロロフィルの合成だけなら、とてつもないコストではないかもしれませんが、実際にクロロフィルを利用しようとした場合には、巨大なクロロフィルタンパク質複合体や、大量のルビスコなどが必要となります。したがって、やはりコストとしては無視できないと思います。なお、「クロロフィル」が軒並み「クロロフィルム」になっていたのを修正しました。
Q:本レポートではアクアポリンによるCO2の輸送について考える。講義では,H2O分子とCO2分子は似た大きさであるが,分子の形は大きく異なるという説明があった。さて,CO2分子の溶解度が無極性分子の割に大きいのは変角振動のために極性分子のような振る舞いをするからであると言われている。分布としては少ないであろうが,水分子のような形(水分子が最も取りやすいような形)をしているCO2分子も存在しているはずである。水分子と大きさも形もそっくりなCO2分子ならばアクアポリンによる輸送が可能なのではないかと考えられる。しかし,もしアクアポリンが一瞬水分子のような形をしたCO2分子をキャッチして輸送していたとして,それが光合成反応の維持に耐えうる頻度で行われるかどうかまでは想像できない。
A:面白い点に着目していますが、やや尻切れトンボですね。せめて、最後にもう一文短い結論があれば恰好がつくと思います。